第140回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和3年10月11日(月)13:00~15:00

場所

オンラインにより開催
 (中央合同庁舎5号館9階厚生労働省省議室)
 (東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

公益代表委員
砂金伸治、熊﨑美枝子、城内博(分科会長)、髙田礼子、水島郁子、山口直人
労働者代表委員
漆原肇、勝野圭司、佐々木弘臣、佐藤和幸、中村恭士、門崎正樹
使用者代表委員
天沼陽介、鈴木重也、出口和則、及川勝、中村節雄、増田将史
(五十音順、敬称略)
事務局
武田康久(安全衛生部長)、小宅栄作(計画課長)、安達栄(安全課長)、髙倉俊二(労働衛生課長)、木口昌子(化学物質対策課長)、長山隆志(調査官)、中村宇一(安全課長補佐)

議題

  1. (1)事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について
  2. (2)建設アスベスト訴訟に係る最高裁判決を踏まえた対応について
  3. (3)第13次労働災害防止計画の実施状況について
  4. (4)その他

議事

議事内容

○城内分科会長 定刻となりましたので、ただいまから「第140回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。本日は公益代表委員の原委員、労働者代表委員の袈裟丸委員及び使用者代表委員の矢内委員が欠席しております。また、増田委員におかれましては、14時30分に退席の予定と伺っております。
本日は感染症の防止対策として、オンラインにより開催することとし、一般の傍聴を募集せず、報道関係者のみの傍聴を受け入れることとしていますので、御承知おきください。
使用者代表に新たに就任いただいた委員の方を紹介いたします。9月28日付けで中澤委員が退任され、全国中小企業団体中央会常務理事・事務局長の及川勝委員が就任されました。及川委員、一言、お願いいたします。
○及川委員 全国中小企業団体中央会の及川でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○城内分科会長 ありがとうございました。また当分科会に置かれているじん肺部会の委員についても、労働政策審議会令第7条第2項において、分科会長が指名することになっており、参考資料4の名簿のとおりじん肺部会の委員を指名いたします。よろしくお願いいたします。
また、9月14日付けで事務局に異動があったということですので、御紹介をお願いいたします。
○小宅計画課長 9月14日付けで安全衛生部長が交代になっております。安全衛生部長の武田でございます。
○武田安全衛生部長 武田でございます。よろしくお願いいたします。
○城内分科会長 カメラ撮影等については、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
まず、事務局からオンラインによるZoomの操作方法等について説明をお願いいたします。
○小宅計画課長 御説明させていただきます。ハウリング防止のため、御発言されないときはマイクをオフにお願いいたします。また、御発言される場合には、御発言のある旨をチャットに書き込んでいただき、分科会長から指名がありましたら、マイクをオンにしていただいて、氏名をおっしゃってから御発言ということでお願いいたします。進行中、通信トラブルなどの不具合がございましたら、チャットに書き込むか、事務局にメールで御連絡をお願いいたします。以上です。
○城内分科会長 それでは議事に入ります。議題1「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について」に関して、事務局から説明をお願いします。
○髙倉労働衛生課長 それでは、議題1「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について御説明いたします。こちらは前回お諮りしたものが継続審議になっていたもので、資料1-1は前回お示ししたものと同じものですので、こちらの御説明は省略させていただき、資料1-2を用いまして、改めて省令案の概要について、こちらも前回の資料とほとんど変更点はありませんので、簡単に説明させていただきます。
2ページ目が、見直しの方針に対して検討いただいた検討会の報告書に基づく省令案の改正案となっており、この報告書の内容についての説明です。
省令案について次のページ以降で説明させていただきますが、まず、照度の基準です。現行の規定は3区分となっていますが、今回の改正においては、右下の表に示しましたように、「一般的な事務作業」と「付随的な事務作業」の2区分に分け、それぞれ300ルクス以上、150ルクス以上とする改正案です。
続きまして次のページ、便所の設置基準ですが、改正の内容としては、(1)基本方針として、男性用と女性用に区別して設けることが原則である。この原則を維持した上で、(2)として、小人数の事務所における例外として、同時に就業する労働者が常時10人以内である場合には、現行規定の例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとする。(3)として、男性用と女性用に区別した便所を各々設置した上で付加的に設ける便所の取扱いについては、男性用便所及び女性用便所をそれぞれ一定数設置したものとして取り扱うことができるものとするという改正内容です。
続きまして、第2の労働安全衛生規則の一部改正についてです。便所については先ほど御説明したのと同様の改正を行うこととしております。
その次に救急用具につきまして、現行の規定をここに示しておりますが、次のページに示しますように、安衛則第633条において事業者に備えることを求めている救急用具に関して、具体的に品目を第634条で規定しておりましたが、こちらを削除するという改正案です。
第3の施行期日等についてですが、前回お示ししたときには、9月上旬、公布日や施行期日に関しても、第1の1については令和4年9月1日の予定としておりましたが、今回審議継続になったことに伴い、こちらは12月1日と修正しています。以上が省令案の概要です。
続きまして資料1-3です。前回、継続審議になった便所の設置基準に関して、それに対する周知内容等についてです。前回の分科会でお諮りしたときに、分科会の委員の皆様から御意見を頂戴いたしましたし、そのときにも少しこちらから御説明しましたが、パプリックコメントが多数寄せられましたので、それらのご意見についてまとめたものがこのページです。パブリックコメントにつきましては、合計1,542件の意見が寄せられまして、女性専用トイレを廃止すべきでないという意見が多数を占めていました。寄せられた意見については、このページの下の囲みに示していますが、中立的な意見や賛成意見がごく少数認められますが、ほとんどは反対の意見でございまして、それらをまとめたものがこの●の5つです。1番目は、小規模事業場であっても、トイレは男女別に設置することを原則とすべきであるという御意見、2番目として、例外に該当する小規模事業場であっても、労働者の変動によって措置義務が生じることがあるときに、後から改修することは困難であるため、女性専用トイレは必ず設置しておくべきであるという御意見、3番目としては、男女共用トイレ自体を認めるべきでないという御意見で、これにつきましては性暴力や盗撮、サニタリーボックスの管理、匂い等による精神的苦痛、清潔保持の観点、そういったところから男女共用トイレ自体を認めるべきでないという御意見が大変多くありました。 4番目としては、既存のトイレを共用トイレにするのであれば、男性用トイレの全部又は一部を共用化するべきであるという御意見がありました。5番目としては、共用トイレの場合、場所として男性、女性どちらの性別が入ってもおかしくないため、犯罪の抑止効果が少なくなる、逃げられないというようなことから、女性用トイレは必ず設置すべきであるといった御意見でした。
このようなパプリックコメントで寄せられた多数の反対の御意見、及び前回の分科会でも委員の皆様方から寄せられました意見を踏まえ、この下の囲みに示した事項について、今回の省令改正の趣旨が事業者に正しく理解されるように、そしてこの改正趣旨から逸脱した運用がなされないように、施行通達によって明示することにしたいと考えています。施行通達に明示する事項、囲みの中の御説明をいたします。懸念事項は大きく3つに分かれます。1番目として、小規模な作業場でも便所は男女別にするべきであるという懸念事項については、施行通達において、作業場の規模にかかわらず、便所は「男女別」が原則であるという旨。そして2つ目は、今回この例外規定を設けた趣旨として、マンションの1室など、構造上の増設が困難な場合に限るという旨。3番目が一番重要かと思いますが、同趣旨に鑑みますと、もう既に設置されている男女別便所の廃止や他の用途への転用は許容されるものではない旨。4番目として、作業場を新たに設置する場合においても、その後の労働者数の変動、増加の可能性を踏まえ、あらかじめ男女別の便所を確保することが適当である旨。これらを懸念事項1に対応した内容として示したいと考えております。
懸念事項の2番目が、性暴力等を目的に個室内に押し入られたときに逃げられないという懸念事項です。こういったときの安全を確保するために、非常事態発生時の対応についても、この施行通達にお示ししたいと考えております。
