第2回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会(議事録)

  1. 日時 令和3年7月29日(木)14時00分~15時33分
  2. 場所 労働委員会会館 講堂
    (東京都港区芝公園1-5-32 7階)
  3. 出席委員
    (公益代表委員)
    • 立教大学経済学部教授 首藤若菜
    • 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授 藤村博之
    (労働者代表委員)
    • 全国交通運輸労働組合総連合トラック部会事務局長 貫正和
    • 全日本運輸産業労働組合連合会中央副執行委員長 世永正伸
    (使用者代表委員)
    • 日本通運株式会社執行役員 赤間立也
    • 公益社団法人全日本トラック協会副会長、松浦通運株式会社代表取締役 馬渡雅敏
  4. 議題
    1. (1)令和3年度における自動車運転者労働時間等実態調査の実施について
    2. (2)改善基準告示の見直しについて
    3. (3)その他
  5. 議事
    ○中央労働基準監察監督官 ただ今から第2回自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
     本日の議事運営に当たり、新型コロナウイルス感染症対策として、原則として報道関係者のみの傍聴とさせていただいています。また、傍聴席の間隔を広げるなどの措置を講じた上で、運営させていただきます。会場の皆様におかれましては、備え付けの消毒液の御利用をはじめ、マスクの御着用や咳エチケット等に御配慮いただきますよう、お願い申し上げます。また、換気のために、常時扉、窓を開けさせていただきます。あらかじめ御承知おきください。
     まず、本日の御出席の委員について、御欠席の委員はおられませんので、定足数は満たされていることを御報告申し上げます。また、国土交通省から、オブザーバーとして御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
     続きまして、お配りしている資料の確認をいたします。一番上が作業部会次第です。次第の下に資料がございます。資料1「令和3年度実態調査について」、資料2「改善基準告示見直しに関する御意見について」、参考資料1「トラック調査票(案)」、参考資料2「改善基準告示見直しについて」、参考資料3「改善基準告示の内容(一覧表)」です。不足等があれば、事務局までお申付けください。
     カメラ撮りはここまでとさせていただきます。これ以降の進行については、藤村部会長にお願いいたします。
    ○藤村部会長 部会長の藤村です。まず、議題1「令和3年度における自動車運転者労働時間等実態調査の実施について」を検討いたします。資料について、事務局より説明をお願いします。
    ○過重労働特別対策室長 資料1と参考資料1を御用意ください。まず、資料1です。1ページ、令和3年度のトラック実態調査について(案)です。新型コロナウイルス感染拡大で、物流の変化を考慮しなければいけないということで、トラックの実態調査を実施するということです。前年度にも調査いただいておりますが、その事業者の方たちについては、更に追加調査を実施して、それも併せて報告書に取りまとめることを考えています。
     具体的な内容に移ります。実態調査の実施時期については、令和3年10月初旬に調査票を配布します。実態調査の調査対象期間は、令和3年3月~令和3年9月を予定しています。この中で、通常期と繁忙期を各社で指定していただいて、それに回答をいただきます。実態調査の調査対象数は、令和3年度は1,410事業場、調査対象労働者は8,460名ということで、昨年の倍ですが、昨年度は705事業場に対して257事業場から回答がございました。ここについては、追跡調査という形で実施したいと思います。
     次に、実態調査の項目です。コロナ禍において新たに設ける問ということで、事業者のほうは、2週平均1週の運転時間数、1か月の時間外労働時間数、それから、1か月の法定休日労働時間数、そして、新型コロナ拡大に伴う拘束時間等への影響を追記させていただきたいと思います。それから、自動車運転者に対しては、新型コロナ感染拡大に伴う拘束時間等への影響を追加したいと思います。
     それから、修正する問としては、事業者のほうは、1日の時間外労働時間数の選択肢について、以前は4時間ごとで区切っていましたが、もっと細分化します。削除する問ですが、事業者のほうは、運行管理者の情報とGマークの関係、働きやすい職場認証制度の関係、始業から終業までの1日の拘束時間、それから、改善基準告示の内容は追跡調査のみ削除させていただきます。自動車運転者のほうは、改善基準告示の認知、改善基準告示の内容は追跡調査のみ削除させていただきます。
     本日、調査票(案)を決定いただければ、10月初旬に実態調査票を発送して、次の第3回トラック作業部会において、実態調査の調査結果を報告したいと考えております。
     参考資料を御覧ください。目次の上から、事業者調査の追跡調査、運転者の追跡調査、新規の事業者調査、新規の運転者調査と並んでおります。
     追跡調査の1ページ目ですが、左の一番上に、「これは追跡調査ですよ」ということを書きまして、労働者についても、令和2年度に実施した自動車運転者調査に回答した方と同じ方に調査票を配布してくださいという形で、追跡をしたいと考えております。
