第9回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和2年9月30日(水) 10:00~12:00

場所

労働委員会会館7階講堂
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. (1)職場における化学物質等の管理のあり方について
  2. (2)その他

議事

○化学物質対策課長補佐 少し定刻より早いのですが、皆様おそろいですので、第9回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を開催いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日もコロナ対策ということで、一般傍聴席は設けておりません。マスク着用で御発言をお願いしたいと思います。それでは、城内先生、よろしくお願いいたします。
○城内座長 分かりました。皆様、おはようございます。御参集いただきまして誠にありがとうございます。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 本日はお手元のタブレットに資料を3つほど入れております。前回と同じ議題ということですが、資料1として、一般消費者向けの製品の取扱いについて、資料2として、作業環境管理、作業管理及び健康管理の関係について、資料3として、今後の化学物質管理のあり方についてということです。それから、タブレットの下のほうには前回までの資料も併せて格納させていただいておりますので、御確認いただければと思います。
○城内座長 ありがとうございました。皆様、よろしいですか。それでは、議事に従って進めたいと思います。本日の議論は、前回の議論の続きということでお願いしたいと思います。まず、議事の1つ目、一般消費者向け製品の取り扱いについて、資料の御説明をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 資料1を御覧ください。資料1の1ページ、前回お示しした論点ということで、四角の枠囲みで書いておりますが、2つ案を示しております。ユーザー側から求めがあれば、ラベル・SDSを交付するというやり方、もう1つとして、特に求めがなくても、業務用に使用する可能性があるということで、ラベル・SDSの義務付けを広く行うという2つの案を示しております。その下に前回出された主な御意見ということで書かせていただいておりますが、特に、一般消費者向けまで広げますと、どこまでが対象になるかということで、広くなり過ぎるのではないかといった御意見が主にあったかと考えております。
前回の御議論を踏まえて、2、3ページ、少し整理をし直した案として、改めて事務局のほうから示させていただきたいと思います。まず、2ページの案マル1ですが、一般家庭用の製品については、そもそも危険有害性が高くないものが多いということで、そもそもこの検討会の議論の趣旨ということでも、一般家庭用の製品を対象にすることを趣旨として議論をしていたわけではありませんでしたので、そこをはっきりさせるという観点で、下線が引いてありますが、一般家庭用の製品、そのまま一般家庭で使用されることを想定して製造・輸入されているものを除外すると。それ以外のものについては、流通形態、例えば店舗で売るとか、インターネットで販売するとか、そういう売り方の形態で分けるということではなくて、業務用ということで製造販売されているものについては、労働安全衛生法に基づくラベル・SDS交付の義務対象とするという整理でいかがでしょうかというのが、案マル1です。具体的には点線で枠囲みしている中に書いております。医薬品、農薬、こういったものを除外するという解釈の所にカとして書いておりますが、一般消費者が家庭等において私的に使用することを目的として製造・輸入されている製品を除くという整理にしてはどうかというのが、まず案マル1です。1つ課題として、下の2つ目の○に書いておりますが、一般家庭用の製品なのかどうかということの判断基準が明確にできるのかどうかというのは、案マル1の課題ではあるかなということで書かせていただいております。
もう1つの案マル2は、3ページを御覧ください。前回の御議論にもありましたが、労働安全衛生法でラベル表示を義務付けている危険有害性があるような物質を、いわゆるカットオフ値以上の濃度で含む製品というものが、一般家庭にそのまま流通しているという状況はほとんどないのではないかという、仮にそういう仮定が成立するかどうかということです。もしそういう仮定が成立するのであれば、わざわざ一般家庭用と業務用と分けずに、裾切値以上でのラベルの義務付けをしたとしても、家庭用まで広く義務が広がるということにはならないのではないか。そうであれば、そういったある意味基準が少し曖昧になる可能性のあるものを設けずに、特定の危険有害性があるもので下限値以上を含むものについては、全てラベル表示・SDSの義務付けにしてもいいのではないかというのが案マル2です。以上が事務局からの御提案です。
○城内座長 ありがとうございました。一般消費者向けの製品について案を示していただいていますが、今日は案マル1でいくか、案マル2でいくか、大枠で方向性を決めたいと思っておりますので、御議論をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
○永松委員 案マル1、案マル2に関して、まず案マル2の、ラベル表示等が義務付けられている危険有害性のある化学物質を下限値以上の濃度で含有するような製品が基本的にはないという考え方ですが、GHSでいきますと、多くのものが1%を超えると表示が必要になっておりますし、実際には、それを超えているような一般製品、特に漂白剤とか、例えばエタノールもそうですが、そういうものは非常に多くあると思いますので、案マル2は現実的ではないのではないかと考えております。
○城内座長 そのほかはいかがですか。
○漆原委員 このマル1かマル2と直接は関係がないのかもしれませんが、ヨーロッパなどでは一般向けの製品においてもラベル表示があるのを見かけます。そういう意味では、EUからの輸入の場合は、ラベルが付いているのだろうということになると思うのです。この点について、ヨーロッパの場合、消費者向けの製品に対しても何らかの基準が別にあって、その基準に基づいてラベルを付けているのか、あるいはここで言うマル1とマル2のどちらの考え方で付けているのか、もし分かれば、お教えいただければと思います。
○化学物質対策課長補佐 城内先生のほうがお詳しいかもしれませんが、基本的にヨーロッパでは、業務用とか一般用に分けた仕組みにはしていなくて、恐らく一般家庭用の製品であっても同じルールの下で表示がされているというのが基本だと理解しております。
○城内座長 そのほかはありませんか。それでは、私からコメントをしたいと思います。GHSを導入するときからそうですが、この問題については、国内のメーカーで作っている製品は、実は私個人的には余り心配をしておりません。ただ、心配しているのは輸入品なのです。この議論がそのままいきますと、輸入品についても今までどおり何も網が掛からないという状況が起きます。例えば、日本では消費者製品には危険有害性のラベル、GHSに基づいたラベルを付ける必要はないので、それを外国の輸出業者は知っており、危険なものが入ってきています。実際、それで事故が起きています。ですから、私としてはその辺も考えて議論していただきたいなという思いがあります。例えば、日化協さん傘下の事業主さんはそんなに心配はないだろうと思いますが、輸入されたものについてどうするかという観点でも少し御議論いただければと思っています。
もう一点は、漆原委員から御質問があったのですが、日本の国内で売るときは消費者製品にラベルを付けなくてもいいけれども、欧州に輸出するときは日本の企業でも付けるということがあるわけです。そういうことを考えますと、日本全体の中でどうすべきかということは、国内事情だけではなくて、外国の事情も考えながらやっていかないと、かなり困難な事態も起きる可能性がありますので、その辺も踏まえて御議論いただくと有り難いと思うのですが、いかがですか。
○永松委員 確認ですが、例えば一般用品のものでも、家庭用品品質表示法というのがあって、これで表示するようになっていると思うのですが、基本的に輸入品もこれに従うべきものですか。これに従っていれば、例えば使用上の注意事項にハザードとして飲み込んだり、目に入った場合には応急処置をしなさいとか、あるいは用途外に使用しないということを記載しなさいと書かれているわけです。最低限のハザードと言いますかリスクについては、一般消費財であっても書かれていると思うのですが、その辺が輸入品はどういうふうになっているかというのを教えていただきたく。
○城内座長 私が調べた限り、ラベルについて家庭用品などはかなり限られた物質しか情報伝達の必要がないということです。あとは、今消費者もそうですし、労働現場もそうですが、かなり外国人がいる中で、日本独自のラベルシステムというのは、そんなに理解されていないのではないかという懸念もあります。
あと消費者製品の特徴ですが、日本の消費者製品というのは、注意書きは書いてあるのですがハザードは書いていないのです。それは多分、業界が消費者に過大な不安を与えないようにとか、いろいろなことで、注意書きは書いているのですが危険有害性についてはずっと表示をしてこなかったという事情もありますので、その辺も一緒に御議論いただければいいかと思います。
GHSを入れるということは、危険有害性情報も書かなければいけないし、少なくとも絵表示等がある場合については外国人も理解できるだろうというメリットはあるかと思っております。今は消費者製品というよりも、消費者製品が労働現場で使われた場合はどうするかということですが、同じように外国人についても少し考える必要があるかなというのも、観点としてはあると思います。