懸念事項の3番目、その他盗撮のおそれやサニタリーボックスの管理等々の精神的な苦痛等が生じるということにつきましては、独立個室型便所が備えるべき要件もこの施行通達で明示したいと。プライバシーの確保ですとか、堅牢、施錠できること、手洗い設備が便房内又は便房に近接した場所に設置されていることなどです。最後のポツですが、盗撮防止やサニタリーボックスの管理、消臭や清潔の保持など、便所の使用や維持・管理に関するルールやマナーを事業場において設定していただく。このような旨を、省令改正の施行に先立ちまして、施行通達においてお示しするこのような懸念事項への対応とともに「小規模な作業場における特例は、やむを得ない場合に限った例外規定であり、便所は男女別設置が原則」である旨を、広く周知したいと考えております。
これらの懸念事項とこの対応の内容につきまして施行通達により明示しますが、今御説明した内容につきまして、特にこの例外規定の該当となる小規模事業場に広く行き渡るように、労働局や主要労使関係団体に加えまして、その他の通常は対象としないようなチャンネル等も活用しまして、広く周知を図る予定です。
以上を踏まえまして、改めてこの分科会にお諮りしたいと思います。よろしくお願いします。
○城内分科会長 本件について、質問、意見等のある方は御発言がある旨チャットに書き込みをお願いいたします。では漆原委員お願いいたします。
○漆原委員 どうもありがとうございます。こちらの声は聞こえているでしょうか。
○城内分科会長 はい、聞こえております。
○漆原委員 提案いただきました諮問案件についての質問と意見です。便所の設置については、そもそも男女別が原則であって、今回の改正はやむを得ない場合に限り例外的な規定を定めたということで、従来の考え方を変えたわけではないという旨の周知を十分に行っていただく必要があります。今後、具体的にどのような方法により周知を実施していくのかについて、改めてお伺いしたいという点がまず質問でございます。
また、今回の改正を受けて、取りわけ小規模事業場については、便所が1つでも法令違反にはならなくなるということは事実であって、このことへの懸念が、先ほど御説明いただいたパブリックコメントなどで多く意見が寄せられたと考えております。もちろん、労働者側としては、検討会での議論も含め、事務所での現在の状態から後退することがないよう求めてきたところでありますが、今後とも適切な取扱いがなされるように対応していくことが不可欠だと考えております。特に、「例外的」であるべき規定が「一般的」とならないように対応することが重要であって、さらに、現場で労使が協議することも必要です。御説明に「一部新たなメディア」とありましたが、SNSなどを広く活用することはもちろんのこと、様々な意見を持つ皆さんに、今回の改正の趣旨が広く行き渡るようでないと、パブリックコメントに寄せられたような問題は解決しないと考えております。
さらに、資料を拝見しますと、盗撮を防止するような記載がありますが、具体的にどのような対策を指して「盗撮の防止」と記載しているのか、単に盗撮はしないように話をするとか、盗撮防止という貼り紙をすることで到底防止できるとも思えません。特に、女性専用のトイレでなく男女共用のトイレの場合、男性が入っても怪しまれることがないため盗撮へのハードルが低くなる懸念があります。犯罪心理学の観点も踏まえ、具体的な盗撮防止策を実施する必要があります。もちろんこれ以外の懸念事項の記載についても、実効性ある対策を通知文書等に明記することが最低限必要です。
最後に、仮に女性用便所が削減されることや女性用便所が設置されていないといった事態に対応するための相談窓口などの設置だけにとどまらず、窓口で相談を受けた内容をもとに、行政としてより一層丁寧な対応が不可欠だと思っております。こうしたことも含め、相談状況などを定期的に発表することも必要であると思います。仮にこの場で縷々発言した対応できないのであれば、労働者側としてこの案に賛成することはなかなか難しいと考えているところでございます。以上です。 
○城内分科会長 では、事務局からお願いいたします。
○髙倉労働衛生課長 御意見ありがとうございます。この改正省令の公布に際しましては、先ほど御説明いたしましたように、改正内容や改正趣旨を明確にし、事業者において正しく理解され、逸脱した運用がなされないように施行通達を発出いたしますが、今いただきました意見のように、幅広な周知、さらに、丁寧な対応というものを行う必要があると考えております。施行通達につきましては、労働局や主要労使団体に加えまして、例えばスタートアップ支援協会などのような、今回新たに事業を開始、起業するという事業者への周知の観点ですとか、このような建物を事務所用に新たに賃借する者、不動産業界に対する周知、あるいはフリーランスの協会のように、これも先ほどの新たに起業して事務所を構える可能性のある者ということになりますが、そういったところも含めまして、さらに関係省庁にも協力をいただきながら、通常であれば周知対象としないような団体等にも幅広な周知を行うということを予定しております。
また、もちろん労働局や労働基準監督署におきましても、あらゆる機会を捉えて改正内容の周知を図ることとしておりますし、さらに、現場で事業場の労使の皆様に説明を行う現場の職員、一人ひとりが改正の趣旨や目的を適切に理解して誤解が生じないような周知を行うことができるように、改正省令の公布に先立ちまして、全国会議などを開催して、その内容の周知を徹底したいと考えております。
また、その改正の内容ですが、先ほど盗撮等の懸念のこともございましたので、この改正内容等も含めまして、分かりやすく解説したリーフレットなども作成して、WebやSNSなどを通じた情報発信にも努めてまいりたいと考えております。
そして、やむを得ない場合に限定するとはいえ、法令の適用がなくなるということにつきましては、先ほど来申し上げている施行通達に基づきまして、違反する事実は認められなかったとしても、改善が必要な場合については、必要に応じて書面による指導を行うとともに、改善報告も求めるということを考えております。そして個々の事業場が置かれた状況において指導の内容や方法等は異なってくる可能性もありますが、事業場において改正の趣旨から逸脱するような運用がなされないように、事業場の実情に応じた指導というものを徹底してまいる所存でおります。
そして、相談対応につきましても、様々な種類の相談が予想されますので、これらの労働局、監督署のほうでこの相談に対応できるようにということで、公布までにしっかりとその準備というものは進めてまいります。
これらの状況等につきましては、実際の施行後の状況を踏まえて、寄せられた相談内容等に適切に対応ができるように、またその内容を踏まえた再周知なども必要になってくることも十分に考えられますので、それらにつきましても幅広く周知できるように、WebやSNS等を活用した周知を続けてまいりたいと考えております。
○城内分科会長 漆原委員、今の事務局からの御回答でよろしいでしょうか。
○漆原委員 はい。
○城内分科会長 そのほか御意見、御発言等はございますか。御発言はないようですので、それでは、「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について」は、「おおむね妥当と認める。ただし、第1の1の施行日を令和4年12月1日に修正すべきである。」と答申してよろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○城内分科会長 ありがとうございます。それでは事務局で答申の手続きをお願いいたします。
次に議題2「建設アスベスト訴訟に係る最高裁判決を踏まえた対応について」に関して、事務局から説明をお願いいたします。
○小宅計画課長 では、資料2に沿いまして御説明をさせていただきます。1ページ目は建設アスベスト訴訟についてまとめております。石綿にばく露した労働者の方が石綿肺などの健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったためであるとして、建設業の元労働者の方やその遺族の方が、国を相手取って損害賠償訴訟を提起したものであります。本年5月17日に最高裁判決が出されまして、一人親方を含む屋内建設作業者に対する国の責任が認められたところです。
下の枠の経過の所にありますように、これは先般御報告させていただきましたけれども、こういった判決を踏まえまして、建設アスベスト被害に関する給付金についての議員立法が成立しまして、6月16日に公布されております。これの施行に向けて、今、厚生労働省として取り組んでいるところでございます。
次ページは、具体的にどういった争点があったのかということです。5つほど挙げておりますが、1点目が一人親方についての安全衛生対策です。高裁では判断が分かれていたところですが、最高裁で国の権限不行使は違法であるということです。これについて、現状はどうなっているかと言いますと、政省令では、一人親方についての対策についての明示的な規定というのはありません。
2点目の論点は、防じんマスク着用の義務付けです。これも最高裁で、国の権限の不行使は違法となっております。これについては、現状の政省令においては対応済みということになっております。
3点目は、有害性の警告表示の義務付けです。これは最高裁で国の権限不行使が違法とされております。現状を見てみますと、表示すべき内容が一部不足しているという状況です。
4点目は、石綿の製造などの禁止ですが、これについては、現状、製造等は全面禁止されておりますので、対応済みということです。
5点目は、最高裁の争点ということには明示的にはならなかったわけですが、下級審レベルで、集じん機付き電動工具の使用を義務付けるべきではなかったかという点について判断が分かれております。現状においては、そういった機械の使用義務付けというのはありません。
