坂口大臣記者会見

H15.11.17(月)15:35~16:01 省内会見場

広報室

会見の詳細

厚生労働省年金改革案について

大臣:
一言申し上げて、皆さんにご質問いただきたいというふうに思います。今回の問題で一番大きい問題は基礎年金の2分の1引き上げとその財源をどうするかということが一つ、それからもう一つは負担と給付、この目標を定めて厚生労働省としては負担の方は上限20パーセント、そして給付の方、いわゆる年金額の方につきましては下限で50パーセントという案をお示しを申し上げているところでございます。これらの問題について、いろいろの方面からいろいろのご意見があることはよく承知をいたしておりますが、この厚生労働省のこの案を中心にしながらご議論をいただきたいというふうに思っているところでございます。いずれにいたしましても、今年中に予算に関連いたしますところは決定をしなければならないわけでございますので、それにつきましては12月までに決定をしていただかなければなりません。先程から申し上げました二つの点につきましては、これはもう12月末までに決定をして、来年度の予算にこれは関連いたしますので組み入れていただかなければなりません。その他の分野につきましては来年の2月半ばに法案を提出をさせていただきたいというふうに思っておりますから、約1ヶ月間くらいの猶予はあるだろうというふうに思っておりますので、さらに継続をしてご議論をいただくことも出来るだろうというふうに思っております。そこではいわゆる70歳以上の皆さん方の老齢厚生年金、これにつきましての議論をまとめていただくとか、あるいはまた、女性と年金に絡みましていわゆる短時間労働者の皆さん方の問題をどうするか、というようなことにつきましてご議論をいただかなければなりません。また、積立金の運用の在り方等につきましてもご議論をいただかなければならないというふうに思っております。そうしたことを年末年始にかけましてご議論をいただいて、そして2月の半ばには法案として提出をさせていただきたいと考えているところでございます。もう一つ、大きな問題点があるとすれば、それは来年のその法律の中にどこまで書き込み、そして今後またさらに議論を重ねなければならない点がどこにあるのか、といったことの仕分けを少しやらなければいけないというふうに思っております。いずれにいたしましても来年の4月から実施をすることになるのか、あるいは来年の中頃になるのかは分かりませんけれども、2分の1への引き上げ、あるいはまた、負担と給付の問題につきましては、これは即刻決めなければならない問題でございます。しかし、いわゆる制度体系、いわゆる年金の制度体系につきましてはいろいろのご議論もあるところでございますし、いたしますので、もう少し時間をかけてここは議論をしていただいた方がいいのではないかというふうに思っております。政府与党の中におきましても議論は必要でございますし、また、各党間における議論も必要ではないかというふうに思っておるところでございまして、そうした議論を重ねて、そして将来に向けた改革を行うということが大事ではないかというふうに思っております。いずれにしましても、もし制度体系を変えるというふうにいたしましても、来年の4月から変えるわけではなくて、それはもしも変化が大きければ大きいほど30年とか、あるいはまたそれ以上とかというような、この時間をかけてこれは改革をしていかなければならない問題でございますから、もう少し、この議論が成熟する方が望ましいと私は思っております。さらに、年金制度、厚生年金のところは現在、世帯単位でございますが、世帯単位ではなくて個人単位にした方がいいのではないかというご意見もあることはよく承知をいたしております。今までの議論におきましては、この問題につきましては両論ございまして、それらをどうするかという問題もございます。こうした問題につきましては、今後もう少し議論を重ねて決定をした方が良いのではないかというふうに思っている次第でございます。国民の皆さん方のご意見も充分に拝聴しながら、そうした問題は決めていくということが望ましいのではないかというふうに思っているところでございます。しかし、あまり先送りをしてはいけませんので、一年間なら一年間という期限を切って、そうしてその中で議論を積み重ねて結論を出すということが望ましいというふうに思っているところでございます。現在の状況、アウトラインをお話を申し上げたところでございますが、後はどうぞひとつ皆さんの方からご質問がございましたら少し受けさせていただきたいと思います。