消費者製品全てについてラベルをしましょうという議論はここではしないので、案マル1か案マル2かどちらかでいきましょうということですので、そこに絞って考えていただければいいのですが、いかがですか。
○永松委員 会員さんの意見もありますので、まずは今回、案マル1の場合の懸念として書かれておりますが、悪質と言いますか、そういうケースに対してどうするのかというのが1つかと思いますが、やはり、なかなか全てのものを網羅的に網に掛けると言いますか、そういうのは現実には非常に難しいのではないかと思います。
今回の事故件数も年間数十件という御説明がありましたが、どういう化学品によって、どういう事故が起こっているということを、それを使う可能性のある事業者の皆さんにきちんと理解していただくと言いますか、そういう取組が現実的にはいいのではないかと思うのです。
先ほども申し上げましたが、網羅的に全てを網に掛けるのはなかなか難しいですし、また、どういう製品がどの事業者さんで使われているのかということも、非常につかみにくいと思うのです。そういう意味では、一般消費財で事業所で起きた事例について、より広く周知を図ることによって、注意喚起を徹底するということが必要ではないかという意見もありまして、是非、そういうことも考えていただきたいと思います。
○城内座長 今、網羅的というお話が少し出ましたが、事務局として、案マル1のカの物質の選定はどんなふうになるか御説明いただけますか。
○化学物質対策課長補佐 網羅的と言いますか、基本的には実際に国がGHSの分類をしていくときに、どういう危険有害性のレベルで対象にしていくかという判断によるかと思っていまして、のべつ幕無しにそこを広げていくということで別に考えているわけではなく、当然、労働災害の発生状況なども踏まえながら、どういった物質、特に危険有害性を伝達しなければいけない物質というのを選定していくことが基本になるのではないかと思います。GHSとそれが整合しているかという問題は、この際は置いておくとして、日本のルールとしてはそういう形でやっていくのが現実的ではないかと思っております。
先ほどの御議論の関係で補足しますが、最近、外国人が日本でも増えているのではないかというお話が、城内先生からもありましたが、一応、国のほうでもラベル教育も含めて、外国人向けの教育教材の開発をしたりしていて、なるべく外国人に対してもきちんと情報が伝わるような取組は進めているということは補足させていただきます。
○城内座長 網羅的ではないというお話ですが、永松委員、いかがですか。
○永松委員 このこと自体は網羅的ではないと思っています。すみません、言葉の使い方がまずかったのですが、例えば、今、事故が発生した所で使われた化学製品を把握するという意味での網羅的という言葉で、一般消費財全体に対してということではありません。
もう少し言わせていただくと、悪質な事業者を防ぐという意味で、まず実際に起こっている災害の事例からそういうものを特定していって、そういうもので、こういう事故が起こっているということを事業者の皆さんにしっかり知っていただくというのが重要かなと思っております。
○城内座長 ほかに御意見はいかがですか。漆原委員、何かありませんか、よろしいですか。
○漆原委員 マル1マル2案マル2の○の1つ目は、先ほどのお話でなかなか難しいと思います。○の2つ目について、業務用の製品を基本的に小分けにしているのみで一般消費者用として販売している場合であって、成分が下限値以上の濃度であればラベル表示という、そういうことなのだと思っています。一方で、自分も全ての製品を把握しているわけではないのですが、一般消費者用として薄めて濃度を下げて販売しているものと、業務用でないため、大量に必要なく、小さく小分けにしている製品があるのだと思うのです。それがどのぐらいの比率で世の中に存在しているのか、把握していないのですが、その場合のマル2の考え方というのは、薄めて濃度を下げていないが、小分けにしている製品は、どのような扱いになるのかについてお聞きしたいです。例えば、小分けにしているため量が少なく、その容器内の全ての成分をばく露しても健康に影響ない場合は表示は要らないのかどうなのかとか、そういうことまで想定はされているのか、お聞きできればと思います。
○化学物質対策課長補佐 永松委員が御懸念されている点とも重なるかと思いますが、確かに案マル2は細かい対応までは想定していなくて、おっしゃるように、濃度が低い場合と小分けで少量であるがゆえにリスクが低いのではないかという、両方の場合が考えられると思っています。案マル2でいった場合は、小分けにされて売っているものも含めて対象にするという案になりますので、そういう意味では、そこまで含めてカバーする選択肢ということで提案させていただいております。
○三柴委員 ピント外れだったら申し訳ないのですが、1点、事務局にお尋ねです。危険有害性はあるが、一般消費財だからラベルの表示等が免除されるということはあるのですか。
○城内座長 それは有害性に限られます。例えば、アルコールがたくさん売られていますが、アルコールの発がん性というのは飲んだときの肝がんとかを考えての発がん性です。今、私たちはアルコール消毒していますが、あれは発がん性ありと表示しなくてもいいよという取決めがGHSの中にあって、日本でもそういう場合には要らないでしょうというのは経産省から発表されていて、それは業者の方は皆ご存じだと思います。
○三柴委員 それは結局、これまでは仮に何らかの形で労働者がばく露するということがあったとしても、一般消費財だからということでラベルの表示なりが免除されていたということになるわけですね。
○城内座長 労働者用は免除にならないのですが、消費者製品については、そういうラベルというか、表示でいいですよという例外規定があるということです。
○三柴委員 ありがとうございました。
○明石委員 1点確認ですが、先ほど中村補佐が、輸入のときのラベル表示は一般用と変わらないとおっしゃられたと思いますが、それが私的に使用されるかどうかはどこで決まるのですか。
○化学物質対策課長補佐 ここでは余りはっきり書いていないのですが、1つ案マル1の懸念点でもある、輸入する業者なり製造する業者なりがどうやって業務用かどうかを判断するか、それをどう明示するかという問題について、1つ考えられるのは、今回、SDSに推奨する用途、使用上の制限を書くという方向になっておりますが、そこに「業務用」ということを明示していただくというやり方、これは1つあるのではないかと思います。
今の安衛法の場合ですと、輸入品の場合は製造元ではなくて、輸入している業者にラベル表示をする義務がかかるのです。それは例えば日本の商社であるかもしれませんし、別の業者かもしれませんが、国内で流通させるときの義務という形になりますので、例えば海外まで行って何か指導する必要があるものではないです。ですので、そこは城内先生の御懸念の点かとも思いますが、それは工夫のしようはあるかと考えております。
○城内座長 そのほかはいかがですか。
○中澤委員 一般消費者向けのほうについては、家庭用品の品質表示法の中でハザードは書いていないが注意書きはあるというお話ですが、逆にそちらの法律のほうから、例えば、何が家庭用品なのかとか、そういうような観点から攻めていったときに、そもそも安衛法のほうでも引っ掛かるとか、既にもうダブっているような製品というのはかなりあるものなのでしょうか。家庭用品品質表示法のほうでも注意書きが義務付けられている、一方で、業務用の、同じような物質を使っていて安衛法上でもSDSの交付が義務付けられているケースというのは、かなりあるものでしょうか。
○永松委員 例えば洗浄剤とか、そういうものは業務用でも使われておりますし、一般の御家庭でも使われておりますので、当然、業務用については、業務用関係の業界団体として業務用のSDS表示等はやっております。したがって、洗剤とか洗浄剤などについては両方で使われていると考えていただいたらどうかと思いますが。
○中澤委員 そうしますと、物質によっては既に2つの法律によって義務が果たされている、そういうものがかなりあるという理解でよろしいわけですね。
○化学物質対策課長補佐 少し補足させていただきます。実態の話とは別に、法令上は、一般消費者向けの製品の表示法の中で書かれているのは一般消費、要は一般家庭で使うような製品ということで、実はそこに例えば明確な線引きがあるかと言いますと、向こうもないわけですが、そことダブルでやらせるというよりは、今回の案マル1はそれに近いのですが、一般家庭用の製品はそちらで対応していただいて、我々は業務用に作っているものについてカバーを掛けると、そういうことになれば、整理としては一応つくのかなと思っています。
○城内座長 中澤委員の御質問について補足させていただくと、一般消費者用製品、特に石鹸洗剤工業会さんなどは、GHSラベルはもう自主的にやりましょうということで、環境有害性は除いていますが、きちんとGHSラベルをしてくださっているのです。いわゆる大手の企業さんは自主的にやってくださっているのですが、私が懸念しているのは、一番は輸入品です。それがディーラーを通して来た場合には、日本ではチェックする機能が全くないと。それはNITEとも話をして、やはりそうなんだということで、そこを非常に懸念しています。そのほか、御質問、御意見等ありますか。
○髙橋委員 私も的外れなことを言ったら大変申し訳ないのですが、先ほど城内先生から、輸出品については海外の制度に合わせて表示などの対応をしている製品もあるというお話がありました。そうであれば、欧米と同じようなことを日本でもやったらいいのではないかと思うのですが、何かできない理由はあるのですか。どうしてそれができないのか、そもそもの疑問としてあるのですが。
