第24回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

平成30年5月24日(木)16:00~18:00

場所

中央労働委員会 講堂(7階)

議題

(1)報告事項
乳がん検診における「高濃度乳房」への対応について
(2)がん検診に関するこれまでの経緯等について
(3)がん検診の今後の議論の進め方について
(4)その他

議事

 
○事務局(田中) 定刻前ではございますが、先に資料の確認をさせていただきたいと思います。
事務局の田中です。よろしくお願いいたします。
資料ですが、上から、
座席表
議事次第
資料1 高濃度乳房について
資料2 がん検診の基本条件・利益・不利益について
資料3 がん検診の経緯等について
資料4 がん検診における不利益(祖父江構成員提出資料)
資料5 がん検診の現状について
資料6 がん検診で推奨されている年齢の国際比較
資料7 今後の議論の進め方(案)
参考資料1 がん検診のあり方に関する検討会構成員名簿
参考資料2 平成29年度市区町村におけるがん検診の実施状況調査
以上でございます。
資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。
定刻となりましたので、ただいまより第24回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
初めに、本日の構成員の出欠状況でございますが、9名全員に御出席いただきました。ありがとうございます。
また、今回の検討会から、2名の構成員に御参加いただくことになりましたので、事務局より御紹介させていただきます。
国立がん研究センター、中山富雄構成員です。よろしくお願いいたします。
○中山構成員 この4月から国立がん研究センターの検診研究部長という形で赴任いたしました、中山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局(田中) 続いて、健康保険組合連合会、棟重卓三構成員です。よろしくお願いいたします。
○棟重構成員 棟重でございます。よろしくお願いいたします。
○事務局(田中) 以上をもちまして、カメラをおさめていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いいたします。
この後の進行は、大内座長にお願いいたします。
○大内座長 それでは、本日の議題に入ります。
初めに、議題(1)報告事項ですが、「乳がん検診における『高濃度乳房』への対応について」、事務局から説明を願います。
○事務局(田中) 資料1をお手元に御用意ください。
資料1につきまして、事務局から説明いたします。
乳がん検診における乳房の構成の通知のあり方に関しては、平成29年3月の本検討会から議論を続けております。
厚生労働省におきましては、資料1の表紙の右下にありますとおり、平成29年度から研究班を立ち上げ、市町村ががん検診の受診者に対して乳房の構成を伝える際に、どのような点に留意すべきかについて研究を実施し、前回2月の検討会でも研究班の経過報告を行ったところであります。
今般、市町村が乳房の構成を通知する際に留意すべき事項が取りまとめられ、本日、都道府県や関係団体に対して、健康局長通知を発出いたしましたので、御報告いたします。
内容は、2ページの目次のとおりですが、3~5ページに「高濃度乳房」という用語の解説。
続いて、6ページに、乳房の構成に影響を与える因子について。
7ページに、高濃度乳房と判定された場合の対応について。
8~10ページに、乳がん検診におけるマンモグラフィーの重要性や、超音波検査の位置づけ、検診の限界について。
11~12ページに、乳房の構成を通知することのメリット・デメリットについて。
13ページ以降には、がん検診に関する一般的な説明やがん検診のメリット・デメリット。自分の乳房がどのような状態かを知り、マンモグラフィーによる乳がん検診を定期的に受けることの重要性等についても記載しており、乳がん検診の実施に関わる方々が正しく情報提供できるようまとめられております。
厚生労働省としましては、がん検診の受診者に対し、市町村の判断で乳房の構成に関する情報を伝える場合に、適切な情報提供を行うことが重要であるという観点から、資料1「高濃度乳房について」を参考にしていただきたいと考えております。
資料1についての説明は以上です。
○がん対策推進官(丹藤) がん対策推進官の丹藤でございます。
ここで当職より、都道府県、それから関係団体に発出した通知の内容につきまして、御紹介をさせていただきたいと思います。
市町村(特別区を含む)が実施するがん検診については、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」について、平成20年3月31日付健発第0331058号厚生労働省健康局長通知の別添「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を示している。
乳がん検診において、マンモグラフィーで乳腺が多く脂肪が少ない高濃度乳房と判定された人においては、乳腺の影に病変が隠れて、がんが発見されにくい傾向にある。
一方で、乳房の構成が高濃度乳房と判定された人に対して、現時点で推奨できる有効な検査方法はない。
このようなことから、乳がん検診関連3団体、日本乳癌検診学会、日本乳癌学会、日本乳がん検診精度管理中央機構は、現時点で全国の市町村で一律に乳房の構成に関する通知を行うことは時期尚早であると提言している。
一方、乳房の構成についての正しい理解がなければ、がん検診の受診者が不必要な検査を追加で受ける等の不利益が生じると考えられる。市町村や検診実施機関等が、乳がん検診や乳房の構成等について正しく理解した上で、がん検診の受診者に対し、乳房の構成に関する情報を伝える場合には、正しく情報提供を行うことが必要である。
こうしたことから、今般、別添のとおり、厚生労働行政推進調査事業費補助金「乳がん検診における乳房の構成(高濃度乳房を含む)の適切な情報提供に資する研究」班において、市町村ががん検診の受診者に対し、乳房の構成を通知する際に留意するべき事項、内容が取りまとめられたため、市町村の判断でがん検診の受診者に対し乳房の構成に関する情報を伝える場合に、適切な情報提供を行う観点から、貴管内市町村及び関係団体に対し、周知方お願いする。
この通知に、先ほど事務局より御説明いたしました資料1を添付して、発出をしております。
情報提供させていただきます。以上です。
○大内座長 ただいま、事務局から、高濃度乳房への対応について報告がございました。
本検討会でも、過去2年ほどにわたって、マンモグラフィー上の問題点として、高濃度乳房、デンスブレスト対応については議論をしてきた経緯がございますが、一方で、この報告にありますように、平成29年度の厚労科研特別研究事業「乳がん検診における乳房の構成(高濃度乳房を含む)の適切な情報提供に資する研究」班が立ち上がりまして、関係団体等も含めて検討された結果の結論として報告が上がってまいりましたので、これに基づいた通知がなされたということでございます。
今、推進官のほうからは、加えて、本日5月24日付で都道府県、医師会、関係学会へ発出されたということでございます。
この点につきまして、構成員の皆様方、御意見等がございましたら、いかがでしょうか。
よろしいですか。では、報告を受けたということにさせていただきます。
続きまして、議題の(2)に移ります。「がん検診に関するこれまでの経緯等について」でございますが、事務局のほうから、資料2と3をもとに御説明願います。
○事務局(田中) 事務局から、資料2及び3について説明いたします。
初めに、資料2「がん検診の基本条件」「がん検診の利益(メリット)・不利益(デメリット)」をごらんください。
「がん検診の基本条件」としては、「1.がんになる人が多く、また死亡の重大な原因であること」。
「2.がん検診を行うことで、そのがんによる死亡が確実に減少すること」。
「3.がん検診を行う検査方法があること」。
「4.検査が安全であること」。
「5.検査の精度がある程度高いこと」。
「6.発見されたがんについて治療法があること」。
「7.総合的にみて、検診を受けるメリットがデメリットを上回ること」とされております。
続いて、「がん検診の利益(メリット)・不利益(デメリット)」ですが、メリットとしては、「がんの早期発見・早期治療による死亡率減少効果」、「がん検診で『異常なし』と判定された場合、安心を得られること」が挙げられます。
また、デメリットとしては、「がん検診でがんが100%見つかるわけではないこと」。
「結果的に不必要な治療や検査を招く可能性があること」。
