個人ではなくみんなで考えよう!!児童虐待を防ぐ社会をつくる


 児童虐待は、誰もが望まないことです。多くの人はそのことをわかっているのに、児童虐待相談対応件数は増加の一途をたどっています。

 保護者のプレッシャーや孤立、地域のつながりの希薄化など、さまざまな要因が児童虐待へとつながります。児童虐待防止に向けて何かできることはないか、一人ひとりが考えてみませんか。



●児童虐待の定義とその現状
 児童相談所での児童虐待相談対応件数は毎年、一貫して増え続けており、2019年度には19万件を超えました。また近年、何人ものかけがえのない子どもの命が虐待によって失われる事件が発生しています。こうした状況を受けて、国は2019年6月に児童福祉法等改正法※を成立(一部を除き翌年4月から施行)させ、保護者による児童への体罰の禁止などを法定化しました。




●児童虐待の定義は4つ
 児童虐待は大きく、次の4つに分けられます。令和元年度の速報値では、心理的虐待件数が50%を超え、次いで身体的虐待件数が25%前後に上っています。単独で発生する場合もあれば、幾つかが複雑に絡まり合って起こる場合もあります。




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児童虐待を防ぐために……

国として児童虐待防止にどのように取り組んでいるか、虐待防止対策推進室の山口正行室長にお聞きしました。



子ども家庭局家庭福祉課
虐待防止対策推進室長
山口正行


◎妊娠期から子育て期まで切れ目ない支援を

 厚生労働省では、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を通じて、妊娠や子育ての不安、孤立等に対応する取り組みを進めています。

 具体的には、母子保健から子育て支援までのサービスを一体的に提供する「子育て世代包括支援センター」を、今年度末までに全市町村で設置できるよう取り組んでいます。また、乳幼児健診未受診者や未就園児を把握し、必要な支援が行き届くよう努めています。

 コロナ禍にあって、子どもを見守る体制を強化するため、子ども食堂や子ども宅食を活用して子どもの状況把握を行う取り組みを支援しています。また、児童相談所虐待対応ダイアル「189」を無料化し、子どもや保護者からのSOSの声をいちはやくキャッチできるよう進めています。

 児童虐待発生時に、子どもの安全確保のための初期対応が迅速・的確に行われるよう、児童相談所について、虐待対応に当たる児童福祉司を約2,000人増やし、子どもの心理的ケアを行う児童心理司を2022年度までに約800人増やすとする計画を一年前倒しし、来年度までにこれらの体制確保をめざしています。あわせて、弁護士や医師、保健師の配置を進めており、市町村についても、虐待相談の拠点となる「子ども家庭総合支援拠点」を、2022年度末までに全市町村で設置できるよう取り組んでいます。

 虐待により親のもとで暮らせない子どもについては、里親委託の推進や、児童養護施設の小規模化・地域分散化を推進し、より家庭に近い環境での養育を進めています。

 2019年6月に、児童虐待防止対策の強化を図るため、子どもの権利擁護や、児童相談所の体制強化及び関係機関間の連携強化等を内容とする児童福祉法等改正法が成立しました。厚生労働省では、体罰等によらない子育てを広げるため、ポスターやリーフレット、啓発動画等を作成し、周知広報に取り組んでいます。また、児童相談所の専門性を高める観点から、医師及び保健師の配置義務規定が創設され、2022年4月からすべての児童相談所でこれらの専門職の配置が必要とされました。

 ほかにも児童虐待については、DVとの関係が強いことが指摘されています。このため、児童虐待防止対策とDV対策との連携強化規定が創設され、婦人相談所や配偶者暴力支援センターとの連携協力を図ることとされています(2022年4月施行)。



 

 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年2月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省