○城内座長 私の理解では、一番は法の立て付けが違うというだけなのですが。欧州ではGHSというのは流通に掛かっているので、消費者製品であろうが、労働現場であろうが、輸送であろうが、同じような体系の中で動いているところがあります。日本は本当に縦割りなので、GHSが日本に導入されたというのは、私の理解では、たまたま安衛法の57条がそういう立て付けだったというだけで、ほかの法律はそういうふうになっていないのです。表示をしましょうというのは、例えば毒物及び劇物取締法だと、物質を決めて、「医薬用外毒物」、「医薬用外劇物」と書きましょうで終わっているのです。そういう法律の立て付けが全然違うので、GHSを日本に入れようとすると、全体を変えなければいけないようなところがあるのだと思います。それは私の理解ですが、事務局からいかがですか。
○化学物質対策課長補佐 城内先生がおっしゃるとおりで、結局、ヨーロッパは流通規制を域内でやろうという統一のルールを作ったから、ああいうきれいな形でGHSが成立しているのだと思いますが、日本国内はそもそも流通規制をする法律がなくて、それぞれの領域ごとに法律があって、それぞれの法律の中での対応をするしかないというのが現実です。ここで御議論いただいているのも、労働安全衛生法という法律の下での情報伝達になってしまうので、労働者ということになりますし、一般家庭までこの法律でカバーするかと言いますと、そこは我々はなかなかできない領域だというのが実は現実としてあります。おっしゃるように、ヨーロッパのようにできたらいいのではないかという御意見はあると思いますが、今の仕組みの中ですぐにそういう形にしていくというのが、なかなか現実的には難しいのが現状です。
○城内座長 そのほかに御質問、御意見等ありますか。それでは、御意見をたくさん頂きましたが、案マル1で一応進めてみようということでよろしいですか。無理矢理で申し訳ありませんが、案マル1で進めるということで合意いただいたということにしたいと思います。
続きまして、議事の2つ目、作業環境管理、作業管理及び健康管理の関係についてに進みたいと思います。事務局から御説明をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 資料2を御覧ください。資料2はテーマが2つございます。まず1ページ目の「作業管理と作業環境管理について」ということで、前回論点としてお示しさせていただきましたが、なかなか作業環境の改善が難しいような事案があって、その結果、作業環境測定をしても第三管理区分が続いてしまうというような場合があるのではないか。こういう場合に、どのように対応していけばいいのかということで、御議論いただきまして、「そういう職場では個人のばく露管理というものを入れていかないと対応できないのではないか」、「保護具をきちんと正しく使うことが大事なのではないか」といった御意見を頂きました。
2ページ目、3ページ目に付けておりますが、前回の御議論も踏まえまして、実際に作業環境管理が難しい場面というのはどういうところにあるのか、時間がなかったもので大雑把なアンケートにはなってしまっていますが、今回、特定化学物質を使っている事業所の中で、特に有所見率が高くなっているような物質を使っている事業所にアンケートを取らせていただきました。大体、3,500事業所に御協力を頂けたわけですが、そのアンケートの結果を3ページ目に載せております。
第三管理区分が続いているような作業所があると回答を頂いた事業所の結果をまとめたのが、このグラフです。まず、使用している物質について、第三管理区分が続いているものについては特定のものに限定されていることが分かりまして、このグラフにあるように、マル2のジクロロメタン、マル3のトリクロロエチレンが、特に多かったという結果が出ています。
では、実際にどういう作業をしている作業場だったのかということですが、一番多かったのは、化学物質を使って洗浄・清掃する作業を行っている所です。恐らく密閉されていない所で、かなりの量の化学物質を使っているような作業場なのではないかと推察しています。
その下ですが、なぜ第三管理区分を改善できないのかということで、選択肢を設けてお伺いしています。改善する余裕がないということもあれば、2つ目、3つ目ですが、改善する方法が分からない、技術的に改善することが難しいといった回答も多かった状況です。そのほか、改善しようとすると品質に影響する、作業効率が低下するといった回答も、一定数ございました。
こういうアンケート結果も踏まえまして、4ページ目に論点として示しております。作業環境の改善が難しいというものの代表例として、2つほど挙げておりますが、洗浄や清掃など、作業内容の性質上、なかなか密閉化、自動化が難しく、かつ多量の化学物質を使用せざるを得ないような所で、濃度を低く維持するというのが技術的に難しいような所が、一定数あるのではないか。2つ目として、局排などで気中濃度を抑えようとすると、風を起こすことになると思いますので、作業効率が落ちたり、製品の品質に影響するような作業といったものも、一定程度あるのではないか。こういったものについては、今の作業環境中の濃度を必ず一定程度以下に落とすということが難しいのであれば、個人ばく露管理で、その作業に当たる方のばく露を防ぐという仕組みを入れていかなければいけないのではないか。これが1つ目の○です。
具体的に、そういったものを入れるとすると考えられるのはどういうことだろうかということで、2つ目の○に書いております。その作業者の個人ばく露測定を義務付けて、作業時間を制限するなりして個人ばく露量がばく露限界値を超えないように管理することが必要なのではないか。それから、実際に局排などを有効に設置できないということだと思いますので、保護具の選択・使用・管理をきちんとやっていくことも必要なのではないか。こういったことを実施していくのであれば、それを支える体制、従事する労働者の知識といったものが重要になっていくのではないか。このようなことで、論点として挙げております。
当然、こういう状況下ですので、こういった管理をするという場合においては、作業環境測定、局排の設置といったものは求めないという整理になるのではないか。そういう整理でよいのかということで、3つ目の○に論点として書かせていただいております。
それから、その下にございますが、作業場全体の管理ではなくなって、個々の管理ということになっていきますので、労働者側の理解を得ることも重要であるということで、例えば衛生委員会において方針を決定するなど、労使の共通理解の下で進めていく必要があるのではないか。その後も、PDCAできちんとこの仕組みがワークしているのかというチェックをしていくことが大事なのではないかということです。
それから、こういった仕組みを入れていくとなると、個人ばく露管理ということは、これまで日本にはなかった仕組みですが、やっていく必要がある。それから、保護具の適切な選択・使用・管理というものもやっていく必要があるということで、こういった仕組みがワークさせるためには、どういった体制、人材、具体的な方法といったことが必要なのか。こういうことをよく検討していく必要があるのではないかということで、論点に挙げさせていただいております。これが1つ目です。
5ページ目以降が、2つ目です。これも前回御議論いただきましたが、「作業環境管理と健康管理について」ということで、化学物質を取り扱っている場合においても、作業環境管理が適切に行われている場合、気中の有害物質の濃度が一定以下に保たれている場合というのは、ばく露のリスクは低い、ばく露はしていないということになると思いますので、健康診断の実施を免除又は頻度を少なくするような仕組みということで、論点を出させていただいておりました。前回の御意見としては、「リスクの小さい所での健診は不要ではないか」、他方で、「労働者側については、きちんとそういったことを理解した上で、こういった仕組みを入れていく必要があるのではないか」、「遅発性のがんなどの疾病をどのように取り扱うかという整理が必要なのではないか」、こういった御意見を頂いております。
6ページ目を御覧ください。仕組みを入れた後のワークのさせ方について、入れるに当たって事前許可が要るような仕組みにするべきか、その後のモニタリングをどうするかといった論点を示させていただきました。出された御意見としては、「例えば外部専門家が仮に絡むとすると、その責任をどうするのか」、「どういった条件を満たせば、元に戻さなければいけない、頻度の緩和はできないといったことにするのかという整理が必要なのではないか」、「緩和の要件として、いろいろなことを義務付けすぎるというのもやりすぎではないか」といったものが前回にありました。
こういった御意見も踏まえて、最後の7ページに、今回の論点として示させていただいております。まず、導入の要件として、健康診断の実施頻度を緩和する要件としては、作業環境測定の結果だけで大丈夫なのか。これが1つです。それから、前回も課題として挙がっておりましたが、がんなどの遅発性のものについてどう考えるか。幾つか書いておりますが、遅発性の疾病が発生するようなものは除外するという選択肢もあると思いますし、逆に、遅発性の疾病を発生させる物質であっても、作業に従事し始めてから全期間でのばく露の情報というのが仮にあって、それが低ければ頻度として下げるとか、そういったこともあるのかどうか。それから、遅発性の疾病であっても、年1回の一般定期健康診断を実施しておりますので、そこである程度の確認はできるという前提の下で緩和してもいいのではないか。こういった選択肢もあると思いますので、論点として挙げさせていただいております。
それから、前回御指摘いただきましたように、どういう状況に至った場合に、実施頻度の緩和を元に戻さなければいけないということにするかも、整理いただく必要があるかなと思っております。それから、前回御指摘いただきましたように、労働者も十分に理解した上での導入ということが必要だと思いますので、例えば労働者側に対して作業環境測定の結果を開示するなど、労使の情報共有をすることが、まず重要なのではないか。それから、下の2つは前回も御意見を頂きましたが、健康診断の緩和の導入に際して、どういう手続を踏んで、かつその後の管理をどうしていくかということです。例えば選択肢としては、第三者による客観的、専門的な判断が必要かどうか。これは、行政とか外部専門家も含め、そういったものを必要とするか、若しくは明確な基準をあらかじめ設けてしまって、それをクリアしていることを労使で確認して導入を決めるというやり方もあるのではないか。こういった論点を示しております。もう1つ、モニタリングも同じ観点で、外部のモニタリング若しくは労使による自主的な管理というやり方もあるのではないかということで、御議論の論点として示させていただいております。以上でございます。
