第6回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会ハイヤー・タクシー作業部会(議事録)

1 日時

令和4年3月18日(金)15時00分~16時12分

2 場所

厚生労働省 共用第9会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 17階)

3 出席委員

公益代表委員
  • 東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授 寺田一薫
  • 慶應義塾大学法務研究科教授 両角道代
労働者代表委員
  • 日本私鉄労働組合総連合会社会保障対策局長 久松勇治
  • 全国自動車交通労働組合連合会書記長 松永次央
使用者代表委員
  • 西新井相互自動車株式会社代表取締役社長 清水始
  • 昭栄自動車株式会社代表取締役 武居利春

4 議題

  1. (1)改善基準告示の見直しについて
  2. (2)その他

5 議事

議事内容
○中央労働基準監察監督官 定刻になりましたので、ただいまから第6回「自動車運転者労働時間等専門委員会ハイヤー・タクシー作業部会」を開催します。本日は、御欠席の委員はおられませんので、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。また、国土交通省からオブザーバーとして、自動者局安全政策課の蛯原課長補佐、自動車局旅客課の髙瀬課長補佐に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 なお、本日は、感染症の防止対策としてオンラインにより開催するとともに、傍聴者の方は、別室にて傍聴いただくこととしていますので御承知おきください。本日は、ハウリング防止のため、御発言されないときにはマイクをオフに設定をお願いします。また、御発言される場合には画面上で挙手をお願いします。部会長から指名されましたら、マイクをオンに設定の上、氏名をおっしゃってから御発言をお願いします。このほかに、進行中に通信トラブルなどの不具合がございましたら、チャットに書き込み、又は画面上で挙手をいただくことにより御連絡をお願いいたします。
 それでは、カメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。これ以降の進行は、両角部会長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○両角部会長 部会長の両角でございます。それでは、本日の議題に入りたいと思います。これまで本作業部会で熱心に御議論いただきまして、その結果、おおむね議論は収斂してきたものと考えております。本日は、作業部会としての取りまとめの議論をお願いしたいと考えております。本日の資料として、事務局から報告案が提出されておりますので、まずは事務局から、報告案の読み上げをお願いいたします。
○過重労働特別対策室長 事務局でございます。それでは、資料1について読み上げさせていただきます。
 資料1、一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の在り方について(報告案)、一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の在り方については、労働政策審議会労働条件分科会の下に設置された自動車運転者労働時間等専門委員会ハイヤー・タクシー作業部会において、令和3年5月28日以降、精力的に議論を深めてきたところである。
 自動車運転者の労働時間等の規制については、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号。以下「改善基準告示」という。)により、拘束時間、休息期間等について上限基準等が設けられ、その遵守を図ってきた。
 しかしながら、脳・心臓疾患による労災支給決定件数において、運輸業・郵便業が全業種において最も支給決定件数の多い業種(令和2年度:58件(うち死亡の件数は19件)
となるなど、依然として長時間・過重労働が課題となっている。また、自動車運転者の過重労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要である。
 改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた平成9年の改正以降、実質的な改正は行われていないが、この間、労働者1人当たりの年間総実労働時間は、緩やかに減少(令和2年1,621時間(平成5年比:-299時間))している。
 また、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」(脳・心臓疾患に係る労災認定基準)については、平成13年の改正で、新たに、発症前1か月間に100時間又は2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働(休日労働を含む。)が評価対象に加えられ、令和3年の改正では、更に勤務間インターバルが短い勤務についても評価対象に加えられた。
