第1回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 リスク評価ワーキンググループ 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和2年10月20日(火) 14:00~16:00 

場所

経済産業省別館 104会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)

議題

  1. (1)「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」における検討状況について
  2. (2)リスク評価ワーキンググループにおける検討事項について

議事


○植松室長補佐 それでは定刻より若干早いのですが、委員の皆様おそろいですので、ただいまから、第1回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会リスク評価ワーキンググループを開催します。
本日は初回ですので、委員の皆様を御紹介させていただきたいと思います。まず、三菱ケミカル株式会社プロダクト・スチュワードシップ推進部製品規制管理グループのグループマネジャーの植垣様、一般社団法人日本化学工業協会化学品管理部兼環境安全部部長の梅田様、日本労働組合総連合会総合政策推進局労働法制局局長の漆原様、慶應義塾大学名誉教授の大前先生、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所所長代理の甲田様、日本大学理工学部特任教授の城内様です。本日御欠席の御連絡を頂いておりますが、早稲田大学名誉教授の名古屋先生がいらっしゃいます。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長の平林様、近畿大学法学部教授の三柴様、製品評価技術基盤機構(NITE)化学物質管理センター次長の村田様、JFEスチール株式会社安全健康部主任部員(副部長)の山岸様、DIC株式会社レスポンシブルケア部化学物質情報管理グループのグループマネージャーの山口様です。先ほど申し上げましたが、本日は名古屋委員より御欠席の御連絡を頂いておりますが、ほか11名の委員の皆様に御出席いただいております。
続きまして、事務局側を紹介させていただきます。厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課より、課長の木口、課長補佐の中村、国際動向分析官の吉澤、化学物質評価室室長の内田、私は室長補佐をしております植松と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それではまず初めに、開会に当たり、木口化学物質対策課長より御挨拶を申し上げます。
○木口化学物質対策課長 御挨拶申し上げます。化学物質対策課長の木口でございます。この度は化学物質等の管理のあり方検討会リスク評価ワーキンググループの委員をお引き受けいただきまして、大変ありがとうございます。
職場における化学物質等の管理のあり方における検討会は、昨年の9月からスタートしたものでございますけれども、皆様御案内のとおり、労働市場に大変多くの種類の化学物質が導入されております。その中で、労働安全衛生法制で規制などされているものはごく一部でございまして、実際に現場で見ていますと、規制をされていない物質による労働災害というのが、まだまだ頻発している状態でございます。
国としても、化学物質リスク評価を行って、リスクの高いものについては規制に追加していくという方向で対処しているのですけれども、実際に現場を見てみますと、リスクの法令の対象物質が追加されますと、その物質を使うのをやめて、規制のされていない物質のほうに逃げてしまうと。それでまた新しい災害が起こるということがずっと繰り返し起こっているような状況でございまして、そういう中で、化学物質の管理のあり方がいかにあるべきかということで、1年ちょっと議論を進めているところでございます。
現在、化学物質の有害性につきましては、GHS分類に基づいての分類をして、ラベルとかSDSなどで情報伝達していくという仕組みができているのですけれども、こういった形で化学物質の危険有害性に基づいて、いろいろと対処をそれぞれの現場で考えていくといった自律的な管理という方向に少しずつ舵を切っていく必要があるのではないかということで、今、本検討会で議論が進んでいるのですが、そうなりますと、このリスク評価をいかにして進めていくかということについて、改めて明確にしなければいけないところもございますし、そういうところについて、専門性の高い分野でもございますので、別途、ワーキンググループということで深掘りをしていきたいということで、今回御参集いただいたというところでございます。
これから本検討会での検討状況なども含めて御説明申し上げますけれども、最終的に現場できちんとワークをする形で、リスク評価に基づく化学物質の管理ということで進めてまいりたいと思っておりますので、皆様方からもいろいろ御意見を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○植松室長補佐 今回は、コロナの感染予防のために一般傍聴席は設けず、各委員の席の間隔をあけて、マスク着用にて開催させていただきますので、御協力よろしくお願いいたします。マスクを着用していますと、どうしても声がくぐもってしまうので、御発言される際は、なるべく大きな声で御発言いただければと思います。
続きまして座長の選出を行いたいと思いますけれども、事務局といたしましては、城内委員に座長をお願いしたいと考えておりますが、皆様、御意見いかがでしょうか。ありがとうございます。それでは、城内先生、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、座長札のほうを置かせていただきます。それでは、今後の議事進行につきましては、城内先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○城内座長 あり方検の延長線上で進行役を仰せ付かったと思っています。よろしくお願いいたします。先ほどの課長の御挨拶の中にもありましたが、ある意味では化学物質に関して安衛法が乗り上げていまして、事故もいっぱい起きる、化学物質管理をこれからどうしようかというところで、その核となるリスク評価について、皆さんから御意見を頂いて、それを参考に行政のほうで、法令改正等も含めて、対策を練っていくものと考えています。この会議は行政から出した案について議論するのではなくて、皆さんの御意見を参考にして、法令等が出ていくものだと思っていますので、取っ組み合いにならない程度に盛んな議論をお願いしたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。それでは、議事に入る前に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○植松室長補佐 厚生労働省ではペーパーレス開催を推進しておりまして、皆様のお手元にはタブレットを配布しております。中身を御確認いただければと思います。議事次第・資料一覧というものが1つありまして、そのほかに資料1から資料6までを格納しております。漏れ等がございましたら、挙手にてお伝えください。よろしいでしょうか。そうしましたら、この資料を用いて御説明させていただきます。
○城内座長 初めに、本検討会の開催趣旨、本日の議論の進め方について、事務局より説明をお願いいたします。
○植松室長補佐 本ワーキンググループの開催趣旨について、御説明させていただきます。資料1を御覧ください。職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会、通称「あり方検」の開催要綱です。趣旨・目的をかみ砕きつつ、御説明させていただければと思います。
我々の目指すところは、いかにして労働災害を減らしていくかということに尽きると考えております。これまでの化学物質規制については、当然のことながら、これまでの時代に対応して設計されてきたものです。しかし、化学物質による労働災害が年間数百件程度に高止まりしている現状に鑑みまして、従来の仕組みを見直す時期にきているのではないかということで、昨年9月より、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」、通称「あり方検」において検討を重ねてまいりました。
議論を重ねていく中で、大きな枠組みとして、国が規制すべき個別管理物質と、事業者の自律的な管理を推進していく自律管理物質という2つのカテゴリーを軸とした新しい仕組みにシフトしていくという、一定の方向性に行き着いてきたわけです。そして、その枠組みを現実社会に昇華していくためには、専門的、技術的な肉付けをしていくことが不可欠であるということで、この度、ワーキンググループを設置して議論していくこととさせていただいた次第です。
繰り返しになりますが、我々の切なる思いとして、化学物質による労働災害を1件でも減らしていきたいということがございます。そのために必要な、化学物質管理のあり方につきまして、時代に即した考え方に基づき、御参集いただいた皆様とともに、今、そして少し先の未来を支える仕組みを形作ってまいりたいと考えております。
本ワーキンググループは、今後は毎月1回のペースで開催を予定しているところ、皆様には大変な御苦労をお掛けすることかと存じますが、労働者を守るために何卒お力添えいただきますよう、よろしくお願いいたします。
続きまして、議題の御紹介ですが、本日は2つ御用意しております。1つ目が、職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会における検討状況ということで、あり方検におけるこれまでの議論を御紹介させていただきます。2つ目が、リスク評価ワーキンググループにおける検討事項ということで、本ワーキンググループで検討する事項について、御説明させていただきます。
また、本日の議論の進め方ですが、本日は初回ということでもありますので、事務局から、これまでの化学物質管理を巡る状況等について、参考となる情報を説明させていただいた後、委員の皆様に自由に御議論いただければと考えております。
○城内座長 それでは、早速ですが、本日の議事に移りたいと思います。1つ目の議題である、職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会における検討状況です。まず、事務局から御用意いただいた資料の説明をお願いいたします。
○内田化学物質評価室長 あり方検討会における検討状況ということで、資料2から資料4まで通しで御説明させていただきます。資料が多いものですから、駆け足で説明させていただきますが、御容赦願います。
まず、資料2です。これについては、あり方検討会を開催するに際して、労働災害の現状などを踏まえて、我々の問題意識として、どういう課題があるのかということを整理した資料で、仕組み、労働災害の現状と課題という形になっております。
1ページを御覧ください。現在の化学物質管理の体系という形になっています。ピラミッド形になっておりますが、上から2つ目に「個別管理物質」と書いております。右に製造許可、特化則、有機則等で122物質となっておりますが、もともと、この労働安全衛生法の関係で、昭和47年にこの法が制定されて、特化則等の特別規則が位置付けられて、特に危険有害性の高い物質については、個別具体的な措置を掲げて規制措置を講じてきたというところです。
