閣議後記者会見概要

H20.09.05(金)10:40~11:17 省内会見場

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
本日の閣議、閣僚懇談会ですが「安心実現のための緊急総合対策」について各大臣から各省の取組についてご報告がありまして、私の方からも緊急総合対策と「5つの安心プラン」の両者が相俟って効果が出るように努力をするということを申しあげました。
それから次に、臨床研修制度についての検討会が発足されますが、ご承知のように臨床研修制度は、入学して準備教育から臨床の前期を行い、そして、6年間が終わって専門教育を行った上で法に基づく臨床研修を行う。そして、専門医の資格を取るという中で、この部分についていろいろ問題があるのではないか、この新しい研修制度が医師不足を招いているのではないかということであるのですが、ここにありますように、理念自体は基本的な診療能力を身につけ、それから、総合的な能力を向上させるということで良い面があるのですが、医師の地域偏在のような問題が出てきております。そこで、研修の実施状況を簡単にご説明いたしますと、大学の医師派遣機能が落ちているということで、ご承知のように旧制度では研修医の在籍状況は7対3くらいの割合で大学病院であると。この比率が落ちてきておりまして、臨床研修に指定されている病院の方がむしろ多くなってきている。したがって、大学病院の医師派遣機能が落ちているというのはこういう数字でも見られるわけですが、なぜそうなったかという原因を今から究明したいし、もっと言えば、医者サイドの話のみでなくて全体を公平に見たときに、大学病院で研修する若いお医者さんの卵がいなくなったというのは、それだけ大学病院に魅力がなくなったからじゃないのですかと。「あなた達の教える能力がどうなんですか、プロフェッサーの人はどうですか」ということまで含んで検討しないといけませんので、これは広い観点から一方的に医療サービスを提供しているお医者の側からだけではなくて、国民的観点から見て行きたいと思います。そこで、今までなかったことですが、文部科学省と合同の研修制度検討会を設けるということで、第1回を9月8日に開催して年内を目途に結論を得たいと思っております。構成員には、様々な観点から私立大学を代表する方、例えば、順天堂大学の理事長の小川さん、それから国立大学ですと、山形大学医学部の嘉山さん、それから自治医科大学の高久さんも入っておられます。それから、国民代表としては前の朝日新聞の記者である大熊由紀子さん、NPOの辻本さんにも入っていただいておりますし、それぞれの分野を代表する方々に入っていただいております。そして、厚生労働省と文部科学省が共同にしてやる臨床研修制度の検討会に加えまして、もう一つ専門的な研究班も立ち上げたいと思います。これを国立がんセンターの中央病院長の土屋さんを主任研究者にして、「安心と希望の医療確保ビジョン」に参加していた先生方であります、有賀さん、海野さん、岡井さん、それから地域ケアをやっている川越さん、こういう方々にお入りいただいて、これは専門家の観点から見てどうかということで省内に研究班を立ち上げ、この二つで研修医制度について見直しを行いたいと思います。
それから、次のテーマは北京パラリンピック競技大会についてですが、これは6日から17日まで北京において行われます。150カ国が参加し6,000人、我が日本選手団は294名ということで20競技に参加して、今週土曜日からがんばっていただきます。それの支援策について検討しておりましたが、まず、JOCの場合は300万円、200万円、100万円という報償金がでますが、これを創設して100万円、70万円、50万円と、JOCの額まで一気に行きませんが、まずこれを創設したいと考えております。そして、もう一つ柱として障害者スポーツを普及したいので指導者の養成をやったり、選手強化をやったりいろいろなことをやりたいと思っております。そこで実は、こちらのJOCの方は健常者のオリンピックですが、民間の基金でやっているのです。