第28回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会議事録

 
          第28回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会
 
 
                                      日時 平成29年9月1日(金)
                                            13:00~
                                      場所 新橋8E会議室
 
 
○医療機器審査管理課長 定刻となりましたので、ただいまから第28回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会を開催いたします。本日は、御多忙のところどうもありがとうございます。小林委員、木村委員、加納委員がまだお見えになっておりませんが、特に連絡はございません。恐らく、少し遅れて来られるのだと思っておりますので、開催させていただきます。
始めに、委員の交代についてお知らせします。千葉敏雄委員が一身上の御都合により辞任されましたので、後任として本日御欠席ですが、九州大学大学院小児科学分野教授の田口智章先生に、新たに委員に御就任いただきました。
また、事務局にも人事異動がありましたので御紹介します。医薬・生活衛生局長の宮本です。
○医薬・生活衛生局長 厚生労働省のこの夏の異動で医薬・生活衛生局長を拝命いたしました宮本と申します。5年ぶりに医薬局に戻って参りましたが、少し浦島太郎になっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日、お忙しいところ本当に恐縮ですが、忌憚のない活発な御意見を頂ければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○医療機器審査管理課長 続きまして、私もそうでして、磯部の後任として医療機器審査管理課長になりました中井です。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の委員の出欠状況について御報告します。本検討会21名のうち、現在12名ですが、残り3名の方がいらっしゃるかと思いますので、合計15名の御出席の予定です。また、本日、検討品目に関する専門家として、ワーキンググループ1から千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科教授の岡本美孝先生に、参考人として御出席いただいております。
それでは、以降の議事進行については座長にお願いいたします。
○今野座長 今野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最初に事務局より配付資料の確認をお願いします。
○事務局 議事次第の裏側に配付資料の一覧がありますので、これに従って御確認をお願いします。資料の数が多いため、資料のタイトルは省略します。資料1-1から資料1-3までが、今回御審議いただく品目の資料です。資料1-2、要望書の添付資料である論文については、別冊として紐でとじたものを御用意しております。適宜御参照ください。資料2-1から資料2-5まで、ひとまとめにしてホチキス止めにしています。資料3は、A4で1枚の資料です。資料4-1から資料4-3まで、ひとまとめの資料としてホチキス止めにしております。資料5もホチキス止めの資料です。参考資料1~4をひとまとめにしております。
最後に、当日配付資料として、「当日配付資料(会議後回収)」と書いた資料をお配りしています。こちらは会議後回収しますので、お帰りの際は机の上に置いてお帰りください。傍聴の方にはお配りしておりませんが、同じものを映写しますので、そちらを御覧いただければと思います。過不足等ありましたら、会の途中でも差し支えありませんので、事務局にお申し付けください。これより議事に入りますので、傍聴されている方によるカメラ撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願いいたします。
○今野座長 資料はおそろいですか。
それでは、議事に入ります。今日は審議事項が1件、報告事項が4件あります。審議事項1は、十分時間を取っておりますので、いろいろな御意見を頂ければと思います。議題1「早期導入品目の選定について・手術用ロボット手術ユニット」です。事務局から進行の説明をお願いします。
○事務局 資料1のシリーズを御用意ください。資料1-1から資料1-3まであります。資料1-1はワーキンググループによる評価結果の資料です。資料1-2は要望学会から提出された要望書です。資料1-3は本ロボットを用いた咽喉頭がん手術について先進医療が実施されており、その評価表です。今回要望があった手術用ロボット手術ユニットについて御審議いただきます。品目及びワーキンググループ評価結果について、参考人としてお越しいただいた岡本先生から20分程度で御説明をお願いします。その後、30分程度質疑応答の時間を取りたいと思います。
利益相反に関する申出の状況について御報告します。本検討会では、検討対象品目について関与又は特別な利害関係を有する場合は、当該品目に関する議論及び選定可否に係る議決には参加してはならないとされております。本日の審議事項に関する影響企業について、寄付金・契約金の受取状況をお伺いしたところ、本日御出席の委員及び参考人の先生の中で議論・審議に御参加いただけない方はいらっしゃいませんでした。
また、要望提出学会の執行部に在籍する委員は、当該品目の選定に係る議決には参加してはならないとされております。今回御審議いただく品目は、日本耳鼻咽喉科学会が中心となって、日本頭頸部外科学会、日本頭頸部癌学会と共同で要望を頂いたものです。所属学会について確認したところ、小川委員と木股委員がこれら3学会の理事会のメンバーですので、議題1について御議論には参加いただけますが、議決には御参加いただけません。
それでは、岡本先生、よろしくお願いします。
○岡本参考人 スライドを使って御説明します。スライドの内容はプリントにもされておりますが、頭頸部領域は少し馴染みが薄いかと思いますので、まず解剖のことに簡単に触れさせていただきます。
画面に出ているのは、顔の矢状断を見ているものです。鼻から内視鏡を挿入していきますと、まず鼻腔が出てきます。鼻腔の先に内視鏡を進めていくと、上咽頭が出てきます。咽頭も鼻の突き当たりから食道の入口まで比較的長さがありますので、上咽頭、中咽頭、下咽頭と分類が行われています。内視鏡を更に進めていくと、これは中咽頭、喉頭に入るところです。舌根が映っています。内視鏡を喉頭の方に進めると喉頭が出てきますが、これは声帯を見ているところです。このように頭頸部領域、特に上気道、あるいは消化管の入口ということで、吸気は鼻から入り、鼻腔から咽頭、上咽頭、中咽頭、喉頭に入っていきます。食事の方は口から入り、そのまま中咽頭から喉頭の後ろにある頸部食道に入っていきます。この頭頸部、特に咽頭、喉頭領域は、消化管の入口、呼吸道の入口として働いておりますし、機能としては嚥下、発声に非常に重要な働きをしております。