     8ページです。ここで調査対象とする2021年の通常期と繁忙期を各社で決めていただく形です。
     11ページからですが、青で線を引いてあります。(6)は新規で、2週間を平均した1週当たりの運転時間、(7)は、以前は4時間ごとで区切っていましたが、それを修正して、もう少し細かく時間外労働を見ていくというものです。(8)は、1か月間における時間外労働時間数、これを新しく追加しています。
     14ページですが、ここも新たな追加です。1か月における法定休日労働の時間数です。(12)は、新型コロナウイルス感染流行前と比べてどうかを、選択肢で回答をいただく形を考えております。
     労働者調査は、27ページです。問13で、2021年の3月から9月までにおいて最も忙しかった時間の拘束時間や運転時間について、おおよその時間を答えていただくとともに、問14で、今度は2019年の3月から9月までに最も忙しかった時間の拘束時間を聞いて、比較をしようということです。問15で、新型コロナウイルスの影響があったかどうかを答えていただく形です。主な点については以上です。
    ○藤村部会長 ただいま事務局から説明のあった令和3年度の実態調査について、御意見がございましたらお願いいたします。労使双方、よろしいでしょうか。特に意見がないようですので、この調査票で、今年の秋に、全国の営業場及び自動車運転者を対象に実態調査を行うことを、この場で御承認いただきたいと思います。よろしいでしょうか。
       (異議なし)
    ○藤村部会長 それでは、この調査票で実態調査を実施し、調査結果を報告書に取りまとめ、次回の作業部会で報告するようにしていただきたいと思います。
     続きまして、議題2「改善基準告示の見直しについて」に入ります。事務局より資料説明をお願いいたします。
    ○過重労働特別対策室長 資料2、参考資料2、参考資料3について説明いたします。まず、資料2「改善基準告示見直しに関する御意見について」で、現在の改善基準告示と、今までの労働者側、使用者側の主な御意見を並べたものです。
     1ページです。現在、1か月の拘束時間が原則293時間となっています。293時間ということは、1か月の時間外・休日労働時間が大体98時間取れる程度の数字です。労働者代表からの意見としては、「1年の拘束時間は720時間を念頭に3,300時間とすべきである」ということです。3,300時間を12か月で割って、275時間というのが、適当ではないかということです。そして、使用者代表からは、「1年の拘束時間は、時間外960時間を前提に考えている」という意見がありました。これは休日抜きの年拘束が3,300時間なので、休日は別途これに上乗せする形が適当ではないかという意見です。
     そして、年の拘束時間ですが、現在は労使協定を締結して、年3,516時間の範囲で、年6回、320時間まで延長できるとなっていますが、※にあるように、この320時間というのは125時間の時間外・休日労働時間ができる数です。労働者代表、使用者代表の意見としては、先ほど申し上げたものと同じです。
     それから、一日の休息期間です。現在は8時間ですが、労働者代表からは「ILO勧告を踏まえて11時間を目指すべきだ」という意見が出ています。使用者代表からは、「11時間にすると上限が24時間との関係で13時間になってしまって、繁閑に対応ができない」、さらに「現行でも、1日10時間程度の休息が取れているはずだ」という意見がありました。
     次は、1日の拘束時間です。現在は13時間です。計算すると、1日8時間の法定労働時間に、休憩時間が1時間で、4時間の時間外労働時間をするような形になっています。そして、1日の最大拘束時間は16時間ですが、これは7時間の時間外労働時間に該当するということです。労働者代表からは、「1日の休息期間を11時間に見直すのであれば、1日の拘束時間も当然最大13時間となる」という意見がありました。使用者代表からは、「これでは業務の繁閑に対応できない」という意見がありました。
     次に、1日の拘束時間の延長の15時間超えは週2回までという規定があります。これはトラックとバスのみです。これは労働者側、使用者側も、今のところ発言はないということです。
     3ページです。運転時間の関係です。2日平均9時間、2週平均で1週44時間という規定があります。これは労働者代表、使用者代表とも、天候とか渋滞の影響等があるので、具体的な時間数等はないのですが、「柔軟な運用としてもいいのではないか」という意見がありました。そして、その下の連続運転時間4時間という規定がありますが、運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に30分以上の「運転の離脱」が必要だということが書いてあります。これについても先ほどと同様、天候とか渋滞の影響もあるので、「特別な事情があれば、柔軟な運用としてほしい」という意見がありました。
     4ページです。特例、その他です。特例は3種類ありまして、分割休息特例、2人乗務の特例、フェリーの特例です。いずれも労働者代表、使用者代表とも、今のところは発言がないということです。そして、休日労働は2週間に1回という規定がありますが、これについては労働者代表から、「現行どおりで妥当ではないか」という意見がありました。使用者代表からは、今のところは発言がないという状況です。
