未来(あした)のつぼみ


大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。
ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきをご紹介します。





「同一労働同一賃金」の実現に向けて一歩一歩

 パートタイム労働者・有期雇用労働者の公正な待遇の実現に向けて、昨年4月1日に「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されました。いわゆる「同一労働同一賃金」がいよいよ本格稼働したことにより、当課には、この法律を浸透させるというミッションが与えられました。

 私は、法律の施行日にこの課に配属され、そこから「同一労働同一賃金」と向き合う日々が始まりました。

 まずは、このミッションを達成するため、私がすべきことは何だろうと考えました。法律の施行に向けて周知を進めてきているなかで、企業の方からは、「『同一労働同一賃金』の考え方はわかったが、具体的にどのように取り組んでいったらいいのだろう」、「何から始めたらいいのだろうか」といったような声をいただいていることがわかりました。

 そこで、ほかの企業の取り組みを知ってもらうといいのではと考え、先行して「同一労働同一賃金」に取り組んでいる企業の事例を集めることにしました。各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に依頼して、企業に対し、どんな取り組みをしているのか、どのような効果があったのかなどを聞き取りしていただきました。それらをまとめ、「パート・有期労働ポータルサイト」に掲載しました。



 現在、39件の事例が掲載されています。どの事例も、パートタイム労働者・有期雇用労働者の仕事内容と待遇を整理し、どのように制度を変えるか考え、労使で話し合いを重ねて制度をつくり上げ、社員に説明する、といったプロセスを経ており、「自社の社員の待遇を良くしたい」という気持ちにあふれたものばかりです。

 企業の方からの問い合わせを受け、サイトを案内して事例を紹介すると、「イメージがつかめた」とのコメントをいただけることもあり、このようなときは、事例収集をやってよかったといううれしさとやりがいを感じるとともに、少しずつ「同一労働同一賃金」の実現に近づいていることを実感します。

 法律を守っていただくために、行政として企業を「指導する」という方法があります。しかし私は、使用者と労働者が話し合い、お互いに納得して働ける環境をつくることの大切さに気づいてもらうことが大事で、そうして初めて「同一労働同一賃金」を理解してもらえたと言えるのだと考えています。

 日々新たにできることを考え、粘り強く一歩一歩進んでいくことが、企業と労働者の方の幸せにつながると信じて、これからも取り組みたいと思います。




 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年9月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省