「生命予後に影響しない、微少で進行の遅いがんを見つけてしまうこと」。
「検査に伴う偶発症が起こりうること」。例えば、胃内視鏡検査による出血や穿孔。胃エックス線検査における誤嚥や腸閉塞。マンモグラフィー・胸部エックス線検査・胃エックス線検査に伴う放射線被曝等があるという指摘があります。
資料3「がん検診の経緯等について」の1枚目のスライドをごらんください。
がん検診のあり方については、これまでもがんの罹患、死亡の現状や、科学的根拠等に基づいて、必要な見直しを行ってきました。
昭和58年に胃がん検診・子宮がん検診が開始されて以降、新たながん種や検査方法の追加、年齢の引き上げや引き下げ、検診間隔の延長等の点について指針を改正しております。
がん検診のあり方に関しては、本検討会で議論が続けられており、平成29年3月に開催された第21回の検討会において、今後の論点として「がん検診の対象年齢毎の推奨度について」が挙げられました。
また、資料3の2枚目のスライドに移りますが、ことしの3月に閣議決定された第3期のがん対策推進基本計画の取り組むべき施策として、がん検診や精密検査の意義、がん検診の不利益についても理解を得られるように普及啓発活動を進めること、及び、科学的根拠に基づいたがん検診の方法等について検討を進め、必要に応じて導入を目指すとされております。
今回の検討会でがん検診のあり方を議論するに当たっては、がん対策推進基本計画や過去の検討会での議論を踏まえ、資料2の「がん検診の基本条件」と「がん検診の利益・不利益」に照らし合わせて、どのような方にがん検診の受診を推奨していけばよいのかという観点から御意見をいただきたいと思います。
資料2及び3についての説明は以上です。
○大内座長 ただいま、資料2、がん検診の基本条件について説明を頂きました。7点ございます。下段にがん検診の利益・不利益についてのまとめがございまして、資料3については、皆さん議論されてきましたが、がん検診に関する経緯についての記載があります。特に平成29年3月に本検討会において、今後の論点として「がん検診の対象年齢毎の推奨度について」が挙げられたという経緯がございます。
さらには、下段のがん対策推進基本計画、平成30年3月の閣議決定ですが、この中にがん検診の不利益についての記載がございます。こういった観点で、検討会で議論を進めることになっております。
そこで、続きまして、祖父江構成員におかれましては、資料4をもとにがん検診における不利益についての御説明をまずいただきたいと思います。
○祖父江構成員 資料4をごらんになってください。
今の話にもありましたように、不利益に関して理解度を深めるということが必要なわけですけれども、利益に関しては割と明確なのですね。死亡減少効果あるいは安心ということでいいのですけれども、不利益に関しては理解の程度がなかなか進まないというところがあります。
本日は、今までのガイドラインで不利益というのはどう扱われてきたか。それは日本の例と、それから、論文のレベルではありますけれども、諸外国における実情というのも紹介させていただき、さらに不利益の中でも特に最近は過剰診断というものがかなり大きく取り上げられているという点がありますので、その過剰診断について説明するとともに、それに連動する形での、対象となる年齢に関しての話題というものを取り上げたいと思います。
御承知のように、ガイドラインにおける推奨の決定、判断過程においては、利益と不利益を両方とも考慮しますと。両者のバランスを考慮して推奨を決定するということであります。
利益の場合は定量的にRCT等で研究結果をまとめ、それがどの程度の大きさかということがある程度具体的に提示できるということなのですけれども、不利益の場合は、まず不利益に当たる構成要素が複数のものがあって、合併症・過剰診断・偽陽性等、いろいろな不利益があるとともに、その重みがさまざまであるというところに特徴があります。
ですから、単に利益・不利益バランスを考えるという際に、引き算をしてプラスになったからネットベネフィットがプラスになって推奨しますと、なかなか単純にそう判断しがたいというところがあります。
さりとて、我が国のがん検診の有効性評価に関しては、それなりに不利益に対しても対応してきたというところはあります。
2001年の久道班の報告書が、まずは有効性判断に関しての一つのエポックメーキングなレポートでありますけれども、その後私も関与して、ガイドラインを作成する手順の定式化等を進めつつ、そこに示したような大腸がん、胃がん、肺がん、前立腺がん、子宮頸がんというようなものをまとめてきたわけですけれども、それに引き続き、若干体制は変わりましたけれども、国立がん研究センターが中心になって、研究班というところが土台になっていますけれども、斎藤先生を中心に肝炎ウイルス、前立腺がんのさらに追加的なステートメントですとか、乳がん検診、胃がん検診の更新版というようなものを作成してきています。
その主なガイドラインの推奨に関する結果は、5ページ目、6ページ目とありますが、右側の表にまとめられたところであります。
こういうガイドラインの中で、不利益がどう扱われていたのかというところを一覧表にしたのが7ページ目、7枚目のスライドに当たります。
ガイドラインごとに不利益の内容が示されていて、ある程度頻度とともにこういうものが記述されています。
具体的にはその下の8枚目にありますけれども、各ガイドラインの中で、表の形でこのように示されていて、年を重ねるに従ってだんだんふえているという形でもあります。
ただ、こういう表の形で頻度とかいうものは載せてはいるのですけれども、さりとてそれを定量的に判断する材料としてこう使っていますということが明確に示されているわけではありません。
ただ、2014年の乳がん検診、胃がん検診については、1人の死亡を避けるために必要な受診者数、これをNNS、Number Needed to Screenと言いますけれども、1人の死亡を避けるために必要な要精検者数を提示して、利益と不利益バランスを検討したということをしています。ある程度定量的な判断を試みたということにはなっています。
ここに挙げた表に当たるものの代表的なものが次の9ページ、10ページから続くものでありますけれども、このような形で不利益の中身、あるいはその頻度等が示されているということを見ていただきたいと思います。詳細は後でごらんになっていただければと思いますけれども、これが日本の実情であるというところであります。
15枚目に行っていただいて、諸外国においてのガイドラインにおける不利益のデータの取り扱いというところなのですけれども、これは論文ベースで見たものですが、まず第1番目の16枚目のヘレーノさんの論文ですけれども、これは種々の評価研究というのがRCTという形で行われていますが、そうしたCancer screening trialsの中で、もちろん利益に関してはレポートがあるわけですけれども、その中で不利益がどのようにレポートされているかということを調べて、その頻度等を提示したものです。
不利益の中身としては、False positiveですね。下に書いています、偽陽性、あるいは過剰診断、負の心理的影響、身体的有害事象、精検に用いる侵襲的検査といったものがまずは具体的には挙げられますけれども、それぞれの頻度もそんなに高いものではなくて、やはり死亡減少効果ということに注目されて、不利益の提示の頻度というのはなかなか挙がってはいないというところがあります。
それから、ちょっと見なれないですけれども、All cause mortality、全死因死亡ですね。あるいは、Withdrawalsのところが有害事象による離脱というものですね。Withdrawals because of adverse effects、こういったものも不利益の一つとしてカウントすべきという考えもあって、ただ、そういうものに関しても、余り多く提示されているものではないという実情があります。
さらに17ページが、これまで多くのガイドラインの中で、利益・不利益がきちんと公平に扱われてきているのかということを、全世界的なガイドラインをレビューして見てみますと、その公平にというところを、Comparable、Asymmetric、Incompleteということで、Comparableというのは両方きちんと提示していますと。Asymmetricというのは、非対称な形でしか提示していない。多くの場合は、推奨が利益についてしか言及していないですとか、利益は定量的に評価しているけれども、不利益のほうは定量的に評価していないとか、こういう非対称な形でしか提示していないか、あるいはIncomplete、不完全ですね。両方とも言及されているけれども、どちらも定量的評価ではない。あるいは、相対評価のみを提示しているという形で分類してみますと、下の円グラフがその結果なのですけれども、Comparableという公平に扱われているというのは、全体のガイドラインの3分の1ぐらいであるということです。