     続いて、参考資料2「改善基準告示の見直しについて」です。本日の議論に関係するいろいろな資料を付けています。1ページ、自動車運転者を取り巻く状況です。大型トラック運転者は、労働時間を全産業の平均と比べて2割ぐらい長い。トラック運転者の年間賃金についても、全産業平均より約1割から2割ぐらい低い。人手不足感についても、ほかの職業の平均よりも約2倍近く高い傾向にあります。年齢構成についても、全産業平均よりも、高齢者の割合が4割と高い傾向にあります。
     2ページです。これは厚労省の調査から取った統計です。全産業と、トラック、タクシー、バスと並べています。トラック運転者は全産業平均と比べて、年齢が高い傾向があります。それから、所定内実労働時間数、超過実労働時間数ともに、全産業と比べても時間が長く、賃金が低いという状況です。
     3ページです。働き方改革関連法の国会附帯決議で特に示されています。附帯決議においては、参議院、衆議院とも、附帯決議がされていまして、それぞれ過労死防止の観点から改善基準告示を見直すように求められているところです。時間外労働時間は、令和6年4月以降、基本的には年360時間、月45時間なのですが、特別延長時間として、休日労働を含まず年960時間と定められたところです。
     次に、過労死等の労災補償状況についてです。これは令和2年度の過労死の労災補償状況を取ったものです。左は労災の請求件数で、右が支給決定件数です。いずれも、他の業種に比べて一番高いということで、認定率は55%、支給決定件数も道路貨物運送業は55件で、ほかの業種よりも特に高いという状況になっています。
     次のページです。脳・心臓疾患の労災認定基準です。長期間の過重業務で、発症前1か月間に、時間外労働時間が概ね100時間を超える、それから、発症前2~6か月の月平均時間外労働時間が概ね80時間を超えるという場合に、業務と発症との関連が強いと評価されるということです。さらに、現在、この脳・心臓疾患の労災認定の基準を改正する専門検討委員会が開かれておりまして、その中ではまず、100時間とか80時間の基準については、概ね現行基準が適切だと判断されております。ただし、現行基準に新たに取り入れることが適切と判断されたところについては、例えば労働時間以外の負荷要因も認定に加えていこうと。例えば勤務間インターバルが短い勤務等については、積極的に評価をしていこうという形になっています。今年の9月上旬を目途に改正の見込みとなっております。
     7ページです。脳・心臓疾患の労災認定基準における労働時間の評価です。上から2つ目の矢印をご覧いただくと、1日6時間程度の睡眠が確保できない状態については、これが続くと概ね80時間を超える時間外労働が想定されるということです。また、1日5時間程度の睡眠を確保できない状態は、100時間を超える時間外労働が想定されるということです。
     続いて、時間外労働の上限規制です。時間外労働の上限は、月45時間、年360時間を原則として、臨時的な特別な事情である場合でも、年720時間、単月100時間未満、これは休日労働を含みます。それから、複数月平均80時間です。建設、医師等は適用猶予とされ、5年間は一般則の適用はないという形です。
     9ページです。医師の時間外労働の上限規制も検討が進んでいます。赤い四角で囲った部分ですが、基本的には2024年4月からは、年960時間、月100時間未満、いずれも休日労働を含んでという形が原則で、必要な地域医療提供体制の確保や、一定期間集中的に技能向上のための診療を行わせるという観点から、特例を設ける形になっています。
     11ページです。令和2年に行われた調査の結果です。1年の拘束時間は70%の事業場が、「大体3,300時間未満」と回答しております。それから、1か月の拘束時間の上限は320時間なのですが、繁忙期において、56%の事業場が「275時間未満」と回答しています。
     12ページです。1か月の拘束時間の293時間を超える割合は、発荷主別に比較すると、農産・水産出荷団体が36%と最も高いという状況です。それから、自動車運転者が適切と思う1か月の拘束時間は、275時間未満の割合が33%と最も高いという状況です。それから、延長する場合の1か月の拘束時間は、293時間~320時間以下という割合が、38%と最も高いという状況です。
     13ページです。時間外労働時間数と休日労働の回数です。時間外労働時間数は、繁忙期ですが、47%の事業者が「大体1時間以上~4時間以下」と回答しています。それから、繁忙期の法定休日労働が、61%の事業者が「1回以下」と回答しております。
     14ページです。1日の拘束時間と休息期間についてです。繁忙期において、1日の拘束時間は62%の事業者が「13時間以下」と回答しております。それから、1日の休息期間は、42%程度の自動車運転者が「10時間以上」と回答しています。また、「10時間以上」と回答している自動車運転者のうち、最も多い年収額は「400万円以上~600万円未満」ということで、600万円以上であっても、10時間以上は29.3%と少ないので、年収と休息期間の関係はあまりみられません。
     その下の表が休息期間と睡眠のクロスの集計です。休息期間を8時間以下~11時間超と取ってみて、睡眠を5時間以下~8時間超まで取ってみて分析をすると、8時間以下の休息期間を取った場合には、睡眠時間が5時間以下となってしまいます。一方で、10時間から11時間以下だと、40.7%ぐらいが6時間30分から7時間ぐらいの睡眠を取っていて、11時間超になると、7時間30分から8時間ぐらいの睡眠が取れているということで、休息期間と睡眠時間の相関性が一定みられます。
     15ページは、連続運転時間です。これについては、繁忙期においても、92%の事業者が「4時間以下」と回答しています。発荷主の種類別に比較すると、「4時間を超える」というのは、農産・水産品出荷団体と、建設業・建材(製造業)が高い傾向にあると見て取れます。