一番右にございますが、こうした特別規則の物質を決めるに際して、国によるリスク評価ということで、これは平成18年度から開始しておりまして、リスク評価を行って、リスクが高いとされたものについて、特別規則に追加するという流れで取り組んできたところです。他方、その下の「自主管理物質」として書いていますが、こちらについては、時系列的に言いますと、平成11年にSDSの交付義務というものが新しく設けられて、その後、ラベルといったものの義務が掲げられるとともに、平成24年には、その下にある努力義務というものが位置付けられたという経過で、個別管理ほどは規制は厳しくないという形ですが、こういった情報伝達の仕組みを設けて進めてきたということです。それから一番右にありますが、衛生基準です。これは法の制定当初からありますが、局排等による発散抑制とか保護具の備え付けといった義務が、こうした自主管理物質にまで掛かっているというのが、現行の法体系になっているというところです。
2ページ目は、今説明しました内容について、もう少し詳しく書いております。特別規則ということで、ここに書いているようないろいろな規則が定まっておりますが、右の下にある、特に危険有害性の高い物質、作業を特定して、それぞれ製造・取扱いに当たって遵守すべき事項を個別具体的に規定しているということで、3ページ目に具体的にその内容を書いています。
特定化学物質障害予防規則ということで、例えば製造等に係る措置ということで発散抑制措置、あるいは局所排気装置、1つ飛びまして漏えいの防止とあります。管理ということでは、作業主任者の選任、作業環境測定というものを位置付けております。それから、健康診断、保護具といった、個別物質ごとに、それぞれに係る措置の内容を決めているという状況になっております。
4ページを御覧ください。こうした特別規則への追加に当たって、ここに書いているリスク評価というものを、平成18年度からしてきました。具体的には、真ん中にある有害性評価というものと、ばく露の実態調査を踏まえたばく露評価というものを踏まえまして、リスク評価ということで、初期と詳細の2段階の評価になっております。詳細のリスク評価で、リスクが高いとされたものについては、下にある健康障害防止措置の検討ということで、具体的な措置について検討をした上で、特別規則の対象物質に追加をするという流れで取り組んできました。
5ページを御覧ください。具体的には平成18年度以降、ここに書いている28物質を特化則に追加してきたという経過になっております。
6ページ以降については、自主管理物質に係る対応ということで、6ページ目はGHSに基づくラベルの表示ですとか、あるいはSDS、安全データシートの交付を義務あるいは努力義務ということで求めているといった状況です。
7ページ目については、リスクアセスメントの義務化ということで、一定の危険有害性が確認されている物質についてはリスクアセスメントの義務が掛かっていますが、罰則はないという状況になっています。2つ目に書いていますが、リスクアセスメントの結果に基づいて、危険又は健康障害を防止するための必要な措置を講ずるということですが、これについては努力義務という形になっております。こういった措置が、平成28年から施行されているといった状況になっております。
8ページを御覧ください。衛生基準ということで、有害原因の除去、ガス等の発散の抑制、呼吸用保護具等について、こうした措置を講ずるということで義務が掛かっておりますが、ここに書いている内容については少し具体性に欠けるといったことで、明瞭な形ではないので、なかなか実際に対応するに当たって、どう対応すればいいのかというような問題も少しある状況です。
そういった形で規制措置を設けている状況の中で何が起きているかということが、9ページ以降に記載しております。9ページは、平成30年の労働者死傷病報告のうち、その起因物質が化学物質であるものについて整理したものです。真ん中に縦に「割合」と書いていますが、どういう化学物質によって障害が起きているかということで、一番上の特別規則の対象物質によるものが18.5%という形になっておりまして、それ以降、下にありますが、SDSの交付義務対象が27.4%、義務対象外の物質が15.1%、物質名が特定できていないものが38.9%ということで、全体の約8割は、この規制外の物質によって労働災害が起きているといった状況になっております。
10ページ目は、労働災害が起きていることに関して、事業場の規模別に見たものです。一番右に「発生率」と書いています。それほど大きな差が出ているわけではないのですが、傾向としては、大きな企業に比べて、中小の企業で化学物質による労働災害が発生している割合が高い状況になっております。
11ページ目以降については、規制対象外の物質による労働災害事案の3つを、事例として掲げております。1つ目は、印刷事業場で発症した胆管がんの事例です。御案内のところかと思いますが、印刷機に付いたインクを洗浄剤で除去する工程に従事している、特に若年の方々で胆管がんが多数発症したということで、右の中段に書いておりますが、そういった事業場においては、通風、換気設備に問題があって、胆管がんの罹患率が通常の1,200倍を超えることも判明しているということです。その原因物質として、1,2-ジクロロプロパン、ジクロロメタンというものが挙げられていますが、発生した当時においては、例えば一番下に小さく書いておりますが、1,2-ジクロロプロパンについては、IARCの分類で3の分類不能となっていたということですが、その後、こういう事案も踏まえて、IARCの分類は1に格上げされているといった状況になっております。
12ページ目を御覧ください。これは福井県の事業場から報告された膀胱がんの発症事例で、原因物質はオルト-トルイジンとなっています。中段に書いておりますが、作業環境測定、個人ばく露測定の結果は産衛学会が勧告する許容濃度の1ppmより極めて低いということで、これは2015年に報告されておりますが、私どものリスク評価の中でも、2008年にリスク評価を行って、経気道ばく露という観点では、リスクが低いと評価されたものです。この事案を調べてみると、下の2つのポツがございますが、オルト-トルイジンを含む有機溶剤で作業服が濡れることがしばしばあった、あるいは内側がオルト-トルイジンに汚染されたゴム手袋を繰り返し使用していたということで、経皮ばく露が主な原因ということで、その後、特化則に追加して対策を講じているという状況です。
13ページ目は最近の事案で、剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害事案です。橋梁、高速道路などで工事をやっていますが、そういった所で塗料を剥がす作業とか、あるいは石綿を含有する建築用仕上塗剤を除去する作業において使用される剥離剤ということで、未規制物質であるベンジルアルコールなどが含まれていますが、そういうものを使用している際に、引火による火災、吸入による意識不明、視覚障害等の事案が多発ということで、下のほうにも幾つかの事案が書いてありますが、今年の夏にも死亡事故が発生したといったことで、急遽、私どもも通知を出して、しっかりと情報伝達をして、SDSに記載しているような対策をしっかり講じるよう指導しているところですが、最近でも、こういう未規制物質による労働災害の事案が発生している状況になっております。
14ページ目以降です。こうした労働災害の状況を踏まえて、私どもとして考えている課題を幾つか挙げています。まず14ページ目は、個別管理物質に係るものです。先ほど来御説明していますとおり、個別管理物質については、具体的な措置が罰則付きで義務付けられていることに対して、自律管理物質については法令上求められる措置の具体性に乏しいということで、個別管理と自主管理の間に、ばく露防止措置の実効性という点で大きな差があると考えております。こういう中で、国がリスク評価によって個別管理物質への追加が一旦決まると、その物質の使用をやめて、危険有害性を十分に加味せずに自主管理物質に変更して、その結果十分な対策が取られずに、労働災害が発生する、言わばいたちごっこみたいな状況が起きているところです。
また、国によるリスク評価については、下に書いてある危険有害性の情報収集、あるいは測定分析手法の確立、さらには事業所をピックアップして、現地に赴いてばく露実態調査を行うといったことで、いろいろなステップを踏んで、最終的に対象物質を決めていくということですが、現状としては、こうした形で、最終的な措置を決めていくまでにおおむね10年以上かかっているということで、長時間にわたっていろいろな方々の御協力を得て、こういう形で対象物質に一旦追加が決まると、それを使わなくなる、ほかの物質に転換していくといった状況が問題ではないかと考えています。
一方、自主管理物質については15ページ目にございます。義務対象物質ではない物質についてですが、ラベルとSDSについて、全て表示している、あるいは全て交付していると回答している事業所の割合は、それぞれ6割程度ということです。私どもは80%を目標に掲げておりますが、まだ十分に取組がなされていないという実態がございます。
16ページ目、17ページ目については、企業の規模に区分けして整理しています。上は労働者の認識・教育に関するものということで、左から順に、有害業務に従事している認識があるか、次に、有害業務に関する教育とか説明を受けた経験があるか、さらにはSDSがどのようなものかを知っているか、ラベルがどのようなものを知っているかということで、企業の規模で見ますと、大まかに言いますと、小規模の企業と大規模の企業を比べると、半分ぐらい、認識が少ないといった状況で、一番下に少し載っている小規模の企業では、大体3割程度ぐらいしか、そういう認識がないといった状況になっております。17ページ目ですが、特殊健康診断、作業環境測定、リスクアセスメントの実施状況です。特に一番右のリスクアセスメントの実施状況においても、少し色を塗っている小規模の企業においては、大体3割程度の実施率となっています。
18ページ目ですが、そういった形で、なかなかリスクアセスメントに十分に取り組まれていないという背景として、上に書いていますが、十分な知識を持った人材がいないとか、実施方法が分からないといった回答が多くて、こうした小規模の事業場においては、支援の必要性が高いと考えられるところです。資料2の説明は以上です。
続いて、資料3の御説明をいたします。今し方御説明しましたような問題意識を踏まえて、あり方検討会というのを昨年9月以降に開催してきたところです。資料3の1ページ目に書いておりますが、開催経過ということで、昨年の9月から今年の9月までに計9回実施しています。それぞれの開催状況については、2ページ目にかけて記載しております。
3ページ目を御覧ください。この検討会はまだまだ続くところで、この検討会とワーキンググループの関係が見えづらいというところもありまして、こういった形でデマケを整理しているところです。左に「検討事項」ということで幾つか書いています。1つ目は、危険有害性情報の伝達のあり方というものを、この検討会ではまず最初に検討を進めてきたところで、7月に検討会で見直しの方向性を取りまとめていただいたところです。4ページ以降にありますので、これはまた後で御説明させていただきます。
次に、今、まさしく検討を進めているところですが、事業場における化学物質等の管理・対策と、特に中小企業等での管理・対策を促進するための措置のあり方の検討を進めています。これは幾つか分かれますが、1つは現行制度の徹底ということで、右に書いていますが、中小企業に対する支援などについて、これは引き続き検討という形になっていますが、検討会で検討すると。あるいはリスクアセスメントの実効性の確保についても、検討会で検討を行うという形になっております。