ですから、全世界的に見ても、ガイドラインの中で不利益というものをきちんと扱っていることのほうが、むしろ少数であるという現状にあります。
個別のがん検診について、乳がん検診、肺がん検診、前立腺がん検診について、利益・不利益が論文の中で一体どう提示されているかを幾つか提示してみたいと思います。
乳がんの例としては、20枚目のスライドとして、不利益がHarms、Benefitが利益で、棒グラフで示すと、Harmsがえらいでかいなとなって、一番大きいものはFalse positiveですね。偽陽性というものですけれども、これはがんでないのに検査で陽性になりましたと。この頻度が一番高いのですが、その重みというものはそれほど死亡イベントというようなものに比べればそれほど重いわけではないですけれども、数という意味でいきますとこんな形のバランスになるということになります。
21枚目は、幾つかのガイドラインでBenefitとHarmsの代表的なものを挙げて、そのバランスを見ているわけですけれども、ここで挙げているのはOverdiagnosed cases、青の棒ですね。それから、Prevented breast cancer death、乳がんの死亡減少の大きさを比べると、EuroscreenはPrevented breast cancer deathのほうが多いですけれども、右側の3つ、UK Independent review、UK observational、Cochrane reviewとかというところですと、むしろOverdiagnosed casesのほうが多いと。ガイドラインによって結果が違っているということもあります。
それから、下の乳がん検診の利益・不利益を見たものですけれども、これは乳がんが青と赤のバーのほうでして、青と黄色がOverdiagnosed casesで、上がBreast cancer mortalityのリダクションと。
乳がん検診では利益よりも不利益の推定値のほうが大きくて、前立腺がんの数字よりも不利益が大き目に提示されています。印象では、前立腺がんのほうが過剰診断が多いかなと思っていますけれども、論文の上ではこんなような提示のされ方もしている場合があるということです。
これは、乳がん検診における利益・不利益の全体像なのですけれども、左側がWithout mammography screeningと、検診を受けない場合の、検診を受けた結果、生きている人、乳がんで死亡された人、ほかの死因で死亡された方。乳がん検診を受けない場合と受けた場合で左右を比較するわけですけれども、多くの人が考えているほど、この両者の差が大きくはないということですね。多少、乳がん死亡が減ります。だけれども、他死因死亡とか、生きている人というようなことを数字にした場合、非常に小さなフラクションであるということであります。
別の論文で、ビューさんという人がやったものは、乳がん検診に関してBenefitとHarmsを列記しています。
Reduce breast cancer mortality、死亡の減少。More conservative treatment、侵襲性の低い治療ですとか、Positive psychological effect、心理的によい状態ということがBenefitですけれども、Harmsとして一番上に来ているのがOverdiagnosis。Longer time as a cancer patient、療養期間が延びるとか、偽陽性、偽陰性。それからRadiation exposure、放射線被曝ですね。それから、Negativeな心理的なeffectといったものであります。
それを列記する場合に、右の25ページですけれども、幾つかある中で、Harmsの代表としてはOverdiagnosisで、利益の代表としてはPrevented deathということで、この両者の比をとるというようなことをしています。
一番下にBenefit-to-harm ratioとありますけれども、これが死亡減少の程度、数ですね。それと、Overdiagnosisの数を割って比にしたものですね。2.6とか2.5とか書いていますけれども、こういったものを提示することで定量的評価を試みる。BenefitとHarmsのバランスをこのような形で提示するということが試みられています。
一方で、肺がんに関しては、諸外国というよりも特にアメリカですけれども、低線量CTを用いた肺がん検診が血縁者に対して推奨されているわけですが、いかにそれを効率的にやるかというようなことで、ここでもBenefitとHarmsのモデルによって推定をして、種々のBenefitがいろいろな項目に関して列記されています。
まずはこういう項目について、種々の利益・不利益を定量的に提示するという試みをするとともに、肺がん検診に関しても、先ほどの定量的な利益・不利益バランスを考える際に、この表でいきますと、右側にD/Oというのがあります。死亡減少がDで、OがOverdiagnosis。また、比をとるというような形で、定量的な評価を試みているということが、肺がん検診の場合でも見られています。
最後に、前立腺がんですけれども、これは唐突に出ていますけれども、2018年5月8日というから、今月の上旬にU.S. Preventive Services Task Forceが前立腺がん検診のリコメンデーション、推奨のグレードをちょっと変えました。それまでは全年齢についてDという判定でしたけれども、ここに書いていますのが、男性の55~69歳の年齢層に関しては、リコメンデーションはCと変更しました。Cというのは、利益と不利益は近接しているので、個々の人が判断してくださいということなのですけれども、その際の利益・不利益バランスの模式図です。
1,000人受けた場合に、Men offered PSA-based screeningといった場合に、240人がPositive resultですね。要精検となり、100人がGet a positive biopsyと精検で陽性になり、80人がChoose surgery or radiation treatment、治療を選択し、その結果、Avoids death from prostate cancerというのは、1人が検診によって命が救われると。3人はAvoid cancer spreading to other organsですが、進展を免れると。ここが利益に当たります。5人と書いてあるのが、Die from prostate cancer even after surgery or treatment、検診を受けても亡くなる人はいるということです。
その脇に20~50%と書いてあるのが、「diagnosed with cancer that never grows, spreads, or harms them, also known as overdiagnosis」、過剰診断ですね。放置してもその人に危害を加えないような形のがんを発見してしまうという頻度が、100人のうち、PositiveにBiopsyの結果が出た人の20~50%は過剰診断例に相当すると。
あと、治療を受けた人の中で、Erectile dysfunction、勃起障害ですね。あるいはUrinary incontinenceというのは、排尿障害。こうしたものが50人、あるいは15人に生じると。
こういう利益・不利益バランスを数字として提示して、個々の人が受けるかどうか判断してくださいという状況になっています。
ですから、こういう数字がきちんと提示できるというところが、利益・不利益バランスを個々の人に判断してくださいという前提条件になると思いますけれども、なかなかこれはえいやというところも多少あったりして、さらに、この数字を提示しただけで本当に正しく解釈、理解していただけるのかというところも、まだ問題としては残っているかと思います。
ごらんになったように、不利益の中での過剰診断というのは結構大きなウエートを占めてきています。ですから、過剰診断についても定量的に評価をすると。この20~50%に当たる数字、これをきちんと検討する努力は必要なのですけれども、最近の過剰診断の定量評価に関するレビュー論文を見てみますと、これが幾つかありますけれども、方法論としては、多くの場合は数理モデルによる研究ですとか、あるいは病理・画像の研究、横断研究・コホート研究といったものがあります。
乳がんあるいは前立腺がん等で過剰診断の定量的な推定というのは進んでいますが、32枚目のスライドは、これは乳がんに関して、幾つか定量的な過剰診断の評価を試みた研究を分類しているというものです。