     16ページは、運転時間です。2日平均の1日についてということですが、2日平均で1日9時間については、繁忙期において83%の事業者が、「9時間以下」と回答しています。それから、発荷主の種類別に比較すると、「9時間を超える」という割合は、農産・水産品出荷団体が37%と多くて、それ以外に紙・パルプというのが、高い状況にあるという形です。
     17ページは、特例です。特例の利用状況は、休息期間分割特例を適用している割合が、最も多かったとなっています。それから、自動車運転者に休息期間分割特例について適切と思う時間を確認しましたら、休息期間1回当たりの時間について「4時間未満」よりも、「4時間以上」と回答した割合が高かったということです。それから、分割した休息の合計時間については、「10時間以上」よりも「10時間未満」と回答した割合が高かったということです。
     18ページは、諸外国の自動車運転者の労働時間の規制状況です。表の一番左が日本で、次にILO条約の関係、アメリカ、EU規則というように並べています。ILO条約においては拘束時間の定めはないのですが、休息期間は連続10時間であり、週2回以上8時間に短縮が不可と定められております。EU規則は拘束時間が定められていて、1日13時間となっており、休息期間は11時間、週3回までは9時間に短縮可と定められております。
     18ページは、ただ今の関連ですが、ILO条約とILO勧告です。ILO条約の153号第9条、ILO勧告の161条項目26において、事故、故障、予見されない遅延等、不可抗力等については、例外的な取扱いが定められております。
     20ページは、具体的にほかの国ではどうなっているのかということで、イギリスとスイスの例を挙げております。イギリスでは、これを用いて悪天候とか、交通事故、フェリーの中断とか、命や健康に危険を及ぼす可能性のある事象については、運転時間、連続運転時間、休息期間の定めを逸脱することができると定められております。また、スイスでは、これも似ているのですが、故障、暴風雨/雪崩による道路の封鎖等の予見できない緊急的な事象、適切な駐車スペースに停車する時間については、運転時間、休息期間等から逸脱することができると定められています。
     最後ですが、国土交通省の処分基準です。国土交通省においては、過労運転防止の観点から、1か月の拘束時間と休日労働の限度に関する違反については、通常にプラスして、1件確認された場合には10日車、2件以上確認された場合には20日車の車両停止処分を行うということです。以上です。
    ○藤村部会長 どうもありがとうございました。それでは、ここからは資料の2、パワーポイントのスライド横のものですが、これに沿いまして労使の見解を私から確認をしていきたいと思います。
     まずは「1年の拘束時間」、それから「1か月の拘束時間」についてです。労働側にお尋ねをしたいのですが、前回の発言の中で、休日込みで1年3,300時間、そういう主張をされています。それを踏まえまして、1か月の拘束時間の原則、あるいは1か月の拘束時間の上限、そういった点についてどのようにお考えかというところを、表明していただききたいと思います。いかがでしょうか。
    ○貫委員 それでは労働側の意見としては、1か月の拘束時間につきましては前回お話をさせていただきましたとおり、3,300時間を念頭に考えているというところで、これはあくまでも今後一般則が適用になったときにも、改善基準告示が遵守できるような形のものを今の段階から準備しておくことがいいのではないかというように考えているところです。
     年の変動の上限等の部分についても、いろいろな規制、考え方を踏まえて1か月の時間外労働、休日労働の合計が100時間未満となるような拘束時間の上限値までの変動というものはよろしいのではないかというような考えを持っているというところです。
    ○世永委員 すみません、今、貫さんが言ったとおりなのですが、単月100時間未満ということでやりますと、労使協定をして延長できる時間については294時間という拘束時間の数字ということで、労働側としては思っています。
    ○藤村部会長 はい、分かりました。現在というか今、労働側から1年3,300時間の拘束、休日込みという主張がされていますが、それに対する使用者側としての見解並びに1か月原則275時間の拘束、1か月の上限が294時間という労働側の主張があるわけですが、それについての使用者側のお考えを確認したいと思います。どうぞお願いいたします。
    ○赤間委員 では私から、今、労働側のお話を聞きましたが、まず大前提として法律自体が今一般則の適用を猶予している。なおかつ、時間外960時間、これには休日は含まれない。これが今の法律の主旨だと理解しています。そうなりますと、それよりもさらに、最終的に一般則にいつ移行するのかというのは、まだ全然時期が見えないわけですが、いきなりそこに移行するというのは、現実今の法律の下に運用しているわけですから、かなり実態としては混乱を招くのではないかなというように考えます。
     もう1つ状況として、2023年から中小の業者に関しても割増時間外手当の支給ということから考えると、いずれ自ずと時間外も減っていく流れになるのではないか。したがって、法律に合わせた形のままでいいのではないかと、あえてそこまで足かせというか厳しくする必要は、現時点ではただ単に混乱を招くだけではないかなというように考えます。