 そして、平成30年に成立した働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。以下「働き方改革関連法」という。)では、労働基準法が改正されて新たに時間外・休日労働の上限が設けられ、罰則をもってその履行が確保されることとなった。自動車運転者についても、令和6年4月以降、時間外労働について、月45時間及び年360時間の限度時間並びに、臨時的特別な事情がある場合での年960時間の上限時間が適用されることとされたところである。
 また、働き方改革関連法の国会附帯決議事項として、過労死等の防止の観点から、改善基準告示の総拘束時間等の改善を求められている。
 このような背景の下、当作業部会において、改善基準告示及び関係通達の在り方について検討を行った結果は下記のとおりである。
 この報告を受けて、厚生労働省において、令和6年4月の施行に向けて、改善基準告示及び関係通達の改正を速やかに行うとともに、関係者に幅広く周知を行うことが適当である。
 記、一般乗用旅客自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準については、次のとおり改めることが適当である。
 1、1か月の拘束時間について。1か月についての拘束時間は、288時間を超えないものとする。隔日勤務に就くものの1か月についての拘束時間は、262時間を超えないものとし、地域的事情その他の特別な事情がある場合において、労使協定により、年間6か月まで、1か月の拘束時間を270時間まで延長することができる。2、1日及び2暦日の拘束時間、休息期間について。(1)1日の拘束時間、休息期間。1日(始業時刻から起算して24時間を言う。以下同じ。)についての拘束時間は、13時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても、1日についての拘束時間の限度(以下「最大拘束時間」という。)は15時間とする。この場合において、1日についての拘束時間が14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努めるものとする。拘束時間が14時間を超える回数については、通達において、「1週間について3回以内」を目安として示すこととする。休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする。(2)隔日勤務に就くものの2暦日の拘束時間、休息期間。2暦日についての拘束時間は、22時間を超えないものとし、この場合において、2回の隔日勤務(始業及び終業の時刻が同一の日に属しない業務)を平均し隔日勤務1回当たり21時間を超えないものとする。勤務終了後、継続24時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続22時間を下回らないものとする。3、車庫待ち等の自動車運転者について。(1)車庫待ち等の自動車運転者の拘束時間、休息期間。車庫待ち等(顧客の需要に応ずるため常態として車庫等において待機する就労形態)の自動車運転者については、労使協定により、1か月の拘束時間を300時間まで延長することができることとする。なお、車庫待ち等の自動車運転者とは、常態として車庫待ち、駅待ち形態によって就労する自動車運転者であり、就労形態について以下の基準を満たす場合には、車庫待ち等に該当するものとして取り扱って差し支えないこととする。ア 事業場が人口30万人以上の都市に所在していないこと。イ 勤務時間のほとんどについて「流し営業」を行っている実態でないこと。ウ 夜間に4時間以上の仮眠時間が確保される実態であること。エ 原則として、事業場内における休憩が確保される実態であること。車庫待ち等の自動車運転者については、次に掲げる要件を満たす場合、1日の拘束時間を24時間まで延長することができる。ア 勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えること。イ 1日の拘束時間が16時間を超える回数が1か月について7回以内であること。ウ 1日の拘束時間が18時間を超える場合には、夜間に4時間以上の仮眠時間を与えること。(2)車庫待ち等の自動車運転者で隔日勤務に就くものの拘束時間、休息期間。車庫待ち等の自動車運転者については、労使協定により、1か月の拘束時間を270時間まで延長することができる。車庫待ち等の自動車運転者については、次に掲げる要件を満たす場合、1か月の拘束時間については上記の時間に10時間を加えた時間まで、2暦日の拘束時間については24時間まで延長することができることとする。ア 夜間に4時間以上の仮眠時間を与えること。イ2暦日の拘束時間を24時間まで延長するのは、1か月7回以内とすること。4、例外的な取扱いについて。(1)予期し得ない事象に遭遇した場合。事故、故障、災害等、通常予期し得ない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日又は2暦日の拘束時間の規制の適用に当たっては、その対応に要した時間を除くことができることとする。ただし、対応に要した時間を含めて算出した1日又は2暦日の拘束時間の限度を超えた場合には、勤務終了後、1日の勤務の場合には継続11時間以上、2暦日の勤務の場合には継続24時間以上の休息期間を与えるものとする。