川崎大臣記者会見概要

H18.06.01(木)17:40~18:03 省内会見場

広報室

会見の詳細

出生率について

大臣:
昨年の暮れに人口減少社会に入ったという会見をさせていただきましたけれども、平成17年の合計特殊出生率について最終数値が出ましたので、ご報告申し上げます。平成17年の合計特殊出生率は1.25と過去最低の水準となりました。少子化の進行は、次代の労働力人口の減少など将来の経済社会に深刻な影響を及ぼすものであり、国の基本にかかわる重要な問題と認識をいたしております。現在、「少子化対策に関する政府・与党協議会」において、政府・与党一体となって、今月中に新たな少子化対策を取りまとめるべく、協議・調整を進めております。厚生労働省としても、これに基づき、少子化対策に全力を挙げてまいりたいと思います。同時に、今年の4月から、児童手当の対象を小学校6年生までにし、また、10月からは出産育児一時金を30万円から35万円にする。また、一方で、若者の就職の状況が少しずつ改善しつつある。また企業のそれぞれの場で、両立支援、育児や産休に対する理解が、少しずつ進んできているように思っております。一方で、概算ですけれども、1、2月の数字を見る限りは、少しずつ結婚等が改善してきているかなというふうに思っております。昨年が1.25で、今年がどういう数字になるか、これはまさにこれから、7か月の推移を見なければわかりませんけれども、いろいろな努力をしながら、少子化状況に歯止めを打たなければならないということで、政府としても、しっかりやらなければならないと思っております。また、合計特殊出生率をはじめ直近の動向を踏まえ、新しい人口推計の策定作業に入ることとし、社会保障審議会人口部会での審議を開始させます。第1回は6月30日を予定しており、これは委員会の答弁等でも申し上げておりますけれども、年内に数字は出していきたいと思っております。当然、来年の予算編成等の基礎材料ともなるものですから、従来ですと年越しになりましたけれども、なんとか今年中に出すようにということで、指示をいたしているところでございます。以上です。