咽頭の区分は少し分かりにくいかと思いますが、右に書いてありますように、頭蓋底、鼻の突き当たりから口蓋、硬口蓋と軟口蓋からなりますが、この口蓋の境付近までを上咽頭と区分しています。ですから、軟口蓋は中咽頭に属することになります。中咽頭はその部分から下、これは舌根、舌の突き当たりですが、舌根の基部の喉頭の蓋の境、喉頭蓋野、あるいは喉頭蓋谷までが中咽頭とされています。下咽頭は、そこから更に食道入口部までを下咽頭と分けて分類されています。これは解剖学的な分類になっています。喉頭は、下咽頭のこの部分に声帯、仮声帯というものがあって、発声に重要な働きをしている部分です。
ワーキンググループにおいて検討された評価結果について御報告します。今回、このロボットを用いた手術は、対象疾患として早期に発生したがん、中咽頭並びに下咽頭、喉頭がんで比較的早期のがんを対象にしています。国内では、口腔・咽頭喉頭がん、口腔も一部軟口蓋等も口蓋領域に含まれますので、これらも含めると年間2万5,000人ぐらい発症しているとされています。頭頸部がんは世界的には50万人ぐらい発症して、6番目に多いがんと統計ではされています。国内では、増加はしていますが、比較的まだ少ないがんとされています。今回の対象になるのは、このがんのうちTis、T1、T2症例の一部ということで、大体年間5,700名ぐらい発症しているのではないかと考えられています。
これまでのこのようながん、早期の中咽頭、下咽頭、喉頭がんに対しては、国内外のガイドラインいずれも放射線治療、あるいは手術治療が標準的治療として掲載されています。放射線治療は、成績は手術治療と特に差はないと評価されていますが、欠点としては口内乾燥、味覚低下、嚥下障害、放射線による誘発がんの問題、多重がん、特に口腔咽頭がんは多重がんの発生が10~30%と報告されていますが、重複、後発することが少なくない食道、頸部食道、口腔等の多重がんへの対応が、放射線治療を一旦行った場合の課題として挙げられています。
一方手術治療ですが、手術治療は従来は頸部からの外切開で行われていました。視野が取りやすいという大きなメリットがありますが、負担が大きいデメリットがあります。特に気管切開は通常不可欠ですので、そういった意味で外切開は患者の負担が大きいという問題がありました。近年、経口的な切除が少しずつ発展してきましたが、国内外のガイドラインでも早期がんでは推奨されています。通常は口腔から顕微鏡等を用いてアプローチされていましたが、大きな短所としては視野の確保が十分ではない、切除操作をする場合の自由度に大きな制限が掛かってしまうというのが、課題として挙げられることが現状だと考えられました。現在、経口の手術治療の進歩が見られていますが、その背景には、特に日本でNBI等の内視鏡の手術が非常に発達してきたということもあります。また、表在癌の診断技術が非常に向上したと。従来は明確にならなかった、検出が非常に困難だった早期がんの検出も十分可能になったことが1つあります。そういうことも基にして、低侵襲の治療の検討が進められてきました。
その結果、1つはTransoral videolaryngoscopic surgeryで、従来の喉頭がんの治療等に用いられましたが、口から顕微鏡あるいは硬性の光源を用いて、右に示したように切除を行う方法が発展しました。もう1つは、消化管内視鏡の手術に、ここから派生したと思われますが、軟性の内視鏡を用いてEndoscopic laryngo pharyngeal surgeryが発展してきました。これは右の図の下に示しているように、喉頭を展開した上で、内視鏡を用いてそこに経口的に鉗子を入れて切除をするという方法です。そして、もう1つ、今回のロボット支援手術が開発されてきました。
今回のロボットを用いた手術、いわゆるda Vinciの手術は、このようにコンソール、操作ボックスがあって、これを見ながら切除をするというものです。後でビデオをお見せしますが、術野の特徴としては多関節の鉗子が使えること、また、三次元の視野で、内視鏡で立体的に、非常に高解像で視野が確保できるというメリットがあると考えられます。このロボットアームも、徐々に細いアームの作成が進んでいることもあって、このような経口的な挿入で、手のぶれも少なく手術が行えるということが挙げられます。従来の治療法と比較して、放射線と比べて術後の嚥下機能が高く保てることが期待できます。また、従来の手術法に比べて確実な病変切除が可能ではないか、いわゆる断端陽性率が低い、嚥下機能が比較的良好なので、外切開で認められるような気管切開の必要性が少ない。入院期間が短いことが期待できます。そういったことが、特に海外、アメリカでは2008年にFDAで既に認可されており、このような咽喉頭の早期がんに対する治療として認可が進んでいます。その後の特に欧米からの報告を見ると、このような利点が既に論文レビューでも確認されております。
実際の手術ですが、これはELPS、軟性の内視鏡を用いた手術です。引っ張っているのは喉頭蓋で、早期がんの切除をしていますが、このような鉗子を用いて注射をして、少し粘膜を浮かせたところで高周波のメスで切っていきます。ただ、鉗子が先端だけ可動域を持っているので、それが1つ、手術手技として高度なテクニックが要求されるところです。助手が鉗子で引っ張っていくのですが、鉗子に掛かる力の引っ張りやすさというところで少し制限があります。これは国内で特に発達してきた技術ですが、早期がんについてはこのような治療が比較的広く行われてきているのが現状だと思います。私の所属する千葉大学では、まだロボット手術は頭頸部では行われていませんが、このようなEndoscopicなものを用いた内視鏡手術は、現在、年間10例ぐらいの症例数で行っています。
これがロボット手術です。これは京都大学の楯谷先生からお借りしたビデオで、舌根にできた早期の扁平上皮癌に対して切除を行っているところですが、先ほどとの大きな違いは、鉗子、高周波レーザーによる切除が多関節で行えて、把持する能力も非常に高いものが認められるといったメリットがあります。また、3Dの内視鏡なので、非常に視野がいい。口から入れるので、新たな切開創を作る必要がないというのが、今回申請している頭頸部領域以外の部位との大きな違いではないかと考えられます。これが舌根部の早期がんについて手術を行った結果です。
ワーキンググループで検討した結果ですが、従来の経口内視鏡手術と比べて、3D内視鏡によって視野が非常に良好で、立体的な視野も取れるということ、また、お見せしたように多関節の鉗子、あるいは電気メスが使える。器具の相互干渉が少なく、狭い領域でも使い勝手がいい。ただ、一方で手術操作の習熟にはきちんとしたトレーニングが必要であろうということが議論されました。また、これは主に海外の報告ですが、これまでのロボット支援手術の報告について検討したところ、切除断端の陽性率が非ロボット支援手術よりも低いというレビューも出ています。報告も多いこと、術後の胃ろう依存率が従来の非ロボット支援手術よりも低いこと、これもメタ解析がされています。また、気管切開チューブ留置率が非ロボット支援手術よりも低く済んでいます。入院期間について比較した論文もあったのですが、それを見ると、非ロボット支援手術よりも、早期がんであってもさらに1.5~2日ぐらい早くなっており、それは医療費に勘算すると相当なものになるという報告も出ているという結果でした。
