「週末里親」「季節里親」を知っていますか?

2016年の児童福祉法改正以降、家庭養育推進の原則に基づく里親委託を推進しています。本特集では、月に1、2回週末だけ里親となる「週末里親」や、夏休みや正月休みなどに里親を経験する「季節里親」といった、まず安心して「やってみよう」と思える「里親」の実像をお届けします。

里親制度とは
虐待や親がいないなどの理由・事情で親のもとでは育てられない子どもたちを、自分の家庭に迎え入れ、暖かい愛情と正しい理解を持って養育する制度です。子どもと里親候補者の相性を重視してマッチングを行い、子どもを委託します。
※対象は原則18歳まで、必要に応じて20歳まで延長可

<里親の種類>





Part1:里親制度の最新の動き
~期待される里親委託の効果~


国はなぜ、里親制度を推進しているのでしょうか。その理由と2016年の児童福祉法改正以後の日本の里親制度全体の動きについて、厚生労働省の担当者に聞きました。


解説者:國澤有記
子ども家庭局家庭福祉課児童福祉専門官(社会福祉士)



●「週末里親」「季節里親」と里親制度

――今、里親委託が推進されているのはなぜですか。

里親委託では、子どもが特定の大人との愛着関係のもとで養育されることで、基本的な安心感や自己肯定感、人との信頼関係を獲得できるからです(図表1)。




また、家庭的な生活の体験も大事です。最近では、児童養護施設も小規模化や地域分散化して、少人数でのケアが中心になってきていますが、やはり家庭のイメージをしっかりと里親宅のなかで獲得してもらうことが重要で、それが将来、子どもが家庭生活を築くうえでのモデルにもなります。

そのような家庭的な生活のなかで適切な人との関係性の持ち方を学び、地域社会のなかで社会性を養えるという効果もあることから、今、里親委託を優先して検討することを推進しているのです。

「里親になるのはとてもハードルが高い」と思われるかもしれませんが、いろいろな委託の形があり、国や自治体によるさまざまな支援や補助事業がありますので、ご自分ができそうなところから関心を持っていただければと思います。

週末里親や季節里親は自治体の事業によるものではありますが、まずはそこから関心を持っていただき、それをステップとして、その先の児童福祉法上での養育里親などにつながっていき、里親に養育される子どもが増えていけばと思います。

ちなみに、2021年3月末現在、里親に委託している子どもは6,019人、ファミリーホーム(養育家庭などで一定経験のある人が事業届出のうえ、自宅で5、6人の子どもを養育する事業)の子どもは1,688人、合わせると7,700人強が、家庭養育環境にあります。

社会的養護が必要な子ども全体の4万2,000人に対して、約2割が現在の里親委託率です。ただし、この数字には、児童福祉法に基づいたもの以外の、自治体の事業となる「週末里親」「季節里親」は入っていません。


●「家庭養育優先の原則」と里親委託率アップ

――「週末里親」「季節里親」だけでなく、里親制度全体の動きを教えてください。

厚生労働省では今、「家庭養育優先の原則」が法律上で明記された、2016年の児童福祉法改正を柱としてさまざまな取り組みを進めています。

そのなかで、今後の養育のあり方を示す「新しい社会的養育ビジョン」をまとめ、この理念実現に向けた具体的な数値目標を示しました。

たとえば、愛着形成に最も重要な時期である3歳未満の子どもについては概ね5年以内、それ以外の小学校就学前の子どもについては概ね7年以内に里親等委託率75%以上を実現する、学童期以降は概ね10年以内に同50%を実現するという目標を立て、その実現に向けて動いています。

各都道府県には、このビジョンに基づいた「都道府県社会的養育推進計画」を策定していただき、家庭養育優先の原則に基づき、順次取り組みを進めていただくよう依頼しています。

また、国では、この推進計画の数値や取り組みを見える化してホームページで公表しながら、財政面や取り組みの支援を行っています。

里親養育を支援する事業を「フォスタリング事業」といいますが、2024年度末まではその補助率を従来の2分の1から3分の2に嵩上げします。

今年度においても、たとえば里親が少し疲れたときにはレスパイト(一時休息)でケアしてもらう、養育経験が豊富な里親の方に養育のアドバイスをしてもらう仕組みをつくるなど事業内容の拡充を図っています。

さらに、今年6月には改正児童福祉法が成立し、これにより、里親支援を行う施設として「里親支援センター」をつくり、児童福祉法上に位置づけて国で支援していくことになりました(図表2)。




里親支援センターの法施行は2024年4月ですが、里親の相談、里親同士の交流の場の提供、養育の計画作成など、現在フォスタリング事業が行っていることを法律上に位置づけて実施するようになります。

2年後に予定されている法施行に向けて今、準備をしています。

 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2022年10月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省