2つ目に、現行制度の課題への対応ということで、作業環境管理が困難な場合の措置、作業環境管理と組み合わせた健康診断の緩和、健診結果の長期保存、遅発性疾病の把握等について、これは検討会で今、正しく検討を行っているところで、下に注として、例えばこのようなことを検討しているということで書いています。1つ目の○は、作業環境管理の原則に基づくことが難しい、有害物の気中濃度を十分に低く保つことが困難な場合に、ばく露防止のための方策として、どのような仕組みが必要であるかといったこととか、次は、逆に作業環境管理が適切に行われて、気中の有害物の濃度が管理濃度以下に維持されている場合は、こうした物質に係る健康診断の実施を免除する、あるいは頻度を少なくするといった形で、個別管理物質ということで個々に細かく規定していますが、例えば健康診断の実施について、少し規制緩和してもいいのではないか。そういったようなことについて、議論を頂いているところです。
表に戻りまして、3つ目は個別規制と自律管理の整理です。ここは分かりづらいのですが、また後ほど御説明いたしますが、規制の見直しの方向性については、この夏から議論いただいておりますが、そうした方向性を踏まえて、具体的な規制の措置内容については、検討会で引き続き検討いただくと。他方、このワーキングにおいては、そういう規制の見直しの方向性を踏まえて、例えば引き続き個別管理物質として管理していくべき物質の対象物質としてどういうものがあるのか、あるいは後ほど御説明いたしますが、自律管理を行う上での判断基準などの考え方といったことについては、より専門性の高い、このワーキングで検討いただくということ。それから、その下にあるリスク評価のあり方についても、有害性の試験などの内容も含めて、このワーキングで検討いただくということで整理しております。最後に、化学物質の管理を担う人材については、検討会で検討を行うということで、いろいろと今後の検討の中で、少し変わってくる部分はありますが、現状としてはこういう整理の下、これから検討していただきたいと思っております。
4ページ目以降です。これが検討会で一番最初に取りまとめていただいた、危険有害性の情報伝達に係る対応というもので、この7月に整理いただいたものです。簡単に御説明しますと、1つは、ラベル表示、SDS交付による情報伝達を徹底・充実させるための取組ということで、行政による取組として、1つ目の○です。今、国のほうでモデルラベル・モデルSDSの作成ということで、これまで約3,000物質を作成しておりますが、これらについて数を増やす、あるいは最新の知見に基づいて更新するといった取組を国として進めています。さらに中小企業支援として、業界団体の協力も得て、中小企業等からの無料相談対応とか、助言支援を行う体制の構築、さらにはラベルSDSの作成に関しても、必要に応じて専門家による助言を行うような事業などを実施するということで考えております。
その下ですが、危険有害性に関する知見・情報を収集し、Webサイト等で積極的に公表する。この際、情報源が一元化できるよう、関係省庁・機関で連携をするということで、ここの危険有害性の情報の収集とか効果的な発信、あるいは他省との連携については、このワーキンググループで今後検討いただくという整理になっております。
その下の周知・指導ということで、ラベル表示、SDS交付に関して、法令を遵守していない事業者に対しては確実に是正を図らせるということと、是正しない場合には対象製品等を公表するといったことを進める形になっております。
5ページ目です。1つ飛んで3の所ですが、情報伝達を受ける側(ユーザー)の取組ということで、ラベルとかSDSが添付されていない場合は必ず販売元に問い合わせるなどの対応を行う、あるいは一般消費者向けの製品であっても、ラベル等の義務となっている物質を業務用に使用する場合は、ラベル表示、SDS交付を行わなければならないということで、この下のほうにあるものについては、今、検討会でも議論されている状況になっています。
6ページ目です。ラベル表示・SDSの交付ということで、このワーキングにも深く関わってくる話ですが、6ページ目の一番上ですが、ラベル表示・SDSの対象とする物質は現状で673物質ございますが、これについて法令で義務の対象とする物質について、国がモデルラベル、SDSを作成している約3,000の物質まで拡大すると。その際に、次の7ページ目に書いていますが、一気に増やすわけにはいかないので、優先順位を付けて対応するということで、1つ目の○に3つのポツで書いています。高い区分の有害性がある化学物質ということで、発がん性の高いものを優先してやる。それから、これまでに労働災害が発生した化学物質、さらには日本国内での輸入量、生産量が多い化学物質といったものを勘案しながら、順次3,000に向けて義務対象物質の追加に、今後取り組んでいくと考えているところです。
8ページ目です。これはラベルとかSDSの記載内容ということで、1つ目の○ですが、SDSに記載すべき内容として推奨用途、使用上の制限などを追加することを検討する。それから1つ飛んで、混合物についても、中小企業等でも混合物のSDS作成が簡易に行えるようなツールを開発するなどの取組を行う。それから、3として、SDSについては今までは文書での交付という形になっておりましたが、QRコードなどを活用するということで、クラウドも含めて、そういったデジタル対応などについても活用することで、円滑な情報伝達を進めるということで取り組んでいきたいと考えているところです。
9ページ目です。1つ目は、自社の労働者に関する取組ということで、新しく初めて作業に従事する方などに、きちんと作業上の注意を伝えるとか、学校教育などでも、こういうラベル教育を積極的に導入する、あるいはリスクアセスメントを行うに際しても、作業に従事する労働者を参画させるといった対応を進めるということです。情報伝達だけではうまくいきませんので、それを受けた労働者が適切に対応できるような取組を、併せて実施していくということです。さらには自社に限らず外部委託を行う際にも、きちんと危険有害性の伝達あるいは取扱上の注意などの情報を伝達するという取組を進めていくという形になっております。
10ページ目です。そういった形で、これまで情報伝達についてを中心に議論されてきました。そうした議論の中でリスク評価に関する御意見もありましたから、参考ということで整理をしております。基本的には、他省との連携というところの御指摘を結構頂いておりまして、特にリスク評価ということで、今は化審法とか農薬とか、いろいろな法制度がございますが、それぞれのところで、それぞれがばらばらにリスク評価をしているという状況ですが、扱っている情報などは共通化しているところもあるので、もう少し統一的に他省と連携して取り組めないかといった御指摘を頂いているところです。
最後に資料4です。そういった議論の中で、今後の化学物質管理のあり方についてということで、これは9月30日のあり方検討会で、事務局より今後の方向性に提示させていただいた資料を持ってきています。6ページ目を御覧ください。冒頭、ピラミッド形の化学物質管理の現行の体系について御説明させていただきましたが、そうしたものを今後このように見直してはどうかというイメージを、御提示させていただいております。
1つは、今までは個別管理という上から2つ目の所を追加していくことを中心に、リスク評価も含めて、そこのところを精力的にやってきたところですが、現状として、その下の自律管理、この言葉はいろいろと御指摘も頂いておりますので、今後整理しなければいけないのですが、仮の名前として自律管理ということでお考えいただければと思います。この部分について、取組を強化していく方向性で、特にこういう取組を事業者の方々がやっていただく上で必要となる有害性の情報の提供とか、あるいは判断基準の提示を進めていくという転換をしていきたいと思っています。
それを踏まえて、左の上に書いております。今まで中心になってやってきている個別管理への追加というのは、基本的にはしないと。ただし、重篤な労働災害が多発するなどの要件を満たす物質が出てきた場合には検討ということで、全くしないわけではないのですが、ある意味で限定的な対応ということでやってみてはどうかという提示をしております。
他方、そこに力を注いできたものを、自律管理のところに力を注ぐということで、右にあるラベル、SDS、リスクアセスメントの義務を3,000まで増やすということ。それから、一番右にございますが、もともとここは「衛生基準」と書いておりましたが、途中で御説明いたしましたが、なかなか判断基準が明瞭でないといったことで対応も難しいところもあるということで、もう少しそこをしっかりと判断基準を設けるということで、ばく露限界値を設けて、それ以下で管理をする、義務を課す。数百物質と書いておりますが、そういったものですとか、ばく露限界値が設けられないようなものについても、衛生基準についてもう少し明瞭な形で一般ルール化して、それの遵守義務を課すといった対応。こうした取組を進めるに当たっても、GHS分類がしっかりしていくことが必要ですので、国としてGHS分類が未実施のものについては、積極的に分類を進めていく必要があると考えております。それから、一番上の右の所に点線で書いていますが、今まで個別管理物質として取り扱っているものについても、一定の要件を満たせば適用除外を可能とするかどうか、規制の緩和を行うかどうかということも、併せて検討いただいている状況です。
具体的にその内容を記したのが3ページ目です。1つ目の○ですが、有害性の高い物質について、国がリスク評価を行って個別管理物質に追加していくという、これまでの方法を今後は以下の仕組みに見直すということで、御提案をしています。1つ目の黒三角の所に書いていますが、国によるGHS分類の結果、一定以上の危険有害性の区分に該当する物質を自律管理物質として位置付けて、ラベル、SDSの義務対象とする。それから、リスクアセスメント及びその結果に基づく自律的なばく露防止対策の実施を義務付けるということで、リスクアセスメントではなくて、措置のほうは努力義務という位置付けでしたが、そこもしっかりと義務付けるという形になっております。
2つ目は、ばく露限界値となる物質については、ばく露限界値を法令上の基準として位置付けて、労働者のばく露濃度が基準以下となるような必要な措置を講ずることを義務とする。ただし、括弧書きで書いていますが、ばく露限界値以下に維持するための手段については限定しないと。今まで個別管理については、手段を具体的に規定していましたが、そこの手段については限定せず、その限界値以下になるということだけを、ある意味では義務とするということで書いています。
それから、自律管理物質のうち、ばく露限界値のない物質については、例えば以下のような基本的な対策の考え方を法令で規定し、その考え方に基づく措置の実施を義務付けるということで、発散源はできるだけ密閉化するとともに、換気等により作業場の気中濃度をできるだけ低下させる、あるいは一定以上の有害性が認められる物質を取り扱う場合は、上記に加え、労働者に呼吸用保護具を使用させるということで、その下にも、皮膚刺激性、眼刺激性のことに関してありますが、現行の衛生基準については、あくまでも備え付けの義務という形になっていますが、使用の義務に見直すといったこととか、もう少し具体的な対応も含めて、この中身については今後検討会で議論いただく形になると思いますが、そういった義務内容についても見直しを行うことを考えています。
2つ目の○については、健康診断について、今は個別管理物質だけに掛かっておりますが、自律管理物質について健康診断の実施についてはどう考えるかということで、特殊健診は求めないが、年1回の一般健康診断で、作業による健康影響の有無を確認する考え方は取り得るか。そういったことについても、今後も検討いただくという形になっております。
