「心の健康」を語り合おう


INTERVIEW
不安や悩みを気軽に相談・理解し合える社会へ


 ストレス社会に加えて、今年は新型コロナウイルス感染症拡大により不安や悩みが増している人も少なくないことでしょう。そんな時代だからこそ、「世界メンタルヘルスデー」をきっかけに、身近な人と心の不調について語り合い、理解を深め支え合える社会づくりが大切になっています。




友利久哉
社会・援護局
障害保健福祉部精神・障害保健課
医療観察法医療体制整備推進室
室長


核家族化、コロナ禍の影響で
心の調子を崩すケースも


 ストレス社会といわれる今、心の調子を崩すことは珍しくはありません。一方で、心の病というものは、「見えづらい」、「言いづらい」というイメージが強く、無理解や偏見を生むこともあります。誰もが抱えがちな不安や悩みを、みんなで考え、正しく理解してもらうためには、「メンタルヘルス」についての普及啓発活動が求められます。

 核家族化が進み、さらに今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、他人とのコミュニケーションが減ってきています。気軽に相談したり、打ち明けることができていた悩みを、人とのかかわりが減ったために自分自身のなかに抱え込んでしまい、心の調子を崩すケースもあります。

 「世界メンタルヘルスデー」は、心の不調に関する偏見をなくし理解を高めようと、世界精神保健連盟が1992年に制定しました。WHOも承認し、国際的に知られるようになってきています。今年の「世界メンタルヘルスデー」は、「つながる、どこでも、だれにでも」をテーマに、心の健康に欠かせない〝人とのつながり〟を大切したイベントが実施されました。


心の不調を感じたらまずは相談を

 気持ちが落ち込んだり、不安になるといった心の不調は、どんな人にも起こります。このとき、一人で悩みを背負い込んでしまうと、抜け出せずに、どんどん負のサイクルに陥ってしまうことがあります。

 特に今は、新型コロナウイルス感染症の影響で思うように外出できず、一人だけの環境にこもりがちです。不安や苦しさがあれば、まずは身近な人に相談してみるのが一番ですが、話せる人がいない場合は、公的機関の相談窓口を利用してみてください。各都道府県に1~4カ所設置された精神保健福祉センターや、各市区町の保健所には、悩みや不安を相談できる窓口があります。電話やメールででも、自分の気持ちを打ち明けてみること。話すことで自らの心の状態がわかり、悩みが軽くなることもあります。


周囲の人ができることは?

 身近な人に心の不調を告げられた場合は、決して相手の話を疑ったり否定したりせず、真剣に耳を傾けてください。また、「顔つきや電話の声がいつもと違う」「元気がない」など、何らかのサインに気づいたときには、ぜひ声をかけてみてください。

 悩んでいる人が自分から相談を持ちかけることはとても難しく、「元気? 大丈夫?」という何気ない一言をきっかけに話しやすくなることもあります。必要であれば、関係機関や相談窓口などを紹介するのもいいでしょう。

 「世界メンタルヘルスデー」をきっかけに、心の健康について、みんなで考えてみてはいかがでしょうか。



広報誌『厚生労働』2020年11月号
発行・発売:(株)日本医療企画

 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2020年11月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省