技術・製品情報  給水管及び給水用具の性能基準の解説  厚生労働省給水装労データベース
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2.浸出性能基準

(浸出に関する基準)
 飲用に供する水を供給する給水装置は、厚生大臣が定める浸出に関する試験(以下「浸出性能試験」という。)により供試品(浸出性能試験に供される器具、その部品、又はその材料(金属以外のものに限る。)をいう。)について浸出させたとき、その浸出液は、次の表中の左欄に掲げる事項につき、水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具にあっては同表の中欄に掲げる基準に適合し、それ以外の給水装置にあっては同表の右欄に掲げる基準に適合しなければならない。
 



 事 項
 

水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具の浸出液に係る基準
 

給水装置の末端以外に設置されている給水用具の浸出液、又は給水管の浸出液に係る基準


カドミウム
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。
 

水銀
 

0.00005?/L 以下であること。
 

0.0005?/L 以下であること。
 

セレン
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。
 


 

0.005?/L 以下であること。
 

0.05?/L 以下であること。
 

ヒ素
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。
 

六価クロム
 

0.005?/L 以下であること。
 

0.05?/L 以下であること。
 

シアン
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。
 

硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素

1.0?/L 以下であること。
 

10?/L 以下であること。
 

フッ素
 

0.08?/L 以下であること。
 

0.8?/L 以下であること。
 

四塩化炭素
 

0.0002?/L 以下であること。
 

0.002?/L 以下であること。
 
 
1,2-ジクロロエタン
 

0.0004?/L 以下であること。
 

0.004?/L 以下であること。
 
 
1,1-ジクロロエチレン
 

0.002?/L 以下であること。
 

0.02?/L 以下であること。
 

ジクロロメタン
 

0.002?/L 以下であること。
 

0.02?/L 以下であること。
 
 
シス-1,2-ジクロロエチレン
 

0.004?/L 以下であること。

 

0.04?/L 以下であること

 

テトラクロロエチレン
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。
 

1,1,2-トリクロロエタン
 

0.0006mg/L 以下であること。
 

0.006?/L 以下であること。
 

トリクロロエチレン
 

0.003?/L 以下であること。
 

0.03?/L 以下であること。
 

ベンゼン
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。
 

亜鉛
 

0.1?/L 以下であること。
 

1.0?/L 以下であること。
 


 

0.03?/L 以下であること。
 

0.3?/L 以下であること。
 


 

0.1?/L 以下であること。
 

1.0?/L 以下であること。
 

ナトリウム
 

20?/L 以下であること。
 

200?/L 以下であること。
 

マンガン
 

0.005?/L 以下であること。
 

0.05?/L 以下であること。
 

塩素イオン
 

20?/L 以下であること。
 

200?/L 以下であること。
 

蒸発残留物
 

50?/L 以下であること。
 

500?/L 以下であること。
 

陰イオン界面活性剤
 

0.02?/L 以下であること。
 

0.2?/L 以下であること。

 

1,1,1-トリクロロエタン
 

0.03?/L 以下であること。
 

0.3?/L 以下であること。

 

フェノール類

 

フェノールとして0.005?/L 以下であること。
 

フェノールとして0.005?/L 以下であること。
 

有機物等
(過マンガン酸カリウム消費量)

1.0?/L 以下であること
 

10?/L 以下であること。
 


 

異常でないこと。
 

異常でないこと。
 

臭気
 

異常でないこと。
 

異常でないこと。
 

色度
 

0.5度以下であること。
 

5度以下であること。
 

濁度
 

0.2度以下であること。
 

2度以下であること。
 

エピクロロヒドリン
 

0.01?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。

アミン類
 

トリエチレンテトラミンとして0.01?/L 以下であること。
 

トリエチレンテトラミンとして0.01?/L 以下であること。
 
 
2,4-トルエンジアミン
 

0.002?/L 以下であること。
 

0.002?/L 以下であること。
 
 
2,6-トルエンジアミン
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.001?/L 以下であること。
 