○城内座長 今、テーマを2つ頂きました。最初に、個人ばく露管理に関係した作業管理と作業環境管理について、議論を始めたいと思います。その後で、健診に関する合理化についての御意見を頂ければと思います。まず、最初の個人ばく露の導入について、御意見がございましたらお願いいたします。
○永松委員 個人ばく露管理に関して会員から意見がありまして、事業場によっては多種の製品を使っていて、それを混合したりして生産している、また、製品がある頻度でどんどん変わっていけば、扱っているものも変わっていったり、その日のうちでも変わるということで、従業員が取り扱う化学物質が多様な場合、個人管理というところが必ずしも十分にできかねるところがあると。そういうケースもあるということを前提に議論していただきたいということでした。
○城内座長 そのほか、御意見はいかがでしょうか。
○宮腰委員 今回、アンケート調査をしていただいた中で、私もクロロホルムとかトリクロロエチレンというものを使っていました、特に、ここに出ている項目の中で一番多かった洗浄で使っていました。通常作業をするときには、ほとんど自動化されているので、環境そのものもリスクはすごく低い状態で作業をしています。ここでばく露する所というのはほとんど洗浄です。定修期間中に装置を洗浄するとか、そういったときにばく露することが非常に多いのです。
そうなってきますと、個人ばく露という形になってくると、そのときだけ個人ばく露をやるという考え方と、通常作業をするときの個人ばく露を見るパターンでは、その状況に変化が出てくるのかなと思うのですが、その辺はどうお考えでしょうか。
○城内座長 事務局からお願いします。
○化学物質対策課長補佐 いろいろなケースがあると思っていまして、例えば通常作業のときは基本的には密閉化されていて、ばく露のリスクがないような状態であれば、恐らくそこは個人ばく露管理をするような必要はないような作業だと思いますが、非定常のときに、そのようなばく露のリスクが高くて、かつ局排などでその濃度を抑えることができないということになれば、その1つの手段として、その作業をするときは、その頻度にもよると思うのですが、個人ばく露をするという考え方もあるかとは思います。それも含めて、委員の皆様からもいろいろお知恵を頂ければと思っています。
○城内座長 そのほか、御意見はございませんでしょうか。
○永松委員 3ページのアンケート結果からなのですが、2つありまして、1つは、第三管理区分で密閉化されていないような場所でやっているということになりますと、そこで行われている作業と言いますか、仕事の場と、それ以外の所というのは、どのように区別されているのかなと。つまり、従事されている人はそこでされているわけなのですが、そのほかの従業員の方がいる環境と、第3管理区分の作業場との区分と言いますか、その辺がどうなっているのかというのが大変気になったところです。
2つ目が、ジクロロメタンとか、トリクロロエチレンという非常に有害性の高いものが、結果として多いわけなのですが、こういうものを取り扱う業務そのものが、密閉化、自動化は難しい点はあろうかと思いますが、有害性の大きさとか、そういうものも考えてやっていくべきではないかと思うのです。そうでないと、一律に個々の論点、あるいは今後の方向性の所にも書かれておりますが、第三管理区分のところで、保護具を使うことでというところにとどまってしまう、そういうことを避けていくような考え方を、きちんと打ち出していかないといけないのではないかと思っております。
○化学物質対策課長補佐 今、正に御指摘いただいたように、論点の所では一般化した書き方をしてしまっているので、これに該当するもの全てをやっていくのかという御懸念もあるかと思うのですが、実際にどういうものを個人ばく露管理しないとできないのかという検討とか、もう少し突っ込んだ調査というのは、当然必要なのではないかと事務局としても思っています。
○城内座長 そのほか、何かございますでしょうか。
○髙橋委員 個人ばく露の件ですが、これはやはり一番理想的ではないかとは思います。ただ、先ほど永松委員がおっしゃったとおり、多種の製品を使っている場合にどうするかということがあります。その辺の懸念はありますが、エリアというよりも個人の作業に特化した形で、どれだけばく露しているか測定するのが、一番厳密な方法ではないかと思いますので、これができれば一番いいと思います。
それから、4ページの○の4つ目になりますが、衛生委員会などで方針を決定する、あるいは労使の共通認識の下で、という書き方をされておりますが、現場のことを一番分かっているのは、そこで働いている方だと思いますので、当然、労使の共通認識の下で進めていくというのは、あるべき姿だと思います。ただ、「衛生委員会等」と書いてありますが、これに関しては、法律では50人以上が義務付けられておりまして、それ以下の所について、こういったものが設けられているかと言うと、必ずしも設けられていません。私どもの産別の中でも調査を行っておりますが、50人未満の事業場になりますと、こういった委員会が設けられていないケースが多々見られますので、この辺については、委員会を開催する義務のある人数を更に減らすという方法も含めて、必ず開かれるような担保を取るような施策も、併せて考えていただきたいと思います。
○漆原委員 今の髙橋委員のご発言に関連する点です。同じ4ページの○の2つ目の所に、呼吸保護具の話もありまして、その下の点もそうですが、労働者が積極的に適切に保護具を使用するなど、一定の協力をし続けないと、実際には義務付けた効果が薄くなるわけです。また、労働者に対し、そういうことに関する知識とかについては、現段階でも必要です。さらに、衛生委員会等で、そういった情報提供や周知ができていればいいのですが、実際にはそれができていない事業場で問題が起きているのだろうなと思います。そう考えると、改めて、安全衛生委員会等の設置義務の50人以上という基準を、今度どうしていくのか。将来いずれかの段階で検討する必要があると思っているところです。
○城内座長 そのほか、御意見はいかがでしょうか。
○大前委員 4ページの○がある中の3つ目の○ですが、個人ばく露管理を厳格にすることで、局排等の設置を求めないことにしたらどうかという、これの問題ですが、作業環境はそれでいいのでしょうけれども、一般環境にこういうものが出てしまうというような観点があるので、これはまずいかなと思います。
それから、今回の調査でジクロロメタンが一番たくさん第三管理区分になっています。これは、蒸気圧が高いので、非常に管理するのが難しい物質です。それと同時に、保護具も、あっという間に破過してしまうのです。だから、ジクロロメタンというのは余り保護具が効かないので、そういう観点も、単純にフィットテストとか、そういうことではなくて、破過の問題なども、是非この中に入れていただきたいと思います。
○永松委員 対策として、保護具の適切な使用が求められるわけですが、2つありまして、1つは、マスクについてどれを選定するかという基準はかなり明確なのですが、どこまで使ったら捨てないといけないという基準がないというのが現在です。例えば、ばく露されている濃度や労働時間によって破過する、いわゆる吸着剤が使えなくなる時間というのは様々ですし、そこはきちんと示していかないと、いわゆる破過したものをずっと使っていれば、全く機能していないのと一緒ですので、こういう点をしっかりと押さえた上で実行しないといけないのではないかと思います。
それから、作業環境管理と言っても、いわゆる気中の濃度は管理できますが、経皮吸収のような、手袋が必要なものは、実際には測定できないわけです。その後の健康管理にも結び付くところがあるのですが、そういうものについてのリスクもしっかりと見ていかないと、気中の濃度だけでリスクが少ない、小さいと言えるのかどうかとか、それはまた物質によっても変わってくるでしょうし。また、ここにも書いていただいていますが、化学防護手袋というのは非常に選定が難しいということと、今、厚労省からの通達では8時間をめどに使わないというのは出ているのですが、では、実際にどういうものをどのように使ったらいいかということと、8時間といった場合に、手袋によっては非常に高価なものもありますので、それに事業者として負担が大きいところもあるのかなと推察しております。先ほどのマスクもそうですが、手袋についても、科学的な検討を、是非行政が主体になって進めていただいて、つぎにそういうもののガイドラインなり指針が示されないと、実際に保護具を使っていても実効性のない形にとどまってしまうということを懸念しております。
○三柴委員 化学物質が専門の先生方の御意見を伺っていると、要は対象物質と作業の条件をどう想定するか、どうイメージするかによって、高度な対策が必要だという方と、逆に、ここは外していいのではないかという方に分かれているような印象を受けるのです。要するに、ケースバイケースということになってくる。
では、そういうリスクがいろいろあり得るところにどう対策を打っていくべきかという点について、例えばイギリスの法制度だったら、4点ほど特徴があって、1つは、安全代表が労働者の味方というのではなくて、雇用者がする安全管理をサポートするという役割を持つので、その活動を法で保障する、要するに安全代表がちゃんと活動しやすくしてあげるということです。2つ目は、労使協議をちゃんとやるということです。3つ目は、被用者へ情報提供をちゃんとやるということです。4つ目は、リスク管理のシステム、PDCAのシステムをちゃんと回すように側面支援をいろいろとやっていく、PDCAが回るための条件整備をしっかりするということです。この4つを仕組みのポイントにしているわけです。