これは横軸に日本語が余りないですけれども、Excess incidence、過剰診断というのは、検診をやらない人の罹患率とかリスクをどう推定するかというのが一番ポイントになります。そのことをどのように推定しているかで、Randomized trialでやっているとか、Nonattendersで推定している、あるいはControl regionで推定する。いろいろなものがあります。
加えて、もう一つ大きなファクターがLead timeですね。先行時間をどのように推定するのか。その推定の仕方も縦側に幾つかあると。
このコンビネーションで研究デザインが主に決まるわけですけれども、幾つかあるものの中で、どれがいいということはなかなか言えないというのが今のところの現状であります。
なので、定量的な評価というのが過剰診断に求められている中で、まだ国際的にこれがいい方法であるということが定式化されているわけではありません。
我が国においても、過剰診断の最近の論文として、Neuroblastomaとか、胃がんに関して幾つかあると。それから、諸外国でも過剰診断に関して、一般の人がどのような理解を示すのか。ここはかなり問題になっていて、きちんと説明しても結局余り理解していただいていないということが、この論文ベースでは幾つか示されています。
こういうところは具体的なものを提示してはいませんけれども、まとめとしては、35枚目に示しましたように、過剰診断というのは予後に影響しない、微少で進行の遅いがんを見つけてしまうということなのですけれども、不利益の中ではかなり大きな要素の一つであると。ところが、その大きな要素についての定量的な評価というのは、まだまだ進んでいないところがあると。さらに、過剰診断というものが不利益として認識されにくいということで、かなり工夫をして説明をしないと正しい理解が得られないというところがあります。
最後に、年齢を加味した利益・不利益バランスということを御説明します。
37枚目が、横軸に年齢をとり、縦に利益・不利益の大きさを図示したものですが、これは実際のデータに基づいたグラフというよりは概念的なものですけれども、多くの場合、利益は年齢とともに上がります。これは罹患率なり死亡率なりが年齢的に上がっていくからということです。最後にちょっと減っているのは、余命がというようなところであると思いますけれども、それに対して、不利益のこの曲線がどうなるかというのは、本当は余り実証的ではないわけですけれども、概念的には若年を過ぎるところではやはり不利益は大きいでしょうし、高齢を過ぎるところでもまた大きいだろうと。適切な年齢層においてのみ、利益が不利益を上回るということが考えられます。
不利益の主な構成要素として、偽陽性あるいは放射線被曝というのは、やはり若年者で影響が大きいですし、過剰診断・合併症、偶発症というものは高齢者で多いと。
こういったものを年齢ごとにバランスを考えて、ガイドラインにおける推奨を決める際にも、こういうことで年齢ごとの推奨を決めたいというのがあるわけですが、それがデータに基づいてというところをきちんと保つと、なかなか判断しにくいというところもあります。
下の表は、そうした年齢ごとのリコメンデーションを国ごとの単位で見たものですけれども、乳がん検診に関しては、実はこのように40歳代で推奨している国というのは少数派なのです。日本は40歳から、本当は74歳というよりは上限なしでリコメンデーションを出していますけれども、このような形で、日本のAge rangeといいますか、年齢範囲は諸外国に比べて割と広いということであります。
次が、子宮頸がんです。子宮頸がんについても、20歳からやっているという国は幾つかありますけれども、頸がんの場合はむしろ対象とする年齢に上限を設けて、65歳で後は推奨しないというようなところがかなり多くあります。我が国ではそういうような形はとっていないということですね。
それから、Table 4のほうですけれども、大腸がん検診に関しても、多くの国は50歳から推奨をしていて、年齢に関しても上限を設けているところが多くあります。我が国は割と広い年齢範囲をとっているということです。
41枚目ですと、U.S. Preventive Services Task Forceのほうでも、年齢ごとに推奨グレードを変えているがんの部位が幾つかあります。
乳がんについては、75歳以上はI判定ですし、子宮頸がんに関しては65歳以上。これはずっとネガティブで受診してきた人という条件はつきますけれども、むしろ65歳の人は受けないほうがいいというD判定になっています。大腸がんに関してもそうですし、それから、前立腺がんに関しては、今回、2018年の改定で70歳以上に関してはDということになっています。子宮頸がんの場合は、21歳未満もDです。やはり年齢を加味した推奨のグレードを決めていく必要があるということが考えられます。
それに対して、これは大阪府のデータなのですけれども、今、市町村がやっているがん検診が、年々高齢化が進んでいるという状態を示したものです。
男性の大腸がん検診の受診者の年齢構成を見ると、65歳以上が上がっているのに対して、60~64歳の人はむしろ下がっていたりします。これは、定年延長の影響か、あるいは団塊の世代の推移の影響がかなりあるかもしれません。それに関しても同じような推移が見られるということで、この高齢者に関してどのようながん検診を推奨するのかということに関しては、もう一度議論が必要ではないかなというところであります。
一方で、最後、43枚目ですが、ではお年寄りは一体がん検診に対してどう考えているのかということを、これはアメリカのデータですが、116人程度の70歳以上の方、経済的には割と恵まれていて、がん検診を受けるということに関してそれほど障害のない人たちに聞いているようですけれども、下に英語が書いてあるものの★のところをちょっとつまんで日本語化していますが、「私は、いかに不快な検査であっても死ぬまで検診を受け続ける」という人が77%います。「私は、医者が受けるなといっても、検診を受けることを考える」という人が43%います。「大腸がん検診は、すべての人が死ぬまで受けるべきである」と考える人が55%います。
ですから、高齢の方々は、かなり検診に関して肯定的な意見を持っているということは認識しておく必要があって、こういうことを背景に考えることも必要であるということだと思います。実はここに関しては、隣の中山先生が、日本における状況はどうなのかということを検討する研究班をされています。
最後に、がん検診はやればよい結果をもたらすとは限らない。あるいは、頻回に行うほどよいとも限らないと。ですから、不利益の部分をきちんと考えて推奨を出すことが必要であるということだと思います。
以上です。
○大内座長 大変詳しいデータの提供をありがとうございました。
皆さん、何となくわかってはいても、具体的な中身について今回さらにアップデートされまして、米国の前立腺がん検診について最新のタスクフォースの推奨、グレードが変わったことも書き込まれておりますので、ちょうどレビューをするにはよかったのかと思います。
この不利益について、さらにこれから確認作業を行いますので、次の資料5と6、「がん検診の現状について」と「がん検診で推奨されている年齢の国際比較」につきましては、事務局から説明願います。
○事務局(田中) 資料5「がん検診の現状について」を説明いたします。
資料5の2枚目のスライドに、がんの年齢階級別罹患率をお示しします。
大腸がん、胃がん、肺がんについては、40歳以降、年齢とともに罹患率が高くなる傾向にあります。
一方、乳がんや子宮頸がんについては、大腸がん、胃がん、肺がんよりも、若い年齢層で罹患のピークを迎えることがわかります。乳がんについては、40~50代の年齢層がピークで、以後、年齢が高くなるにつれて、罹患率が低下していきます。また、子宮頸がんについては、30~40代の年齢層がピークで、以後、乳がんと同様、年齢が高くなるにつれて罹患率が低下することがわかっています。
3枚目のスライドですが、現在、国の指針で定めるがん検診の項目は、胃がん検診については、胃内視鏡検査または胃エックス線検査を50歳以上に対して2年に1回。
子宮頸がんについては、子宮頸部の細胞診を20歳以上に対して2年に1回。
肺がん検診については、胸部エックス線検査及び喀痰細胞診を40歳以上に対して年1回。
乳がん検診については、マンモグラフィーを40歳以上に対して2年に1回。
大腸がん検診については、便潜血検査を40歳以上に対して年1回実施することとしております。
続いて、4枚目、5枚目のスライドに、がん検診の受診率をお示しします。
4枚目のスライドのとおり、がん検診の受診率については、全てのがん種において目標値を50%としておりますが、現時点では目標値に達しておりません。