(具体的な事由)、ア 運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合。イ 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合。ウ 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された場合、道路が渋滞した場合。エ 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合。(2)適用除外業務。改善基準告示の適用除外業務に、「一般乗用旅客自動車運送事業」において、災害対策基本法等に基づき、都道府県公安委員会から緊急通行車両であることの確認、標章及び証明書の交付を受けて行う緊急輸送の業務を加えることとする。5、休日労働について。休日労働は2週間について1回を超えないものとし、当該休日労働によって、上記に定める拘束時間の限度を超えないものとする。6、ハイヤーについて。ハイヤー(一般乗用旅客自動車運送事業の用に供せられる自動車であって、当該自動車による運送の引受けが営業所のみにおいて行われるもの)に乗務する自動車運転者の時間外労働協定の延長時間は、1か月45時間、1年360時間を限度とし、臨時的特別な事情がある場合であっても、1年について960時間を超えないものとし、労働時間を延長することができる時間数又は労働させることができる休日の時間数をできる限り少なくするよう努めるものとする。なお、必要な睡眠時間が確保できるよう、勤務終了後に一定の休息期間を与えるものとする。7、その他。累進歩合制度については、廃止するものとされた趣旨を通達に記載の上、改善基準告示の改正内容と併せて周知を徹底すること。以上です。
 続いて参考資料1「改善基準告示の見直しの方向性について(ハイヤー・タクシー)」ですが、前回からの変更点を説明いたします。まず2ページ、「1日及び2暦日の拘束時間、休息期間について」の案です。日勤の2つ目のポツですが、「勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努める」としておりましたが、「勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし」と変更しております。
 隔勤ですが、前回は現行どおりとしていましたが大幅に変更しています。まず、2つ目の矢印を御覧ください。「勤務終了後、継続24時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続22時間を下回らないものとする。」としており、1つ目の矢印については、「2暦日についての拘束時間は、22時間を超えないものとし、この場合において、2回の隔勤業務(始業及び終業の時刻が同一の日に属しない業務)を平均し隔日勤務1回当たり21時間を超えないものとする(※)。」としています。
 ※について読み上げます。違反の判断ですが、特定の隔日勤務の拘束時間について、その前の隔日勤務との平均拘束時間と、その次の隔日勤務との平均拘束時間のいずれもが、21時間を超えた場合は違反と判断されるとしています。
 続いて3ページ、「(日勤)車庫待ち等の自動車運転者について」の案のイです。前回は、「いわゆる「流し営業」を行っていないことと。」としておりましたが、委員の御意見を踏まえ、「勤務時間のほとんどについて「流し営業」を行っている実態でないこと。」と変更しています。
 続いて5ページ、「例外的な取扱いについて」の具体的な事由の中のエです。前回は、「運転中に異常気象(警報発表時)が発生した場合」としていましたが、「異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合」に変更しています。変更点は以上です。
 なお、参考資料2は、従来のものと変更ありませんので、説明は省略させていただきます。以上です。
○両角部会長 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明いただきました報告案について、委員の皆様から御意見、あるいは御質問などがあればお願いしたいと思います。案の項目の順番に沿って進めさせていただきます。
 では、まず前書き関してはいかがでしょうか。御意見、御質問など、ありましたら挙手をお願いします。よろしいでしょうか。それでは、前書きについては特段の御意見がないということで、次に進みたいと思います。
 次は1か月の拘束時間について、先ほどの資料1の2ページ目の項目1になりますが、この点についてはいかがでしょうか。久松委員、お願いいたします。
○久松委員 久松です。どうぞよろしくお願いいたします。報告書の内容については、異論がないことは申し述べた上で発言をさせていただきます。改善基準告示の見直しの前提となります働き方改革関連法において、自動車運転者については5年間の適用猶予とともに1年を通じて、1か月平均80時間の時間外労働となる年960時間の上限時間が適用されることになり、また、その1年平均の月80時間には、休日労働は含まれるとされています。脳・心臓疾患に係る労災認定基準では、2ないし6か月平均で月80時間を超える時間外労働になっているにもかかわらず、しかも休日労働を含めてとなっているにもかかわらずです。これが今回この専門委員会タクシー作業部会における改善基準告示見直しの前提であるということを、改めて指摘させていただきたいと思います。