ただ、今後必要と思われる評価、あるいは留意事項についても指摘がありました。まず、適正な症例選択が必要であろう。特に今回要望が出ているT1、T2以外にも、T3症例の一部にも適応が広がることが可能生があるのではないかということです。それは国内でのNBIの発達等によって表在性に広がったもの、そういうT3症例については十分適応があるのではないか。また、良性病変、特に舌根部や血管腫、腺腫等の良性腫瘍の発生もありますが、そういうものについても適応が広がるのではないか。小児についても比較的視野の取りやすいことから、ある程度大きな小児については適応拡大も可能だろうと考えられます。ただし、その場合も適正な症例選択が必要で、この治療の大きなメリットである放射線治療を避けられるということです。切除断端陽性で追加の放射線治療が必要になった場合にはメリットが全く消えてしまうので、やはり適切な症例選択が重要であろうということが議論されました。
また、安全で円滑な手術の実施に向けて、プロクター制度のきちんとした策定が必要であろう。適切な教育プログラムについての策定と、それの受講を義務付けること。実施する医療機関の体制作りもきちんとしたものが必要で、あくまでもチーム医療が非常に重要なので、その辺りの体制作りがきちんとされるべきである。関連学会による適正使用のための指針の策定、あるいはProctoring、実施体制がきちんと確保されていく必要があるだろうということが、留意事項として議論されました。
以上の結果から、このワーキンググループでの評価結果では前向きに進めていいのではないかという結論になりました。以上です。
○今野座長 岡本先生、ありがとうございました。結論としては前向きに進めたいということがワーキンググループから示されたわけでありますが、御意見、質問があろうかと思います。いかがでしょうか。
では、私から皮切りに、ロボット支援のほうが、欧米のデータでは断端陽性の話や胃ろう造設で有意の差があるということですが、長期予後、再発形式等のデータは、もうあるのでしょうか。
○岡本参考人 それについては差がないというものと、ロボットのほうがよかったというものもあります。ただ、まだメタ解析等は行われていないと思います。
○今野座長 通常、断端が陽性の可能性がある場合に、放射線治療を追加するというのは普通に行われるのですか。
○岡本参考人 そうですね、それは行われる治療です。
○今野座長 それに入っているのですね。
○岡本参考人 はい。
○今野座長 なるほど。そういうことです。いかがでしょうか。
○鈴木(康)委員 泌尿器科医として一言申し上げさせていただきます。ご存じのように、da Vinciは泌尿器科で相当行われていて、アメリカでは前立腺がんの手術症例の9割以上、da Vinciが使用され、日本でもda Vinciでやるのが一般的になりつつある状況です。私が大学にいた頃は、腹腔鏡までの時代だったのですけれども、少なくとも内視鏡で見るとよく分かるし、更にda Vinciは3Dなので、よりよく分かります。
今、先生から御説明いただいた内容は、そのとおりだと思っておりますし、少なくともda Vinciを使うと出血量、それから病変もきれいに見えるということがあります。それから、腹腔鏡と違い、da Vinciは先生もおっしゃったように多関節なので、ものすごく操作がやりやすいのです。本当に目の前で見ていてサッとできるという感じで、腹腔鏡などは、無間接でやりますから、縫合がすごく大変なのです。世界で初めてフランスで縫合した先生は、4、5時間掛けて縫合されたというような状況なので、腹腔鏡というのは本当に大変なのですが、da Vinciは楽です。
も研修医でも、ちょっと練習すればできるようになる。更に腹腔鏡などではしっかりした指導者が付いてもなかなかあれができないのですが、今のda Vinciというのは、ダブルコンソールになっていますので、指導も非常に簡単なのです。指導を受けている先生に聞くと、教習所で車を指導しているようなものだと。つまり、自分でブレーキを掛けなくても、横の先生がブレーキを掛けてくれるとか、変なところをやろうとしたら、ガチャンと止まって、変なところを切らないようにしてくれるということで、これを進めるということについては、賛成であります。
それから、余り言ってはいけないのかもしれませんけれども、実際は今、da Vinciは日本でも200台以上入ってきて、早期の前立腺がん手術症例の取り合いになっているという現状もあります。病院ではda Vinciを入れると、病院の経営者から何百症例やれと言われてしまうのですね。そうすると、その泌尿器科医は患者を無理に集め、本来だったらホルモン療法とか放射線療法の適応な患者さんまで、da Vinciにもっていくような誘導を、ついついしてしまうというのが現状でありまして、ほかの病気もどんどんやっていただくと、その泌尿器科医に対するプレッシャーも少なくなってくるのではないかということです。
余り言ってはいけないのかもしれないですが、私はそんなに責任のない人間ですので、ちょっと言わせていただきますけれども、本当に今、保険で認可されたのは泌尿器科領域だと、前立腺がんのほかに、腎の部分切除があるのですが、実際には余り症例がないのです。そのような現状もありまして、これを進めることに対しては非常に賛成であるということです。
○今野座長 分かりました。賛成の御意見ありがとうございました。私の施設でもロボット支援手術導入前は、このまま前立腺の手術がなくなるのではないかと思うぐらい減りましたが、既に数十例に回復しました。前立腺がんの手術は、米国はほぼ100%です。胃も初めていますが、外科医にとってストレスが少ない手術です。そういう意味では、今の鈴木先生の進める方向の御意見は、かなり共有されている御意見かと思います。
一方で、そこまで各病院で必要かというぐらい、自治体病院を始めとしていろいろな病院が購入しております。当該の会社にとっては非常に好ましいことですが、果たしていかがなものかとも思っています。
いかがでしょうか。ちょっと待てという御意見もあったほうが、その後進行しやすいのですけれども。
○鈴木(邦)委員 これは機械としてはいいと思うし、これを利用することはいいのですけれども、先ほど出た、例えばイギリスなどでは、ほかの分野ですが、症例が幾つ以上ある病院に限るとか、費用対効果の観点で限定しているのです。そういう視点というのは日本には現在はないのですけれども、要するに日本の今のやり方でいくと、保険を認められればどこでも使えることになるから、非常にある意味では費用対効果が悪いことになるということです。
高額医療機器の適正配置という話もありまして、CT、MRIはもう無理だと思いますけれども、それ以上の超高額機械は、私は適正配置をすべきだと思うのですが、ここの議論はそこにつながらないのです。ここでは費用対効果とかコストの話は少し前まではできないということだったのですが、最近は適正使用推進ガイドラインが、医薬品の中にできていますので、議論はできないわけではないと思います。