私もなんとか民間の基金で障害者もやりたいということで経済界にお願いしたのですが、なかなか経団連の方は積極的な姿勢を見せてくださらないものですから、障害者の基金を取り崩すような形で今回だけは出来るのですが、来年度以降、夏、冬それぞれ4年に一回あり、2年に一回こういう大会がありますので、なんとか毎回報償金を出してあげたいですし、こういうこともやりたいとなるとお金集めをしないといけないですから、できれば私を含めて街頭に出て募金活動をやるようなことをやりたい。それから、この前メダルを取ったオリンピック選手がたくさんいますから、彼らにも協力を呼びかけて広く国民の皆さんに、オリンピックはすべて民間でやっていますので、障害者の方もなんとか民間の基金を入れられればと。もちろん国の支援はできるだけやりますが、JOCと同じようにJPC、パラピックの方のJPCも。障害者の方々ががんばっているのを見ると私たちも元気になるし、そういう明るいニュースで皆さん勇気づけられますので、是非民間基金を作りたいと思っております。今その準備をしておりますのでJPCを受け皿にするかどうするか、そういう組織作り、さらに、例えば、浄財を送って下さる方がおられれば、この口座番号にということも検討しております。それから、もう一つは税制的な面で年末までの税制改正で法律を変えないと報奨金に税金が掛かります。オリンピックの報奨金は税金が掛からないようにしていますが、具体的に選手の方に金メダルで報奨金100万円を差し上げるのは税制改正が通ってからでないと税金が引かれますから、是非税制改正をやります。細かい技術的、事務的なことをがんばってクリアしていこうとしておりますので、是非障害者のスポーツを振興させるという施策をがんばってやりたいと思います。
それから3番目ですが、閣議が終わった後、10分ばかり総理と二人で話しをしてきました。それは「雇用・能力開発機構」の問題です。いろいろな観点から機構をどうするかということについて議論がありますが、まず始めに解体ありきということではなくて、改革の案をきちんと作る。例えば、「ポリテクセンター」とかそういうものを地方に移すのであればどういう財源でもって、どういう形でやればうまくいくのかという改革案が出来た上でやるべきであるいうことが総理の真意でありますので、それは私は話をし、きちんと現状を見て様々な意見を聴取し、改革の案を作った上できちんとやるという方針を総理にご確認いただきました。これからまだまだ日にちがありますから、茂木大臣と私の方で話をし、それぞれの関係者にヒアリングをして、そういう形で一歩一歩、国民にとって何が一番いいかという形で進めて行きたいと思います。「私のしごと館」についても500億円以上建設費が掛かったものを、解体して更地にするということは非常にもったいないですから、とりあえずは民間委託をしました。そこから先、どういうふうにして国民のために有効な使い方ができるかという議論をしたいと思います。拙速主義で、それから将来の青写真がない形でやるべきではないということを私は申し上げましたし、総理もその通りであるということで、その点は総理からもきちんと茂木大臣にも言っておくということですし、今後はきちんと議論をしながら前に進めて行きたい。雇用保険の中から出しているわけですから、無駄遣いはいけません。しかし、将来にわたって、今これだけ雇用の問題が大変な時であり、職業訓練を誰がどういう形で行うのか。それから、労働者の権利を守っていくというのは国の政策であるべきだと思っております。産業革命時代とは違いますので、21世紀の高度先進社会というのは働く人達の権利をどうやって守るか、失業した人達をどう守るかという仕事を国が放棄していいと思いません。ただ無駄があってはいけないので改革するところは徹底的に改革をする。しかし、感情論や何かできちんとした議論が無いまま進行するのは良くありませんから、国民にとって一番プラスになるような改革案をまとめたいと思っております。

質疑

記者:
具体的な「雇用・能力開発機構」の改革案というのは、省内にも検討会がありますが、今おっしゃられたしっかりした改革案を作るというのは、どこでいつごろまでに誰が作るのかということが一点と、今おしゃったことの確認ですが、茂木さんのところの案との大臣の違いというのは、国の機能という一点と思ってよろしいでしょうか。
大臣:
例えば、地方移管をしますというのは、それはそれでも構いません。しかし、雇用保険というのはどういう保険であるかというと、ネーションワイドで国全体でやっているわけです。だから、地方移管するのであれば論理的に言えば、47都道府県がそれぞれバラバラの雇用保険を作ればいいのです。鳥取県は鳥取県の雇用保険でそこの原資を元にして、そこで職業訓練をやるようなことをすればいいでけど、それは無理です。そのような保険は企業の数も少ないですし成り立ちません。だから、国全体でやっているから成り立っているのであって、例えば、地方に移す時にそういう形で改革をするのか、それとも他の方法があるのかと詰めなさいということで、何月何日までにどういう形で決定しろという指示は総理から私は受けておりません。だから、昨年の暮れに私と渡辺喜美大臣と決めたのは、例えば「私のしごと館」について言いますと、これはとりあえず民間に委託させようということで公募しまして、それで、2つの会社が出てきて民間委託を始めているわけです。それから、「雇用・能力開発機構」についても1年を目途にして議論をしようということで今議論をしているところです。1年を目途にということですから、12月くらいでしたのであれからまだ1年経っておりませんから、それから言うと9月いっぱいに決めないといけないということではありません。やはり、拙速主義でマイナスの結果が出るよりも、きちんとしたことであればいいと思ってます。今のような点は答えが出ていないのです。地方移管でも構いませんが、地方移管した時に失業した人に対するハローワークと同じなのです。ハローワークは例えば、国際条約で言えば国が全体として面倒を見なくてはならないという国際条約があるのです。それを勝手に崩すということは違反になる面があります。それから、今私は国がということを申し上げたのは、大企業は自分たちの従業員を訓練するシステムを持っていますが中小企業はそんなお金がありません。その時に今在職している従業員の人達がレベルアップしないといけない、旋盤をやっていてもさらに進んだ旋盤の技術が必要をいう時にどこで訓練するか。今、機構が持っている訓練施設で行っていて大変助かっている面がありますので、地方の方からはなんとかこれを残してくださいという陳情が私の所に来てます。ですから、こういう現状も見る。しかし、どこまで民間に出来るか、それから、地方独自でどこまで出来るか、これはしっかりとした財政的な措置も含めてきちんと答えを出す作業が必要だと思います。
記者:
茂木さんところの有識者会議で議論が進んでおりますが、それはそれとして厚労省で改革案を作るということですか。
大臣:
それはそれとしてではなくて政府全体の案ですから、政府全体ですから二人の大臣が別の方向を向いて閣内不統一では駄目ですので、政府全体としてどういう方向で改革するかということで行うべきだということなのです。ですから、それは今議論を進めているところで、総理もその通りだということです。
記者:
繰り返し確認ですけれども、これまで検討会議の方で、あるいは、厚生労働省の方でそれぞれに案について検討してきたと思うのですが、それとは別に何らかの改革案について一定の時期までに出されるというような理解をしてもよろしいでしょうか。
大臣:
途中で閣僚が代わりましたが、政府全体として昨年末に決めたことは、1年を目途にして、存廃も含めて機構については検討するということであり、今検討を進めているわけです。有識者会議というのは、国の全体の行政システムの会議をやり。こちらの会議は、しごと館であるとか機構についての議論をやっている。それで、例えば、私のしごと館で我々の方の会議の富士電機ホールディングの加藤さん、これは総理にも現状こうですよと申し上げて、例えば、関西の経済界はこれだけ協力しますよということで、それは確か9日の日に茂木大臣のところに行ってきちんとそういう話も聞いてもらうということを今日茂木大臣からも聞きました。そういうことなので、きちんとした決定は1年を目途にしてその結論を出すということですから、12月ということです。それまでに出せばいいので、今週中にやれとか、そういうことではありません。最終的には、政府全体の方針として決めないといけないと思います。
記者:
自民党の総裁選がもうすぐ告示されますが、複数の方のお名前が挙がっていますが、どなたかの推薦人になれる、もしくはどなたかを支持されるというようなお考えはありますか。
大臣:
まだ全く何も決めてません。今この機構の問題であるとか医師不足の問題とか閣僚としての仕事が山積しておりますので、ちょっとそういうことを考えるゆとりもなければ何も決めていません。現実に政策をどなたもちゃんと発表していないので、政策も見ないでどなたが良いというわけにはいきませんから、それは、政策をよく見た上で考えたいと思います。
記者:
前回の会見で大臣自身の総裁選への出馬は全く考えてないとおっしゃられていましたが、今もそのお考えに変わりはないでしょうか。
大臣:
全く考えてません。今はとにかく朝から機構の問題をどうするかとか、そういうことをやっているので、閣僚としての仕事を粛々とやるのが私の最大の義務だと思いますからそれを今やっています。
記者:
総務省が介護現場の人材を確保するために介護報酬の引き上げ等を含めて検討するよう勧告をされたと思うのですけれども、そのことについて大臣どのように受け止めていらっしゃいますか。
大臣:
私自身は、総務省からの勧告を待つまでもなく、現場を見て、非常に劣悪な労働条件の中で働いていると思っておりますので、それは介護報酬を引き上げる方向で年末に介護報酬引き上げの方向で努力するというのはこれまで再三申し上げてきたのでそれは全く変わっておりません。ただ、そのために基本的にきちんとした調査が必要で、総務省のご提言もそうであるし、我々は今調査をしております。非常に働く条件が良い事業所もあります。そうではなくて、めちゃくちゃ悪い所もあります。だから、この実態をきちんと調査をした上で、では、これくらい介護報酬を上げるべきである、給与はこれくらいでないととてもじゃないけど離職率が高くて来る人がいなくなるなという実態を踏まえた上で、きちんとした答えを出したいのですが、問題は、介護保険料に跳ね返ってきます。従って今、こういう経済状態の中で、国民のご負担がどこまでお願いできるのかなということも考えないといけないので、介護報酬の引き上げということとそれに対応する形での介護保険料の引き上げ、このバランスは注意して見ていきたいと思います。その他にも保険料だけではなくて、例えば、経験が無い、未経験者であってもそこで自分の事業所で雇い入れて訓練しながら鍛えて資格を取らせてあげながらやっている非常に良質な経営者に対しては助成金をあげるとか、そういう支援策も様々盛り込んでありますので、全体的に介護の現場で働く方々の処遇、待遇というものを改善するために努力をしたいと思いますし、総務省のご指摘も重く受け止めて、私はその通りだと思います。そういう方向で努力したいと思います。
記者:
ドラッグラグの問題なのですが、5月にちょっとお伺いしたのですが、卵巣がんの抗ガン剤ドキシルの迅速審査が行われているのですけれども、アメリカではもう1999年の10年前に承認されていまして、10年経っていまして、迅速審査中と言ってまだなかなか承認されていない現状についてどうお考えでしょうか。
大臣:
いつも申し上げておりますように、安全性の確認ということは、かつてのサリドマイドのようなことがあるといけませんので、それはきちんとやらないといけない。今一所懸命臨床含めて安全性の確認をやっているところであります。何もやっていないのではなくて、平成19年1月に申請されたものを今審査を行っている。それで、安全性の確認、これはできるだけ早くと思っておりますが、ただ、一番問題なのは、多くの人が罹患される疾病だと治験の数がすぐ集まるのですけれども、どうしても難病になると数が集められない。そうすると、例えば、アメリカの治験のデータだけでいいかとなると、別に人種差別をするわけでも何でもないですけど、やはり日本人と欧米人で違うところもありますから、やはり日本人に基づくデータをとらないといけないと思い、少し時間がかかっておりますけれども、頑張ってやりたいと思っております。それから、今別にいろんな、このドキシルの注射だけではなくて、いろんなものがあるのですけれども、同じような成分が含有されている注射剤は既に卵巣がんに使われているわけなのですけれども、マイクロカプセル化することによって改良されるということで、患者会の皆さん方のご要望も非常に良く分かっています。是非これは命に直結しますのでできるだけ早く、そしてそのドラッグラグの解消、今年度予算でも人員の増加含めてやっており、本当に頑張ってやりますのでもう少しお待ち下さいとしか今言えません、安全性ということで。しかし、患者会の皆さんのご要望はきちんと受け止めて動かしております。
