第3回がんとの共生のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和元年10月23日(水)16:00-18:00

場所

厚生労働省 3階 共用第6会議室

議題

(1)がん患者・経験者の仕事と治療の両立支援の更なる推進について
(2)アピアランスケアによるがん患者の生活の質向上に向けた取組について
(3)その他

議事

 
○事務局 定刻となりましたので、ただいまより第3回「がんとの共生のあり方に関する検討会」を開催させていただきたいと思います。
 構成員の皆様方におかれましては、御多忙にもかかわらずお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 まず初めに、構成員の出欠状況について御報告いたします。
 木庭構成員は、先日の台風19号被害への対応のため御欠席となりまして、茨城県保健福祉部疾病対策課がん対策推進室、鈴木室長に参考人として御出席いただいております。羽鳥構成員は、16時半を目安に御出席される予定、鈴木構成員はウェブ上での御出席となっており、接続状況により画像・音声が乱れる場合がありますので、あらかじめ御承知おきいただきますよう、お願い申し上げます。
 また、本日は参考人といたしまして、国立がん研究センター東病院、坪井正博先生、坂本はと恵先生、国立がん研究センター中央病院、野澤桂子先生にお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
 事務局及び関係省庁からの出席につきましては、お手元の座席表にかえさせていただきます。がん・疾病対策課課長の江浪は、公務のためおくれての出席となります。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 議事次第
 座席表
 資料1 前回の議論の整理
 資料2 がん患者・経験者の仕事と治療の両立支援の更なる推進について
 資料3 がん患者の仕事と治療の両立支援
 資料4 がん治療に伴う患者の外見変化とその支援について
 資料5 アピアランスケアによるがん患者の生活の質向上に向けた取組について
 参考資料1 開催要綱
 参考資料2 第3期がん対策推進基本計画
 以上、資料の過不足等がございましたら、事務局にお申し出ください。
 報道の皆様には、ここでカメラ撮りは終了とさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 この後の進行は、西田座長にお願いいたします。
○西田座長 ありがとうございます。西田でございます。第3回「がんとの共生のあり方に関する検討会」を開きたいと思います。今年度に入って2回目です。前回は、この領域というのは患者さんも医療者も非常に思いがあるところで、いろいろなことを取り組んでいただきたいということがあるかなということで、いろいろな意見を伺いました。
 その中で、施策として落としていくには、根拠が十分にあること、患者さんにとってアウトカムあるいはQOLがよくなることと、期待はされてもまだそこまではエビデンスがないというところがあるかと思いますけれども、後者のほう、エビデンスがまだしっかりしていないところは、将来的に厚労科研等でしっかり研究してもらってエビデンスを出して施策の中に、あるいは提言の中に入れていくことにしていきたいと思います。ですから、今回からはできるだけエビデンスに基づいて、どういうふうに患者さんあるいは御家族に良い医療を提供できるかというのを御議論いただければありがたいと思います。
 まず最初に、前回の復習をしたいと思いますので、前回の議論の整理を事務局から資料1を用いて、簡単にまとめていただけますでしょうか。よろしくお願いします。
○事務局 資料1を御用意ください。「第2回がんとの共生のあり方に関する検討会における主な議論の整理」です。
 2ページをごらんください。緩和ケアの提供体制に関して3点ございました。
 1点目に、基本的な緩和ケアの視点から、緩和ケア研修会に関して、受講後の情報や技能を維持・向上するため継続研修の必要性について御意見をいただきました。
 2点目に、専門的な緩和ケアの視点から、拠点病院と地域連携において、緩和ケアセンターや地域緩和ケア連携調整員の役割の重要性について。
 3点目に、苦痛のスクリーニングに関して取り組みの見直しの必要性について御意見をいただきました。
 3ページをごらんください。相談支援体制の整備に関して2点ございました。
 1点目に、ピアサポーターの養成の普及、質の担保に向けて、地域の特性に応じた形で患者団体、都道府県、拠点病院等による連携の重要性について。
 2点目に、地域統括相談支援センターに関して、既存のよい取り組みを生かしつつ、今後のあり方の見直しについて御議論いただきました。
 以上でございます。
○西田座長 非常に簡潔にまとめていただきました。
 先ほども申し上げましたように、まだ十分にやればいいという根拠がない部分も多少はありましたけれども、先生方からいろいろな意見をいただきました。このまとめに対して追加コメント、修正等がございましたら、どうぞ遠慮なくおっしゃってください。
 岸田構成員どうぞ。
○岸田構成員 この中で緩和ケアについてですけれども、今この検討会以外では話し合う機会が全くないと認識しております。また、西田座長にも前回御認識いただいたように、ここだけでなく継続して議論が必要だ、もしくはこれは追加のコメントですけれども、別途議論の場を設けることが必要ではないかということをつけ加えさせていただければと思っております。
 以上です。
○西田座長 ありがとうございます。
 緩和ケアは緩和ケアだけで完結することではないので、全体の議論の中で入れていったほうがいいかなと思います。継続的な議論は必要だと思いますけれども、がんとの共生でやるのか、その前の部会でやるのかは微妙な問題があると思いますが、ここで十分に議論しなければいけないと思います。御意見としていただくという形にしたいと思います。ありがとうございます。
 ほかはよろしいでしょうか。よろしければ、本日の議題に入りたいと思います。議題(1)「がん患者・経験者の仕事と治療の両立支援の更なる推進について」。まず最初に、資料2を用いて事務局からお話をいただいて、その後、東病院からお二人来ていただいていますので、今、研究的な段階でどういうことがわかっているか最新情報の披露をお願いしたいと思います。
 では、事務局からよろしくお願いします。
○事務局 資料2をお手元に御準備ください。「がん患者・経験者の仕事と治療の両立支援の更なる推進について」説明させていただきます。
 3ページをごらんください。就労を含めた社会的な課題への対策の経緯です。第2期基本計画より重点課題として、働く世代へのがん対策に取り組んでまいりまして、4ページのとおり、就労に関するニーズや課題等をまとめております。
 5ページは、第3期基本計画の概要でございます。
 6ページは、がん患者数の推移に関するグラフです。約3人に1人は20~60代で罹患し、仕事を持ちながら通院している方は、平成22年調査より約4万人増加しています。
 7ページは、がん患者の方の就労状況です。雇用されていた方でがんと診断された後、離職した方は約35%、また別の調査ですが、離職した方のうち最初の治療が始まる前に離職した方が4割を超えていました。
 8ページは、就労継続にかかる背景要因です。多い順に体力低下、価値観の変化、薬物療法に伴う副作用が挙げられ、医学的、精神的、社会的なアプローチが求められています。
 続きまして、現在の取り組みです。10ページをごらんください。がん患者の方の両立支援、就労支援を円滑に進めるために、労働基準局、健康局、職業安定局の3局で連携しながら取り組んでいます。
 11ページは、両立支援の取り組みの全体像です。治療を続けながら働くための制度や社内の理解が不十分である等の現状を踏まえ、企業の意識改革と受け入れの体制整備、主治医、会社・産業医、両立支援コーディネーターによるトライアングル型サポート体制の構築等を進めているところです。
 12ページは、事業で位置づけている主な職種の役割でございます。個別に御説明したものが13ページ以降になります。
 13ページの両立支援コーディネーターとは、企業、医療機関、産業保健総合支援センター等で、それぞれの立場における支援及び関係者との連携・調整をすることで、対象者の症状や業務内容に応じた、より適切な両立支援を行います。養成研修の受講を要件としています。
 14ページは、産業保健総合支援センターによる支援で、両立支援促進員についてはマル2とマル4に当たります。主に、企業を対象に両立支援に関する制度導入や教育等の支援、患者と事業者との間の個別調整支援を担っています。
 15ページは、社会保険労務士等の専門家を拠点病院に週1回配置する事業です。勤務時間の短縮や柔軟な配置転換の対応、不当解雇等の不利益に対する相談等を行います。
 16ページは、長期療養者就職支援事業で、がん等により離転職を余儀なくされた方を対象に、平成25年度から職業安定局で実施しています。ハローワークに就職支援ナビゲーターを配置し、拠点病院等へも出張相談を実施するなど、医療機関とも連携しながら専門的な就職支援を行っています。
 17ページは、医療機関における両立支援の必要性をお示ししています。がん患者の方は、診断時から復職後までの過程でさまざまな悩みや課題があり、拠点病院で早期に状況を理解し、継続的に支援することが求められます。これまでの取り組みを後押しする形で、両立支援コーディネーターの研修を受講した相談員が中心となり、支援するモデル事業を行っています。
 18ページは、昨年度より実施しているモデル事業の概要です。本事業では本日お越しいただいている研究班で作成された「仕事とがん治療の両立お役立ちノート」を活用しつつ、個別支援と院内の環境整備を進めているところです。
 19ページは、モデル事業の例として北里大学病院の取り組みをお示ししたものでございます。体制としては、就労支援担当医師、ソーシャルワーカー、看護師で就労支援チームを立ち上げ、社会保険労務士と就職支援ナビゲーターがアドバイザーで加わり対応しています。3つの推進ポイントでスクリーニング、相談支援、啓発活動を行うことで、相談件数の増加のみならず、患者の生活イメージづくりと職場復帰の準備性の向上、質の高い意見書作成等につながりました。課題として、診断時期にある患者の情報を得る機会の不足、時期に応じた支援の検討、報酬算定等の仕組みの必要性を提起いただいております。
 20ページは、石川県の取り組み例です。地域の窓口での専門家による支援や患者・家族の方の声をもとに作成したQ&Aのカードをドラッグストア等に配布しています。そのほか、企業の工夫や労働者の声を盛り込んだ事業者向けの手引きを多職種・多機関で作成しています。
 21ページは、国立がん研究センターや研究班、関係部局等で作成されたツールです。
 22ページは、拠点病院の現況報告に基づくがん相談支援センターの実績です。相談支援全般における就労支援の割合は増加している一方、就労支援についてニーズがない、対応方法がわからないなどの意見もございました。
