川崎大臣厚生労働記者会共同会見概要

H17.11.01(火)16:33~16:58 省内会見場

広報室

会見の詳細

質疑

記者:
厚生労働省の所管するいくつかの政策課題について、課題ごとに大臣の基本的なお考えをお伺いしたいと思います。まずは、医療制度改革からお願いします。医療制度改革については、厚生労働省案の中で高齢者を中心とした患者の負担増メニューというのは数多くありまして、それについては国民の反発もあるところであるんですけれども、この厚労省案について大臣はどのようにお考えになるのか。また、昨日の会見で見直すべきところは一から見直すというお話もあったかと思うんですけれども、具体的にはもし見直すとしたらどの点を見直そうとお考えなのかこの2点を合わせてお願いします。
大臣:
今、少し打ち合わせしてきたのは、基本的には12月の予算編成作業全体の中できちっとした位置付けをしなきゃならない。中長期的に、例えば20年後、まあ、一番短期的に言えば、5年間の計画の中でどうするか。また、20年間、30年間のペースの中でどうするか。特に厚生労働省の議論と経済財政諮問会議の議論というのが一致しているのはですね、やっぱり出来るだけ健康で生活してもらうのにはどうしたらいいか。ヨーロッパ、アメリカに比べて例えば手術とか、治療を加えた後、入院日数が長い。こういう問題をいろんな観点から直していこうと。中長期的なところはかなり一致しているのだろう。当面、来年度予算はどうするんだ、5年間どうするんだ、10年間どうするんだという議論になるとそこへ給付と負担ということでいろんなものが加わらざるを得ないという中で厚生労働省が一つの考え方の中で示したものであろうと思います。これが100%認められるか、認められないかというのはこれからの議論でしょうし、また今日の我が国の、前にお話申し上げたように、あと5年後、7年後ぐらいは団塊の世代がもう65歳超えてくるというところへ来て、急に高齢者の数が増えてくるという中でどうしていこうかということで、まさに今、議論の一つのたたき台として始まったところじゃないですか。私も昨日就任したばかりですから、もう見直したかと言われれば、まだ見直しはいたしておりません。
記者:
関連して診療報酬を、国民負担を求めるのであれば、診療報酬の方も引き下げるべきではないかという意見もあるわけですけれども、18年度の診療報酬改定議論を迎えつつありますが、これについてはどのような方針で取り組まれるおつもりなのか。
大臣:
基本的には、医療の質をどう担保するかという話と片一方で効率的な医療をどうやって進めていくかというこの2つの大きなテーマがあると思います。したがってできるだけ数字をまず冷静に見つめるということが大事だろうと思います。物価の変動もあるだろうし、医療の質の変化もあるだろうし、そういったものを冷静に見つめながら、まさに18年度に向けてこれから作業に入ろうとしているところですから。それを今結論を出せと言われてもまさにこれからの話だろうと思います。
記者:
昨日、総理の方からも医療費の伸び率抑制に関して何らかの指標に基づく数値管理のようなものを導入すべきではないかという指示があったようですが、俗に総額管理と呼ばれている手法自体についてどのようにお考えなのでしょうか。
大臣:
私は松下電器という会社の企画マンから育った男なんですよ。そういう意味では先ほど言いました10年後、20年後の数値というものはしっかりと頭に置きながらやっていかなければならないと思います。しかし、GDPの毎年の変動にと言われるとね、医療というものは基本的にそういうものではない。したがって、大きな指標として、当然これは同じことを言っていると思うんですけど、大きな指標として当然これから5年後、10年後、そして先ほど言ったように老人といわれる人たちがだんだん増えていく中で、どういう数字になるかといったものをお互い持って、その中で財政当局から言えばそこを何割縮減してくれないか、いや、我々は積み重ねの努力の中でこういうふうになりますという目標は、お互いに持ちながらやっていく。しかし、その目標が達せられなかったと同時に、急にペナルティとしてガーンといくのが医療行政ですかといわれるとそうではないだろう。