質疑

記者:
前年と比べて、0.04ポイントの下落というふうになったのですが、この数値は予想より大きかったか、小さかったか、この辺の受け止めを。
大臣:
数字の計算ですからね。母親として、子どもを産む適齢人口の世代の数と、生まれた子どもの数との比較ですから、現実に106万3千人というのが分子であり、分母は今申し上げたものなので、きちんとした積算をすれば、ある程度の予測がなかったかと言えば、数字の話ですから。
記者:
この数字が現在行われている少子化の政府・与党協議会に与える影響などについては、どうお考えでしょうか。
大臣:
昨年の暮れに人口が減る社会を迎えました、子どもの出生数がずいぶん落ちました、ということを背景にしながら少子化の議論がかなり進んできたことは事実でしょうし、また、予算面でも、先程申し上げたとおり、様々な処置をしてきたところでありますけれども、より一層、0.04ポイント落ちたという数字上の事実が出てきたので、より議論が高まり、また、前向きな政策が立案されなければならないし、私どもから言えば、実行していかなければならないと思っております。
記者:
改めてなんですけれども、1.25という数字に対しての率直な感想を。
大臣:
率直な感想というのは、人口が減りますよという話を申し上げたのですから、今日ここにおられる全員が、1.29からある程度下がるという想定の下で、お集まりになっていると思います。ただ、ひょっとしたら1.27とか1.26ぐらいの数字になるのではないかという感触をお持ちだった方は、いらっしゃるかもしれないけれど、それはもう数字ですから。現実に、昨年生まれた子どもの数が、106万3千人しかいなかったというのだから、わかっている数字ですから。
記者:
少子化対策の関係なんですが、1つには、これまで政府のいろいろな対策を講じてきていると思うんですけれども、こういう形でなかなか下げ止まっていないと、政府のいろいろな対策、メニューはたくさんあるのだけれども、なかなか思い切って財源も投入されていないとかですね、その辺にも原因があるのではないかという指摘があるかと思うのですが、それに対してどういうふうにお答えになるのかというのが一点と、もう一点は、大臣がおっしゃったように、今回の数字を受けて、より積極的な対策に打って出ようという議論が、政府・与党内で高まると思うのですが、一方で、小泉内閣として、歳出改革ということもやっている。非常に制約がある中でですね、少子化対策にどれだけ財源を振り分けていけるかということも課題としてあると思うのですが。
大臣:
まさにそのところですよね。私どもは、昨年の106万3千人しか生まれなかったという数字を受けて、少子化対策に取り組まなければならない。また、猪口さんも、2月頃からかな、各地域を行脚し始めながら、各地域で多くの人の意見を聞きながらやってきた。我々も、とりあえずやれることはこういうことであるということを決めた。また、経済界の皆さん方といろいろな話し合いをして、国民運動的にもやらなければならないということで、この5、6か月を振り返りましても、今までやってきたことを総括しながら、もう一段とやらなければならないという中で、数字は先程言ったように、昨年出た数字を基に計算しているわけですから、ある程度予想された。しかし、現実に0.04下がったという数字で示されてみると、改めてしっかりとした政策をしなければならないという思いがしております。そこで、一方で、財政との関係もあるので、これは様々な形で私も申し上げながら、一歩でも前進できるようにしていかなければならないと思います。
記者:
今まで政府として、対策が今ひとつ足りなかったかなというような思いはおありですか。
大臣:
これは、保育の部分については、総理の号令の下でかなり進んできましたね。今年は、認定子ども園という法律も出して、保育と幼稚園これを1つのものにしていくという制度も出来上がってきた。そういう意味では、かなり進歩してきたんだろうと。それから、小学校6年生までの拡大、これによって、税での援助、それから企業の扶養手当、それから、私どもの児童手当が重なり合いながらある程度の形はついてきているんだろうと。しかし、やはり、この10年来の企業経営が極めて厳しい時に就職出来なかった若者、また就職しているけれども不安定な職場に居る若者、こういう人たちがやはり結婚というものに必ずしも結びつかない。すなわち、子育てということに結びつかない。ここが一番、私自身ずっと議論してきて多かったかなと。ちょうどこの世代に対して、例えば、安倍官房長官のところでも「再チャレンジ」ということで、打ち出しているように、やはりこの世代の若者の働き方、そして両立支援、まさに男と女、夫婦で子どもを育てるという環境づくり、この辺については、まだまだ我が国に定着していないということは強く思います。ここは、経済環境も少しずつ良くなってきたところですから、前向きに取り組んでいかなければならないし、企業も今年あたりから春闘の議論の中でも、随分そこへ配慮する会社自体の政策というものも出始めてきているように思います。そういう意味では、保育・経済的支援を併せて、やはり雇用の場での様々な政策がもう一段と進めなければならないなという認識をしております。
記者:
年金なんですけれども、常々1.39を2050年に達成できれば大丈夫だとおっしゃっておりましたが、想定よりも今低いところで続いているわけですけれども、年金を含めた社会保障に与える影響についてどんなお考えですか。
大臣:
もちろん私もこの1か月間今日の数字だいたい頭に入りながら話しているわけですから。1.39に2050年を目標に戻さないと年金制度自体が信頼のないものになってきますよ。よりマクロスライドをかけていかなければならない話になりますから、2050年、これから45年後に向けて、きちんと1.39まで戻れるような体制を敷かなければならない。それも、出来るだけ早く1.39に復元出来るような政策をしていかなければならない。そういう意味で、あくまで想定済みの中で話してきている。2050年ですから。年金の信頼性という意味ではね。要するに、このまま低位が続いて、とても30年、40年たっても1.39、1.40に戻れないぞということになると、これは、一部報道されているような話になるけれども、現実は、下がることは分かっていて頭の中で描きながら、2050年は1.39ですよと私はずっと言い続けているわけですから、そこはどうぞご理解をいただきたい。
記者:
十分戻せるというふうに。
大臣:
十分戻せると思いますよ。もちろん政策もかまなければならないし、国民運動的なものが広がっていかなければならないというものもありますよね。逆に言えば、国民運動的なものもある意味では、政策のうちの1つかもしれない。民間の皆さん方と話し合いながら、政治家があまり結婚しろ、子どものことをどうのこうのというよりも、全体的な雰囲気の中で作り上げていくものだと思いますから。経済界や文化人や、そういう方々に先頭に立ってもらいながら、そういう雰囲気は作っていかなければと、こういう認識は強く持っています。