5枚目のスライドには、各がん検診の受診率を年齢階級別に示しております。胃がん、大腸がん、肺がん検診については、40歳以降いずれの年齢層でもある程度の受診率を保っていますが、一方で、子宮頸がんや乳がん検診においては、40~50代をピークに、年齢とともに受診率が大きく低下しています。
続いて、6枚目、7枚目のスライドですが、地域保健・健康増進事業報告をもとに作成した、各がん検診における「がん発見率」のグラフをお示しします。
まず、6枚目のスライドですが、胃がん・大腸がん・肺がん検診における「がん発見率」を「初回」、「非初回」に分けてお示ししております。地域保健・健康増進事業報告における「初回」とは、過去3年間にがん検診の受診歴のない者、「非初回」とは、過去3年間にがん検診の受診歴のある者と定義されています。
いずれのがん種においても、「非初回」の受診者における「がん発見率」は、「初回」よりも低く、年齢ととともに「がん発見率」が高くなることがわかります。
一方で、7枚目のスライドに移りますが、子宮頸がん・乳がん検診においては、胃がん・大腸がん・肺がん検診と異なり、「非初回」の受診者における「がん発見率」、緑のグラフになりますが、年齢が高くなるにつれてむしろ減少あるいは横ばいの傾向にあることがわかります。
最後に、8枚目のスライドに、各種がん検診における精密検査受診率をお示しします。
これも、受診率や「がん発見率」と同様、がん種ごとに傾向が異なりますが、乳がん、胃がん検診については、40歳以降、いずれの年齢層においてもある程度の精密検査受診率を保っています。
一方、子宮頸がんや大腸がん検診については、一定の年齢を境に精密検査受診率が低下する傾向にあります。
資料5についての説明は以上です。
続いて、資料6「がん検診で推奨されている年齢の国際比較」について説明いたします。
資料6は、各がん検診で推奨されている年齢を国別でまとめたものです。
がん検診で推奨されている年齢の範囲は、国や加入保険の種類等によっても異なりますが、資料6に示す国の多くは、がん検診で推奨する年齢の範囲を定めています。
一方で、例えば、オーストラリアの乳がん検診について確認したところ、40~49歳の人や、75歳以上の人も受診できるとされております。
推奨されている年齢の範囲外であってもがん検診を受診することは可能であり、推奨されている年齢の範囲外であるからといって受診できないわけではないということです。
資料6についての説明は以上です。
○大内座長 ただいま、第2の議題の中で、資料を説明いただきました。
ここから議論を始めたいと思いますが、先ほどの祖父江構成員からの資料4の中でもなかなか数値化するのは難しいのですけれども、この過剰診断、あるいはHarms、不利益に関して幾つか研究の紹介がありました。数理モデルを使った研究などの御紹介がありまして、対象年齢については、Benefit-to-harmのデータが出されていまして、これで見ても、乳がん、それから前立腺がん等のデータがあります。
多分、祖父江構成員の大事な点は、37枚目のスライド、利益と不利益の変化のイメージ、これは年齢によって変わることかと思います。
資料2の「がん検診の基本条件」に戻っていただきたいのですが、この中で、基本条件の7に「総合的にみて、検診を受けるメリットがデメリットを上回ること」とありますが、これがなかなか計算が難しかったわけですね。ところが、数理モデル等を開発することによって、ある程度わかってきたということもありますので、日本においてもこれから最新のデータを提供していくことが可能になります。
祖父江構成員の38枚目のテーブルに乳がん、39枚目に子宮頸がん、40枚目に大腸がんの対象年齢があります。国際的に見て、日本だけが年齢を決めていないということで、十分な検討がされていないということが言えるということです。
一方で、数理モデルについては、このたびから構成員として加わっていただきました中山富雄構成員が、今、厚労科研の研究班を導かれておりますので、先生からまず一言、現状についてお話しいただけますか。
○中山構成員 中山でございますけれども、今、御紹介のありました研究班については、全部の臓器を横並びにするほどのマンパワーがございませんので、一応大腸がん検診については現在やっている最中で、何とかことしの前半ぐらいには一種のデータという形で提示できるかと思って、現在、大忙しでやっている最中でございます。
○大内座長 厚労科研の研究班、3カ年の中の2年目に入っているということを受けていますが、この検討会においても中間的に御報告いただければと思います。
それで、基本に立ち返って、この検討会で今年度どういう進め方をするかということですが、事務局からも提案されています、資料5の3枚目のスライドです。
これは対策型検診、がん検診の指針となって位置づけられているものですが、このスライドの5つのがん検診に関する対象者です。この点をどのように推奨を変更していくかということが本検討会で求められることだろうと思います。
事を議論するに当たりましては、繰り返しになりますけれども、資料2のがん検診の基本条件について、必要に応じて立ち返って検討を重ねていくということを考えております。その点から、構成員の皆様にも忌憚のない御意見をいただければと思っております。
では、早速始めます。いかがでしょうか。井上構成員、どうぞ。
○井上構成員 意見というより質問です。祖父江構成員か中山構成員に、御存じだったら教えていただきたいのですが、諸外国の検診年齢の見直しというのは、最初からエビデンスをきちんと確認してこの年齢に持っていって、その後見直しされていないのか、かなり頻繁に見直しをされているのか、その辺の事情を教えていただけたらありがたく存じます。お願いいたします。
○祖父江構成員 私は全体を網羅しているわけではないですけれども、一般に、諸外国におけるがん検診の進め方は、まず最初に年齢をかなり限って導入するというのが普通ですね。
イギリスなんかの乳がん検診ですと、最初は50~65歳まででしたかね。非常に限られたものでやって、徐々に広げていくという対応をするのですね。それは、最初にやるときに、まずは有効性がきちんと確立されている年齢に限ると。それから、ある受診率を想定して、その国におけるキャパシティーが、検診を提供できる能力がどの程度あるかで決めるのですね。受診率を相当高く設定することが諸外国では通例であって、日本のように20%とか30%とかではなくて、80%ぐらいのことを考えてキャパシティーを考え、年齢層を限定して開始するのが通常だと思います。
我が国はそれが最初の出発点が40歳以上、上限なしということでスタートしていますので、そこのスタート地点がちょっと違うというところが、年齢をどうするかに関して、議論の進め方がやや難しくなっているということだろうと思います。
○大内座長 ほかに御質問はありますか。松田構成員、どうぞ。
○松田構成員 祖父江先生に今、イギリスのがん検診の御紹介をいただいたのですけれども、イギリスの大腸がん検診はたしか60歳代のみで始めたと理解しています。それが、今、74歳まで拡大をされたのですが、最初に70歳代を対象にしなかった理由は、オファーをしても受診する割合が低いからだと書いてあったと思います。ですから本来効果はあるのだけれども、受診勧奨しても受けない年齢層を最初は対象にしなくて、様子を見ながら今では60~74歳に拡大されています。 そこで、祖父江構成員にお聞きしたいのですが、日本は上限なしで始めてしまったので、年齢の上限をどうしたらいいか今後議論しないといけないと思います。諸外国では対象年齢の上限をどのように決めているのでしょうか。
例えば大腸がんでいうと、高齢になればなるほど罹患率は高くなりますし、大腸がん検診の死亡率減少効果ははっきりしています。
ただし、高齢になると受診率が低いですとか、精検受診率が低くなるということもあるでしょうし、平均余命が短いという理由はあると思うのですが、例えばアメリカやイギリス、ほかのEU諸国は、何に重きを置いて上限を設定しているのか教えていただけますでしょうか。
○祖父江構成員 アメリカのリコメンデーションを見ると、多くの場合が余命が10年以上期待できる人ですね。期待できない人は勧めませんと。ここは、一律の年齢ではなくて、個々の人の状況なのですね。だから、ポリシーとして、ある年齢層をカバーしますというときは、図にあるように割と狭目にやるのですけれども、個々の人の判断でいくと、もっと上限のほうは個々の人で決めるということですね。
だから、高齢側はもう任意型で、個々の人の判断で決めて。対策であるときに関しては、ある程度決めるにしても、任意型で受けられるという部分を残しておくということが対応として考えられるということではないですかね。