 最後に、本日の論点案でございます。これまで両立支援の取り組みを進めてきましたが、現状や課題についてどのようにお考えになるか、課題の例を御参考に幅広く御意見をいただければと思います。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
○西田座長 事務局から、本日の論点を含めてオーバービューをしていただきました。御存じのように、がんは働く世代の病気です。それと昔はがんになれば死ぬという、イコールに近い考え方があったのですけれども、現在は、例えば小児がんであれば8割の患者さんが治りますし、大人のがんであっても6割以上は治る。つまり、死ぬ病気ではなくて、むしろ治療が非常に長くかかって慢性病に近くなってきました。しかも、その治療に最近は高額な医療費がかかるようになってきたので、1つは人生の目的として働くということを両立させること、それから、収入をある程度担保する必要があるということで、就労を続けることは重要である。
 一方で、がんと言われた段階で早い時期に辞められる方がいらっしゃるということと、それに対してこれまで国を中心に社労士を配置したり、両立コーディネーターを配置したり、先ほどありましたように、トライアングル型のサポートをやってきたという状況であるという御説明があったと思います。
 質問を受け付ける前に、まずは東病院で坪井先生と坂本先生が、これまで就労支援でさまざまな調査あるいは前向きの研究をされてきていますので、最新の就労支援に関する研究も含めた現状を少し御報告いただければありがたいと思います。
 それでは、坂本先生、よろしくお願いいたします。
○坂本参考人 よろしくお願いします。国立がん研究センター東病院の坂本です。
 私は、がん専門病院のがん相談支援センターの相談員の1人でもありますし、また、先ほど御紹介いただきましたように、研究班の一員として幾つかの調査をさせていただいておりますので、大きく分けて3つ、働くがん患者さんの支援ですので、まずは、患者さんが働く職場である事業所対象の調査、そして支援をさせていただく、また、相談支援センターのある医療機関の就労支援の実態、また、何よりも患者さん自身のことですので、患者さんが診断を受けてから経時的にどのような支援のニーズがあるのかといった3つの局面の調査について、きょう御報告をさせていただきたいと思います。
 まず、資料3の2ページをごらんください。2014年に千葉県のがん診療連携拠点病院就労支援部会を中心に実施した調査になりますけれども、千葉県内の3,000の事業所を対象に調査を行わせていただきました。
 目的としましては、事業所が、私傷病を持つ従業員がいた場合にどのような課題を感じていて、また、公的機関や医療機関にどのような支援、また、連携のあり方を期待しているのかを明らかにしたものです。575事業所から御回答をいただいたわけですけれども、従業員が私傷病の診断を受けた場合に、専門家へ相談をした事業所は18.4%という結果でした。内訳としては、会社と連携をしている雇用されている社労士さんや産業医さんが主立ったところで、2014年時点では主治医や相談支援センターといった病院との連携実績は、わずか16%にとどまるという実態でございました。
 また、専門家へ相談しなかった理由についても確認させていただいているのですけれども、よかった点については、従業員と話し合って解決ができたという割合が79%を占めているのに対して、相談する先がわからなかったので相談しなかったというのが18.9%という実態がございます。また、この内訳を見ましたときに、18.9%のうち実に82%の事業所が従業員50人未満の事業所ということで、産業保健スタッフとの連携体制がとられていない事業所が主立ったところだったという課題が見えてきております。
 また、従業員が私傷病の診断を受けた際に苦慮したことや、もし、がんと診断を受けた場合に事業主が知りたいことについては、赤のグラフでお示ししておりますように、ある程度医療機関との連携のニーズがあるということも確認されておりますけれども、さきに述べましたように、連携の実体がないというところがわかってきておりましたので、質問としまして下の表にございますように、医療機関との連携方法に対する具体的な内容についても確認をとらせていただきました。ここから浮き彫りにされたことは、診断書の精度という内容よりも上位に、従業員が医療機関の相談窓口に相談する際の手続や従業員と雇用主が一緒に医療機関で説明を受ける場合の手続といった、アクセシビリティに関するニーズが一定数確認されていることがわかっております。
 我々はこの結果を踏まえまして、この当時アクセシビリティの解消を主眼に置きまして、ここにお示ししたような患者さん向けのリーフレット、また事業所と主治医との情報共有シートの作成等を行いまして、千葉県内の事業所を対象に普及啓発を図ってきたところでございます。
 実は今年度、成果の確認という意味も込めまして、同じような調査をさせていただいたところでございますが、相談する先がわからなかったという数字については、実はまだ余り改善が見られていないという結果でございました。18.9%と同じ数字であったということが1点。ただ、医療機関への相談の実績は2割を超えるようになってきておりますので、微増ではございますが、少しずつ改善の傾向が見られるところでございます。
 次に、3ページをごらんください。医療機関における就労支援の実態になりますが、こちらに関しては2017年度に全国のがん診療連携拠点病院または労災病院さんを対象に実施した調査でございます。大きく分けて3つのポイントがあるのですけれども、1つは、がん患者さんの就労に関する新規相談件数が、年間の中央値10.0件と非常に限定されている実態があったということ。一方で、社会保険労務士さんや産業保健スタッフ、ハローワークとの連携体制、協働体制を整備している医療機関は、この時点で4割を超える自治体もあることがわかってきました。
 3つ目のポイントとしましては、相談員自身もこういった相談に関心がないということではなくて、赤いグラフでお示ししておりますけれども、相談部門への利用者が少なくてニーズの有無がなかなか把握しき切れていない実態があることがわかっています。
 最後に、アウトリーチの重要性ということも実はこの調査では浮き彫りにされたところでございまして、就労にまつわる御相談が多い病院と、そうでない病院の違い、幾つか背景を分析してみたところ、特に緩和ケアのスクリーニングを外来・入院とも経時的にとっておられて、なおかつ、そのスクリーニングの中に就労にまつわる質問が設置されている病院に関しては、そうでない病院と比較すると、就労にまつわる御相談の件数が高いことがわかってきております。実は、当病院でも緩和ケアのスクリーニングに就労にまつわる御相談を2013年度以降入れているのですけれども、下にお示ししておりますように、入れる前と後では、初診から相談室来室までの時期が非常に変わってきていることが1つ。また、退職後の御相談が2012年時点では30.6%を占めたのに対して、2017年度には2.6%と減少している、いわゆる仕事を続けるためにどうしたらいいかといった御相談が多少ふえているという傾向が見えてきているところでございます。
 次に、患者さん自身がどういった思いで経過をたどっているかという調査を4ページにお示ししております。2015年から2年間かけて前向き観察研究をしているところでございまして、まだ詳細な解析は終了していないところですので、きょうお話しできる範囲にはなりますけれども、まず1点は、がん専門病院に初診でいらっしゃった時点で一定の方、うちの病院では5.7%の方が既に退職しているという実態があること。また、先ほどの事務局からのお話とも共通するかもしれませんけれども、がんの疑いの説明を受けてから初回の治療をするまでの間に、結果的に辞めた、辞めていないにかかわらず離職を強く検討した患者さんが3割を超えていることがわかっております。
 また、話は前後しますが、辞めた理由の1つに、体力的に続ける自信がなくなったという方が3割を超えていることがわかっておりまして、これまでの就労支援のプログラムの中にはリハビリに関するところがなかなか着目されていない実態があるのですけれども、体力低下に対して今後どう介入していくに関しても、医療機関で検討の余地があるのではないかということで今、議論しているところでございます。
 一方、下にお示ししております「医療者に対して望む支援」は、初診時また観察期間である6カ月後、2年後で多少内容が変わってきておりますので、これらを反映した形で、先ほど事務局に御紹介いただきました、お役立ちノートを構成させていただいて、5ページにお示ししているような形で、これを用いた就労支援のあり方が、臨床的な有用性があるかどうかを昨年度よりモデル事業に参加していただいている17施設のうち、有志の9施設に御協力いただいて実施しているところでございます。現在、約250名の患者さんに御協力いただきながら、評価させていただいているところでございますけれども、主要評価項目、離職率とお示ししておりますが、辞めないことが全て正解という意味でお示ししているのではなくて、研究の性質上こういったエンドポイントを設けていることが1つです。
 もう一つ、同等に大事なかと思っているのが、辞めたにしろ、辞めなかったにしろ、患者さん御自身の決断が、その後の御自身の肯定感にどうつながっているかも非常に大事なところだと思っておりますので、こちらのプログラムに関しては、がん患者さんの病気に対する効力感尺度やQOL尺度も入れながら、現在経過を見ているところです。
 最後のまとめに入らせていただきますと、ここまで幾つかの調査の結果を御報告させていただいておりますが、1点目、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターは、社労士さんやハローワークとの協働体制が拡充されつつありますが、事業所や患者さんへの周知はまだ検討の余地があるのではないかということ。
 2点目としましては、医療機関において既存のシステム、スクリーニングや多職種の支援と連携したアウトリーチを行っている施設が就労支援を希望する患者さんが多く、より早期に相談支援センターや専門家の支援を活用している実態があること。今後のあり方の一助になればと考えております。
 3点目は、モデル事業と並行してお役立ちノートを用いた就労支援プログラムの有用性を有志の施設で検証中ですが、本日具体的な数字を御報告するまでには至っておりませんが、また違う機会に御報告させていただきたいと思っております。
 最後になりますけれども、先ほど事務局からの資料にもございましたように、体力低下を理由に就労継続を断念せざるを得ない患者さんが一定数いることが幾つかの研究でわかってきておりますので、繰り返しになりますけれども、リハビリ等も含めた就労支援プログラムの検討が必要ではないかと考えております。
 以上です。
○西田座長 ありがとうございます。
 では、2つ発表していただきましたので、構成員の皆様方から、がんと就労の継続について御意見を伺いたいと思います。御質問でも構いません。坂本参考人がお話しされた件に関してわからないところ等ありましたら質問でも結構ですので、どうぞ。
 羽鳥構成員、医師会を代表して何か御意見ございますか。