なるべくなだらかになだらかに方向性を持ちながらなるべく長期入院の人たちを減らしていくという方策をしていくのが我々の仕事であろうし、国民に安心を与えるのが我々の仕事ですから、そういう意味では大きな目標を持ちながらやっていくと同時に、大きな激変がないようにやっていくのも厚生労働省の大きな仕事の一つだと思っています。そういう意味では民間の経営者の方々は、今まさに例を申し上げたけれども、経営が悪ければドーンと退職金をいっぱい積んで1万人を削減しますとこういうことをやれますよ、はっきり言って。じゃあ、その1万人の社会保障の問題をいろいろどうするんですかというと、それはやっぱり国が受け皿になってきちっとやらざるを得ない。民間の経営感覚というものと大きなものというのは違うということだけは、ちょっとご理解をいただきたいなと思います。しかし、数字というものが最終的にはものをいうということだけは冒頭申し上げたとおりです。私も数字で生きてきた人間だからきちっとしていかなきゃならんと、こう思っております。
記者:
医療の最後の質問ですが、保険免責制度導入というものが今回の医療改革制度の議論の中で大きな論点となっているんですけれども、この保険免責制度の導入ということについてはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
省の立場としては、慎重なんでしょうね。与党としてはもうすでに反対論を見解として出されているようですので。しかし、これからの議論というのは、みんなそうですけれども三位一体で知事からのご意見とかいろんなものを、やっぱり、これは駄目ですとか、はじめから否定するつもりはありません。いろいろ聞くものは聞いた上できちっと結論を出していくというのが我々の姿勢だろうと思います。そして与党の中からも既に明確に反対の意志が出ているということも頭に入れながらやっていきたいと、こう思っています。
記者:
続いて年金について質問します。年金については今与党の方で厚生・共済両年金の一元化に向けての動きがかなり具体化しているところですけれども、年金の一元化というのはいろいろ考え方があるようで、制度を一つにしてしまうという考え方とか財政をお互いに補完し合う、そして行政の仕組みとしての一元化とかあるわけです。これについて大臣は厚生・共済両年金についての一元化についてはどのようにお考えなのでしょうか。
大臣:
私は昨日まで一生懸命何やってきたかというと、議員互助年金というのをやってきたんです。自分で国会議員の年金は廃止して共済年金へ統合ということを考えているんです、われわれも公務員だと思ったのです。そうしたらやっぱり猛烈な反対論が出ました。議員が例えば来年から年金に入るとしたらもう厚生年金だよと、共済年金というのはおかしいよという議論が実は強く出た、国会で。多分国会も来年中に国会議員互助年金について廃止前提で、結論が出されると思います。国会議員の年金なり、これ当然地方議員の年金まで、別立てのものというのはそろそろ整理していこうじゃないかという大きな流れの中にあることは間違いない。厚生年金という民間がだれでも入る、しかし公務員の皆さん方はこの年金ですという形で別扱いしてきたけれども、私自身は、やっぱりそろそろ別扱いの段階は止める段階に来てるんじゃなかろうかなと思います。よく言うんですね、公務員の勤務の特殊性にかんがみ共済年金というにはもう変えていっていいんじゃないかと思います。変える中で、当然経過措置というのはあります。経過措置というのは、1つは今もらっている年金を急に減らしますかという問題と、もう1つは何年ぐらいでこの問題を全体的に一本化していくのかという問題。これを今懸命に話し合っていただいているんではなかろうかなと思います。与党もペース上げてくると思いますので、与野党の話し合いもあり、我々も対応できるようにしていかなきゃいけないと、こう思っております。ただ、これは厚労省だけで出来る話じゃなくて総務省は総務省の立場もあるだろうし、財務省は財務省の立場がある。それをよく我々も協議しなきゃならんだろうと思います。
記者:
年金について、国民年金を含めた公的年金すべての一元化という課題もあるかと思うんですけども、公的年金を全部一元化するということについては、大臣はどのようなお考えでスケジュール的なものはどのように認識されてますでしょうか。
大臣:
正直言って総理が岡田党首とやりながら、予算委員会、党首討論、各所でお話申し上げているように、様々な問題があります。出来ている国があるんだからそれに倣えばいいんだっていう話もあるかもしれないけど、しかし今申し上げたように共済年金と厚生年金の問題をきちっと処理しながら、次のステップとして考えていくべきだろうという整理をしています。
記者:
時期的なものとしてはお考えはあるでしょうか。
大臣:
例えば、これから議論して厚生年金・共済年金一つのものが出来上がる。しかし一方で先ほど申し上げた経過措置もあるわけです。厚生年金・共済年金という被用者年金ですら各省が持っている。そこへ今度全く違うものを重ね合わせるという話なんです。要は雇用している側の負担がない中でいわゆる所得の把握という問題もありますので、今私の方からいつまでに出来ますと明言をするだけの勇気はございません。
記者:
引き続き介護保険の改革なんですけれども、先の介護保険法案の改正で介護保険の対象年齢の拡大ということについては検討課題として残ったものですけれども、これについてはどのようなお考えで、今度どのように取り組まれるおつもりか。
大臣:
昨年の法案を作る段階で様々な議論があって、結論として見送りになった。そして10月から新たな負担というものをお願いしながら、改正された介護保険制度が今スタートしたばかりです。そういうものの進展も見ながら、少なくても次5年後の改正がありますから、それまでにきちっとした体制作りをしなきゃならんとなると、来年より先の議論にならざるを得ないかなと思います。今我々が先ほどから議論をしているように、共済年金・厚生年金、医療、こういう順番からいくと今年通った介護保険制度を来年の日程に乗せて改正するんですかというところにはないでしょう。
記者:
続いて少子化対策についてお伺いします。今少子化対策というのは国を挙げての大きな課題かと思うんですけれども、少子化対策における問題点というのを大臣としてはどのように認識されているのか。またその中で一番少子化対策として必要なことというのは何であるとお考えでしょうか。
大臣:
何って決め手はありません、第1に。ただ「一番の決め手は何ですか」と言われたら、フランスやイギリス同様にもう少し少子化対策にお金をかけるべきだというのが、私の選挙運動でずっと演説をしたところなのです。一方で「川崎さん、何人子どもいるんですか」と言われると1人しかいないもので、足りないじゃないですかとよく言われているんです。初めて選挙に出たときは31歳でしたけれども、そのときからこの問題ずっと言っているんですけれども、残念ながらずっと悪い方向に進んできてしまったなと。うまくいっている国はフランス、イギリス。逆にドイツ、日本、イタリア、韓国、台湾まで入るんでしょうか、なかなか現状厳しいところにある。しかしそれが1つの原因で出来上がっている話ではない。もっと言えば厚労省のできる範囲、例えば児童手当をもう少し拡充できないか。もう少し保育所を待機児童者をなくすことはできないか、そんな1つ1つの組み合わせはあるけれども、一方でやっぱり世の中全体が夫婦というものの価値観をどう考えていくか、社会というものをどういうふうに考えていくか、また自分たちがどうして生を受けてこうなってきて、実際大丈夫かなと、こういうものも含めて社会全体で取り組むことが必要だと思います。そういう意味では厚労省のできる範疇は私もこれから一生懸命やりたいと思います。今度猪口さんが担当大臣として、男女共同参画社会、女性の特に労働という立場を子育て問題も含めて、大臣の感覚でかなり発言されてくると思います。また昨日皇居でみんなで待っている間に30分くらい延々と猪口さんに演説されて、そして皆様方協力しなさいとこう言われたけれども、彼女がかなり先頭になってやるつもりでおられるので、できるだけの支援をしていきたいと思っております。複合的にならざるを得ませんね。
記者:
続いてアスベストの話なんですけれども、今度アスベスト新法の制定に当たって、財源負担についてかなり課題があるかと思うんですけれども、財源負担について業界の方にどのように理解を求めていかれるおつもりか。また国と業界の負担割合についてはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