技術としてはいいのでしょうが、そういう話にもつなげていかないと、全体の医療費をかなり押し上げることになるかもしれないし、病院にとっても、これはかなり消耗品のコストが高いですから、そうしたことをどうするかという議論も、今後いろいろな所に広がっていくわけですが、どこかでしなければいけないのではないかと考えます。
○今野座長 鈴木先生、ありがとうございます。施設の要件は、泌尿器領域はそれほど厳しくはないのですが、上部消化器などでは、全てどこでも可能というわけではないとは思うのです。
御意見をお願いします。
○村垣副座長 私も2001年にトレーニング講習を受けて、da Vinciの良さは体感して知っている者です。先ほど先生がおっしゃっていたように、確かに泌尿器科で発達しているのですが、ちょっと医学的観点から質問します。私が知る限りランダム化研究したところ、da Vinciの有用性は確認できなかったという結果が有名な医学雑誌に出ていて、それよりも良い外科医を選ぶべきという結論が出ていたように記憶しております。
ですから、そこの観点ですよね。先ほど先生がお示しいただいたレビューの結果も、恐らくランダム化ではなく、レトロの結果でと思います。そうすると、da Vinciに最初に手掛ける人というのは、内視鏡である程度やった熟練者と想像します。初心者は最初はda Vinciに行けないので、まず内視鏡の手術を学ばなければいけないからです。
今回の試験のバイアスとしては、da Vinciは技術的に熟練した方々が施行することになるので、恐らく自ずと成績が良くなるだろうと。ですから、先ほどの前立腺がんの試験でもランダム化してしまうと差が出てこなくなる。人の技術というのはすごく発達していて、da Vinciも補助なので、(使用しない群も熟練者がよい手術施行するので)そこの効果の部分は出にくくなる。
そこで次に、経済的部分ではどうかと、イギリスは、やはりシビアに見て議論しています。da Vinciの体感上のすごさとは別で、その辺のところからの議論はいかがでしょうか。医学的、今回なぜランダム化しないのかということです。
○岡本参考人 実際なかなかランダム化は、こういう試験では難しいということが、背景には1つあると思います。ただ、千葉大はアメリカのトマス・エマーソン大学と姉妹校なのですが、トマス・エマーソン大学は全米でも頭頸部がんの手術症例というのでは、トップ5に入るぐらいの数をやっているのです。2年前に見学に行ったときも、こういう早期の口腔咽頭がんはほとんどロボット手術で行われていたというのも、私自身は実施した経験はないのですが、そのときの解説を聞いても、かなり優れたものだということを伺いました。
ただ、先生がおっしゃることとも関連しますが、例えば、先ほど少し御紹介した、ELPSは国内では発達してきた治療で、比較的最近のものです。比較試験というものが行われていないのも事実ですが、ELPS自体がまだ新しいということもあります。ただ、ELPSは比較的いろいろな所でされてはいるのですが、それでもビデオでもお見せしましたが、手術手技はむしろ、ロボットよりも高度な手技が要求されるような印象も私自身は持っています。ロボットと比較は簡単にはできないとは思うので、その辺の評価というのは確かに難しいことは否定できないと思います。
○村垣副座長 ですから、イギリスは非常に“ワイルド”な臨床試験を組むのです。7ページの先進医療のところにあるのですが、中咽頭早期がんの第Ⅱ相試験、放射線治療と(ロボット)手術とのランダム化を組むのは、患者さんにとってなかなか難しいような感じがします。この試験というのは、実際どういう試験なのですか。
○岡本参考人 私、ここではIMRT(強度変調放射線療法)と比較していると思うのです。中央成績は差がないという結果だったと思います。やはり、いわゆる生存率とか効果といったものでも差がなかったと思いますが、合併症については、やはりロボット手術のほうが、少なかったという結論だったと思います。
○今野座長 ランダム化はかなり難しいですよね。例えば胃がんでは、鏡視下とロボット支援のランダム化試験は韓国がかなりやっていて、結構いい成績が出ています。日本でも行われパブリッシュされています。しかし、この領域はなかなか難しいと思います。内視鏡治療との比較と言っても、将来的にもう少し進行したものにも適応されていくでしょうし、ちょっと違うのかなという気もいたします。何かほかにはいかがですか。
○鈴木(康)委員 今のランダム化について、ちょっとそれに関わったというか、私、泌尿器科の中で、泌尿器科学会の英文雑誌の編集幹事を6年ほどやっておりまして、ちょうどその頃にラパロとda Vinciとの比較の論文が、随分、出てきたのです。その中で、やはり本当のランダム化というのは無理だと、それはみんなの共通意見でした。
大体、前立腺がんの手術をやっている人というのは、最初はラパロを始めて、それからda Vinciをやるというところに行ってしまうので、絶対に本当のランダム化は、まずできないだろうという考え方がありました。
それから、その中でよく述べられていたことなのですけれども、術者に非常にフレンドリーなのです。余りda Vinciのことばかり持ち上げてあれなのですが、ラパロスコープというのは、すごくストレスフルなのです。先ほども言ったように、縫合するのでもものすごく大変ですし、ものすごい訓練が必要なのです。医者でも下手な人はいるのですね。それでもやっている人はいて、ラパロは必ず失敗するので、そういう者には偉い人が「お前はやるな」というような感じなのです。
da Vinciの場合は、先ほども言ったように、自動車教習所の先生が付いてくれるようなものなので、本当に直視下に見えてフレンドリーにできるのです。言葉は悪いのですが、ちょっと下手な人でもしっかり練習すればできるようになる。ちょうど自動車の運転みたいなものだというような感覚を持っています。
ですから、余り厳密に、いわゆるダブルブラインドはないだとか言ってしまうのは、ちょっと添えていないような感じがします。もちろんエビデンスというものがないと出せないと思うのですけれども、余り厳密にはできない分野だと、それはもう皆さん、御承知のことだと思います。
○村垣副座長 ダブルブラインドは(薬の)領域ではないと、なかなかできないと思うのですが、ランダム化に関しては、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)、大腸がんに対する開腹術対内視鏡(手術)でしっかりとしたランダム化試験が組まれています。最終的には非劣性を証明できなかったのですが、非常に似たような生存曲線なので、結果内視鏡でいいだろうという結論になりました。(ランダム化研究は)できなくはないと思います。そこはただ、様々な参加施設の先生方の理解と、実際には良さそうだけれども、(検証しないと)本当にいいかどうか分からないという考えを、共有しなければいけない部分があるのですが、実際に日本でしっかりとした試験が行われていると思います。
○鈴木(康)委員 分かりました。