質疑

記者:
中長期的な議論については、新しい検討の場を設けたりとか、そういうことはお考えなのでしょうか。
大臣:
そこは、いわゆる政府部内におきましてもこれは必要でございますけれども、これは政党間におきます問題等は、これはそれぞれの協議の場を持っていただくということをどうするか、これは国会でお決めいただくことでありますから、私からとやかく言う話ではないというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、そうした議論の場をやはり作っていくということは大事でありまして、与党間にはすでに出来ておりますし、いたしますので、そうした場でご議論をいただければというふうに思っております。
記者:
年内に決着する問題については、政府与党の協議会を設置されるということでよろしいのでしょうか。
大臣:
年内に決定をしなければならない問題につきましては、すでに与党協はあるわけでございますし、いたしますから、そこに政府と一緒になってどう決めていくかということになるというふうに思います。特別にそこに政府与党の協議会を新しく作るのかどうかということは今のところ決まっておりませんけれども、これからどういう場でそれを決定をしていくかということと関連をしてきますので、あるいはそうした場が出来るかもしれないというふうに思っております。医療保険の時にも、そうした場所作りましたから、そうした場所をどうするかという問題につきましては今後また議論をしていただきたいというふうに思っております。
記者:
先程おっしゃいました制度体系の改革の話ですけれども、基礎年金の部分を全額国庫にするとか、そういうふうな大きいものを含めてという。
大臣:
いわゆる基礎年金の部分につきましても、それから厚生年金の部分につきましてもいろいろご議論はあると思います。いずれにいたしましてもどんな姿形にするにいたしましても、負担と給付、これは私はそんなに大きな変化は無いというふうに思っております。負担の場合に、それが保険料になるのか、あるいはまた税になるのかということの違いはございますけれども、国民の側の負担ということにつきましては、どれだけ負担をし、どれだけ給付をするかという、大枠のところではそんな大きな変化は無いというふうに思っております。
記者:
その制度体系は、今後一年かということの中に入るわけですか。今後一年間で、あまり長く時間をかけずに、あと一年間という、ある程度おしりを決めてその中に入る。
大臣:
まあ一年間と限ったわけではございません。半年でやっていただいても、それは構わないわけでありまして、可及的速やかにそこもご議論をいただく方がよろしいのではないかというふうに思っております。
記者:
厚生労働省案の負担20パーセント、それから給付は50パーセントを下限とするというこの案は、国民の理解及びこれから政府間の与党協議、野党皆さんのご理解を得られる自信はどれくらいありますでしょうか。
大臣:
100パーセントあると言いますといささか言い過ぎになりますし、さりとて無いと言えば無いものをなぜ出したかということになるわけでありますので、私達は充分皆さん方のご理解を得られるものというふうに思っております。
記者:
保険料率が20パーセントになることについては、経済界からは強い反対がありますけれども、明日の諮問会議でも取り上げられると思いますが、大臣はどのようにご理解を求めていくお考えでしょうか。
大臣:
今回の制度改正の一番の特徴は、上限を決定する、いわゆる20パーセントなら20パーセントを上限として、それ以上を上げないということだというふうに思っております。その20パーセントが大変厳しいとおっしゃる経営者の皆さん方のお気持ちというのは、私も分かるつもりでおります。少なければ少ないほど、それは企業として楽であるというふうにおっしゃるのは、私も理解の出来るところでございますが、これからの年金はできるだけ負担というものを軽減しながら、そして、そこで十分な年金を確保することが出来るかということになるわけです。そのバランスになるわけでございます。少子高齢社会でございますから、そこが今までよりもより厳しくなっていく、いわゆる企業の負担、あるいはまた国民の負担がより多くなっていくことは避けられないというふうに思っている次第でありまして、そうした中で20パーセントというのがいわゆる負担の出来うる、耐えうるひとつの限界というふうに思っておりますけれども、その20パーセントは耐えられないという意見があることもよく承知をいたしております。