化学物質対策の場合は特に、現場の作業効率を含めて、事業とのバランスということをまず念頭に置かなければいけないということがあって、リスクをなくせればいいけれども、最小化するということが恐らく原則になると思います。それはヨーロッパでも考え方は一緒だと思うのです。そうすると、スリーステップアプローチを原則として、やれることをやっていこうということになります。第1ステップが無理だと、未然防止を本質的に完全にやるというのが難しければ、その残留リスクについては、第2、第3ステップをちゃんとやる、確保するということになると。
そうすると、過去の化学物質管理についての日本の民事判例を見ていても、結局裁判所が言っているのは、何か1つ、これさえやればいいというのではなくて、事案に応じてパッケージで対策を打っていきなさいと。作業環境測定についても、デザインから始めて、きちんとその現場に合った、事業場の実態に合った測定と対策を講じていきなさいというように言っている。ですので、正にケースバイケースで、ばく露管理を保護具を付けてやらせるのがよい場合もあれば、それが不適当な場合も、大前先生がおっしゃるように、それでは駄目な場合もあるということになってきます。
要するに結論は、健診の話も含めてなのですが、サイエンスで分かっている基準をきちんと履行させるということと、マネジメントシステムをしっかりと回すための方策を、併せてやっていかないといけない。そこは両輪になってくるのだろうと思います。
○城内座長 そのほか、御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ここの場で合意を得たい点があります。今までずっと議論していただいたのですが、作業環境測定ではどうしようもできないものが結構あって、第三管理区分がどうしてもクリアできない、第一管理区分等にならない場合には、個人ばく露で管理して、例えばマスクとか手袋とか、そういうことで対応しなければいけない事例が結構あることが明らかになってきました。それについて対策していかなければいけないので、対策しましょうということなのですが、その先どうするかについては、マスクにしても手袋にしても測定方法にしても、いろいろと各論としてはあると思います。基本的に第三管理区分がどうしても続くような場合には、個人ばく露管理を導入して、対策をしていきましょうということで、皆さんに合意いただきたいというのが1点です。今日は、それに合意いただければ、三柴委員からの話にもありました総論、あとは委員の皆様からいろいろと御指摘のあった各論も含めて、前に進めたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
○明石委員 できれば、事業場もいろいろな形があるので、何かトライアルをしていただくとか、何かそこでエビデンスがあれば、もっと分かりやすいかと思います。
○城内座長 では、そういうことで進めたいと思います。作業環境管理と作業管理については、以上で終わりたいと思います。引き続いて、特殊健康診断の合理化ということで7ページにまとめていただきましたが、これについて御議論をお願いします。いかがでしょうか。永松委員、お願いします。
○永松委員 リスクに応じた管理というのは、当然あって然るべきかなと思います。一方で、リスクを適正に評価できないと、これは人の健康に直接関わるところですので、そこのところは大変重要かなと思っております。そうしますと、有害性というもの、この中では発がん性についても触れられておりますが、そういう有害性におけるリスクをどのように考えるかがしっかり検討されるべきであろうと思っております。それから、いわゆる作業環境の管理というのも、リスクを生むかどうかということにおいて非常に重要で、個人の管理ということでそれを進めるということなのですが、これは先ほどの繰り返しになりますが、いわゆる気中濃度というものは非常に分かりやすいのですが、経皮吸収に関しては、これをどのように考えるのかということが非常に重要かなと思っております。あと、では健康管理としてどうあるべきかというのは、前回も申し上げたと思いますが、そこはやはり医学的にと申しますか、そこの専門家の先生の考え方が、ある意味大変重要かなとは感じております。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。大前委員、お願いします。
○大前委員 健康管理を考える場合に、ここで言う遅発性の影響とそうでないものとを分けて考えなくてはいけないと思っております。遅発性の影響はちょっと考え方が別、そのほかは一緒だと思うのです。
前回の、第一管理区分が続く所は健診をやらなくてもいいのではないかというのは、私が申し上げた意見です。それはなぜかと言うと、第一管理区分というのは、A測、B測で両方ともクリアできて第一管理区分になっているわけです。A測の場合は、最低5点ですか、幾何平均と幾何標準偏差で分布を想定して、その分布の95%だったと思いますが、その95%よりも管理濃度が高い、すなわち95%の値が管理濃度よりも低いのが第一管理区分なのです。ということは非常に低いレベルということです。
もう1つ、管理濃度ですが、現実としては産業衛生学会の許容濃度かあるいはACGIHのTLV-TWAか、どちらかを使って数字を実際作っております。この許容濃度を作る、あるいはACGIHが作るときに健康影響の何を見ているかと言うと、これは、ほとんどの労働者に影響が起きない軽い影響なのです。ですから、それが起きることによって中毒になってしまう、入院してしまうとかそういう話ではなくて、一番軽い影響、でも一応この影響は不利な影響だよねという、そういうレベルで決めているのです。ですから、そういう低いレベルで、軽いレベルで決めていて、かつ管理区分が1というレベルですと、もう結構低い、リスクがとても小さいのです。ですから、そういう所では、私は健康診断をやる必要はないと思っています。これは遅発性影響ではない話です。
では、遅発性影響の場合はどう考えるかというのは、これはいろいろな考え方があると思います。特に遺伝子に直接作用するような発がんという影響、これに関する考え方としては、たとえ濃度が低くても発がんは起こるという考え方をしています。ワンヒットセオリーとか言って、有害化学物質が1個DNAに付けば、そのDNAが変化して、それが修復されないでがんになる確率はゼロとは言い切れないという考え方をしているのです。したがって、発がんグループ1に属するような発がん物質に過去にばく露した方は、ずっと追い掛けなくてはいけないみたいな、そういう極端な意見もないことはないと思います。
ただ、それは現実的には無理なので、今、例えば一般環境の場合ですと、大気中の環境基準で、発がん物質に関しては、10-5の発がんは受容しようという考え方でやっています。これは今、動いています。10-5ですから10万分の1です。労働環境の場合は、公になっているペーパーはないかもしれませんが、今、実際にやっているリスク評価の委員会では、10-4というのを使って数字を出しています。ですから、そのぐらいのレベルの受容リスクはやむを得ないだろうという考え方、失礼、この場合の受容リスクは過剰の受容リスクです。ベースラインに比べて10万分の1、あるいは1万分の1という過剰の部分の話をしています。そういう形で、一応数字を使ってやっているので、その数字以下の数字でしたら、今、言った10-4とか、あるいは一般環境ですと10-5よりも低いリスクしかないということなので、ある程度数字はもう出ているのです。
とは言っても、ではその発がんは誰に起きるかは分からない。全体としては、平均としては10-4かもしれないけれども、ではそれがあなたに起きるのかどうかは分からないのです。ですから、健康管理というのはそれを見付けようと思うのでしょうけれども、でも、それを全員にやるのは、先ほど言ったみたいにほとんど意味がないので、どういう人をピックアップしてやるかということだと思います。
1つは、先ほどの第三管理区分の所で長い間仕事をした人という、そのような期間の問題と濃度の問題で、どこかで区切りを付けるというのもあるかと思います。実際に、確か六価クロムか何かのときに、胸部のレントゲン、肺がんをターゲットとして胸部のレントゲンを撮るのは、確か4年以上でしたか5年以上でしたか、そのくらい仕事をした人だけという限定になっているのです。ですから、そのような形でどこかで区切りをして、何年かに1回追跡と言いますか、そういう形でやらざるを得ないだろうなとは思います。すみません、長々と。
○城内座長 ありがとうございました。そのほか御意見等ありますでしょうか。宮腰委員、お願いします。
○宮腰委員 質問なのですが、今ある健康診断の考え方は、どちらかと言うと事業所ごとに行っていますが、実際には、協力会社の方たちが同じ所で働く、別の会社の協力で一緒に働く人たちもいるし、先ほど言いましたメンテナンス関係でいくと、そういったメンテナンスでいつもばく露に当たって仕事をされている人たちには、出入業者という形でいろいろな所を回られている方たちもおられて、ばく露は必ずしていると思うのです。こういう人たちの健康診断はどうされているのか、そこを質問させていただきたいです。
○化学物質対策課長補佐 基本的には、健康診断は場所の管理というよりは労働者を雇っている事業者に義務付けていますので、例えば出入りの業者であっても、その方が属している会社に実施の義務が掛かるというのが基本なのだと考えております。