    ○馬渡委員 赤間委員さんがおっしゃったとおりだと思っていますが、この960時間が出て現状を見直していきましょうと言ったときと、コロナ禍を経て1年以上経ってきた今とでは、その実態とはものすごく違ってきているのです。労働者側の委員さんがおっしゃっている主旨は十分理解は使用者側もしていますが、今の実態から考えるとコロナ禍において、また需給がごろっと正反対になって、仕事そのものも当然少なくなっている。それから競争がまた激しくなっている。その中でたがをはめていこうという話になると、やはり今例外規定で960時間になっているものが、休日は除外しますということであれば、そこから始めて、実態を見ながら720時間を実現しましょうというお話には、十分我々も乗っていけるのかなと思いますが、今回の見直しにおいては赤間さんがおっしゃったような形で、拙速は避けたいと思っています。
    ○藤村部会長 世永さん、どうぞ。
    ○世永委員 この議論のスタートは、やはり過労死等の問題ということで令和2年の実態についても先ほど報告があったとおりです。過労死の関係もかなり増えているということからすると、やはり我々としてはこの物流の将来に向けた持続可能な産業ということと、若者が望んでいる業界に変えていくという将来を見据えたものということを思っています。これについては、先ほど立て付けの関係、若干意見がありましたが、改善基準告示の場合は9時間ということで、これは繁閑を問わず変えないという労側の強い意思がありますので、確かに法律上の立て付けは上限規制、休日別ですが、改善基準告示については含むという今までの立て付けは変えないというような認識があります。そういうことで臨んでいます。
     それと、やはり過労死認定基準ということを1つの指標として捉えていますので、そこは月間当たり80、年間当たり960ということで行くというスタンスです。
    ○藤村部会長 今日は労使双方がしっかり意見を言っていただくと、そういう場ですので、ここで何か合意を取っていくというところではないと思っています。ですから、例えば使用者側、今の労働側の意見に対して何かあれば言っていただければいいと思いますが、いかがですか。
    ○赤間委員 立て付けの違いは立場の違いもあるので、如何ともし難いとしか、そこのところについては回答のしようがないというのが現状です。趣旨は多分、労使ともに分かっているのです。一般則に最終的に移行していくということは、これは間違いなく分かっているのです。まして、自分のところの従業員を過労死させたい使用者はいないと思います。ただ、一足飛びに規制をかけてちゃんと守りなさいというのは、現実的にどうかという問題があるのです。そこは労働側は、当然立て付け上、建前上言えないと思いますが、御理解を頂いているのだろうなという感じを持っています。そこのところでどうやって落とし所を見るのかなという話なのかと思いますが、なかなかいきなり労働側の主張に、そうですね、では頑張っていきましょうというのは現状いかないというのがあります。
    ○馬渡委員 議論を始めたときからすると、先ほどから言っているような状況の変化が大き過ぎて困っているということもあります。先ほど赤間さんがおっしゃったように、2023年の4月から60時間を超えると5割増残業代を払いなさいということも、待ったなしで始まりますので、経営者側としても720時間というのは当然意識をしていく話になります。ただし、実態としてそれにぴたっとこうなってくるかという話になると、一足飛びというのは我々としては避けたいと思っているところです。そこは議論の話になるかなと。お互いに依って立つところが違いますので、もし片方の原則でいうなら休日込みの1年の拘束時間はこうしましょうというお話になるのか、それとも今の話のように3,300を見ながら休日を含みなさいという話をどう話すのか、どちらになるか折合いはどこかで付けていかなくてはいけないと思います。ただ、立場はそういう立場でお話をさせていただこうかなと思っているところです。
    ○藤村部会長 はい、分かりました。ありがとうございます。よろしいですか。
    ○世永委員 2023年からの中小の6時間超えの5割増は、この間ずっと廃案になった2015年法案ということで言いますと、2013、14年から議論したところです。2015年法案で、2017年の解散で廃案になったということもありますが、ずっと前倒しを主張してきて、最終的には労政審で2023年ということになったということで、実は大分前に決まったと我々としては認識を持っています。そういった1つの先ほど言ったターゲット、指標が720と思っています。先ほど申し上げたとおり、立て付けについては労働側としては変えるつもりはありません。繰り返しになりますが、そのように主張させていただきます。
    ○藤村部会長 はい、分かりました。ありがとうございます。
     では、続きまして1日の休息時間並びに1日の拘束時間についてです。労働側が前回、休息は原則11時間、1日の拘束は13時間という主張をされていました。繁忙期については、対応の必要がある場合、1日の拘束時間の上限、あるいは1日の休息の下限、その辺りは御意見があるかと思いますので、そこをお伺いをしたいと思います。どうぞ。
    ○世永委員 基本的にILOの11時間を目指すということは、変わりありません。これは私たちが確認している連合の政策の基本と言いますか、目標値でもありますので、ここについては目指していこうと思っています。特にアンケートの結果、14ページにもありますが1日の拘束時間ということでいきますと、休息期間についても自ずとそういった数字が出てくるのだろうと思っています。ただ、実際に長距離をやっているドライバーからは、また別の意見もありますので、貫委員からまたお話していただければと思います。
