未来(あした)のつぼみ

大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。
ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきをご紹介します。




「共感と信頼」のブランドイメージへ

 「広報」とは、情報の受け手とのコミュニケーションです。良い広報をすれば国民からの信頼を高めることができますが、広報次第でそれを損ねることもあります。広報誌は、伝えたい情報を直接発信できるメリットがあります。しかし、広報誌『厚生労働』は、難しい専門用語の羅列が印象的で、国民の方にはどう映るのだろう、と以前から感じていました。

 そんななか、厚生労働省では広報室が中心となって、「共感と信頼」のブランドイメージを醸成していく大きな流れをつくろうとしていました。そして、その流れのなかで出版社協力のもと、省全体を巻き込んで、「職員の思い」を国民に届ける「顔が見える広報」の取り組みが始まりました。

 まず実行したのは、政策を担当する職員が個人名と顔写真入りで、自身の思いを交えてわかりやすく伝える誌面への刷新です。記事は「#厚労省職員インタビュー」のハッシュタグを付けて、SNSの公式アカウントでも配信。拡散力が強い一方、字数の制限があるために誤解を招きやすいSNSでは、たった140字の投稿文にも心を砕きました。

 その後、厚生労働行政モニターの皆さんに記事に対する印象を聞いたところ、「好印象」の方が75%以上、その最多の理由が「厚生労働省に親近感が湧いた」でした。身近な読者からも「“霞ヶ関官僚”の気難しいイメージが一変した」「意外にも若い職員が政策担当と知り驚いた」などの声があり、思い描くゴールに近づく確かな手応えを感じました。

 その一方で、「政策的な話ばかりで表面的だ」「国民一人ひとりの苦労に思いを寄せるべきだ」など、厳しいご意見もありました。このため、国民の皆さんが直面している厳しい現実を学ぶ機会をつくり、そこで職員が感じたことをありのままに発信できないか―そう模索し立ち上げたのが、職員参加型の勉強会、そして、その広報誌掲載です。「社会のリアル」をテーマに、各分野で困難を抱える人を支援する実践者を講師とした勉強会を職員自らが企画するもので、社会の厳しい実情から感じた職員の思いを赤裸々に誌面に取り上げています。多方面との調整が必要な試みですが、これによって、「広報」に対する職員の意識が確実に変化してきていることを実感しています。

 この取り組みに携わり、さまざまな職員の思いに触れることで、施策・制度は常に「ひとの思い」に動かされていると感じました。「千里の道も一歩から」をモットーに、これからも「共感と信頼」のブランドイメージの醸成のために、継続的に職員の思いを届ける広報を積み重ねていきたいと思います。








 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年3月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省