第10回今後のがん研究のあり方に関する有識者会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和5年4月12日(水)10:00~12:00

場所

オンライン開催

議題

(1)座長の選任について
(2)これまでのがん研究について
(3)議論の進め方について
(4)研究の支援状況と成果について

議事

 
○原澤推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催いたします。
 構成員・参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課、原澤と申します。よろしくお願いいたします。座長が選任されるまでの間、進行を務めさせていただきます。
 なお、本有識者会議はYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 初めに、4省府を代表いたしまして、厚生労働省佐原健康局長より挨拶をさせていただくことと予定しておりましたが、公務にて欠席とさせていただきましたので、厚生労働省健康局中谷がん・疾病対策課長から、挨拶を代読させていただきます。よろしくお願いいたします。
○中谷課長 皆様、おはようございます。がん・疾病対策課長の中谷でございます。
 健康局長の佐原に代わりまして、挨拶を代読させていただきます。
 本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。
 初めに、構成員・参考人の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらず、委員をお引き受けいただき、厚く御礼を申し上げます。
 がん研究については、昭和59年に対がん10か年総合戦略が策定され、以来10年ごとに見直しをされてきております。
 平成26年には、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣の3大臣確認事項として、がん研究10か年戦略が策定されました。
 また、平成27年には、日本医療研究開発機構、AMEDが設立され、AMEDとも連携して、がんの病態解明から臨床応用に至るまで研究を推進してきたところです。
 また、我が国においては、人口の高齢化とともに、がんの罹患者数、死亡者数が今後も増加していくことが見込まれております。
 また、令和2年以降は、新型コロナウイルス感染症の流行により、がん検診の受診者が1、2割減少したとの報告もあり、保健医療分野に大きな影響がございました。
 その新型コロナウイルス感染症については、5月8日に感染症法上の位置づけの変更が予定されており、今後改めて、がん対策を強化していく必要があると考えております。
 こうした中、先月、閣議決定された第4期がん対策推進基本計画において、さらなる受診率向上を目指し、がん検診受診率の目標値を50%から60%に引き上げたほか、ドラッグラグ等の課題に対し、新たな診断技術、治療法へのアクセスを確保する観点から、新たな技術の速やかな医療実装に関する項目を新規に追加し、国際共同治験への参加を含め、治験の実施を推進する方策の検討など、取り組みを推進することとしております。
 研究分野については、がん研究のさらなる充実に向け、戦略の見直しを行うこととしています。
 本有識者会議では、この秋をめどに一定の取りまとめを行うことを念頭に、がん研究の今後のあるべき方向性と具体的な研究事項について御議論いただきたいと考えております。
 構成員・参考人の皆様におかれましては、それぞれのお立場から有意義かつ活発な御議論をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
○原澤推進官 ありがとうございます。
 それでは続きまして、構成員の紹介をさせていただきます。五十音順で御紹介させていただきます。
 北海道テレビ東京編成業務部、阿久津有紀構成員。
 日本臨床腫瘍学会、石岡千加史構成員。
 量子科学技術研究開発機構、内堀幸夫構成員。
 認定NPO法人がんサポートコミュニティー、大井賢一構成員。
 日本医師会、黒瀨巌構成員。
 理化学研究所、古関明彦構成員。
 日本癌学会、佐谷秀行構成員。
 日本癌治療学会、土岐祐一郎構成員。
 国立がん研究センター、中釜斉構成員。
 医薬基盤・健康・栄養研究所、中村祐輔構成員。
 ダカラコソクリエイト/カラクリLab、谷島雄一郎構成員。
 日本製薬工業協会、安川健司構成員。
 日本医療機器産業連合会、山本章雄構成員です。
 また、本会議におきましては、9名の参考人をお招きしておりますので、御紹介させていただきます。こちらも五十音順で御紹介させていただきます。
 九州大学大学院医学研究院、大賀正一参考人。
 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科、郡山千早参考人。
 郡山参考人は、本日遅れての御参加と伺っております。
 実験動物中央研究所、末松誠参考人。
 国立病院機構名古屋医療センター、直江知樹参考人
 名古屋大学大学院医学系研究科、西川博嘉参考人。
 がん研究会がん研究所、野田哲生参考人。
 国立保健医療科学院、福田敬参考人。
 国立がん研究センター、間野博行参考人。
 理化学研究所/東京大学医学系研究科、宮園浩平参考人です。
 以上の皆様の御参加の下「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」を開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして、事務局を御紹介させていただきます。順に御紹介いたします。
 文部科学省、森研究振興局長でございます。
 続いて、経済産業省、茂木商務・サービス審議官の代理で、廣瀬医療・福祉機器産業室長でございます。
 続いて、内閣府、西辻健康・医療戦略推進事務局長の代理で、長野健康・医療戦略推進事務局次長は、本日遅れての御参加と伺っております。
 続きまして、文部科学省、大月研究振興局研究振興戦略官でございます。
 文部科学省、南川研究振興局先端医科学研究企画官でございます。
 経済産業省、下田生物化学産業課長は、本日遅れての御参加と伺っております。
 国立研究開発法人日本医療研究開発機構研究開発統括推進室、芳賀疾患調査役でございます。
 事務局の御紹介は、以上でございます。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 資料は、厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございます。
 議事次第、資料1から資料6まで及び参考資料1から参考資料3までがございますので、御確認ください。
 それでは、早速でございますが、議題1「座長の選任について」に移りたいと思います。資料1を御覧ください。
 資料1の3の(2)におきまして「本会議には、構成員の互選により座長をおき、会議を統括する」とされております。
 本規定に基づきまして、構成員の互選により座長を選任いただきたいと思います。互選についてでございますが、事前に土岐構成員より中釜構成員を座長として御推薦いただいている状況でございますが、皆様、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○原澤推進官 ありがとうございます。
 それでは、中釜構成員に本会議の座長をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。少々お待ちください。
 それでは、中釜座長より、一言御挨拶をいただきますでしょうか。
○中釜座長 ただいま座長の指名を受けました、中釜です。
 この会議における、今後のがん研究の在り方の議論は、非常に重要な位置づけと認識しております。
 先ほど、中谷がん・疾病対策課長からもお話がありましたように、2014年にがん研究10か年戦略が策定され、今年がその最終年に相当するわけで、この10年間において、2014年のがん研究10か年戦略の策定後2015年には、日本医療研究開発機構(AMED)が設立され、がん対策においても、AMEDの事業の中で、一貫した開発研究ということで推進されてきたわけであります。
 つい先日、3月28日には第4期がん対策推進基本計画が策定され、この4月からは、第4期基本計画に沿って日本のがん対策が推進されることになります。この第4期基本計画の中でも、がん予防、がんの医療、がんとの共生という3つの柱の下、それらを支える基盤として、全ゲノム解析を含めた研究が位置づけられております。
 同時に、人材育成も非常に重要なテーマであり、研究の推進と共に、がん研究戦略の下で人材育成を進めていくことも重要な課題と思います。
 今年までのがん研究10か年戦略において、日本のがん研究は大きく推進されたと認識しております。基礎的な研究シーズが開発に向かうスピードが、AMEDの研究推進のもとで、開発研究が強力に推進されてきた10年だったと思います。
 この間に、全ゲノム解析技術、免疫細胞の解析、シングルセル細胞解析をはじめとする技術的な大きな進捗があり、がん研究の成果がいち早くベッドサイドに届く時代が到来したと思います。今後10年で、さらにがん研究の開発のスピードというのは、一層加速されると思います。
 その中において、新しい医療シーズ開発、医療機器の開発において、標的としての妥当性、POCの取得をしっかりと進めながら、より効率的に開発研究を推進していくためにも、がん研究の充実は非常に重要だと認識しております。
 先ほど申しました人材育成も重要ですし、さらには最近の、いわゆるAI技術等を介したデジタル情報に関する取扱いなども、この研究の中に取り組んでいく必要があると思います。
 今回は、来年度以降のがん研究10か年戦略策定に向けて、各有識者の先生方から有意義な御意見あるいは今後の展開に向けた貴重な御意見をいただければと思います。
 今日からのスタートですけれども、よろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
○原澤推進官 中釜座長、ありがとうございました。
 それでは、以降の進行につきまして、中釜座長にお願いしたいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。
○中釜座長 それでは、皆さん、よろしくお願いいたします。
 まず、お手元の議事に従って進めさせていただきます。次の議題に移りたいと思います。
 議題の2「これまでのがん研究について」と議題の3「議論の進め方について」、事務局から資料2を使って、その内容を御説明いただいて、その後、まとめて構成員の先生方から御意見や御指摘を受けたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、資料2について、事務局より説明をお願いいたします。
○原澤推進官 事務局でございます。資料2を御覧ください。
 「有識者会議の開催と議論の進め方について」という資料でございます。
 1枚お進みいただいて「これまでのがん研究について」というスライドでございます。
 1枚お進みください。ページ番号3ページ目でございます。
 「がん研究の総合的戦略のながれ」ということで、これまでの経過についてお示ししています。平成26年に策定された、がん研究10か年戦略につきましては、先ほど来お話がありましたとおり、今年度、令和5年度に終了する予定となっていることを示してございます。
 一番下のところで、昨年度末に第4期がん対策推進基本計画が閣議決定されましたということを示してございます。
 続いて、4ページ目を御覧ください。
 がん研究10か年戦略の見直しに係る、これまでの記載等でございます。
 がん研究10か年戦略の本文におきましては、基本計画の見直しも踏まえて、本戦略の中間評価と見直しを行うとされています。
 第4期がん対策推進基本計画におきまして、取り組むべき施策の中で、国は、がん研究10か年戦略の中間評価報告書や本基本計画を踏まえ、がん研究のさらなる充実に向け、戦略の見直しを行うこととされております。