    ○貫委員 休息期間の部分についてなのですが、これは以前もお話をさせていただいたかと思いますが、やはり日勤の乗務員と長距離の乗務員、こちらの方々の休息期間の捉え方、要は家で休む休息と車中泊における休息、この時間が同じでいいものなのかどうなのかということが、いろいろなところで意見を聞く中においてはちょっと疑問符のところがあるため、ちょっと議論をしていただきたい、させていただきたいところかなと思っています。 
    いろいろなところで、ドライバーとして何にストレスが今ありますかというような聞き方をしたときに、最近、止まっていることにストレスがあるという意見をよく聞くようになってきました。使用者のほうからも、改善基準を守るためにきちっと休息期間何時間止まりなさいというような指導を受けていて、長距離を走ったときに頻繁に長距離を走らないようなドライバーなどは、何が一番ストレスだったかと聞くと、走る距離よりも止まっている時間が一番ストレスだったというようなことも出ています。
    ですので、ある意味この休息期間を私は8時間よりも短くするという考えは持ちませんが、これをあまり長くし過ぎると、逆に長距離運行を主とする運転者については、逆の形でストレスがたまって過労を少しでも妨げましょう、和らげましょうというところから、ちょっとずれてくるようにもなってこないかなという懸念を持っています。
    ですので、車中泊と家での休息、この捉え方をどうするかというような部分も少し議論できればと思っているところです。以上です。
    ○藤村部会長 分かりました。ありがとうございます。使用者側は、この休息、原則11時間など、その辺りについてはどのように考えておられるかを表明をいただきたいと思います。
    ○馬渡委員 私から、これは先ほど貫委員がおっしゃったように、長距離、近距離でやはり捉え方が、我々のほうも違うという部分もありますので、本当に今回、最初のときにも申し上げましたが、荷種や業務の形態によってこのように決めましょうということができるのであったら、そのように決めていただきたいなということがあります。ですから、その辺のところの議論ができるのであれば、させていただきたい。ただ、全部を通して、例えばトラックもバスもタクシーも、これは一律でこの部分はやりましょうという話になると、最大公約数で考えられる一番緩いところで決めましょうという話にしかならないので、その辺りの議論はきちっとしていかなくてはいけないのかなと思っています。
     労働者側がおっしゃっているような過労死の問題など、いろいろな休息を与えなくてはいけないなど、今は就職のことも考えると今まで80何日や90日ぐらいの休みだったものが、110日を超えないとそもそも来てくれないということが、どんどん増えている状況の中で、休みはたくさん与えないといけない。でも、その休みの中でどうしても業務の繁閑で休日出勤が発生してしまうなど、そもそもの時間はちゃんと短くするのですが、このようにして働いてもらう時間もありますと言わないと、そもそも若い方が来ていただけないという現状もありますので、その辺のことも考えると決め方が最大公約数でとにかく緩く長く働くようなイメージで決めるのか、それともある程度こういう業態のときは、このようにして、我々もどの仕事についても、一定の休みや残業時間を短くするなど、そういう努力はしていますということは、当然、使用者側も言いたい部分ではありますので、そこはきちっと議論をさせていただいて、順々に決めていければと思っています。
    ただ、全体を通してとか、今と同じように決めようという話だと、もう8時間でもこのままいきましょうという話にしかならないかなと思ってはいます。例えば拘束時間をどうしよう、最大拘束をどうしようという話をするときに、もう現行どおり最大公約数で決めてくださいと言わざるを得ない部分があるので、もうちょっと小まめに、後からの例外規定や除外規定の話もしたいのですが、そういうものもきちっと決めた上で使用者側の責任によって長く働かせたり、長時間労働させたり、そういうことがないようにはしていきたい。ひどい業者さん以外は誰しもそのように思って、使っているのですが。
    ○赤間委員 休息期間という話になりますと、業態が違うと全く休息の仕方が違うというのは、根本的にあると思います。トラック、バス、タクシーであれば、当然違います。先ほど貫委員がおっしゃったように、長距離とそれ以外の方でも違います。ですので、そういった実態を見ながらの議論は、ある意味必要なのだとは考えます。以上です。
    ○藤村部会長 どうもありがとうございます。労側からありますか。
    ○世永委員 いろいろEUなどの資料を見ても、やはり日本と生活環境も違いますし、休日の取り方なども全然違いますので、そういった国に近付けなくてはいけないということで、ILOの勧告なりを見ながら、私たちは運動を進めていくということです。
     先ほども馬渡さんが言われたとおり、やはり若い人が来てくれるためにどうするのかというようなことを考えた場合、ここは休日の問題なり、休息の関係ともつながってくるのですが、きちっと整理をしていく必要があるだろうと思っています。この資料の14ページにあるとおり、睡眠時間ということを考えると、やはり一定程度の休息期間というものは絶対に必要だなということです。今の8時間がいいとは決して思いませんので、そこは前向きな議論ということになるのかなと思います。