 その上で、労側としては年間の拘束時間の上限として3,300時間、1か月の拘束時間は275時間を主張してきました。しかしながら、これまでの公労使による議論の結論としては、報告案のとおり、労側の主張の275時間に、1日13時間の休日労働を加えての283時間となりました。この結論は結論として、使用者の皆さんにおかれては、過労死認定ラインは2ないし6か月平均で80時間であり、休日労働も含めてということを是非、肝に銘じていただいて。改正改善基準告示にかかわらず長時間労働の是正に取り組んでいただくことを切にお願いしておきたいと思います。以上です。
○両角部会長 久松委員、ありがとうございました。ほかに御意見はありますか。武居委員、お願いいたします。
○武居委員 当初から休日労働を入れての288ですので、今、久松さんがおっしゃるようなことは十分理解をしているつもりです。
 その上で、このとおりで、お願いしたいということです。以上です。
○両角部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、次に進みたいと思います。
 項目2は、1日及び2暦日の拘束時間、休息時間についてです。この点については、いかがでしょうか。松永委員、お願いいたします。
○松永委員 今回、まずとりまとめということで、大変厳しい議論をしてきたと私たちは思っています。そして先ほど拘束時間の所でも久松委員からあったように、この休息時間についても労働側としては原則11時間というものをずっと求めてきました。これは、この趣旨である働き方改革の問題と、そして総拘束時間というものの改善を求められている以上、当然この休息時間においてもしっかりと議論をして改定をしていかなくてはいけないということを、私たちは主張してきました。今日の案についての内容についても、前回の専門委員会でも私どもは原則という言葉を、何とか、しっかりと付けていただきたいという要望をしてきました。そして今日の中で、長い間のこの協議の中で、私どもがお話してきた日本の法人タクシーという位置付けは、世界でも大変誇れるレベルだということを認識した上で、ドライバーの安全・安心をしっかり確保していくためにも、よい仕事を続けるためにも、とにかく仕事と余暇のしっかりしたメリハリを付けることが必要だと。そのためには、世界基準というものがあっても、それ以上に日本の法人タクシーには、そういった休息期間を取るべきだという主張をしてきました。そして、脳・心臓疾患の労災認定基準についても何度もお話をさせていただきました。また、厚生労働省のアンケートについても、日勤勤務者の9時間超10時間以下の方のパーセンテージ、そして10時間超11時間以下のパーセンテージ、11時間超のパーセントの合計がそれぞれのものを合わせると、58.3%が9時間以上は必ず必要だという答えでした。そういった中で、私たちの仕事は大変ハードであります。そういった意味で、9時間というものの今回の位置付けであれば、当然、睡眠時間を6時間取らせるという考え方の中では、通勤時間とお風呂、夕食、朝食、家族との会話、そして当然、歯みがきをしたり着替えをするといった細かいことも入れて、あと3時間で全てが終わってしまうのかと、大変ハードな仕事の中では、やはり緊張感を解き放つ時間が私たちには必要だという考えをずっと主張させていただきました。
 そして、今回の中で、この11時間の休息期間を原則として置き換えてくれと申し入れていた中で、今日の案では「勤務終了後、継続11時間以上の休息を与えるよう努めることを基本」として、「基本」という言葉が入ったと先ほど御説明がありました。とにかく私たちは、この休息期間を与えることを原則と求めてきた中で、「基本」と置き換えるのであれば、この「努めることを」という言葉は全く必要ないと考えてきました。前回も、この「与える」ということをもし基本とするのであれば、「努めること」を削除して、「与えることを基本とし」という言い回しに変えるべきだという主張をさせていただいたのは、今の全てにおいて、まず基本があって、応用があるという中では、「原則」という言葉を変えるのであれば、そういう位置付けをお願いしたいと申し上げてきました。
 現在、タクシー労働者が大変不足していると事業者も嘆いています。しかし、今の長時間労働の職場でありますので、やはり最低限の生活が確保できる給料体系を作っていかなければ、この業界の将来はないと思っています。私たち労働者も当然、会社に愛着を持って、しっかりと環境を変えながら、より良いサービスをできる公共交通として維持を努力していくつもりです。今後の厚生労働省においても、労働者側から申し上げれば、更なる厳格な監査を実施していただいて、今回の提案の中にもある累進歩合制度、そして残念ながら最低賃金の未払いを平気で行ってしまっている事業者等にしっかり指導を実施するよう求めていただきたいと思います。今後の更なる労働環境の改善について、私たちはさらに強く求めていきたいと思っています。私からは以上です。
○両角部会長 松永委員、ありがとうございました。ほかに御意見はいかがでしょうか。武居委員、お願いいたします。