 続いて、5ページ目を御覧いただければと思います。
 先ほど中釜座長からも御紹介ありましたが、第4期がん対策推進基本計画の概要をお示ししております。この中で「第1.全体目標と分野別目標」の箱の中の下のほうでございますが「4.これらを支える基盤」の中の(1)のところに、がん研究の推進というものが位置づけられてございます。
 続いて、6ページ目を御覧ください。
 こちらは、現在、策定されているがん研究10か年戦略の概要となります。
 戦略目標は、一番上に掲げられているとおり「我が国の死亡原因第一位であるがんについて、患者・社会と協働した研究を総合的かつ計画的に推進することにより、がんの根治、がんの予防、がんとの共生をより一層実現し、『基本計画』の全体目標を達成することを目指す」といった形で整理されてございます。
 基本計画の当時の全体目標については、お示しのとおりで、それを踏まえて、がん研究10か年戦略の方向性ということで、その下の箱が示されているところです。
 研究開発において重視する観点というところで3つ示されていますが、がんの根治を目指した治療、がん患者とその家族のニーズに応じた苦痛の軽減というもの、また、がんの予防と早期発見というもの、一番右に、がんとの共生というものが示されてございます。
 具体的な研究事項については、一番下の(1)から(8)までという形で整理されています。
 次の7ページ目を御覧ください。
 今のを前提にして研究が進められ、中間評価として整理された資料が、こちらになります。
 上の青い箱の中に書いてございますが、10か年戦略の中間評価を行いましたと、その三角の下のところでございますが、がん研究全体としては、おおむね順調に進捗していると。それまでの10か年戦略の枠組みの8つの柱については維持をするとともに、第3期がん対策推進基本計画で取り組むべき施策への対応を含めて、各柱ごとに現状の課題、後半で取り組むべき研究の方向性がまとめられ、横断的な事項について追記された形になってございます。
 横断的事項の具体例は、一番右の下側の水色の箱の中に書いてあります、シーズ探索やゲノム医療、免疫療法、リキッドバイオプシー、AI等の新たな科学技術の利活用、基盤整備などが挙げられているところでございます。
 続いて、次の資料をお願いいたします。
 今後の議論の進め方についてということで、案のお示しでございます。
 次の9枚目のスライドを御覧ください。
 「本有識者会議のスケジュールと議論の進め方について(案)」ということでございます。
 前回の中間評価時の議論の進め方を参考にしまして、まずは、中間評価時に定められた項目立てごとに、過去10年間の研究の成果、現状と課題、また、今後の10年間を見据えて取り組むべき研究の方向性について御議論をいただき、今週をめどに取りまとめを行うこととしてはどうかとしております。
 具体的なスケジュール感としては、下に文字で書いておりますが、本日、こういった議論の進め方や、これまでの経緯と、主な研究の成果等について御紹介させていただいた上で、6月頃を目途に何度か御議論をいただき、取りまとめに向けた御議論を7月以降に進めていただき、秋頃に取りまとめをいただくという形のスケジュール感で考えてございます。
 10ページ目は、御参考で過去の戦略の項目立ての編成について御紹介しておりますので、適宜御確認いただければと思います。
 事務局から資料2の御説明は、以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 それでは、構成員・参考人の皆様方から、今、説明がありました議論の進め方について、御意見等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。特に今の時点では、特段の御意見はないということですので、次へ進めたいと思います。
 続きまして、議題の4「研究の状況と成果について」であります。
 事務局のほうから、資料を3から6について説明をお願いいたします。
○原澤推進官 事務局でございます。
 それでは、資料3から6まで、各省庁とAMEDのほうから順次御説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 まずは、資料3を御覧ください。
 厚生労働省からでございます。「『がん研究10か年戦略』策定後のがん研究の支援状況と主な成果」という資料でございます。
 1枚お進みいただいて、2ページ目でございます。
 がん研究の支援体制ということで、がん研究10か年戦略の策定年である2014年以降の構図を示しております。
 (1)から(6)の柱については、主にAMEDにおいて、疾患領域に関連した研究開発を行っていただいておりますが、こちらは厚生労働省の、いわゆる厚労科研、資料が抜けていますが、厚生労働科学研究費補助金の中では「(7)充実したサバイバーシップを実現する社会の構築を目指した研究」と「(8)がん対策の効果的な推進と評価に関する研究」というものを進めております。
 3ページ目を御覧ください。
 がん対策推進総合研究事業ということで、事業の概要等についてお示ししております。全て読み上げることはいたしませんが、基本的には、がん対策推進計画や、がん研究10か年戦略に基づいて、研究事業を推進しておりますということと、成果概要については、大きく分けて一番上の段落に書いております、がん検診の啓発のために活用できる資材等の作成を行ったということで、こちらは、後ほど具体的に後段のスライドでお示ししたいと思います。
 一番下のところで、方向性として記載しているところでございますが、希少がん、難治性がん、小児がん、AYA世代のがんへの対策、ゲノム医療等の新たな治療法等の推進、就労を含めて社会的な問題への対応というのが必要であり、諸課題の解決に向けて今後も10か年戦略を踏まえて、総合的かつ計画的に研究を展開していく必要があるという形で整理しています。
 続いて、4ページ目を御覧ください。
 がん対策推進総合研究事業における、これまでの論文数などの業績について一定の整理をしていますので、御紹介させていただきます。
 こちらは、資料の整理の都合上、それぞれの年度に終了した課題ごとの報告論文数等を整理しておりますので、年度によって終了課題数が一番右の水色の枠囲みの中に書いてありますが、かなりばらつきがありますので、年次ごとに実績にかなり幅があるように見えるのは、そういった整理の背景がありますので、その点は御承知おきください。
 御覧いただいているように、原著論文や、その他の論文、学会発表、特許の取得等の実績が一定ございますという御報告でございます。
 続きまして、5ページ目でございます。
 ここから先は、少し具体的にどんなことをやっていただいていたかという御紹介でございます。
 5ページ目、成果の例マル1ということですが、上の段については、乳がん検診の適切な情報提供に関する研究という中で、乳がん検診受診者に対して、いろいろと御質問をいただいた内容等をまとめたパンフレットなどを作成して、受診者の検診の結果等に関する御理解を深めるための一助としていただくようなことを取り組んでおります。
 続いて、下の半分、希少がん診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上等については、こちらは様々な領域のガイドラインの作成等に着手していただいておりまして、脳腫瘍診療ガイドラインですとか、成人・小児の進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドラインといった、各種ガイドラインの作成等をやっていただいています。
 この作成の過程の中でも、人材育成に一定程度寄与していると御報告をいただいています。
 続いて、6ページ目を御覧ください。
 こちらは、医療提供体制の整備に関連するような項目でございます。上半分、思春期・AYA世代がん患者の包括的ケア提供体制の構築に関する研究ということで、一定のまとめた冊子をつくっていただいて、公開をしていることになっています。
 下の段のがん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と、小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療提供体制の均てん化に向けた臨床研究というものにおいては、がん生殖医療連携ネットワーク体制の構築を各地域で進めていただくための取り組みを進め、情報提供のための患者向けのパンフレット作成等を行っていただいているという状況でございます。
 続きまして、7ページ目を御覧ください。
 こちらは、共生の領域に位置づけられるような研究でございますが、上の段では「がん患者の療養生活の最終段階における体系的な苦痛緩和法の構築に関する研究」ということで、がん疼痛・呼吸困難・終末期せん妄に対するアルゴリズム治療を含む緩和治療ガイドに基づいた医療従事者向けの研修会の開催などを実施していただいているというところ。
 あとは、がん疼痛治療になかなか反応しない難治性の方に対する実態調査の実施等をやっていただいているところでございます。
 下の段は「がん患者の就労継続及び職場復帰に資する研究」ということで、就労支援、両立支援といった文脈で、ガイドライン作成等の取り組みをし、また、がん患者の診断から休職、復職までのメンタルヘルスについての知見の整理などの取り組みを行っていただいています。
 最後に8ページ目でございます。
 令和5年度、今年度新規に公募をして採択された課題の整理を一定させていただきます。全て読み上げることはいたしませんが、予防・医療・共生、あと基盤といった形で、項立てを行って整理をしてございますので、御参照いただければと思います。
 一旦、資料3についての事務局からの御説明は、以上でございます。
○中釜座長 それでは、続きまして資料4について、文部科学省から説明をお願いいたします。
○大月戦略官 文部科学省の大月です。
 がん研究10か年戦略に係る当省における取り組みについて、資料4に基づき、御説明いたします。
 2ページ目を御覧ください。
 がん研究10か年戦略に対応あるいは関連する当省の取り組みを3つに大別しております。
 一番上の青色のものが、次世代がん事業に関連するもの、真ん中の緑色のものが、橋渡し研究プログラムに関連するもの、そして一番下のものが、オレンジ色で示しておりますけれども、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、通称QSTにおける取り組みでございます。
 次ページより、これらの取り組みを、次世代がん事業の取り組みを中心に、簡単に御説明させていただきます。
 3ページ目を御覧ください。
 次世代がん事業に係る取り組みであります。がん研究10か年戦略等を踏まえた次世代がん事業の改善、充実の取り組みを概括的に紹介しているものでございます。
 次世代のがん医療の確立に向けて、基礎研究の有望な成果を革新的な診断、治療薬に資する新規化合物等の融合シーズの開発に結びつけるよう、戦略的に推進することを目的として、資料の一番左側でございますけれども、2011年度から2015年度まで、次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムを実施して、関連する研究を支援してまいりました。
 その後、がん研究10か年戦略の策定を受けまして、2016年度から2021年度までは、従来の取り組みに加え、中心的に推進する5領域の研究分野や、若手研究者の支援枠を設定して、真ん中にありますけれども、次世代がん医療創生研究事業により、関連する研究を支援してまいりました。
 さらに、資料の一番右側の部分でございますけれども、2019年度のがん研究10か年戦略の中間評価等を踏まえ、2022年度からは、より若手研究者に特化した新たな公募枠や、政策的なニーズや、国内外の研究動向等を踏まえた戦略的な研究の推進を行う戦略的研究枠を設定して、次世代がん医療加速化研究事業を実施して、現在に至るまで行っているところでございます。