4ページ目です。自律管理物質の管理が適切に行われるための確保ということで、衛生委員会の話とか、あるいは自律管理の実施状況について記録をして保存するといった話です。2つ目の○ですが、個別管理についても新たに追加するものについては、限定的に対応するという考え方をお示ししましたが、例えば以下のようなものということで、重篤な労働災害を多数発生させている物質、あるいは有害性に関するGHS分類の区分が高く、かつ許容濃度が低い、蒸気圧が高いなど、特に管理が困難と考えられる物質ということで、例示として書いていますが、今後どういうものを引き続き個別管理物質の対象として考えるか。そういった対象物質の考え方については、今後ワーキングで検討いただくということで考えております。
それから、個別管理物質について一定の要件が満たされれば、自律管理を認める、規制緩和を行うということで、その考え方ということで、適切な人材が一定以上配置されているとか、労働災害あるいは有所見者が発生していないとか、良好な状態で維持管理できている。こういったものが一定期間満たされているという場合には、個別管理についても自律管理を認めるとしてはどうかといったことも提示しております。
それから、中小企業向けの支援ということで5ページに書いておりますが、化学物質管理に係る情報を集約したポータルサイトの整備とか、専門人材による助言・支援を行う公的サービスなどについて記載しております。特に情報の集約、ポータルサイトによる発信については、このワーキングでも検討いただくということで考えております。
このようなことを提示させていただきまして、8ページ目ですが、9月30日のあり方検討会においては、こうした規制のあり方の見直しに関して、以下のような御意見を頂いたところです。
1つ目は、今まで個別管理に相当するような水準の有害性のレベルのものが、今後こういう見直しをすると自律管理になるということで、現行と今後では違う基準となるということかといった話。2つ目については、個別管理に新しく対象とする物質については、重篤な労働災害を多数発生させている物質などが対象となるのではないかといった御意見。3つ目については、個別管理物質に関する規制緩和の話をいたしましたが、健康管理については規制緩和をしてもいいけれども、それ以外の幾つかのいろいろな措置が掛かっていますが、それについては規制緩和すべきではないといった御意見。その下ですが、自律管理に転換するためには、事業者への意識付けや取組を促す仕組みが必要。下から2つ目ですが、自律管理を進めるためには、中小企業の取組をサポートする仕組みが必要という御意見。
全体として9月30日の検討会では、自律管理の方向に転換することについては大きな異論はなかったところですが、逆に、本当にできるのかと。自律管理をするに当たって、特に中小がどう対応していくべきなのかというのは、よく検討しなければいけないといった御指摘を頂いているところです。
下から5つ目ですが、現在、リスクアセスメントをしても問題は起きていないところなので、リスクアセスメントの義務対象を増やすことについては少し違和感があるといった御指摘がございましたが、それに対しては、まずはリスクアセスメントを何年かやってみて、問題がなければ外していくといったことではないかという話もありました。ポータルサイトについては、データの更新を進めるべきと。それから、外部人材だけではなくて、社内の人材育成も重要ではないか。このような御指摘を頂いたということで、まず規制のあり方については、これまでのいろいろな御意見も踏まえながら提示させていただいたところですが、それについて、あり方検討会でもまだ方向性が決まったわけではなくて、今後、引き続き検討していくという状況になっておりますが、そうしたあり方検討会の検討の方向性も踏まえながら、このワーキングで検討いただくという流れになっておりますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。今、あり方検討会の大きな流れを御説明いただきました。これから御意見をお伺いしたいのですが、リスク評価ワーキンググループの検討事項はこの後にあるので、それに関してはまた後で御説明、御意見をお願いしたいと思います。大前委員から資料を御提出いただいているので、それについて御説明をお願いいたします。資料6ですね。
○大前委員 ありがとうございます。資料6です。今日提出した資料は、事務局から産業衛生学会に対して、何か意見があるかというのがあり、非常に期間が短かったので、理事長、副理事長、許容濃度の委員長経験者のみで少し議論してまとまったものです。したがって、これは学会としての正式な意見ではなく、学会の中の有志の方々のまとめということで、よろしくお願いします。
まず、4枚目に「参考」と書いてありますが、GHSの分類の考え方が書いてあります。これは特定標的臓器毒性の所だけですが、上の3.9.2.7は、このような状況にあると分類になる、下の2.8は分類しない影響が書いてあります。この2.7を御覧いただき、赤字の所を見ていただくと、全て非常に大きな影響があるかどうかということで、GHSは分類しているということです。
3枚目、量-影響関係という絵があります。横軸が量、ばく露量を表していて、縦軸が影響の強さを表している資料です。この影響の強さというのは、様々な観点から分類が可能です。例えばピンクだと可逆性の影響、治るか治らないかという影響、真ん中のグリーンは中毒かどうか。中毒というのは、要するに医学的な治療が必要かどうかという観点で分けることができます。一番左のブルーは、健康にとって不利かどうかという観点で分けることができますが、GHSというのは中毒、先ほど重大な影響のことが分類の基本とありましたが、要するに中毒を見ています。GHSというのは、あくまでも中毒が起きるかどうかという強い影響に関して見ています。その下に「許容濃度等が標的とする影響」とありますが、許容濃度がばく露限界値など、これはこのような強い影響ではなく、健康にとって不利かどうかというレベルの影響を見ています。したがって、GHSで分類されているかされていないかということと、許容濃度があるかないかということは、見ている影響が違うので、別物だという認識をしていただきたい。そういう認識をしていただいた上で、今日の資料を説明します。
2ページ目、タイトルは書いていませんが、物質分類と事業者・国の対応と責務ということで、先ほど三角形の図がありましたが、これは使わないでほしいというのが1つの意見です。なぜかというと、この三角形の絵というのは、上が8物質で、三角形になっていて、たくさんの物質があり、規制されている物質はこれだけしかなく、そのほか無規制がたくさんあるというイメージの絵なのですが、これを見ると、上は危ないが下は安全だという誤解を受ける可能性があります。したがって、実は我々の観点からいくと余りいい絵ではないので、できれば使わないでほしいのです。その代わり、この物質分類の小さな赤字で書いてある個別物質、個別管理の所に、量反応関係を評価できる有害性情報が十分あり、かつ現場での使用・管理の経験がある物質という形で、量反応関係の評価が質も量も含めてできるかできないか、そのような見方で図を直していただきたいというのが意見です。
個別管理、自律管理、やはりこのような形で自律管理をメインで行おうというのが今回の趣旨なので、これはいいとして、2番目の、国が決定したばく露濃度や生物学的指標の許容値、以下許容値と言いますが、これは三角形の部分だと許容濃度やばく露限界値のある物質という形になっていて、要するに学会等の民間の機関の数字があるもので分けているのですが、これを国が行うのはおかしな話で、国が許容値を決めたものという形にしなければ、例えば産業衛生学会に全部責任を押し付けられてしまう。要するに産業衛生学会が国を牛耳っているという言い方はおかしいですが、そのような形になるのはおかしな話なので、しっかり国が数値を決め、数値があるものとないものという形にしなければいけないということだと思います。
例えば、今、リスク評価で第2評価値というものを作っていますが、第2評価値がそれに相当する、あるいは管理濃度がそれに相当すると思いますが、いずれにしても国が何らかのルールで、この許容値を作らなければいけない。そのような形で分類する必要があると思います。上から3つ目、十分な有害性情報がない場合、ないから国も許容値が作れない場合が幾らでもある、これが数として一番多いと思いますが、このような場合もあります。それから、有害性情報自体がない。3番目と4番目の差は、3番目は一応GHSで分類されているので有害性の情報はありますが、許容値が決められない。もう1つの4番目は、有害性情報自身がないということで、GHSの分類すらもないという意味の差です。一番下は、これはほとんどあり得ないと思いますが、有害性がないという確かな情報がある物質。これはほとんどあり得ないと思いますが、一応概念としては、このような考え方もできるということです。それに対応して、事業者や国がこのようなことをやらなければいけないのではないかというのが、右側の欄になります
ここで非常に困ったのは、自律管理というのは義務なのか努力義務なのか。自律管理を義務にすると、それは自律管理ではないのではという考えがあり、自律管理と義務はなかなか相反するような感じがしたので、あえてここにブルーで「努力義務」と。赤の「義務」はもともとある義務なので、分けて書いています。ただし、今まであり方委員会の議論を見ると、例えば2番目で努力義務、許容値以下で管理するのは義務にしたらどうかと書いてあるので、ここをどうするかはまた別な議論になると思いますが、このような形で行っています。衛生基準は、先ほど説明があったように衛生基準があるのですが、それに対応する値がないのです。例えば先ほど保護具のことで、準備はあるが使用がないという説明がありましたが、同じように衛生基準で装置を作れと書いてあるのですが、どれぐらいのレベルにすればいいのかという基準がないので、これはやはり何らかの形で提示しなければいけないのではないかという意見です。
3番目の枠のポツの4つ目、許容値のない物質の使用回避の努力義務、義務化。基本的には、許容値のない物質は本当は使ってほしくないというのは、学会の考え方です。もっと言うと、次の有害性情報がないものは絶対使ってくれるなというのが本音なのですが、現実的にはそういうわけにはいかない。例えば新しい物質ができて、非常にいい性能で、まだ有害性が分からないけれども、それで物を作り出すということが幾らでもあるので、使用禁止というわけにはいかないということで、使用回避はしてほしいけれども、どうしても使うならきちんと情報を出してください、それは努力義務でしょうという形で行ったらどうかという意見です。
下から3つ目の、許容値設定に資する調査協力の努力義務。これはリスク評価でばく露評価をするとき、いろいろな企業に測定させてほしいとお願いしていますが、なかなか協力が得られないことがあるので、この辺はきちんと企業もしっかり協力していただきたいということで記載しています。国のほうは、赤で書いてある所ですが、国の義務としては、例えば一番下の3つ目のポツで、管理すべき物質を入れる場合と外す場合、これは先ほど議論が出ましたが、どういうときに入れたらいいのか、どういうときに外したらいいのかという話がありますが、多分外したほうがいいというのは物そのものを全部外すわけではなく、その会社で外してもいいということだと思います。この物質を特別規則から全部外すのではなく、この会社では外してもいいということにしないと、当然管理する事業場の能力なり、ばく露が全然違うので、これを外すのは非常に危ないので、先ほどの話は、この企業だったら外してもいいという解釈をしました。当然ですが、情報がないものは創出・収集して許容値を策定していただきたい。先ほど、リスクアセスメントのときの有害情報をどのようにするかという議論がありましたが、やはり国として情報を作る必要が当然あって、20年ぐらい前は、日本から何も情報も出てこない。日本は米国やヨーロッパから情報を取るだけで、文献からですけれども、日本から出てくる情報は何もないという、非常にプアな状態でした。それが情報公開法ができてからバイオアッセイのデータがたくさん出てきて、発がんの評価に関しても、発がん以外の影響に関しても、バイオアッセイの値が非常によく使われるようになりました。そのような情報を国として作らなければいけないという意味で、国は情報を作るという義務もあるのではないかということで、下から2つ目に提言してあります。国は情報を創出・収集し、許容値を策定する義務があるのではないかということで書いています。
