坂口大臣記者会見概要

H15.03.28(金)15:25~15:55 厚生労働省記者会見場

広報室

会見の詳細

医療制度改革について

大臣:
医療制度の改革案がまとまりました段階におきまして、今まで皆さん方にも大変ご協力をいただきましたし、お礼を申し上げながら、もう既にお分かり頂いているというふうに思いますけれども、まとまりました内容の大綱及び今後の問題点等々につきまして少し所見を述べたいというふうに思います。医療制度の抜本改革につきましては、これ30数年間言い続けられてきたことでございまして、しかしなかなか合意を得られないということで今日を迎えております。私自身この国会に初当選をさせていただきました時に、この医療制度の統合一元化というのは既に言われておりまして、当時の社会労働委員会でございますけれども、そこでも大変各党から提案されていたところでございました。しかしそれから長い間経つわけでございますが、なかなか合意を得ることができず、今日を迎えたわけでございます。抜本改革というふうに言いました時に、抜本改革とはなんぞやという、その定義につきましても、これはそれぞれの方によりまして、その抜本改革の内容は違うというふうに思っておりますが、一応我々が考えます抜本改革というのは、ひとつは医療保険制度の統合一元化ということを目指していく。それからもう一つは高齢者医療制度の在り方というものを明確にする。もう一つは診療報酬体系の基本を明確にする。その大きな三本柱、それに加えまして国民の側から見て医療の質を上げるためにはどうするかといった問題ももう一つ加わるだろうというふうに思っておりますが、それらの問題を改革をして、そして国民の皆さん方にお応えをしたい、こういうふうに思ってきたところでございます。 その中で一番やはり基本になりますのが、医療保険制度をどうするかということでございます。5千以上に乱立をいたしております保険者をどう統合していくかということでございますが、これは都道府県単位に、国保におきましては都道府県単位に、政管健保は今まで全国一本でございましたけれども、それではなかなか競争原理が働かないということもございますので、都道府県単位で競争原理を働くようにするということ、健保につきましては、これは大きい健保、小さな健保いろいろございますから、一律に都道府県単位というわけにはまいりませんけれども、小さい一つの都道府県の中にありますような健保、そういう健保は統合化を図っていく、一つの都道府県内での統合化を出来るだけ図っていくと、こういうことにいたしたいというふうに思っている次第でございます。
それからその中で高齢者医療でございますが、75歳以上の後期高齢者の問題を昨年のこの医療制度改革におきましても取り上げまして、その中で5割はこの国の方が公費負担として負担をするという制度を導入をしたわけでございますが、それからこちらへいろいろ検討してまいりますと、後期高齢者の問題だけではなくて、その前の75歳未満、そして65歳以上の前期高齢者の問題がやはり大きな問題であって、むしろ財政的にもここの部分の方がより多くかかるということも分かってまいりました。また将来この人口が増えていくということも分かってまいりましたし、そういたしますとこの前期高齢者のところをどのようにこれからしていくかといったようなことも大事になってまいりました。したがいまして、後期高齢者と前期高齢者双方をどう満足していく制度を作り上げるかということになったわけでございまして、ご承知をいただいておりますように、二つに分けまして、そしてその財政的な措置を別々に考えながら、作り上げていくということになったわけでございます。この保険者はどこに置くかということにつきまして、都道府県あるいはまた市町村の完全な合意がまだ得られたというところまでは至っておりませんけれども、一応現在の国保の中でそれらはすべて見ていきたいというふうに思っております。後でまたいろいろご質問あろうかと思いますから、それぐらいにさせていただきたいというふうに思います。
それからもう一つは診療報酬体系の基本でございますが、こちらの方はその尺度といたしまして、病気の難易度、それから時間、コスト、それに重症化予防といったようなことを物差しとして、そして科学的根拠に基づく保険点数の確立というものを目指していきたいというふうに思っているところでございます。そうした方向性を打ち出して、さらにこれから具体化をしていきたいというふうに思っているところでございます。
その他医療の質を高める方の回答につきましては既にもう発表したものもございますし、中間報告をしたものもございますが、もう一度この数日中にまとめて、もう一度発表させていただきたいというふうに思っておりますが、ひとつは根拠に基づく医療の確立でありますとか、あるいは患者の皆さん方の側から見た質の高い医療、すなわち患者も参加のできる医療とはどういうことなのかといったようなこと、あるいはカルテの問題や、それから医療事故の問題等々に対してどう対応していくかというようなこと、いわゆる機能分化と言われておりますけれども、病院、診療所の機能分化、あるいは救急医療体制の確立に向けてどう進めるかといったようなこと、そうしたことを議論をして、そして現在の段階でまとめられたものはまとめたいというふうに思っているところでございます。次のステップでそれらの具体的なことをやらなきゃならないというふうに思っております。
一昨日でございましたが、これは保守新党からお申し入れがございました。また昨日は公明党から申し入れがあり、本日また先程自民党からも今後の課題としてお申し入れを頂いたところでございます。保守新党からは高齢者医療の財源を明確にすべきであるというご主張でございましたし、また公明党からは低所得者の医療、介護など、トータルな自己負担に対する支援策をきちっと確立をすべきである。あるいはまた低所得者の保険料というものに十分は配慮をすべきであるといったような申し出であり、そして自民党からは前期高齢者の在り方につきまして、自己負担を2割に統一するなどの案が示されました。貴重な意見と重く受け止めまして、4月以降直ちに自民党を始めとする与党の皆さん方と検討を開始をさせていただいて、合意を得るように努力をしたいと考えているところでございます。
今後残されました問題といたしましては、いわゆる前期高齢者と後期高齢者の患者負担の在り方、それから前期高齢者の公費負担の在り方、それから前期高齢者と後期高齢者の保険料徴収の在り方、高齢者医療制度における都道府県の役割の在り方、こうしたところが大きな問題として少し残っております。もう少しここはこれから検討し、詰めなければならない点でございます。自民党の方からもこれらの大きな問題があるので特段そこに配慮をしてひとつやって下さいよというお申し入れもあったところでございます。以上大枠の骨格をまとめながら、そしてこれからさらに詳細な部分につきましての問題を詰めていきたいというふうに思います。そんなことでございますので、後はどうぞ皆さん方の方からご質問いただいてお答えをすることにしたいと思います。