今回、最高裁判決におきまして国の権限の不行使は違法だとされた点については、迅速に対応する必要があるかと思っておりますので、争点の太字の所になっているもの、まだ対応できていないもの、あるいは対応すべきかどうかというところも含みますが、それについて、今後、審議会で御議論いただきたいと思っております。
少し詳しく各論点について御説明いたします。「一人親方等の安全衛生対策」です。今回の判決で具体的に問題になりましたのは、安衛法第22条、第57条です。第22条は健康障害防止のための措置を講じなければならないというもの。それから、第57条ですと、労働者に危険を及ぼすおそれのある物、あるいは健康障害を生ずるおそれのある物について、包装、容器などにその名称ですとか人体に及ぼす作用等々について表示しなければならないという規定があります。これが労働者以外の、例えば一人親方にも適用があるのかというのが争点でした。
判決ですが、第57条につきましては、こういった危険物を取り扱う方に健康障害を生ずるおそれがあるという物の危険性に着目した規制であって、その物を取り扱うことにより危険にさらされる者が労働者に限られないということを考慮すると、所定事項の表示を義務付けることにより、その物を扱う者であって労働者に該当しない者も保護する趣旨のものと解するのが相当であるとされております。
この部分のなお書として、次の○の所があるのですが、そもそも安衛法は、1条において、職場における労働者の安全と健康を確保することを目的として規定しており、安衛法の主たる目的が労働者の保護にあることは明らかであるが、同条は、快適な職場環境の形成を促進することをも目的に掲げているものであるから、労働者に該当しない者が、労働者と同じ場所で働き、健康障害を生ずるおそれのあるものを扱う場合に、安衛法57条が労働者に該当しない者を当然に保護の対象外としているとは解し難い、という一般論を述べております。
3つ目、第22条の関係ですが、これにつきましても、特別管理物質を扱う作業場という場所の危険性に着目した規制であって、その場所において危険にさらされる者が労働者に限られないことなどを考慮すると、特別管理物質を扱う作業場における表示を義務付けることにより、その場所で作業する者であって労働者に該当しない者も保護する趣旨のものと解するのが相当である。この次に、2つ目の○と同様のことが簡潔に書かれております。
そういったことから、結論として、当時の労働大臣が上記の規制権限を行使しなかったことは、安衛法第2条第2号において定義された労働者に該当しない者との関係においても、安衛法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法第1条1項の適用上違法だというようにされたというものです。
これを踏まえまして、皆様にこれから議論いただきたいものをまとめております。論点の、今後の規制のあり方に関する基本的な考え方としまして、最高裁判決で安衛法第1条の目的において、快適な職場環境の形成を法の目的としていることを述べた上で、具体的な争点となった第22条や第57条に関して、①物の危険性に着目したもの、それから、②場所の危険性に着目した規制については、労働者以外の方も保護する趣旨との考え方が示されております。
2つ目の○ですが、事業者に、現在、安衛法に基づいて義務付けている措置につきましては、物の危険性や場所の危険性に着目した規制について、どのように見直していくべきかということです。ただし、かなり幅広い分野に影響が及ぶ可能性のあるものでありますので、まずは今回判決で言及されました第22条と第57条について考え方を整理して、規制の見直しを検討することとしてはどうか、そういう進め方ではどうかと考えております。
具体的には、次のページですけれども、現状のところの整理をここでいたしまして、第22条については先ほど見ていただいたとおりです。2つ目の○ですが、こういった規定に基づきまして、安衛則、有機則、特化則、電離則などの多数の省令が定められております。これらの個別の省令を見ますと、事業者に対する措置については、労働者に限定して義務付けているものが多いのですけれども、必ずしも明文上、限定していないというものもあります。労働者に限定して義務付けられているものを、どのように見直すことが適当かというのが論点になろうかと思います。
次ページに、具体的に、今、どのようになっているかというと、対象が労働者に限定されているものとしては、例えば有機則の第5条ですと、「労働者を従事させるときは」とか、第25条も「労働者を従事させるときは」というようなこと、こういうことが明示的に労働者向けなのだというものが分かるように、第32条ですと、労働者に送気マスクを使用させなければならないということで書かれています。
一方、その下の、対象が労働者に限定されていないものは、第577条ですと「事業者は」とありますけれども、誰に対してという言葉は入っておりません。また、第585条につきましても、表示ですが、誰のためにとは書いていないところです。
具体的に、では、どういうことが論点になるかということを次ページ以降で整理しております。少しページが飛びますが、11ページの所の絵でイメージ図を作っています。ここはいろいろなことが想定されるのですが、今回の判決を踏まえて、例えば建設現場においてということで考えてみるという、モデル的なものです。これで全てのケースが言い尽くされているわけではございません。例えばS社という元方事業者がいた場合、現行法上ですと、その下請指導ですとか協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視等が法令上義務付けられています。
例えば、S社からA社という1次下請に危険有害業務が発注されている場合を考えてみますと、この危険有害業務について従事する労働者、赤い労働者については、A社で保護措置を具体的に講じる必要があるということになっています。例えばA社から、一部がB社に2次下請に出されているということであれば、今度はB社の労働者、青い労働者の方については、B社が保護措置を具体的に講じるということになります。
ただ、A社から一人親方に一部の作業が請負で出されている場合ですと、誰かが措置義務を負うということではない、これが現行の整理です。また、危険有害業務ではない業務に、同じ作業場内で従事している場合、下のほうの赤い労働者の方については、A社のほうで一定の措置義務がかかっているということです。これが何らかの形で雇用関係のある労働者の方についての整理です。
それから、斜めになった楕円で書かれている所が雇用関係にない場合です。危険有害業務をやる一人親方は先ほど申し上げたとおりですけれども、それ以外の別の業務、危険有害業務とは別の業務をやっている一人親方がたまたまそこにおられたらと、あるいは別の業務をやっているC社の労働者の方がおられた場合はと、あるいは、そもそもC社の社長は労働者ではありませんので、どうなるのかと。それから、一時的に来る資材搬入業者などというのも想定されますし、あるいは見学者のような方も入って来るということが想定されます。この場合、先ほどありましたように、その場所の危険性ですとか、物の危険性という意味では、危険にさらされる可能性があるということを一応幅広く捉えると、このくらいのことが想定されるかと思われます。
こういったことを踏まえて、論点は3つほどあるかと思っています。1つは、対象者をどこまで含めるのかということです。1つは、危険な業務を行う場合、自社の労働者、他社の労働者、他社というのは、先ほどの絵で言うと青い方になりますが、そこには一定の保護措置が現行法上も課されていると。ただ、他社の事業主とか個人事業主の方は掛かっていないと。それから、上記①以外で危険な業務をやっている場合、行われている場所にいる、一見、有害業務をやっているわけではないけれども、ほかの業務でいらっしゃる方については、現行のような整理になっております。これがどなたまでを保護対象としているかというときの考えられるいろいろな論点かと思います。
2つ目は、どのような保護措置が想定されるかということです。これは次の論点とも関係してくるかと思いますが、例えば現行の保護措置を考えますと、危険性に関する掲示や表示とか、保護具の使用とか、あるいは危険有害業務のそばで別の作業をしている方ですと、やはり表示とか、立入禁止、事故発生時の退避や保護具の使用などというのが、今の雇用労働者に関する規制を参考とすれば、考えられる範囲かなということで挙げております。
3つ目、保護措置は誰に行わせるべきかということです。この2点目のどのような措置というのも、誰に行わせるかということと関係して決まってくる部分があろうかと思いますので、この2つは特に関係が深いかと思いますけれども、誰に行わせるべきかというのがあるかと思います。
この際、個人事業主の方の保護が課題となる具体的場面として、どのようなものがあるかというのを念頭に置いて、具体的に議論する必要があろうかと思います。aとしまして、危険有害業務が労働者と個人事業主の混在で、同じ業務を同じ場所でやっているというような場合、bは、別の業務だけれども、同一の作業場で労働者と個人事業主が並行して同じ場所でやっているという場合、あるいはそれぞれの場合において、労働者がいなくて一人親方だけがたまたまやっている時間帯があるという場合も想定されるかと思いますが、そういうときはどうなるのか。危険有害業務が行われている作業場に、当該業務とは関係のない方が立ち入る場合、先ほどの絵で言いますと、資材搬入業者ですとか、見学者の方とか、そういった方については労働安全衛生法はどうなのかと。
2つ目のポツですが、具体的に誰にというときに、作業の実態に即した危険性や安全確保措置についての知見なども必要かと思われますけれども、そういった知見を誰が持っているのか、情報を得やすいのは誰かというようなところもポイントになってこようかと思います。