○羽鳥構成員 ありがとうございます。資料2の19ページにあります北里大学の例で、右下の課題マル3の「就労支援担当医師による相談が報酬算定できる就労支援外来等の仕組みが必要である」要件のハードルが高くて算定しにくいです。中医協でも議論になっているところの1つだと思いますけれども、もう少し簡便に診療報酬請求できる仕組みでもいいのではないかと思います。主治医も企業の産業医も、ここで躊躇してしまうところがあるので、もうちょっと簡便化していただきたいと思います。さらにいえば、ほかの心不全や脳卒中、難病についても請求できるようになれば、働きやすい環境ができると思います。
○西田座長 医師会の先生から力強い言葉、ありがとうございます。確かになかなか難しいんですね。全てそろわないと診療報酬をいただけないので、全てそろえるのは大変です。私も現場にいながら結構大変だなと思います。
 それともう一つは、トライアングルというのは企業にちゃんと医師がいる必要があるんですね。産業医がいないところ、つまり中小企業というのはここから外れてしまっているので、実は中小企業は結構大きな問題を抱えているにもかかわらず、かゆいところに手が届いていないという問題がもう一つあるかなと思いました。
 木澤先生、何か言いたそうですが、どうぞ。
○木澤構成員 今まさにそのことを御質問しようかと思ったのですけれども、相談支援センターの責任者もしているのですが、最大の問題は小規模の事業者に勤務されている方が辞めざるを得ない状況になる。つまり小規模の企業ですので、周りからの目もすごく気になったりして休職もしづらいという状況で、辞職しないように強く促すのですが、関係性とかさまざまな理由から辞職してしまうというのが一番大きな問題になってきているということを実感しています。本気でやるなら、そこにこそ何らかの支援を届けないといけないのでしょうけれども、これがまた有効な手段を見つけるのが大変だなといつも感じていまして、皆様のお知恵が借りられればといつも感じています。
○西田座長 志真構成員どうぞ。
○志真構成員 いきなり診療報酬の話が出て、もっと後半になるかなと思っていたのですが、3点ございます。
 1つは、事務局からの指摘もありましたし、坂本さんからの指摘もありましたが、患者さんたちはまず最初に病気のことがすごく大きくあって、実際仕事をどうするかというニーズは現場ではなかなか把握できないというのが私どもソーシャルワーカーの感想です。大体はお金のことを入り口にして、お金に困っているのでというところから社会的な仕事の問題に入っていくと。ですから、緩和ケアの用語で言いますと、社会的な苦痛・苦悩というのはすぐわかるわけではなくて、何層か地層があって、それを一つ一つたぐり寄せていくと仕事のことだったのだとわかる。そこのところは今後、研修等でソーシャルワーカーや看護師さんには、ぜひわかってもらう必要がある
 もう一つ現場で今困っているのは、厚生労働省からおりてくる事業が3つぐらいあるんです。私どものところは今、がんの拠点事業と、ちい散歩ではなく、いばさんぽと言うのですけれども、産業保健総合支援センターからおりてくる事業と2つあって、そして、たまたま同じ社労士さんが引き受けてくださったので、現場ではその方にお願いして何とかなっているということですけれども、細かいことを言いますと、実は事業によって時給が違うらしいんです。非常にいい事業だと私は思いますので、違う時給でやっていただいているというあたりの事業の整合性は今後ぜひ考えていただきたい。
 ちょっと長くなりますが、私どもでやってくださっている社労士さんはとても評判がよくて、緩和ケア病棟で亡くなられた若い患者さんの就労支援の相談に乗ってくださったんですよ。緩和ケア病棟に入院していますから職場復帰できる可能性は非常に低いわけですけれども、その話をちゃんと聞いて向き合ってくださって、その若い患者さんはすごく安心して、ある意味社会的な苦痛が癒されたというか、結果的にはそういった相談の過程で具合が悪くなって亡くなってしまったわけですけれども、そういう意味では、社労士さんの役割は非常に大きかったと緩和ケア病棟のスタッフ全員が認めておりました。そういう役割をできる人もいるわけですから、事業のそれぞれの整合性をとっていただいて、現場にある程度戸惑いがないように、同じ省なわけですから、ぜひ考えていただきたいと思います。
 3点目が、今、羽鳥先生が言われた診療報酬のことなのですが、厚労省の方はもちろん御存じだと思いますが、療養・就労両立支援指導料というものがあるんです。これは1回1,000点、1万円なんです。それにプラス相談体制充実加算500点というものがつくんです。ですから、相当高額な診療報酬だと私は思うのですけれども、2018年の改定以来、私ども病院ではまだ1件も算定したことがないと言うんです。とても算定できるような診療報酬ではないと。どうしてなのかと聞いたのですが、うちの病院ではこういうフローをつくってやっています。でも、このフローが最後まで、つまり算定するところまでたどり着けない現実があるということなんです。そういう意味では、きちんとサポートしようという診療報酬なので私は積極的に評価したいと思うのですが、現実に取れない診療報酬をそのまま放置しておいていいものかと。これは、ぜひ保険局ともすり合わせていただいて、もうちょっと安くていいので、1万1500点なんて高い点数でなくていいので、就労支援の相談に乗ればちゃんとお金がつくような仕組み、そういう報酬に変えていただきたい。そうなれば、多分件数ももっとふえるでしょうし、アクセシビリティの問題もかなり解決するところがあるのではないかと思います。これはある意味、厚労省内で何とかできることだと思いますので、先ほどの事業の整合性の問題と診療報酬の見直しの問題は、ぜひ御検討いただければありがたいと思います。
 以上です。
○西田座長 ありがとうございます。
 3点御指摘があったと思いますが、2番目の制度のことは厚労省の中で考えてもらいましょう。
 3番目は、どうするかは医師会からも指摘がありましたように、少し考えましょう。
 1番目が結構重要で、がんと言われた患者さんがいきなり来て、就労を続けましょうと言われても誰も聞かないですよね。私のがんはどうなるか、皆さんそれをおっしゃいます。ですから、坂本先生が紹介されましたように、東病院でスクリーニングをやり始めたら70%が来るようになっている。でも、来るのは3~4カ月ぐらいたったところで、みんな治療方針が決まって安心感が出たところで、やっと就労の話ができるようになってくる。これも多分そんなに変なデータではないのだろうなと思います。これは、私はCOIが完全にありますので、この研究に入っていますので、COIがありながらと聞いていただいて良いのですが、多分そうなのだろうなと思っています。ですから、いつ情報を提供するかということも結構重要なのではないかと思います。
 そのほか御意見ございますか。塩川先生どうぞ。
○塩川構成員 10ページの「がん患者が治療と仕事を両立しやすい環境整備」の最後ところに「両立支援助成金の活用等」とありまして、結局受けるところがどういう助成金があって、どういうふうに活動されているのか、その辺詳しく教えていただきたいのですが。
○労働基準局 労働基準局です。ただいま助成金の関係について御質問がございましたけれども、治療と仕事の両立支援助成金というものがございまして、その内容としましては、事業者の方が労働者の傷病の特性に応じた治療と仕事の両立支援制度を導入または適用した場合に、事業者が費用の助成を受けることができるということで、対象はがんだけでなくて脳卒中、心疾患、糖尿病など反復・継続して治療が必要な傷病を対象としております。
 両立支援制度導入というのは、雇用する反復・継続して治療を行う必要がある傷病を負った労働者の治療と仕事の両立支援に資する一定の就業上の措置、例えば、年次有給休暇の時間単位の取得や傷病休暇、病気休暇の取得に関連する休暇制度、または勤務制度でいうとフレックスタイムや時差出勤といったものの体制を整えた際に、こういったものは就業規則などを修正したりして制度を整えるものでございますので、そういったものを整える際に、恐らく社労士さんなどに相談されたりして、そのための費用も必要になってくる場合もございますので、そういったものを助成するための助成金を行っております。
 実施主体は、労災病院などを所管しております労働者健康安全機構が対応しております。
○塩川構成員 それでちょっと思ったのが、先ほど坂本さんから、相談する先がわからなかったと、その数字が変わらなかったというのがあったと思うのですけれども、今みたいなことがどのように広報されて患者さんが知るかということが、今後の課題というか問題になるのかなと思いました。
○西田座長 ありがとうございます。確かに広報は結構難しいですね。
 坂本参考人、先ほど広報したというのは主には事業所に広報したのですか、それとも患者さんにも広報して、患者さんへの広報も余り有効ではなかったということですか。
○坂本参考人 事業所に関しては、調査に御協力いただいた3,000の事業所全部にこういった資材をお送りした経緯がございます。その背景としては、調査のときにそういう普及啓発の資材がもしできたらとしたら、どういう媒体を使って発信してほしいかというニーズ確認をしているのですけれども、半数ぐらいがリーフレット類という回答だったからなんですね。そういった結果だったことが1つ。
 患者さんに対しては、病院全体で共通の取り組みになかなか難しさがあったという事情があって、例えば、がんセンター東病院では、専門病院という特性を生かして各診療科でリーフレットを配っていただいた経緯はありますけれども、ほかのがん診療連携拠点病院で同じようにできたかというと、そういうわけにはいかなかった事情があります。
○西田座長 ありがとうございました。ということは、ほとんどが事業所だと理解してもらっていいのかなと思います。
 そのほか御意見ございますか。加藤先生、お願いします。
○加藤構成員 就労支援に関しては、医療機関と社会をつなぐ本当に大事な取り組みで、こういったことが進むことで、病院の関係者も患者さんが生活するという視点を持つようになった非常に重要な事業なのかなと思っています。
 今回、労働基準局や職業安定局の方々がいらっしゃっているので、あえて触れたいと思うのですが、就労支援のナビゲーターに関しては最初モデル事業という形で始まって、幾つかの県で始まったところ、いろいろなノウハウを蓄積していって47都道府県に広がっていって、全ての拠点病院ではないですが、広く実際に活用され成果を挙げてきていることを私も見ていて思うのですが、その一方で、今後の活躍が期待されるところとして、産保センターの職員の方々もより一層大いに活躍できるのではないかと思っています。どこの部分でかといいますと、病院の職員というのは、なかなか企業に出向くことができない状況があって、病院の外には行けない。もちろん行ってはいけないというわけではないのですが、現実的にはなかなか行けないものです。産保センターの強みというのは、企業と病院あるいは患者さんをつなぐ仕事ができるというところが大きいと思います。したがいまして、既に社労士の方やハローワークの方が病院で活躍されている地域、まだまだという地域もあるかもしれませんが、また、地域の特性や患者さんの状況にもよりますが、産保センターの方が病院のニーズを拾いつつ、患者さんにとっての企業との架け橋となり、つないでいくようなことができる可能性が大いにあり、そのようなところに力点を置いて、いろいろなノウハウをためて各47都道府県で展開してもらうことで、ハローワークの取り組みと同じように広がっていくと思っています。