この話は、これからなんです。まず被害に遭われた方々の範囲、働いていた方、既に亡くなられた方、労災でできる問題かどうか、家族の問題があるとそうはいきません。そうなると厚労省としてこういうことをやろう、それじゃあ環境省としてこういうことをやりましょうとなるわけです。当然建て替えの問題も出てくるはず。現実にまだ100%禁止もしていないわけですから、一部だけ。そういう問題も早くしろとか、いろんな対策を順番に打っていきます、これからずっと。少なくとも来年度予算編成のときに結論を出して、来年の国会の中でできるだけ早い時期に決着をつけないといけない。すなわちそれは新法でしょう。その新法に裏打ちされた財源問題を言われたわけですけれども、財源問題まさに国が負うべき責任は多いと思いますけれども、一方で今ご指摘いただいた事業者の問題なり地方の問題なり、これから議論していく問題と理解しています。
記者:
次に鳥インフルエンザの件なんですけれども、 鳥インフルエンザの変異によって新型インフルエンザが蔓延するのではないかという懸念もあるわけですけれども、政府として鳥インフルエンザ対策はどのように講じていかれるおつもりか。また抗ウィルス薬というものの備蓄とかに関してはどのように今進んでいるのか、それを含めて対策についてお願いします。
大臣:
これについては10月28日厚生労働省内に対策本部を立ち上げました。言われたように、去年の1月、2月でしたか、鳥自体の被害として出、今年も続きました。一方でアジアの国々の中で変異によって人間の体にも犠牲者が出たということを受けながら、一方でそれに対応する薬がないのかと言えば、インフルエンザ等に使う薬の中で明らかに効果があるものがあるということで、既に流通しているものですから、一般の備蓄もあるんだけど、最終的にはやはり政府が責任を持って対応するということで今進めています。
記者:
続いてハンセン病についてなんですが、韓国・台湾のハンセン病療養所をめぐる裁判が先日ありまして、台湾訴訟の方は国が敗訴したわけですけれども、この台湾訴訟への対応はどのようにされるのか。それから原告が求めている厚労省告示の見直しとか保障の在り方について大臣はどのようにお考えになるのか併せてお願いします。
大臣:
台湾が敗訴、韓国は勝訴、二つの見解に分かれてしまっていますので、そこを今しっかり分析しているところで、今日正直言って各党ご挨拶回りしたら、各党から言われました。「厚生労働大臣しっかりやってください」と。その声も受けながら詰めていきたいと思っています。
記者:
話題が飛んで、在外被爆者の関係なんですけれども、在外被爆者手当の海外申請が近く可能となるそうなんですけれども、被爆者手帳についても海外での取得を希望する声があるということで、これについてはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
被爆者手帳を持っておられる方が外国で治療を受けられて、その費用というものを請求する。それはできるシステムにします。しかし被爆者であるという認定を被爆者手帳をもらう手続きを海外にいたままやらせてくれというのはなかなか、担当者を地方から派遣せよということを言われているんだと思いますけれども、そう言われると現状ではなかなか難しいですね。やはり一度ご協力いただければありがたい。地方とのかねあいにもなりますし。
記者:
最後の質問になりますけれども、BSE関係なんですが食品安全委員会のプリオン専門調査会は米国産とカナダ産の牛肉の安全性について、日米で合意されている輸入条件が守られれば、日本の牛肉と比べてリスクの差は非常に小さいとする答申の原案をこのほどまとめたわけですけれども、正式な答申まで時間がまだあると思いますけれども、現段階で申し上げました原案についてどのように大臣として受け止めておられるか。
大臣:
極めて権威のあるものとして食品安全委員会を作って、そこでずっと議論をしてきて、今結論を出そうとしているときですから、それに対して我々がどうあるべきという段階ではないと思います。結論が出た段階で省としてきちっとした対応をしていく。非常に精緻な議論をしながらやっていただいているところだけに、これしか今のところ申し上げられない、それはご理解いただきたい。

(了)