○武居委員 今の松永さんの意見は、私ども事業者は無視するつもりはありません。理解はしております。ただ、実際のところ、現実問題として私ども地方の声として、特に今、観光業界などは大変苦しんでいます。例えばインバウンドを中心にしてきた地域があるのですが、御存じのとおり今回は働き方改革における中で、特別な需要があった場合は年間960時間まで認めますというのは、やはり季節性やお客のニーズに応じて13時間では収まらないという事情があります。その地域が例えば観光シーズン、そういったときにはある意味では13時間、日によっては13時間では収まらない。今、13時間~15時間というのは当然、拘束時間の問題として休息期間が9時間から計算をして、基本的に13時間で11時間ですという計算になっているわけです。これが今の実態なのですが、今までは休息期間8時間という中でインバウンドを含めた特殊な事情、お客様のニーズに合わせた拘束時間に合わせてやってきたものが、急遽、8時間から一気に11時間を原則論としてしまうと、なかなかシフト上など、そういった特殊なお客様、季節的な需要に応えられないという実態があるのではなかろうかということで、急激な拘束時間の延長にはどうしても同意はできないということを、私どもは常に言ってきたつもりです。
 ただ精神として、松永さんがおっしゃるように、なるべく11時間を目安としてやろうというところが入ったというのは、私は大きいと思っているのです。もともと私ども11時間という論に対しては、なぜ11時間に急に延ばさないといけないのですかと言ってまいりました。それは労災認定基準で勤務間インターバルが11時間というものができたのですが、タクシーの実態として過労防止で労災適用になったというのは1年間でほとんどないのです。この実態調査でも、ほとんど労災適用の過労防止でなった部分ではありません。例えば交通事故など、そういった事情があった部分はあったかもしれませんが、その辺の部分の中で、急速に11時間を義務化ということではとても呑めないというのは、使用者側からの正直な意見としてずっと言ってきたことです。
 ただ、やはり私どもとしても、11時間に向けて努力をするという意味において、前の部会において、久松さんから基本というのではなくて原則という言葉を入れてくれと申されました。今の松永さんの意見も、原則という言葉に大変こだわっているみたいですが、少なくとも私は、この11時間が入って、基本として努力するということで、使用者側も意識が変わった中で、今後、次のステップとして、また改善基準の見直しというものが出てくるべきなのだろうと私は思っています。ですから、今回はやはり急激な部分の中でシフトを含めて、余りにギクシャクした形、つまり13時間で1分でも超過すれば、11時間に足りないわけですから、お客さんのニーズや、例えば次の朝に予約が入って、11時間を待たずに出勤しなければならない仕事には対応できないということになってしまいます。こういったニーズにも対応できるように、少なくとも最大拘束時間というのは決まっているわけですから、13時間と延びた分は、月のうち他の日を短くして、月間で最大拘束時間というのは決められているわけですから、休息時間についても、別に常時9時間しか与えないということではないと私は理解しています。逆に申し上げると、松永さんがおっしゃった言葉は、使用者側としても率直に、方向性として今後きちんと文章にふさわしい対応をするよう努力をするつもりです。しかし、今回はこの文章程度にしないと、なかなか使用者側としてはOKできないというのが本音です。以上です。
○久松委員 久松です。よろしくお願いします。私としましても、日勤の拘束時間が11時間にならなかったということについては、正直、残念に思っています。さりとて、これまで公労使で議論を重ねてきた結果でもありますし、1か月の拘束時間の上限と相まって、実際には例外の部分の拘束時間がフルに使えるわけでもないということも考慮しましたら、報告案について異論がないということを申し述べさせていただきます。
私たち労側委員としては、脳・心臓疾患に係る労災認定基準の令和3年改定で勤務間インターバルが11時間よりも短い勤務については評価対象に加えられたことを重く受け止めて、休息期間については11時間を主張してきました。EUやILO基準より重い又は一般労働者にはインターバル時間の具体的な定めがない中で、自動車運転者は検討する必要があるのかという使用者側の意見もありましたが、労災認定基準改正を踏まえての主張でありますから、労側委員の主張は妥当であるということを改めて申し述べておきたいと思います。報告案については、異論はないと申しましたが、先ほど武居委員からの御発言にもありましたとおり、そういった点も踏まえまして、あくまでも休息期間の基本は11時間であるということ、9時間はあくまでも例外であること、このことを全ての事業者さんに対してしっかり周知していただきまして、休息期間は11時間、拘束時間13時間を前提とした労務管理をされるように努力していただくようお願いしたいと思います。
 それと、もう1点、隔日勤務のほうの休息期間についてなのですが、当初より事務局案は現行どおりでいこうということの提案であったと思っています。それにもかかわらず、昼夜が逆転するという勤務である隔日勤務が、大変過酷な勤務であることを踏まえて、改善が必要であるという私ども労側委員の主張については、使用者側委員におかれましては、御理解を頂きまして一定の譲歩を頂いたことについて感謝申し上げておきたいと思います。以上です。