ホルムアルデヒド
 

0.05?/L 以下であること。
 

0.05?/L 以下であること。
 

酢酸ビニル
 

0.01?/L 以下であること。
 

0.01?/L 以下であること。
 

スチレン
 

0.002?/L 以下であること。
 

0.002?/L 以下であること。
 
 
1,2-ブタジエン
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.001?/L 以下であること。
 
 
1,3-ブタジエン
 

0.001?/L 以下であること。
 

0.001?/L 以下であること。
 

備考
 主要部品の材料として銅合金を使用している水栓その他給水装置の末端に設置されている給水用具の浸出液に係る基準にあっては、この表鉛の項中「0.005?/L 」とあるのは「0.047?/L 」と、亜鉛の項中「0.1?/L 」とあるのは「0.97?/L 」と、銅の項中「0.1?/L」とあるのは「0.98?/L 」とする。

 
 

(解説)

 本基準は、給水装置から金属等が浸出し、飲用に供される水が汚染されることを防止するためのものである。

 

1.考え方

 従来、型式承認基準においても浸出性能は一部規定されていたが、

 ア.器具の種類によって試験の考え方や方法が統一されていなかったこと、

 イ.滞留水のみを飲む前提に立って評価が行われるなど評価方法が使用実態に即していない面があったこと、

 ウ.浸出用液として水道水が使用されているなど試験の再現性に厳密性を欠く面があったこと

等から、統一的な考え方の基準及び再現性の高い試験方法を定める必要があった。

 本浸出性能基準は、国内外の浸出性能基準・規格のうち、最も合理的かつ体系的と考えられるNSF(米国衛生財団)の規格(NSF61)に準拠しつつ、わが国の水道水質、給水装置の使用実態、試験の簡便性等を考慮して必要な修正を加えたものである。

 浸出性能試験としては、最終製品で行う器具試験のほか、部品試験や材料試験も選択できる。ただし、金属材料については材料試験を行うことはできない。これは、金属の場合、最終製品と同じ材質の材料を用いていても、表面加工方法、冷却方法等が異なると金属等の浸出量が大きく異なるとされているためである。

 

2.適用対象

 適用対象は、通常の使用状態において飲用に供する水が接触する可能性のある給水管及び給水用具に限定される。具体的には、給水管、末端給水用具以外の給水用具(継手、バルブ類等)、飲用に供する水を供給する末端給水用具が対象となる。

 浸出性能基準の適用対象の器具及び適用対象外の器具の代表例を以下に示す。なお、これは通常の使用状態を前提にした判断の目安であり、個別の判断は、当該器具の使用状態に即して行う必要がある。

 

[適用対象の器具例]

 ○給水管
 ○末端給水用具以外の給水用具
  ・継手類  ・バルブ類  ・受水槽用ボールタップ  ・先止め式瞬間湯沸器及び貯湯湯沸器
 ○末端給水用具
  ・台所用、洗面所用等の水栓  ・元止め式瞬間湯沸器及び貯蔵湯沸器
  ・浄水器(注)、自動販売機、冷水機

[適用対象外の器具例]

 ○末端給水用具
  ・ふろ用、洗髪用、食器洗浄用等の水栓  ・洗浄弁、洗浄装置付き便座、散水栓
  ・水洗便所のロータンク用ボールタップ  ・ふろ給湯専用の給湯機及びふろがま
  ・自動食器洗い器

(注)浄水器には、
 ア.水栓の流入側に取り付けられ常時水圧が加わるもの(先止め式又はT型)
 イ.水栓の流出側に取り付けられ常時水圧が加わらないもの(元止め式又はU型)がある。

 アはすべて給水用具に該当するが、イについては、浄水器と水栓が一体として製造・販売されているもの(ビルトイン型又はアンダーシンク型)は給水用具に該当するが、浄水器単独で製造・販売され、消費者が取り付けを行うもの(蛇口直結型及び据え置き型)は該当しない。

 

 内部に吐水口空間を有する給水用具については、吐水口以降の部分も含めた給水用具全体を一体として評価を行うことを原則とするが、自動販売機や製氷機については、水道水として飲用されることはなく、通常、営業用として使用されており吐水口以降については食品衛生法に基づく規制も行われていること等から、従来どおり給水管との接続口から給水用具内の水受け部への吐水口までの間の部分について評価を行えばよい。