○今野座長 先ほど申し上げましたけれども、胃がんに対する内視鏡手術とロボット支援手術の比較試験で、ロボット支援手術の非劣性、つまり鏡視下手術に劣らないというデータは、既に発表されています。この耳鼻科領域は、またちょっと違うのだろうと思いますが、全体的な流れとしては、今後ロボット支援手術は増えていくだろうと、皆さん大体お感じになっていると思います。何かほかに御意見ありますか。耳鼻科の先生方は将来的にこのロボット支援手術が、普及していくだろうという認識をされているのでしょうか。
○岡本参考人 先ほども繰り返しますが、私自身はまだアプローチしたことがありませんけれども、今後、器具の改善が広がっていくと思います。領域も、例えば今、鼻の内視鏡を使った手術が腫瘍にもかなり広がってきています。それは硬性内視鏡ですが、そういうところにも今後、発展していくと、個人的には考えています。
○小川委員 もう一人の耳鼻科医として、やはり内視鏡の手術は非常に侵襲が少ないということで、今の鼻の手術、あるいは最近では耳の手術も内視鏡になってきております。ただ、やはり、先ほども御意見がありましたように、この内視鏡というのは、やる側にとってはストレスが本当に多いです。ですので、私はこの歳になってから顕微鏡から内視鏡に変えるというのは非常にストレスなので、やっていませんけれども、ただ、今は若い先生方は内視鏡で手術をする。耳の場合には内視鏡で手術をすると、翌日、あるいは翌々日に、もう帰れるというようなことで、かなり入院の短縮化もできるということです。恐らく今後、器具の発達をしていけば、いろいろな領域に、こういったものが入ってくるだろうということは、学会としても予想しております。
○今野座長 分かりました。ほかにいかがでしょうか。
○木股委員 私は形成外科ですが、頭頸部再建ばかりやって、がんセンターにずっといたのですけれども、実際に内視鏡をやっている先生方を見ていると、今の小川先生からもありましたが、非常に苦労していると思います。私はロボットは経験がないのですが、やはり自由度が高くて、特に舌根のところだと思うのですが、裏から行かなければいけないところは、やはりロボットの手術というのは非常にメリットがあり、自由度があるということです。
それから、岡本先生も言われましたが、今は多重がんがすごく増えていて、そこにはやはり放射線という治療を残しておかなければいけないのです。そうすると、こういった早期のがんでの、できる限り侵襲の少ない切除というものは、これから間違いなく伸びていく。そして自由度が高いロボットは、耳鼻科領域でも、やはり広がっていくのではないかと思います。
○今野座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
○鈴木(邦)委員 先ほどは計画的な配置の意味での費用対効果なのですが、もう1つは、既存の治療との費用対効果というものもあると思うのです。それはどのように考えるのか。私は中医協委員のときに、費用対効果の専門部会の委員だったのですが、あるとき、日本内視鏡外科学会に呼ばれて、前後のシンポジウムでは、「腹腔鏡手術でいいのだ」という結論だったので、そうなのかなと思いました。
次のシンポジウムは、da Vinciの会社が主催するシンポジウムで、そちらはda Vinciのほうがいいのだという、続けてシンポジウムが2つあって、何か随分、考え方が違うのだなと思いました。
そういう意味では、いわゆる腹腔鏡手術のほうがいいというか、変わらないとか、そのように2、3年前まではおっしゃっていた方も、消化器外科とかではいらっしゃいました。今もいらっしゃるのではないかと思うのですが、その辺は皆さん、今日の御意見はda Vinciでいいのだというような感じですけれども、その辺はいかがなのですか。
○今野座長 消化器外科は、当初はそういう意見が強かったのです。ところが、da Vinciをやる施設がどんどん増えていきますよね。外科医にとってはストレスが少ないと思います。
ロボット支援手術を指示する人たちは消化器外科の中では明らかに増えています。
○鈴木(邦)委員 そうですか。2、3年前は、そういう議論でしたが、効果として外科医の寿命を伸ばすという点では、誰もが一致した結論だったので、それも含めての話ですかね。
○今野座長 費用に関しては初期投資が大きいことは、皆さんよくご存じと思います。今後、いろいろな企業連合体が、国内も含めて開発していますので、もう少し安価になってくれば、普及は進むと思います。
○鈴木(邦)委員 あとは消耗品の価格ですね。
○今野座長 そうですね、その辺りが次の課題かなという気がいたします。いかがでしょうか。
○村垣副座長 適応に関してですけれども、今回の御説明を聞いて、上咽頭がんは外したということは、よく分かるのですが、現場ではその差がはっきりしているかどうかということ。今後、進行がんに関しては、最初の説明では早期咽頭がんのことが入っているのですが、今回の適応は進行がんでも可能であるという、その辺の2点で、適応のほうはいかがでしょうか。
○岡本参考人 上咽頭はやはり現在の器具では、視野を取るアプローチは非常に困難だと思います。今回の申請にも入っていませんし、対象疾患としては除かれていると思います。ある程度広がった頭頸病域では4cm超えるとT3になってくるのですが、特に最近の内視鏡の進歩で、表在性の、非常に皮膚面だけ走るような、そういうものが中心のT3の一部には、確かに適応を認めてもいいのではないかという議論が出ていました。
ただし、先ほどもお話しましたが、この適応については、やはりもう一回、もっとストリクトな議論が確かに必要だと思います。使ってみて断端が陽性で、照射をしたというのでは、何の意味もなくなってしまい、かえって逆の効果を生むと思われるので、その辺はやはりきちっと再検討が必要だとは、もちろん思います。
○今野座長 ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。実は1点、事務方でも気にしているのは、資料1-3の先進医療Bの成績です。20例に満たなかったという、余り経験しないような事態で、これは成績を評価するというわけではないとは思いますし、先ほど来、申し上げているように、このニーズ検討会が、果たして議論すべきものかということもあります。これはどういうことで、このような結果になったのか、それはどなたに聞けばいいのでしょうか。課長ですか。
○医療機器審査管理課長 私どもとしても参考というわけではないですが、先進医療の結果として出てきた結果がこうだったということになります。先進医療技術評価部会については、私は参加しておりませんが、いろいろな議論があった上で、結果的にこれで先進医療としては、これらのデータを基に評価をした結果、今回、お示ししたものになったということになるとしか言いようがないということです。
○今野座長 参考資料として付いています。先進医療Bにおいて通常考えられる結果ではないと、個人的には認識いたします。ちょっと状況はよく分からないのですが、なかなか症例が集まらないという理解でよろしいのですか。
○事務局 もともと20例でデザインしていたものなのですが、一度、確か症例登録期間の延長をしていたと思います。それでも集まりきらなくて、17例で打ち切ったと聞いております。
○今野座長 ということであります。首肯しかねる結果なのですが、繰り返し申し上げますけれども、本検討会はこれを審議する場ではありません。あくまで導入を決めるといいますか、推奨する場という認識です。一応、いろいろと御意見は出たと思います。いかがでしょうか。
