海外からの便り/ジュネーブ(スイス)

海外からの便り
厚生労働省から海外へ赴任中の職員が現地の様子を紹介します

ジュネーブ(スイス)

在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官
赤羽根直樹

アルプスの麓で世界の人々の健康を考える

 スイスのジュネーブと聞いて、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか? 多数の国連機関が本部を置く国際都市というイメージやアルプスの山並みを思い浮かべる方もいるでしょう。実際、ジュネーブ州の人口約50万人に対してジュネーブにいる外交官や国際公務員等の数は約3万人ですので、15人に1人は外交官や国際機関職員と言えます。180カ国近い国々から来たこうした人々がアルプスの麓で、世界のさまざまなトピックを日々議論しています。

 そんなジュネーブの国際機関のなかで、保健分野の最近20年くらいの動きとして見るべきものが官民パートナーシップの活躍です。代表的なものとして、世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンドとも呼ばれます)やGaviワクチンアライアンスといった機関があります。

 これらは1990年代、アフリカなどの所得が低い国々を中心に、エイズ・結核・マラリアの蔓延や予防接種率が上がらないことが課題となり、この解決のために国際社会の要請を受け、2000年初頭に設立されました。

 こうした機関の大きな特徴は、効率的な組織と成果へのこだわりです。組織の点では、途上国などの現地に事務所を置かずに人員を本部だけに置き、既に現地にいる政府・国際機関・NGOをうまく連携させ大きな成果を出すことをめざします。これを実現するため、たとえば、支援の条件にこうした関係者を調整する仕組みづくりを盛り込むといった手法をとります。また、成果についてもさまざまな指標をモニタリングしながら、どうしたら成果を最大化できるか、うまくいっていない分野があればどのように改善したら良いか、国際機関や市民社会なども交えて透明な議論がなされています。

 一見のどかなアルプスの麓のジュネーブでは、こうした官民パートナーシップの取り組みに見られるように、これまでのやり方に飽き足らない人々が新しいことを考え、それを実現しようと日々取り組んでいます。それはさながらどこかの起業村のようでもあります。

*本稿は筆者個人の見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


〈スイス〉
面積:4.1万km2(日本の約0.1倍)
人口:854万人(日本の約0.07倍)



スイスの西端に位置し、フランスに囲まれた地域。小都市と国際都市の2つの顔を持ち、時計産業、銀行業などでも広く知られている。


 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2020年4月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省