患者と医療者の双方の「医療安全」への意識を高めるために


毎年9月17日は「世界患者安全の日」です。同日には、世界各地でさまざまな取り組みが行われています。日本における「医療安全(患者安全)」への意識・関心を高めるための取り組みについて、厚生労働省の担当者に話を聞きました。




医政局総務課医療安全推進室
医療安全対策専門官
栗原健
医学部を卒業後、総合内科医として勤務。米国での研修中に医療の質・患者安全分野と出会い、本分野の重要性を知る。その後、一般病院や大学病院で医療安全の専門の医師として勤務し、経験を積む。今年4月より現職。



行政と医療機関の連携が患者の安全に寄与

 私は、今年の4月から医療安全対策専門官に着任しました。着任前は、医療安全を専門に大学病院で医師として勤務していました。

 医療安全(患者安全)という分野は、医療の安全を確保するために医療の事故などをどのように防ぐか、また起こってしまった医療事故の再発をどのように防止するかを検討し、対策を講じるものです。病院のなかで取り組んでいたころから医療安全の分野が、行政や制度とのかかわりも大きく、行政と医療機関の連携が患者さんの安全に寄与するということを感じていたため、現在の仕事に就きました。

 現在、病院から行政官へと立場を移していますが、あえて医療安全への取り組みのスタンスは変えないようにしています。なぜなら行政も医療現場と目線は違っても、「何ができるのか」を考えて仕事をしているという点では同じだと思うからです。

 そして、医学のなかで比較的新しい分野であるこの医療安全という学問の成果を、どのようにして医療の現場に還元できるかということも考えていければと思っています。





国際的にも医療安全の重要性は増している

 また、医療安全に関する制度だけではなく、患者安全サミットなどの国際的な医療安全の取り組みの一部も担当しています。

 そのため、イギリス、ドイツ、スイス、サウジアラビア、日本が中心国となり、WHOの担当者も含めて、定期的に会議を開催しています。この「世界患者安全の日」へ向けて、各国でどのような取り組みを行っているのかを情報交換したり、国際的にどう盛り上げていくのかについても話し合っています。

 こうした国際的な取り組みにおいても、コロナ禍といえども医療安全の重要性は増しているという認識を共有しています。医療安全への意識を高められるよう取り組んでいきたいと思っています。

 今後も学会や団体などと協力して、医療従事者だけでなく、患者さんも含めて医療安全への意識を高めてもらえるように、さまざまな仕掛けを考えていきます。








 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年12月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省