それでは、議論をまとめさせていただきますが、本ニーズ検討会として、この御要望を承認して、導入を認めることとするということで、よろしいでしょうか。それでは、そのようにさせていただきます。ありがとうございました。
では、よろしければ、議題2に進みたいと思います。これまでの選定項目の現状について、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 議題2について御説明いたします。資料2-1から資料2-5までは、一まとめになっております。まず、資料2-1を御覧ください。
これまで本検討会でニーズ選定を行ってきた結果をまとめて表示しているものです。これまで学会等から御要望いただいたものが、4月の検討会時点では139品目ありました。この中で選定品目は、前回検討会にて10品目が増えたので、137品目の選定が行われております。うち64品目が既に承認を得ている状況です。
その64品目の下の欄になりますが、現在、承認審査中のものです。承認審査中のものは4月の段階では3品目ありましたが、新たに3品目の承認申請した品目がありますので、6品目となっております。
その下、承認申請の検討・準備中、開発中止、公募中のところについては、後ほど御説明いたします。
2ページ目、「承認申請検討・準備中」、「公募中」の品目の現状について御説明いたします。現在、申請検討・準備中のものは39品目、公募中のものは3品目あります。選定されてからの年月によって分けていますが、特に長い5年以上経過しているものに関しては、19品目あります。これらのうち、現在、治験や先進医療を準備、実施しているものを合わせて7品目となります。準備中が5品目、検討中が5品目、公募中は2品目あります。準備中というのは、承認申請に向けて資料などを準備中のもので、これから申請予定のもの。検討中というのは、まだデータ収集等を行う必要があるものです。
その下、同様に、3年以上5年未満経過をしている品目ということで、準備中、検討中を合わせて6品目、公募中が1品目あります。詳細については3ページ目以降、資料2-2に示しております。
次に、「開発中止」について御説明いたします。15ページを御覧ください。開発中止の品目ですが、これはメーカー側から開発がなかなか難しいとお話を頂いているもので、2品目あります。上段の品目は、治験が実施されましたが、これは在宅透析医療機器ですけれども、日本の透析条件での実施は困難であることが明らかになったことから、治験が中止となりました。要望学会である透析医学会と相談したところ、結果を受けて、要望継続の御希望はありませんでした。
下の品目においては、治験を企業主導でやるのは難しいのではないかという御意見を頂いておりまして、こちらも要望学会と相談したところ、代替療法の発達等もありまして、要望継続の希望はないということでした。
この2品目に関しては、今回、御了承いただけるのであれば、選定を取り下げるという形で進めたいと考えております。
17ページ、「公募中」の品目の概要です。前回の3品目と同様の品目ですが、一番上の品目に関しては、類似品目が承認の見込みです。中段の品目に関しては、既承認品に類似品がありまして、学会と相談中です。一番下の品目に関しては、業界団体や、海外の企業にこちらから開発の要請をするという段階にあります。
次ページ以降、資料2-5は、全てのニーズ品目をまとめたものです。説明は以上です。
○今野座長 御質問がありましたら承りますが、いかがでしょうか。これは報告事項なので、取下げを認めてもらうという手続は要るのですか。
○事務局 御了承いただくという形で。
○今野座長 やはり了承いただくのは審議で、報告は報告です。これは承認を得る必要があるのですか。
○事務局 はい。
○今野座長 では、審議ということで、開発中止の2件に関して御了承を得たいということです。まとめて御質問、御意見があれば承りたいと思います。いかがですか。それでは、2件取り下げるということで御了承いただけますでしょうか。
ありがとうございます。それでは、事務局の報告どおりとさせていただきます。
続いて、議題3、学会等からの要望について、事務局にお願いします。
○事務局 議題3について御説明いたします。資料3を御用意ください。1枚紙になります。こちらは学会等から要望を受けて、まだニーズ未選定のものの一覧です。2つあるうちの上の品目は、本日御議論いただいた品目です。今回選定いただいた形になります。
その下の尿中トリプシノーゲン2の検出試薬ですが、御要望いただいた後に類似品の承認をもっている会社が見つかりまして、現在、実際には販売していない状況でしたが、販売を再開できるかどうか事務局で調整中です。前回の検討会から新規で御要望いただいた品目はありません。説明は以上でございます。
○今野座長 この件に関して、御質問はありますでしょうか。よろしいですか。
それでは、議題4、報告事項4番、デバイスラグ、開発ラグについて説明をお願いします。
○事務局 資料4のシリーズを御用意ください。まず、資料4-1ですが、こちらは前回4月のニーズ検討会でも出させていただいた資料です。前回、少し駆け足になってしまいましたので、もう一度御紹介をいたします。こちらは平成26年度と平成27年度に、新医療機器としてPMDAに申請された合計30品目について、アメリカでの承認が日本よりも早かった理由について企業にアンケートを取った結果になります。3ページ目を御覧ください。
アメリカでの機器開発が1年以上先行した理由を企業に複数回答で答えてもらっています。理由として多いものは、ア、日本では、開発着手時に開発体制・販売体制が整っていなかったため、イ、日本での臨床開発・薬事対応するための人的、資金的なリソースが不足していたため、というような理由が多くなっています。
今回、ニーズ品目について、こちらと同様のアンケート調査を行った結果を御紹介します。5ページ目、資料4-2を御覧ください。ニーズ選定から3年以上経過している品目で、承認申請検討・準備中とされている23品目について、先ほどと同じようなアンケート調査を行いました。新医療機器については、アメリカとの差のみ調査をしていましたが、ニーズ品については、アメリカとEUの両方の調査をしています。6ページ目は、アメリカの開発が先行した理由、7ページ目は、EUでの開発が先行した理由の回答をお示ししています。
新医療機器と同じように、アとイ、開発着手時に日本の開発体制や販売体制が整っていなかったという理由や、臨床開発、薬事対応をするための人的、資金的なリソースが少なかったという理由がやはり多いですが、ニーズ品の特徴として、オ、アメリカやEUでは、患者数が多くて、市場性や事業性が高かったが、日本ではそうではなくなかなか開発に着手できなかったという回答が多くなっています。
10ページ目、資料4-3を御覧ください。ニーズ選定から3年以上経過した品目について、ニーズ選定されてから、なぜ3年以上時間がかかっているのかというところを、個別の品目について詳細を企業にお聞きしております。一番多かった理由としては、治験や先進医療Bを実施していて、それに時間がかかっているというものがあります。治験や先進医療の中には3年以上かかるものもあり、そういうものはニーズに選定されてから開発まで時間かかってしまっています。そういうものが一番多く、14品目となっています。
