5 維持管理
給水装置は需要者に直接、水を供給する施設でありその維持管理の適否は供給水の保全に重大
な影響を与えることから水が汚染し、または漏れないように的確に管理を行うこと。
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(解説)
給水装置は、年月の経過に伴う材質の劣化等により故障、漏水等の事故が発生することがある。
事故を未然に防止するため、又は最小限に抑えるためには維持管理を的確に行うことが重要である。
給水装置は、需要者等が注意をもって管理すべきものであり、維持管理について需要者等に対して適切な情報提供を行うことが重要である。
1.漏水の点検
給水管からの漏水、給水用具の故障の有無について随時又は定期的に点検を行う。
2.給水用具の故障と修理
給水用具の管理にあたっては、構造、機能及び故障修理方法などについて、十分理解する必要がある。
3.異常現象と対策
異常現象は、水質によるもの(濁り、色、臭味等)と配管状態によるもの(水撃、異常音等)とに大別される。
配管状態によるものについては、配管構造及び材料の改善をすることにより解消されることも多い。水質によるものについては、現象をよく見極めて原因を究明し、需要者に説明の上、適切な措置を講じる必要がある。
1)水質の異状
水道水の濁り、着色、臭味などが発生した場合には、水道事業者に連絡し水質検査を依頼する等、直ちに原因を究明するとともに、適切な対策を講じなければならない。
(1)異常な臭味
水道水は、消毒のため塩素を添加しているので消毒臭(塩素臭)がある。この消毒臭は、残留塩素があることを意味し、水道水の安全性を示す一つの証拠である。
なお、塩素以外の臭味が感じられたときは、水質検査を依頼する。臭味の発生原因としては次のような事項が考えられる。
i) 油臭・薬品臭のある場合
給水装置の配管で、ビニル管の接着剤、鋼管のねじ切りなどに使用される切削油、シール剤の使用が適切でなく臭味が発生する場合や、漏れた油類が給水管(ビニル管、ポリエチレン管)を侵し臭味が発生する場合がある。また、クロスコネクションの可能性もある。
ii) シンナー臭のある場合
塗装に使用された塗料などが、なんらかの原因で土中に浸透して給水管(ビニル管、ポリエチレン管)を侵し、臭味が発生する場合がある。
iii) かび臭・墨汁臭のある場合
河川の水温上昇等の原因で藍藻類などの微生物の繁殖が活発となり、臭味が発生する場合がある。
iv) 普段と異なる味がする場合
水道水は、無味無臭に近いものであるが、給水栓の水が普段と異なる味がする場合は、工場排水、下水、薬品などの混入が考えられる。塩辛い味、苦い味、渋い味、酸味、甘味等が感じられる場合は、クロスコネクションのおそれがあるので、直ちに飲用を中止する。
鉄、銅、亜鉛などの金属を多く含むと、金気味、渋味を感じる。給水管にこれらの材質を使用しているときは、滞留時間が長くなる朝の使い始めの水に金気味,渋味を感じる。朝の使い始めの水は、なるべく雑用水などの飲用以外に使用する。
(2)異常な色
水道水が着色する原因としては、次の事項がある。なお、汚染の疑いがある場合は水質検査を依頼する。
i) 白濁色の場合
水道水が白濁色に見え、数分間で清澄化する場合は、空気の混入によるもので一般に問題はない。
ii) 赤褐色又は黒褐色の場合
水道水が赤色又は黒色になる場合は、鋳鉄管、鋼管のさびが流速の変化、流水の方向変化などにより流出したもので、一定時間排水すれば回復する。常時発生する場合は管種変更等の措置が必要である。
iii) 白色の場合
亜鉛メッキ鋼管の亜鉛が溶解していることが考えられる。一定時間使用時に管内の水をいったん排水して使用しなければならない。
iv) 青い色の場合
衛生陶器が青い色に染まるような場合には、銅管の腐食作用によることが考えられるので、管種変更などの措置が必要である。
(3)異物の流失
i) 水道水に砂,鉄粉などが混入している場合
配水管及び給水装置などの工事の際、混入したものであることが多く給水用具を損傷することもあるので水道メータを取り外して、管内から除去しなければならない。
ii) 黒色の微細片がでる場合
止水栓、給水栓に使われているパッキンのゴムが劣化し、栓の開閉操作を行った際に細かく砕けて出てくるのが原因と考えられる。
2)出水不良
出水不良の原因は種々あるが、その原因を調査し、適切な措置をすること。
(1)配水管の水圧が低い場合
周囲のほとんどが水の出が悪くなったような場合は、配水管の水圧低下が考えられる。
この場合は、配水管網の整備が必要である。
(2)給水管の口径が小さい場合
