特別企画


特別企画:新型コロナ流行の今だからこそ
きちんと知りたい「依存症」


 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、外出自粛の日々が続いています。段階的に緩和されてきていますが、自宅でつい飲みすぎていませんか? ゲームをしすぎていませんか? 不安感が強くなり、薬物やギャンブルにはまり込んでいませんか?こうした状況だからこそ、自覚がないままに特定のモノや行為にのめり込んでしまう依存症に気をつけたいものです。ここでは改めて、依存症とその怖さについて考えてみましょう。


Part1 INTERVIEW
病気だという認識を持つ


石塚哲朗さん
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課
依存症対策推進室 室長




 依存症を他人事のように捉えている人、病気だと認識していない人――。皆さんは、依存症について考えてみたことはありますか? 依存症の怖さや、“今”だからこそ気をつけたいことについて解説します。


だらしない・意志が弱いという問題ではない

──依存症とは?
石塚●依存症は、アルコールや薬物などの物質、ギャンブルやゲームなどの行為といった、特定の物質を過度に摂取したり、行為にのめり込んだりすることで脳の機能に異常をきたしてしまうものです。つまり、自分でコントロールできなくなる“病気”です。


──依存症の怖さを教えてください。
石塚●依存症になると、日常生活や学業・仕事などの社会生活に、さまざまな悪影響が出ます。薬物やアルコールの飲みすぎは健康に障害を引き起こしますし、ギャンブルへの依存は借金につながることも……。本人はもちろん、家族などの周囲の人も困る状況に陥ってしまうのが依存症の怖さです。


──依存症について、世の中で誤解されていることはありますか?
石塚●依存症は、単純にだらしない、意志が弱いという問題ではありません。そもそも依存症が病気だという認識を持っている人は、少ないのではないでしょうか。周りが気づいたとしても家庭内だけで解決しなければと思ってしまいがちですが、依存症に対応した相談機関や医療機関での支援、自助グループ ※の活用により、回復を図る(依存対象物・行為に頼らない生活を続ける)必要があります。
 まずは病気だという認識を持ってもらい、早めに治療・支援につなげてほしいです。


──新型コロナウイルス感染症が流行している現状で、どのような点に注意すればいいでしょうか?
石塚●今年は、新型コロナウイルス感染症の流行もあり、これまでと状況が大きく異なります。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で不安になったり、外出自粛で孤立感を抱いている人もいると思います。もともと依存症は、不安や孤立感を紛らわせるために陥ってしまうことが多いと言われているので、今年のこの状況は依存症を増やしてしまう危険性があります。
 また、オンライン飲み会やオンラインゲームなども話題になっていますが、自宅での飲みすぎによるアルコール依存症や、時間を気にせずにゲームをしてしまうことによるゲーム依存症などにも気をつけたいところです。


──本日はありがとうございました。

※依存症の体験などを共有しながら、回復をめざす依存症当事者または家族のグループ。


 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2020年7月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省