 また、両立支援コーディネーターもとてもいい取り組みだと思っておりますが、実状では、医療機関では相談支援センターの方々が研修を受けていると思います。内容を見ると、相談支援センターで既に就労支援を実際にやっている方々からすると、少し同じようなことを学んでいると感じるところが正直あると思います。両立支援コーディネーターの研修は事業所の人事担当者や病院以外の方が学ぶとすごく勉強になる内容がたくさんありますし、がんと診断されたときに仕事を簡単に辞めないということを人事の方が知っておくことはとても有意義です。医療機関への研修を促すことも重要だと思いますが、それ以上に事業所や病院以外の方々にたくさん受けてもらえるように、労働基準局の強みも活かせると思いますので、ぜひそういった視点を大事にしてもらいたいと思います。
 以上です。
○西田座長 ありがとうございます。
 前田構成員どうぞ。
○前田構成員 今、名前が挙りました産保センターとの連携のことで意見したいことがあります。
当院は両立支援の算定がこの1年間で2件できたのですが、産保センターの両立支援促進員が企業とのつながりをつくってくだる中で算定ができた状況がありました。産保センターには、企業に病院と向かい合うように促す強制力はないにしても、両立支援の説明から入っていって、医療機関とのつなぎをきちんとつくる、一緒にテーブルに着けるところまで動いてくださったので非常に助かった経緯があります。
 ただ、両立支援促進員によって支援のあり方がかなり異なるように感じます。最初にかかわった両立支援促進員はとても力のある方でしたので、患者さんの不安を聞きながら、励ましながらサポートをしてくれました。しかし、別の方は「労働者が自分で会社に産保センターが介入することの了解を取りつけてくれないと私たちは入れない」ということをおっしゃる場面がありました。そうすると、患者さんとしては、会社に対してどう伝えれば良いのかさえ不安なのに、両立支援促進員の言動が、不安の軽減ではなくて促進になってしまって、「それなら結構です」と産保センターの支援を断ってしまい、そのケースは産保センターが介入しないことになりました。
また、医療機関としては、相手が医療機関であればこういう病院だということが顔を見てわかるのですが、どんな体質の企業なのかはわからないので、地域に根を張って企業の顔が見える方が間に入ってくださると、私たちもどこまで情報を出していいのか、安心できます。人件費のことなどなかなか難しいと思いますが、両立支援促進員に本当に力のある方が入ってくださると医療機関と企業の連携が促進される部分があると思うので、人材の安定的な確保や質の担保について御検討をぜひお願いしたいと思います。
 あと、先ほどお話のあったとおり、両立支援は1回の面接や1回の診療で終わるわけではなくて、入院当初から患者さんが相談しやすい環境をつくっていく中で、患者さんが仕事に向き合える時期が来て初めて具体的な両立支援としての介入ができて支援が完結する形になりますので、本当に長い支援が必要になって中小企業だと、先方の中には両立支援の話に乗ってくれる社会保険労務士や産業医がいないので、この企業はちゃんと話に乗ってくれるところなのか、医療情報を提供することが患者の不利益にならないかということを悩みながら支援しているような状況があります。より支援にエネルギーがかかるこうした企業ほど診療報酬の算定に乗ってきません。病院組織に現場が両立支援に取り組むことを認めさせる上で、診療報酬というのは大きな後押しになります。ぜひ次回の改定の中で、より困難な職場環境にいらっしゃる方の支援にちゃんと医療機関の目が向くような診療報酬にしていただければと思います。
 以上です。
○西田座長 ありがとうございました。
 高山先生どうぞ。
○高山構成員 先ほどの加藤構成員のお話にも関係するのですが、12ページにあるさまざまな事業の中で、両立支援コーディネーターのところだけが、病院等ではなくて企業に配置するということが書かれているということでは、この役割が非常に重要になっていると思います。
 13ページに、2020年度までに2,000人養成するとあります。これはどんな事業でもそうだと思いますが、恐らく研修を受けただけでは余り意味がなくて、養成された方々がどこにいて、特にこの場合には企業にどのくらいいるのかということと、そういった方々がどんな活躍をしているのかというところを少し見えるようにしていただけると、何がどう動いてきつつあるのかがわかるかと思うので、そのあたりを教えていただければというのが1点目です。
 もう一つは、木澤構成員もおっしゃっていましたように、就労に関することは大きな企業だけではなくて中小企業や自営業者のような方々の方が、対策・対応がなくてすごく大変な思いをされている方がいらっしゃると思います。その中で、なかなか対策がないにしても検討は進めなくてはいけないと思います。参考資料2は基本計画の内容だと思いますが、6ページに、中小企業等を対象とした健康経営優良法人の選定基準を盛り込んでいるということがあるのですが、これが1つの例かもしれないのですけれども、中小企業等に対して何かやっている好事例のようなものをせめて少し、私も何ら知恵を持っているわけではないですが、少しでも集めて次のアクションに1つでも結びつけられるといいなと思っています。これは今後の検討のお願いになります。
○西田座長 ありがとうございました。
 産保センターの件が2つ出ていたので、産保センターは、先ほど坂本参考人が、非常に利用率や認知度が低いというニュアンスで話されていたと思いますけれども、企業からあるいは患者さん側からどの程度認知されているか、あるいは利用されているか、多分そこにたどり着かないというのが一つ大きな問題かなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○坂本参考人 実際、産保センター、2014年時点で相談した先として0.9%だったのが、今年度実施した調査では3.3%という結果でした。実際、患者さんがそれを知る機会というのはなかなかないのかなというところではありますが、先ほど志真先生がおっしゃったのでしょうか、がん診療連携拠点病院も既に社会保険労務士が入っているところは産保センターさんとはどう連携すればいいのかとか、その辺のすみ分けなども我々医療現場の相談支援センターもまだ整理がし切れていない部分ですので、そこも一つの課題かなと感じております。最終的には、患者さんの悩みが解決されていくことが重要だとは思いますが。
 済みません、答えになっていないかもしれません。
○西田座長 岸田構成員、患者の立場からどうぞ。
○岸田構成員 今の流れでお話しさせていただければと思います。産保センターに患者も相談できるということ自体、患者側としては誰からも聞いたことがなくて、社会保険労務士さんががん相談支援センターにいらっしゃって相談できるということだったり、両立支援コーディネーターさんがイベントなどをされていたりしてそこで知ったり、ハローワークの就職支援ナビゲーターさんが病院などに赴いて相談できる機会を設けたりしてくださるので、そういったところの患者さんの認知はある程度進んできているのかなと思うのですが、両立支援促進員さんに関しては、企業さんに赴くことができるのであれば、そういったところでもっと見える化をしていただきたいなと思っています。それが両立支援促進員に関してのコメントになります。
 あと、1つ質問があるのですけれども、志真構成員からもあった指導料に関しては、今どれくらい利用しているかというデータは事務局にあるかということと、塩川構成員がおっしゃっていた助成に関して、先日の新聞では2017年度で14件しか使われなかったということも出ていましたので、現状はどうなのかを質問させてください。
○事務局 1点目の指導料の算定数ですが、当課で把握できておりません。恐れ入ります。
○労働基準局 助成金の実績については、先月、読売新聞に出ていたとおり、平成29年度に両立支援の助成金を創設しまして、当初周知なども滞っていたというか、認知が少なかったということもあって、支給実績は14件でございました。その後、周知を進めたこともあって、先ほども助成金の内容について御説明したとおり、会社側で実際に就業規則など制度の見直しをやって、実際に計画を立ててできたことを確認した上で支給を行うので時間がかかっているのですけれども、平成30年度も数値上はまだ確定はできていないのですが、申請自体は百十数件とか出ていて、確実に実績は伸びている状況でございます。ですので、制度をつくることを会社側に少しでも認知してもらって活用していただくような取り組みをしていきたいと考えております。
○岸田構成員 ありがとうございます。あるけれども使われていないということに関しては、使われにくい状況もあるかもしれませんので、そういったところで改善をお願いしたいのと、1つ目の両立支援指導要領に対しては、どれくらい使われているかは次回の会議でもいいので、またお出しいただければうれしく思います。
 最後、これが私からのコメントになるのですけれども、両立を支援していくといった中では、患者としては傷病手当金というお金に関しても生活していく中ではすごく必要だと思っています。2017年に塩崎前厚生労働大臣が、再発される方もいらっしゃるので、分割してやっていくことが必要だろうというコメントをされているのですが、それに対して現状動きがあるのかどうかは見えていないので、そこに関して、もし動きがなければ促進してほしいなという思いがあります。
○西田座長 事務局から何かコメントはありますか。
○事務局 現在、保険局で議論中と伺っております。
○西田座長 就労支援のプライマリーエンドポイントは、保険を使うことではなくて就労を継続することなので、たくさん使わなくても就労が継続できれば一番いいので、その辺は間違えないように、ぜひよろしくお願いします。プライマリーエンドポイントは、ともかく就労を継続するということだと御理解ください。
 ほかに御意見ございませんか。どうぞ。
○荒木構成員 少し論点がずれるかもしれないのですが、私が管理者のときに、自分のスタッフががんになったときに一番考えたのは「働き続けてほしい」ということでした。そのときに一番苦労したのが人事部門の理解なんですね。ですので、人事部門により周知することが重要だと思いました。今回の資料の中でキーになるのは、加藤先生、ほかの構成員の先生方もおっしゃるように、産業保健総合支援センターの方がどうやって中小の事業所等に周知していくかということが、一つ大きなポイントになると思います。
 そのときに、そんなにたくさんの情報でなかったとしても、例えば、20ページにあるような、石川県の事業者向け手引きのようなものをとりあえず持参して説明するといった程度でも構わないので、まずは相談する窓口があることや、あるいは辞めないで支援して助成金をもらって整備していくこともできるのだということを御理解いただくことが、大事だと思いました。