○大内座長 先ほど、事務局から説明のあった資料6ですけれども、例えばオーストラリアで、対象年齢がほぼ決まっているのですが、それ以外の年齢の方でも希望された場合には受診可能であるということは確認しています。
アメリカの場合は保険制度ですね。日本とは相当に違いますので、そういった観点でこのタスクフォースの推奨グレードというのは大きな意味があるわけですが、日本の場合は出発点が違っていますので、その点、海外と同じ角度から見るわけにはいかないのですが、ただ、参考にすべき推奨グレードだと思います。
こういった観点で議論が深まっていくことを期待したいのですが、この検討会は、健康局長の諮問検討会でして、保険局が入っていないのですね。ただ、かねて保険局の課長クラスの方には、オブザーバーで参加していただきたいということをずっと申し上げていたのですけれども、きょうはたまたまなのでしょうか。保険局の方はいらっしゃらないので、この議論は多分連動しますね。どうしましょう。対象年齢のことを考えた場合には、いずれそういった調整も必要になってくるのでしょうか。
○がん対策推進官(丹藤) こちらから1つ伺っておきたいのですけれども、がん検診をしたい市町村となっていて、今、座長がお尋ねの、具体的には何が保険局の事業に対応するのかというところを。
○大内座長 後期高齢者に対する、保険局主体のいろいろな検討会がありますね。そういったものとの連動を図る必要があるかないかということだけです。
がん検診に関しては、この健康局のカテゴリーで、例えば検診の無料クーポン券の提供、それから、コール、リコールに関する費用とかいったものが担保されていることはわかっており、その対象年齢もわかっております。
ですので、例えば75歳以上については入っていないのですけれども、69歳までカバーされているので、その点は問題ないのですが、今後、これを広く議論する場合に、ほかの関係するところまで深める必要がありますかということです。
○がん対策推進官(丹藤) いずれにせよ、この検討会では、がん検診の部分について御議論いただくということで。
恐らく、高齢者の医療とか提供体制など、健康確保の観点から、保険局だけではなくて、老健局ですとかさまざまなところも関係してくると思いますので、そういうところと連携しながら、ただ、この検討会ではがん検診の部分について、きょうですとメリット・デメリットを考えながら、上限についても一つ検討をいただくということでよろしいかと思います。
○大内座長 これを尋ねた理由は、祖父江構成員がある会で指摘されていて、年齢に関する検討会を含めてどうするかという、最初の方向について確認をとっておきたかったからなのですが、祖父江先生のほうからコメントを。
○祖父江構成員 がん検診でなく、例えば特定健診の場合にどうして年齢が決められているかというと、40~75歳の年齢層に対して健診を提供しますと。保険の制度が異なるので、後期高齢者はまた別の枠組みでとなっていますよね。
がん検診の場合、単独で後期高齢者に対してがん検診をするべきかするべきでないかというようなことを考えるよりは、後期高齢者の人の総合的な健康問題の中で、どんな保健サービスが必要であって、その中でがん検診というのはどの程度の必要度があるものなのかということを討議したほうが、このがん検診だけを取り上げてどこが年齢層として適切なのかということを判断するよりは、むしろ具体的に決めやすいのではないかということです。
ですから、高齢者になればなるほど、がんの問題以外の運動障害ですとか、ほかの病気、認知症とかですね。そういったものの問題をどう対応するのかのほうが、がんの問題よりもむしろ大きいのではないかという観点での判断がどうしても必要になってくるのではないかということです。
○大内座長 総論的な方向性についての確認ということで、いきなりで申しわけなかったのですが、多分、皆さんもそれは頭の隅に入っていて、どこまで議論できるのかなということは、道永構成員も心配されているのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○道永構成員 確かに今、祖父江構成員がおっしゃったように、高齢者、後期高齢者については特に、がんだけではなくてほかの疾病が非常に問題になってくるので、先ほどのお話と同じなのですが、メリットとデメリットを考えて、年齢を区切るというよりも、個々の方が検診を受ける際に、例えば検査そのもので不利益を受ける可能性があると思うので、そういうことを加味して年齢は考えなくてはいけないのかなと思います。老健局や保険局とのすり合わせはとても大事だと思います。
○大内座長 いかがでしょうか。
○がん対策推進官(丹藤) まさに、祖父江先生や道永先生がおっしゃっていたとおり、それぞれの年齢に応じて、一体何が一番適正か。その中でがん検診がどこまで、それぞれの年齢の中で必要なのかというところを議論いただいて、そこが果たしてどこまでメリットがあるのか、デメリットがあるのかということを検討していただきたいと。
加えて、年齢以外についても、リスクが恐らくありまして、それが例えば今回議論いただく偶発症であったり、それから、さまざまな観点から多分議論が必要だと思っていますので、そういう意味で幅広い御議論をいただきたいと思っています。
○大内座長 今回、今年度初めてですので、がん検診のあり方そのものなのですが、たまたま対象年齢のことが話題になっていますけれども、適正な検診方法、それから年齢も、濃淡の差も含めて全体的に議論いただきたいというのが希望でございます。
ほかに、御意見はありますか。どうぞ。
○福田構成員 祖父江先生に教えていただければと思うのですけれども、利益と不利益のバランスを考えるのに、定量的にやる研究の試みというものを御紹介いただいて、その中で比をとるというBenefit-to-harm ratioによって死亡が避けられるのと、Overdiagnosis、過剰診断の数で割るという指標なのですが、これは過剰診断で御提示いただいていますが、ほかの指標でもこういうものをやられているものなのですか。これは過剰診断で特にこういうものをされるのですか。
○祖父江構成員 ほかのというのは、例えば偽陽性の数で比をとるとかですか。
○福田構成員 例えばですけれども、先生の37枚目のスライドのところで、年齢が高くなると過剰診断とかが課題なので、そちらのほうからいきますけれども、左側の例えばいつ始めるとかであれば、むしろ左側にあるようなものをとるという考え方もあるのかないのかよくわからないので、そういう指標もあるのでしょうかという説明を。
○祖父江構成員 だから、今までこういう直接的に比をとるというようなことで、単純にこう考えることは余りなかったと思うのですけれども、要するに、不利益・利益の大きさを代表できるのがこの死亡減少と過剰診断であると考えてこうやっているのではないかと思います。
ただ、本当にそうなのかと言ったら、ほかの大きな不利益というのもあるわけで、これはちょっと単純化し過ぎているということは十分考えないといけないとは思います。
○福田構成員 その点はそのとおりだと思います。
もう一点、仮にその過剰診断でこの比を出したとして、どのくらいだとどうだというのはあるのですか。例えば、それこそ先生のイメージだと、利益のほうが上回っている的なのというのが、数が大きいほうがいいのかなとは思うのですが。
○祖父江構成員 それはもちろん数が多い方がいいですね。どの程度の数だと許容できるかというのは、これはまだ議論をするべきところだと思います。
○福田構成員 余り研究でもそこは幾つ以上ぐらいを目指してやるべきかというのもないのですか。
○祖父江構成員 だから、QALYみたいな、1QALY当たり幾らとかいう相場観はまだないと思うのですね。試みの段階だと思います。
○福田構成員 ありがとうございます。
○大内座長 福田構成員のほうで、費用対効果も含めた上で、何か御自分でお考えはありますか。
○福田構成員 そういう意味では、こういうのを考える上で、例えば諸外国でも費用対効果みたいなことを考えているようなところはないのかなというのもあれなのですが、自分で調べればいいことなのですけれども。研究として年齢に応じてというのはあったりはするのですけれども、なかなかそれで線を引くというのは難しいなと思うのですが。
○大内座長 先ほど紹介しましたように、中山富雄先生のほうで、今、厚労科研は動いていまして、胃がん・大腸がんが対象疾患でありますが、数理モデルでしょうか。
○中山構成員 マイクロシミュレーション。
○大内座長 マイクロシミュレーションを使った何百という、その中で幾つかにだんだん絞り込んで出される方向にあると伺っております。
ですから、そういったデータも見させていただきながら、適正な検診対象者を絞り込んでいければと思うのですが、いかがでしょうか。椎名構成員、どうぞ。