それは現在の社会の姿を見て、そこは難しいというふうに言われるのか、それとも、将来、それを負担しうる社会をつくっていくという前提の下におっしゃるのか、ということだろうというふうに思っております。私は少子高齢社会でございますから、これから保険料が、あるいはまた、税制上の負担が増えていくことだけはいずれにしても間違いはないというふうに思いますが、その時に大事なことは負担に耐えうる国をどうしてつくるかということになってくるというふうに思っております。したがいまして、今後の国づくり、いわゆる少子高齢社会に耐えうる社会をつくるための構造改革をどう進めていくかということと私は大きく関連をしてくるというふうに思っておりますから、そうしたこともこれから議論をしていかなければならないというふうに思います。そうした中で、私は年金につきましては20パーセントを上限とした額、そのくらいをご理解をいただける社会をどう構築していくかということになるというふうに思っております。例えばフランスは現在21パーセント台の年金保険料でございます、22パーセント弱と申し上げた方がいいかもしれません。その保険料の中で企業が出しておりますのは約70パーセントでございます。現在すでにそういうふうにしているわけでございますから、それが何が故に可能なのかといったような諸外国のことも十分考えてみないといけないと思います。そうしたことを考えながら日本も将来20年先、22年先に20パーセント近くまでいくということを耐えられる社会をどのように作っていくかといったようなことにつきましては、経済全体、社会全体のあり方が問われるというふうに、私は思っている次第でございます。
記者:
今日の午前中に官邸の小泉総理のところに厚生労働省案の説明に行かれましたけれども、その際、厚生労働省の20パーセントといった予算案に対して、総理からの理解を得られたというふうにお考えでしょうか、あるいは総理から何か意見なり注文なりがあれば可能な範囲で教えてもらえますか。
大臣:
そこまで具体的に何パーセントにすべきというお話は今のところございません。総理に対しても今ご答弁を申し上げました通り、これから日本の国はどういう国づくりをしていくのか、少子高齢社会に耐えうる社会をつくっていくとすれば、それはどういう姿なのかといったことも併せて検討していくべきだという私の意見を申し述べてきたところでございます。
記者:
制度体系について改めて伺いますが、大臣個人としては基礎年金を税方式にする考え及び、あるいは国民年金を所得比例年金とする考え方、それぞれについてどのようにお考えでしょうか。
大臣:
私は、基礎年金のまず2分の1を国庫負担にする、これが大前提だというふうに思っております。この2分の1にいたしましても、2025年くらいにはこれが十数兆円にふくらむわけでございますから、例えば将来それに対して新しい税制を作るといたしましてもかなり大きな額でございます。社会保障全体を考えていかなければなりませんから、その社会保障全体を考えますと、年金よりも医療の方が21兆円くらいとさらに大きくなるわけでありまして、介護も含めてかなりの額になることは避けられません。そうした財源を賄っていくということになりますと、年金だけに全ての財源を使うということは出来ないと私は考えております。したがいまして、まず2分の1、そこが一つの妥当な線ではないかというふうに思っている次第でございます。
記者:
年内には来年度予算に関わるところは決着させなくてはいけないと、残る部分は来年2月半ばの法案提出までにというご説明でしたけれども、そうすると国庫負担を2分の1に引き上げる問題については、来年度分どうするかということは年内に決めて、それ以降のところは2月半ばまでにという、そういうふうな仕分けをお考えなのでしょうか。
大臣:
2分の1の引き上げの問題につきましては、来年度どうするか、来年度全て2分の1に引き上げていただく財源を作っていただけましたらベストでありまして、しかし万が一それが出来ないということであるならば、5年なら5年以内にそれを2分の1に全て引き上げていくのにどういう財源で、どういうふうなスケジュールで今後いくかということを決めていただかなければならないというふうに思っております。
記者:
そこのところまでも年内に決めるというお考えですか。