質疑

記者:
先程の高齢者医療の後期高齢者の保険者の問題ですけれども、国保の中で全てを見ていきたいとおっしゃってましたが、現段階でも原則としては国保再編統合した上で都道府県単位にまとめた公法人でなんとか見たいと、基本線は変えられていないわけですね。
大臣:
そうですね、そこは変えておりません。公法人の中で市町村及び都道府県にその中にお入りをいただいて、そして運営をしていくということが最も今の段階では望ましいというふうに思っております。しかし残念ながらそういう我々は、心づもりと申しますか、我々の気持ちはそういうことで固まっておりますが、都道府県から完全にそれで分かりました、引き受けましたという合意を得るところまで至っていない、そこは大変残念でございますけれども、我々は是非そういうことでお願いをしたいというふうに思ってます。
記者:
今後知事会や、あるいは片山総務大臣と協議されるのでしょうか。
大臣:
そうですね、片山総務大臣にも随分お世話をおかけをいたしまして、市町村長さん、あるいはまた都道府県の知事さんの代表等ともいろいろお話をしていただいておりまして、しかし今日までのところ合意を得るに至っておりませんけれども、片山大臣との間でも大体考え方は、私との間の考え方は共通しているというふうに思っているところでございます。
記者:
そうしますと総務大臣も市町村、都道府県が公法人に参加することには基本的に同意を示されているわけですか。
大臣:
私は同意していただいているというふうに、私は理解をいたしております。先般、経済財政諮問会議の時にもそのようにお話をいただきましたから、あの内容はもう2、3日すればオープンになるんだろうというふうに思っておりますので、そのようにお考えをいただいているというふうに思っております。
記者:
今の点は今日も片山大臣が大体そういう方向になるだろうというふうに会見でおっしゃっているようですけれども、大臣としてはその先にあと何が必要だと、どういう調整が必要だというふうに、特に県に対して。
大臣:
都道府県がかたくなに自分たちがそこに入ることを拒否、拒否と言えるかどうか分かりませんけれども、反対をしてお見えになりますのは、やはり今後高齢者医療の問題について、今までの市町村がやってきたようにそれぞれが財政的支援をしなければならなくなるのではないかと、今までは市町村が全部自分達で支援をしてきたけれども県が入ることによって、その市町村だけではなくて県の方もそれをしなければならなくなるのではないか、国の方が高齢者医療について十分な配慮をしないのではないかという不安感というものが私は多分あるのだろうというふうに思っております。したがいまして、国の方も5割は、後期高齢者の5割は国が負担するということを既に決めておりますが、その後なおかつ不測の事態が起こりました時には一体どうするか、あるいはまた前期高齢者の部分については、これは若い層からの保険における支援だけでこれは本当にやっていけるのか、公費負担は必要がないのかといったようなことにつきましても、もう少しやはり明確にして、そして都道府県、市町村にも安心をしてもらうという作業が必要ではないかというふうに思っております。
記者:
今の点でもう一点、片山大臣はその上で介護についても同じように一緒に、片山大臣個人としては介護も同じ枠組みの中で出来ればいいのではないかということをおっしゃってますが、その点厚生労働省案明確ではないのですが、介護の関係としては大臣はどのように。
大臣:
介護の問題はこれから2年間かけまして、そして次のステップに進むわけでありますので、現在のところ介護は市町村段階で進めてきたという経緯がありますから、これも段々とグループ化をしていくとか、都道府県単位にするとかというようなことが、現在やっております市町村がそのことを望むのかどうかということもありますし、制度として現在ようやく市町村レベルで定着し始めたものを都道府県単位にすることが望ましいかどうかという、これはまた問題もあるというふうに思います。ただ財政上の問題として、やはり医療、介護は同じような枠組みの中でそれぞれやはりやっていく方がいいんだという話になれば、一つの選択肢だというふうに私も思いますけれども、先般の経済財政諮問会議におきましても片山大臣からそういうご意見ございました。しかし私の立場として現在まだそこまで踏み込んで、同じにやった方がいいということをいうところまで、私もまだ整理が出来ておりません。もう少し介護の方の現状をよく見て議論をしていかなければならない問題だと思っております。