衛生基準値のことですが、衛生基準値はどうするのかという話があり、要するに情報がないものに対してどういう値を作るのかというのが非常に難しい問題ですが、粉じんに関しては実際に日本産業衛生学会が第3種粉じんということで、その他の粉じんということで数字を持っているし、ACGIHは特定の情報がない粉じんということで数字を持っています。これは両方とも10mg/m3ですが、このようなものを使えば、粉じんに関しては衛生基準の値を作ることができます。ただ、粉じん以外に関しては、今のところそれに相当するものが日本でも外国でもないので、これをどのようにするかというのは次の問題になりますが、ここでは一応「500ppm?」と書いてありますが、500ppmでいくと0.05%ぐらいで、大体二酸化炭素の濃度と同じぐらいというところで管理すれば、そんなにひどいことはないだろう、特に揮発性が高くて危なさそうな物質は、500にしておけば間違いなく相当安全側に傾くだろうというイメージで500と書いていますが、これはまだクエスチョンの状態です。
このようなことを産業衛生学会の有志の中で、このワーキンググループのテーマと、上のあり方委員会のテーマとごっちゃになった話になりますが、このような形で今日、資料を提出させていただきました。以上です。
○城内座長 それでは、あり方検討会で議論したものについて、皆さんから御自由に御意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。範囲が広いのでなかなか難しいかもしれませんが、御専門のところからでも、包括的な意見でも結構ですので、よろしくお願いいたします。
○甲田委員 労働安全総合研究所の甲田と申します。多分議論の中にあるのだろうと思うのですが、自律的管理、先ほど大前委員もおっしゃられた自律的管理というものを、どういうものにするのかというのが、やはり現場の労働衛生管理を考えるときには、かなり重要な話になるのではないかと思っております。うちの研究所は今まで、先ほどいろいろな例が出ました、膀胱がんの事例とか胆管がんの事例、それから有機粉じんの事例、それから今はベンジルアルコールとか、MOCAの事例、いろいろとやっているというか、依頼があって現場に行って、どうして健康障害が起きたのかをずっと見ているのですが、1つには、先ほどから出ているように、規制対象外であるからということで、かなり使い方、こういう言い方をするとおかしいですけれど、自主管理なので、特に管理をしていないという形で、かなりの高い濃度のばく露、又は非常に大量の使用が見て取れるのですね。そのときには、規制がないので、特に保護具とか環境管理とか、諸々のこともしていないと。非常に高い濃度で、不幸な場合には急性障害が起きてしまう。又は数年で健康障害が起きてしまう。又は放置していると、がんが発生してしまうような形になって、全て後手後手に、実はなってくるわけです。そのような物質の特性とか有害性が、非常に情報がプアだとか、そういうものに関する自主管理の中味が非常に、やはり事業所、特に我々が入って来たのは、やはり大きくない事業所、特に50人未満の事業所では、どうやってそういう自主的な管理をしていったらいいのかというような情報がほとんど伝わっていないわけで、そういう所から災害が起きているのですね。そういうものが一つ一つ報告されると、その都度その都度、特別管理物質という形で、格上げされるというか、先ほどのピラミッドの構成からいうと、格上げされていくと。これは多分いたちごっこ的な話で、新しい物質ができて、例えば使い方等が悪いと、そういう形の健康障害が起きる。最近の事例では、全く有害性がないのですけれども、有機粉じん、架橋型ポリマーと言われるものはみんな使っているのですが、毒性がないがために取扱い方法、製造後の工程ではなくて末端の、いわゆる包装の工程というか、そういう所で出てしまうような、企業からすると作って出荷するまでの、どこの工程できちんと管理すればいいのかという情報がない中で、そういう事故が起きている。また、健康障害が起きているような気がいたします。ということで、自律管理に関してはかなり突っ込んだ形で、私どものほうで提案をしないと、何をしていいのかというのが、事業所、もっと言うと労働者が現場で何をしたらいいのか、又は1年を通してどのようなことをやって、自律管理がうまくいっているのかどうかが分かるような形で提案しないと、やはりこういう災害は繰り返すのではないかと非常に強く思います。
それで先ほどの話で、災害が起きたのが50人未満の事業所が実は多かったという話ですけれども、系列下で言うと、親会社というか、指導的な立場にあるのも、大手ではないのですが、300万人未満の会社だとかいうのがあるので、そういうヒエラルキー中で、グループの中で、そういう情報がもう少し現場で共有されるようなことがあれば、健康障害が発生する前に、そういう意味では予防的な、さっきから出ている、自主的なを使わないで、自律的な管理というような話ですけれども、そういうものにつながるのではないかと思うのが1点です。
それからもう1つは、災害の出方を見ると、作業管理の中で言うと、作業環境管理、健康管理というような、作業環境測定をしましょう、あるいは健康診断をしましょうという、いわゆる先ほどの法的な義務事項があるのですが、作業関連に関しては、かなり創意工夫というか、そういったような形でなされている。保護具の取扱い1つ取っても、渡した後は労働者に任されるというようなこと。又は使用量、又は使用するときの、例えば空調をどうするかとか、そういうことも含めて、やはり現場任せのところがあって、現場でノウハウというか、取扱いに関する知識等がない場合がかなり多いような気がします。災害の調査を見に行って、我々が最初に見るのは、労働者が何をどこでどうやって使っていたのか、どういう量を使っていたのか、そのときのウエアリング、要するに作業着又は手袋、マスク、ゴーグル等々、その辺のところは併せて見させていただきますけれども、首をひねらざるを得ないようなところがかなり、実はあったりいたします。そういう観点から言うと、自律管理をもう少し、こういうことをやったらいいですよというような、セットメニューとまでは言いませんけれども、こういうような提案で、こういうようなことをやられたらいいのではないでしょうかと。それは、化学物質のいろいろな種類というか、揮発性の高い場合はこうしなさいとか、毒性の情報がない場合にはこうしましょうとか、有害性がなくてもこのくらいは最低してねというような形の中身を提案することが、私は重要ではないかなという感じはしております。以上です。
○城内座長 そのほか、御意見等はございますでしょうか。
○山口委員 企業的な立場から少し、私が今まで経験してきた内容として、情報がプア、確かにそういうのもあるかと思います。ただ、情報が過多というのもたくさんあると思います。その過多とプアがどれぐらいの割合かというのは置いておきまして、そのような情報が渡されてもどう使ったらいいか分からないと今、正におっしゃられたのですけれども、そういった部分が非常に多いのかなと思っています。我々は今、SDSとかラベルとかの話をさせていただくときに、ラベルはどういうものを作ろうとか、内容をどうしようという議論にはなるかと思います。それをどう使うか、使用者側でこういう情報が書いてあったら、こういうようにやらないといけないという、そのひも付けが非常に少ない。我々の会社もそれなりの人数のいる会社ですけれども、現場に行くと、なかなかそういうところが個別には分からない。指導がうまくいっていない、教育がうまくいってないところが現実にあると思います。
顕著な例が、例えば、ある物が規制物質になったとします。正にここにありましたけれども、当該物質の使用をやめて、危険有害性の少ない物に替えてくれと、これを正に言われます。しかも中小企業から言われるだけではなくて、実は大手が多いです。というのは化学物質を扱っている会社ではなくて、何かを成型して組み立てるといった会社は、新たに規制されると、新たな規制に対して対応しなければいけない。装置を何か入れなければいけないと、こういったことに直結するので、それはやめたいので、違う化学物質を持って来いという話になるのです。というところが非常に多いという現実を、やはり認識した上で、どうすべきかを考える必要があるのではないかと思っています。取りあえず最初はこれくらいです。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○梅田委員 日化協の梅田でございます。自律管理の名前に関して御意見を申し上げたのは日化協からで、そのベースとなる考え方だけ御紹介します。今、化学物質の管理は国内だけの問題ではなくて、国際的にSAICMの取組として行われております。SAICMの見直しが行われようとしているところで、例えば名前を変えてしまうと、今までの自主管理物質ということに関して、成果が得られなかったから変えたのではないのというようなうがった見方をされる可能性があるので、慎重にお願いしますということをお願いしています。
ちょっと話が本題からそれましたけれども、いわゆるリスクアセスメントができていない理由は人材がいないとか方法が分からないと資料にもあります。厚生労働省からも職場の安全サイトに、情報過多の部分もあると思いますけれども、かなりのいろいろな情報を載せていただいています。では、実際どういう形で、例えばリスクアセスメントをして、どういう成功事例があったのかが見えてこないので、先日もお願いしましたけれども、やはり成功事例、それをどういう形で活用できているのかを分かるような形で紹介していただけると、多分、中小の方もやりやすいのではないかなと思います。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○山岸委員 資料の純粋な質問です。資料2で死亡災害とか事業所規模別とか出ている中の事例の中の、資料2の13ページの事例で、保護具を着用していなかったというのが3つほどあると思うのです。1番目と2番目と6番目、この辺はもう少し具体的に事例の紹介とかというのは可能でしょうか。資料2の13ページの発生事例の、1番目と2番目と6番目。
○中村課長補佐 私からお答えします。余り具体的に踏み込むのは難しいところはあるのですが、ベンジルアルコール用というか、防毒マスクとして有機ガス用のものを使用していたことは分かっていて、通常、防毒マスクは破過時間を気にしながら、破過曲線を使って管理していくことになると思いますが、一応そういう管理はきちんと行われていたことは分かっている事例です。ちょっとこれは実は特殊な事例で、通常考えられる保護具の使用方法をきちんとやっていても起こってしまった1つの事例として挙げているものです。
○山岸委員 破過時間の管理を行っていなかったというのが今の事例。
○中村課長補佐 破過時間の管理を行っていなかったのもあるのですが、1番目とか2番目とかは、きちんと管理はされていたものです。
○山岸委員 着けていなかったと。
○中村課長補佐 着けていました。
○山岸委員 「着用していた」ですか。