記者:
繊維筋痛症という原因不明の痛みに苦しんでいらっしゃる方が日本で200万人いると言われていて、実際その痛み止めの薬はアメリカ等で承認されているのですが、日本ではまだ治験も始まっていないような状況ですが、これに関しては。
大臣:
これは、先般直接患者の皆さん方に私も数回お会いをしています。本当に大変だなということが分かります。そういうことで、これについてもできるだけ早く手を打ちたいと指示をしたところです。ちょうど先般お会いしましたので、いずれにしても、今までわずかに25億円しか難病対策費がないというのは私はおかしいと思ったので、これを絶対100億円にするということで予算要求を出しています。これだけは絶対に譲れない。つまり、4倍になればそういうことの研究についてもできますし、それから、厚生労働省改革にも繋がりますけれども、薬品の審査、ドラッグラグ、これを5年計画でアメリカ並みに1.5年まで縮めることをやっております。そのために人もお金も必要となります。だから、これは、今からどういう方が総理になられるにしろ、政策論争の話ですけれども、やはり国民の命を守っていく。そして、数が少なかったり多かったりするけれども、そういう難病含めて病気に対しては、やはり国民全体が皆が支援をして一日も早く治療法が確立するという方向で努力する。そういう国が本当の先進国だと思っておりますので、先程の記者さんの質問ですけれども、そういう政策をきちんと出される方を私は総裁選においては支持をしたいと思っております。
記者:
臨床研修制度の見直しなのですが、地域の医師の偏在を招かないためには、一つは、大臣もお話しされた大学病院の医師派遣機能をまた取り戻す方法とまた別の枠組みでの医師の配置のシステムを作るという二通りあると思うのです。これからそれこそ検討会が議論をして提言するものだと思うのですが、大臣個人としてはどちらの方向性で進めていくのが望ましいと。
大臣:
おっしゃっている二番目というのは、ある程度規制をして、例えば、診療科の偏在だとどうかとか、君はここに行きなさいというような形での制度を作るということですか。
記者:
あとは国公立病院みたいなのを活用するとか。
大臣:
もう一つ地域枠を作っていく。それで見てみますと、例えば、山形県出身の学生は、やはり自分の家族がいますから山形県で開業したりとかお医者さんになる確率が高いので、そうするとやはり山形大学は山形県の学生を入れる枠を作る。これは非常に有効だと思いますので、これをまず進めていく。私は原則として、規制をやったり懲罰的な、パニッシュメント的なことをやるのは反対なのです。それは、日本国憲法は、職業選択の自由も住所選択の自由もありますから、そういうことをやって引っ張っていくというのは反対なのです。むしろ、パニッシュメントではなくて、インセンティブを与える。そうすると、出身県枠というのは、ある意味でインセンティブになるわけです。そして、皆さん今岩手県が奨学金を差し上げる、自分の所の出身者に奨学金を差し上げるというようなことをやっておりますから、奨学金制度。それから例えば、僻地に進んで行ってくれる若いお医者さんはその勤務が終わったら同学年の中で一番最初にアメリカ留学をさせてあげるとか、そういうことをやることが大事だと思います。それで問題は、なぜ文部科学省と一緒にやらないといけないかと言ったら、私は、そんなに今の若い人が安易な気持ちで、例えば、これはお金儲けやすいからやりたいということで医者になっている人はほとんどいないと思います。やはりお医者になる以上、命を救いたい、そして、今でも絶対産科をやりたい人がいる。あれだけ訴訟リスクがあったって産科をやりたい、外科をやりたい、一番難しいのをやってみたいという若者がいっぱいいる。