○城内座長 そのほかございますでしょうか。健康診断、特殊健診をどう合理化するかというのは、大前先生も委員を務められていますが、別の委員会でも詳細については検討していますので、その結果も見ながら、また再度ここで検討していければと思っています。 私がちょっとこれについて発言させていただきたいのは、健康診断をやっているから健康でいるのだという、ある意味幻想があって、私はそれはやはり変えなくてはいけないのではないかと思っています。健康を維持することと健康診断を受けることというのは、多分、全く別のものだと私は思っています。健康診断というのは、やはりスクリーニングの意味はありますが、健康・予防の意味があるかと言うと、それは個人の意識に関わりますが、それほどないだろうと思います。私は、発想の転換を日本全体でする必要があるだろうと思っていますが、それはやはり教育と言うか、先ほど大前先生もおっしゃったような、リスクと健康診断の意味とかそういうのを、労働者はもちろんですが、みんなに伝えていく必要があるのではないかと思います。そうでないと、労働組合も、今までこれを受けていたから安心なのに何だよという話に絶対なると思うのです。その辺をきちんと情報伝達するというか、教育と言っていいかどうか分かりませんが、そういうことをしっかりやっていかないと、多分、いきなり特殊健康診断を合理化しますよと言っても理解されないのではないかなという懸念がありますので、是非、その辺も考えて検討していただきたいと思います。髙橋委員、どうぞ。
○髙橋委員 今の城内先生の意見に私も賛成です。労働者個人の今の健康状態を直接かつ客観的に評価できる仕組みの1つが、この特殊健康診断だと思っていますので、これをなくすということは、やはり作業者にとっては不安につながることになると思います。その辺についてはしっかりと教育をする必要があり、納得をしてもらう必要があると思います。それから、7ページの○の4つ目ですとか6つ目に、労使による確認とか判断というのが書いてありますので、これも当然、現場をベースに実施していただきたいと思います。判断をする労働者も、それに対する知識がなければ、やはり安易な判断になってしまう可能性があると思いますので、その辺についてはしっかりと知識のレベルを上げていく必要があると思います。その辺もセットで進めていく必要があると思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほか、大前委員、お願いします。
○大前委員 特殊健診に関して確認しておかなくてはいけないことがあって、一応、規則によって少し言い方が違いますが、一次健診と二次健診という2つに分かれています。一次健診というのは、あくまでもスクリーニングで、例えば発がん物質であってもがんを対象とした健診ではないのです。がんの手前のところで、例えば肝臓の数値が悪くなるとか何だかんだ、そこをチェックしようという形なので、特殊健診を受けていれば全部OKということではないことを是非、知っていただきたい。
もう1つ、特殊健診というのは当然、特定の化学物質に対する健診項目があるわけですから、その現場のばく露実態を知らないドクターが特殊健診すること自体が間違っているのです。いわゆる健診機関を呼んできて、何も知らないドクターが診て、それで問診票だけわっとやって、あなたは今日は頭が痛いですねとチェックして帰っていく、それを見て、頭が痛いというのは確かに化学物質による症状の1つだから、ではこれは化学物質による頭痛だみたいな判断をされては困るのです。ですから、健診をするドクターも、これから将来的には現場を知っている人、専任産業医さんだったら間違いないと思うのですが、現場を知らない人に判断を委ねるようなことはやめてほしいと思っています。そこら辺も将来的な課題だと思います。今、直ちにできるとはとても思えませんが、それは非常に無責任な特殊健診で無駄な特殊健診なのです。ですから、その辺は是非、将来的には考えていただきたいと思っています。
○城内座長 ありがとうございました。漆原委員、お願いします。
○漆原委員 7ページの2つ目の○の最後のポツの所に、「年1回の一般健康診断で遅発性の影響の兆候を」という記載についてですが、御存じのように特殊健康診断は保存期間が長い一方、例えば事業所が変わって、そのうえ一般健診になってしまうと、過去のデータが保存されなくなってしまう。これはPHRで対応すべき問題なのかもしれないのですが、ばく露歴や健康上の変化のデータ保存を考えれば、一般健診となった場合、その保存期間を一体どうするのかというのは併せて検討していただきたい。例えば30年、40年間保存できる制度でない限り、難しいだろうと思っているところです。以上になります。
○城内座長 ありがとうございました。そのほか、三柴委員、お願いします。
○三柴委員 例えばイギリスでもヘルスサーベイランスというのはやれるから、日本で言う特殊健診に当たるようなものはできる。フランスも産業医制度が発達しているから、特殊健診に当たるようなものも、それから日本で言う一般健診に当たるようなものも、かなりできるという立て付けなのですが、いずれにしても、要するに専門家がこれは必要な健診項目だと思うからやるということが大前提なわけです。しかし、日本の場合は、産医大の森先生が捉えたデータとかでも、大前先生が言われたように、健診項目を医師の判断で減らせるとかと書いてあるものも、ほとんどそれによる調整がされていない。決まっていることをただやるということであったり、ひょっとすると、省略するとしても、ちょっと別の考慮が働いてしまうこともあるだろうと。ですから、この問題というのは、要するにやはり人の担保、専門家の担保が鍵なのだろうと思うのです。そこが担保できるのでしたら、落とすにせよ、また復活させるにせよ、適正に運用できるだろうけれども、そうでなければ、またそうではないということなのだろうと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほか御意見、よろしいでしょうか。この特殊健診については、大前先生から非常に重要な発言を頂きました。ここをブレークスルーする必要があるだろうと私は個人的には思っていますので、行政的には非常に大変かもしれませんが、是非、検討していきたいと思います。どうもありがとうございました。
では最後に、議題の3つ目、今後の化学物質管理のあり方について議論したいと思います。資料の説明をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 資料3を御覧ください。資料3の1ページ目、2ページ目は前回示した論点、それから頂いた主な御意見です。前回も御説明させていただきましたように、今の化学物質規制のやり方というのが、危険有害性が高いものを、1つ1つ有害性を評価して、個別の規制に入れていくかどうかを考えていくというやり方にしているわけですが、それがなかなか追い付かずに規制の対象から外れてしまっている物質で災害が多く起こってしまっているのではないかという問題意識から、自律管理を基軸とする仕組みに変えていってはどうかという御提案をさせていただいたところです。
御意見としては、これは三柴先生から頂いた御意見かと思いますが、欧米以上の基本対策を課した上で、免責したければ専門家に証明させるという仕組みも考えられるのではないかといった御意見、それから、例えば経産省がやられているように、できるところからやっていくというやり方もあるのではないか、自主的な取組をまずは広げていくことが大事なのではないかといった御意見を頂いています。
2ページ目は、実際にこういう仕組みを導入する場合に、どういうふうにそれを支えていくのかということで、前回、いろいろ御意見を頂いた中で多かったのは、特に中小についての実施体制をどう作っていくかについて、よく仕組みを作っていく必要があるのではないかという御意見です。
こういった御意見も踏まえて、3ページ目以降にもう少し具体的な絵姿として、今回、御提案させていただいています。まず3ページ目ですが、今、やっているように国がリスク評価を行って個別管理物質に追加していくやり方を、以下のように見直してはどうかということで、5点ほど挙げています。1つは、国によるGHS分類によって一定以上の危険有害性がある物質を「自律管理物質」ということで位置付け、情報伝達、リスクアセスメントをまずやる。2つ目に、その中でばく露限界値がある物質については、このばく露限界値以下で管理する。ただ、自律管理ですから、ばく露限界値以下で管理する手段まで細かくは決めないですが、これ以下の管理ということを求める。一方で、ばく露限界値がないようなものについては、基本的に数値基準を設けることが難しいと思いますので、一般的なルールとして、なるべくばく露の濃度を下げる、保護具を着用するといったルールを求めていくということ。先ほど永松委員からも何度か御意見を頂いていますけれども、特に皮膚刺激性があったり皮膚吸収があったりする物質というのは、濃度管理だけでは対応できないと思いますので、きちんとそれを防ぐための保護具を使っていただくということ。
こういった形にしてはどうかということで、文章では分かりにくいと思いますので、少し飛びますが、6ページ目に、こういった仕組みに変えたときにどういう形になるのかということを少し絵でまとめています。この絵を御覧いただくと、一番上が石綿などの製造禁止物質になっていますが、2つ目以降に、この新しい仕組みの考え方を反映させていくということで、2つ目の「自律管理が困難で有害性が高い物質」、いわゆる特化物といったものですけれども、これを新しくどんどん追加していくことはやめましょうということで、左側に「基本的に個別管理物質に追加はしない」ということで整理しています。今後は基本的に、その下2つになりますが、自律管理物質というのを管理の基本としていくということで、許容濃度、ばく露限界値があるような物質については、その濃度基準を守っていくということ。それがないものについては、一般的なルールを守っていく。ということで、ある意味、分かりやすい仕組みに変えていくということを、一応、事務局からの御提案として書いているのが3ページ目の所になります。
3ページに戻っていただき、こういった仕組みに変えたときに、今、国のほうでやっているリスク評価をどうしていくのか。これが正に今回、新しく設置しようとしているワーキンググループのほうで御議論いただこうと思っているものです。それから、3ページ目の一番下に書いていますが、自律管理に移行したときに健康診断の実施をどうしていくのかについては、別途、整理が必要なのではないかということで論点として挙げています。