    ○藤村部会長 はい、分かりましたありがとうございます。この1日の休息時間、1日の拘束時間については、以上でよろしいでしょうか。
     では、続きまして、「運転時間」、それから「連続運転時間」についてです。労働側の確認ということで、運転時間を2日平均1日9時間、1週44時間、連続運転4時間については、どのようにお考えかということをお聞かせください。
    ○世永委員 ここのところは、まだ深い議論はしていないのですが、どうしても2日平均とか、例えば2週間平均で1週44時間というようなことで、ドライバー自身がそういうことをしっかり管理できるのかどうかということです。そういうことであれば、貫さんともお話しているのは、今までやったことはないのですが、1週間単位の管理が可能かどうかだということも議論の俎上に乗っけてほしいなと思っています。
     それと、前回お話したとおり、天候や渋滞等の影響で超過する場合は柔軟な対応ということについては、意見は変わりません。なぜ2週間で決められたのだというのがなかなか調べ切れていないものですから、まだ中途半端な意見です。
    ○藤村部会長 はい。
    ○貫委員 ここのところで、私としては運転離脱の部分です。前回もお話させていただきましたが、運転離脱について荷役又は休憩というようなところが今も問われていると思います。そうすると、荷役の時間に運転離脱を全て当てはめられてしまうと、運転者は全く休憩を取る時間がなくなってしまうというようなことが発生してしまいますので、やはり運転離脱の中でもし仮に荷役を行ったような場合には、別途休憩を与えなければならないというような、労基法を逸脱しないような文言を追加すべきではないかと、私自身は思っております。決して運転離脱の中に荷役を入れてはならないとは思っておりませんが、荷役をしたのであれば、別途きちんと休憩を与えないといけないというようなことが必要なのではないかと感じています。
     連続運転4時間という部分については、もう少しストレスの発生状況とか、何かデータがあれば本当に4時間が適切なのかどうなのか、そういったようなところを少し見る必要があるのではないかなと思っておりますが、現行この運用時間で走っている中で、特に長距離の場合、夜間などでサービスエリアやパーキングエリアに止まることができないというようなことが発生しているというところがありますから、こういった場合においては、運行記録計で状況が明らかになるかと思いますので、少しの猶予というのはいいのかなと思っております。ただし、その場合においても、運転時間は1日なのか1週間なのか、今後の議論などで決まってくると思いますが、それを超えてはならないと、1日ここは絶対に超えてはならないというような定めがあるとするならば、少しグレーがあるというような部分を作ってもいいのではないかなと、ドライバーが走りやすくなるような環境にしてもいいのではないかと思っております。以上です。
    ○藤村部会長 どうもありがとうございました。では、使用者側からこの点について御意見を伺いたいと思います。どうぞ。
    ○馬渡委員 運転時間を2日平均とか2週平均にするというところも含めて、我々も議論させていただきたいなと。「主な御意見」のところで書いてありますように、例外規定がきちっと、こういう場合こうしましょうとか、いろいろあると思うのです。緊急輸送とか危険物輸送だけではなくて、事故があったり途中で渋滞に常時あっているとか、工事のために迂回路を走れとか、それから天候、特に自然災害です。この頃いろいろな災害があって、本来すぐに行ける道が何時間も掛かって別の道に行かなければいけない、それ以上に、通常の自家用車であれば通れるのですが、大きなトラックとかトレーラーだと通れない道もあるので、結局はそこで待たなければいけないというような要因もあります。そういう一般的に考えられる場合です。
     それから、我々も全国にそういう特殊な例があるのかという話を聞くと、例えば生きた馬です。北海道などでは馬を運搬しなければいけないとか、そういう場合は運転手さんも大事なのだけれども、ものすごく高い競争馬を休ませたりとか、ゆっくり行かせてあげなければいけないとか、ストレスを与えたらいけないとか、本当に特殊な輸送、化学品とか爆発物を運んでいるのと同じような特殊な輸送もあるというようなお話もあります。そういうものを拾って、こういう場合は運送業の経営者として責任があるという場合は、当然、運送業の経営者に罰則があっていいと思うのですが、やはり荷主さんとか荷種ごとで特殊な要因があるとか、誰が考えても台風のときに止まっているとか、そういうようなのは例外にしてくださいと。要は除外規定を設けてくださいというお話ができるのであれば、先ほどから言っているこの時間の最大公約数を取らなければいけないというのは、少し余裕部分が出てくるのかなと感じるのです。
     その前提がないまま、今のままで決めましょうと言われると、いろいろな場合があるからなと。いろいろな場合があっても、今は罰則は罰則だと言われて終わりなのです。ですから、経営者としての備えの忸怩たる部分はありますので、是非その辺は労働者側と、こういう場合は当然こうですよねというようなことが言えるのであれば、はっきり書いていただいたほうが、ではそれで全体を短くしていきましょうという話ができるのかなと。荷主さんの荷待ちの時間も国交省でも随分頑張っていただいて短くはなってきているのですが、これも根本的な部分ではなくならない部分がありますし、コロナの後になったらもっとひどくなったという事例もありますので、アフターコロナの中でいきなり厳しくするというのは、最大公約数にはならないのかなと思っています。ですから、いろいろなものに関連してくると思いますが、やはり除外規定とか例外規定はどうしても設けていただきたいなと、今日の議論では言っておきたいなと思っております。