その時に、なぜそういう若者が挫折するかといったら、この6年間の教育の中で本当に良い先生に巡り会って、こういう先生のようになりたい、我々だって皆そうですけれども、薫陶という言葉ですけど、その先生の薫陶でということをやはりやっていけば、それは本来の教育の姿だと思うのです。問題は、ここに診療参加型臨床実習というのがあります。ここの教育もありますけれども、これらの連動が上手くいかない、ここで一回学んだことをここでやるのだったらもうやる気がなくなる。それと、もう一つは、ここで教える先生達の問題があるのです。それは、私も大学の先生でしたから、研究者としての能力と教える先生としての能力は違うのです。特に医者の場合、手取り足取り教えないといけない。本当に学生に、この臨床実習をしっかりやっていたら論文書く暇がありません。文部科学省が補助金という形で医学部に出す時に、論文の数で審査するのです。そんなことをやっているから論文は書けるけど、学生に教える先生が開業医になっていなくなっちゃう。そういうことも問題の一つなのです。ですから、理想を追いすぎているかもしれません。だから、今日、明日やるためにはもう規制をかけたり、枠を設けてぱっとやれというのもあるかもしれませんけれども、できればそういう理想を追い求めて若者が本当に意欲を持ってやれるような体制、それはむしろ医学部6年の教育から始まるということで文部科学省と一緒にやります。それと、この2年の研修期間の中で、いろんな科目をやるのはいいのですけれども、例えば、産科を三ヶ月やっているだけで分娩できますか。それならば、その人が例えば外科をやるとか内科をやるって決まっていれば、そこに集中してやるというやり方も一つあって、今そのバリエーションを考えております。場合によっては、ですから、そういう方については、2年ではなくて、短縮するというのも有り得ると思います。そういうことも含めて先程のメンバーの方々に議論をしてもらいたいと思います。だから、私はいろんな現場を見たりして、大学の先生の仲間もいっぱいいるので、聞いて、皆さんおっしゃること個々ばらばらなので、そういう全く垣根のない自由な議論をしてもらって、そして答えを出したいと思います。ちょっと答えになったかどうか分かりません。
記者:
機構について二つお願いします。一つ、茂木さんの研究会の方では、機構は廃止だと。細かいところはともかく、機構は廃止だということで、17日に決定したいといっていますけれども、先程のお話しでは17日は決定しないということで良いのかということが一つ。国の職業訓練について、国の政策でやるべきというお話があった一方で、財源問題、雇用保険の財源問題だけ解決すれば地方に移すことは問題ないというような趣旨のご発言がありましたけれども、その辺の真意というのはどうでしょうか。
大臣:
後者について言ったのはそういうことではなくて、地方に移すという案が出ているから、移すならば財源を含めてきちんと案を出しなさい。それから、そもそも雇用保険というのはどういう仕組みでやっているのか分かっているのですか。地方に移すならば47個の雇用保険でやるのが筋でしょ。そうでないなら他の案を出しなさい。最初の問題にも関わりますけれども、例えば、厚生労働省を改革しますってやっている。解体します、厚生労働省はけしからんから解体します、それだけ私が言ったら文句言いませんか。どこが悪いからどういうふうに変える、医薬食品局のどこが悪いからPDMAとどうするというのを今積み上げてやっている。そして、あらゆる改革は、ただ人事を動かしたり紙の上で組織を変えたりして動くようなものではないし、現実的に効果が出ないと駄目なのです。だから、厚生労働省改革というのは、これをやったからC型肝炎の方が救われました、こういう仕事をちゃんと今までやらなかったのにやったからお医者さん増えますね、こういうことをやったから日雇い派遣で苦しむ若者が少なくなりますね、ということをやることが私は改革だと思っています。解体する、改革すると口で言うのは簡単です。組織を紙の上で書き換えるのは簡単です。だけど、その結果として、職を求めている若者、その結果として職業訓練をやりたいと思っている技術者、そいういう人達が困るようなことがないようにしないといけないということが私は改革だと思っておりますし、一年間この省にいてやってきたことはそういうことであって、結果を出すしかないです。