4ページ目になりますが、こういう自律管理に移行していくに当たって大事になっていくのではないかというのが、先ほどからも出ていますけれども、自律的に事業所、企業の中で管理していくことになりますので、衛生委員会など労使できちんと方針を共有するということ。それから、取組の状況、管理の状況については、きちんと記録を残して確認できるようにしておくことが大事なのではないかということです。
2つ目の○ですが、仮に基本的に個別管理物質を追加しないことにしたとしても、状況に応じて、どうしても個別具体的に国が全て対策なり規制なりを細かく決めなければいけない物質が今後も生じ得るかどうかについても、整理が必要と考えています。例えば重篤な労働災害が多数起こっているものを、自律管理に任せておいていいのかといった論点とか、非常に有害性が高く、かつ許容濃度が低かったり蒸気圧が高いといった、管理そのものが非常に難しい物質について個別管理に入れるという考え方もあります。これは例ですけれども、こういった今後も個別管理を求めなければいけないものが出てくるかどうか。出てくるとすると、それはどういうものを対象にするべきかといった整理も必要と思っています。
4ページ目の最後になりますが、これは、今、既に個別管理として特化則、有機則などで細かく規定を定めているものについても、仮にそれを管理する事業場のほうで一定の要件を満たしていれば、規則に基づく管理ではなく、自律的に管理をすることを認めていくという仕組みも考えてはどうかということです。その要件として、これは例示ですけれども、一定の業務経験を有する専門家が十分な数配置されているとか、一定期間、労働災害を起こしていない、新規有所見者が出ていない、適切に良好に管理されているといった条件がクリアされれば、個別具体的な規制を外して自律的な管理を認めるという仕組みも入れるべきかどうか。こういう御議論もいただければと思っています。
最後の5ページ目になりますが、これも前回、御指摘いただきましたように、自律管理をきちんとやれるような仕組みをどう作っていくか、特に中小向けの支援というものをしっかり考えていく必要があるということで、情報提供するポータルサイトであるとか、専門家が相談に乗ったり支援をしたりという公的サービスを整備する。また、より簡単に化学物質管理ができるようなツールを開発するとか、こういった取組も必要ではないかということで論点として挙げています。以上になります。
○城内座長 ありがとうございました。6ページ、7ページに、現行の管理の仕組みと、このように見直してはどうかという図が出されていますが、これを実行しようとしたときには、いろいろ個別の案件と言いますか課題が出てくると思います。いろいろな観点からの御意見を伺えればと思います。よろしくお願いします。いかがでしょうか。永松委員、お願いします。
○永松委員 1点、確認ですが、これは管理区分との関係というのは、どういうふうに考えればよろしいのでしょうか。例えば3ページ目、自律管理物質のうち、ばく露限界値のある物質については、ばく露限界値を位置付けてと2つ目の三角にありますが、ちょっとここは私の中で整理できていないのです。
○化学物質対策課長補佐 いわゆる作業環境測定をやって管理濃度で管理をするというのは、個別管理物質についての規制でして、この許容濃度で管理をしていこうというのは自律管理物質のほうの話ですから、そこは分けて考えていただければと思います。個別管理のほうは、作業環境測定なり局所排気装置なり、何をやるということはメニューとして全て決まっている状態ですが、自律管理のほうは、そのメニューを決めないでいきましょうという考え方です。
○永松委員 そうしますと、将来的に現状の個別管理物質に相当するような有害性があるものが、自律管理の中で管理されていくということで、有害性という面では同じレベルにあっても、管理の仕方が2つになってしまうこともあり得るということですね。
○化学物質対策課長補佐 そうです。基本的に今までの規制のやり方を変えようということですので、仮に有害性が例えば今の特化物と同レベルであっても、管理のやり方としては自律管理にしていくというのが、今後の規制のあり方の見直しの基本になっていくと思います。
○永松委員 そうしますと、管理のあり方の基準としては、個別管理物質については非常に明確に決まっていますけれども、自律管理ということを進めていくことを考えますと、同じ有害性でも違った基準を持ってやっていくところが出てくるのではないかというのがあるのですが。
○化学物質対策課長補佐 いきなり、例えば今ある規制をなくしましょうというのはなかなか難しいと思いますので、規制の考え方を変えていく上では、御指摘のように少しダブルスタンダードに見えるようなところも生じることは、ある程度やむを得ないかなと思っています。もう1つ、御提案させていただいているように、個別管理物質でも、一定の要件を満たせば自律管理と同じような管理をしていける仕組みも入れていくことで、その段差をなるべく埋めていけないかなという思いも我々としてはあります。
○永松委員 そうしますと、ここに書いている「労働者のばく露濃度が基準以下となる」の「基準」というのは、現状の個別管理の基準を見ますと例えばそれに合わせていくとか、何かそういう考え方も検討すべきだということになりますが、いかがでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 先ほど実は大前先生も御指摘されていましたが、実際、今、設定している管理濃度というのは、日本産業衛生学会が出している許容濃度とか、米国のACGIHが出しているTLV値と同じ値を基本的に使っていますので、管理レベルに差が出るというイメージではないと御理解いただければと思います。
○永松委員 ありがとうございました。
○城内座長 そのほか、大前委員、お願いします。
○大前委員 4ページの○の2つ目ですが、個別管理物質に新たなものを入れるということに関して、重篤な労働災害等が多数発生した物質に関しては個別管理物質に格上げと言うか何と言うのか、やらないと同じことがまた起きると思うので、これはやったほうがいいと思います。
その下の3つ目の○の、今の個別管理物質についても、一定の要件を満たせば特化則、有機則の適用除外という、これは私は除外してほしくなくて、除外してほしいのは健康管理だけです。健康管理については必要に応じて除外してもいいと思いますが、特化則、有機則そのものを外すのは筋が違うのではないか。やはり、ちゃんと濃度をしっかり把握していないといけないというのは大原則なので、そういう意味で健康管理以外は外していただきたくないなと思います。
○城内座長 そのほか、御意見、中澤委員、お願いします。
○中澤委員 6ページ目の図と7ページ目の現行の図を比較してみたときに、1つはリスクアセスメントの努力義務、従来は努力義務だったものが拡大されるという印象を受けるのですが、リスクアセスメントについて、前回、いろいろ御提示いただき、何で行っていないのかという理由の中には、そもそも災害が起きていない等々の理由も掲げられていて、リスクアセスメントをやらなくても問題が起きていないという案件も、相当数あるのではないかと思っており、違和感を感じるところです。
もう1つ、5ページ目の所で、今後、中小企業向けに化学物質管理を支援する仕組みとして、どのようなものが考えられるかということですが、1つ目のポツのポータルサイトの整備ということで、幾つか関連する中小企業者の関係者にもヒアリングしてみたのですが、いわゆる掲載されているデータがなかなか更新されていないという意見もございましたので、そういった整備も進めていただきたいということと、2つ目のポツの中に、外部の専門家の助言支援ということよりも更に一歩進んで、社内人材を育成していただくための支援も入れていただければ有り難いと思います。
○城内座長 ありがとうございました。そのほか、御意見はございませんか。三柴委員、お願いします。
○三柴委員 去年頂いた厚労科研で、経営者向けに、安全性を重視しているかどうかと、している理由、していない理由というのを調べてみたのですが、「している」と答えた経営者については、では何をやっているかということまで確認してみたら、結局、大規模でも中小規模でも人を充てているのです。一番やっていることと言うと、今、中澤委員から示唆的なお話がありましたけれども、要するに安全衛生事情というのは経営マターだから事業場によって様々だし、事業利益との調整も必要なので、そこに合った対策にピントを合わせてやるために人を充てているのです。安全衛生人材を充てている。大企業だったら余裕があるから部署を作って要員を配置しているし、中小であってもそれ用の担当者を決めて充てている。これは、法制度で安全衛生委員会を作れなかったり、安全管理者や衛生管理者を置けなかったら、その推進者を置きなさいというのと同じことなのです。
そうすると、先ほど中澤委員から、小さい会社を想定されていると思うのですが、リスクアセスメントをやらなくても、うまくいっている所があるのではないかというお話がありましたが、これは恐らくまずやってみて、それで何年か大丈夫だったら少し外してみるとか、対策としてはそういうことになってくるのではないか。いずれにしてもキーは、安全衛生人材をちゃんと養成して充てていくということになるのかなと思います。
○城内座長 そのほか、ございますか。漆原委員、お願いします。
○漆原委員 お教えていただきたい点がございます。3ページ目の最初の○の所に三角が幾つか付いていて、その2つ目と3つ目の違いについてです。3つ目の三角を見ると、発生抑制と換気で濃度を下げ、それにより一定程度の有害性がある場合は保護具を付ける。ということは、ばく露限界値のある「その上のレベル」の物質については、更にそれ以上の努力義務を課していくと考えるのか、それとも、単にここは「ばく露限界値がある」か否かのみの差であって、それ以下にせよということだけが課されるのか、その両者の違いが具体的にどこにあるのか教えていただければと思います。