 また、逃し弁、水抜き栓等の内部のうち給水装置外に排水される水のみが接触する部分については、浸出性能の評価から除外しても差し支えない。

 

3.試験条件

(1)浸出用液

 浸出用液については、水道水を用いると、

 ア.地域ごとの水質の違いにより金属等の浸出量が大きく変化し、試験の再現性が確保できないこと、

 イ.給水区域ごとに基準適合性の証明が求められる可能性があり、規制緩和の目的が達成できないおそれがあること

等から、人工的に調製した水を用いることとした。

 浸出用液の水質は、わが国の水道水質の中央値に準じ、pH7、硬度45mg/L、アルカリ度35mg/L、残留塩素0.3mg/Lとした。特にpH条件は金属の浸出に大きく影響することから、許容範囲をプラスマイナス0.1と小さくした。

 

(2)浸出液の調製

 浸出液の調製操作は、洗浄、コンディショニング及び浸出から成る。それぞれの操作においては、必要に応じ加圧注入を行うなど、適切な方法で供試品内部に浸出用液を完全に満たすものとする。

 このうちコンディショニングは、時間の経過に伴い器具からの浸出が一定程度減少し、安定する実態を試験に反映させるための操作であるが、供試品の材質、既存の知見等から判断してこの操作を行わなくても基準に適合することが明らかである場合には、製造業者が選択すれば、この操作を省略し、より浸出しやすい条件で試験を行うことも可能とした。

 NSF規格においては、管及び継手類、バルブ類、末端給水用具について、それぞれ異なる検討グループで独立して検討され、3種類の試験方法が採用されている。しかしながら、同じく配管途中に設置される管、継手及びバルブ類で浸出に係る条件に差異があるとは考えられないこと等から、試験方法は、大きく分けて、末端給水用具に係る方法と、給水管及び末端給水用具以外の給水用具に係る方法の2種類とした。

 NSF規格では、試験における常温は、摂氏23度プラスマイナス2度となっているが、浸出性能試験においてはおおむね23度とした。これは、大型で精密な温度制御を行うことができる恒温室を有する試験機関は極めて少ないことから、温度条件を23度プラスマイナス2度とすると大型の給水用具の試験実施が困難であることを考慮したものであり、小型の給水用具等実施可能であれば、23度プラスマイナス2度の条件で行うことが望ましい。

 湯沸器類については、その熱源を用いて加熱する方法と、あらかじめ加熱した水を満たして行う方法の両方とも可能としたこと、最高使用温度の設定は、湯沸器に備えられた温度制御機構で行うことができるようにしたことなど、できるだけ実使用条件を反映した試験方法とした。

 浄水器については、実使用条件を考慮し原則として末端給水用具の試験方法を適用することとする。ここで、飲用に供するのは浄水処理後の水であること、加圧しないと吐水しないことから、16時間の静置後1次側から浸出用液を加圧注入し、2次側から流出してきた浄水器の有効内容積分の水を試料液とする(1Lの水を加圧注入・流出させ、これを試料液とし、(3)の補正を行わない方法でもよい)。

 試験に当たっては、器具全体の接水面積に対する割合が微少で、かつ試験結果に及ぼす影響が軽微である小物部品については、浸出用液の注入操作等に支障がある場合に限り、取り外して実施しても差し支えない。

 

(3)分析値の補正

 分析値は、当該給水管及び給水用具の使用実態に応じた補正を行った上で評価する。

 NSF規格においては、基本的には分析結果をもとに滞留状態及び流水状態に換算して評価することとされている。ただし、水栓等の末端給水用具については、内容積が小さく流水状態での浸出量は極めて小さいと考えられることから、流水状態への換算・評価は行わないこととなっている。また、補正は、配管途中に設置される継手、バルブ類等については、滞留状態で浸出物質が配管内部全体に拡散すると考え、末端給水用具については、1人1日の飲用水量を2L 、滞留水を直接飲用する回数を1日2回(すなわち、内容積が1L 以下の末端給水用具については、内容積を1L とみなす)と考えて行うこととしている。