記者:
先程の後期高齢者の保険者のところをもう一度確認させてください。再編統合した国保の中で後期高齢者の保険者にもなってもらうと。
大臣:
そうですね、後期高齢者の部分を別枠の保険者を作って、そしてそこだけを別に運営をしていくということではなくて、現在のこの国保の中で後期高齢者の問題、前期高齢者の問題というのは、それぞれ運営をしていただくと、ただしその中の公費と、それからいわゆる若い人達の保険からの支援と、そしてそれぞれの高齢者の自己負担、あるいは保険料といったものの割合が違ってくるということだと思うんですね。現在のところ決まっておりますのは、後期高齢者におきましては5割は国庫負担、残りの5割につきましてお若い皆さん方からの支援と、そして高齢者自身の保険料及び自己負担といったものによってこれを賄っていくということに大枠では決まっている。その中で保険料をどうするかとかいうようなことは、今のところまだ決めておりません。それから前期高齢者のところにつきましては、これはやはり保険料はお出しをいただかなければならないというふうに思いますが、国保の方は国保の若い層からの支援、それから職域保険の方は職域保険として若い層からの支援を受けるという形にしながらやっていくということだろうというふうに思っております。現在のところ前期高齢者のところに国庫を導入するという考え方は今のところ取っておりません。しかし先程申しましたように、自民党の中にはここにも若干公費負担が必要なのではないかというご意見があることも十分承知をいたしておりまして、今後そうしたことも検討していかなければならないというふうに思いますが、いずれにしましてもそれらの保険者は今までの国保の中でおやりをいただくと、国保の範疇の中でおやりをただくと、後期高齢者、前期高齢者それぞれの中の割り振りは変わりますけれども、しかしトータルで見れば国保の範囲でお願いをするということが最も望ましいのではないかというふうに思っていると、こういうことでございます。
記者:
残された問題として、公費負担のあり方とかいろいろありましたけれども、こういった問題はやはり2年後の通常国会に出す法案を出すまでに出したいという。
大臣:
そうですね、それが完全に実施されますのは4年後か5年後ということになってくるわけでございますが、しかし2年後の法案を提出する時までにその骨格は固めて、そして法案提出にこぎつけなければならないわけでありますから、それまでにこれは固めさせていただきたいと思っております。
記者:
今回の制度変更のアナウンスメントが出たわけですけれども、景気への影響はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
大臣:
これは社会保障というのは息の長い話でございますし、景気が良きにつけ悪しきにつけ、これをやっていかなければならない問題でございます。したがいまして、将来も安心できる体制を作るということは国民の皆さん方に安心感を与えるということに私は結びつくだろうというふうに思っております。したがって、そういう意味では良い影響を与えるということになるだろうというふうに思っております。ただ今後の負担がどうなるのかといったことによってご心配になる皆さん方にとりましては、それは若干不安も残るかも知れない、しかし私はそのことよりもこれから高齢者がどんどん増えてくるわけですから、みんなが安心をしていける制度をどう作ってくれるかということが現在の国民の皆さん方の最大の不安であり、一番望んでお見えになることだというふうに私は思っております。
記者:
自民党から前期高齢者の自己負担については2割に統一したらどうだという提案があったそうですが、現在1割、3割と分かれていて、単に言えばそれをならすということなんでしょうけれども、別の見方をすると4月から導入される3割負担の統一の部分的な修正ともとれますけれども、今現在大臣ご自身が2割負担統一の考え方についてはどのようなご見解をお持ちですか。
大臣:
これはいずれにいたしましても、5年先の、4年5年先の話でございますから、その後の問題をどういうふうに煮詰めていくかという問題だというふうに思っておりまして、現在のところ3割、1割でお願いをしてスタートするところでございますから、今すぐの話では決してございません。ただし3割、2割、1割と段々高齢になるにしたがって自己負担の割合を減らしていくというのは、考え方としては大変傾聴に値する意見ではあるというふうに思っております。
記者:
今後公費負担のあり方を検討していく上で、消費税アップの問題とか出てくる可能性があると思いますけれども、その辺についてはどのように。
大臣:
そうですね、保守新党からいただきました今後の高齢者医療のあり方、その中の財源をどうするかという、そういう問題提起、これは恐らく保守新党の皆さん方の気持ちとしては、これはその財源を一体どう求めていくのかと、そこをやはり明確にしなければいけないのではないかと、こういうご指摘だというふうに思っております。今までから保守新党のご主張でございますけれども、後期高齢者医療のところについては、これは消費税で賄うというのが保守新党のご主張でございますから、そういうご意見ではないかというふうに、そこまで書いてございませんけれども、内心受け取っているところでございます。今後年金の問題もあり、後期高齢者の問題もあり、こうした財源をどのように求めていくかということにつきましては、もうそうそう先送りのできる段階ではございません。今年の恐らく中頃から始まるというふうに思いますが、税制改革の議論とも絡んでくるというふうに思います。小泉総理は「私の任期中は消費税の導入は行わない。」というふうに言ってお見えになりますから、そういうことになりますと現在の税制の中でどこをどのように改革をするのかということ、それから無駄な点をどう省くのかという、この二つに限定されて来るというふうに思います。しかし後期高齢者の問題、前期も含めてでございますが、高齢者の問題、それから高齢者の医療の問題、そして基礎年金の問題、介護の問題等は、これは現在だけではなくて将来もずっと続く話でございますし、その財源は確かに明確にしていかないといけない問題である、そこは保守新党の皆さん方のご主張というのは、私も正しいのだろうというふうに思っております。そこを当面はどのように切り抜け、将来はどうしていくのかといったようなことにつきましても、やはり議論を深めなければならない時を迎えているというふうに思っております。
記者:
長年の懸案である高齢者医療費制度について区切りを出されたということは評価出来ると思うんですが、先程ご指摘あったように現在の問題とか、給付割合も含めて骨格の部分が国民に示されていないという指摘も出ているんですけれども、その点については。
大臣:
そうですね、大きな骨格はこれは示し得たというふうに思っています。これからどういう方向で進めていくのかということすら今まで分からなかったわけでありますから、大きな方向性というものを示すことができ得た。大きな方向性の中で財源を、先程から出ましたように財源をどのように求めていくかとか、その割合をどの程度にするかといった、その中の具体的なことにつきましてはこれから詰めていかなければならないことになるというふうに思っておりまして、それはもう方向性が決まるわけでありますから、その中でそれではどうしていくかということを着々と詰めていくということだろうというふうに思います。まず将来どうなるのか、どうするのかという方向すらなかなか決まらなかったので、やはりその方向を決めて、いわゆるベクトルの方向を決めて、そして何年までにこれを決着をするという日時を明らかにして、そしてその中で具体的なことは決めていくということですから、これは後は着々といくだろうというふうに思っています。いろいろ賛成反対様々なご意見あることは十分承知をいたしておりますけれども、大きな骨格は出来て、柱は出来てその間に今度は壁を塗っていかなければいけないわけでありますから、粗壁から化粧壁までしっかり塗らないといけないわけでございますので、その辺をしっかりこれからやっていきたいというふうに思っております。ですからあまり時を置きますと、またしばらく遅くなってしまう可能性がありますから、物事は始めたら一気呵成にやれということもございますので、一段落これで大きい柱のところは出来上がりましたけれども、4月からまた引き続きまして、より具体的な問題につきましても時間を置かずに詰めていきたいと、そういうふうに思っております。

(了)