不妊治療と仕事の両立のサポート―職場における支援のあり方とやり方―


晩婚化などにより近年、不妊治療を受ける夫婦は増えています。働きながら治療を受けている人が増えてきている一方で、両立ができずに離職した人も少なくありません。本特集では、両立を支援する職場環境づくりのポイントなどを紹介します。

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不妊治療と仕事の現実

厚生労働省が実施した不妊治療の治療中、治療経験者を対象とした調査結果をみると、両立している人が半数を超えている一方で、両立できずに「仕事を辞めた」「不妊治療をやめた」という人もいます。不妊治療と仕事の両立支援は重要な課題です。

職場でのサポート状況

不妊治療をしている労働者の多くは、そのことを会社に伝えていないことも調査でわかっています。支援では、治療中の労働者への十分な配慮が必要です。



サポートがあれば辞めずに働き続けられる
両立できる職場環境づくり

両立するための職場環境づくりのポイントや注意点について、厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課ハラスメント防止対策室の溝田景子室長に聞きました。


「利用する人」に合わせた
柔軟な制度運用を

 治療中の人や治療経験者の仕事との両立状況を見ると、約16%(女性では23%、四人に一人)の人が離職しており、治療と仕事を両立できる職場環境づくりが企業にとって重要な課題となっています。

 両立が難しい理由としては、「通院回数が多い」「精神面で負担が大きい」「通院にかかる時間が読めない、仕事の日程調整が難しい」などの声が多くあげられ、これらの問題を解決することが両立の実現には求められています。

 その解決には、半日単位・時間単位の年次有給休暇制度や、不妊治療に活用できる特別休暇制度、時差出勤・フレックスタイム制度などの多様な選択肢を用意することが望ましいといえます。こうした制度は、「利用する人」の立場に立って柔軟に設計・運用することが重要であり、運用するなかでの見直し・改善も大切です。


不妊治療への理解を
浸透させることも大切

 企業や職場内に不妊治療などへの理解を浸透させることも重要です。「不妊治療を受けていることを職場に知られたくない」という人もいるので、プライバシーの保護に配慮するなど、両立する労働者へのきめ細やかなケアが求められます。

 国としても、安心して治療を受けながら働き続けられる職場づくりを支援するために助成金などを設けています。ぜひご活用ください。



<不妊治療連絡カード>
 不妊治療連絡カードは、不妊治療を受けている、または今後予定している社員が、企業(事業主)に対して、不妊治療中であることを伝えたり、制度を利用する際に状況やスケジュールを伝えるために活用できるカードです。医師や医療機関が記入するので治療中(予定)の証明書にもなり、両立への社内の理解と配慮を求めるツールとしても使えます。

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出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年5月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省