3つ目のポツは、一人親方のほかに、労働者の方もいらっしゃるわけで、それぞれ独自の対策というよりは整合的な措置が講じられるということが必要な場面もあるのではないか。こういった論点も踏まえて検討していく必要があるのではないかということで、こういったことに着目しながら、御議論、御意見を頂ければと思っております。
2つ目の検討が必要な事項として、「有害性の警告表示の義務付け等関係」です。ここは、例えば今の石綿則の第34条2号におきましては、人に及ぼす作用などを表示するということになっておりますが、判決で言いますと、論点の所にありますとおり、これでは不足しているのではないかというようなことが言われておりますので、その点は判決を踏まえて充実させる必要があるのかなと考えております。
3点目、「集じん機付きの電動工具の使用義務付け関係」です。ここは最高裁で明確にこうだという判決があったわけでもありませんし、下級審レベルでも判断が分かれているところですけれども、議論があったということで、この際、検討してはいかがかということです。ただし、集じん性能付きの機械につきましては、現時点においてJIS規格等もありませんし、多種多様の商品が市場に流通しているということですので、まず現時点においては、集じん性能の実態調査とか調査研究というものをまずはしていく段階かなということで、そういうことをした後で、義務付けの要否等々については議論していくという進め方でいかがかということです。説明は以上でございます。
○城内分科会長 本件について質問、意見等のある方は御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いします。
○勝野委員 勝野です。まず、今回、5月17日の建設アスベスト訴訟における最高裁判決を踏まえて、厚労省として法令を含めた見直しを行っていくための検討が提起されたことについては、歓迎の意を表したいと思います。先ほど御説明のとおり、最高裁判決の中で重要な点は、安全衛生対策について、雇用された労働者ではない、いわゆる一人親方等も明確に保護対象になる、こういう考えが示されたことだというように思っております。資料5ページにありますとおり、安衛法の目的は労働者かどうかということではなくて、扱っている物の危険性や場所の危険性に着目した規制を行った上で、作業する人や取り扱う人を保護すべきというような趣旨でありますので、それに沿った見直しが必要という考えには同意をいたします。
その上で、今後の論点として、安衛法関連条文の、対象が労働者に限定されているものとか、されていないものの例示を示して、8ページでは、どこまでを保護対象とするのか、こうした提起がされておりますが、私自身は、このように細かく分けて保護対象にするのかどうかといったような論議をしていくと、こういった場合はどうするのかといったような、特例だとか例外措置ばかりの非常に細かな論議になっていってしまうような気がいたします。そういう意味で、論議自身が袋小路に陥ってしまうのではないかというように思っております。
最初に言ったとおり、最高裁判決で示されたことは、物や場所の危険性に着目するということでしたので、これを素直に受け入れ、尊重して、例えば現場に入場し従事する人、取り扱う人を対象に、同等の保護措置を講じていけばいいというように考えます。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 最高裁判決を踏まえ、他社の事業主や一人親方も保護の対象に含めるべきか検討することについては、時宜にかなった取り組みと考えております。ただし、委員の間でのイメージのすり合わせを行った上で、今後、議論を深めてまいりたいという思いから、何点か質問と意見を述べさせていただきたいと思います。
質問の1点目は7ページに関するものです。安衛法第22条に基づく省令の規定例を見ますと、屋内作業場等での措置を明記する条文もあれば、場所を明記していない条文もございます。労働者以外の方に対する保護措置を示した11ページの作業場のイメージ図、先ほど計画課長から建設現場を想定して作られたというお話がありましたが、ここで言う作業場とは、屋内に必ずしも限定したものではなく、個々の省令の条文ごとにその範囲は異なるということを、事務局の厚生労働省として想定しているのか確認させていただきたいと思います。
質問の2点目は、10ページの保護措置の主体に関するものです。先ほど勝野委員から保護の客体についてお話がありましたが、私からは主体についての質問をさせていただきたいと思います。1つ目のポツは、危険有害作業を請け負う企業を想定し、2つ目のポツは、危険有害作業が行われる作業の敷地やそこに設置されている設備等を所有・管理する企業を想定していると受け止めました。
そこで質問です。例えば、工場で常時蒸気が発生している場所があり、そこに設置されている設備を修繕する場合、局所排気装置等の設置という保護措置の主体は、当該工場を運営する企業になるのではないかと受け止めました。他方、作業そのものによって初めて蒸気が発生する場合には、一般的には、当該作業を請け負う企業が危険性に関する知見や情報を有するので、保護措置の主体になると考えられるように感じたところです。このような理解で厚生労働省として提案されているのか、事実確認をさせていただきたいと思います。
最後に意見を申し上げます。9ページに記載のように、想定される保護措置は幾つかありますが、例えば保護具の使用について、一人親方等に着用を呼び掛けることは可能だと思いますが、着用を義務付けることは、実際問題として難しいようにも感じます。実効性確保の観点から、措置内容の範囲については慎重な議論が必要ではないかと考えております。
同様に、事故発生時の退避についても措置内容が議論の対象になっております。事故発生時の退避は、ケース・バイ・ケースで難しい部分もありますので、結果責任につながらないことを前提にしていただきたい。あわせて、措置の主体については、退避判断が可能な主体が誰かという観点も含めて、慎重な議論が必要ではないかと思った次第です。私からは以上でございます。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤委員 労働側の佐藤でございます。私からは資料8ページの具体の論点、「労働者以外の者について、どこまでを保護対象とするか」に関して意見を申し上げます。計画課長からも御説明がありましたが、安衛法第22条で言う、事業者が措置を講じるべき対象は労働者に限定されておりません。最高裁判決でもそうした見解が示されております。①の当該危険な有害作業を行う者については、個人事業主や請負先の方も含めて、その作業を行う者は労働者でなくても保護対象とすべきだと考えますし、②の、上記①以外で当該危険有害の作業が行われている場所にいる者についても、その者が危険有害な作業に従事していなかったとしても、作業するに当たり、危険有害な作業が行われている場に立ち入る必要があるとすれば、ばく露等の危険性があるわけですから、こうした従事者も保護対象とすべきと考えております。
関連して、民法第715条では、使用者等の責任について、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」とされていることにも留意が必要ではないかと考えております。危険有害業務が行われている場で作業などをすることで何らかの危険が生じるのであれば、判決の趣旨を踏まえ、安衛法上の保護の対象を拡大する必要があるというのが労働側の立場、意見でございます。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、門﨑委員、お願いいたします。
○門﨑委員 労働側の門﨑でございます。私からは意見と質問を3点ほど述べさせていただきます。まず、意見ですが、8ページ以降について、労働者以外の者で、少なくとも危険有害な作業を行う者については、現行法で労働者について義務付けられている措置と遜色ない保護が必要だと考えております。責任は誰が負うかということは別としても、安衛法の保護対象を労働者だけに限っていては、今回の判決が示した趣旨が果たせなくなっているのではないかと考えているところです。
次に質問ですが、今後の分科会での議論のスケジュール感というか、今回は最高裁判決の争点であった安衛法第22条と第57条、これについて改正を行うということですが、今後、それにあわせて関連する箇所の修正なども検討を行っていくという理解でよろしいでしょうか。また、先ほどの佐藤委員の質問にも関連しますが、民法第715条の使用者等の責任又は労働契約法第5条に安全配慮義務がありますけれども、これと今回の検討との関係はどうなっていくのか、その辺を教えていただきたいと思います。私からは以上でございます。
○城内分科会長 ありがとうございました。それでは、ここまでの御発言に対して、事務局からお願いします。
○小宅計画課長 まず、勝野委員からは、今後の検討に当たっての御意見としまして、保護対象について幅広くということだったかと思います。
鈴木委員からの御質問の1点目ですが、屋内・屋外作業を明記している条文があります。今回の11ページの絵ですと、屋内作業のイメージですけれども、御指摘のとおり条文ごとにいろいろなパターンが想定されておりますので、条文の解釈ごと、条文ごとに、その範囲が屋内、屋外いろいろあり得るのだろうと考えております。
2点目の御質問で、措置義務者について、その作業者なのか、それとも機械等の所有者、設備等の保有者なのかというような論点かと思いますが、そもそも労働安全衛生法におきまして、それぞれの作業者が責任を負うべき条文、それから、保有者が負うべき条文というのがありますので、それがベースになってくるのだろうと思います。雇用労働者に対する措置内容があって、それと見比べてどうなのかという議論になってくるかと思います。
