在外被爆者訴訟・坂口大臣記者会見概要

H14.12.18(水)14:02~14:18 厚生労働省記者会見場

広報室

会見の詳細

在外被爆者訴訟・大阪高裁判決への対応について

大臣:
それでは大阪高裁判決への対応につきましての大臣発言を読ませていただきますので宜しくお願いをいたします。去る12月5日の大阪高等裁判所における在外被爆者に関する判決については、上訴を行わないことといたしました。今回の判決は、在外被爆者の方が日本において被爆者健康手帳を取得をし、健康管理手当の支給認定を受けた場合には、のちに出国しても、引き続き健康管理手当を受給できるとした内容でありました。その前提となった被爆者援護法の性格のとらえ方などにつきましては、政府といささか見解を異にするところもあります。しかしながら、被災から60年近く経過をいたしまして、今日、被害者の方々の高齢化は一層進み、その平均年齢は70歳を越えるとともに、在外被爆者の問題に対する関心も高まりつつあります中で、国際化も一層進んでいるところであります。このような環境の変化を踏まえ、原告の郭貴勲さんをはじめ、被爆者の方々が原子爆弾によって、放射能に起因する健康被害という特殊な被害に遭われ、生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を負われたことに思いを致し、さらに年齢的にも人生の総仕上げを行う段階を迎えてお見えになりますことから、被爆者援護法が人道的目的の立場であるとの側面を有することを踏まえ、今回の決定を行ったものであります。
今回の決定に伴いまして、今後は日本において手帳を取得し、手当の支給認定を受けた場合には、出国した後も手当の支給を行うことと致します。そのため、所要の政省令の改正でありますとか、あるいは通知の見直しを行うことといたします。この場合、過去にいったん手当の支給認定を受けていて、国外に出国することにより、手当が支給されなくなった方につきましては、公法上の時効5年を考慮しつつ、支給認定期間の未支給期間分について、遡及して手当を支給することとしたいと思います。最初にも述べましたとおり、この一連の措置はあくまでも人道的見地から行うものであり、国家補償を前提とするものでないことを申し添えておきたいと存じます。以上私の発言でございます。