ですから、始めに厚生労働省解体ありきではありません。肝炎で苦しんでいる人をどう助けるか、フリーターの人をどう助けるか、緊急の病院がなくてたらい回しにされている患者をどう助けるか、それに対して答えを出すというのが正に改革の姿。その答えを出すときに邪魔する者がいればその組織を変えていくという順番はそうだと思います。そうすると、今の「雇用・能力開発機構」であれば、職業訓練がいい加減です、こんなものはお金の無駄遣いだから一切そんな職業訓練はいりません、というならばそうすれば良い。だけど、そこで一定の成果が上がり、一定の受益を受けている人がいる。そういう人達を切り捨てた時にどうなるかを考えてからやらないと無責任ではありませんか。だから総理も今日おっしゃったのは、どういう案にするのかを出しなさいということで、始めに解体ありきとか廃止ありきというのは全く生産的ではないのです。皆さんが掛けている雇用保険の掛け金を無駄にしてはいけない。国民が出しているお金を無駄にしてはいけない。そのためにこそ緻密な青写真を描くべきだということですから、その青写真を描くのが拙速であってはいけないということを言っているのであって、約束は今年の年末までですから、そういうふうに思っております。これは、福田総理が辞任するというのは、総理の政治家としての決断でありますけれども、福田内閣が終わるからどうだとかという話では全くなくて、どういう内閣であれ、国民の目線に立ってどういう改革をすべきかということを私は主眼としてやるべきであるので、私は大臣として勤める最後の日までその視点でやっていきたいと思っております。ただそういうことで苦言を呈すべきは総理にも呈す。茂木大臣に対しても呈する。自分のところの省益を守ろうとか、そんなけちなことは考えたことはないです。国民がどうすれば幸せになるかという観点からだけ考えているということを申し上げたいと思います。
記者:
確認ですけど、17日にむこうの会議はおそらく廃止ということで決定すると思うのですけれども、むこうの会議が決めたからといって機構の廃止が決まったわけではないという認識で良ろしいですか。
大臣:
決定すると思うけれどもというのは、それはあなたの予想であって。
記者:
茂木さんもそう言っていますし。
大臣:
決定してから考えます、その時に。17日はまだ福田内閣が続いていますからそこで政府全体として決める。内閣総理大臣は責任を持ってそれに断を下すということであるし、それは、誰に決定権限があるかと言ったら政府全体です。私も政府の一員ですから然るべきことはきちんと然るべきと、申し上げる。十分ヒアリングをやりましたか、私の意見を十分聞きましたか、大臣含めて全部現場を見てきたか、そういうことでご判断をいただきたい。いたずらに対立をあおるとかということではなくて、拙速でやって一番泣くのは国民なのです。しかし、片一方で、国民のお金を無駄にしてはいけないから、大なたを振るって改革をやる。その両立を目指すべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。
記者:
労働者派遣法の件なのですけれども、大臣も臨時国会での提出、成立に非常に熱意を示していました。ただ、今回の退陣表明でそれが相当難しくなっているという見方が広がっています。労働者保護、労働者を取り巻く環境の改善にむけたことが遅くなるのではないかという見立てについて大臣どんなふうにご覧になってますか。
大臣:
これは、これからの政局の動き次第だと思いますから、24日にもし臨時国会が招集されてそこで首相指名があればそこで新しい内閣が生まれます。基本的には、臨時国会をやるわけですから、私は、国対ともよく相談をしないといけないですけれども、基本的に日雇い派遣の問題等についての法律は、きちんと早く出して、それは党派を超えて早く成立させるべきだと私は思っておりますので、その努力は続けます。ただ、次に総理になられる方が解散権を持っておられるわけですから、それはどこで解散をするかいつ総選挙になるのか、そういうことは分かりません。分かりませんが、今申し上げるべきことはこの臨時国会においてきちんと私の所管する今まで申し上げた改革のための様々な法律案、施策はきちんと臨時国会でやってもらいたいと思っております。

(了)