それから、御意見という形でしたけれども、例えば保護具の着用などについて、呼び掛けることはできるとしても、義務付けは実際に難しいという御指摘がありました。それから、対象についても、実効性の担保というような観点からの御指摘があったかと思っております。
佐藤委員からは、対象者の範囲について幅広くということがありました。それから、門﨑委員とも同意見でしたけれども、民法との関係についても留意すべきであるということ。
門﨑委員からは、労働契約法第5条との関係如何ということでした。労働契約法におきます安全配慮義務というのは、一律にというよりは、個別具体のところの話になってきますので、それぞれの条文に照らして、どこまでやっていただくかという具体的な議論をしていただくことになるのかと思っております。
それから、質問としまして、スケジュール感の話がありました。先ほど申しましたとおり、第22条、第57条については、明確に違法性というのが言われておりますので、まず、そこについて御議論いただきまして、それから、関連するところも、今後やっていくのかということに関しては、そのように考えております。以上でございます。
○城内分科会長 そのほか何か御発言はありますでしょうか。
○中村(節)委員 中村から発言よろしいですか。議題2に関して、1点、要望がございます。この度の最高裁判決において、安衛法の考え方が、「物の危険性及び場所の危険性に着目した規制として、労働者以外の者も保護する趣旨」と示されたことは、アスベストへの対応のみならず、他の危険有害作業へも関連する内容と受け止めています。本件の議論に当たり、危険有害作業については、建設現場のみならず、製造現場など、多様な現場が想定されることからも、それぞれの現場の実態を丁寧に把握した上で、議論することが必要と考えます。
事務局へのお願いですが、今後、「保護対象とするべき範囲」及び「誰に保護措置を行なわせるべきか」といった、具体的な論点を検討するに当たっては、危険有害物質を取り扱う業界団体をはじめ、関係する団体からのヒアリングなどにより、現場の実態を丁寧に調査した上で、その結果をお示しいただきたくお願いいたします。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか御発言等はありますでしょうか。ありがとうございました。本議題については、議論が継続していくものと理解しています。今後ともよろしくお願いいたします。
次に議題3「第13次労働災害防止計画の実施状況について」に関して、事務局から説明をお願いします。
○長山調査官 それでは議題3「13次労働災害防止計画の実施状況について」、計画課の長山から説明いたします。議題3は報告事項になります。第13次の労働災害防止計画の5年計画のうち、現在3年半が経過しておりまして、3年分の数字がそろった状況にあります。主な目標に関する実績や取組状況については、昨年秋の分科会でも報告しておりまして、今回は、前回からの1年間で動きがあった部分についてポイントを置いて報告いたします。
1ページが、実績になります。死亡災害は、目標の15%減に対して、802人で18%減となっております。一方、死傷災害の目標については5%減ですが、現状は8.9%増となっております。赤字で書いてありますが、このうち新型コロナウイルス感染症のり患による死傷者数というのが約6,000人おります。13次防のトレンドを分析するためにも、新型コロナウイルス感染者のり患による数字を除いた数字というのも必要になります。ただし、これを除いた数字で見ても、3.9%増と、残念ながら減少には至っておりません。ここから先については13次防の災害の傾向を分析するために、コロナのり患の分を除いた数字で資料を作っております。
次の2、3ページに細かい対策ごとの数字がありますけれども、特に、2ページの下半分にありますとおり、死傷災害について重点業種とした陸運業、第三次産業、こちらの死傷災害をどう減らしていくかというところがポイントになってきます。
飛ばしまして、4ページ目からが各論になります。各対策別になりますけれども、前回より大きく変更のあったところ、動きのあったところにアンダーライン太字で強調しております。今回は全部は説明せずに、特に先ほどの死傷災害をどう減らしていくかという部分と、あと、ここ1年で動きのあったテレワークや個人請負、この辺りについてポイントをかいつまんで説明いたします。
まず、7ページの健康確保のところです。「これまでの取組」のキのところですけれども、テレワークになります。テレワークのガイドラインが今年、2021年3月に改正されております。「今後の取組」のアのとおり、テレワークに対応したメンタルヘルス対策に関する調査等事業を実施し、当該対策の導入促進を目的とした手引を作成していく予定になります。
8ページです。こちらは死傷災害になります。先ほど申した上げた重点業種、いずれも死傷年千人率として増加しております。この対応として、9ページ目が陸運業になります。陸運業の千人率については、20年ぐらい前の9次防の頃に比べると減ってきてはいるのですけれども、近年は増加傾向が見られて、ここを何とか減らしたいということで対策を考えております。「これまでの取組」のカのところに、業界団体への要請と記載しております。これについては、次の小売などとも関連しますので、10ページと関連して説明させていただきます。
10ページです。「これまでの取組」のオで、小売業及び社会福祉施設の業界団体に対し要請を行っていると書いてあります。これらの陸運、小売、社会福祉施設、この3つの業界に対しては、9月29日に政務からの要請を行っております。詳しくは参考資料2に報道発表資料を付けておりますので、後ほど御覧いただきたいと思います。9月29日に、副大臣から、関係する事業者団体に対して、労働者が安心して安全に働き続けられる環境づくりに向けた積極的な取組ということで、協力要請を行っております。
例えば、陸運業については荷台からの墜落・転落、小売業は転倒、社会福祉施設は介護作業中の腰痛など、それぞれの業種に合った重点的な取組というのを要請しております。また、「今後の取組」にもあるとおり、関係者での検討の場を設けるということを考えております。
12ページは、転倒災害のところになります。こちらについては業種横断的な話になります。「これまでの取組」のエにありますとおり、日本転倒予防学会が制定する「転倒予防の日(10月10日)」に合わせて、消費者庁などの関係者と連携して、国民に対する転倒予防の呼びかけを行いました。こちらについても、参考資料2の後半に報道発表資料を付けておりますので、後ほど御覧いただきたいと思います。10月10日、昨日がその日になります。なお、10月10日、英語で言う10のテンと10日のトウということで、日本転倒予防学会がこの日を設定しております。転倒予防のために設備面の改善や不注意な行動の防止、転倒予防体操の実施など、日頃からの運動を含めた職場での健康増進、こういった取組を呼びかけるとともに、転倒予防のための適切な靴の選び方、こういったものも周知しています。
14ページは、個人請負等になります。「これまでの取組」のウとエのとおり、関係省庁と連絡して、例えばウのように、芸能従事者の事故防止のための通知、エのようにフードデリバリーによる事故防止のための通知、こういったものを関係のところと連名で発出しております。技術革新への対応についても記載しております。「これまでの取組」のイのとおり、労働安全衛生総合研究所に新技術に関する研究グループというものを立ち上げております。また、「今後の取組」のアのとおり、高度な技術導入を支援する補助金、こういったものを予算要求しているところです。
次に16ページです。こちらは化学物質対策になります。「今後の取組」のアについて、前回の分科会でも報告いたしましたが、化学物質等の管理のあり方検討会報告書、こちらを踏まえて、制度の見直しの検討を行っていくことになります。
後はトピック的に紹介しますと、17ページの「これまでの取組」ということで、昨年末のバスマットに石綿が含まれていた事案を受け、流通等の再発防止の強化を行っていることを紹介させていただくとともに、18ページについては、電離放射線対策で、「これまでの取組」のウのとおり、眼の水晶体の等価線量限度の引き下げ、これの改正電離則の周知・施行を行っております。ほかにも、アンダーラインの部分がございますけれども、今回は主なものに絞って説明させていただきました。私からの説明は以上でございます。
○城内分科会長 ありがとうございました。本件について、質問、意見等のある方は御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。出口委員、お願いいたします。
○出口委員 出口です。まず7ページ、こちらのほうで1点確認と要望をさせていただきたいと思います。職場相談先、メンタルヘルス対策、ストレスチェック、これらは労働者の作業環境や健康確保、企業においても生産性向上など、大きく影響するとても大切な取組であると認識しています。その中で、「これまでの取組」のイの、全国の産業保健総合支援センター等において、産業保健支援スタッフ等に対する研修やメンタルヘルス対策に係る事業場への訪問支援という形で、2014年度から実施されておられるという記載がありますが、これらは、数値的に支援状況等、どのようになっているのでしょうか。また、どのような事業所の訪問支援が多いのでしょうか。分かる範囲で教えていただきたいと思います。
