新型コロナウイルス最前線


第21回

日常生活における屋外でのマスク着脱について
~マスクを外しても良い場面の正しい理解を~

世界で大流行している新型コロナウイルス感染症。本連載では、その動向や対策などを取り上げています。今回は、「日常生活における屋外でのマスク着脱と小児のマスク着用」について、国際医療福祉大学教授の和田耕治先生にお聞きしました。




 

●屋外での着用の整理と小児のマスク着用について

――5月19日に新型コロナウイルス感染症専門家会議内で「日常生活における屋外と、小児のマスク着用について」の提言が行われました。きっかけと内容を教えてください。

今回提言を出したのは、市民の皆さんの間で、マスクの着用(特に屋外)について海外で外す動きがあることから「日本国内ではどうするの?」という問いが出てきたことが発端です。それに対して、専門家や政治家からも発信や回答がされましたが、内容や表現が十分に伝わっていないことから整理をすることになりました。

屋外でのマスク着用については、変更や対策の緩和ではなく、改めて対応について確認をした形です。新型コロナウイルス感染症の広がりがみられた2020年の夏から熱中症防止のため、「夏などの屋外で暑いときは距離がとれていたらマスクを着けなくてもよい」と伝えてきました。そうはいっても、オミクロン株やワクチンが出てくる前のデルタ株までの時代は、どこかで感染するとその重症化などへの影響が大きいため、「ここは着けなくてもいいですよ」というようなコミュニケーションは混乱の可能性もあり、積極的にはメディアでも伝えられてこなかったと思います。ワクチン接種が広がり重症化する人が減ってきたこともあり、こうした話題がより広く伝えられるようになったのは、ある意味ではよい方向性とも言えます。




 

もう一つの「小児のマスクの取り扱い」については、当初は「小児もマスクができるならしてはどうか」程度の発信にしていました。特に小学校の低学年や幼稚園、保育園ではマスク着用が難しい子もいます。マスク着用ができないことで叱られたりするのは望ましいことではありません。オミクロン株の拡大により、ワクチン接種があまりされていない12歳未満やワクチンの接種対象になっていない5歳未満において感染が拡大しました。そうしたなかで、国の基本的対処方針にも「2歳から就学前児でもできるだけマスクを着用すること」が含まれるようになり、その際は小児科の先生方からも否定的な指摘はありました。今回の提言で、再度その後の状況を考慮して、従来の発信内容に戻したということになります。ただ、体調が悪いお子さんが休むこと、周りの大人が注意したうえでマスクをすることを否定したわけではありません。

 

●マスクへの過信は禁物 マスクは飛沫防止の一助に

――マスクには、どのような効果があるのでしょうか。

マスクは、「自分の飛沫を飛ばさない」ためには大きな効果があります。一方で、自分を守る意味ではマスクの効果には限界があります。マスクと顔の間には常に隙間があって、そこから多くの空気が入ってきます。そのため、「マスクさえしていればコロナに感染しない」という過信をしてはいけません。

もちろん、これまで多くの方々がマスクをして過ごしたことで、飛沫を飛ばすことを防いでいた部分はあります。引き続き、症状が出ている場合にはマスクを着用してください。

――マスクが不必要になるのは、どのような場面ですか。

①屋外
②周りに人がそれほどいない
③自分の調子が悪くない

この三つが揃っている場面では外しても構いません。また、屋内の場合は人が少ない場所や、一人で車を運転するときなどはマスクをする必要はありませんが、職場や学校、塾など、いろいろな人がいる場所、特に話をするところでは着用が必要です。
 

●「誰の何のために」着用するのかが判断基準

――マスクを外してもよい場面での注意点は?

屋外でもマスクを外すことを躊躇している人が多いのが現状です。少しずつ外す場面を増やしてもらえればと思います。屋外で「何でマスクしているんだよ」といった批判をするのではなく、あくまで自分で考えて判断していくことが基本です。

――これから帰省や旅行、イベントなどが控えていますが、マスク着用について気をつける場面を教えてください。

お祭りなどのイベントは、屋外で会話を控えていても、多くの人が参加し、飲食を伴う場合もあるため、マスクは着用したほうがよい場面もあるでしょう。また、お盆や夏休みでの帰省や旅行では、人との接触がどの程度あるかによってリスクは変わります。高齢の方やお友達に会ったりするようなら感染対策をしっかりしてください。

――今回の提言を踏まえてのメッセージをお願いします。

屋外でのマスクや小児のマスク着用についての提言をきっかけとしてもう一度、それぞれの身の回りで行っている感染対策を見直してほしいです。そのうえで、マスクを外してもよい場面を正しく理解し、感染対策を行えるといいと思います。
 

●マスクの着用について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00001.html

 

広報誌『厚生労働』2022年7月号
発行・発売:(株)日本医療企画