ほかの8品目については、例えば、顎関節人工骨ですと症例数が少なくて、国内治験の実施が難しいため、米国での市販後調査の結果を出るのを待っていたというような理由とか、次ページ、29番、末梢血管用カバードステントでは、一部のニーズについては薬事承認を取っています。ですが、残りの適応(海外でも未承認)については利用可能な海外の臨床データがなく、症例数が少ないため、前向きの臨床データを得ることが困難で、なかなか時間がかかっているという理由があります。このような機器の開発は厚生労働省としても、後押ししていかなければならないと考えています。
12ページ目以降に、その開発支援として考えられることを幾つかあげています。患者数が少ないものがニーズ品になっていることが多々あり、国内において5万人に達しないなど、一定の条件を満たすものは希少疾病用医療機器としての、いわゆるオーファンデバイスとしての指定制度があります。指定されますと、優先的な治験相談、優先審査の実施、申請手数料の減免、研究費への補助金の交付など、様々な経済的な支援も受けられます。こういうものを活用していただくようなことを企業にも提案していきたいと思います。
次ページ、革新的医療機器条件付早期承認制度です。こちらも前回の検討会で少し御紹介しましたが、今年7月末より制度が開始されています。この制度は、一定の臨床データはあるが、新たな治験が実施の困難が考えられるものについて、関連学会と連携して適正使用基準を作成し、市販後のデータ収集、評価を計画的にやることを条件として限られた臨床データで承認をするというものになります。新たな治験の実施が、患者数が少なくて難しい機器などは、こちらの制度の活用も今後、検討していただければと思っています。
最後、14ページ目です。革新的医療機器等相談承認申請支援事業です。こちらは中小企業・ベンチャー企業向けの支援事業になります。例えば、中小企業・ベンチャー企業は、このニーズ検討会で選定されたような品目を開発する場合ですと、条件を満たせば、相談や審査の手数料が軽減されたり、補助金が出るという制度もあります。該当する企業については、こちらも活用していただければと考えております。資料4については以上です。
○今野座長 これは大事なところだと思います。何か御意見はありますでしょうか。治験と先進医療は時間がかかりすぎる。多くは症例数が集まらない。
○事務局 そうですね、やはり患者数自体が少ないため、症例の登録に1、2年かかってしまうものもありますし、機器によっては、手技をしてから1、2年経過を見て結果を出すというものもありますので、3、4年と時間がかかっているものがあります。
○今野座長 それは、革新的医療機器条件付早期承認制度で、全てカバーできるわけではないですよね。本質的にはかなり問題なので、そこはどのような対応を考えておられるのですか。
○事務局 事務局でございます。新しく出来上がった制度ですので、この制度を使っていただけるようなケースは、ままあるとは思います。全部できるかどうかは分かりませんが。今後、関係のメーカーにこの制度の周知を図って、御検討いただきたいと考えております。
○今野座長 どなたか御意見があれば、是非承りますが、いかがでしょうか。
○村垣副座長 条件付早期承認制度は非常にすばらしいと思います。これは毎年募集ですか、全部件数が限られているのでしたか。
○事務局 特に限っているわけではなくて、随時、御相談いただいて、この制度に乗れるかどうかを考えていくということになります。
○村垣副座長 なるほど。事後は早期承認して、市販に出ていきますと、ある程度やった後に、また再審査のような形でやるのですか、症例数が少なくても、市販されれば、Nは上がってきますよね。
○今野座長 その辺の市販後の検討項目とか、検討チェックポイントというか、その辺はいかがですか。
○事務局 13ページに図がありますが、どういう条件下で使うべきかという、そのリスク管理の項目に併せて、市販後のデータ収集についても計画はあらかじめ立てるという形にしております。それに従って情報を収集し、その情報を得て、必要な対策を打っていくというような制度になります。
○村垣副座長 既に申請の実例はあるのですか。
○事務局 これはまだ7月にできたものでして、今のところはありません。
○今野座長 待ってましたということで、8月にポンと申請するようなことはない。
○事務局 まだないです。
○今野座長 いろいろ行政側も工夫されているということですが、何かいいお考えがあれば、またお聞かせいただくということでよろしいでしょうか。
それでは、議題の最後のニーズ品目の承認後の活用条件について、事務局からお願いします。
○事務局 資料5、ニーズ品目の承認後の活用状況についてを御覧ください。こちらは前回のニーズ検討会で、ニーズ選定されて承認されたものについて、学会のガイドラインに載っているか、どのように活用されているかというのを調査すれば、この検討会の意義も上がるのではないかという御指摘を頂きまして、調査したものになります。これまでにニーズ品目に選定されて、その後、承認を取得した64品目について、保険収載されているか、その機器を使用した治療方法が、学会のガイドラインに記載されているかということを、学会と製造販売業者にアンケートを行いました。
保険収載については、64品目中60品目が保険収載されていました。中には、最近承認されたばかりのものもありまして、こういったものは、現在、保険収載に向けて手続中ということですので、4品目ほど欠けております。
次に、学会のガイドラインでの収載状況については、64品目中56品目が収載されているということでした。こちらも比較的に新しい品目については、今、ガイドライン案を整備中ということで載っていないものもありましたが、大部分のものは学会のガイドラインなどにも載せられて、活用されているということが言えるかと思っております。資料5について、以上です。
○今野座長 実に望ましいアウトカムだと思います。ガイドラインに反映されている良い結果だと思います。ちょっと安心しましたけれども。ほかによろしいでしょうか。
これは、学会が要望して、それで、まさにこの場で早期の導入を決め、そして、それを受けてガイドラインに反映するという、そういうサイクルが非常にうまくいっているという理解でよろしいですか。
○事務局 そのように考えております。
○今野座長 何かありますか。よろしいでしょうか。
前回は時間がぎりぎりだったのですが、本日はまだまだ時間が余っておりますので、これで審議と報告事項は全て終了ですが、何か追加で御発言はありますでしょうか。3.その他に移ります。事務局から何かありますか。
○医療機器審査管理課長 連絡事項だけあります。
○今野座長 そうですか、では、委員の皆様から何かありますでしょうか。
