ケアの質の向上、職場環境改善、人材不足の解消……現場にイノベーションを起こす 介護ロボットの可能性と、その先にある未来


日本では少子高齢化の進展に伴い、要介護(要支援)の認定者数がここ20年間で約2.6倍に増加。今後も増加傾向が続くため、介護職員は2025年度には2019年度比で約32万人増の約243万人、2040年度には約69万人増の約280万人が必要になるといわれています。そうした状況下で、介護サービスの質向上や人材確保の対策として注目されているのが「介護ロボットの活用推進」です。本特集では、介護ロボットを取り巻く現状や、導入している施設での活用方法や効果、開発者の声などを通して、介護ロボットの可能性と介護現場の未来について考えます。

 





 



<Part2 国の支援策>
介護ロボット普及への後押し



費用面や活用の手間などが導入のハードルに

 国が介護ロボットの活用を推進しているのは、特集の冒頭でも示しているとおり少子高齢化で要介護認定者数が増えていくなかで、ケアの質の維持・向上とともに、介護現場で働く方々の負担の軽減・効率化につなげることにより、必要な介護人材(職員)の確保をしていくためです。介護人材は増えてきてはいるものの、高齢者数の増加速度に追いついていない。そうした状況下で介護の質を維持・向上させ、介護人材の離職を防止し定着を図っていくための一助として、介護ロボットやICT(情報通信技術)などのテクノロジーの導入が効果的だと考えています。

 しかし介護現場では、介護保険サービス系型全体の80%が「いずれも導入していない」、これが介護ロボットの導入状況です。最も導入されている「見守り・コミュニケーション(施設型)」のロボットでも3.7%。次いで「入浴支援」1.8%、「移乗介助(装着型)」1.5%と、多いとはいえません(図表4)。

 「介護は人の手でするもの」という意識や、ロボットを導入・活用し始める際の一時的な手間、そしてそれにかかる費用など、導入のハードルは依然として高いようです。




基金による費用面の助成やプラットフォームの設置

 介護ロボットの導入を後押しするために、国はさまざまな施策を行っています。

 一つが、費用面の支援です。「費用が高額」が、導入して感じた課題、もしくは導入していない理由で最も多い回答でした。そこでまず、「地域医療介護総合確保基金」を活用した介護ロボット導入支援事業において、補助額の引き上げや補助台数の制限撤廃などの見直しを行いました。

 また、令和3年度の介護報酬改訂では、介護老人福祉施設及び短期入所生活介護において介護ロボット(見守り機器など)を全床導入して安全体制やケアの質の確保、職員の負担軽減が図られていることを条件とした夜勤職員配置加算の人員配置要件の見直しなどを行いました。

 もう一つが、介護現場のニーズに合った介護ロボットの開発・実証・普及を加速化するために、介護現場と開発企業の双方を支援する「プラットフォーム」の設置です(図表5)。具体的には、介護施設等と開発企業等からの相談を一元的に受け付ける相談窓口や、開発企業による試作品等の安全性評価・効果検証(先行実証)を行うリビングラボの設置、実証に協力していただける施設等からなる実証フィールドを整備しました。これら3つの機能を一体的に運営することで、介護ロボットの開発から普及までを加速化するための取組です。たとえば、新型コロナウイルス感染症の流行で、感染対策に役立つ非接触対応の介護ロボットやICTが求められるときには、現場の声を聞きながら開発していくための支援を行います。


 


 

出  典 : 広報誌『厚生労働』2022年4月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省