 例えば、医療勤務環境の改善に関しては、医療勤務環境改善支援センターの方が出向いて、病院で相談に乗っていくというようにアウトリーチしていくこと、また、マネジメントシステム自体を病院に導入することが課せられたことは大きいと思います。よって共生ということで進めるのであれば、もう一歩、事業所側に何らかの責務や動機につながるような後押しがあってもいいのかなと思いました。
 以上です。
○西田座長 ありがとうございます。
 事業所の理解は非常に重要だと思います。ただ、パンフレットを配っただけではどうもだめだったというのが千葉県の経験です。もうちょっと別のアプローチが要るのだろうなと考えます。
 ほかに御意見ございますか。志真構成員どうぞ。
○志真構成員 さっきちょっと健康経営という名称が出て、何のことだかよくわからない方もおられるかと思うのですが、今、事業所は健康経営認定事業所というのをいただくことができるんですね。私どものところは健保組合からも、茨城県からも健康経営で認定されている事業所です。ただ、どちらかというとストレスチェックとかメタボなんです。こういう就労支援について健康経営の範囲にはどうも入っていないのではないかと、私は経営を預かる者としてその程度の認識なのですけれども、もし、ここで論議されていることが事業所でちゃんと取り上げられるとすれば、例えば健康経営の中に就労支援というか、治療と仕事の両立をちゃんとやっている事業所は認定しましょうみたいな基準を入れると。
 もうちょっと言わせていただくと、何か事業所にとってもメリットが欲しい。そういう経営をやれば、こういうことがありますと。今のところは余りメリットがない、茨城県のホームページにそういうものが出ているというのは聞いておりますけれども、具体的に事業所にとっても何かプラスになるような健康経営の認定をぜひ、この問題とも絡んでお考えいただければと思います。
 2点目は、さっきから繰り返し出ていますけれども、産業保健総合支援センターの事業は非常にいいと、うちの現場の相談員たちも言っております。なぜならば、ハローワークに結びつくもことできるし、実際に来ていろいろ相談に乗ってくれるしと。だから、そういう現場の声を受けて、ある程度事業の整理、見直しをしていただくと、よりいいのではないかと思います。
○西田座長 ありがとうございます。
 事務局からどうぞ。
○事務局 ただいま鈴木構成員からも御意見いただきますので、よろしくお願いします。画面が映らないので携帯からになります。
 鈴木さん、お願いします。
○鈴木構成員 海外から音声での参加で申しわけありません。
 今伺っていて、両立支援コーディネーターの企業や産業界での普及の大切さについて、いろいろな構成員の先生方から伺っていて同意するのですけれども、例えば、企業だったら経団連とかいろいろな分野ごとの組合だったり、連盟だったりたくさんあると思うのですが、そういったところを通じて一斉に広報するとか、企業の人事がもうちょっと知るすべをたくさん考えたほうがいいなと思っていて、企業側もがん患者さんを社員に抱えて困っているところがたくさんあって、がんと仕事の両立という名目で勉強会などをすると、すごくたくさん集るのですけれども、そういった方々が興味があっても知らないという状況がまだまだあると思います。なので、そこへの広報をもう少し力を入れるということ。
 それから、先ほども話に出ていたように、インセンティブをつける、健康経営を認証するには両立支援が大切ですとか、もしくはまた別の認証をつけるとか、表彰を行うとか、そこに名前を挙げないと恥ずかしいと思われるようなリストをつくるとか、企業側も国や病院から認めてもらえているという認証がありますとすごく大切にするので、企業側のインセンティブと広報に力を入れると、患者側としてもより話もしやすくなりますし、相談もしやすいということになると思います。結局、休職中とか復帰後も一番話すのは、病院と離れたところでは企業の人事や企業になりますので、その部分に力を入れることは、いろいろ方法はあるなと思いながら聞いていました。
 長くなりまして済みません。
○西田座長 ありがとうございます。
 ほかのところで1つ、私からぜひ確認したいのですけれども、先ほど坂本参考人から発表があったように、平均すると就労の相談は一般のがん拠点病院では月1例ぐらいなんです。それが正しい姿かどうかということで、前田構成員、これは患者さんが来るのを待っていたら、そういう状況になっているのではないかと私自身は思うので、もっと積極的にアクティブに患者さんにアプローチしないと、この部分は改善できないのではないかと個人的には思っているのですけれども、いかがでしょうか。
○前田構成員 まず、そもそも私たちの業務指針には就労支援が医療ソーシャルワーカーの業務として明記されています。その業務指針の通知が十数年前のことですから、もっともっと我々ソーシャルワーカーの就労支援が広がっていないといけないというところでは、病院の中では私たちが就労支援の取り組みについて一番責任を感じなければいけない職種だと思っています。
昨年、両立支援の加算が診療報酬に入って、自組織内で議論したときに、がんだけ点数がついたのだけれども、どう考えてもこれは長期療養を必要とするさまざまな疾病全部に必要な支援なので、がん相談支援センターだけの案件ではなくて病院全体で議論しなければいけないと話し合いました。そうすると、がんに特化している病院ではがん相談支援センターの統計に就労支援の件数が全て挙がってくると思いますが、全ての疾患に対応している病院の場合は地域医療連携室といった病院固有の相談部門の統計にがんの就労支援の件数が報告されている可能性がありますので、実際の相談件数は把握できていないかもしれません。ただ、少なくとも高知県の周辺を見ていても、がん相談における就労支援を病院としてどれだけ患者にアピールができているかというとまだまだ課題があるように思います。
○西田座長 鈴木参考人どうぞ。
○鈴木参考人 今の関連で、茨城県の状況を参考までに御報告したいと思うのですが、茨城では今10のがん診療連携拠点病院等がありまして、そこに社会保険労務士さんに月1回入ってもらっていますが、実は相談の数が平成28年度以降どんどん減少しているんです。それがなぜなのかというところは、我々もまだ検証できていない部分があります。もう一方で、就職支援ナビゲーターさんの取り組みもなかなか伸びない現状があります。
 制度はいろいろ充実していただいているのだと思いますが、患者さんの視点に立ったアプローチがなかなかできていない部分があるのかなと、我々は現場で病院の報告を聞いて感じています。
 もう一点、両立支援チームがあって、5年間の期間の中で皆さんで対策を検討するということで、茨城県でも労働局が中心になって会議をやっていますが、実は年に1回ほどしかやっていないんです。その中で何をやるかというと、医療機関も含めて、我々行政も含めて、どういう患者支援にかかわる事業をやっていますかという情報交換しかやっていないと。今まで聞くといろいろな制度があるのだけれども、それが患者さんの視点に立ってうまく浸透していないことを考えれば、その制度をうまく横串を刺して全体をコーディネートすることができていないのかなと思います。そこを県として何ができるのかというのは、まだ研究までいっていないのですけれども、そこは我々職員でも研究したいと思います。
 あとは、県だけでできる話ではないので、せっかくそういう支援チームが集っている体制があるので、そういうところがもう一歩踏み込んで、みんなで汗をかくということをやれば、もっと患者さんの目線に立った、視点に立った取り組みができるのではないかと。せっかくある制度がなかなかうまく活用されていない、患者さんのところまで届いていないという現状があるのではないかという気がしています。
○西田座長 ありがとうございます。
 コーディネートするにも当事者である患者が十分にそのことを知っていることが重要ですよね。ですから、疾患を診断された初期はまず難しいと思うのですけれども、ある程度見込みがついた時期に、ちゃんとこういう就労支援の制度があるというのを周知するようなシステムを組まないといけない。アウトリーチという言葉がさっき出ていましたけれども、そういうものを積極的に拠点病院でやってもらうことが必要だと思いますし、アウトリーチした中で産保センターにつなげるような制度ができればいいのではないかと思います。産保センターの認知は確かに低いんですよね。良いところなのですけれども、そこに届かなければいいものは生きないと思うので、ぜひそういう制度を考えないといけないかなと思います。
 もう一つは、事務局の資料8ページ、あと坂本参考人もおっしゃっていましたけれども、患者さん、特に入院された方は長い治療を受けると体力が落ちます。私も少し就労支援をやっていることもあって、海外の論文を読みますと、大した数ではない50本ぐらいしか読んでいませんけれども、その中で、ランダム化比較試験でほとんど成功しているのが、コーディネーションするだけではなくて体力的な回復をやるプログラムで、リハビリテーションを含みながらサポートしている研究は、結構ポジティブに結果が出ている論文が多かったなと思います。リハビリを支援する資料という意味ではなくて、がん患者さんが治療を受けることによって体力低下が起こっていることに対して、何らかの情報提供をするだけではなく、病院が実際何かリソースを提供できるのではないかと個人的には思っています。羽鳥先生、どうでしょうか。
○羽鳥構成員 ありがとうございます。資料2の19ページにあります北里大学の例で、右下の課題マル3の「就労支援担当医師による相談が報酬算定できる就労支援外来等の仕組みが必要である」要件のハードルが高くて算定しにくいです。中医協でも議論になっているところの1つだと思いますけれども、もう少し簡便に診療報酬請求できる仕組みでもいいのではないかと思います。主治医も企業の産業医も、ここで躊躇してしまうところがあるので、もうちょっと簡便化していただきたいと思います。さらにいえば、ほかの心不全や脳卒中、難病についても請求できるようになれば、働きやすい環境ができると思います。
 もう一つは、リハビリの話がありましたが、日本医師会も健康スポーツ委員会というものがあって、健康スポーツ医を育てる、地域でスポーツ医を育てるということをやっているので、その中にはがんのリハビリの話は余り出てこなかったので、とても参考になりました。また、システムとしてつくっていただけるとありがたいなと思います。その中で、仕組みを協力していきたいと思います。
○西田座長 就労について大分議論をしていただきましたけれども、保険の点数改定につついては、厚労省にやってくれと言ってもそうそう簡単にはいかないので前向きに検討していただくとしても、先ほどありましたように中小企業を含めた、もうちょっと従業員全体に対して目配り、情報供できる制度をつくっていかなければいけないと思います。
 それから、我々医療者もアウトリーチして患者さんのところに行って、こういうリソースがありますよと説明しなければいけないなと思います。それも時期を考えなければいけないと思いますけれども、その中で、産保センター等につないで就労支援をやっていくことが重要ではないかと伺いました。