 浸出性能基準では、基本的にはこのNSF規格の考え方に準拠することとした。ただし、給水装置は内容積が小さいため、滞留状態で基準を満たせば、流水状態でも当然に基準を満たすことから、評価は滞留状態においてのみ行うこととした。また、継手、バルブ等の補正においては、わが国の給水装置の実態に基づき、配管全体の内容積に占める継手、バルブ等の合計内容積の割合を4%とし、分析結果を25分の1に補正することとした。

 

4.判定基準

(1)判定基準項目

 判定基準項目は、水道水質基準の設定されている項目及び日本水道協会(JWWA)規格で設定されている項目のうちから選定した。

 これらのうち、病原性微生物、消毒副生成物、農薬については、給水装置から溶出するとは考えられないことから基準項目として採用しなかった。また、pH及び硬度については、これらを調整した浸出用液を用いること等から、残留塩素減量については、器具を長時間密封し、精度よく試験を行うことが困難であることから基準項目として採用しなかった。

 判定基準項目のうち分析を行う必要があるのは、すべての器具に共通する項目である味、臭気、色度及び濁度の他は、水と接触する部分に使用されている材料の成分及びその材料の原料の成分のうち、浸出する可能性のあるものとする。材料の原料の成分を分析対象とする理由は、合成樹脂やゴムで重合が不完全な場合などには、原料の成分が材料中に残存しているおそれがあるためである。主な材料における測定項目については、別紙1を参照すること。

 分析方法は、水道水質基準の試験方法、JWWA規格の試験方法を判定基準項目に応じてそれぞれに採用した。なお、試料液を希釈して分析する場合は、定量下限値が判定基準値以下となるよう充分注意する必要がある。

 

(2)判定基準

 判定基準は、末端給水用具については、給水装置からの有害物質の浸出は極力少なくすべきこと、水道の原水、浄水処理用薬剤、水道施設及び給水装置の材料等の他の浸出源からの寄与が大きな割合を占める可能性があることから、NSF規格の考え方に準拠し、十分な安全性を考慮して、滞留状態での補正値が水道水質基準値の10%を超えないこととした。

 銅合金を主要部品の材料として使用している末端給水用具については、鉛、銅及び亜鉛に係る補正値が水道水質基準値の10%を超えるおそれがある。しかしながら、銅合金は、これまで給水装置材料として広く一般的に使用されてきていること、加工性等の面から現状において代替材料がないこと等から、特例として、一般的な水道水中の濃度に給水用具からの浸出を加えても、水道水質基準値を超えないこととした。この特例の適用は、他に代替材料がなく銅合金を相当程度使用せざるを得ないものに限定される。

 一方、給水管及び末端給水用具以外の給水用具に長時間滞留した水は、水洗便所、ふろ等で一度水が使用されるとすべて流出してしまい、滞留水が実際に飲用される確率は末端給水用具に比べて極めて低いことから、判定基準は滞留状態での補正値が水道水質基準値等を超えないこととした。

 いずれにおいても、滞留水を長期間飲み続けるという安全側に立った仮定に基づく評価となっていることから、水道水の安全性の確保を図ることができる。

 部品試験及び材料試験においては、その結果から器具(最終製品)の状態での部品又は材料ごとの接触面積当たりの浸出量を求め、これを足し合わせて器具として分析値に換算した後、判定基準値と比較することとしており、最終製品を用いた試験が困難である場合等についても浸出性能の評価を行うことができるようになっている。なお、部品試験には、器具の一部を切り取って試験を行う場合も含まれる。部品及び材料の分析値から器具の分析値への換算方法については、別紙2を参照すること。

 供試器具と、ア.使用材料の材質が同等で、イ.構造及び製造方法が類似しており、かつ、ウ.接触面積比が供試器具の接触面積比以下である製品については、浸出性能試験を行わなくとも算式を用いて補正値を算出できる。すなわち、すべての製品で試験を行わなくとも、接触面積比が最大の代表製品でのみ試験を行えばよいこととしており、試験の効率化が可能となっている。補正値の算出方法については、別紙3を参照すること。

 ここで、瞬間湯沸器については、[接触面積/最低作動水量]が最大の製品を代表製品とすることとし、内容積が1L 以下の末端給水用具については、内容積を1L に補正した後の接触面積比が最大の製品を代表製品としても差し支えない。

 この浸出性能を一括して評価できる製品群の考え方については、別紙4を参照すること。


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