 本事業の推進に当たりましては、本有識者会議の宮園参考人にはPSとして、また、がん研究会には、研究推進サポート機関として、また、その他の有識者の方々にもPOとして本事業の推進に御協力、御支援をいただいているところでございます。
 この次世代がん事業において、創出された有望なアカデミアシーズについては、迅速にAMEDの、より出口よりの事業や、企業に導出することにより、新たながん治療、診断医療薬等の早期社会実装に貢献してきたところでございます。
 次ページにおいて、幾つかの具体例を紹介させていただきます。
 4ページ目を御覧ください。
 「次世代がん事業における主な研究成果」であります。
 左上の部分でございますけれども、革新的ながん治療薬に結びつく可能性のあるタンキラーゼ阻害剤に関する研究を革新的がん医療実用化研究事業に導出しているところでございます。
 右上は、難治性がんである膵がん患者の血液中のアポリポたんぱくA2アイソフォーム濃度を測定することによる新たな診断薬に資する研究であり、革新的がん医療実用化研究事業と連携して企業に導出しているところでございます。
 そのほか、下の部分でございますけれども、ドラッグ・デリバリー・システム技術や、老化と免疫に着目した研究開発など、様々な分野で本事業の成果を企業、他事業へ導出しているところでございます。後ほど御参照いただければと思います。
 5ページ目から8ページ目には、参考資料として、次世代がん事業に係る2012年度以降のこれまでの個別事業のポンチ絵を添付しておりますので、適宜御参照ください。
 9ページ目を御覧ください。
 橋渡し研究プログラムについて、簡単に御紹介いたします。
 本プログラムは、大学等の優れた基礎研究の成果を革新的な医薬品・医療機器等として実用化する橋渡し研究を支援するため、大学等が有する橋渡し研究支援機能のうち、一定の要件を満たすとして文部科学大臣により認定された橋渡し研究支援機関を通じ、研究開発段階に応じた研究費の支援を実施しているものでございます。
 橋渡し研究支援機関は、現在、資料の右下にあるとおりに、11機関認定されているところでございます。
 機関内外のシーズを積極的に支援するとともに、厚生労働省の臨床研究中核病院とも緊密に連携して、産学連携の強化を通じて、革新的な医薬品・医療機器等の創出に貢献しているところでございます。
 10ページ目を御覧ください。
 直近10年間の橋渡し研究支援事業の成果のうち、がんに関する代表的な成果を抜粋してお示ししているところでございます。
 がん細胞のみで増殖して細胞を破壊するウイルスによって、がん細胞を死滅させる、がんのウイルス療法についての製造販売承認の取得や、経口抗がん剤のTS-1の適用追加承認の取得につながる研究支援を行っていることを示しているところでございます。
 11ページ目を御覧ください。QSTの取り組みでございます。
 まずは、QSTにおける重粒子線がん治療研究に関して御説明いたします。
 本取り組みは、第1期の対がん10か年総合戦略に位置づけられており、1986年からQSTにおいて、加速器の建設をはじめ、1994年に臨床研究を開始し、2006年に先進医療に位置づけられました。
 また、2016年に骨軟部腫瘍が保険収載されて以降、保険対象が拡大されてきておりまして、これまでにQSTでは、1万4000人強の方々の治療がなされてきたところでございます。
 海外展開を見据えた研究開発も進めており、量子メスと言われる小型高性能な次世代治療装置の開発や標準化に向けた研究開発等を推進しております。
 最後になりますが、12ページ目を御覧ください。
 また、次世代のがん治療研究として、新たな標的アイソトープ治療の確立に向けた取り組みを推進しております。
 具体的には、RIの新規医薬品開発に関する研究を推進するとともに、治療用の移動型トレーラーハウスの開発等、社会実装を見据えた取り組みも行っております。
 簡単でありますが、文科省の説明は、以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、順番を変えさせていただきまして、先に資料6の説明をAMEDからお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
○芳賀次長(疾患調査役) 承知しました。
 それでは、AMED研究の状況と成果について、がん研究10か年戦略の中間評価以降の状況を中心に、がん研究に係る支援状況、成果例について御説明します。
 2ページ目のスライドを御覧ください。
 がん研究10か年戦略における具体的研究事項の8つの柱のうち(1)から(6)をAMEDにて推進しております。
 さらに、中間評価にて追加された(9)の「横断的事項」についても取り組んでいるところでございます。
 続きまして、3枚目を御覧ください。
 AMEDにおけるがん研究の支援状況の全体像ですが、2020年度以降は、第2期健康・医療戦略、中長期計画に定められた6つの統合プロジェクトでの研究開発の推進となり、この6つのプロジェクトの成果を最大化するための事業横断的なマネジメントを疾患コーディネーターの下で推進しております。
 次のスライドをお願いいたします。
 AMEDにおけるがん研究の支援状況の全体像ですが、がん疾患領域に関連した事業での研究開発状況は、お示しのとおりとなっており、次世代がん医療加速化研究事業、革新的がん医療実用化研究事業のほか、一部にがん関連課題を含む事業においても、がん研究に取り組んでおります。
 次のスライドをお願いいたします。
 次世代がん事業及び革新がん事業において、2019年度から2020年度の4年間に支援した研究課題数についてお示ししています。
 この4年間での支援課題数は、次世代がん事業で266課題、革新がん事業で319課題の2事業合計で585課題となっております。
 また、右下の表でございますが、こうした研究支援の成果に関する最近の実績について、シーズの企業への導出等の件数、研究開発を活用した臨床試験・治験への移行件数、薬事承認件数をお示ししています。
 数字については、御覧のとおりの実績となっております。
 次のスライドをお願いいたします。
 次に、一部にがん関連課題を含む事業における、がん研究の支援の状況について御説明します。
 基礎研究から臨床研究、治験に至るまで様々な事業において、がん研究の支援を行っており、2019年度から2022年度までの4年間の総支援課題数は899課題に上ります。
 御覧のとおり、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、総務省のそれぞれの事業において、このような支援状況になってございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 こうした研究支援の成果として、薬事承認に至った例、研究成果を活用した臨床試験・治験への移行例をお示ししてございます。
 薬事承認例といたしましては、代表的な小児がんである神経芽腫に対して、ジヌツキシマブが承認された例をお示ししております。
 また、臨床試験・治験への移行例として、先天性巨大色素性母斑の例をお示ししてございます。
 こちらの成果例でございますが、プレスリリースのほうにリンクいただけるような形での資料構成となってございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 また、研究成果の医療現場への普及例として、診療ガイドライン掲載例を2つほど御紹介します。
 上段が進行頭頸部がんに対する術後補助療法の標準治療に関する例になってございます。
 下段が胆道がんに関する例となります。
 こうした支援例に限らず、これまで質の高い臨床試験を数多く支援し、成果が着実に蓄積された状況で、ガイドラインへの掲載も進んでいるところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 次に、がん研究10か年戦略の中間評価での指摘内容についての取り組みについてです。
 2020年度以降の公募におきましては、中間評価で指摘された、がん研究が目指す柱及び追加事項について、課題の取り組み状況を把握した上で、シーズの探索的研究、ゲノム研究、免疫療法などの新たな治療法に係る課題等を含む研究支援に取り組んできております。
 目標達成に向けて研究が進められているところであり、実用化が期待できる成果が得られてきております。
 次をお願いいたします。
 こちらは、次世代がん事業での対応状況例となります。
 横断的事項に取り組む採択課題数は、表に示したとおりでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 11ページ目以降は、10か年戦略の柱にひもづく研究成果例を紹介しております。多数ある中から抜粋しておりますが、詳細の御説明は、時間の都合もございますので割愛させていただき、ポイントのみ説明をさせていただきます。
 12ページをお願いいたします。
 がんの本態解明に関する研究においては、マルチオミックス解析やシングルセル解析などの最新の技術の活用。また、悪液質や老化、抗がん剤に対する薬剤耐性機構等の本態解明への理解、また、がん遺伝子パネル検査のみならず、がん細胞の全ゲノム解析が始まり、個別最適化治療に向けた研究が進められておるところでございます。
 14ページ目のスライドに御移動願います。
 アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究についてです。
 アカデミアシーズと企業シーズ効能追加の薬事承認取得が得られているほか、さらに、アカデミアシーズ企業導出と、新規治療標的発見などの成果を上げているところでございます。
 16ページ目のスライドをお願いいたします。
 3つ目の柱の「患者に優しい新規医療技術開発に関する研究」でございます。
 異分野融合や医工連携による研究が着実に進んでいるところでございます。
 また、企業導出に向けた医師主導治験の完遂や導出先企業による製造販売承認申請を行うなどの成果も出てきております。
 18ページ目をお願いいたします。
 4つ目の柱の「新たな標準治療を創るための研究」についてです。
 質の高い臨床試験を数多く支援しているところですが、加えて、支持・緩和領域における臨床研究の方法論や評価指標の確立を目的とした試験が実施され、研究推進のための基盤整備が進んでいるところです。
 次に、20ページ目をお願いいたします。
 「ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域」についてです。
 小児がんについては、中央診断や試料保存システム等の整備が進み、正確な診断のもとに疾患ごとに晩期合併症に配慮した新たな標準治療確立のための臨床試験が実施されております。
 次のスライドをお願いいたします。
 次に高齢者のがんに関する研究では、細胞老化に関する研究が進み、加齢に伴う生体の変化の観点から、がんの進展に関する理解が進んでいるところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 難治性がん及び希少がんに関する研究です。各種希少がんに対する標準治療確立のための研究が進んでおり、ガイドラインの記載追加変更に資するエビデンスが創出されております。
 また、特徴的な生物学的性質を踏まえた、より有効性の高い標準治療法や安全性が高く、QOLを維持することができる標準治療法を開発するための臨床試験も実施されているところでございます。
 次をお願いいたします。
 がんの予防や早期発見手法に関する研究では、新たな発がんリスクに関する研究や、早期発見マーカーの性能評価研究を進めるとともに、がん検診、有効性評価のための大規模比較試験を長期にわたって支援中でございます。
 25ページに移ってください。
 25ページ以降は、横断的事項への取り組みの成果例となってございます。
 26ページ目が、シーズ探索について。
 27ページ目が、がんゲノム医療に係る研究について。
 続いて29ページが、免疫療法に係る研究について。
 31ページ目が、リキッドバイオプシーに係る研究について。