○村垣副座長 今日のda Vinciで、少し心配になったのは、今回、咽頭がん等で出てきたのですが、da Vinciは機械なので、メスと一緒なのでほかのいろいろな科でも今、出てきていて、潜在的にいろいろなニーズがあって、その辺のところのバランス感覚というか、その辺の情報があったほうがいいのではないか。ただ、個別の議論なので、そこはいいのですが、いろいろながんで、多分、da Vinciの適応を取ろうと出てきたときの対応策とか、その辺のところの全体的な流れはどうなのか。恐らく昔の薬事であれば、メスはどこの科で使ってもメスなので、メスを承認すればどこで使ってもいいのだというところから、高度な機械になってきたので、それぞれ適応をエビデンスに応じて承認していこうという流れにきていると思いますが、その辺の横串の議論としていかがかなと思ったのですが。
○医療機器審査管理課長 その議論は当然出てくるのだと思います。ただ、現時点の話をすれば、1個1個手技についての評価ということになるのだと思います。保険点数はそうなっています。今後、広がってくれば、かつ、それも安価になってくればという条件も入っているのだと思いますが。そういった議論も十分ありうると思います。
○今野座長 ほかにありますでしょうか。
○鈴木(邦)委員 これからいろいろなところに広がっていくことも考えられますけれども、海外で、薬事承認や、償還が認められているのに保険適用に制限が付いている場合や、償還が認められていない場合はありますか。例えば、この疾患はda Vinciは要らないでしょうとか、あるいはここは費用対効果の面から償還しないとかですが、そういった情報はどうですか。
○医療機器審査管理課長 多分、先生の御趣旨は、承認を得ているけれども、適応を持っていないとか、そういうことだと思いますので。
○鈴木(邦)委員 日本で言えば、薬事承認されても、保険適用にならないとか、条件が付くとかという場合です。
○医療機器審査管理課長 そこは恐らくそういったことがあるのか、今、私は知識を持っておりません。ただ、いずれにせよ、今の段階では1個1個そういったことを含めて評価をして、判断していくという作業は、これから続けていくということになるかと思っています。
○鈴木(邦)委員 ここは薬事承認の場ではありませんが、日本は何でも、薬事承認、保険適用でここまできましたけれども、それが曲がり角にきているという意見もあります。皆さんにもある程度、いろいろな海外の事情も御理解いただいたほうがいいのではないかという気がしますので、よろしくお願いします。
○医療機器審査管理課長 はい。
○今野座長 ありがとうございます。大変大事なところだと思います。ほかに御意見はありますか。よろしいでしょうか。
先ほど申し上げたように、この会でどこまで意見を開陳すべきかというのは、なかなか見えないところもあるのですが、先ほどのガイドラインの反映などは、すばらしいアウトカムだと思います。鈴木先生が前段でおっしゃった医療経済との関係を考えれば、どんどん導入することによって、当然マイナスの影響もあるわけで、そこは我々のミッションではないということは、ちょっと私自身としては、いかがなものかという気もします。それぞれがそれぞれでやっていくと、総体として見ると、矛盾をはらむというのは、どの組織でも同じことです。全体感で何か方向感をもう少しこの辺はとか、シーリングを含め、何かしらの方向性を示したり、この会のスケルトンを示してもらうと、我々としてはもう少し突っ込んだ議論ができるかと個人的には思います。何かそういう方向性というのはあるのですか。
○医療機器審査管理課長 方向性について申し上げますと、今の段階では役割り分担が、それぞれ、司、司において、議論があるのだと思います。しかし、そうは言いながらも、全体を見付けながら議論していただきたいということは我々は念頭に置きますので、そういったことでご議論をいただければと思います。
○今野座長 審議官、どうぞ。
○審議官 行政としてこういう検討会に先生方にお集まりいただいて、御議論いただいているということをファシリテートしている立場として、それから、行政のそれぞれの司、司と言いますが、1つの組織体として一体となって連携を取って仕事をしていくということも、これもまた大事なことだと考えております。
ある意味、薬事承認に関係する御議論を、このような検討会や、あるいは、薬食審の審議会の御議論でいただいているとともに、その結果が、医療保険の世界では保険適用の可否を議論するということは、これは中医協の議論としてあって、それらをつなぐ、連携をする議論というのが、今や必要になってきているということを、これはよく御指摘いただいているところです。そういう意味では、司、司の部分というのは、もちろんそうなのですが、その連携をよくするということが大事だと考えております。
それから、先ほど来出ているda Vinciのような例でもそうなのですが、あるいは、薬で言えば、オプジーボという薬などもそうなのですが、適応はどんどん開発されているのが見えています。したがって、その先行きがどうなってくるのかということを一定程度理解しながら、それぞれに対する扱いをできるだけ整合させるということ、全体感を持って考えるようにと座長がおっしゃっているようなところは、それこそ行政の中でもよく連携を取りながら事に当たっていくということが大事だと我々もそのように考えております。
したがって、こちらで議論された中で、提示された懸念というのは、具体的なケースについては、こちらでもそういう心配があったのだとそれぞれ関係する所にもお伝えしてたいと思います。それから、開発をこれからする段階であれば、その開発に当たってそういう懸念に対する明確なデータを示すように開発をしてくれとか、やはりそこに先へ先へその問題点をできるだけクリアにしながら結果が出てくるようにするということを求める、これはできると思います。ですから、そのようなことに関して連携を深めていくということが、今、現実的にできるところではないかと思います。
それから、費用対効果とか、そういったことに関しても、その仕組み作りを試行としてやっていて、その結果を見ながら、更に本格的に導入しようという議論が、保険サイドで行われているということも私どもも承知しておりますし、多分、そういったところも全部関係してくる話だろうと思っております。ただ、患者さんにとって、あるいは、医療のプロフェッショナルの先生方にとって、やはりニーズがあるよと、そういうものなのだよということをこの場ではしっかり御議論いただいて、そうしたものにふさわしいものであるということを見立てていただくということが、この会議のミッションということだと思います。その御議論の結果を大事にしながら、いかにそれをコスト的にも見合いのある開発をしてもらうかというのを行政側でしっかり考えさせていただいて、それぞれ関係する所にもお伝えしていくという形を取らせていただきたいと考えております。今日は本当にそういう貴重な意見を頂きましたので、それを我々でしっかり受け止めさせていただきたいと考えております。
○今野座長 ありがとうございます。大変心強く、また、我々にとって今後のディスカッションの在り方を示していただいたと思います。ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。
それでは、これで全て終了いたしました。特になければ、次回は日程調整の上、御案内させていただきます。今後とも、よろしくお願いいたします。それでは、閉会といたします。ありがとうございました。