 最後に問題提起しましたけれども、がん患者さんは治療を受けると体力的には低下します。これはエビデンスをつくっていかないといけないと思いますが、羽鳥構成員がおっしゃいましたように、リハビリなど体力的な介入をすることで早く会社に復帰できるということをエビデンスとしてつくっていく必要があるかなと思いました。
 おおむねこの辺でまとめたいと思いますけれども、どうしてもこれは言いたいということがございましたら、構成員の皆様方いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、がんと就労に関してはこれで終わって、引き続き次のテーマでありますアピアランス、がん治療に伴う患者さんの外見変化とその支援について、野澤参考人よろしくお願いします。
○野澤参考人 野澤です。よろしくお願いいたします。がん治療に伴う患者の外見変化とその支援について、現状を説明させていただきます。
 内容は、背景と医療者によるアピアランスケアの必要性、今後の展望という流れにさせていただいております。早速内容に入らせていただきます。
 御存じのように、近年のがん治療の変化というのは、外見にあらわれる副作用症状を非常に多様化させております。加えまして、治療環境が改善されたということが実は治療中も患者さんが社会と接する機会をふやしているということなんですね。それが逆に、自分の外見の変化を意識させる結果になって、患者さんの苦痛を強化させ、日常生活に大きな影響を与えるという流れになっております。
 図1を見ていただくとわかるのですけれども、外見にあらわれた身体症状と外見にあらわれない身体症状の苦痛度、一番苦痛だと感じたときの平均点をあらわしてランキングしたものです。疾患別・男女別にまとめたもので、乳がんはわかりやすいのでお持ちしたのですけれども、上位20位のうち60%が外見からわかる身体症状で、例えば、6位、7位のように眉毛・まつげの脱毛、痛くもかゆくもないものが、今まで医療が注目してきました便秘や口内炎、発熱などの身体症状よりも苦痛度が高いという状況になっております。
 その結果、これは乳がんだけではございませんけれども、601人の方に外見が変化したせいで以下のようなことがありましたかと、外見変化の体験者に聞いたのですが、40%以上がそのせいで外出の機会が減った、人と会うのがおっくうになった、仕事や学校を辞めたり、休んだりしたということになっております。
 社会生活の影響が非常に大きいのですけれども、4枚目ですが、外見にあらわれる副作用というのは命に直結しない副作用であったことから、実は医療では軽視されてまいりまして、科学的な検証はほとんど行われてまいりませんでした。そのせいかどうかわからないですけれども、インターネット上に外見ケアの情報があふれておりまして、さっくりとした医療者による評価の研究をしたところ、40%が誤りや根拠が不明であるという情報であることがわかりました。医療者も患者さんも正しい情報になかなか到達しにくいという状況にございます。
 その一方で、患者さんの支援ニーズは非常に高くて、図2を見ていただくとわかるのですけれども、外見ケアの情報は病院で出してほしいが97%、そのうちの6割の方が、自分が必要だと思っていなくても自動的に出してほしいというような強いニーズです。ですから、医療者はもちろん研究を推進して、知り得た知見を共有していく必要があるのですけれども、正しい情報を発信する必要性が非常に高いということが言えるかと思います。
 5枚目ですが、私たちは研究班として現状をまとめまして、アピアランスケアの手引きなどを出してまいりましたが、実はそれと並行しまして2012年、これは厚労省の研究成果発表の機会から、研修会を全国がん診療連携拠点病院の医療者を対象に行ってまいりました。これは1年目に基礎編に出られ、2年目以降に応用編に出るというものです。実は資格と全く直結していない研修なのですが、受講ニーズが非常に高いということがございます。下の図にございますように、2018年で未参加県はゼロになったのですが、申し込み開始から10分で満席になってしまって、とてもニーズに応えられないという状況です。これは翻って、現場での必要性の高さをあらわしているのかなと思っております。
 ただし、最近では地域格差や施設格差が顕著になりつつありまして、均てん化が必要かと思っております。図2でございますように、応用編の修了者が10人以上いる施設もあれば、ゼロの施設もあって、全国の拠点の43%にそれなりにいるというところまで来ています。全国で応用編の修了者は、今週末に行われる研修会で533名の予定になっております。
 このように、医療者の研修ニーズの高さの背景には、現場で患者さんから外見のことを質問さ聞かれて困っていることがあると思っております。実は昨年度、患者さん1,034名を対象にした調査でも、6枚目の図1にございますように、外見変化の体験者が実際に利用した情報源は圧倒的に医療者なのです。62.3%の人が医療者から外見のケアはどうしたらよいかという話を聞いております。そして、実は医療者が提供する情報への信頼度は92.5%と極めて高いということがあります。ただ、内容的にはそれでもまだ不十分で、情報リテラシーを高めていく必要性ですとか、症状そのものに対する情報だけではなくて、快適な環境調整のための介入スキルなども入れてほしいというアンメットニーズも明らかになっております。さまざまな課題もありますけれども、患者さんの期待にきちんと向き合うことが医療者に求められている時代になっているのではないかと思っております。
 9枚目ですが、実際のところ、医療者による外見に関連する情報提供や心理教育を含む患者支援プログラムは、当院で60分のプログラムを看護師さんと一緒に提供しているのですが、そういうものでも結構QOLを改善する可能性が示唆されております。同じ時間院内で過ごしていただいた統制群の方と比べますと、参加の前後でネガティブな感情が有意に改善している、これはPOMSという指標、御存じの方は多いかと思いますが、混乱以外のすべての指標が統計上有意に改善したということ。
 申しわけございません、資料を飛ばしましたので、7枚目にお戻りいただけると幸いです。医療者に対する期待が非常に高いということ、ただ、医療者が情報提供するに当たって、実は重要なポイントが浮き上がっております。実は、がん患者さんの全ての人が外見の変化を体験するわけではなく、今回全体の罹患率に合わせてサンプリングして調査したところ、約60%の人が外見の変化を体験して、その感じ方には当然、性差や疾患差があることが示唆されております。
 その際に、外見が変わって気になったというのが62%の人です。私たちは、外見が気になると、ネガティブイブな行動、行動抑制が起きるだろうと単純に考えていたのですが、統計上有意なパス係数を見ていただくとわかるように、外見が変わって気になっただけでは必ずしも行動抑制が起きていないということがあります。それではどういうことが影響していたかというと、実はむしろそれをどうとらえたか。例えば、右側を見ていただくとわかります。外見変化から他人にがんだと気づかれたや、周りの人からかわいそうだと思われたくなかったという思いが強いと、外出の機会が減ったり、人と会うのがおっくうになったり、仕事や学校を休んだりしているということです。単純に気になっただけでは、実は仕事や学校を休むということにつながっていないのですね。なので、この辺の支援がどうしても必要だということがわかってまいります。
 実は、これは患者さんの外見の悩みの本質と非常に関係がございます。8枚目にありますように私たちの調査では、症状というのが患者さんにとって、ただ転んでできた傷ではなくて、それ自体ががんのシンボルであったり、死のシンボルであるということで、いつでも自分に見えるもの、そして他人にも見えてしまうものなのですね。ですから、外見から病気がばれてかわいそうな人とか、先がない人と思われて、今までどおりの対等な人間関係ではいられなくなってしまう不安というのが根底にあることがわかりました。つまり、症状そのものというよりも外見の悩みというのは、人間関係が変わってしまう不安であると言えます。ですから、医療の場では単に変化前の外見に戻すのではなく、その人らしく生きられるように、外見とともに周りの環境やその人の気持ちを整える支援が必要であるということが言えます。つまり、患者さんの悩みの本質を理解して支援していく必要があるということになります。
 9枚目にございますように、そのようなプログラムを当院で実施したところ、有意に感情状態が改善している。それと同時に、外見に関連する自己効力感、外見の問題に対処できるであろうという項目、がん患者の一般的自己効力感が有意に改善していることがわかりましたので、今後そのような支援がQOLや闘病生活への対処行動を変化させる可能性が示唆されたと思われます。ただ、これはあくまでも短期の効果なので、中・長期的な研究が今後の課題であると思います。
 11枚目ですが、以上を踏まえまして、患者さんと社会をつなぐアピアランスケアの提供モデルといたしましては、まず、根幹として医療者のアピアランスケアが基本にあるのがよいかと思います。つまり、患者さんと社会をつなぐということは、いわゆる外見を起点に心のケアを含む対人関係支援であると考えております。つまり、患者さんの外見の悩みの根底に、患者さんが属する社会における人間関係の変化への不安があります。ですから、全ての病院において、患者さんの不安の本質を理解した医療者がアピアランスケアを提供していくことがベースにありまして、もちろん企業や業界団体とも連携して、患者支援に必要なツールの開発を行う必要もございますし、並行して地域では啓発活動として患者会にも協力いただいて一般の誤解を解いていくこと、それから、がん治療による外形変化に対応する関係職種、理美容師や販売職などが、がん患者さんを特別視せずに必要なケアや物品を適切に提供できるよう理解を進めるということ。そして、大きな枠組みの中で患者さんは医療者によるアピアランスケアから始まって、社会全体で支えられ、病前と変わりなく尊厳を持って安心して暮らせることができる社会にしていったらよいなと考えております。
 以上です。
○西田座長 野澤先生、ありがとうございます。
 外見は大事なのですけれども、特に大事なのは社会との関係の中で外見が非常に大事になってくるという御指摘で、それをある程度上手にコントロールすれば、QOLの一部と思いますけれども抑鬱や苦痛と言われる部分が減って自己効力感が上がるというデータがあるとお聞きしました。
 それでは、事務局から論点も含めてお願いできますか。
○事務局 資料5をお手元に御準備ください。「アピアランスケアによる生活の質向上に向けた取組」について御説明させていただきます。
 2ページにありますように、アピアランスケアについては、がんとの共生の中の1つに盛り込まれていて、就労以外の社会的支援として推進していくこととしています。
 3ページをごらんください。アピアランスケアについては、医学的・整容的・心理社会的支援を用いて外見の変化を補完し、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケアなどと定義されてきました。がん医療の進歩に伴い、治療を継続しながら社会生活を送るがん患者が増加しており、医療現場におけるサポートの重要性が認識されています。