 33ページ以降が、加えてAI等の新たな科学技術に関する取り組みとして、大規模データ基盤の整備ですとか、細胞株やサンプルの利用に関する基盤の取り組みも進められているところでございます。詳細は、資料を参照いただければ幸いでございます。
 最後に、37ページ以降の説明でございます。
 参考資料といたしまして、AMED設立時の第1期以降のがん研究支援における事業体制に関する情報を掲載しております。
DC、PS、POのもと、がん研究支援に取り組んでおります。
 AMEDからの資料6の説明は、以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 では、順番を入れ替えさせていただきましたけれども、続きまして、資料5について経済産業省からの説明をお願いいたします。
○廣瀬室長 経済産業省医療・福祉機器産業室の廣瀬です。
 順番のほうを入れ替えていただき、どうもありがとうございました。
 それでは、資料5に基づきまして、経済産業省の取り組みを説明させていただければと思います。
 経済産業省は、がんの10か年戦略と、政府全体、医療機器では、昨年閣議決定した医療機器の基本計画に基づいて行っております。
 大きく医療機器と薬等に分かれておりますので、私、廣瀬と下田課長のほうから、御説明をさせていただければと思います。
 次のスライドをお願いいたします。
 経済産業省は、冒頭中谷課長からありましたように、先端的な研究開発の推進というものが経産省は主に行っておりまして、医療機器、創薬基盤技術の向上と患者のQOL向上というものを実現する機器の実現化を目指して、産学連携による研究開発を推進してまいりまして、下にあるような事業を、これまで推進してきました。
 実際の推進体制としましては、先ほど、芳賀次長(疾患調査役)から御説明をいただきましたAMEDのほうで、これらの事業を実施しているというのが、大枠でございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 その中では、医療機器のほうは、大きく2つの事業を行っておりまして、そちらの御説明をできればと思っております。
 1つ目が、医療機器の先進的開発事業というものでございまして、先端的な医療機器開発を行うというものでございます。
 次のスライドの左下にありますような重粒子線治療費の開発、こちらのほうは、ターゲットのみに集中できるという特徴を、さらに開発というものAIを活用してやっていくということであったりとか、右にありますような簡易的な診断システム開発といった、次に使うようなものの開発を行っております。
 次のスライドは、もう少しより一般的に使われる医療機器の開発で、医工連携事業というものを行っております。
 こちらのほうは、より幅広く使われるもので、機器開発と、ソフト事業とのセットで行っておりまして、次のスライドにありますように、左下のマンモグラフィーと、こちらのほうをマイクロ波の反射によって痛みが少なくできるということで、受診率を上げる開発ですとか、右にありますように、医療機器の開発ですと、当然、薬事とかそういったいろいろな相談がありますので、経済産業省ですと、上市して世に出すということがありますので、なかなかその辺の不慣れなところについても、相談をしてうまく進めるといったものを併せて行っております。
 次は薬になりますので、下田課長のほうにバトンタッチしたいと思います。
 下田課長、お願いいたします。
○下田課長 続きまして、次世代治療です。
 経済産業省のがんの治療薬、医薬品の分野では、周辺の基盤技術ということで、製造技術あるいは診断薬というところを支援しております。
 次のページをお願いします。
 マイクロRNAの測定技術ということで、東レで、がんの検査キットの開発にまでたどり着いた事例がございます。
 それから、マイクロRNAのチップを使ってがんのスクリーニングができるような機能というものを、東京医科大、それから国立がんセンターと共同で開発するといったものも実用化のめどを立てているところでございます。
 次のページをお願いします。
 それから、がんの抗がん剤、医薬かバイオ医薬品で大事になってくるのは、医薬品の効き目です。より効果的にするための層別化マーカーの探索ということにも取り組んでおります。
 次のページをお願いします。
 さらに、抗体薬の製造です。最近、新しい形、より効果の大きいような構造の抗体薬を実際に製造して量産して、品質を一定安定に保つと、こういったことが重要になってきておりまして、例えば、このように放射性物質を抗体にくっつけるなどの実際に合成する技術といったものも開発をしているところです。
 以上です。
○中釜座長 御説明ありがとうございました。
 それでは、これまでの事務局の説明についての御意見、御質問と、それから本会議の議論を開始するに当たりまして、各構成員・参考人の方々、お一人ずつからコメントをいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 時間の関係で、1人3分程度でお願いしたいと思いますが、名簿順に御指名させていただきたいと思います。
 まず、最初に阿久津構成員、お願いできますでしょうか。
○阿久津構成員 御紹介ありがとうございます。北海道テレビの阿久津と申します。
 私、乳がん患者でございまして、4年前に罹患いたしまして、父を胃がんで亡くし、母も乳がん患者でございます。
 そして家族、そして遺族という点から、がん研究における患者の気持ちといいますか、そういうところが非常に大切になってきていると思っております。
 これまでの研究の成果を拝見しながらも、患者の気持ちとしては、非常にペースがゆっくりに見えるところがあります。各先生方におかれましては、非常に一生懸命研究をされているということは理解しておりますが。
 次世代の10か年、ここから先10年で、どんどんゲノム医療なども進んでいますので、患者に優しい医療、そして、全ての国民の皆さんを取り残さずに、健康でいられる医療というのは、どういうものなのかというのを私なりにも考えながら、お話をさせていただきまして、研究の一助になればと思っております。
 すみません、最初で緊張してしまいました、大変恐縮でございます。どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございました。
 また、後ほど何か追加であれば、御発言ください。
 続きまして、石岡構成員、お願いできますでしょうか。
○石岡構成員 東北大学の石岡です。専門は腫瘍内科学、がん薬物療法です。
 今の御説明をいただきまして、大体ここ10年のがん研究の国の構成といいますか、立てつけというのは、非常によく理解できました。
 私の印象では、1つは、ところどころにアウトカムが書かれておりますけれども、そもそも当初の目標というのは、どういうものであって、全体としてどういうアウトカムがあったのかと。もちろん論文とか、成果というのは、いろいろなロジックモデル的な考えで言えば、途中のアウトカムと、最終的な成果としては、例えば、医薬品の薬事承認と薬価収載とか、医療機器の開発、あるいは、それによって最終的に国民の健康福祉に寄与したかということになるのだと思うのです。そういったところの評価軸が、全体として少し見えにくいなというのが印象です。
 もう一つは、基礎研究から応用研究まで、先ほど申し上げたような開発研究のプロセスの中に、いろいろな研究が立てつけられていますが、開発された研究がどういう評価になるか、一度開発されたら、例えば薬でも評価後に役に立たない薬ということも、研究によって評価されるわけですから、最終的なアウトカムが、国民の健康福祉と考えた場合は、開発されてしまえば、そこで終わりということではなくて、その後の臨床研究による評価というのが必要だと思うのです。そういったところの予算が、私は不十分ではないかという印象を受けました。
 私からは、以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、内堀構成員、お願いできますでしょうか。
○内堀構成員 量子科学技術研究開発機構の内堀です。
 私のバックグラウンドは、物理でありまして、少し皆様と違うところかと思います。当方のQSTの方で、様々な研究開発をしているところを御紹介させていただきながら、今後について検討させていただきたいと考えております。
 先ほども文部科学省様からQSTの活動について、すなわち重粒子線がん治療研究あるいは放射性薬剤を用いた次世代のがん治療研究について御紹介いただいたところです。
 特に重粒子線がん治療については、保険収載をしていただきまして、患者さんもかなり増えてきているところですが、さらなる普及が必要と考えられ、量子メスと称する小型化した装置を開発して、一般的な病院でも導入できるような形に、していきたいと考えております。
 また、放射性薬剤を用いた次世代がん治療研究、こちらについても、現在、特にα線放出核を用いた薬剤の治療というものが、世界的にも広まっておりますので、こういったものについて、一層研究開発を進めていき、新たな薬剤を開発につなげたいと思います。
 特に薬剤が患部に集まれば、放射線で攻撃できる特徴があります。抗体であったり、様々な薬剤と組み合わせた、そういった治療薬の開発ができるかと考えておりますので、活用していきたく存じます。
 いずれにしろ、QSTは、量子科学技術を活用した研究を様々行っております。放射線も含め量子科学技術を医療に応用していくということを、さらに進めていきたいと思っています。治療だけでなく、診断の方も継続して研究開発を進めて参ります。今後、これらを含めて議論をさせていただければと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、大井構成員、お願いいたします。
○大井構成員 がんサポートコミュニティーの大井です。よろしくお願いします。
 私たちは、がん患者さんとその家族に対する心理社会的支援をする支援団体という位置づけになります。
 1つ目として、がん研究10か年を推進していくということで、資料2のがん研究の10か年戦略の見直しに係る記載というところで、がん研究10か年戦略の中間評価報告や基本計画を踏まえてという記載がありました。
 文科省の資料4の中では、2024年から仮称となっていますが、次期がん研究10か年戦略という形で書かれています。がん対策推進基本計画の策定が5年から6年になったということを踏まえると、がん対策推進基本計画が5年で見直し、がん研究10か年戦略が10年で見直しだったときは、足並みをそろえた形でがん研究とがん対策推進基本計画と見直す関係になっていたかと思うのです。そういった足並みが、がん対策推進基本計画が6年とがん研究10か年戦略が10年の見直しとなると、年を置くごとにずれていってしまいます。5年を6年、6年であれば、10年を12年とか、そういった相互に関連付けて見直しができるようなタームで、この計画も進めていただきたいと思います。
 それから、途中の中で様々な研究が進められているということは、非常に心強いところだと思うのですけれども、そういった研究に関しても、ぜひ国民に分かるような形で広報していただきたい、あるいは告知していただきたいと思います。
 例えば、自宅でできる線虫がん検査と称してテレビCMが放映されていますけれども、先生方が研究され、上市されていくものは薬機法で制限され、広告規制を受けています。
 しかしながら、国民にとっては、やはりセンセーショナルな話題とか、そういったものが、先ほども尿を用いて非侵襲性かつ高精度的にという研究も進められているということであれば、新しい情報をぜひ発信していく、研究の側からも発信して国民に理解をいただくような仕組みをつくってほしい。