○化学物質対策課長補佐 2つ目の三角は、手段を限定せずに守るべき基準を示すという考え方です。先ほど大前先生からもありましたように、許容濃度というのはそれ以下に保てば健康被害が出るリスクは低いという濃度ですので、それ以下に保つこと、基準が明確であればそれを求めていく。ただ、どういう手段でやるのか。例えばマスクをやるのか密閉化するのか、そういった手段については選択権を事業者のほうに委ねるという考え方です。
逆に、ばく露濃度、どのぐらいばく露すれば有害なのかというのが分からない場合は、リスクが分からないということになってくると思いますので、基本的には考え方を示す必要がある。濃度を守れということは言えないものですから、考え方を示すしかないだろうということで、ばく露の量をなるべく減らすこと。一定以上の有害性というのをどういうふうに定義するかというのはあるので、それも御議論があるところだと思いますけれども、有害性があるものについては保護具、要は濃度が分からない以上は保護具の使用をある程度求めていくという基本的な考え方を決めていくのが、3つ目の三角の考え方です。
○城内座長 よろしいでしょうか。私から大前先生にお伺いします。今の点でACGIHとか産衛学会でばく露濃度とかを出しているものはいいのですが、例えば3,000物質とかについてはGHS分類をしているわけです。GHS分類しているということは、ある程度文献に当たって有害性が分かった。だけど、TLV等はまだないよというときに、企業としてはどういうプロセスで判断していけばいいか、何かサジェスチョンを頂けるといいかなと思います。
○大前委員 有害性がある程度分かっていて許容濃度等がないというのは、要するにその許容濃度を作る情報がないということなのです。だから、企業としては、今おっしゃったような数値は分からないのですが、でも有害性があるということが分かっていれば、それに対応してばく露濃度を低減する。そういうことをやるしかないと思います。今の有害性の場合、これはどちらかと言うと長期毒性をイメージしていますけれども、腐蝕性とかでなくてですね。本当に情報があれば必要なものは作るというのが、当然、ACGIHなり産業衛生学会の立場ですので、とにかく情報がない。情報があっても人の情報がほとんどないというのが非常に多いですね。
○城内座長 一応、政府で分類している物質について、GHSの分類が出ているものについては情報が全くないわけではないので、それを企業でどう使うかというのは、多分、企業の自主判断です。要するに自律管理に結び付いていくと思いますが、それは行政も一緒になって、これから考えていかなければならない問題かもしれません。そのほか、永松委員、お願いします。
○永松委員 今のお話にも関係するところがあるのですが、6ページの図を見ますと、許容濃度又はばく露限界値が示されている危険・有害な物質ということで、ばく露限界値以下での管理義務となっていますけれども、有害性の大きさよりも、ばく露限界値のほうが実行上は優先されるようなことはないのでしょうか。つまり、ばく露限界値以下での管理義務をやっていればいい、危険有害性についてと整合することがあり、ばく露限界値さえきちんとやっておけば有害性に差があっても、安全上それはいいのだという理解でいいのでしょうか。
○城内座長 私の理解だと、ばく露限界値を決めているということは、分かっている危険有害性については全部考えてその値を決めているので、ばく露限界値を守っていれば大丈夫でしょうということです。
○永松委員 分かりました。ありがとうございました。2つ目は、4ページの2つ目のポツの所ですが、私はこれは大変重要かなと思っています。というのは、今後、自律管理物質ということを進めるとしても、結局、有害性が高いものについて十分に事業者として安全対策を取らずに取り扱う懸念があろうかと思います。自律管理物質という幅が非常に広いので、ばく露限界値もありますけれども、例えば事業者への意識づけとして、こういうところはしっかりやって、危険有害性の高いものについては、それなりの安全対策をしっかりやるのだと。そこの意識と言いますか取組を促すためにも、ここについてはしっかりやっていくべきではないかと思います。
○城内座長 大前委員、どうぞ。
○大前委員 GHSの言っている有害性というのは、私のイメージだと中毒だと思います。でも許容濃度は中毒で決めているわけではないので、見ているものが全然違うと思います。先ほど許容濃度を決めるようなデータがないと言いましたが、多分、中毒のデータはあると思います。でも、それでは許容濃度はできないから、そういう意味で許容濃度を作るための情報がないということで申し上げました。恐らくGHSの有害性は明らかに中毒、とんでもない影響だという感覚で思ったほうがいいと思います。
○化学物質対策課長補佐 よろしいでしょうか。今、永松委員からもお話のあったことに関連するのですが、特に注意すべき非常に高い有害性があるものについての、事業者に対するアラートのやり方というのはいろいろあると思っていて、それを個別管理物質に入れるかどうかというのは議論のあるところかなと思っています。今、個別管理のやり方の課題としてあるのは、当然、危険な物質ですという社会へのメッセージというのもあると思いますが、特定の作業を想定し、それについてどういう対策を取るか、いわゆるポジティブリスト方式の規制になっているのです。ただ、実際に世の中で行われている作業というのは多種多様で、あらゆるものを想定しての規制というのは難しいという課題も我々は実は持っています。ですので、確かに管理が難しくてハザードが高い物質に対する世の中へのアラートというのは、おっしゃるように必要だと思いますけれども、その解決策が個別管理物質に入れることかどうかというのは、それはまた議論のあるところかなと思っています。
○城内座長 リスクアセスメントをしっかりしましょうという法令改正があった後、多分、事業者は、例えばGHSで分類して危険そうなものは使わないで、データのないものを使うという例もちょっとあります。データがないというのは、つまりデータがないから分類していないのですが、使う人から見ると、安全かもしれないと思って使って、そして起きている事故が実際にあるので、そこで自律管理をどうするかというのはかなり難しいと思いますが、その辺をかなり慎重にしないと事故が繰り返し起きてくる。厚生労働省でリスクアセスメントを義務化しましょうと言ったときに、担当者が全国を回り、データがあって危険そうなのを避けて、データがないものを使うことは絶対しないでくださいと言っているのですが、実際に事故が起きてしまうのです。そういうことで、データの扱いというのは、使う皆さんも大変だと思いますが、かなり慎重にしないといけないという思いはあります。そのほか、御意見、ございますか。髙橋委員、お願いします。
○髙橋委員 5ページの所、中小企業向けにということですが、前回もお話させていただきましたように、こういったサポートの仕組みを作るのは非常に重要だと思いますが、それを使っていただかないと全く意味がありません。知らないものを知らないまま放置されないように、分からないことを分からないまま放置されないような仕組みについても考えていただかないと、「はい、これができました、では使ってください」では、多分、使わないと思いますので、それについても十分考えていただきたいと思います。
それと、これも前回の議論だったと思いますが、例えば自律管理にしますとなった場合、管理物質を縦軸とするのであれば、それができるかどうかというのを横軸として、できる、できない企業あるいは事業所というのをちゃんと判断できるような基準についても、是非、考えていただきたいと思います。
○城内座長 あと御意見、永松委員、お願いします。
○永松委員 今のコメントに関係するのですが、次回に、今、どんな仕組みがあって何が課題になっているか。そこら辺をお示しいただけると、より議論としても具体的な考えが出てくるのかなと思いましたので、御検討いただければと思います。
○城内座長 今後、ワーキングで検討するということは御承認いただいているのですが、それは前提として、この化学物質規制の仕組みの見直しイメージという所に基づいて話を進めていくことになると思いますが、それはそれで皆さん、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、そういう方向でワーキングのほうでも話が進んでいくことになると思います。そのほか、御意見等はございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。そろそろいい時間になってまいりましたので、本日の議論はこれで終了したいと思います。あと事務局から連絡ございましたら、お願いします。
○化学物質対策課長補佐 今、座長のほうからもお話がございましたように、今日、机上に配布させていただいていますが、ワーキンググループの設置を来月の20日に予定しています。そこで、この新しい規制の中で国のリスク評価をどうしていくのかといったことを中心に、御議論を進めていただき、場合によってはそちらのワーキングの議論とキャッチボールしながら、この検討会を進めていくこともあるかなと考えていますので、引き続き、よろしくお願いしたいと思います。
それから、今日もいろいろ御意見が出ましたけれども、この自律管理を実施していくためには人材を育成していくことが非常に大事になっていくと思いますので、次回以降になるかと思いますが、人材育成をどうしていくかということも含めて御議論いただければと思っています。事務局からは以上です。
○城内座長 次回は。
○化学物質対策課長補佐 次回は11月6日、14時からを予定しています。また改めて正式に御連絡させていただきたいと思います。
○城内座長 以上で、第9回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を閉会いたします。ありがとうございました。