そして、要望としましては、「今後の取組」として2021年に手引を作成されるとあります。労働者の健康安全機構等で平成27年度からストレスチェック助成金、平成29年、30年には「企業本社」に「個人事業主」を加えて、「小規模事業場産業医活動助成金」を産業医コース、保健師コース、直接健康相談環境整備コースの3つに分けられています。非常に多採な補助金を設けていただいていると思います。ただし、小規模事業場、個人事業主の方々に、これらが本当に満遍なく行き届いているのか、いわゆる周知が徹底されているのか。水平展開が小規模事業主の方々に満遍なく行き届くような周知方法(手引き・リーフレット等)を展開していただくようお願いいたします。
そして、16ページです。こちらのほうも1点の確認と要望が1点あります。こちらについては、化学物質等による健康障害防止対策の推進という形で、目標数値が2017年をベースにして、2022年を80%という形で設定されておられます。ただし、2020年度の実績が表示されているように実績数値が下がっています。2021年で80%以上の実績値であれば、自律的な管理に移行しても大きな混乱は生じないのではないかと個人的には考えますが、現状60%前後で非常に厳しいのではないかと認識しています。その中で、この数値データというものが、どこから積算、算出されたものであるか教えていただきたいと思います。
要望としましては、今後の取組として、「制度見直しの検討」という記載がありますが、非常に大きな取組です。こちらのほうも建設アスベスト同様、各団体と協議を重ねていただき、混乱を招くことのないよう円滑に進めていただきますようお願いいたします。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続きまして、増田委員、お願いいたします。
○増田委員 資料3の7ページの所で、テレワークとメンタルヘルス不調の関係について把握し、対策を、というくだりがありますが、実際にテレワークが原因で日本全国のメンタルヘルス不調者が増えているという実態があるものかどうか、そういったデータを取られた上で事業をなさっているのかについて確認させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、中村恭士委員、お願いいたします。
○中村(恭)委員 ありがとうございます。労働者代表委員の中村です。6ページの林業対策について、意見を申し上げたいと思います。2020年の死亡災害の実績については36人ということで、この13次防の目標よりは少ないと思いますが、ただ前年よりは増加して36人というような状況です。ここ数年、40人前後で一進一退している状況であると認識をしています。死亡災害の状況を見てみると、その6割以上がチェーンソーによる伐木等作業で発生しているということで、改正労働安全衛生規則等によって安全対策が強化されているのですが、やはりこの周知と安全対策の実施を徹底することが更に必要ではないかと思っています。
それには、都道府県労働局等が、災害が発生した場合に的確な災害分析をしてもらい、その対策を地域の事業主に指導してもらう、または個別事業場への立入り、パトロール等をしてもらい、指導を徹底してもらう等の対策が必要ではないかと思います。加えて、労働災害にカウントされていない一人親方の災害も相当多く発生していると思っています。例えば国有林業事業でも多く発生していると認識をしています。労働災害とはならないのですが、ただその災害を分析するのは、やはり必要である。そして、その分析結果の情報の共有を図り、対策の徹底を図ることが必要だと思っていますので、事務局としての御見解を伺いたいと思います。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、勝野委員、お願いいたします。
○勝野委員 ありがとうございます。私からは2点、発言をさせていただきたいと思います。1つは4ページの建設業対策の中の、これまでの取組のカの部分の、建設工事従事者の安全衛生確保法に基づく都道府県計画の策定についてですが、これが現状どこまで進んでいるのか進捗状況が分かれば教えていただきたいと思います。その中で、既に策定された県もあるかと思いますが、そうした県の中で、関係団体も加えた形で検討会が設置されて計画の中身について論議をされている、そういったような県も幾つかあると聞いています。そうした県では、現場の実態を踏まえた論議が行われて、当初出された県の基本計画の改善が行われた上での策定、このようなことがされていると聞いているわけです。そうした点で、今後、都道府県計画の5年目に向けた計画の見直しや、新たな計画の策定をする際にも、できるだけ多くの団体の声を聞くための体制作りに向けて厚労省としても働き掛けをお願いしたいと思います。
もう1つは、17ページの石綿対策の項目になるのですが、解体工事に係る事前調査者の講習会の状況なり、または登録者の状況が現時点でどうなっているのかということについて、お分かりになれば教えていただきたいと思います。現在、講習会が20近い講習機関の下に開催をされていると聞いていますが、どの講習機関も受講できる日程に限りがあって、私どもの組合員からも受講をしたいのだが受ける所がない、どこか受ける所がないか、こういった声が寄せられているところです。そういったことで、組合と言いますか、全建総連としても講習機関と協力をしながら、組合内での開催を進めているところですが、厚労省としても、そうした受講しやすい環境整備を改めてお願いしたいと思っています。
また、発注者への周知は厚労省なり環境省でも行っていただいていると思いますが、対象の工事が100万円以上ということになりますと、一般の住宅のリフォーム工事でも多くの工事が対象になることから、発注者は会社や法人だけでなく、一般の消費者が発注者になる、こういうケースが増えていきます。そうした点で、今回のこの取組の調査工程なり、または費用が発生しますので、その費用負担が増えるということの周知徹底も行っていただきたい。例えば政府広報のテレビのCMや新聞広告又はネットのSNS等を使った周知、こういったものもお願いをしたいと思っています。現在、環境省が建物所有者の皆様へというチラシを作成しているわけですが、こうした周知のための宣伝物は環境省だけでなく、厚労省や国交省との連名で作成をした上で、広汎な周知をお願いしたいと思います。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、門﨑委員、お願いいたします。
○門﨑委員 ありがとうございます。労働側の門﨑です。私からは単純な質問で恐縮なのですが、8ページに死傷者数の年千人率の計画目標が書いてあるのですが、この中で社会福祉施設が2020年実績だと他の業種に比べて非常に高いというところ、10ページですが、これまでの取組としては、そこに書いてあるとおり設備対策等いろいろ書いてあるのですが、それにしてもこの増加率は大きいと思います。この増加の要因がある程度分からないとなかなか議論はできないだろうと思うので、もし分かっているところがあれば、お教えいただきたいと思います。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。私からは1点コメントを述べさせていただきたいと思います。2ページ目です。重点業種別対策については、点線から下の4業種が目標を下回る状況が見られています。特に社会福祉施設が2017年比で25.3%も増加しており、目標達成には大幅な改善が不可欠です。先ほど事務局より、社会福祉施設では特に腰痛等の労災が多いとの御説明があったかと思います。一般的にメーカーの場合には、安全教育の徹底なども含めまして、長い取組の歴史がある中で、死亡災害も減少しており、労使の取組の成果ではないかと思っています。一方で第三次産業の場合には、労働災害の防止に向けた取組もさることながら、労災防止の意識自体が必ずしも十分でないと思いますので、取組以上に、労災防止の意識啓発ということを、様々な局面で打っていただくことが重要ではないかと思っています。
また、具体的な労災防止の取組に関して申し上げますと、社会福祉法人には、大規模な法人もありますが、比較的小規模な法人もあり、どのように対策を講じればよいか分からないとの声も聞きます。私どもの調査でも、介護者の腰痛防止のため、福祉用具等を活用して、できるだけ介護対象者の身体を持ち上げないようにするといった取組をされている企業もみられます。そのような器具や道具の購入費用を助成するといったことは労災防止に直結する施策だと思っていますので、しっかりと予算化していただくことも重要ではないかと思っています。ただし、当分科会の議論から少し離れるかもしれませんが、御案内の通り、社会復帰促進等事業は財政的にひっ迫しております。使用者側としては労災防止に直結しない施策がまだまだ含まれていると認識していますので、そのような事業の廃止、縮小の決定を併せてお願いしたいと思っています。私からは以上です。
○城内分科会長 佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 佐々木です。私からは1点です。先ほど発言された鈴木委員と少し同じような意見になるかと思いますが、発言をさせていただければと思います。私は8ページ目の陸上貨物運送事業対策というところで、要望を申し上げたいと思います。資料にありますように陸上貨物運送事業の目標に対する実績値ということで、残念ながら2017年の数値を下回るような結果になっています。陸上貨物運送事業の死者数については、年々減少傾向にあります。これはいわゆる運行上、交通事故の件数が減ってきている。これはいろいろな啓発もありますし、車両への安全装置の導入などもあって、道路上での死亡事故は減ってきてはいるわけですが、この数字も出ているように、死傷者数は残念ながら増加傾向にあるということになってきています。中身を見ると、いわゆる荷役作業中のけがが確か全体の7割を占めているというような数字が出てきていて、ここの対策が必要不可決だと感じているところです。当然、現在、労使で現場では様々な対策に取り組んでいるところではありますが、なかなか数字としてはそれが反映されていないような形になっています。