○椎名構成員 いろいろお示しいただいた中に1つ、がん検診のところの精密検査受診率、資料5の8ページになりますけれども、実際に私どもがこのがん検診を対策型として進めていく中で、特にこの大腸がんについては、どうしても高齢になると罹患される方は多いはずなのに、精密検査をお受けにならないという方が、年齢が上がれば上がるほど上がってきているという傾向です。
これは恐らく、精密検査自体に対する御理解がないままに便潜血検査だけを受けたということもあったり、あと、かかりつけの先生に御相談したら、やはり精密検査にもリスクがあるからそこまではというようなお話もあったりするのかと思います。
ただ、いざとなって初めてわかるみたいなところがあって、実際にデメリットがあるというのは意外に理解されていないところだと思っております。
例えば、東京都が昨年の2月にウエブで調査をした、都民意識調査というがんに関する意識調査の中に、がん検診にはメリットとデメリットがあることを知っていますかという質問がありまして、そこで知っているという方が32%、知らないが68%ということで、恐らくデメリットについてはほとんど意識されていないのかなというような実態もある中で、年齢を適正にお勧めするというものもある一方で、やはりデメリットについてもっと知っていただく工夫が重ねて必要なのではないかと思われました。
以上でございます。
○大内座長 国の実態を見ても、まさに今、椎名構成員がおっしゃったとおりですので、きょうの議論の大半はデメリットについての資料を提供いただきました。
改めてきちんと整理しなければいけない。それから、国民皆さんにがん検診の利益と不利益については、丁寧に説明する必要があるだろうと思っております。
椎名構成員が御指摘の大腸がん検診の精密検査受診率が低いのは、前から指摘されておりまして、今、おっしゃるように、精検になると内視鏡検査になることを御存じない方がいらっしゃるのではないかということも一理かもしれませんが、やはり大腸は内視鏡になりますとハードルが高くなってしまっていて、精密検査受診率が7割を切っています。それが大きな問題でして、前に構成員だった斎藤博先生がその点を詳しく調べられて、精検を受けられた方と受けなかった方で、死亡率に大きな差があったというデータもあります。
松田構成員、いかがでしょうか。
○松田構成員 今、座長に御紹介いただいたのは斎藤班の多施設共同研究でまとめたものです。大腸がん検診で要精検になったにもかかわらず精検を受けないと、精検を受けた人に比べて約4倍ぐらい大腸がん死亡率が高くなるという結果でした。ですから、椎名構成員がお話しになったように、便潜血が陽性になれば必ず精検を受けないといけません。最初から精検を受けられないようなと言うと怒られますが、例えば精検を受けられない、そして治療も恐らく難しいような高齢の方たちを片っ端から大腸がん個別検診に誘うことは非常に問題があるということも私たちはよく理解をしないといけないと思います。
○大内座長 ほかにいかがでしょうか。中山構成員、どうぞ。
○中山構成員 椎名構成員のおっしゃったことと同じことなのですけれども、対象年齢とかのことに着目して、検診を受診されている意識の高い方8名ぐらいにインタビューをしたのですけれども、やはりメリットのことはすごく勉強されているのですけれども、デメリットというのは今まで1回も聞いたことがないと。
例えば、内視鏡をすると腸に穴があくでしょうと言うと、ああ、テレビで見たことがあります、変なお医者さんに当たればそういうことも起こるでしょう。偽陰性って御存じですか。変な先生に当たったら見落としがあるのでしょうと、完全に医療事故というレベルでそういうのはあるということは知っているけれども、御自分が受けられる検診で御自分に降りかかってくる可能性があるでしょうと言った途端に、私にはそんなことは起こり得ませんとおっしゃる方がほとんどで、もう何か信念のようになっているところがあると思います。
この場ではメリットとデメリットを勘案してというようなお話だと思いますけれども、実際は国民におろすときには、途中の議論の根底にある部分が全部吹っ飛んでしまって結果だけになってしまう可能性があるので、うがった理解を国民に与えてしまう可能性があるから、やはりメリットとデメリットをどうやって国民に伝えるのかで、そこにこういう構成員や国が非常に着目していて、困っているのでその問題が起きないように対応を考えているということを議論の中心にぜひ据えておきたいと思います。
○大内座長 デメリットについて、しっかりとデータを把握した上で、それも国民の方々に伝える、理解していただくことですね。
偶発症に関しても、いろいろながん検診におけるデータもまとめられつつありまして、多分次回以降に御提示されると伺っていましたので、後で今後の進め方について議論したいのですが、ほかに皆様から御意見は。どうぞ。
○松田構成員 先ほどの件でちょっと補足をさせていただきたいのですが、大腸がん検診では精検受診率が低いのが問題です。がん検診の受診形態には集団検診とかかりつけ医で受ける個別検診というものがあって、個別検診が全国では過半数を超えているのですけれども、その精検受診率が非常に低いのが問題になっています。
以前、私は福井県で調べたのですが、集団検診の精検受診率は仮に80歳以上であっても決して低くないという状況にありました。しかしながら個別検診では80歳以上の方の精検受診率は非常に低い。それは、自ら集団検診を受けようという人たちはかなり意識が高いために精検にも結びついているのですが、無理やり勧められて受けている個別検診の場合には精検を受けない方が多いという傾向があるのではないかなと想像しています。
ですから受診対象年齢で上限を切って、それを超えた人たちは一律に検診の機会を与えないということではなくて、ある年齢になれば、がん検診を受ける受けないはその人の判断に任せ、受けたい人たちの機会は奪わないことが重要だと思います。ただし、がん検診に携わる者ががん検診を勧める際には年齢を考慮すべきだと、大腸がん検診を見ていてもそう思います。
○大内座長 ほかに、御意見はありますか。
きょうはデメリットを中心として、がん検診のあり方に関しての総論的な意見を皆さんからいただいているのですが、いかがでしょうか。ほかにございませんか。
では、今後のこともありますが、議題(3)の「がん検診の今後の議論の進め方について」に移ります。
資料7にありますが、事務局から説明を願います。
○事務局(田中) 事務局から、資料7「今後の議論の進め方(案)」について、説明いたします。
資料7は、本検討会の今後のスケジュール案であります。次回以降の検討会では、今回構成員の皆様からいただいた御意見を整理するとともに、先ほども話にありましたが、検査に伴う偶発症等のがん検診の不利益に関するデータも提示する予定であります。
がん検診の基本条件と、がん検診の利益・不利益に基づき、どのような方にがん検診の受診を推奨していけばよいのかという観点から引き続き御議論いただき、最終的には平成31年度以降の指針の見直しを見据えて、年度内に本検討会の議論の取りまとめを行いたいと考えております。
資料7についての説明は以上です。
○大内座長 今後の議論の進め方の案が示されました。本日の議論を踏まえた上で、次回以降さらに検査の偶発症等、あるいは厚労科研研究班の報告等を含めて、幅広く情報を共有した上で、適切ながん検診のあり方について御議論いただきます。
皆様から御意見があれば伺いたいのですが、スケジュール的に申しますと、まずこの1年間しっかりと議論いただいて、恐らくは来年3月までに中間報告が出せればと思っています。その上で、今、事務局から話が出ましたように、31年度に国としての指針の改定が必要かどうかの判断が求められると思いますが、そこに反映できるよう努めていかなければいけないと思っておりますが、いかがでしょうか。この方向でよろしいですか。どうぞ。
○祖父江構成員 本来なら、対象の年齢を決めるのに、研究班が出しているあるいは国立がん研究センターが出しているガイドラインの中で、推奨が年齢別に構成されているものが一番よいわけですね。
U.S. Preventive Services Task Forceなんかはある程度年齢別に推奨グレードを決めていて、これを見て、アメリカの場合は公的な機関というよりは民間の保険会社かもしれませんけれども、年齢に関して推奨を変えて検診を提供するということができますけれども、今、日本において、検診ガイドラインとして年齢別にグレードを変えているというわけではないのですね。