○中村課長補佐 はい、「していた」です。
○山岸委員 着用していたんだけれど、中毒が起きてしまったのは、適切に破過時間とかいろいろとできてなくて、結果として人体の中に入っちゃったという。
○中村課長補佐 そこがまだ原因究明中です。
○山岸委員 よく分からない。分かりました。我々、作業者がいっぱいいて、基本的には保護具は最後の手段と言いますか、最後の砦なので、保護具はしっかり着けろと。着けている限り入らないというのがそもそもの保護具なのですが、何か使っていたのに入ってしまったというのは、そんな事例は余り聞いたことがないと思って、ちょっと今、質問した次第でして。
○中村課長補佐 実はこの事例は我々も悩んでいて、保護具と言っても物質の種類ごとに全て決まっているわけではない、破過曲線とか物質の種類ごとに全部あるわけではないので。保護具の選び方とか管理の仕方をどうしていくかというのは、実は検討会のテーマでもあるのですけれども、そこについても示唆となる事例でもあるかなと思っています。
○山岸委員 分かりました。もう1つ、例えば中小さんで災害が多いというデータですけれど、この会社は親会社の支援と言いますか、我々鉄鉱ですと、坑内にこういう協力会社が、我々がかなり支援するという、もともと製造業の元方指針とかもありますのでやっているのですが、こういった事例でやはり災害が起きてしまう会社というのは、そういう支援がほとんどない会社と思っていいのですか、そうも言い切れないと。
○中村課長補佐 恐らく、そこまでの情報は多分取れていないと思います。そこはすみません、確定的なことは言えない状況です。
○山岸委員 多分、中小への支援とか教育とか、いろいろな知識とか考えたときに、親会社がいて、子を支援できる体制であれば、そこをうまく使って、中小さんにも情報とか教育とか知識とかをできるのですけれども、そうではない所がほとんどだとしたときには、大手とか親会社からというよりも、独立したこの事業者がしっかり考えてくれないと駄目なのですということであれば、そこに向けたような何か提案と言いますか、そこでやってもらわなければいけないということですので、自律管理といったことをその人がやらなければいけないということですよね。親会社含めてのこういうヒエラルキーの中にいれば、大手なりがそこそこ見ていればそういうことも、自律管理をきちんと指導することもできるとは思うのですけれども、それで体制がない所に自律管理をやりなさいと言っても、先ほど皆さんがおっしゃったとおり、どうしたらいいのかとか、何をしたらいいのかというのが分からないと、なかなか難しいかなと思いますので、その辺も検討しなければいけないかなと思います。
○城内座長 そのほか。
○大前委員 この事例、橋梁工事なので屋外作業だと思うのですけれども、このような作業形態というのは、これは労安法に入るのですか、労安法外の話ですか。
○中村課長補佐 もともとこの物質は規制対象外物質なので、対象外ですけれども、例えば有機溶剤予防規則とかは、基本的に屋内規制ですが、通気が悪い場所は屋内に準じての規制にもなっているので、そこは一応カバーできる範囲ではあると思います。
○大前委員 それから、多分これは暑い時期ではなかったかと思うのですけれども、恐らく熱中症のほうが危ないような場所だったのではないですか。暑いと当然、蒸気圧は高くなるので、防毒マスクもあっという間に破過してしまいますし、相当悪い状況にあったのではないかという気がします。
○城内座長 そのほか御意見等。
○三柴委員 このメンバーの中で恐らく文系は私と1、2名かなというところで、ちょっと別の視点からコメントを差し上げたいと思います。恐らくは、この議論の方向性の1つは、非正規の差別規制と同じように、最初は規制すべきところをポジティブリストで取り上げて規制していたけれども、そのうちネガティブリストにする。要するに、差別は原則いけないという形にして、その差別的なところを許せと、規制を免除してほしいのであれば説明しなさいという、そういう体系にもっていくということになるのかなと思うのです。これはだから、本検討会でも申し上げたように、たとえば自律管理物質についても、やや規制を厳しくかけておいて、免除を求めるのであれば専門家の証明を付けなさいと。そこに行政の専門家の鑑定を入れるということも含めてですけれども、そういう規制のスタイルに持っていくのが恐らく望ましいのかなと思うのです。そのようにすると、専門家へのニーズも高まるから、これは行政でも民間でも、規制で専門家へのニーズを高めるというドライブにはなるだろうと考えるわけです。ただし文系の人間として言えるのは、技術系の先生方だけで議論をすると、疑わしきは罰しろということになってしまうのではないかと。確かに今は努力義務で定めている所もケースバイケースなのであって、やらなくていいということではないのだということだから、そこにも安全を重視していくならば、限りなく罰するに近い規制をかけていく方向にいくと思うのですけれども、文系の発想というのは、化学物質対策であれば、理想的にはこうすべきだけど、スリーステップアプローチにせよ保護具にせよ、きちんとやるべきことが分かっているけれども現場でできるのかと。現実的に、行動科学的にできるのかということです。そういう点は免除の理由に加えなければならない。
それから、産業利益をどう守るかという問題があって、これは利害調整の問題になってくるわけですね。純粋に科学的に安全かどうかということではなくて、対立する利益をどう調整するかという問題になってくる。したがって、許されたリスクというのを考えるときも、理科系的には閾値の問題かもしれないけれど、文系の発想を入れると、そこにコンセンサスを取らなければという問題が出てくるわけです。利害の調整も含めて、許されたリスクの問題にしないといけないということになってくるわけです。そうすると、結局こう言いたいのですが、現状、ガイドラインをどんどん発達させてきている。モデルSDSとかもそうです。あれも性格的にはガイドラインだと思うのですが、ああいうものをぼんぼん作っていくと、少なくとも民事裁判になったときには、ガイドラインがあるのに守っていなかったというと、立証責任が事業者側にいくのです。ガイドラインがあるのに守っていなかったというと、何でというのを説明する責任が事業者側に出てくるわけです。だから、かなり意味があるということ。
それから現状、個別管理物質と自律管理物質、呼び方がいいかはともかく、その2つの間が絶壁だから、そこを埋めようという動きだと思うのですけれども、これもやっていくと、細かいライン取りが必要になってきますよね。これをやると事業者側は面倒くさくなってくるから、そうすると、だったらラジカルにこう決めてくれ、何をやったらいいかはっきりさせてくれという圧力になってくる。したがって、ガイドラインを進めることと、このライン取りを細かくしていくことは、実は社会科学的には、文系の人間からすると、あるべき方向に持っていくルート、ステップになるかなと考えております。だから、ガイドラインだから意味がないのではなくて、ある種のドライブになり得るということを申し上げたいということです。すみません、長くなりました。
○城内座長 そのほか御意見はいかがでしょうか。
○山口委員 すみません、1点だけ確認をさせていただきたいというか、教えていただきたいのですけれども。化学物質管理に関する情報を集約すべきだみたいな意見がこれまでたくさん出ているかと思うのですが、これはNITEのほうで一元的に今、集めていらっしゃるのではないかなと思っていたのですが、それ以外にも多くの情報が世の中に存在している、省庁間で持っているものがあるということなのですかね。NITEのものはまだそこまで十分ではないと、そういった認識からの意見が多いという話なのでしょうか。分かる方いらっしゃいますか。
○内田化学物質評価室長 NITEでいろいろと検索機能も含めた有害性の情報の整理をされて、一元的に発信されているところはあるのですが、他方、例えば先ほどのモデルSDSといった話になると、我々の職場の安全サイトというようなところで発信をしたりというような情報があります。あとは、もともと言われているのは、リスク評価を各省がいろいろしている中で、それぞれのリスク評価の報告書とかそういう整理は、それぞれの役所で出している形になっていて、そういうことも含めてもう少し一元的な整理ができないかというのが、あり方検討会で御指摘がありました。また、情報の一元化だけではなくて、リスク評価すること自体も各省共通にできないかと、そういった御指摘があったという経過になっています。
○山口委員 NITEのホームページから、多分安衛法のホームページにつながっていると思うので、押して行けば多分着くはずですよね。なので、ほとんどのものが最近つながっているイメージで、皆さんよくやられているなというのが私の民間的な発想ですけれど、本当に情報が分かれているのですか、という疑問がありまして、これ以上たくさん情報があると、海外とかにある情報は確かにそうかもしれませんけれども、国内で公式に、パブリックに取れる情報はそんなにいっぱいあるのかなと、何かちょっと不思議に思ったので確認させてもらいました。ありがとうございます。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○大前委員 許容値に関してですけれども、国が決める許容値と学会等が決める許容値は全然性質が違うところがあるのですね。学会が決める許容値は、実現可能性等々は見ていない。サンエンティフィックなデータだけで、生体影響に対するデータだけで見ていますから。やはり国が決める許容値というのは、それプラス実現可能性等々ですよね。これを加えないといけないわけで、国が許容値を決めるということは結構大変な、どこか1つステップが上がらないとできないと、そういう状況にはなるのではないかと思っています。
○城内座長 そのほか。
○植垣委員 労働災害でご紹介いただいた例、また大前先生もお話いただいた事例では、経口、呼吸でばく露するものが多かったと思うのですけれども、オルト-トルイジンやMOCAの事例のように、皮膚、経皮で入ってくるものについては、自律的な管理として、どういうことをするのが事業者として望ましいとお考えかと、御意見頂ければと思います。
○大前委員 よろしいですか。私見ですけれども、そういう皮膚吸収等々ある物質に関しては、あるいは皮膚吸収が少ない物質でもいいのですが、基本的には、生物学的モニタリングで許容値を考えるべきだと思います。それ以外ちょっとやりようがないですよね。ここら辺の濃度を測っても仕方ないですし、例えば皮膚にくっ付いているものを測っても、これはほとんど意味がないので、一旦吸収されたものの代謝物なり、あるいは原体なりを測るやり方しかないのではないかと、私は思っています。したがって国の許容値なども、必ずしも空気中だけではなくて、生物学的な許容値もあるべきだと思います。
○甲田委員 すみません、今のお話ですけれども、芳香族アミンとかを見ていますと、やはり揮発しないわけなので、環境で又は個人ばく露で測定しても全然つかめないというような状態。先ほどの話ではないですが、含有するといっても、ほとんど不純物程度の含有で、やはり経皮で入ってくるという、全然状況が違うので、そういう意味ではツールとしてバイオロジカルモニタリングで尿中、又は血液中のものをつかんで、頻度は先ほどの自律管理で入ってくるのかもしれませんけれども、頻度は作業の内容だとかそういうものを踏まえて、相談してやるという話ですけれども、違ったいわゆるツールをもってつかまえないと、芳香族アミン等、経皮が非常に主となる、揮発すれば個人ばく露で分かるのですが、そうでない物質は、いろいろな工夫をしないといけない状況に来ているのではないかと思います。
