特集

里親が築く親子の絆
これからの家庭の在り方


 さまざまな理由で親と暮らすことができない子どもたち。そんな子どもたちを家庭で育てる「里親制度」について、10月の里親月間に合わせて解説します。新しい家族のカタチを、一緒に考えてみませんか。


◎里親制度とは
 虐待や親がいないなどの理由・事情で、親のもとで暮らすことのできない子どもたちが、日本には約4万5,000人います。そんな子どもたちのために「里親制度」があります。里親制度は、子どもと里親候補者との相性を重視してマッチングを行い、子どもを委託するものです。同制度により、子どもたちに親からの温かい愛情と、子育てや子どもの成長について理解のある平穏な家庭環境での生活を提供することができます。


◎里親の種類
里親には、養育里親・専門里親・養子縁組里親・親族里親などの種類があります。また、自治体によっては、週末里親や季節里親※など、特定の期間だけ養育するものもあります。里親になる条件や期間、対象となる子どももそれぞれ違います。

<養育里親>
 18歳未満の子どもを、自立するまでの間や、家庭に戻るまでの間、養育を行います。期間は1年以内の短期の場合もあれば、それ以上の長期の場合もあります。

・専門里親
 虐待で深く傷ついている子や、障害のある子、非行傾向のある子が対象です。里親の期間は基本的には2年以内です。


<養子縁組里親>
 養子縁組を結ぶことが前提です。養子縁組が成立するまでの間、里親として一緒に生活します。特別養子縁組の場合、成立すると戸籍上も親子になります。


<親族里親>
 両親が病気で長期間入院し、子どもを養育できなくなった場合や、死亡してしまった場合などに、子どもの3親等以内の親族がなることができます。

※週末里親・季節里親
 週末や夏休みなどを利用して、一時的に養育を行います。
 (児童福祉法上の里親ではありません。自治体によって制度の有無がみられ、名称も異なります)


-----------------------------------------------------------------------------------------

里親になっても安心!
全国で始まっている里親への支援
公益財団法人全国里親会事務局長:堀切健司さん

◎里親ではない人にも里親制度を知ってほしい
 里親会は現在、各都道府県と政令指定都市(熊本市と新潟市を除く)に、計66カ所あります。当事者団体であり、自治体や児童相談所、社会福祉協議会と一体となって里親支援にあたっています。ここではサロン8-9等で情報交換や交流を図ったり、制度に関する研修会などを行っています。

 「里親会は、里親や子どもたちが集う機会を多く設けており、交流を深めています。里親ではない人たちにも制度を知ってもらい、理解したうえで地域の仲間として支援いただけるとうれしいです」と、日本各地にある里親会を取りまとめている公益財団法人全国里親会事務局長の堀切健司さんは話します。


◎全国の取り組み

<里親サロン>
仲間づくりの場に

 地域の里親が集まり、近況や日々の子育てでの悩みなどを話す「里親サロン」。里親や子どもの仲間づくりの場にもなっており、同じ立場で一緒に悩み、相談し合ったりすることもあれば、新規の里親の歓迎会を開くこともあります。サロンを通じて、児童相談員や医療従事者など専門家でなければ解決しない問題があがってきた場合は、参加者の了承を得て専門家に意見を聞くことも。開催頻度は、地域によってさまざまです。また、里親をめざして研修を受けている人が、先輩となる里親の経験談を聞きに来ることもあります。






<全国大会>
日本中から里親が集まる

 年1回の全国大会を全国里親会が開催しています。各県ごとの取り組みや、里親に関する調査・研究の発表などが行われます。毎年、約700人の里親や里親に関わる人たちが全国各地から参加します。自分の所属している里親会以外の里親との交流ができ、子どもの成長や里親の役割、虐待の問題などについて学び、考える機会になります。64回目となる今年の大会は10月に宮城県で開催され、大会テーマは「子どもの最善の利益を追求し、里子の未来を応援する"里親人生"~夢と希望をもって共に育ち合うために~」です。


<里親パパさん会/ユースの会>
父親・子ども同士が交流

 里親のパパ同士の集まりが開かれている地域もあります。夕方から夜にかけて開かれ、里親に関わる地域の情報交換をしています。専門里親同士の場合は、医療機関や相談先などについても教え合っているそうです。
子ども同士が交流する会もあり、名前は「ユースの会」や「ちびっ子サロン」などいろいろです。ここでは、子どもが集まってレクリエーションをしたり、遊んだりします。子どもだけで遊んでいる間に、里親同士が交流することもあります。


<里母(さとはは)の集い>
里母同士が悩みを共有

 里親になった母親は日常生活において、子どもと一緒に多くの時間を過ごします。そのなかで生じた不安や悩みを一人で抱えるのではなく、母親同士で共有する場が「里母の集い」です。年に一度、全国里親会が開催し、毎年100人以上が参加しています。子どもの成長段階に合わせた悩み、そのときの対応策などを母親同士で話し合います。また、三重県では、里母が呼びかけ朝食会を開催しています。里親でない人も参加しており、里親について知ってもらう場になっています。



 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2019年10月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省