 それから、やはり今般、国家予算でがん研究を進めていくということに関しては、国民の一人として非常にありがたいことですし、非常に先進的な取組みであると理解しております。しかし、国家予算は税金で湯水のごとくあるわけではありませんので、ぜひ臨床面でいけば、エクイティ(Equity)、医療の公平性ということが世界的に話題になっています。研究費をどう公平に分配していくかということも考えていただきたいと思います。ですので、がん研究面においても、公平さのためにどう選択と集中を図っていくか、たとえば、この領域研究を今年は強化していこうとか、そういった優先順位みたいなことに関しても、ぜひ検討をいただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、黒瀨構成員、お願いいたします。
○黒瀨構成員 改めまして、おはようございます。黒瀨でございます。
 私、日本医師会の中で、主に医療政策と公衆衛生、特にその中でも、がん対策とNCDs対策を担当させていただいております。
 また、第4期のがん対策推進基本計画、今回のこの有識者会議にも大いに関わるところだと思いますけれども、その中で、がんの予防あるいは医療、共生、その基盤の部分で、医療提供体制、例えば、学校医、産業医、あるいは、かかりつけ医機能といったものの重要性、役割ということについて提言させていただいていました。
 その中で、やはり地域でがんの患者さんと向き合うためには、地域の連携も必要ですけれども、今後、AI等の診療の補助の活用というのも重要な課題になってくるのかなと受け止めています。
 がん研究10か年戦略の横断的な事項の中にも、AI等の新たな科学技術の利活用ということが含まれておりますので、今後、私どもも医療AIが適切に、そして、安全・安心に活用できるような対策を考えていきたいと考えております。
 その中で、日本医師会は、例えば、AIホスピタルですとか、あるいはJ-MIMOによる匿名化された個人情報を保護した上で、匿名化された診療情報を提供するなど、今までAIの基盤に積極的に推進するように努力をしてまいりましたが、一方で、日医の中に生命倫理懇談会というのがございまして、その中では、医療AIの発展に伴う様々な課題について話し合いをしてきております。
 中でも課題としては、AIによって誤診が起こった場合に、その診断の感度ですとか、特異度というのはどういった評価をするのかということ、あるいは、責任はどこにあるのかということ。さらには、安心・安全に使うためには、逆にAIの医療機器を使用しなかった場合や、あるいはAIの示唆に従わなかった場合の責任の所在といったことも大きな課題になってくるのかなと感じています。
 そこで、前期の生命倫理懇談会では、6つの提言をさせていただいたのですけれども、その1つが、人間の尊厳と公共性、包括性、公平性を高める医療AIであること。また、人間の意思を尊重し、医療の公共性を守る医療AIであること。さらには人間が理解し、判断の根拠を説明できる医療AIであること。また、医療AIの使用による自己責任が明確であること。また、継続的に開発や改良ができる医療AIであること。
 最後に、医療AIに関する教育と研究を推進することということを提言させていただいておりまして、中でも、やはり公共性あるいは責任、そして今後の教育、我々は、いわゆる臨床医というものは、今までAIというものを学生時代に、もちろん教育されていないわけですし、今までもほとんど使用経験がないわけですから、そういったAIを使うためのリテラシーというのが非常に大切だと思うのですが、その点に関して、適切な教育あるいは教育から実践というところを、しっかりと我々も考えていかなくてはいけないのではないかなと思っています。
 また一方で、直近、非常に話題になっているチャットGPTのようなAIを使ったいろいろな答えを出してくれるようなものがございますけれども、こういったものを、例えば患者さんたちが利用された場合に、それが本当に正当な場合もありますし、逆に正しくない場合もあると思うのですけれども、そういった誤りが、医療者と患者さんとの間で、何らかの誤解を招かないような、そういったことも気をつけていかなくてはいけないと考えています。
 すみません。もう一つ、全く違う件ですけれども、医療提供体制などの臨床的な現場に一番近い課題に関する研究というのは、多分、厚労科研さんが支援を行ってくださっている研究だと思うのですけれども、先ほどの御説明の中で、令和1年に比べると令和2年、令和3年、もちろん課題の終了数も違うところは違うと思うのですけれども、明らかに論文あるいは特に学会発表の数が急減していると受け止めています。
 これは、もちろん量の問題ではなくて、質がより大切なわけですから、量がどうということだけではないのですけれども、たとえ課題が終了した後のタイムラグが、どうしても取りまとめた後の学会発表、さらに論文となると、ある程度のタイムラグがあるのは理解できるわけですけれども、とはいえ、何らかの特殊な事情、あるいはその状況という、例えばコロナ禍とか、そういったことも含めて、そういった事情があるのだとすれば、今後の本会議の議論の中にも取り組んでいく必要があるのではないかなと感じまして、一応どういった理由が考えられるのかなということを、御質問させていただきたいと思います。
 以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、古関構成員、お願いいたします。
○古関構成員 どうもありがとうございます。
 私は基礎の生物学者で、発生遺伝学という分野を主に、ネズミで研究している立場ですので、基礎研究の立場からお話をさせていただきたいと思います。
 私たちも、ネズミの遺伝学だけでは、もう生きていけないという認識はすごく強くあって、どういうふうに、これを人間とリンクさせていくのかということで、10年ぐらい前から、手元にあったのがアトピー性皮膚炎のマウスだったので、そちらでどういうふうにネズミで病気が起こるかというのを見ながら、人間のデータを集めていこうという、そういう試みをやってまいりました。
 300人ぐらいの患者様の御協力をいただいて、皮膚ですとか、リキッドバイオプシーの、そこからの遺伝子発現ですとか、経時的な臨床データとか、そういったものを集めていって、それでデータ統合することで、何となく少し層別化できるかなというところが見えていて、300人ですので、検出力がすごく弱いのですけれども、それでも何となく見えてきている。
 そこで、すごく分かったことは、このような大きな仕組みがないと、そういった研究というのをスケーラブルにしていくことがなかなか難しい。ですので、やはりこういうところで、どういうふうにいろいろなところで行われている小さな研究を、データという意味で統合していけるのか、その枠組みというのは、やはりこういうところできちんと考えていかなくてはいけないのかなと感じました。
 そこで感じたことのもう一つは、遺伝学というのは、遺伝的な摂動から物事を見ていくわけなのですけれども、今、これだけいろいろな臨床的摂動といいますか、治療介入のいろいろな手段が出てきていて、その治療介入の後に、恐らくそれぞれの患者様は、いろいろな転機を取られるのだと思うのですけれども、やはりそこで、リキッドバイオプシーなり、いろいろな形で集めていったデータというのを、やっぱどういう統合していくのか。
 そうしますと、先ほど黒瀨先生がおっしゃっていたような、AIと言っても、元はデータですので、やはりしっかりとしたデータを、何とかここで、特にそういう治療介入の後のデータをしっかりと他階層で集めていく、そういった枠組みを、もう既にあるのだと思うのですけれども、僕らがアトピーで少しやった感じですと、厚労省のAMEDのそういうサポートでやったとしても、やはり300人分のデータベースをつくるのがやっとで、その先に、それを3,000人にする、3万人にするということが、どれだけできるのかというところは、こういうところで議論を、個人的にはさせていただけるといいのかなと。
 特に層別化の部分というのは、製薬会社の方は決してやらないはずの分野ですので、そこは、学者がすごく大事なところではないかと思っております。
 今日の4部門のお話を聞かせていただいて、基礎研究から患者様の環境にまで及ぶような、すごく膨大な分野をカバーしようという、物すごく野心的な、初めて参加させていただいて、取り組みだと思いました。
 ただ、全体的に、国内に散らばっている研究資源ですとか、臨床資源をどういうふうにネットワークして、それを大きく見せようかというときに、やはり施設の垣根というのは物すごく、特にデータを統合するようなときには大きくなっていくと思いますので、その辺のコーディネーション機能というのを、強くしていくのも大事なのかなと思いながら聞いておりました。
 少し長くなりましたが、ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
続きまして、佐谷構成員、お願いいたします。
○佐谷構成員 佐谷でございます。
 私自身は、日本癌学会の理事長を務めておりまして、同時に、がんのPO、それから、この間策定されました第4期の基本計画の委員も務めておりました。
 私の立場としては、基礎研究からトランスレーショナルリサーチの部分において、何か提言させていただければと考えております。
 先ほど4つの報告がありましたように、この10か年で、我が国は、免疫分野、あるいはゲノム解析分野、あるいは放射線の治療などの分野で、非常に実は、世界的、国際的にも評価される高い研究成果を上げてきております。
 しかし、それが国際的に開発されている治療の背景となるような基礎情報を提供してきたということで評価できるのですが、出口での貢献というものが見える、つまり、本当に薬剤として現れるとか、あるいは治療法で現れるような、あるいは診断法に現れるような、出口での貢献がないと、国民には見えにくいのだと思っております。
 ですから、やはり次は、シーズ、基礎で開発したものを実用化するところのトランスレーショナルリサーチ、つまり橋渡し研究の機能を、かなり強化する必要があるのではないか、それを強化することによって、これだけ実は重要な基礎的な発見を、もっと実用化しているのは、日本の真骨頂だというところが見えるのではないかと思っています。
 10か年戦略の中で、根治を目指すということが最初に書かれていますので、せっかくのこの研究を根治につなぐためには、TR機能の強化。特に基礎研究からモダリティーへのつながりが非常に悪いというところを改善していくのに、何か提言ができればと考えております。
 以上でございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、土岐構成員、お願いいたします。
○土岐構成員 私は現在、日本癌治療学会の理事長ですけれども、それ以外にも大阪大学の前の病院長であり、実際は外科医で手術を専門にしております。
 大学病院にとって、今、一番困っておりますのは、これは、がんに限ったことではないのですけれども、臨床研究がなかなか進まないということでございます。これは、一番には臨床研究法の施行の後、介入研究、医師主導の研究というのが非常に減っておりまして、実際、特定臨床研究をやるというのが、ハードルが高くて、大きな資金を得て、AMEDの資金を得て、医師主導治験、先進医療というのは可能なのですけれども、もう少しお金がかからずに、医師が主導でやるという研究が非常に困難な状況になっております。
 ここについて、ぜひ何とか、この会も通じて、お力をいただきたいと考えております。
 例えば、我々は医療現場におりますと、既存薬のドラッグリポジショニングとか、適用拡大とか、そういったアイデアはたくさんあるのですけれども、そのような研究が全てお金を一から用意しなくてはいけない、企業は、もう特許が切れているから協力できないということが多々あります。
 例えば、もし、例えば承認薬の適応拡大のなどの特定臨床研究を評価療養にしてもよいとか、そういうシステムがあれば、資金を使わずに、研究ができます。
 そういったアイデアをいただいて、ぜひ臨床研究のハードルを下げてほしいと考えております。
 もう一方、先ほど来出ておりますビッグデータです。診療情報に関しましては、我々の大阪大学では、AIホスピタルの支援を得まして、OCRネットと言う近隣の28病院をつないで、1万床のデータをすぐに解析できるというシステムを持っております。