○清水委員 使用者側の清水です。休息期間を一律に11時間と定めてしまうと、日勤の拘束時間13時間プラス休息期間が11時間で24時間ということになるのは、極めて窮屈なローテーションになります。例えば夜間勤務の人で、20時に出庫している者が30分遅れて20時30分に出庫した場合、翌日以降も20時30分でしか出庫ができなくなると思います。仮に休日を挟んで元に戻そうとしても、今度また、休日は休息期間に24時間を加算した労働義務のない時間、すなわち、この場合は36時間空けるということになるので、また20時30分の出向になってしまって20時に戻すことができないということになろうかと思っております。
 また今日のように雨が降ったような場合は、一時的に大変需要が多くなるということで、20時に出庫している夜間の労働者、運転者も2時間前倒しして18時に出庫するということがあります。この場合、休息期間が9時間取れておりますので出向させることはできるわけで、逆に翌日は20時に出庫ということになれば、勤務と勤務の間の時間は実際に13時間取れているのが実態です。
 それ以降、また20時に戻せば、この労働者の休息期間というか、勤務と勤務の間は実際には今11時間取れているのが実態です。都市部においては、日勤で13時間で運用している所がほとんどで、勤務と勤務の間は現状でも11時間取れているのかなと私は思っております。ただ地方は、16時間を月に何回か入れてのローテーションになっておりますので、現状では休息期間が8時間ですが、この場合は、日勤の最大拘束時間が今後15時間になれば、どうしても休息期間は9時間が必要ということになります。こうしたことから、都市部の実態としては11時間が確保されていますけれども、9時間で次の出番となることがあることも、是非、御理解を頂きたいと思っております。
 隔日勤務については、わずかながらも弾力化ではありますが、労働者の待遇改善への御理解を頂き、労働生産性を高める柔軟性をもたせた効率的、かつ効果的な見直しで、需要のあるときにしっかり働き、そうでないときはしっかり休むというものになったと確信しております。本当にありがとうございました。日勤、隔日勤務とも、案としてお示しいただいたものに異論はありません。以上です。
○両角部会長 どうもありがとうございました。1日及び2暦日の拘束時間、休息期間について、御意見はありますか。
○武居委員 確認したいのですが、22時間を続けるということは基本的にはできないということですよね。22時間を連続してやろうという意図ではないのですけれども、たまたま30分ずつ遅れました、次の日は早めます、また次の日はちょっと遅れました、また次の日は早めますという考え方でよろしいのですか。それとも、変な話、22時間まで30分延長になってしまいました。次の日は隔日に平均ですから、延長になった前の日を短くして次の日を延長しました、次の日がたまたま延長になってしまいました、また次の日で調整すればいいという考え方でよろしいのですか。
○過重労働特別対策室長 前後の勤務との平均の「いずれもが」21時間を超えた場合に違反となる、ということですので、その考えで結構です。
○武居委員 分かりました。理解しました。
○松永委員 それぞれから声が出たと思っているのですが、最初に考え方をお聞きしたいと申し上げたのは、隔日については久松委員から述べていただいた中で大変前向きな形になったのではないかと思っております。日勤については先ほど申し上げたとおり、「休息を与えるよう努めることを基本とし」という言葉を、「努めること」という文字を削除するということを前提で、何か問題があるのかというのを、厚生労働省からお答えいただきたいと思うのですが。
○両角部会長 はい、分かりました。それでは、事務局からお答えを頂きたいと思います。お願いいたします。
○過重労働特別対策室長 労使の隔たりが大きい中で、どのように決着点をつけるかと考えたのですが、努力義務でありながら「基本とする」という文章を付けたのは、これは11時間という数字が拠り所になるものであって、非常に重要だという意味合いを示したものと考えております。つまり、事業場において、まずは11時間以上休息期間をとるようにしていくこと、これが基本的な考えと理解していただきたいと思っており、今後は通達等を含めて、このような考え方を示していきたいと思っております。以上です。
○両角部会長 ありがとうございました。松永委員、よろしいでしょうか。
○松永委員 ありがとうございます。先ほど久松委員からも最終的な話があったと思うのですが、事業者側には是非、11時間は基本という考え方の前提で、この継続9時間を下回らないという考え方で、事業者に徹底していただく考え方を伝えていただくということで、私は受け止めたいと思っております。よろしくお願いします。
○両角部会長 ありがとうございました。それでは、この項目2については、ほかにありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、御了承を頂いたということで、次に項目3に移ります。項目3は、「車庫待ち等の自動車運転者について」です。この項目について御意見、御質問などはありますか。久松委員、お願いします。