 4ページには、自治体や国立がんセンターの取り組みの一部をお示ししています。患者さんに対するわかりやすいリーフレットや、医療者向けに診療の手引きなどが作成されています。
 5ページには、がん診療連携拠点病院における相談支援センターの業務についてお示ししています。アピアランスケアに関しては、オに値するがん患者の療養生活に関する相談に含められています。
 6ページにありますように、ほぼ全ての拠点病院で実施されていますが、相談実績には格差があるのが現状です。
 7ページをごらんください。これらのアピアランスケアの推進の必要性を踏まえた第3期計画にも記載されており、抜粋してございます。
 8ページには、本日の論点案として記載させていただきました。現状のアピアランスケアに対する患者、医療者ともに認知度が低いことや、適切な情報が得られていないこと、医療者による適切な介入が重要で、かつ効果的であることを踏まえまして、今後どのような取り組みが必要かについて御議論いただきたく、よろしくお願いいたします。
○西田座長 事務局のほうでまとめていただきました。
 最初の認知度が低いかどうかは微妙だなと最近思っていて、先ほど野澤参考人からあったように、講習会をやるとあっという間に埋まりますので、最近は認知度が上がってきているのではかないかと思います。実際にそれがケアできているかどうかは別問題かなと思います。
 では、構成員の皆様方のアピアランスケアに関する御意見を伺いたいと思いますが、目が合ったところでどうぞ。
○塩川構成員 薬という意味で、抗がん剤等はよく髪の毛が抜けたりという点が、我々の目からすると患者さんを支援していく視点でとらえていかなければいけないと思いますが、薬剤師としての教育の中にはこういうものが今までなかったので、こういう視点を持っていくということを今、専門の方たちがたくさんいるので、そういうところも勉強会等、こういう課題を要件にきちんと入れていくべきかなと感じております。
○西田座長 ありがとうございます。
 うちでも看護師さん、あるいは薬剤師さんが、こういう支持療法をすると本当に患者さんのQOLがよくなるかという比較研究を今ちょうど始めたところです。支持療法のエビデンスレベルで高いものはほとんどなくて、本当にそれが患者さんに資するものかどうかも含めながら、今後検討していかなければいけないかなと思います。
 岸田構成員、何か御意見ございますか。
○岸田構成員 患者側からの意見としては、私も抗がん剤で脱毛したときに、営業というお仕事だったので、ウィッグをどうするかといったところをアピアランスで相談したことが実際にありました。先ほどの議題ともかぶりますが、資料の中では就労継続にかかる背景要因について体力低下が1番でしたけれども、浮腫や脱毛といった項目もあります。なので、そういったところでもケアしていかないといけない、それは外見ケアも含まれているなと感じています。今、特に若い世代、就労世代の患者さんたちから、アピアランスを相談したいんだけれどもどこに行ったらいいのと聞かれて、私が言えるのは今、全国400名以上の研修を受けた人がいて、今週末には500名以上になっていると。だから、病院に行ってオレンジクローバーのバッジをしている人がいたら、その人に声をかけたらいいよぐらいしか言えないんですよね。なので、私としては厚生労働省からの通達なり、今後のがん診療連携の指定要件なりで、がんに特化しているところに関しては最低1人は居てほしいなという思いがあります。そこに関して参考人の御意見もいただきたいなと思っております。
○西田座長 野澤参考人どうぞ。
○野澤参考人 ありがとうございます。10枚目に少し個人的な私見で書いたのですけれども、病院の中で個別に患者さんが明確に相談できる、相談支援センターにちょっと答えられる人がいたり、それから、非常に外見の不安が大きいという方が多いので、不安が大きい方にはできれば指導管理料、要件を満たした場合、既に算定されている施設もあるみたいなのですけれども、そういうことできちんと個別に答えられる。
 構造で言いますと、全ての人の相談に一々乗らなくても、きちんとした冊子やグループプログラムなどで情報提供ができる。それも、ものを勧めるとか知らせるとかではなくて、自分で選択していいのだということを知らせるということですね。そういう能力や自信ができると、実は患者さんは、がんに対処する気持ち、治療に対する意欲なども全部般化して広がっていきます。また、外見のちょっとしたこと、外見というのは必ず想定しているシーンがあって気になるのですね。1人で部屋にこもっていて気になるのではなくて、このままあるいはこの状態で会社に行ったらどうしようとか、誰々に会ったらどうしようという具体的なコミュニケーションシーンを前提にして気にしているので、そのときにこんなふうに言ったらいいよというアドバイスを含めてできたら、非常にいいのではないかと思っております。
 あとは、ベースとして全ての医療者がそういうことは必要だし、ものの支援ではない、実はコミュニケーション支援なのだということを理解していると支援の形も違うし、病院の風土に影響して違うのかなと思うので、広くそういうシステムができたらいいのではないかと思っております。
○西田座長 ありがとうございます。
 高山構成員どうぞ。
○高山構成員 先ほどの野澤参考人の資料でも、研修を受ける人はすごくたくさんいるけれども、なかなか均てん化には結びつかないところが非常に重要だなと思って聞いておりました。やはり研修は非常に大事で、効率的に進めないと多分、砂漠に水をまくようなことになってしまうのだと思いますので、お伺いしていて2段階くらいで考えてはどうかなと思っていました。これは先ほどの就労支援も一緒ですが、相談支援センターである程度対応するという、相談支援センターでなくてもいいのですが、必ずしっかりと対応できる人と場がどこにあるのかが必要だと思います。それは全ての医療者がということを野澤参考人からも何度も御指摘いただいていますが、やはり施設の中でまずそういうアピアランスに対する対応ができる、相談できるところがあるのだということを全ての医療者が知っているという、本当に薄くてみんながそれは必ず知っている、拠点病院であれば知っているというような周知の部分を拠点病院の方々に伝える研修と、あとは、どこか(これは)相談支援センターなのかもしれませんが、そこではある程度心理的なサポートも含めた研修ということで、必ず研修を受けた人が病院内で周知をするといった2段階の構成のような形で、できるだけ効率的に短期間で広めていけるようなことができるといいのかなと思いました。
 また、これは質問になるのですが、こういった研修がeラーニングのようなものでどの程度可能なのか、集合研修でなくてはいけないのか、そのあたりを研修をされた御経験から教えていただけると助かります。
○野澤参考人 ありがとうございます。
 資料の11枚目になりますが、今まさに先生がおっしゃったように、さっくり知っている人たちというので、今の研修会の基礎編に当たるものをeラーニング化して広めたいと思っております。今はマンパワーの関係で全国の拠点病院からしか受けられていないのですね。実は地方に呼ばれると、地方でクリニックだけれども年間600人もがん患者さんを診ていますという人たちが、なぜ私たちは受けられないのですかとおっしゃってくださることもあって、そういう意味では、ベーシックなところはeラーニングでできるのではないか。むしろ指導者研修みたいなものに3日間くらい集中してがっつりやっていくと、よいシステムになるのではないかと。それから、もし可能だったら、それこそ緩和の先生方いらっしゃるので、緩和の中に30分でも患者支援の考え方みたいなものが広く入ったらいいかなと思っております。
○西田座長 ありがとうございます。
 では、鈴木構成員どうぞ。
○鈴木構成員 野澤先生の資料の10ページの下に「物品や技術の提供だけでは解決できないため、美容専門家や物販業者に任せることは適切ではない」と書いてありますが、これについては物すごく同感しています。
 一方で、美容の情報提供というのは業者から提供されることがすごく多くて、個人的な私自身の経験としても、私が乳がんになって抗がん剤を始めるときに3週間後には髪の毛が抜けるので、かつらを準備してくださいとそれだけ言われただけだったので、かつらを3週間以内にどうにかいいものを探さなきゃと、大変な状況のときにかつら探しにすごく苦労したことがありました。そのときに、かつら屋さんによっては医療用ウィッグというのがあって、つむじがきちんとあって、きちんとした皮膚みたいなものがついていないといけないので、30万円ぐらいするのがお勧めですと、医療用ウィッグとついていないものはやめたほうがいいですよと言われると、高いかつらを買わなきゃいけないんだと思って、高いかつらを買ってしまった経験があるのですが、後から考えたらそんなことはなかったみたいなことはたくさんあるんですね。
 先ほどの資料の中にも、乳がんになったときの一番の苦痛が髪の脱毛とありますが、私自身、今相談を受ける状況になって聞かれるのは、どのウィッグ屋さんがいいのと具体的な商品名や具体的な企業名を聞かれることが一番多いんです。そのときに、医療側としてどういった判断でここがいいと言えるのか、すごくいつも疑問に思って悩んでいて、その辺の評価と連携をどのように考えるのかが、今、一番の関心事として相談したかったことです。医療者側の情報提供は物すごく大事だと思うのですけれども、業者側のことも一切無視はできないと思っていて、その辺の連携も進めていく必要がすごくあるのではないかと一患者側として思っています。
○西田座長 野澤参考人、何か御意見ございますか。一応バイアスが入らないようにお答え願えればと思います。
○野澤参考人 非常に難しい問題で、バイアスが入らないように言うとなると何も言えなくなってしまうのですけれども、実は恥ずかしいことなのですが、今まで医療者が提供する情報と業者さんが提供する情報が同じだったのですね。それは、医療者も勉強する相手先が業者さんしかなかったからです。かつら業界が発展するためには、つむじも大事ですし、毛触りも大事なのです。でも、私たち医療者が本当に伝えなければいけないのは、あなたの髪はすぐに抜けませんとか、家族のつむじを思い出せますかと聞くと皆さん我に返ってくださるんですね。ここにいらっしゃる方もそうだと思うのですけれども、健康な人は実は一緒に暮らしている人のつむじさえ見ていないのです。ですから、もしじっと見てくる人がいたら同業者ですから、患者さんか、医療関係者か、ウィッグ屋さんしかいないので、「あなたもよくわかるのね」とニヤッと笑えばいいですよと私は言っているのですけれども、本当はそこの問題ではないということを、まず医療者がきっちり伝えていくこと。
 そして、先ほどちょっと抽象的に申し上げましたけれども、自分で選べる能力をちゃんと醸成することです。お店に行っても、きょうは下見に来ましたと言えばいいのですとか、業者さんとのつき合い方、それから、ネットを見る場合は、具体的に言えば返品できるところにしましょうとか、東京だったらアンテナショップに行けばいいですよとか、少なくとも洋服と同じなので、自分の好きなように、好きなものを選んでいいということをまず第一に医療者が伝えること。
