川崎大臣記者会見概要

H18.08.03(木)17:20~17:45 省内会見場

広報室

会見の詳細

社会保険庁国年保険料免除問題について

大臣:
この2月頃から端を発しました、社会保険庁の国民年金保険料の不正免除問題について、国会でもいろいろなご議論をいただきましたし、また、マスコミ等を通じて国民の皆さん方の厳しいご批判をいただいてきたところでございます。その中で、私が会見でも、また国会の答弁でも再三申し上げましたように、今私どもに課せられた仕事は事実関係を明確にすること。まず、それを明確にした上で、次に何をしていくべきかというのを判断をしたいと申し上げてきました。そういった意味では、社会保険庁の事務局、また出先機関からの報告、第1次、第2次の社会保険庁本庁を含めた内部調査、そして先ほど岡田政務官から報告があったと思いますけれども、外部の方も入っていただいた検証委員会における第三者調査と言いますか、そうしたものを経た中で、私から総括的にお話し申し上げ、その後、村瀬長官から社会保険庁の詳細についてご報告をさせていただくという手順になります。
まず、法令等に反する事務処理が全国各地で行われていたということがはっきりしてまいりました。誠に遺憾であり、改めて心から国民の皆さん方にお詫びを申し上げたいと思います。今般の社会保険庁の第3次調査報告書では、免除等の不適正処理についての事務所・事務局・本庁における詳細な対応状況、国会から指摘等があった「その他の不適正処理」に係る具体的な調査結果、これらの問題発生の構造的背景と再発防止策について取りまとめてもらいました。今般の事案が生じた原因には、「事務局・事務所の問題」として、コンプライアンス意識の不足、地方事務官制に由来する組織としての一体性やガバナンスの不足、独自の判断で事務処理を行う組織風土の問題があったとともに、「本庁の問題」として、こうした事務局・事務所の構造的な問題を解消するための改革が未だ途上にあったことに加え、今回の報告書において、新たに明らかになったように、事務局・事務所での不適正処理を把握できる可能性のあった端緒情報が、本庁の担当者レベルで留まっていたことにより、的確な判断の下に未然防止・拡大防止を図ることができなかったこと。初期の調査において、事案の多様性や全国的な広がりを想定できずに、徹底した調査にならなかった等があったと考えております。また、本日、検証委員会からも委員会としてとりまとめた報告書の提出がありました。検証委員会の委員の方々には、外部の視点から検証を精力的に行っていただき感謝申し上げたいと思います。検証委員会の報告書においては、地方事務局からの照会等への対応が本庁職員の個別的な対応にとどまり、組織的な情報共有、活用が不十分であった。不適正な事務処理が行われている可能性を示す情報の端緒を活用できなかった等の指摘がなされ、不適正処理が行われることを前提としたシステムづくり、各事務局等に対する指導内容や照会対応等に関する情報共有と組織的、迅速な対応等のご提言をいただいております。これについては、社会保険庁改革の中で生かせるよう、社会保険庁に検討を指示することと致しました。また、今後、関係職員に対しては、早期に、これは8月末だと考えておりますが、「停職」を含む厳正な処分を行うとともに、次回の人事異動において、「降任・降格」を含む厳しい人事上の対応を行うほか、様々な再発防止のための取組に迅速に対処してまいりたいと考えております。今、予想される規模として、この処分は2,000人弱になるだろうと思います。そういった意味では、職員の1割以上がこの事件に関与していたということでございますので、先ほど申し上げましたように、誠に法令遵守という精神が社会保険庁の中に欠けておったと、多く欠くところがあったということについて、厚生労働大臣としても重ねてお詫びを申し上げなければならないと思っております。また、この処分を厳格に行うということを明確に示す上におきましても、厚生労働大臣即ち私、そして社会保険庁長官として厳しい処分や人事異動の対応を行うにあたり、その姿勢を示すために、今後私自身の在任期間中、何カ月になるか分かりませんけれども、大臣としての給与を全額返納させていただきます。また、私自身のこうした方針を受けて、長官からも人事権者として自らを厳しく律していきたいとして、給与の一部自主返納の申し出があったところでございます。今回の事案を踏まえ、業務改革・意識改革・組織改革を更に強力に進めるなど、国民の信頼回復に向けて最善を尽くしてまいりたいと思っております。先ほど申し上げましたように、事実解明という段階が、ある意味では終わった、報告があったということでありますので、これから次の段階に入らせていただくということで今日の会見を持たさせていただきました。冒頭申し上げましたように、8月末には、この問題の全体的な処分というものを明確にしていきたいと考えております。以上です。