○久松委員 報告案には異論はありません。これまで車庫待ちの定義について曖昧であったという点については、明確にしていただいたことについて感謝申し上げます。事業場の所在地や営業状況で、労働時間管理を的確に運用していただき、より一層自動車運送事業が向上されますよう、利用者の皆さんにも行政に対してもお願いしておきたいと思います。以上です。
○両角部会長 ありがとうございました。ほかに車庫待ちについて、御意見がありましたらお願いいたします。武居委員、お願いします。
○武居委員 実は、地方から資格要件の中で、30万程度ということについて、何で30万にしたのかという声が出てきました。実は、今までの車庫待ちの適用の中では30万人程度を資格要件にしていたのですけれども、現状はもう30万人以上ということで、はっきりと明記されています。これについては、地方から、実は今まで車庫待ちの適用をしていたのだけれども、この30万となると、1人でも超過すると適用除外になるのは不安であり、反対意見を言ってきた地域があるということを報告しておきます。ただ、私はやはり、久松さんもおっしゃるとおり、ここは中途半端にやらないほうがいいとも思っているので、30万人という人数については、決まればそのように今後全国には理解をしてもらうよう努めたいと思っております。そういう意見があった、そういう地域があったということだけは、労働側としても認識をしておいていただきたいです。
○両角部会長 ありがとうございました。ほかに車庫待ちについて、御意見がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、続いて項目4の「例外的な取扱いについて」にまいります。この点については誤植があったようです。(1)「予期し得ない事象に遭遇した場合」の4行目、「ただし」から始まる文ですが、「対応に要した時間を含めて算出した」の後に「時間が」という語句が抜けておりました。これは誤植ということで、修正させていただきたいと思います。その上で、例外的な取扱いについて御意見等がありましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。特に御質問、御意見などはないということで、先に進んでもよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは次に、項目5の「休日労働について」です。4ページの休日労働についてですが、これは労使双方に御確認いただき、2週間について1回を超えないということで、変更なしと認識しております。この点について特段の御意見がなければ、次に進みたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
 ありがとうございます。それでは、同じく4ページの項目6の「ハイヤーについて」です。これについて御意見などいかがでしょうか。松永委員、お願いいたします。
○松永委員 ハイヤーについて、当初から労使で声を出しながらこういう形で進めさせていただいたことに、まず感謝を申し上げますし、この内容で、今回はよい結果になったのではないかと思っております。以上です。
○両角部会長 ありがとうございました。ほかにハイヤーについての御意見はありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、最後に項目7「その他」の累進歩合制度についてです。こちらについて久松委員、お願いします。
○久松委員 報告案については、異論はありません。累進歩合制度については、長時間労働やスピード違反を極端に誘発されるおそれがあり、交通事故の発生も懸念される賃金制度です。運転者の健康だけでなく、利用者をも危険にさらすということを念頭に、通達の見直しにおいて丁寧な検討をお願いしたいと思います。
全体を通して発言をさせていただきたいと思います。今回の報告案を反映して改正されますと、改善基準告示が令和6年、2024年4月以降に適用されていくことになりますが、次回改善基準告示の見直しが行えるのは恐らく自動車運転者の時間外労働の上限が一般則であります年360時間、臨時的な特別の事情がある場合でも720時間が適用されるときであろうと思います。それが一体何年後になるのか、今のところ分かりませんが、先ほどから何度も使用者の皆様にはお願い申し上げますが、重ねてもう一度お願いさせていただきたいと思います。実際の労務管理については日勤の拘束時間は13時間、休息期間は11時間、隔日勤務の休息期間は24時間、これを基本としていただいた上で、長時間労働や健康被害を防止し、自動車運転者のみならず、利用者の安全・安心をも担保できる対応を推進していただけますよう、重ねてお願いしておきます。また、厚生労働省におかれましても、現場での監督では改善基準告示改正の趣旨・目的を踏まえた周知、助言、指導を徹底していただけますようお願いしておきたいと思います。以上です。
○両角部会長 久松委員、ありがとうございました。今、労働側から総括的な御意見を頂いたと思いますので、使用者側からも御意見があればお願いいたします。武居委員、どうぞ。
