未来(あした)のつぼみ


大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。

 

諸外国と協力して
世界の労働をより良いものに




今回の執筆者
安住綾夏
大臣官房国際課 国際労働・協力室



私は、諸外国と経済連携協定(EPA)を結ぶ際の交渉、経済連携協定発効後の会合や情報交換に係る業務に携わっています。

経済連携協定の背景として、1990年代以降、世界貿易機関を中心とした貿易自由化を補完する二国間または多国間の経済連携協定などの締結により、世界各地で経済連携が加速・拡大されてきました。こうした流れを受けて、日本とASEAN、EU、アメリカ合衆国および英国などとの協定や、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(TPP)、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)が締結され、発効しています。現在も複数の国との経済連携協定などの交渉が続いていますが、物品貿易の自由化促進などを中心にさまざまな分野の交渉が行われており、厚生労働省は、関連分野である「衛生植物検疫措置」、「自然人の移動」、「知的財産」、「労働」などの分野で積極的な対応を行っています。

私は、主に「労働」について担当しています。より具体的にお伝えすると、たとえばTPPには協定のなかに労働の章があり、そこには「強制労働を撤廃すること」、「自国の労働法令の効果的な実施に励むこと」、「締結国間での協力」などについて定められています。発効後は締結国がきちんと内容を遂行しているかの確認や協力などを目的として、定期的に会合が開かれています。

たとえば、私が担当した英国との会合では、両国側から近年の労働政策について紹介し合い、議論を行いました。私は英国にどのような内容が参考となるのかなどを考えながら、日本の近年の労働政策についてプレゼン資料を作成したところ、英国側からは大変参考となったため、ぜひ関係者内で共有したいと連絡があり、やりがいを感じました。

経済連携協定とはまた別に、ILO(国際労働機関)総会という会議での、日本政府代表演説を作成したこともありました。加盟国が集まる場なので、日本として世界にどのようなメッセージを発するべきか考えたうえで、国際社会の動向も踏まえながら演説案を作成しました。無事完成したときは大きな達成感を感じました。

経済連携協定の締結や会合、ILO総会などを通して、各国がそれぞれより充実した労働政策の実現に尽力することで、世界の労働基準が高まり、最終的には日本国内にとどまらず、すべての人が働きがいを感じることのできる労働のあり方を実現できるよう、引き続き貢献していきたいと考えています。





 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2022年9月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省