○城内座長 御意見もたくさんあると思うのですが、もう1つ御説明いただく資料があるので、御説明いただいたあとで、また御意見等を伺いたいと思います。2つ目の議題、リスク評価ワーキンググループにおける検討事項について、事務局から説明をお願いいたします。
○内田化学物質評価室長 それでは、資料5を御覧ください。先ほどのあり方検討会で規制のあり方の見直しの方向性を踏まえて、今後はこのワーキングでどういったことを検討していただきたいかということで、整理をしたものです。1ページです。個別管理の体系ということで、一番下にリスクが高いとされている物質について、特別規則の対象に追加すると書いてありますが、そういうことをする上で、国としてもリスク評価を現状、実施しているということがあります。それから、リスク評価の対象物質を決めるに際して、IARCの情報を基にして発がん性があるかどうかということのほかに、実は国として、発がん性のスクリーニングということで、また後ほど御説明いたしますが、各種試験を実施して発がん性があると明らかになったものについては、リスク評価の対象物質に追加するということでやっています。
それから、関連いたしますが、一番右です。私どもの安衛法の中では、新規化学物質の有害性調査ということで、事業者の方にも新規化学物質を製造あるいは輸入する場合には、一定量のものについては変異原性試験という試験を実施していただいて、その結果、強い陽性のあるものについては、左の発がん性スクリーニングという所にも持っていってやっているということで、ここに書いてありますが、主にリスク評価と発がん性スクリーニングとして国が行っている有害性試験、それから事業者に行っていただいている有害性試験等について、このワーキンググループで検討いただきたいと考えているところです。
2ページ以降は、今お話した3つについての現状の実施状況です。昨年度末現在の状況ですが、1つはリスク評価ということで、平成18年度以降、一番右に書いてありますが、特に発がん性のあるもの等を中心にリスク評価を実施してきました。200強の物質を対象として、初期、それから詳細の2段階評価ということで、リスクが高いとされた物質については、まだ措置検討が未了なものがありますけれども、特化則に位置付けるということで、28物質を特化則に追加しています。それから、まだ評価未完了ということで一番右に書いてありますが、半分弱については評価がまだ確定していないという状況です。それから、下の※に書いてありますが、ここに書いてある内容については、あくまでも経気道ばく露に係る評価ということでして、今し方お話がありましたけれども、経皮吸収に係る物質が200のうち88物質あります。これについてはリスク評価が未了ということで、実はオルト-トルイジンの話を踏まえて、経皮に係るリスク評価手法ということで、先ほどお話があったバイオロジカルモニタリングも含めて今、手法について検討している状況ですので、まだ経皮に係るリスク評価は進んでいないというのが現状です。
3ページです。発がん性スクリーニングの実施状況ということで、リスク評価の対象物質を決めるに際して、平成25年度からこういった形で対象物質のセレクションをしております。もともとは、一番右にありますが、1事業場において年間1t以上の製造・輸入量がある物質約5,000をベースとして、発がん性の情報を基に分類して、発がん性の情報が定かでないものについては、遺伝毒性の情報等を勘案しながら、真ん中にある変異原性試験とか、あるいは形質転換試験といったもの、それから中期の発がん性試験等を実施しているという状況です。
現時点で申しますと、例えば真ん中にある肝中期の発がん性試験においては、38物質を対象として陽性が1物質といった状況です。あるいは右の遺伝子改変マウスを用いた発がん性試験については2物質、これは最近始めたものですので、陽性にはなっておりますが、がん原性指針とか長期発がん性試験等の対象とするレベルまでの有害性はないという評価をされているということです。本来であれば、こうした中期の発がん性試験の結果、陽性となったものについては、下のほうに行って、リスク評価の対象にするという流れになっておりますが、セレクションという観点では、なかなか十分な結果が正直得られていないというのが実情です。
他方、中段よりも下に書いてある長期発がん性試験という、ラット等を用いて2年間で行う試験については、昭和50年代後半から実施してきています。58物質を対象として、陽性が35物質ということで、下にあるがん原性指針による指導を行っているほかはリスク評価の対象ということで、前ページにあったリスク評価のスキームに回して、検討が行われているという流れになっています。
4ページは、新規化学物質の有害性調査制度ということで、上の○に書いてありますが、新規化学物質を製造又は輸入しようとする事業者ということで、1事業場当たり1年間に100kg以上取り扱う事業場については、新規化学物質の名称、有害性調査の結果等を厚労大臣に届け出るということです。下の枠の中にありますが、幾つかの試験が書いてあります。基本的には微生物を用いた変異原性試験を実施されているという状況でして、次の○にありますが、強い変異原性が認められた場合については、ここに書いてある指針に基づいて作業環境管理等の取組を実施していただくよう指導をしているということで、矢印の所にあるように、直近1年間においては773物質の届出があって、そのうち変異原性が認められると判定された物質は、30物質という状況になっているところです。
こういった形で、それぞれの制度をやってきているところですが、5ページに、こういう中でどういう視点で考えて、今後ワーキングで検討いただきたいかということで少し整理しています。一番上に特別規則のことが書いてありますが、右に書いてあるように、先ほど来申しておりますとおり、基本的には追加しないというか、重篤な労働災害が多発するなどの要件を満たす物質が出てきた場合に検討ということで、ある意味限定的に対応していくという方向性になっています。であれば、どういう物質を対象にやっていくのかということの検討を1つしていただきたいと思っております。
その下にあるリスク評価においては、右にありますが、今のような形で規制が見直されて、特別規則への追加については限定的な対応という形になった場合には、今までやってきたリスク評価の役割とか、あり方が変わっていくのではないかと。さらに、自律管理の取組を強化していくというところで国が果たすべき役割というか、例えばどういうことを事業者の方々に提供していくべきなのかといったことを、御検討いただく必要があるのではないかと考えております。
それから、更にその下の、リスク評価の対象物質を選定するに際して行ってきた発がん性スクリーニングという国が行う有害性試験についても、リスク評価のあり方が変われば試験のあり方、役割を今後どういう方向に持っていくのかというのをよく考える必要があるということです。最後に、有害性調査ということで、事業者の方々に行っていただいている有害性調査についても、これは実は40年ほど前からやっており、中身については全く変えていないという状況です。特に、下にも書いてありますが、有害性試験、変異原性試験、ほかもリスク評価を含めて発がん性を中心にやってきておりますけれども、そうした発がん性に着目しているものも今後、引き続き発がん性だけに着目すればいいのか、ほかの有害性についても着目していく必要があるのかといったことについて、検討していく必要があるのではないかと思っております。
6ページは、GHSの有害性の区分ということでそれぞれ書いてありますが、いろいろある有害性の中で、どういうものに着目していくのかということも含めて御検討いただきたいと思っております。
ということで、7ページにまとめてありますが、基本方針としてリスク評価、国が行う有害性試験、新規化学物質の有害性調査、事業者に行っていただくものについてのあり方についてを検討いただきたいということです。ただし、あり方検討会において、引き続き規制のあり方の具体化に係る検討が行われる形になりますので、その検討結果については随時、こちらのワーキングにも共有しつつ検討を実施ということで、ちょっと分かりづらい形になりますが、検討会とワーキングが並行して走りますので、それぞれキャッチボールをしながら検討を進めていただくというふうに考えているところです。検討事項として4つ書いてあります。1つはリスク評価の仕組みの見直しということで、国として行うべき役割、着目すべき有害性、提供すべき情報などについて検討ということです。それから、個別管理物質の対象とする物質の考え方とか、あるいは自律管理のばく露原因物質の設定等、例示ですが、これについて検討いただく必要があるのではないかと考えているところです。
丸2の国が行う有害性試験についても、今後の試験の目的とか、対象とする試験(有害性)について御検討いただくと。丸3の新規化学物質の有害性調査についても、同じくこうした試験の目的なり対象とする試験、その結果をどう活用していくのかといったことも含めて御検討いただきたいということです。最後の丸4は、先ほども御質問がありましたが、有害性の情報の一元化、既にできているのではないかというお話もありましたけれども、現状でいいということであれば、そういう整理になるかもしれませんし、もう少し効率的な形で見直していくべきというお話があるのであれば、引き続き他省との連携も含めて検討していく必要があるのではないかと思っているところです。
最後に8ページです。年度内のスケジュールについてはこういう形になりますし、右のあり方検討会についても、その間に順次開催される形になっています。出口としては、4月以降も原則毎月1回開催して、来年5月から6月にワーキングとして取りまとめていただいて、その結果をあり方検討会に報告して、検討会として最終的に取りまとめると、こういった形で進めさせていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○城内座長 御説明ありがとうございました。今のワーキンググループの検討事項、それから先ほどの議論の延長でも構いませんので、御発言をお願いいたします。
○甲田委員 今の事務局からの御説明の中で、7ページなのですが、リスク評価の仕組みの見直しという形で御説明いただいた内容を見ますと、個別管理物質、自律管理物質のそれぞれの管理のあり方の検討を踏まえて、リスク評価のあり方の見直しという形で検討していただきたいということなのですけれども、個別管理物質のリスク評価というのは、今幾つか法律でも決められているではないですか。逆に言うと、自律管理のほうが今はないというか、実はあるのですが、実効的なものがないという形です。そういう意味から言うと、リスク評価のあり方は、例えば自律管理のリスク評価としてこんなのが有効ではないか、有用ではないかとかというものの検討も含むという意味合いでよろしいのですか。
○内田化学物質評価室長 そういう意味では、ここの書き方が悪かったのですが、あくまでも今までは、国としてはリスク評価という形でやってきたところがありますけれども、今後、自律管理になった場合には、事業者の方々にリスクアセスメントという形でやっていただくという形になっていて、そこの内容を検討していただくというよりは、国としてそういう事業者の取組を支援というか、サポートするためにどういう情報を提供すればいいかとかという、どちらかといえばリスク評価というよりは、有害性評価のような形になるかと思います。そういう有害性の情報提供なり、あるいは判断基準とか、そういったものをどうしていくべきなのかということを検討いただくという考えです。