○武居委員 960時間というのは、特別な事情がある場合の上限で、その辺りは私も今後、働き方改革を含めた改善基準の告示がある程度決まりましたら、全国に説明しに行くつもりです。その際に、やはり今、久松さんがおっしゃったとおり、将来的には720時間に向けて、我々は今から準備しなければいけないよねというのが1つあります。それと、賃金体系上60時間以上5割増しというのは、令和5年の4月1日からスタートするわけです。実務的には、かなりシフト上で60時間以上5割増しという割増賃金の問題については、日勤ですが、それについてはかなり720時間を意識した部分のシフトになっていくのではないかと、私は予想しております。それに向けて、労使でいろいろな問題点を今後も協力すべきことはしていきたいと思っています。
 昨今、問題なのは、やはり今はコロナ禍で、今後アフターコロナと言われている中で、先般のシンポジウムでも、ハイタクフォーラムでもありましたとおり、適正な運賃の値上げというか、適正な運賃については今後、労使ともにやっていかないと、なかなか現実論として時間短縮をして生産性を上げて、ある意味では同じ労働時間が短くて給料が上がっていくと、これはもう最高なことです。また、そうしていかないと、労働者の採用にもなかなか結び付いていかないだろうと思います。これは、実は使用者側も大変苦戦をしております。現状として、やはり賃金が、全産業から比較しても更に差が出てきてしまったということです。今申し上げたとおり、720時間に向けてこれから努力をするのが、我々使用者側としても活性化も含めて、60時間以上5割増しという賃金体系も含めて、努力をしていくつもりです。が、それに伴う適正な運賃というものを、労使を上げて、利用者、行政に理解をしていただいて、時間短縮に向けて適正な運賃を適用していくというようなことで、労使一体として頑張っていこうということを最後にお願いしておく次第です。以上です。
○両角部会長 武居委員、ありがとうございました。それでは、労使双方から総括的な御意見を頂きましたので、事務局からお願いいたします。
○過重労働特別対策室長 ただいま労使の委員の皆様から様々な御意見をいただきました。今回の改正は、過労死等の防止に資するものとなるよう改善基準告示全体を見直したものであり、平成9年以来の大きな改正です。関係者の皆様に改正の趣旨や考え方も含めてしっかりと御理解いただけるように、私どもとしても周知に努めてまいりたいと思います。以上です。
○両角部会長 ありがとうございました。それでは、改めて私としては、ハイヤー・タクシー作業部会の検討結果として、この報告案の内容で、自動車運転者労働時間等専門部会に報告したいと考えますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○両角部会長 ありがとうございます。それでは、事務局からカガミを配布してください。
(資料配布)
○両角部会長 会場の委員の皆様には今お配りしておりますが、オンライン参加の皆様には画面共有にて御覧いただくことになっております。
 それでは、お手元の案、又は画面上の案を確認いただきたいと思います。改めまして、ハイヤー・タクシー作業部会の検討結果として、この報告案の内容で自動車運転者労働時間等専門委員会に報告をしたいと考えますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○両角部会長 どうもありがとうございました。ただいまご承認いただいた報告案は、昨年5月からの作業部会で行ってきた検討の結果です。とりまとめに向けて、ひとかたならぬ尽力を頂きました委員の皆様、事務局の皆様に、心から御礼申し上げます。特に労使双方の代表である久松委員、松永委員、武居委員、清水委員には、率直かつ真摯な議論を重ねられきたことに対して、心から敬意を表したいと思っております。本当にどうもありがとうございました。
 それでは、ここで小林審議官に御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
○審議官 審議官の小林です。今、両角部会長からもお話がありましたが、私からも一言御挨拶を申し上げます。委員の皆様におかれましては、昨年5月に本作業部会において、ハイヤー・タクシーの改善基準見直しの議論を開始して以降、本日までの間、大変熱心に御議論を頂いたことに改めて感謝を申し上げます。
公・労・使それぞれのお立場から、過労死等防止の観点から、どう見直すべきかについて、真摯に御検討いただいた結果、全体として大幅な改善の内容となったものと考えております。
 まだ他の業態の取りまとめがありますが、令和6年4月からの施行に向けて、告示、通達の改正等の作業を進めながら、今回の見直し内容が、事業者・労働者の皆様に広く浸透するよう周知を図っていきたいと考えております。どうもありがとうございました。
○両角部会長 小林審議官、どうもありがとうございました。それから皆様、本当にありがとうございました。それでは、本日の部会はここまでとさせていただきます。
 最後に、事務局から連絡事項などがあれば、お願いいたします。
○中央労働基準監察監督官 部会長からもお話がありましたが、本日取りまとめていただきました報告書については、今後、自動車運転者労働時間等専門委員会を開催し、部会長から報告いただくことになります。以上です。
○両角部会長 それでは、これをもちまして、第6回自動車運転者労働時間等専門委員会ハイヤー・タクシー作業部会を終了いたします。皆様、ありがとうございました。