産業的には、今、深刻な労働力不足の問題等もありまして、こういった労働環境の面での改善というのは大きな課題であると労使ともに認識をしているところで、そこの取組はしっかり進めていきたいと思っているところですが、この産業において見ると、中小、零細の事業者が非常に多いということもありまして、正に先ほどの介護の話ではないのですが、やはり大手では設備投資であったり、あるいは安全に関するいろいろなノウハウを持っていて、様々な対応ができているところもあるのですが、中小、零細においては、そういったところが少し弱いことと、やはり安全意識が高いとは言えないというような事業者も見受けられるところであり、そういった意味では、先ほどの鈴木委員の御発言ともかぶりますが、より安全意識を高める、そういった取組が非常に重要だと思っています。その意味では、9ページにも書いていただいています今後の取組の中で、関係団体への一層の徹底の要請はもちろんですが、イにありますように、効果的な対策について検討する場を設けて、関係者で検討いただくようなことも、「今後の取組」の中で記載をしていただいていますので、是非、そういった場を活用していただいて、効果的な対策等については水平展開というか、末端の事業者まで情報が届くような形で周知等をしていただく中で、是非ともこの対策をあと2年の中で進めていただければと思っています。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。今、及川委員からも御発言の希望があるのですが、14時30分で増田委員が御退出だということで、増田委員からの御質問に対して事務局からお答えできますか。よろしくお願いいたします。
○髙倉労働衛生課長 労働衛生課です。増田委員からテレワークに関係したメンタルヘルスの状況についての御質問がありました。テレワークに伴って、メンタルヘルスの状況が悪化しているのか、増加しているのかといった情報についてですが、御存じのとおり昨年度からのコロナに関連して、テレワークに関わる状況というのはかなり大きく変動したところです。それについてのメンタルヘルスの問題に関する増減の状況ということに関しては、まだ調査報告等もかなり数が少ないです。我々は今のところ幾つかの情報の収集に努めていますが、その中においては、悪化しているという事業場等の報告もありますが、改善している、あるいは変わらないという所のほうが数的には多いです。まだ限られた情報量ではありますが、そのように今のところは把握しております。ただ、これが今後どのように変動していくのか、あるいはもう少し報告が増えてくる中で、よりその問題点と言いますか、増減に関してのより具体的な情報が集まってくるかと考えていますので、資料の中でも御説明したように、調査・検討等を通じながら、必要な情報の収集とその対策に関する周知に努めていきたいと考えております。
○城内分科会長 ありがとうございました。増田委員、遅れてしまって申し訳ありませんでした。続きまして、及川委員、御発言をお願いいたします。
○及川委員 及川です。各ページに今後の取組が書かれていますが、小規模事業者を考えたときに、どこに相談をしていいのか分かるような形で取組が進められると大変有り難いと思っています。小規模事業者ですと、どうしたらいいのか、あるいは自分の課題の設定自体が分からない、気付かないということがあります。丁寧な相談が中小、小規模事業者への対策には大変重要だと思っていますので、そのような観点も今後の取組の中に考えていただければ有り難いと思います。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。そのほかに御発言の希望者はいらっしゃいませんか。それでは、これまでの御発言に対して事務局から御回答をお願いいたします。
○髙倉労働衛生課長 まず、労働衛生課から、出口委員からの御指摘、御質問に関してです。産業保健総合支援センターによる研修や訪問支援等の実績、資料3の10ページの取組のイに当たる部分ですが、実績の把握等々についての御質問がありました。各都道府県の産業保健総合支援センターにおいて実施しているものに関しては、労働安全衛生機構を通して報告を頂いていますので、状況に関しては把握しております。令和2年度の実績で申し上げますと、産業保健関係者に対する専門的研修は3,200回実施しており、5万8,000人が受講しています。あるいはメンタルヘルス普及促進のための個別訪問などに関しても、約1万回行いまして、1万6,000人に対してメンタルヘルス教育を実施しています。これに関しては、業種別にも集計しており、一つ一つの御説明は割愛させていただきますが、そういう形で実績を把握しながら、更なる強化を我々としては努めているところです。
そして、小規模事業場に対して、この対策や助成金等に関する周知がまだ不足しているのではないかという御指摘がありました。現在までも厚労省のホームページ、あるいは産業保健総合支援センターのホームページ等での利用の案内、あるいはストレスチェック制度の実施の勧奨なども行っています。ポータルサイト「こころの耳」においても、ストレスチェックの実施プログラム等を無料で公開しています。あるいは労働局や基準監督署、ハローワークでも助成金についての周知などを行っているところです。また、中小規模、特に小規模事業場等が助成金の対象になるわけですので、中小企業庁の支援サイトや中小企業基盤整備機構のサイトなどにおいても、この助成金に関しては掲載の上で周知を図っているところです。
しかしながら、まだまだ周知が足りないと言いますか、さらに拡大すべきであろうということは、我々も同じように課題として考えておりますので、使用者団体様の御協力、お力をお借りしながら、さらなる中小企業の皆様に周知をさせていただきたいと考えていますので、またそのような取組についての周知や利用勧奨に、引き続きお力添えを頂ければと考えています。
そして、鈴木委員からのコメントの中で1点、社会福祉施設における労働災害の防止の意識の啓発に関してですが、こちらについては、12ページの中ほどの腰痛予防の所のイについて、保健衛生業の社会福祉施設を対象に、そのほかに陸運業も含めまして、腰痛予防に関する講習サイトを構築して運営開始予定となっていますが、こちらについても動画のサイトを開設しまして、10月10日から公開しているところです。これらを活用して、研修、あるいは講習等を受けていただくことなども進めたいと思っていますので、こういうサイトの周知や受講勧奨を含めまして、さらなるこの対策を保健衛生業、社会福祉施設で徹底していただけるように、引き続き啓発を続けていきたいと考えています。
○安達安全課長 安全課の安達です。御意見ありがとうございます。何点か御説明させていただきます。まず、中村(恭)委員から、6ページに基づきまして、林業関係の御質問、御意見等がありました。死亡災害についてもですが、御指摘のとおり、伐木作業における災害が多いものですから、改正した伐木関係の規則の周知を引き続き行っていくことで考えています。
また一人親方の状況の把握、分析というお話もありました。現場全体の安全を確保するということが非常に重要と考えています。この林業対策については、林野庁を含め関係者とともに対策を進めていますので、そういった中でまた検討させていただきたいと思います。
勝野委員より、4ページに基づいて建設業に関するお尋ねがありました。こちらにありますとおり、都道府県単位の建設職人基本法に基づく計画ですが、現在、34の都道府県で策定済みです。残りの13の都道府県についても、本年度中に6の都道府県で策定をされるということです。この基本計画自体の見直しについては、御承知のとおり見直しの作業を行っていまして、全建総連をはじめ関係団体の御意見も今聞いているところで、今後、論点整理もするという形になっていますが、いずれも各団体や、あるいは国交省とも連携して、こういった取組を更に進めていきたいと考えています。
門﨑委員より、8ページに基づいて、社会福祉施設での労働災害が増加している要因についてということでした。御承知のとおり、近年、要介護される方が非常に増えていまして、また、全産業的にそうですが、社会福祉施設についても高齢の労働者の方の割合も増えています。また高齢の労働者については、先ほどありましたとおり、転倒や腰痛といった行動災害も非常に増えているという形になっています。こういったことが1つ要因となっていまして、先ほど説明にありましたが、9月29日に特にこの介護施設を中心として副大臣より要請をさせていただいたということになっています。
また、この8ページの所で鈴木委員より、こういった社会福祉施設に対する意識の啓発が必要ということで、先ほど衛生課長からも説明がありましたが、これはそのとおりだと考えています。9月29日の各関係団体の要請においては、各施設において介護従事者の方がこういった災害状況をより把握、啓発できるように、施設内で貼っていただくようなリーフレットなども一緒に活用を促していますので、こういった意識の啓発を引き続き進めていきたいと考えています。
この8ページにおいて、佐々木委員より陸上貨物運送事業関係で御指摘がありました。交通災害は減っている一方で、荷役災害の割合が高いということで、御指摘のとおり、今後検討の場を設けまして、総合的に災害を減少させる対策を検討することとしていますので、そういった中の検討と、先ほどおっしゃった意識を高めるような取組というものも進めていきたいと考えています。以上です。