○甲田委員 そうすると、もうちょっと教えていただきたいのですが、もう少し突っ込むと、個別管理物質で、リスク評価でいろいろな情報を、例えば法定義務とか環境測定とか、又はいろいろな健康診断もそうなのでしょうけれども、そういうものを事業所でやりなさいという話をしていますけれども、今、例えば災害が起きている事業所などでは、そういう情報というのは活用されていないと言ったらいいのか、埋もれてしまっていますよね。だから、第3管理区分が改善されないでずっときているとか、健康診断の有所見状況が長く続くとか、その延長線上に来ているのか、延長線上のものが何かの大きな災害の前触れなのか何かは分かりませんが、そういう情報が現状で言うとうまく活用されていないので、そういうものに関しても少しいかすというか活用して、それの中で、もうちょっと自律管理に活用できるものがないのかというような見方でもよろしいのですか。事業所がそれだけではなくて、そういうものを国が、もうちょっとそういう形で指導するのか、刺激していくのかどうなのか分かりませんが、そういうようなイメージでもいいのですか。
○内田化学物質評価室長 例えば健康診断の話とか、途中の資料にもありましたが、今後、自律管理での健康診断をどうするのかなどという話もありましたけれども、健康診断の取扱いとか、そこら辺は少し検討会のほうの話になったりというところもありますので、いろいろお話を頂きながら、検討会のところで検討するのか、このワーキングで検討するのかとか、よく整理していかなければいけないと思っているのですが、基本的な考え方としては、ここに書いてあるとおりですけれども、皆様の御提案を踏まえながら、どう整理していくのかというのは対応していきたいと思っております。
○城内座長 そのほかはございませんか。漆原委員、お願いいたします。
○漆原委員 検討会とこのWGとの区分けもあるため、この場で発言すべき内容ではないのかもしれませんが、今ご意見のあった健診にも関係するので発言させていただきます。健診により代謝物の状況が把握されていなければ、影響を見過ごされてしまい、結果的に、例えば、がんとなった方が多かったということにならないことが大切です。がんの罹患者が発生した後に化学物質の影響が分かったところで、すでに被災した労働者は、健康な状態に戻らないのです。そういったチェックをどのように自律管理の中で実施していくか、また、発症があった際に個々の物質のリスクを評価する際に、健診や環境測定の結果も含めて重要になってくるのではないかと思います。定期健診の内容だけで良いのか。そういった観点からすると、許容濃度や作業環境測定の義務があるなしにかかわらず、ある程度データがないと、発生しうるかどうかもチェックすることができなくなってしまうのではないかなというところが気になります。
また、頂いた資料5の5ページに、矢印が幾つかあって、右上の所に「重篤な労働災害が多発する」という記載があるのですが、例えばオルト-トルイジンとかMOCAによる労災を想定したときに、もちろん、がんですから重篤ですけれども、それが多発するというのはどの程度人数で線が引かれるのかというのは、なかなか難しいかなと思います。さらに、海外で発生した労働災害、あるいは、そういった化学物質による重篤な症状が出たときに、それも参考にするのか、どこかの場で検討するのかどうなのか、そのための検討の場が用意されるのかどうなのかというところにも関係してくるのではないかなと思っております。また、大前先生から資料を提出いただいた中で、国として許容濃度とかばく露の限界値を示すときに、産衛学会のデータもさることながら、海外でもいろいろな研究がなされておりますので、そういったデータを総合的に判断する場が多分必要になると思います。それは多分、国のどこかに、事によっては省庁を越える場になるのかどうなのかというのは分からないのですが、そういった場がやはり必要なのかなと思ったところです。取りあえず意見です。
○城内座長 では事務局、どうぞ。
○中村課長補佐 ちょっと本検討会にも関係する話が出たので補足なのですが、正にこれから本検討会でも自律管理を中心にやっていく制度の具体的な中身、自律管理という制度をどのように位置付けていって、その中でどういうことをやっていっていただく必要があるのかというのは、これから突っ込んだ議論に入っていくことになると思います。そこで先ほどお話があったように、具体的にどうやって評価するのかとかという話が出てくれば、こちらのワーキングでも議論いただくという関係になっていくのではないかなと思います。
それから、大前先生や漆原委員からもお話がありましたが、許容濃度の関係は、私たちも産衛学会のものをそのまま使いましょうということではなくて、もちろん産衛学会に出していただいている許容濃度は根拠となるデータにもなると思いますし、海外のTLVとかもありますし、いろいろな情報を総合的に評価して、国として決めていくということが大前提だと思っていますので、そういうことも含めて、どういう決め方をしていくべきかというのを、このワーキングの場で御議論いただければいいのではないかなと思っています。
○城内座長 そのほか御意見はございますか。甲田委員、どうぞ。
○甲田委員 今ちょっと出た意見で言うと、我々が災害調査で入ったときに、規制外の物質だと、それ以上の調査というのは、災害が出たから入るという、安衛法第96条の2の中でやっていくという話になるのですが、そのときに、やはりかなり情報としてはあるのです。海外の文献等で、やはりこういうがんが起きているかもしれない、代謝物としてはこういう可能性があるかもしれないということになってくると、そういうものを基にして現場で調査が実はできるのです。ただし、それが規制物質でないと、事業者が駄目だという話になってくると、できないのです。これは法的義務ではないから入れませんという話になって、そこで情報が切れてしまうのです。ある同じ物質を一定量使っていて、同様の作業方法をしているような所では、これは事業者の義務ではないのだけれども、基本的には例えば国が金を出すとか、我々、独法なので、我々が自分らの金で幾らと、そういう形で協力いただいて、やはりそういう情報を取って、リスクがどの程度なのかというのを、実は判断したいのです。
だから、そういったものも先ほどの話で言うと、規制外の物質であっても、自律管理の中の1つとして入ってもいいのではないかなというか、そのようにも思うので、その辺も是非検討の材料になればいいなと思います。
○城内座長 そのほか御意見等はございますか。村田委員、どうぞ。
○村田委員 先ほどNITE-CHRIPのお話を出していただきましたが、日本の法律の対象となっている物質は、名称の付け方とか、番号の付け方がそれぞれというところがあります。安衛法については、何年か前からNITEで名称を付けさせていただいており、NITE-CHRIPに収載されると、ほかの物質との関連付けができて、その物質に関して有害性の情報があれば、ひも付いた物質の有害性の情報を使える可能性があるといった形で活用していただく可能性もあるかなと思っています。
先ほどエンドポイントで、安衛法に関しては発がん性に着目してやってこられたということですが、長期毒性という面では化審法も共通しているところがありますので、化審法で持っている反復投与毒性の情報も結構収載されております。そういったものを活用して、ばく露限界値といったものがないものについて、ものによってはそういうものを活用していくという可能性もあるかなと思いました。
○城内座長 そのほか御意見はございますか。平林委員、お願いいたします。
○平林委員 今、化審法のお話が出ましたが、化審法は基本的には28日ないしは90日ということでして、こちらで見ている発がん性のリスクにしても、短期の試験でトランスジェニックマウスを使った試験はともかくとして、長期の試験は2年とか1年半とかということになっておりますので、むしろ化審法で長期の試験ができない、あるいは結果が分からないというところに、多少フラストレーションがあるという状況でもあります。何を申したいかというと、それぞれの目的でそれぞれの試験が組み立てられていて、なかなか1つの剤について総合的に見る仕組みができていないということが多分、問題かどうかは分かりませんが、剤を正確に理解する上で、障害になることがあると考えております。
○城内座長 そのほかございませんか。山口委員、お願いいたします。
○山口委員 このワーキングの中の見直しの中で、有害性調査の見直しというか、どういうあり方であるべきなのかという検討を行っていくとあると思うのですが、例えば新規化学物質の有害性調査に限定して言うと、今の発がん性以外の有害性も増やしていくべきではないかという議論を多分していくのだろうと思うのです。あるいは、そのときにどういう試験があるのか。もし、資料があったらなのですが、例えば今、化学物質で労災が非常に多く増えているのですが、特にどういったものが多いのかとか、それによって選択の仕方が多分変わってくるのかなと。あるいは、どう考えていいのかという指標になるのかなと思うのです。
私はそういう知識が少なくて、今日頂いた資料の中に数字が幾つかあったと思うので、ある程度あるという気はしなくもないのですが、もうちょっと詳しい件数とか、もう1つどういった場所で、どういう状況で起こったのか。製造現場で起こっているのか、製造というのは化学物質を作っている現場です。あるいは使用している所、川下のほうなのか、それによってかなり違ってくるのではないかと思うのです。なので、そういったまとまった情報がもしありましたら、頂けると検討しやすくなるかなと思いました。
○城内座長 そのほかございませんか。植垣委員、お願いいたします。
○植垣委員 前回の安衛法改正では、ラベルでアクションということで、ラベルで労働者に情報を伝えるようになりましたが、残念な代替ということでMOCAやオルト-トルイジンのようなものを使っていたのを他の物質に替えたら、結局それも同じような特性を持っていて、同様の労災を引き起こしてしまう、ということを防ぐことが、今回の自律的な管理の目的においても大きなところを占める部分があるのではないかと考えています。
今、対象物質が3,000物質あるというお話がありましたが、できればグルーピングするなりして、有害性の高いものをほかのものに切り替えたらまた労災が起こる、といったような形にならないように、3,000物質を一気にガンとやるのではなくて、それなりに優先順位を付けて潰していく。その対象としては、今、山口委員からお話があった労災の可能性が高い所を狙ってやっていただければと思います。また中小事業者にとっては3,000物質がいきなり全部対象となってSDSやラベル等の義務が増えると、なかなか対応できない所も出てきますので、その辺も是非、御勘案いただきながら取り進めていただければと思います。以上です。
○城内座長 そのほかございますか。労災の件数を出すのは必要だと思いますが、休業4日以上にするかそうでないかで全然ばらつきが違ってくるので、結構難しいかなという気もします。事務局でうまく資料を出していただければと思います。そのほかございませんか。
様々な意見をありがとうございました。そろそろ時間になりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきますが、よろしいでしょうか。言い残したことはございませんか。では、事務局は次回までに、本日の各委員からありました御意見を整理していただければと思います。事務局から連絡事項はございますか。
○植松室長補佐 本日は、長時間にわたり、活発な御議論を頂きまして、どうもありがとうございました。本日の議事録については、各委員に御確認いただいた上で、ホームページで公開することとさせていただきたいと思います。次回については、11月17日(火)午後2時から4時、場所は御成門の中央労働委員会です。後日、改めて正式に御案内申し上げます。以上です。
○城内座長 それでは、以上で第1回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会リスク評価ワーキンググループを閉会いたします。どうもありがとうございました。