胃がんに関しては、50歳という年齢区分を提示し、さらに検診間隔に関しても2年に1回ということをガイドラインの中で記述をしましたけれども、これも十分に証拠があってということよりも、ガイドラインの中にそういうことを言及しないとなかなか議論が進まないということもあって、勇気を持ってというか、それまで余りしていなかったことをやったわけですが、これはガイドライン作成の過程でこういう試みはどんどん進めていくべきであると思うのですけれども、タイムスケジュール的にはこれは時間がかかるわけですね。この年内にガイドラインを全部更新して、年齢別に推奨を求めろと言ったって、それはちょっと無理ですね。そこの本流ではないところで、年齢ごとに推奨グレードを決めるということを、ここの検討会で、本流のような、証拠を積み上げてBenefit-harmバランスでの推奨の決定というのはなかなか難しいと思います。
だから、リスクベネフィットバランスだけでない要因ですね。そういうものを加味した上での、指針に反映させる年齢区分はどうなるのかということを検討するということが重要なのであって、そこのところを割と幅広く検討するということが重要ではないかと思ったりします。コメントです。
○大内座長 祖父江構成員が言われたのは、資料4の41ページ、U.S. Preventive Services Task Forceの推奨グレードをイメージしながらおっしゃられたと思うのですが、米国のこのタスクフォースの推奨グレードの決め方については、皆さん御存じかどうか。NIHにAHRQ (Agency for Healthcare Research and Quality)という全体を統括する部門があって、実はガイドラインの策定に当たっての根拠を検証する作業グループがその都度設置されます。それがEvidence-based Practice Center、EPCですね。例えば2009年に40歳代へのマンモグラフィー検診がBからCに変えられたのは、Harmsが大き過ぎるということで、Number Needed to、先ほどScreenと言いましたけれども、原文の論文ではNumber Needed to Invite、NNIで、例えば1人の乳がん死を予防するのに、50歳以上であれば600~800人ですが、それが40歳代だと1,300人。正確な数字を覚えていませんが、その差が600ほどあるということで、BからCに格下げされたわけです。
そういったレビューを行う実務担当部がアメリカには存在している一方で、このがん検診に関する検討会は、そういった部門を持っておりません。皆さんの学識といいますか、そういった中ですり合わせるような形しかとれないのですね。
多分、祖父江構成員が言いたいのは、そういった機能を本来は国として持つべきなのではないかと私も思っているのですが、なかなかすぐにとはいかないと思いますので、やはりいろいろな研究班のデータを使わせていただきながら、とりあえずはこの中でやるべきではないかというのが私の考えではあります。皆さん、いかがでしょうか。これは担当課長に聞かなければいけないのでしょうかね。
○がん・疾病対策課長(佐々木) がん・疾病対策課長の佐々木です。
まず、今の論点につきましては、検診の市町村の実施する場合の指針をつくること。これは私ども厚生労働省健康局が健康局長通知の形で出しております。その意味では、出口の一つとして、市町村に対してどのような指針を示すのか、これは私ども厚生労働省の仕事ですし、そのために先生方に今回御議論を改めてお願いしているところです。
この出口の一つに対して、当然その過程において膨大なレビューが必要になるわけです。この検討会でお願いしていることの一つは、まさにさまざまな論文もあれば、また、実績のデータ、これをどう評価をするのか。これはこの検討会にお願いしていることです。
さらに、そのもとになるエビデンスづくりにつきましては、私どもで申し上げますと、厚生労働科学研究もありますし、また、行政の仕組みで申し上げますと、初めは独立行政法人でしたけれども、今は国立研究開発法人になりました、国立がん研究センターの中期目標等の関係においてやりとりをしている。そういう中で、ある意味でこの構造化をしているところです。
ですので、今の大内座長の御質問、またその発端となった祖父江構成員の指摘につきまして申し上げますと、今回は、まずは来年、平成31年度以降の指針の見直しに向けてというのが一つの出口にはなりますけれども、この資料7の一番下から1つ上の行で、議論の取りまとめというのが書いてあります。これはつまり、指針の見直しに直結するものもあれば、先ほど祖父江構成員の御指摘にあったように、今回は間に合わないけれども、今後のことを考えると、こういうエビデンスづくりを進めていくべきではないか、そういった議論もこの検討会の中でなされ、そして、最終的に合意が得られるものであれば、今、申し上げたような形で、今回は間に合わないけれども、その先はどうなのか。また、どういうエビデンスづくり、また調査研究をしなければいけないのか、調査をしなければいけないのかといったことをあわせて検討いただければ、先ほどの資料7で田中から御説明申し上げた内容になるかと思います。
長くなって恐縮ですけれども、先ほど大内座長を中心とした御議論の中で、そもそもこのがん検診をどう考えるかということがありました。がん検診だけではなくて、もっとトータルに人を考えたときにということの御指摘がありました。それに、最後に1つだけ言及したいと思います。
先月になりますけれども、4月12日に経済財政諮問会議という会議が政府内にございます。その中でこの4月12日に私どもの厚生労働大臣の加藤から提出した資料の中で「健康寿命延伸に向けた取組」という資料を出しております。その中で、がん対策につきましては、具体的な方向性として、個別最適化されたがん検診の開発推進を進めますと。もう一つ、受けやすいがん検診の体制づくりを進めますということを述べています。その上で目指す2040年の姿として、個々人に応じた最適ながん治療、もちろんこのベースになる検診が受けられる。こういうことを申し上げて、資料として提出しております。
何が言いたいかというと、今回、昨年の3月の本検討会での合意もありましたので、表現型としては年齢ということで御議論いただいているわけですけれども、先ほどの御議論の中でもあったとおり、例えば年齢という表現型のものであっても、もしかしたらそれは社会環境の変化に伴ってのものかもしれない。遠い将来の話かもしれませんが、個別化・最適化されたがん検診というのも、その先に想定しています。
繰り返しますけれども、今回は年齢という切り口で提案をしましたけれども、その根っこにあるのは、そもそもがん検診を受ける際にどういう要因を考えていかなければならないのでしょうか。そのことを今回、来年までの間にいろいろ御指摘、御検討をいただきたいということを申し上げて、ここも直接の御指摘に対してつけ加えた部分もありますけれども、この検討会、来年に向けて、大内座長を初め、構成員の皆様にお願いしたいことは以上でございます。
○大内座長 大変心強いコメントをいただきまして、出口としてはがん検診指針の改正というくくりなのですが、その中で、年齢階級別のリコメンデーションの強弱ですね。そういったことまで踏み込めなくても、附帯事項的な形で書き込むことも可能ではないかということの可能性ですね。
今までも、検討会の中間報告においては、指針に反映されなくても、この検討会の報告等の中に、「なお」とか「ただし」としての附記事項がございました。それが、5年、10年たつと生きてくるというか、新たな大きなトライアルに繋がり、メカニカルに動いてきたことも事実ですので、そういった観点から進めていければと思います。
国立がん研究センターの位置づけ、それから、行政的な立場等もございますが、本検討会においては、幅広い視点で御議論いただきたいということでございます。
よろしいでしょうか。何か皆様方からほかに御意見はございますか。
がん検診は新たな時代に突入かなと思います。先ほど、佐々木課長が触れられました、健康寿命の延伸に関して、いわゆるがん検診の今後のあり方についても4月12日にある程度議論されたということです。個別化というのも避けて通れませんし、それから、受けやすさですね。そういった観点から、どのような改定が必要なのか、2040年に向けて動き出したということですので、幅広く検討できればと思っております。
議論はここまででよろしいでしょうか。では、マイクを事務局に戻します。
○がん対策推進官(丹藤) 本日は活発な御議論をありがとうございました。
次回の検討会の詳細につきましては、また調整の上、御連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
○大内座長 では、本日の検討会をこれで終了いたします。構成員の皆様には、御協力ありがとうございました。
 

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