特集

HACCPの考え方を取り入れて
食の衛生管理を“見える化”する



 HACCP(ハサップ)という言葉をご存じですか?
 来年6月から皆さんが口にする食品は、HACCPと呼ばれる手法で衛生管理されるようになります。本特集では、HACCP導入の必要性やその方法、メリットについてお伝えします。

HACCPとは
 Hazard Analysis and Critical Control Point の略称で、「危害要因分析重要管理点」という意味になります。これは、食品を扱っている事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因(ハザード)を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のなかで、その危害要因の除去・低減のために特に重要な工程を管理し、食品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。


食や食品をめぐる環境が大きく変化

 2018年6月に公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律」で、「HACCPに沿った衛生管理の制度化」が盛り込まれました。
 そもそも食品衛生法改正の背景には、ここ数年の共働き世帯や高齢者単身世帯の増加に伴う、調理済み食品・外食・中食の需要拡大、そして食のグローバル化など、食や食品を取り巻く環境の大きな変化があります。また、都道府県を超える広域的な食中毒の発生や、食中毒発生件数の下げ止まり、食品による健康被害への対応も緊急の課題でした。
 今回の法改正では、食品等事業者の皆さまがこれまで日々行ってきた一般衛生管理をHACCPの考え方を取り入れて再確認していただき、その内容を第三者が見てもわかるように書き出す(「見える化」する)ことで、衛生管理のレベルアップを図っていこうとするものです。


中小規模の事業者への普及率は約3割

 1995年に任意の制度としてスタートしたHACCPの導入ですが、そこから20年以上経過しても、普及率は中小規模の事業者では約3割にとどまっています。これまでの食中毒の発生施設の多くは、飲食店などが占めており、飲食店などの中小規模の食品関連事業者の衛生管理は喫緊の課題です。HACCPの導入は、日々取り扱う食品の安全性の確保や不適切な食品の早期発見にもつながるので、その普及率を上げていく必要があります。



 

出  典 : 広報誌『厚生労働』2020年5月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省