 そして、がんを隠そうとしてウィッグをかぶらないということです。つまり、行動がこそこそしてしまって何かおかしなことになってしまうのです。実は、外から見るとおしゃれウィッグをかぶっている方と何も変わらないのに、おしゃれウィッグをしている方というのは毛がふえてうれしい、マイナス10歳、女優さんだと思っているのでキラキラして、お友達を見かけたら寄っていってしまう。ところが、がん患者さんは髪の毛で困っていなかった方が圧倒的に多いです。ですから、がんを隠そうと思ってかぶってしまうのです。そうすると表情も硬くなりますし、お友達を見たら避けてしまいます。そして、不必要に髪を触ったり、おかしな行動になってしまいますから、かぶったら割り切っていただいて、もう染めるのが面倒くさくなったのとか、脱毛も究極の薄毛なので、薄毛になったのでおしゃれウィッグにしたのと堂々とかぶってくださいと言うだけで、患者さんの表情がすごく変わります。
 ですから、今まで医療者が教えてきたことが医療者としてすべきこととはちょっと違っていて。ただ間違ってはいけないのは、業界の方はその業界としてよいものを使ってもらいたいと思うのは当然です。だけれども、医療者は正直言えば、脱毛したままでもいいし、帽子でもいいし、立派なウィッグをかぶられてもいいので、とにかくその人らしく伸びやかにその期間を過ごしていただいて、かつ治療に前向きになっていただく。これが唯一の基準なのです。ですから、どんなものでも構わないと思っていますし、かぶらなくても構わないと思っています。
 ですから、医療者は今まで具体的な支援にあたっての視点が違ってきたということと、自分が選択できる、そして選択していいんだよという自信を伝える情報をまず出すべきだと思っています。外を歩いていて、すてきなものがあったら、とりあえずかぶればいいですと私などは言っているのですけれども。医療者は、そのようにちゃんと選べる基準をまず教え、どうしても困ったら、その地域で行ったら参考になるところの情報を幾つか持っているだけでも全然違うのではないかと思っておりますので、その辺も含めて研修会では教育するようにしております。それを広げていかなければいけないと思っております。
○西田座長 ありがとうございます。
 多分、医療者が提供できるのは、どこそこのかつらがいいよという情報ではなくて、こういう考え方で選んでくださいと言うことはできるのではないかと私自身は思います。
 質問は、前田構成員、アピアランスの相談は相談支援センターに行きますか。
○前田構成員 どれだけ院内で広報しているかによると思います。例えば、がん相談支援センターは療養生活に関する相談を受けることになっていますが、具体的にこういうこともこういうこともと相談できると具体例を掲げていますとそういった相談が来ますし、掲げていなければ患者さんも相談しようがないということだと思います。相談の入り口としてがん相談支援センターを活用していただくのはいいと思うので、アピアランスケアという言葉が対応できる相談内容としてきちんと入っていたほうがいいと思います。
○西田座長 ありがとうございます。
 どこで提供するかというのは考えないといけないですけれども、認知はしてもらわないといけないし、さっきの話ではないですけれども、どこに行ったら相談に乗ってくれるか、誰に聞けば相談に乗ってくれるかというのがある程度病院でわかれば、非常にいいのではないかと思います。
 木澤構成員、うなずいていらっしゃるので、何か御意見があればどうぞ。
○木澤構成員 全く同じように思います。ですので、周知を図ることが非常に重要で、相談できる窓口をしっかり決めて相談するというのが重要だと思うので、そこを見定めてから研修の対象者を決める等をしないと非常に非効率的になるので、誰に研修のニーズがあるのか、そしてターゲットポピュレーションは誰かを明らかにした上で、どういう仕組みをつくるかをまず決めて、介入方法を考えたほうがいいと思います。
○西田座長 そのほかアピアランスに関して、加藤構成員、何か御意見ございますか。
○加藤構成員 アピアランスの取り組みに関しては、野澤さんから最初にお話を伺ったのは10年以上前になるかと思います。そのころは私も全く不勉強で、話を聞く前はアピアランスケアを化粧やかつらの話ぐらいかと思っていたのですが、野澤さんの話を聞いてとても大きな衝撃を受けました。コミュニケーションという視点からも心のケアに資するものであり、病院が責任を持って提供すべき内容であることをそのとき理解いたしました。野澤さんはその後も継続して活動されて、このように広がってきたことはすごいと思っています。
 なかなか難しい話なのでしょうけれども、これを診療報酬なのか、選定療養なのかわからないですが、病院の中でしっかりと対価がとれるような仕組みに将来なれば良いと思っています。そのためにはもちろんいろいろなエビデンスを積み重ね、しっかりとクオリティーを担保した研修が重要になるかと思いますが、患者さんたちは医療者の目の前におります。多くの医療者が、今実際に提供したいと思っているからこそ10分で研修の枠が埋まってしまうということが起きています。今すぐ実践したいという人が誤った情報ではなく、先ほど野澤参考人が思いを込めて強く語った大切にしていることが、しっかりと研修の受講生もしくはがん医療を提供している人たちが理解できるように、まずはeラーニングなどを活用するなどして、広く伝わるような何らかの取り組みがすぐに必要だと思いました。
 
○西田座長 どうぞ。
○鈴木参考人 茨城県の取り組みを御報告させていただきたいと思うのですけれども、先ほどの説明にあったとおり、患者さんの精神的な苦痛を緩和するという部分は、信頼度の高い医療者でなければできないところだと思います。
 もう一方で、茨城県で実は平成30年度から県の看護協会に委託事業としまして、相談支援の業務とあわせてウィッグの補助・支援をやっています。ウィッグについては、去年は年間300件くらいの予定だったのですが、それを超えるくらいの申請があったものですから、ことしはさらに6割増しで480件ほどで当初参加しましたが、最終的には700件を超えるのではないかというくらいの勢いで申請が上がっています。
 2万円の補助なのですけれども、平均すると2~5万円くらいの範囲のウィッグを購入される方が多くて、そこに2万円の補助をするというのが大体全体の3分の1くらいなのですけれども、中には50万円とか高いウィッグを購入される方もいます。これについて県としてどこまで支援するのか。これは社会参加、社会復帰を支援するという観点からは非常に重要だと思っていまして、全国的に見ても10県ほどこういう取り組みをやっているところがありますので引き続きやっていきたいと思いますが、こういう形でどんどんふえてしまうと行政としてはいずれ限界も来ますので、そこの仕組みをどうしようかと今、研究しています。
 例えば、白血病のAYA世代の患者さんを支援するために、クラウドファンディングのシステムをつくったりしているNPO法人もありますし、もう一つは、患者さんを中心として国、県、市町村の行政と企業・団体、そこに住民の方も当然入ってもらってステークホルダーみたいな体制をつくって、そこにお金を全部入れて、そこから支援するような仕組みなどを今後考えていく必要があるのかなと思っています。精神的な苦痛の部分は医療の方にサポートしてもらいつつ、社会復帰の支援のための部分は何らかの手だてをしなければならないと思っていますので、我々もそういうところは研究していきたいと思っていますので、引き続き御検討いただければありがたいなと思っています。
○西田座長 何か御意見ございますか。荒木構成員どうぞ。
○荒木構成員 身近で話に乗る看護職が、しっかり理解しておくことは大事だと思います。
 あとは、外来の化療室で患者さんにしっかりと情報が渡るというのも大事と思いますので、資料5の4ページにあるアピアランスケアのリーフレットといったものが、外来のそこここに置いてある、手を伸ばしてとれるところにあるということが必要ではないでしょうか。認定看護師や専門看護師の役割として、院内でアピアランスケアに関してのシステムが整っているか、患者の多様なニーズに合わせてシステム整備できるような教育内容を入れていくことも必要だと思いました。
 もう一つは、患者さんへの情報提供についてです。20年前くらいにアメリカで乳がんの患者さんにピンクリボンバッグというのを配っているのを見ました。診断時にいきなりたくさんの情報を与えて大丈夫なのかなとちょっと心配したことがあるのですが、日本人のマインドも若干変わってきており、情報をしっかりとって自分で選んでいきたいという主体性を持ってきています。ピンクリボンバッグの中にはアピアランスやボディーイメージに関するリーフレットであったり、バンダナが一緒に入っていて、診断時に渡されていました。今後日本でもあっていいではないかなと思いました。
○西田座長 重要な御指摘だったと思います。化学療法を受ける方は今、副作用は髪の毛だけではないですよね。まつげ、それ以外に皮膚やこれまで診なかったもの、これはアピアランスというよりは支持療法に入ると思いますけれども、そういった副作用が出てきているので、化学療法をするとき、あるいはしている最中にちゃんと情報提供するというのは大事であるとお聞きしました。
 ほかに全体を通してございますか。アピアランス自体は、ちゃんと情報提供することは皆さんのコンセンサスでいいですよね。拠点病院としてはそれを医療者が提供する。それに対して研修制度はあったほうがいいだろう。どういう研修制度がいいかは、また野澤先生に研究してもらいましょう。保険のところに入れるには、いつも野澤先生に、ちゃんとアピアランスケアするとQOLが明らかによくなるというのが出ないと厳しいよと申し上げているのですけれども、もう少しきちんと根拠が出たところで、医療課のほうに申し上げられるような形になれば一番いいかなと思います。
 その中で特に、先ほど荒木構成員から御指摘がありましたように、看護師さんと薬剤師さんにアピアランスをよくわかっていただいて、ケアできる人をつくっていただいて、どこに行けばアピアランスの相談に乗ってくれるかを病院が周知することが重要なのではないかと、皆さん方の御意見をまとめさせていただこうかなと思います。よろしいでしょうか。
 きょうは比較的生産性高く御意見をいただいたかなと思います。就労支援もアピアランスも、患者さんにとっては非常に重要なことだと思います。これが本来あればいいというところに、必要な時に届くような、正確な情報を提供できるような医療体制を含めればいいと思います。
 この辺でマイクを事務局に返したいと思います。よろしくお願いします。
○がん対策推進官 本日も御議論いただきまして、ありがとうございました。
 次回の日程については、今後、事務局から調整させていただきたく存じますので、これから年末に向かってお忙しい中となりますが、日程調整のほう、どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。
○西田座長 ありがとうございました。
 きょうは予定どおりの時間で終わらせていただきます。御協力ありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

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