 こういったものを活用してまいりたいのですけれども、もう一つ付加価値を高めるためには、私、外科医でございますので、組織バンクも多施設共同で集めるシステムに御支援いただいて、組織バンクを臨床情報と直結させて行うような、そういう研究に、ぜひ御支援をいただけたら、がん研究も飛躍的に進められると考えております。
 私からは、以上の2つの点を述べさせていただきました。ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、中村構成員、お願いいたします。
○中村構成員 医薬基盤研理事長の中村です。
 幾つか言いたい点はあるのですけれども、時間が限られていますので、先ほど出たドラッグラグと均てん化の問題について、お話をさせていただきたいと思います。
 かつてというか、20年ぐらい前、ドラッグラグの問題というのが大きくなって、それを解消しようということで、そこに注力されて一時期ドラッグラグというのは少し解消されましたけれども、最近は、結局、日本のグループが海外というか国際治験に参加していないということで、また、日本で使えない薬というのが非常に増えてきています。
 均てん化の問題もそうですけれども、やはり日本の中で、きっちりとデータベース化されていないとか、リアルタイムでデータが集まっていないという問題があって、日本では治験が進まないですし、先ほど医師会の黒瀨委員がおっしゃったように、やはりAI、デジタルというのをどんな形で使うのかということを真剣に考えていかないと、これから対がんや、がん研究の10か年、10年後にどうなっているのかというと、やはりデジタルやAIを使った医療の方向に大きく切り替わると思います。
 先ほど、チャットGPTの話も出ましたけれども、やはりAIをどううまく使っていくのかということを考えながら、がん研究あるいはがんの臨床研究を進めていかないと、これからの時代は難しいと思います。
 今、4つの部局から紹介がありましたけれども、聞いていて思うのは、やはり縦割りの弊害で、人工知能、デジタルを医療現場あるいは研究分野で使っていくための責任を誰が負うのかという議論が全く出てきません。臨床情報を、リアルタイムで集めていく、単にリアルワールドではなくて、リアルタイムで集めてくると、臨床試験に対応する患者さんを見つけるのもすごく早く行くと思います。だから、今、ドラッグラグと均てん化の遅れが象徴されるように、やはりデジタルの遅れ、AIの活用の遅れが、この国にボディブローのように効いてきているのだと思います。
 特に、遺伝子パネル検査ができるようになりましたけれども、遺伝子パネル検査をやって薬が見つかっても、薬にアクセスできる人というのは、東京近辺はいいですけれども、大阪になると全く駄目で、もっと地方に住んでいると、なかなか薬にアクセスできません。いろいろなものが中央集権化されて、何とか拠点病院でないと何々ができないという形になっていますけれども、やはりAIやデジタルを使えば、いつでもどこでも誰でもが、同じ医療にアクセスできるようになるはずですので、かつて均てん化が大きくうたわれたにもかかわらず、逆方向で、今、集中化してしまって、地方の患者さんになかなか最先端の医療あるいは薬がたどりつかないという状況も含めて、これからの10年のことを考えれば、やはり医療の仕組みというのは、ドラスティックに変わってくると思いますので、それを念頭に置いて、今後の10年間を議論する必要があると思います。
 ほかにもありますけれども、以上で終わります。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、谷島構成員、お願いいたします。
○谷島構成員 ありがとうございます。谷島と申します。
 私は、GISTという希少がんの患者です。10年前、34歳のときに、長女の誕生と同時に罹患が分かりました。以来、再発、転院を繰り返しながら、様々な治療のおかげで、現在、娘の成長を見守ることができております。
 ただ一方で、治験や、遺伝子パネル検査を受けながら、現在進行形で自分のがんに効く新たな治療法を待ち望んでいる状況でもございます。
 そういった中で、最適な治療に対するアクセスの難しさや、ゲノム医療、未承認薬の問題等、がんを取り巻く様々な課題も実感しております。
 本業は会社員なのですが、がん経験を新しい価値に変えることをテーマにしたプロジェクトであったり、がんをカジュアルに語ることをテーマとした場づくりなどもしております。
 本会議では、自分の患者としての経験と、様々な当事者の声から感じている課題と思いを意見させていただいて、数が少ないからとか、お金にならないかなとか、ややこしいからとか、そういった理由で置き去りにされる部分がないよう、第4期の基本計画の目標でもある誰一人取り残さないがん対策というものを、がん研究の部分からも推進していけるようにしていきたいと思っております。
 また、がん研究の中で、全体の中で入れていきたいと思っている思いの部分なのですが、私としては大きく4点、今、思っております。
 1つ目は、今、4部局さんのほうからいろいろ御説明いただいたのですが、中間評価で示された課題、方策について検証して、そこに基づいた実効性の高い計画にしていただきたいと思っております。
 中間評価を見させていただいたのですが、よく本当に課題と方策がまとめられているなと感じています。
 ただ、そこからどうなったのか、逆に進んでいない部分というのもやはりあるのですね。先ほど中村委員のほうからもお話があったアンメットメディカルニーズに応える新薬開発に関する研究のところなどが、特にそうです。海外で開発された薬剤の導入と、国内初の新薬剤の開発の研究については、中間報告においても強力に推進すべきと書かれております。
 しかしながら、国内未承認薬の割合というのは右肩上がりの状態でして、新たなドラッグラグとかドラッグロスと言われる状況になっております。
 ですので、基本計画にも薬剤アクセスの改善に向けて、海外への動きも含めた方策の検討が追記されていますので、その辺りもより強力に進めていただきたく思っております。
 2点目なのですが、がん研究のところにおいても、誰一人取り残さないという思想を入れていただきたいと思っております。
 第4期の計画が、誰一人取り残さないということになっておりますが、経済合理性が重視されると、どうしても手薄になったり、取り残されてしまう部分があると思っております。
 例えば、支持療法だったりとか緩和ケア、また、精神、心理的な研究や、サバイバーシップについてなどは、より予算がしっかり確保できるような議論をしていきたいと考えております。
 3点目ですが、患者・市民参画、並びに、患者還元の思想を、より全体に反映してほしいと思っております。
 基本計画の全体目標の中では、全ての国民とがん克服を目指すとなっています。患者を単なる被験者や手を差し伸べるべき弱者ということではなく、研究のパートナーとして、様々な研究において、患者・市民参画、そして、その前提となる患者への丁寧な情報提供、患者還元への思想を組み込んでいただきたいと思っております。
 最後なのですが、10年後の未来に資する項目を入れていただきたいと思っております。社会変化や医療の進歩に対応できるような新たな項目として、例えば、医療が高度化、高額化していく中で、健康格差の問題を取り上げたり、ゲノム医療が進んでいく中で、社会的な動きの中で差別につながっていかないように、法整備を含めた社会的方策について研究を進めていくなど、そういった今後の未来へ資するような新たな項目を入れていただけるような議論ができたらと思っております。
 私のほうからは、以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、安川構成員、お願いいたします。
○安川構成員 日本製薬工業協会(以下、製薬協)副会長の安川でございます。
 製薬協の中の研究開発委員会を担当しておりますため、私が本有識者会議に参画させていただくこととなりました。よろしくお願いいたします。
 先ほど石岡先生から、「過去数十年の取組が、国民にどう届いたのかが分かりにくい」という御意見がございましたけれども、私も同感でございます。
 資料の中では、承認につながったものが数件あるという御説明もございましたけれども、全体の活動の中でどのような効率性があったのかという点が少し分かりにくい印象がございました。この効率性を向上させるために、これから貢献をしていきたいと考えております。
 皆さま御存じのとおり、治療薬は、我々が自由に販売することはできません。最終的には、厚生労働省に製造承認申請を行い、承認されなければ販売することができません。
 その過程の中で、国内においては2つの大きな問題点があると思っております。1つは、基礎研究から応用研究への橋渡しが弱い。それから治験の問題です。
 先ほどから、ドラッグラグ、ドラッグロスの話も何名かの構成員の先生方からも出ておりましたけれども、大きく分けて経済的な問題と薬事的な問題があり、製薬協としても大きな問題として捉えております。
 経済的な問題は、この場で議論する問題でないことは重々理解しておりますが、根本的な解決策がなければドラッグラグ、ドラッグロスの問題は解消していかないと我々は思っておりますし、そういう問題があることに御理解をいただきたいと思います。
 もう一つ、薬事的なお話でございまして、冒頭の中谷課長の御説明の中でも、ドラッグラグの対策として国際共同試験の参画への推進等を考えているというお話もございましたけれども、そこだけではなく、幾つか薬事的な問題があるがゆえに、日本での承認が遅れるということも、我々は理解しておりますので、こうした観点から改善を図れるような提言をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、山本構成員、お願いいたします。
○山本構成員 日本医療機器産業連合会(医機連)の副会長の山本でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、今日の資料をいろいろ見せていただいた中で、やはり結果がどうなっているかというのが、分かりにくいなと思いました。やはり最初に計画を立てて、いろいろなことをやっていく中で、進捗や結果がもう少し分かればいいのかなと思いました。
 その中で、本日はうまくいっているところというのを御説明をいただいているのだと思いますけれども、うまくいかなかったところも、結構大事な財産かなと思っていまして、うまくいかなかった例というのを議論していただきながら、次のステップにつなげていただきたいと感じた次第であります。
 ぜひ、年度末までに次の戦略の公表とありますので、この議論も含めできればと思いました。
 それから、やはり次を見据えたときに、経産省のほうには書かれていましたが、お金はどれぐらいつかったか、予算はどれぐらい使うのかが明確にしていただきたいと思っています。要は前回に比べて増やすのか、増やさないのか等がわかるようにしていただきたいと思います。ここで実施される研究は、なかなか企業でできないことをやるのだと思うので、予算の指針が、出てくればいいのかなと思いました。
 ただ、がん研究とあるので、先ほど来、皆さんがおっしゃっているとおり、研究という側面と、我々企業は、結局、医療機器だとかアウトプットに持っていくわけですけれども、最後は社会実装まで持っていかないといけませんので、何人かの先生方も言われていましたけれども、やはりその溝を埋めないといけないと思います。例えば最近よく話が上がっていますのは、科学的、技術的以外の課題、ELSIとかを含め、実際この研究をされたものが、本当にそういう課題がないのかというのも並行してできるような仕組みが必要なのかなと思いました。
 やはり研究をしたもののその先がつながらないというのは、よくないのかなと感じております。
 そういう意味で、研究と社会実装への橋渡しの議論というところが大事なのかなと感じています。
 もう一つ、いろいろなことを考えていく中で、こちらも先ほど来も何人かの先生方もDXの話をされていましたけれども、やはりその基盤になるDXのところ、ここをいかに、がん研究の中でも使っていくかというのは、私も全く同感でありまして、そこが無い中で新たなことができないだろうなと思っています。DXもしくはAIという話が出ましたけれども、そこをいかにうまく使いこなすかという話、ここに関する、もう一段入った、例えばデータベースを集めるだけではなくて、その後どう使っていくかとかまで踏み込んでいただくような形になっていただければいいのかなと思いました。