大臣:
そこは是非お決めをいただきたいと望んでおります。
記者:
将来あと1年くらいかけてという中で、大きな行政の中で例えば消費税の問題なんかも含めて財源をどう考えるかということで、先のことは先延ばしするというのではなくて、とにかく年内に2分の1を実現する道筋は全て決めるという、そういうお考えでいらっしゃるのですか。
大臣:
現在のところは2.7兆円でございますから、一つの税制でなくてもいろいろの組み合わせ等によっても、それは可能になるのではないかというふうに思っております。しかしこれが10年、20年先になってまいりますと、全体が8兆数千億というふうに思いますけれども現在は、それが倍近くになってくるということでございますので、そうなってまいりますと、それはなかなか4、5年の間に決めていただける財源では足らないということになってまいりますから、将来の財源は財源として、別途これは考えていくということをしなければならないのだろうというふうに思っております。
記者:
給付水準なのですけれども、財務省だったり、経済界からは50パーセント以上というのは少し手厚すぎるのではないかという声もあるのですけれども、その辺りの給付水準についてのお考えは。
大臣:
これは負担がどれだけ出来るかによって給付水準は決まりますので、どれだけの負担をしていただけるのかということに関わるというふうに思っております。したがって今後の給付水準につきましては、これは50パーセントというふうに言いますけれども、どれだけの額の50パーセントかということになるわけでありまして、これから賃金がどんどん高くなっていくということならば、それは額がどんどん増えるわけでありますから、よろしいわけですけれども、しかしそれほどこれから賃金が伸びない、あるいは賃金が若干でも下がるということになってまいりますと、同じ50パーセントでもその額は違うわけでございまして、そうしたことも念頭において議論をしていただきたいというふうに思っております。例えばフランスの例を挙げましたけれども、フランスは例えば工場労働者の賃金を比較いたしましても、日本の方が非常に高くて、フランスは日本よりも非常に安いということがあります。しかし安いですが、フランスにおきましては、食費でありますとか、住宅費というものが日本に比べてはるかに低いということがあって、やはりそれで成り立っているのだろうというふうに思います。したがって将来のことをいろいろ議論をしますためにはそうした物価、とりわけ食費でありますとか、住宅費といってような生活関連の物価と、そして今後のいわゆる給料と申しますか、所得といったものが一体どうなっていくのかといったようなことも議論をしていただかなければなりませんし、あるいはまた日本の労働生産性をどう高めるかといったようなこともその中に影響してくるというふうに思っております。これらの問題を総合的にどう考えていくということとセットであるというふうに思いますが、やはり一言でいえばフランスなどは社会保障費に耐えうる国づくりをしていると言えなくもないというふうに私は思っております。したがって日本も少子高齢化に耐えうる国づくりとは一体どういうことなのか、ここは真剣に考えていかなければならない時に来ている。年金問題は年金だけに留まらず、やはり社会全体のあり方というものを問いかけていると、そういうふうに私は理解をいたしております。
記者:
今日小泉総理と会われた時に、大臣が留任された時に支給開始年齢の見直しと高額所得者の給付のあり方について検討するようにという指示が、留任された時に総理からあったと思うのですが、そのことについては今回案の中でも在職老齢の年金などの見直しが含まれておりますが、小泉首相はその内容で了承されたということでよろしいのでしょうか。
大臣:
了承されたというところまでいくかどうかは分かりませんけれども、しかし70歳以降におきましても在職老齢年金を70歳以降にも継続するといったようなお話を申し上げて、私は一応のご理解を得られたものと思っておりますけれども、今後よくまたお話し合いをしていきたいと思います。高額所得者の問題は当面は税制改正をどうするかといったものとおそらく関係してくるだろうというふうに思っております。そうした議論は税制の方でございますから、我々があまり申し上げるべきことでございませんけれども、一つの課題になってくるということは事実だというふうに思います。

(了)