現在の日本人の食生活の課題と改善策 食事と栄養のトリセツ


食事と栄養は、人が生涯を通じてよく生きるための基盤であり、活力のある持続可能な社会を構築するうえでの必須要素です。子どもの成長や生活習慣病予防など、健康管理面において最も重要なポイントの1つといえます。本特集では、より健康的な食生活や栄養摂取が実現できるよう、食事・食品や栄養に関する疑問に答え、理想的な栄養摂取などについて紹介します。



<食事と栄養は、すべてのライフコースにかかわります>

日本では乳幼児期から高齢期まですべての世代、さらに傷病者や被災者もカバーする形で、健康増進法をはじめ各種法令に基づき、「誰一人取り残さない」栄養政策を全国に展開しています。生きていく基盤である食事と栄養には、各世代や個人・地域の状況などに応じてさまざまな課題が潜んでいます。






<Part3>
健康的で持続可能な食環境づくり
誰一人取り残さない日本の栄養政策


日本は戦前から、各時代の課題に合わせて栄養に関する取り組みを行ってきました。栄養専門職の養成や栄養指導・栄養改善活動や生活習慣病対策など、その取り組みは多岐にわたります。日本の栄養政策の歩みや内容について、厚生労働省の栄養指導室長に聞きました。





食事・人材・エビデンスの3つの要素を重視

 日本の栄養政策は戦前より行われ、1920年に国立栄養研究所(現・国立健康・栄養研究所)、1924年に私立栄養学校が開設されるなど、国は早くから栄養の分野に取り組んできました。

 戦後は、食料難による栄養欠乏への対策から、経済成長に伴う生活習慣病への対策へ、そして複雑化した栄養状況への対策へと、時代ごとに直面する課題に対応した栄養政策を推進。そのために、栄養士や管理栄養士などの専門職を育成し、さまざまな調査や食事指導を実施してきました。栄養専門職が病院以外の学校や保健所、高齢者施設などにも配置され活躍しているのも、日本の栄養政策の特徴と言えます。

 日本の栄養施策は「食事」「人材」「エビデンス」を3つの柱として、多様な取り組みを展開し、世界一の長寿国の基盤を支えてきました。





東京栄養サミットを踏まえて食環境づくりを展開

 「食事」では、全ライフコースのほか、傷病者や被災者までをカバー。料理の組み合わせだけでなく、食べ方までを含む考え方を中心に、日本各地で地域特性を取り入れた食事指導や、栄養専門職により管理された食事提供を行っています。

 「人材」では、1924年から栄養専門職を養成し、さまざまな現場に配置しています。専門職のほかに、「食生活改善推進員」など多くのボランティアも、地域での栄養改善活動を支えてくれています。今後は国際的に活躍できる栄養専門職の育成を始めていく予定です。

 「エビデンス」では、科学的な根拠に基づく政策を打ち出すために、さまざまな調査・研究を国と各自治体が連携して行っています。「食事摂取基準」も、国民健康・栄養調査の結果などを踏まえて策定しています。

 これからは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に栄養改善が不可欠であることを踏まえ、世界的に課題となっている「低栄養」と「過栄養」の二重負荷の問題にも向き合っていくことが求められます。「東京栄養サミット2021」での日本政府のコミットメントを踏まえ、今後、健康的で持続可能な食環境づくりの国際展開も視野に入れた取り組みを進めていきます(図参照)。



 

 

 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2022年2月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省