○木口化学物質対策課長 化学物質対策課長です。まず出口委員より、16ページの化学物質の目標値についてお尋ねを頂いています。この数字は厚生労働省の統計部門が実施している労働安全衛生調査の結果を出したものですが、こちらにありますようにラベル表示の数字が15ポイント下がっているということで、その原因については詳しく検討した上で対策を講じていきたいと思っています。今後、自律的な管理を基軸としていくに当たっては、このラベル表示やSDSから伝達される情報がよりどころになりますので、こういった製品を譲渡、提供するような業界にも働き掛けをしながら、この表示の実施率を上げていくように努めていきたいと思っています。
それから、勝野委員から解体に際しての事前調査者の育成状況についてのお尋ねを頂きました。7月末日現在の数字ですが、事前調査者講習の延べの修了者数が5,591人です。このほかにこの講習の修了者と同等の者と認められる者として、日本アスベスト調査診断協会に登録されている者が325人となります。講習の実施機関ですが、現時点で33都道府県で48の講習の実施機関が登録をされています。今年度の下半期辺りから講習を始められる所もありますが、そうは言ってもまだ受講されたい方がたくさんいらっしゃいますので、都道府県労働局からも早期の登録や必要な講習回数の確保について促していきたいと思っています。
それからリフォームに関して、一般人への周知という御指摘もありました。厚労省においては、この改正石綿則の周知広報を目的とした石綿総合情報ポータルサイトを開設しまして、これは御自宅のリフォーム工事を発注されるような一般の方も含めた発注者に対する情報なども掲載しているところです。周知広報のためのポスターやリーフレットについても、第3四半期中に実施することを予定しています。こちらについても、委員の御指摘も踏まえまして、関係省庁、環境省や国交省などと連携して、政府広報もそうですが、一般の方に届くような媒体のあらゆるものを活用して、引き続き周知広報に取り組んでいきたいと思います。以上です。
○城内分科会長 事務局から御回答いただきましたが、委員の皆様、それぞれ御質問に十分に答えられているでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、山口委員、御発言をお願いいたします。
○山口委員 山口です。労働側、使用者側からたくさん意見が出て、公益から全然発言がありませんでしたので、ちょっと発言をさせていただきます。私は城内先生と全く同じ時期に安全衛生分科会の委員になって、12次防の話から始まって、今回13次防、いろいろ施策は進んでいると思いますが、労災の発生状況などを見ますと余り変わっていないなというのが正直なところです。委員の皆様からたくさんの貴重な御意見が出ましたが、やはり12次、13次、これから14次になるのでしょうが、PDCAサイクルの1つのサイクルだと思うのです。そうしますと、Planして、Doして、やはりきちっとしたCheckがないと、次のActionにはなかなか結び付かないだろうと。
例えば社会福祉法人の腰痛などの問題が出ましたが、何か正直歯がゆい。私も社会福祉法人に関わっているからよく分かるのですが、例えば介護施設だけを見ても特養と老健と全然違いますし、それから施設サービスや通所、訪問などいろいろなサービスがそこでなされていて、いろいろな人がそこで関わっているわけですが、そこで先ほど問題になった腰痛がどんな場面でどのようにして起こっているのかというような深彫りをしないと、また同じ話を14次になってもすることになってしまうのではないかなという危惧を感じます。これは行政の皆さんにその深彫りをやれということではなくて、やはりそういうことが得意な研究所とか、そういう所とタイアップするなど、社会福祉施設の話だったら老健局のマターでもありますし、そういうところから何か次の施策を何とか生み出していっていただきたいと思いますので、あえて発言をさせていただきました。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。ただいまの御発言に対して、事務局から何かありますか。お願いいたします。
○髙倉労働衛生課長 労働衛生課です。今の社会福祉施設に関して、御指摘のとおり、その中にも様々な業種もありますし、腰痛の原因になっている作業等に関しても、様々な場面があると理解しています。これに関しては、行政側の持っている情報もそうですし、様々な研究者の方の御検討されているような情報もありますので、それらを集約して対策に生かせるようにということで、我々も調査、検討は進めているところです。
そして、老健局との連携に関しても、不定期ですが担当者の間ですり合わせを行いながら、より効果的な周知の仕方を図っているところです。
介護施設、社会福祉施設においては、全てではないですが、やはり利用者を移動させる場面で腰痛が多く発生しているということが分かっていますので、人力による抱上げをやめる方針を徹底しており、必要な福祉用具等の普及を図るノーリフト協会などの団体とも連携しながら啓発を進めているところです。引き続きそのような形でチェックをしながらの周知を図っていきますが、また様々な情報を得ながら、それを活用できるように進めていきたいと思いますので、また御指摘、御意見等がありましたら、今後も頂戴できればと考えています。
○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか御発言等はありませんか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
次に、議題4「その他」に関して、事務局から説明をお願いいたします。
○小宅計画課長 私からは配布資料の参考資料3についてです。「日本バイオアッセイ研究センターにおける試験方法に関する手順書からの逸脱行為に対する検討会の報告書等について」ということで、内容はこれまでも御説明してきたところですが、配布が遅れてしまいましたが、7月30日に公表しましたので、今回改めて参考資料ということで付けさせていただいています。
21ページですが、別添1の事案の事実関係等についての検討会において、再発防止策をまとめていただいています。具体的には、物理的に改ざんを困難にする、手順書を充実させる、研究者の倫理意識を向上させる、外部との交流、それから人員配置の問題、研究不正についての窓口を確保する等々のことがまとめられています。これを踏まえまして、別添3で、バイオアッセイセンターを所管している労働者健康安全機構に、その提言に沿った形で改善内容を指導するということをしています。ここでの指摘事項を着実に反映させて、再発防止に努めているところです。以上、報告です。
○城内分科会長 本件について、質問、意見等のある方は御発言がある旨チャットに御記入をお願いいたします。漆原委員、お願いいたします。
○漆原委員 御説明ありがとうございます。私からは、日本バイオアッセイ研究所の報告書のうち、とりわけ再発防止策について、質問と意見をしたいと思います。この報告書は、現場で働く労働者に対する調査など実施してまとめられていると思いますが、その現場の管理者は今回の事案に具体的にどういった対応をしていたのかというところについての記載がないというように認識しています。所長が1年間いなかったという記載がありますが、仮に管理職によるマネジメントが機能していないことも一因ではないかと考えられると思っています。
さらに、これらの再発防止について、例えば人事交流など記載がされていますが、そもそも管理職や内部のチェック体制が実際にどう機能し、管理職のマネジメントの何が問題だったのか、あるいは人事交流をすることで、今回のような事案において、どのような抑止効果があるのかということは不明です。まずは、今回の事例を念頭に置いた体制の改善が必要ではないかと考えています。
また、労働者の不満、例えば日常的な業務、あるいは研究所に対する不満を訴える外部の専門の相談窓口、それすらもないとすれば、仮に同様の問題が再発したとしても、それが発覚することすらなかなか難しいのではないかと感じているところです。以上です。よろしくお願いいたします。
○城内分科会長 では、事務局からお願いいたします。
○小宅計画課長 まず管理職が機能していなかったのではないか、例えば所長が不在の期間があったということに言及されていますが、所長については確かに退任後、一定期間所長という形では不在だったわけですが、担当部長が所長代理ということで、事実上所長業務を行うなどの内部的な機能を果たしていましたので、所長が不在だったということが直接、問題が発生した原因だったかというと、必ずしもそういうことではないだろうと思います。また、実際、今回の事案、問題を把握した職員が所長代理に相談したということで、問題の発見に至ったということもあります。
ただ、御指摘のチェック体制については、報告書でも言及されていますが、今回の逸脱事案が行われた物質の投与については、2人以上の体制で手順書をチェックしながらというマニュアルの改善などもしていますので、必ずしも体制だけではなく、こういったマニュアルの改善も含めて、トータルで改善していきたいと。この検討会の中でも再発防止として、そういった人事交流のことなどについても触れられていますので、それはしっかりと対応していきたいと思います。
それから、窓口のことについて、例えば外部のというような例示もありましたが、今回、報告書においてはしっかり窓口をまず置くべしということを言われていますので、それをやって相談などをしやすい体制というのは指導していきたいと思います。以上です。
○城内分科会長 そのほか御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
そろそろ時間も迫ってきました。それでは、これで全ての議題を終了しました。本日も長時間にわたり熱心に御議論いただき、ありがとうございました。本日の分科会はこれで終了します。本日はお忙しい中、ありがとうございました。