オンライン資格確認の本格運用が10月にスタート

今年3月末に開始予定だったオンライン資格確認の本格運用が、保険者の登録情報の正確性を担保する仕組みを整えた形で10月にスタートします。厚生労働省保険局医療介護連携政策課の山下護課長に、これまでの経緯と、改めてオンライン資格確認の活用のメリットについて聞きました。

※オンライン資格確認:医療機関や薬局の窓口で、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等を利用して患者の資格情報等を確認すること





保険者の登録情報の正確性を担保


──3月末からの本格運用を予定していましたが、10月に延期されました。その理由と、これまでの経緯について教えてもらえますか。

山下●3月上旬から「プレ運用」という形で、一部の医療機関・薬局を対象にシステムの運用を開始していたのですが、保険者が登録した情報に一部誤りなどがあることが発覚し、データの正確性担保の観点から課題があることが明らかになりました。そのため、データの精度を高める仕組みを構築する必要があると判断し、本格運用の時期を延期することにしました。
 対応策として、3月31日から保険者が新規加入者を登録する際、過去に別保険者が登録した「個人番号+生年月日」と突き合わせ、差異がある場合に検知する仕組みを導入しました。さらに、6月末からは中間サーバーなどへの新規登録者を検知したうえで、自動的に住基ネットへ照会するなど、ヒューマンエラーをチェックする仕組みを構築して、データの精度を高めています。これにより、現在は情報の正確性が担保され、安心してシステムを活用いただける状態になっています。


──3月までに準備を整えていた医療機関や薬局もあったと思いますが、それらの施設も10月まで運用を延期しなければなりませんか。

山下●その必要はありません。顔認証付きカードリーダーの設置と、パソコンのセットアップ・ネットワーク設定を済ませた医療機関・薬局は、今すぐ運用を開始いただけます。本格運用の直前直後は運用を始める施設が急増することが考えられるため、厚労省では9月末までを「集中導入期間」と位置づけ、各施設に余裕を持って導入・運用してほしいと呼びかけています。
 顔認証付きカードリーダーの申込数はすでに約13万施設(全施設の57%)に達しており、病院では77%、薬局では80%を超えています(6月20日現在)。すでに運用を始めた施設からは、「初診患者の資格入力の手間が大幅に省けた」「資格確認が即時に行え、業務効率が向上した」といった声が聞かれます。


──導入に費用がかかることを懸念している施設もあるようです。

山下●環境整備にかかる費用については、2023年3月までにシステム導入を完了し、同年6月末までに申請すれば、国から補助が出ます。システム使用料はかからず、患者の本人確認が速やかに行え、業務の効率アップが図れるので、導入のメリットは大きいと考えています。




自分の医療情報を確認し治療に役立てる時代に


──より効果的なシステム運用には、患者のマイナンバーカードの取得が推奨されますので、マイナンバーカードの普及率向上も課題といえます。

山下●現在マイナンバーカードの申請・交付件数は伸びており、現在の交付率は33%、総人口の3人に1人が取得しています。この方々が健康保険証としてマイナンバーカードを利用する可能性があることを踏まえ、医療機関や薬局には環境整備に早めに取り組んでいただきたいと思います。また、マイナンバーカードの健康保険証利用については、今後も、より多くの国民に知っていただけるよう広報に力を入れていきます。


──改めて、マイナンバーカードを健康保険証として利用することのメリットについて教えてもらえますか。

山下●これまで、患者が医療機関で受けた治療の内容や処方された薬の情報については、患者個人の情報であるにもかかわらず、本人が自由に閲覧したり使用することが困難でした。しかし、マイナンバーカードの健康保険証利用により、レセプト(医療機関等が交付する報酬の明細書)の薬剤情報を自分で確認したり、自身が同意することで医師や薬剤師と共有したりすることができるようにもなります。10月から、医療機関で処方された薬の情報(調剤日、医薬品名、成分名等)と、特定健診情報が閲覧できるようになります。
 初めて受診する医療機関で、医師から、過去にどんな薬を服用したかを聞かれる場合がありますが、その際、薬の名前が思い出せないこともあるでしょう。いつどんな薬を処方されたか、といった情報が手元にあり、それを医師に提示できるようになれば、自分に適した医療が安全に、かつ効率的に受けられるようになります。
 より多くの人に、自分の医療情報を適切な治療や健康増進に役立てていただくために、マイナンバーカードの健康保険証利用へのご協力をお願いしたいと思います。


 

 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年8月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省