一つの給水管から当初の使用予定を上回って、数多く分岐されると、既設給水管の必要水量に比し給水管の口径が小さくなり出水不良をきたす。このような場合には適正な口径に改造する必要がある。
(3)管内にスケールが付着した場合
既設給水管で亜鉛めっき鋼管などを使用していると内部にスケール(赤さび)が発生しやすく、年月を経るとともに給水管の口径が小さくなるので出水不良を来たす。
このような場合には管の布設替えが必要である。
(4)配水管の工事等により断水したりすると、通水の際の水圧によりスケール等が水道メータのストレーナに付着し出水不良となることがある。このような場合はストレーナを清掃する。
(5)給水管が途中でつぶれたり、地下漏水をしていることによる出水不良、あるいは各種給水用具の故障などによる出水不良もあるが、これらに対しては、現場調査を綿密に行って原因を発見し、その原因を除去する。
3)水撃
水撃が発生している場合は、その原因を十分調査し、原因となる給水用具の取り替えや、給水装置の改造により発生を防止する。
給水装置内に発生原因がなく、外部からの原因により水撃が発生している場合もあるので注意する。
4)異常音
給水装置が異常音を発する場合は、その原因を調査し発生源を排除する。
(1)水栓のこまパッキンが摩耗しているため、こまが振動して異常音を発する場合は、こまパッキンを取り替える。
(2)水栓を開閉する際、立上り管等が振動して異常音を発する場合は、立上り管等を固定させて管の振動を防止する。
(3)(1)、(2)項以外の原因で異常音を発する場合は、水撃に起因することが多い。
4.事故原因と対策
給水装置と配水管は、機構的に一体をなしているので給水装置の事故によって汚染された水が配水管に逆流したりすると、他の需要者にまで衛生上の危害を及ぼすおそれがあり、安定した給水ができなくなるので、事故の原因を良く究明し適切な対策を講じる必要がある。
1)汚染事故の原因
(1)クロスコネクション
「3.9.6 クロスコネクション防止」を参照すること。
(2)逆流
既設給水装置において、下記のような不適正な状態が発見された場合、逆サイホン作用による水の逆流が生じるおそれがあるので「3.9.4 逆流防止」を参照して適切な対策を講じなければならない。
i) 給水栓にホース類が付けられ、ホースが汚水内に漬っている場合。
ii) 浴槽等への給水で十分な吐水口空間が確保されていない場合。
iii) 便器に直結した洗浄弁にバキュームブレーカが取り付けられていない場合。
iv) 消火栓、散水栓が汚水の中に水没している場合。
v) 有効な逆流防止の構造を有しない外部排水式不凍給水栓,水抜き栓を使用している場合。
(3)埋設管の汚水吸引(エジェクタ作用等)
埋設管が外力によってつぶれ小さな穴があいている場合,給水時にこの部分の流速が大きくなりエジェクタのような作用をして外部から汚水を吸い上げたり,微生物を吸引することがある。
また、給水管が下水溝の中で切損している場合等に断水すると、その箇所から汚水が流入する。断水がなくても管内流速が極めて大きいときには、下水を吸引する可能性がある。また、寒冷地で使用する内部貯留式不凍給水栓の貯留管に腐食等によって、小穴があいている場合にも同様に汚染の危険性がある。
2)凍結事故
凍結事故は、寒冷期の低温時に発生し、その状況はその地方の気象条件等によって大きな差がある。
このため凍結事故対策は、その土地の気象条件に適合する適切な防寒方法と埋設深度の確保が重要である。
既設給水装置の防寒対策が不十分で凍結被害にあった場合の解氷方法は、おおむね次のとおりであるなお、トーチランプ等で直火による解氷は、火災の危険があるので絶対に避けなければならない。
(1)熱湯による簡便な解氷
凍結した管の外側を布等で覆い熱湯をかける方法で、簡単な立上りで露出配管の場合、一般家庭でも修理できる。この方法では急激に熱湯をかけると給水用具類を破損させるので注意しなければならない。
(2)温水による解氷
小型ボイラを利用した蒸気による解氷が一般的に行われてきたが、蒸気の代りに温水を給水管内に耐熱ホースで噴射しながら送りこんで解氷する方法として、貯湯水槽、小型バッテリー、電動ポンプ等を組み合わせた小型の解氷器がある。
(3)蒸気による解氷
トーチランプ又は電気ヒータ等を熱源とし、携帯用の小型ボイラに水または湯を入れて加熱し、発生した蒸気を耐熱ホースで凍結管に注入し解氷するものである。
(4)電気による解氷
凍結した給水管(金属管に限る)に直接電気を通し、発生する熱によって解氷するものである。
ただし、電気解氷は発熱による火災等の危険を伴い、また、合成樹脂管等が使用されている場合は、絶縁状態となって通電されないこともあるので、事前に使用管種、配管状況を調査した上で解氷作業を行う必要がある。