 特に、我々のこれからの時代を見ていくと、少子高齢化という話になってきて、ますます先生方を含めまして医療従事者の方々の負荷が上がっていくというところを、とにかくDXで助けていくという形に持っていかないといけないとうことではないかと思いますので、そこの点なども、この中で議論をしていただければなと感じております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、本日9名の参考人の方々にも御参加いただいておりますので、参考人の方々からもお一人ずつ御意見、コメントをいただきたいと思います。時間が押している関係で、お一人3分ということでお願いしたいと思います。司会の不手際で少し押していて申し訳ないのですけれども、よろしくお願いいたします。
 では、最初の大賀参考人、お願いいたします。
○大賀参考人 私、日本小児・血液がん学会の理事長と、小児科学会の副会長をしております、九州大学の大賀と申します。
 この第4期の計画のときにも参加をさせていただきまして、小児の立場からのいろいろな御意見を伺いながら、コメントをさせていただいたりしておりました。
 本日のお話は、非常に印象的でしたのは、省庁を超えて横断的に、こういったお話が聞けたことは、大変私にとって勉強になりました。
 1つ小児領域に関して申し上げますと、やはり死亡の首位としては、悪性新生物が重要で、特に5歳ぐらいから10歳前まではそうですし、それ以外でも2番目に来ておりますし、白血病に関しては、CAR-Tなどが実装されて、非常に恩恵を被られるようになっていますけれども、経済的なことは置いておきましても、それに関しては、がんゲノムも含めて、ここ数年で非常に進歩を遂げたことを実感しております。
 一方で脳腫瘍や、それから神経芽細胞腫という疾患には、実際にどんなふうに対応していくかということが非常に難しくて、私たちは根治ということを考えないといけないことから、いろいろな問題を抱えております。
 この会議の中で、どういうことをターゲットにしていくべきかということは、ライフステージの中で、私どもの意見を述べさせていただきたいと思っております。
 ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、郡山参考人、お願いいたします。
○郡山参考人 皆様、こんにちは。私は鹿児島大学の疫学・予防医学の教授を務めております、郡山と申します。
 私の専門は、疫学・予防医学、それから公衆衛生になります。
 皆様も御存じのように、がん予防に関しましては、かなり多くの生活習慣病などのリスク要因、それから感染症など、環境要因の部分が明らかとなってきてはおりますけれども、私たちはどちらかというと、一次予防、二次予防を中心に、多くの研究に携わってきている、そういう専門集団になりますが、やはり三次予防も実は予防医学の中の1つでありまして、その辺りは、例えば臨床の先生方とも連携をしながら、どのような生活習慣であったり、あるいは環境要因が予後によって、さらに効果的な治療効果を上げるのかなどというような視点も重要ではないかなと考えております。
 あとは、世の中本当に化学物質が指数関数的に新しい化学物質が出てきております。その中での発がん性に関する部分などのモニタリングなども、今後はますます重要になってくるのかなと感じているところです。
 それから、私は公衆衛生なので、どうしても幅広い視点が必要だなということで、がんだけではなくて、循環器疾患など、特にほかの非感染性の疾患もリスク要因が、がんと共有している部分が多くあります。例えば、予防効果であったり、治療の効果でもそうなのかもしれないなと一部思っておりますけれども、罹患とか死亡のアウトカムを評価するときに、がんのみに限定する必要はないのではないかと、そういった評価のことなども考えておりました。
 そういったことが議論できるとよろしいかと思っております。よろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、末松参考人、お願いします。
○末松参考人 それでは、意見を述べさせていただきます。
 私は、文科、厚労、AMED、経産の資料で気がついたところを、2つ指摘して、いずれかの機会にお答えをいただきたいなと思います。
 まず、文科省の資料の3ページのところです。これは次世代がんの予算額が示されていました。2016年から2020年の、これはAMED第1期に当たりますけれども、総額221億という数字が出ております。
 次に68億というのが続くのですけれども、これが、どの年の予算だったのか、あるいは何年かのトータルなのか分からなかったのですけれども、次世代がんの予算が減っているように見えたのです。
 厚労のほうは、革新がんをやっていますけれども、ぜひ何らかの機会に次世代がんと革新がん、ほかにもがんに附随した予算はいろいろあるわけですけれども、特に次世代がんと革新がんの2つの予算の年次推移がどうなっているのか、これは若手の研究者の育成を充実させるために大きく関わるところですので、ぜひ御提示をいずれかの機会にいただきたいと思います。
 2点目ですが、AMEDの1期目の立ち上げのときに、私、非常に驚きましたのは、公衆衛生学に関わる予算は厚労省、ゲノムの分子生物学的な研究のところはAMEDという、少し専門の方にとっては不可思議なデマケーションがありました。
 これが、現在どうなっているのか、私はよく知らないのですけれども、分子疫学は、やはりがんの領域でも非常に重要な領域と考えていまして、これを省庁とか機関の壁を越えてやるような特別な枠組みが必要ではなかろうかと考えております。その辺についての厚労省のお考えも、いずれ伺えればと思っております。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 今の御指摘点については、次回の際に、各省庁から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
 続きまして、直江参考人、お願いします。
○直江参考人 直江です。
 私は、今年度からAMEDの革新がんのPSということで参加させていただいております。もともとは大学病院で、基礎から臨床まで、幅広く研究を進めておりました。
 今日のお話、非常に私にとっても勉強になったのですけれども、今までの委員が指摘されていない点を、2つだけ申し上げたいと思います。
 1つは、今、私はいろいろな評価をやっている立場として見るのですけれども、がん研究においては、割と元気にやっている感じがするのですけれども、各大学において、臨床研究、基礎研究を含めて、以前のような活発さといいますか、研究力が、これはよく言われていることですけれども、国際的に見て低下しているのではないかと。実際問題、臨床研究医を目指す人たちもかなり少ないということをよく聞きます。
 このことは、既に中間評価でも指摘されている点で、特効薬というのは、私は今すぐに思いつかないのですけれども、やはり人材の流動化であるとか、留学であるとか、そういうことも含めて、やはりがん研究の中で、次世代を担う人材育成というのは、きちんと議論したほうがいいのではないかということが1点ございます。
 2点目は、AMEDの評価を数年間やってきて思ったのは、やはりそれぞれの研究者は、自分のシーズに対して物すごく思い入れが強い。それがドライビングフォースになっているのですけれども、一方、最近の新薬とか、それからリキッドバイオプシーなどを見ますと、国内で研究している傍ら、国際的には非常に優れた技術がどんどん入ってきているということで、これまでやっていた研究が、なかなか出口に近づかないということが何件もございます。
 そういうことでいうと、やはりAMED研究をどういうところに、もっともっと重点的に支援しなくてはいけないのか、そういう戦略性といいますか、評価をする立場としても、やはりもう少し特許とか、知財とか、企業戦略とか、そういうものも含めて、現在、それぞれサポート機関というのもあるのですけれども、やはりここら辺のAMED審査というものの充実化を図っていく必要があるのかなと感じました。
 今日は時間が短いので、その2点だけお話しします。
 以上、ありがとうございました。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、西川参考人、お願いいたします。
○西川参考人 私は、名古屋大学大学院医学系研究科の西川と申します。
 私は、基礎からトランスレーショナルリサーチを進めております。
 とりわけ私は、腫瘍免疫の研究をしているのですが、過去10年の基礎研究、TR、そして臨床研究というのを御説明いただいて、よく分かりました。
 その中で、特にここ数年は、一細胞解析というようなこともできるようになってきましたので、その点でのがんの特性、また、その周囲に存在する細胞の詳細な研究というのが進んでいるかと思います。
 しかし、一方で、これらの解析というのは、全てスナップショットといいますか、点の解析になるのかなと、思っております。
 一方で、これらをどのようにして線、つまりがんが進展していくにしたがって、どう変化するのか、また、治療を行うとどういうふうに変わるのかという時間軸の変化を明確に解析することが、次の10年では必要になってくると思います。
 とりわけ私が専門にしている腫瘍免疫では、これに加えて空間という腫瘍組織の微小環境という概念から考える、それぞれの細胞同士のインタラクションというようなことも見ていかなければいけないのではないかと思います。
 プレシジョン医療というのは、ゲノム医療で主に進められてきたのかと思いますが、以上の様な解析が進めば、免疫の医療の中でもより正確な予測というのができるようになり、免疫医療でもプレシジョンというのが進むと思います。すなわち、より個々の患者さんに即した適切な医療が進められますので、既存の治療の治療効果向上につながります。また、新しい治療の開発にもバイオマーカーとして応用できるのではないかと思いますので、私は、腫瘍免疫の基礎の視点から少し意見を述べさせていただければと思います。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、野田参考人、お願いします。
○野田参考人 ありがとうございます。がん研の野田です。
 がん研は、基礎研究から橋渡し研究を、研究系が一生懸命やっておりまして、それから臨床研究も病院がやっています。
 ただ、私個人として、ここまでの2回の10か年戦略をつくり、あるいはその実行に携わらせていただいてきた中では、どちらかというと、基礎シーズをいかに評価し、それをいかにトランスレーションするかというところの仕組みづくりを一生懸命やらせていただいたことと、革新がんにおいては、そうやってつくり上げられてきたものの評価、あるいは最後にどう臨床研究に届けるかというところの仕事をさせていただきました。
 今日は、もう先生方、本当に皆さん、それぞれの観点からいろいろな意見をきちんと述べられているので、私も2点だけ述べたいと思います。
 基本的に、ものを前へ届けるというトランスレーションのところを一生懸命やっている立場からすると、確かに直江先生がおっしゃるように、大事なアカデミアの元気が少し落ちているというところはあるかもしれませんが、それでも大事なバイオロジーからシーズを見つけ、そのシーズをリードにまでつなげるという仕組みは、ある程度動いているのかなと。
 ただ、問題はそれが臨床研究及び臨床現場をきちんと見ている方からすると、全然届いてこないよと、まだ言われているというところで、企業のほうも全てに正しい評価をし、手を出すことは難しいでしょうから、外国だとベンチャーがやっているような、リードから優れたリードを評価されたものから、ファースト・イン・ヒューマンのところにつなげるようなところの手助けができるような、公的研究の仕組みがあるといいなと、そこが大事かなと、1つは思います。