質疑

記者:
今、大臣の返納のお話がありましたが、これは8月分からということでよろしいのでしょうか。
大臣:
そうですね。もう8月になってしまいましたので。
記者:
おそらく職員の1割の処分ということで、つい最近というか、先頃にのぞき見関係で1割の処分が出て、また1割かというのが我々の率直な感想なんですが、社会保険庁にこれから全力を尽くされるということだろうと思うんですけれども、新たに今回不適正な不在者処理というのが10万件も浮上してきて、この社会保険庁というのが本当に立ち直れるのかどうかというのは非常に疑問視されるところでもあると思うんですが、その辺の認識はいかがでしょうか。
大臣:
2年前の個人記録データをのぞき見するという事件等々で、昨年処分が行われた。その処分対象者は、どちらかと言うと末端の職員が多かった。今回の事案に関係した人たちは、どちらかと言うと地方にいる事務局長をはじめ幹部職員が多い。そういった意味では、前回の末端の職員、今回の地方の幹部職員、ご指摘のとおり、社会保険庁全体が法律を守るという意識に欠けている組織であったという厳しいご批判がありますし、また私もそのように思います。しかし一方で、毎日国民の皆さん方の厚生年金・国民年金をお預かりし、年金を多くの年金受給者にお渡しいたしますと同時に、お預かりするという仕事、特に20歳から60歳までお預かりし、65歳から支給していくという40年~50年にわたる長い仕事をしてもらわなければならない。日々動いておりますので、この組織を出来るだけ意識の上でいいものにしていかなければならないと思います。しかし一方で、現状の組織において、改善が進むかと言えば、この2年間の論議でも明らかでありますとおり、また私どもが出しました社会保険庁を廃止し、解体的な出直しをし、ねんきん事業機構を作るという中にも示されておりますとおり、この組織自体は全体を変えなければ駄目だ。したがって、個人の資質の問題ももしかしたらあるかも知れません。しかし多くは、この組織に問題がある。したがって、この組織を変えることによって、より国民に奉仕できる、サービスが出来る国の機関に変えていかなければならない。こういった思いを持っております。また、変えるのが我々の仕事であろうと。ですから、先ほど申し上げたように、個人に起因するのか、組織に起因するのかと言えば、残念ながら組織の形態というものに起因するという思いを私は持っております。
記者:
先ほど2,000人弱というお話がありましたけれども、停職というお話もありますが、その中で、いわゆる懲戒にあたる方というのは、何人くらいいるんでしょうか。
大臣:
これは分かりません。まさに、今日、事実関係を明確にして、これから一人一人当たります。一人一人当たって、どのような個人がどのような関与をしてどういうことになるか。これは長官から細かく説明があると思います。しかし、だから何人がこうなったということは今の段階で言えません。これから1カ月弱の作業の中で、きちんとして発表させていただきたいと思っています。
記者:
現行の社会保険庁の職員が新組織に移っていって、本当に新しい組織は立ち直るのかという疑問が当然また出てくると思うんですけれども、そういうことを踏まえて、今継続審議中になっている改革法案の取り扱いは大臣としてどういうふうにしていくおつもりなんでしょう。
大臣:
これは、昨年のいろいろな議論、有識者の会議も含めて、様々な議論の中で、やはり先ほど申し上げましたように、この組織の形態、要は1つの県の中で、ずっと仕事をしている、異動はない。また、本庁から幹部職員が一人上に乗っかっていく、まさにガバナンスがないという形態から起きたことであろうと。したがって、法案の審議中にもご説明申し上げたように、県内組織というものをまずなくす。広域な組織のものに変えていくという中からスタートをしていくということになる。それによって変えていく以外ないだろうと考えています。