記者:
大臣のご認識としては、今後政府の方で少子化対策も打つということもあって、この1.25という数字が、底の数字であるというふうに見通していますか。
大臣:
だから、これが来年、再来年になるのか、今日現在なのかという話になると。簡単に言うと、子どもを生む対象者の数は減っていくでしょう。前から申し上げているように、団塊世代のジュニア、これはどんどん移行してきますから、だんだん数的には減っていく社会になるのだろう。一方で、例えば、昨年と同じ数今年生まれたとしたら、仮定ですよ、同じ数の子どもが誕生したとしたら、出生率は上がる。分母と分子の間の話だから。だから、そこがどのくらいの数字になるかなという感じで、実は1月、2月、3月の数字もかなり注意深く見ているんですけれども、少し変わりつつあるのかなという、半分期待感込めて数字を見ているものだから、皆さん方に申し上げないんだけれど、もう少し政策を前に進めながら、数字をウォッチしながらやらなければならないと思っています。
記者:
婚姻数が伸びた背景というのは、何か思い当たることはありますでしょうか。
大臣:
1つは、ずっと下がってきた25~29歳、ここが少し数字的には落ち着いてきた。一方で、もう皆さん方お分かりのとおり、女性の30~34歳の結婚というのはずっと増えてきています。要するに、一番の子育ての世代は、我が国は今までは25~29歳だったわけです。それがだんだん30~34歳にスライドしていっている。25~29歳の結婚がだんだん下がってきてきていたのだけれども、どうやらここで一定の数字になってきたのかなと思います。一方で、感触として、30~34歳の結婚がだんだん増えてきて、その方々がしっかり子どもを育てようという気になると変わるだろうと。そこでさっきから話しているように、この世代、25~34歳という世代は、この10年間の経済が厳しい時に就職を志した人たちなものだから、なかなか厳しい環境にあったという認識を先ほど申し上げました。そこも、経済環境が変わると同時に少しずつ変わってくるだろうという期待をしております。
記者:
今回の数字を受けて、早速にも将来推計人口の見直し作業を始められるという話でしたけれども、これはかなり下方修正を余儀なくされそうだなというご感触は今お持ちですか。
大臣:
あんまり、ではないかな、正直言って。1、2年早く減少社会に入ってしまったことは事実だけれども、全体の流れとしてそれ程、例えば今年、去年生まれた子供たちですと成人を迎えて20歳になるのはあと20年後の社会だから、大きな流れの中の1つですから、今年度だけ比べて急に大きく数字が変化してきますよというのは、少し違うのではないかと思う。ただ、国民全体としては、例えば、ひのえうまの時に1.58に下がったと、それが平成元年が1.57になったと、ひのえうまの時よりも子どもが少なくなったぞという時に、1つのショックという表現を使いましたよね。そのショックの中で、いい方向に転換すれば良かったんだけれども、残念ながらいい方向に転換しなかった。今回は、逆に、この1.25というものを受けながら、減少社会に入ったというものを受けながら、何とかこの1、2年の政策の中で、反転する、簡単に言えば下げ止まる状況になるように我々は努力しなければならないし、我々より少し先に低くなってやっていたイタリア、ドイツが少し反転に入り始めたと最近の数字を見ていますとしていますよね。日本もそうありたいなと、そのためには、政策担当者である我々がもう少ししっかりやらないとという思いはあります。
記者:
個別の話ですが、保育園ですが、政府は何年かずっと増やしてきているんですけれども、まだまだ現場では足りないんじゃないか、入れないという声もあるようですが。
大臣:
数字的には、そう大きな数字にはなっていないです。15万人くらい新しく入る形だったかな。それで、まだもちろん新しい需要が生まれている。すなわち、夫婦で育てる、男も女も働きながら育てる時代にだんだん社会が傾斜していますから、だんだん需要というものが増えてきていることは間違いないし、しかし、そういうものの差が大きいよと言った神奈川県や埼玉県でも、かなりの数字までなってきたことは事実ですから。もう少しだろうと。特に、今年は施設的に補正予算と今回の本予算と2つでかなり予算的なセットもさせてもらったので、今まで早く保育園を作りたい、開始したいという人たちが少しずれていたけれども、今回の予算措置ではかなり前向きにいけたろうと思っています。
記者:
関連ですが、日本はお年寄りへの給付と子どもの給付のアンバランスが大きすぎるのではないかという議論があるんですが、今回の数字を受けて改めてどういうふうにお考えでしょうか。
大臣:
例えば、フランスやスウェーデンのように、国民所得費に占める負担率、社会保障等の負担率が60何パーセント使っているところと、我が国みたいな30%台のところと比較してみると、それは相当な議論になるでしょう。現実の話として。しかし、同じような規模のところと比べても、教育関係と子育ての費用が少し少ないという感じは私自身も思っています。そこは、我々担当者としては、少しでも増やしたいなという感じはある。しかし、スウェーデンの数字やフランスの数字を持ってこられると、では消費税何10パーセントにするんですかという議論になってしまいますから、そこは、もう少し落ち着いた議論をしてもらわなければならないなと思います。
記者:
20代後半の雇用政策を一段と進めたいというお話でしたが、今の段階で新しい政策について具体的なお考えは。
大臣:
まず今年の大卒・高卒に関しては、かなりの数字になったのは皆さん方ご承知のとおり、3ポイントか4ポイント改善していますから。ですから、今年の新卒はいいんだろうと、それよりも3年前、5年前に就職期を迎えた人たちをどうフォローアップするかというところが課題だろうと思います。例えば、高校の人たちですと、いろんな職業訓練の施設がありますから、そういうものを通じながらやっていく。一方で、大卒の人たちということになると、企業にもう少し中途採用の門戸を広げていただけませんかという働きかけをすることをやはりしていくことも大事。それから、ハローワークで現実にやっている仕事は、非正規雇用で企業がハローワークに相談に来る、求人がある。しかし、もうこういう仕事は是非正規雇用で出して下さいという形でお願いする。もしくは、今、割合順調にいっていますトライアル雇用ということで、これはフランスで随分問題になりましたね、2年間がトライアル雇用だったんだが、我々はそんなに長くないけれども、とりあえず雇ってください。その中で、正規雇用に切り替えていくというようなことで、いろんな政策を打っているんですけれども、企業も今の状況を見ながら少しずつ変わりつつある。正規雇用への動きになりつつあるということは、自分自身実感では感じています。

(了)