 2つ目として、そういうときの軸の出口を考えたときに、橋渡しをやっていて、やはり弱いなと、仕組みが必要だなと思うのは予防です。先ほど疫学の先生から、一次予防、二次予防、三次予防というのがありましたけれども、特に、標的のバイオロジーをきちんとやり、それに対する創薬をやっている流れの中で、必ず分子マーカー、診断マーカーの創出というのが必要になってきます。そこのところのシステムが、やはり日本は弱いのだろうなと思います。
 アメリカだとNIHが、EDRN、Early Detection Research Networkというのを仕組みとして持っていますが、日本はそういう仕組みがなく、例えば次世代の中で、診断マーカーのところで、ぽつん、ぽつんと出てきますけれども、それをいろいろなフェーズをきちんと育てていくという仕組みが必要だと。とにかくより早く、より高精度に、そして、より簡単にできる診断マーカーというのが、これからも求められます。
 そういうのが必要なときに、がん検診に行く方たちが減って、逆に線虫に頼るようなことが起こるという非常に逆説的な現象が、今あるというところは、少し在り方を考えなくてはいけないのですけれども、それをきちんと規制するという方向は、私の専門ではないので、そんなものよりももっといいマーカーを、健康な方たちの日常にお届けできるようにする仕組みというのも必要であろうと、二次予防のさらなる先鋭化ですけれども、というところを思います。
 以上、2点でした。ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、福田参考人、お願いします。
○福田参考人 国立保健医療科学院の福田と申します。
 私は、医療経済というのを専門にしている研究職でございまして、特にがんに限らずですけれども、医薬品、医療機器等の費用対効果の評価といった点に取り組んでいる者でございます。
 本日も各省庁から、がんの予防、治療についての研究開発の多くの取り組みの御紹介がありまして、これは本当に重要で、続けていくべきだと考えております。
 ただ、一方で私の観点といたしましては、ほかの先生からもありましたけれども、こうやって研究開発された優れた医療技術等をいかに社会実装していくか、患者さんのところに届けるか、これが重要だと思います。
 これは、中間評価にもありましたけれども、開発された技術の中には、一部にやはり高額な技術等もございますので、これを実用化していくことに向けては、我が国の公的医療保険制度の下で、いかに安定してこれを推進していくか、広めていくかという点も重要と考えており、そのための仕組みについての研究等も必要ではないかと考えているところでございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長 ありがとうございます。
 続きまして、間野参考人、お願いいたします。
○間野参考人 国立がん研究センターの間野でございます。
 がん研究と、がん医療は、非常に大きく進歩しましたけれども、やはりまだ有効性が高い薬があるがん患者さんの割合は、3割前後と言われていて、さらなる基礎研究やTR研究が必要です。
 がんは、基本的にはゲノムとエピゲノムの病気と言うことができるので、その両領域でのゲノム解析、エピゲノム解析というのが、今後とも重要であることは変わりないと思います。例えば、全ゲノムでも長鎖シーケンサーを使うと、実は今まで知られていないところが8%ぐらいもあったことが分かってきていますから、そういうところの発展が大きくなると思います。
 でも、それ以上に、世界的に現在のがん研究は大きく様変わりしています。例えば、今まで低分子治療薬が主だった、あるいは抗体薬が主だったような中で、中分子とか、新しい細胞療法とか、核酸医薬とか、それこそワクチンに使われているmRNA医薬とか、新しいモダリティーが次々とアメリカで、特にベンチャーを中心に開発されてきています。
 日本は、そういうところが残念ながら弱いので、そこをTRで薬につなげる上でも厚くすることが、国としては重要ではないかと思っています。
 それから、これまでは遺伝的背景とか生活習慣とかで、がん予防が考えられていましたけれども、恐らくこれからは、リアルタイムに、例えば口の中を、スワブを調べてモニタリングするとか、あるいは糞便をモニタリングするとか、そういうきちんとした科学で、がんの発生リスクをモニタリングすることができる時代が、もうすぐやってくると思いますので、新しいがん予防、あるいは治療介入、それも新しいモダリティーだと思うのですけれども、そういう研究もぜひ日本で進める必要があると思います。
 最後に、日本は国民皆保険で、がんのゲノム医療を行っている非常に貴重な国ですし、貴重なデータがたまってきますので、がんのゲノム医療と、がんの基礎研究、TR研究が相互作用して進めていくことが必要だと思いますし、黒瀨構成員や中村構成員がおっしゃったように、メディカルAIの開発や、そのデータ利活用の体制の構築というのも大事だと思っています。
 以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 続きまして、宮園参考人、お願いいたします。
○宮園参考人 宮園でございます。
 私は、現在は理化学研究所と東京大学に所属しておりますけれども、主に文部科学省、特にAMEDの次世代がん研究のPSを続けてまいりまして、この分野の基礎研究を中心に、今回もいろいろと御議論をさせていただきたいと思っております。
 文科省、AMEDの立場から申しますと、文科省の資料の3ページ目にございますけれども、次世代がん研究が、もう13年前になりますけれども、スタートして5年間研究を行った後、次は次世代がん医療創生研究事業、そして、今、次世代がん医療加速化研究事業ということで、続けさせていただいております。
 末松先生から話がありましたとおり、こうやって続けていきますと、少しずつ予算が減っていきているというのは、確かにつらいところでありますけれども、この次世代がん研究がスタートした上で一番よかったことは、これは、私の個人的な意見なのですけれども、がん研究の基礎研究を行っている人たちが、自分の研究をいかに臨床に結びつけるか、創薬に結びつけるかということを真剣に考えるようになったと。
 それは、恐らく次世代がんのサポート機関、支援機関などで、実際にそういったサポートをしてきたということが大きな要因とは思いますけれども、そういった形で、例えば前回の次世代がん医療創生研究事業は、事業成果として79件の導出と書いてあります。これは、最初の目標に比べると、2年ほどで目標を達成したということになりますけれども、そういった形で継続することで研究がどんどん加速化して、研究者のマインドも、より出口に近い方向に向かっているというのが、私どもの一応考えているところです。
 あとは、やはり革新がんとの連携ということで、革新がんでも支援班ができまして、今後連携して行っていくことになると思いますけれども、革新がん、前の責任者でいらっしゃいました堀田先生がいつもおっしゃっていたのは、今、死の谷ということが、いつも創薬で言われますけれども、非臨床試験から臨床試験に移るところで、よいシーズがどうしても臨床のほうに行けないでいると。それをどうやって支援するかというのが、今後重要になろうということをおっしゃっておりましたが、私も全く同感でありまして、先ほどから何回か皆様からベンチャーの支援とか、そういったことが言われておりますけれども、そういったことについて、ぜひ議論をさせていただければと思います。
 それから、今回あまり話題になっておりませんけれども、AMEDでムーンショットで、がんの研究も支援しておりまして、これは2050年までに、何とかしてがんのゼロの社会をつくろうということで進めているわけですけれども、そういった中でやはり議論されますのは、がんを予防すると、様々なAIとかそういった分野と連携して、がんを予防し制御していこうといった動きが進んでおりますので、そういったことについても議論させていただければと思います。
 私からは、以上です。
○中釜座長 ありがとうございました。
 本日御参加いただいている13名の構成員と9名の参考人の方々から、それぞれコメントをいただきました。
 最初に御指名させていただいた阿久津委員、最初の指名で少し時間がなかったかもしれんが、追加で御発言はありますか、よろしいですか。
○阿久津構成員 御配慮ありがとうございました。阿久津でございます。
 ちょっと慌ててしまいまして、発言ができず、大変申しわけございませんでした。引き続き、よろしくお願いいたします。
 私自身は記者を長くやっておりまして、乳がん患者さんの取材の中から、自分の治療が正しいのか正しくないのかということを、常に問われてきております。そして、私にとって次の治療はないのかと、再発で転移された患者さんからも、常日頃言われているところでございます。
 先ほど来、先生方からの御指摘がありましたけれども、国民というか、患者さん自身に創薬されたもの、今、治験が進んでいるものというものが、きちんと届いていないという現実があります。
 もちろん薬機法、先ほどもお話でありましたけれども、保険治療に収載したものの、お薬の情報は患者さんに直接届けられないというような問題点もあります。
 先ほど来、いろいろなところの省庁の方々からおまとめいただいた資料で拝見して、ここまで進んでいるのだと驚いている部分もあり、まだ、これが研究の途中で、報告がされていないのだというものもありました。
 そうしたアウトカムも含めて、きちんとした結果がお届けできるように、そして新しい今のAIの話等もありましたけれども、きちんとどうやって患者さんに届くのかというところまで見届けられるように、意見させていただきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 御配慮ありがとうございます。
○中釜座長 ありがとうございました。
 本日は、各構成員・参考人の方から貴重な御意見いただきました。例えば、基礎研究の推進からの開発、さらには医療実装までのスピード化を図るということと、それが国民に届く姿を見える形にするということ。それから、多くの方々が指摘されているようにデジタル化、DX、医療AIといった開発を取り入れていくこと。さらには量子科学技術や新しいモダリティーの導入にも積極的に取り組み、海外の技術をいかにいち早く取り入れながら進めていくか、いろいろなコンテンツに関する御指摘がありました。
 こういうコンテンツの開発をスムーズに効率よく進めるための連携基盤や、データ集積の方法、利活用の仕組み、あるいは組織、リソースを効率的に使うための仕組み作りも重要だろうということ、それから、モダリティー開発の基盤となるような仕組みも重要だということも含め、いろいろな視点からご指摘いただき、今後のこの会議の議論の重要な論点が幾つも挙げられたかと思います。
 短い時間で本当に申し訳なかったですが、貴重な御意見をありがとうございました。
 それでは、本日の議事は、以上となりますので、進行を事務局にお返ししたいと思います。
 では、事務局、よろしくお願いします。
○原澤推進官 事務局でございます。
 本日は、先生方から活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。
 本日頂戴いたしました御意見や御質問も一部含まれておりましたので、座長と御相談の上、整理をさせていただき、今後、回答も御準備させていただきたいと思っております。
 その際、趣旨の確認等に関しまして、構成員の先生方に個別に御連絡を差し上げることもあり得ると思いますので、その際は御対応のほど、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、次回以降の日程につきましては、追って事務局より御連絡させていただきます。
 本日は、ここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。失礼いたします。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線2066)