質疑

記者:
今回の対応ということで、あくまでも日本に来日して、そこで手帳の交付を受けて、支給認定を受けた人に限定していますけれども、在外被爆者の方からは、高齢化で訪日も難しいと、そういうふうに訴えている方も多いのですが、そのあたりの対応はどのようにお考えでしょうか。
大臣:
具体的なことは、これからまたいろいろと検討したいというふうに思いますが、今原則論を言わせていただければ、健康手帳、そして手当の認定をお受けになっている皆さん方にこれは支給をするということでございます。したがいまして、今まで手帳ですとか、あるいは手当等の認定をお受けになっていない皆さん方が、今後お受けをいただくということなれば、それは対象になっていくというふうに思います。
記者:
その時に海外でそういう健康診断とかやって。
大臣:
今のところそこまで考えておりません。
記者:
それは将来的に考える余地もあるということですか。
大臣:
具体的なことは、これからまたいろいろ決めていきますけれども、現在のところはそこまで考えておりません。
記者:
具体的なところ考えるのは、何か特別に検討会をまた立ち上げたりとかという。
大臣:
いえ、ありません。
記者:
決定に至る経緯なのですが、これは政治主導の方で進められてきたことなのですか。
大臣:
今申し上げたとおりでございますから、申し上げたことをひとつもう一度後で熟読、吟味していただいたらよろしいかというふうに思いますけれども、政治主導とかなんとかということではございませんで、先程申し上げましたような内容で、様々な角度から検討いたしました結果として、結論を導き出したところでございます。
記者:
他の6件の訴訟についてはどういうお考えでしょうか。
大臣:
他のことにつきましては、またこれは裁判が違うわけでございますから、今私がそれに対する意見を申し上げることは控えさせていただきたいというふうに思いますが、とにもかくにも、この裁判につきましてはこういう結論を出しましたので、それに対しまして他の訴訟をされている皆さん方がどういう反応を示されるかということは、今後それらを見て決定をしたいと思っております。
記者:
ただもう一件全く同じ構図の訴訟で、国が福岡高裁に控訴している件がありますけれども、これは今後国としても控訴の取り下げを検討することにはなるのでしょうか。
大臣:
よく似たと申しましても、それぞれ内容もまた違いますので、それらはよく検討してから決定したいというふうに思っております。
記者:
被爆者援護法自体の法改正については、今後も含めてでございますが、何かお考えをお持ちなのでしょうか。
大臣:
今のところ法改正は行わないということでいきたいというふうに思っております。判決におきましては一応立法過程における不備というべきものがあると、こういうふうに指摘しているわけでございますが、しかし今回の措置は法文上手当受給者が出国した場合には失権する旨の明文の規定がないことを重く見て、いわゆる反対解釈として国外に出た場合にも引き続き手当てを支給するというものでありますから、被爆者援護法の改正は一応必要ないというふうに考えております。
記者:
そうすると401号通知という例の通知でございますが、それについては取り消しという作業が必要になってくる。
大臣:
通達ですとか政省令というものを改正をしなければならないというふうに思っております。
記者:
法改正がないということは、海外で被爆者健康手帳を発行するために法改正が必要だと思うんですけれども、それは必要ないことになりますよね。
大臣:
今のところは国内でそれはお取りをいただくという前提でございますから、それを変えるつもりはないということでございます。
記者:
国の海外に出た人には支給しないという法の運用が妥当ではないといわれたことについては、これはそのまま認めるものでは無いということなんでしょうか。今までの法の運用の在り方ですね、国としての。
大臣:
今まで日本で健康手帳をお受けになり、そして手当の認定をお受けになった方が海外に出られた、そういうケースについてはこれは認めることにいたします。こういうことを言っているわけです。
記者:
今まで認めてこなかったことが誤りだったと、そういう解釈ではない。
大臣:
だから今まで認めてこなかったことにつきましては、今後人道的立場からそれは認めるようにいたします、こういうことです。
記者:
昨日の閣議後の会見でも国家補償の問題も絡んで、簡単なことではないというふうにおっしゃっていますけれども、簡単なことではないというあたりをもう少し具体的に教えていただけますか。
大臣:
この援護法というのは、我々の考え方からいたしますと、社会保障としての立場が中心だというふうに思っております。しかしそれ以外に人道的側面、あるいは国家補償的性格、こうしたものを合わせ持っているというふうに理解をいたしております。これらの考え方の下で、その中で特に人道的立場というものを尊重して今回の我々は決定をしたわけでございますが、今回の大阪の高裁判決の内容を何度も読ませていただきますと、援護法の国家補償的性格というものをかなり大きくウェートを置いて、そして判決を導き出してお見えになるように読みとれる気がするわけでございます。しかしそこは、我々は人道的立場というものを中心にして決定をしたということでございまして、そういう意味では若干考え方の違いはあるかも知れないということでございます。
記者:
必要な財源措置を来年度の予算に新たに組み入れるということでよろしいんでしょうか。
大臣:
これからどれだけ必要になるかということは不明でございますが、予算は若干必要なことは事実でございますので、そこは15年度の予算の中に組み込んでいただくように、もう土壇場でございますけれどもお願いをしたいというふうに思っております。
記者:
これはいつから実行されると。
大臣:
政省令、その他の改正等もやらなければいけないだろうというふうに思いますし、出来るだけ早く行いたいというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、今年度中には決着がつくようにしたいというふうに思っている次第でございます。
記者:
新事業については見直しのお考えは。
大臣:
新事業といいますと今年5億円の積立をいたしましたものであります。これは日本にお越しをいただいて、そして治療をお受けになるとか、そういうことに対しまして旅費等をその中に入れたものでございますが、この事業につきましては一層ここは強化をしたいというふうに思っている次第でございます。
記者:
具体的にどういう点を強化するという。
大臣:
強化すると言いますか、そうするとお見えになる方も増えるのではないかというふうに思っておりますから、お見えになる皆さん方に対しまして十分に治療等が行えるようにしたいというふうに思っております。
記者:
確認ですけれども、手当の支給認定は3年から5年という限定で認定してきていると思うんですけれども、それが切れた場合はまた国内に来て認定を受けないといけないことになるんですか。
健康局総務課長:
いっぺん支給決定期間が切れれば、改めて申請手続きをしていただくことになります。
記者:
それは交付を受けるために。
健康局総務課長:
それは窓口となる都道府県、あるいは広島市、長崎市に手続きをしていただくということでございます。
記者:
手続きをして、現地で得た診断ではなくて、いったん渡日して、また診断を受けてということになるんですか。
健康局総務課長:
いずれにしても、窓口になる都道府県ないし市に支給の申請をしていただくということであります。
記者:
現地から郵送等での申請は可能。
健康局総務課長:
それは直接自治体に申請していただかなければいけないというのが今の法律の考え方でございます。

(了)