記者:
法案は大きく修正はもうしないというふうに考えていらっしゃるんですか。
大臣:
基本的に、与党の皆さん方にこの報告をこれからして、処分も発表させていただいた後、どういうところをもう少し直すか、たぶん厳しめに直せというご意見は出てくるだろうと思います。しかし一方で、2万人弱の職員がいる中で、私が申し上げた、日々仕事は動いていることは事実なんです。毎日、毎日仕事は動いていることは事実です。今日も保険料徴収のために歩いてもらっている職員がいることも事実なんです。そう意味では、やはり組織というものを明日これをゼロにしてしまって、新しい組織を作れと言っても、人を100%入れ替えるというのは現実に不可能な話であろうと思います。
記者:
大臣給与の返還というのは、大体どれくらいの期間を想定されているのでしょうか。
大臣:
私があまりこれ言うのはよくないでしょう。しかし、常識的には、小泉内閣が9月20日の自民党総裁選挙を受けて、次の構造を迎える。
記者:
いわゆる本庁の関与について、社会保険庁の報告書と検証委員会の報告書で、若干のニュアンスの違いはあると思うのですが、大臣は両方の報告書をご覧になって、改めていわゆる本庁の関与については、どのような認識をお持ちですか。
大臣:
結論的に言うと、私の感じから言うと、今回このような不正免除問題というものを、本庁が的確に動いたとしても、これを止めることはできなかったのだろうと思います。しかし、こんな7月、8月までかかって調査をしなければ、事実が明らかにならなかったということではないのだろうと思います。もっと言えば、京都の事案が明確になった時点で、きちんとした対応をすれば、3月、4月時点で、全容を掴むことができたのだろうと思います。そういった意味では、不正免除をしたという一つの行為と、法令違反、その後、本庁の調査に対して正しい回答を出さなかった組織の問題点、実は私は後者の方が重いと思っている。また、本庁も正しい事実を掴む力、報告させる力がなかったということも事実だろうと。まさに、組織を挙げて、全部2か月、3か月間というものを、これにかからなければ、事実が報告されなかったということは、極めて重い。そういう意味では、いろいろな処分というものも、この二つの事実を積み重ねた上でやっていくということになる。
記者:
そういった意味ではですね、2月に三重のケースで、四日市の方から情報提供があったにもかかわらず、大臣のお言葉で言うと、担当者レベルで止まって、結局そこでうまく動いていれば、止められたと思うのですが、そこに関して、社会保険庁の報告では、三重の事務局と本庁の方で、言い分がだいぶ違っているのですが、結果として、黙認していた事実もないというふうに書いてあるのですが、これに関してはどう考えるのですか。
大臣:
京都の事案が出た時に、他所の事案もいろいろ出ているわけです。したがって、一つ一つの問題に対して、疑いを持ってかからなければならなかった、残念ながら本庁の職員は。しかし、自分から言ってあるからやっているはずだと、ある意味では独りよがり。やっているチェックをしなければだめなのに、やっているチェックをしなかったのに指導したのだからやっているはずだと、そんな四日市からわざわざ情報をもらって、他の市にも及ばない、やってない、こういうふうに思い込んでしまったということになると、やはり先ほど申し上げたように、こういう事案が出ている中ですから、疑いを持つべきだったのでしょう。もっと言えば、三重の方が前ですから、京都の事案が出た時に、あの時三重はどうだったのだという話をしなくてはいけなかったのかなと思います。
記者:
確かにそのとおりで、何度も気づくきっかけはあったと思うのですが、それでも、この方だけではなくて、他の例でも、いくつか気づく端緒があったと思うのですが、そこでも気づかないで、結局この8月までわからなかったわけですよね。はっきり言って、常識的にはちょっと考えられないことだと思うのですが、これに関して、言い分が互いに違うのに、そこをそのまま保留したままですね、それでも本庁が黙認していた事実はないと言い切るという感覚はどうなのでしょう。
大臣:
本庁が、検証委員会でも調べていただいた結果、現実問題として、自分はこの問題を三重県の事務局にしてはならないということを伝えた、だから、それで是正されているものだと思ったと、まさに独りよがりであることは間違いない。
記者:
でも、相手はそういうふうにはとっていないですよね。会話を見る限りですね。
大臣:
両者の間の、言い様の違いはあるのでしょうね。しかし、流れ全体としては、ではそれをなんで止めなかった、3月になったら京都で止めたけど、三重ではやらなかったのですかという話になると、一つ一つの事案が出た時には、だめだだめだと言っているのですよ、ずっと。だから、黙認したということは、その文章を見ても感じられない、私は。あなたのような論法とはちょっと違うなという感じはします。
記者:
国会でも、村瀬長官の責任問題というのが話題になったわけですけれども、今回全ての調査が終わった段階で、改めて長官の責任問題については、どのようにお考えですか。
大臣:
これも何度も答えているとおり、2年前から、この組織の形態では、なかなか職員の士気を高めてやっていくのは難しいと。しかしながら一方で、その組織が改革されるまで、その組織が変わるまで、仕事が全く止まっていいのかということになると、日々の業務の中で、組織が変わらない中でも、よりよい職員にしていかなければならない、よりよいサービスを提供できる社会保険庁に変わらなければならない、そうした努力を、村瀬長官がしてきたということは、多くの人が認めるところだろうと思うのです。結果論から言えば、やはり組織が変わっていなかったために、長官の苦労というものが実っていないのだなあという結果になっていることは、事実だと思います。しかし一方で、やはり長官が進めようとした意識改革というのを、我々は強く尊重したい。したがって、長官自らも、先ほど申し上げた自分を律したいということで申し出がありました。それは、私自身もそんな思いですから、私と長官が、まず責任者として、一つのけじめをつけましょうと。しかしながら、改革に取り組んできた長官を、下の人がその改革に対してしっかりついてこれなかったから、ここで長官を辞めなさいというのは、まさに改革を止めなさいということに通じるなという思いを、私はしていますので、この厳しい中で、もちろん長官自身いたらない点はあったかもしれない、そこもご本人が反省してもらいながら、しかし、2年前から進められている改革の火というのを消さずに、進めてもらいたいと思います。これに呼応して、早く組織を変えてしまわないと、いくら職員の意識改革だけで取り組んでもうまくいかないと、こんな思いをしております。
記者:
今回の調査報告の中で、新たに不適正な不在者登録処理というものが、10万件も出てきたということについて、どのようなご感想をお持ちになりますでしょうか。
大臣:
これも先ほども言いましたように、国会の中で指摘されまして、そして、事実関係を調べるという中で、今言われたように出てきた。かつ、これは、どうもこの1、2年の話ではなく、随分長い間続けられてきたような感じを私は受けています。断定はしませんけれども。そういう意味では、まさに社会保険庁の体質の問題であろうと、したがって、これを直さなければならないと、改めて思っております。
記者:
今の点について、再度詳細な調査をするおつもりはないでしょうか。
大臣:
やっていますよ。村瀬長官から話があると思います。細かい内容に踏み込んだものについては、村瀬長官なり、先ほどの岡田政務官に。私は総論として申し上げている。そこは、ご理解を賜りたい。

(了)