    ○藤村部会長 いいですか。世永さん、どうぞ。
    ○世永委員 今、馬渡さんが言われた荷主の荷待ち以前までのお話については、馬引きのものも含めて特殊輸送については、労側も1つピックアップが必要だろうと考えております。ただ、例外なり除外を認めすぎるというか増やしていくと、いろいろな荷種によって方々から意見が出てきますので、そこはやはり一定程度の整理が必要だろうなと思っております。
    ○首藤部会長代理 確かに様々な状況が想定されますので、柔軟な運用というのはある程度必要なのだろうと思います。特に、荷主さんとの関係で相当労働時間が延びているというような現実があるので、それに対しても配慮してほしいということもよく分かるのですが、ただ、同時にどこまでを例外とするのかというのはすごく重要な論点だと思っています。というのは、トラックの場合だけではなくて、多くの労働法において例外規定が、気付くと標準規定のようにして扱われているというのが日本の実態だと思いますので。そもそも法律として定めることの根拠は、労働者の疲労とか過労死の防止であるという観点があるわけですから、ある種、荷主に言われたからそこを例外にする、荷主に言われたから柔軟に運用するということをやっていると、そもそもの根拠規定としての意味がなくなってしまうという面もあるのかなと思います。
     事故や渋滞の面も、確かに予見できなかった部分もありながら、同時に都市部の渋滞というのはある程度、常時発生している突発的な事態というような言い方をよくされるわけですが、ある程度予見した上で労働者を管理していくということも必要なのかなという気もいたしております。
    ○藤村部会長 馬渡さん、どうぞ。
    ○馬渡委員 首藤先生のおっしゃるとおり、何でもかんでも外してくださいというお願いをする気は全くありません。ただ、運賃以外の作業料金がやっと約款で御理解いただいてきたように、料金を別途、運賃を標準運賃どおり上げるのは難しいと。だけれども、料金として今まで荷役をしていた部分、それから荷役を時間外でサービスでやっていた部分は何とか払いましょうと。1,000円、2,000円の話であっても年間にすると相当になるものですから、やはり言い続けて荷主さんにも理解いただかなければいけないと。このようにして、がちがちに決めたときに、荷主さん、これはこのように決まっていますから、我々はここで本当に離脱して、このお仕事はできないと言えるなら一番いいのですが、今のところは荷主さんたちに徐々に理解いただくしかないという状況の中では、やはり罰則規定がはっきりありますから、その罰則規定に、皆さん自分のせいではなくて抵触するというのは、真面目にやっている業者ほどめげるのです。
     ですから、そうはならないように決めてあげなければいけないけれども、だからといって一番緩いところで決めていたのでは、先ほどおっしゃったような形で何のために決めているか分からないという部分もありますので、きちんと守ってやっていこうと。荷主さんにも御理解いただけるように、こういうのは駄目なのですよと、ここを出たら駄目なのだというように言って、荷主にも仕様がないと思っていただけるような決め方はしていきたいなと思っています。いきなりガチャンと厳しい規定にするのは難しいけれども、やはり少しずつ言い続けていけばちゃんと御理解いただけているので、その一端も多分2023年の60時間超の割増しのこともそうですし、2024年の960時間というのは一番、荷主にとってはインパクトがあるようなので、ちゃんと我々も含めて事業者が理解を得られるような努力をする時間は少しくださいというお話はしています。
     厳しくというよりも、若者に入ってきていただくとか、健康的な生活を労働者が送れるというのは、お互いプラスになる話なので、そこを曲げようとか緩くしてくださいという気はさらさらないのですが、時間軸上は少しずつお願いしていこうかなと。先ほど世永さんが言われたように、その時間軸の違いが随分前から言っていたようなのはもうそろそろいいでしょうという部分と、事業者は施行するときにどうしようということも多いものですから、それと発荷主とか着荷主とか、もっと別の方とかにいろいろ言われて、サービスをやらなければいけないとか時間が延びるとか、そういうことが日常茶飯時なものですから、その部分をやはり荷主たちにもちゃんと御理解いただいて、ここでこのように決まったから駄目なのだとはっきり言えるようには決めていきたいなと思っています。
    ○首藤部会長代理 いいですか。
    ○藤村部会長 どうぞ。
    ○首藤部会長代理 多分、目指しているところは同じようなところかなと思うのですが、今回の改正は、結構大きな改正ですので、社会的な注目度も高くなっていると思っています。やはり、荷主との関係においても、交渉力を高めていく手段として改正を使っていく、事業主の方たちもそういった前向きな形で利用していくというような議論ができると、今後のこの業界の持続可能性も高まるのかなと私も思っております。
    ○馬渡委員 ずっと厚労省にもお願いしているのですが、雇用契約がなくても厚労省から指導ができるような制度にならないのかというのは、すごく言い続けているのです。やはり雇用契約があってというようには荷主さんとはならないわけですから、そこら辺をどうにか、法律論なのかもしれませんし、別途強制力があったほうがいいのかもしれませんが、そのようにしていただく何か片鱗でもあると、おっしゃったような形でも厳しく決めたから荷主さんたちもこれは同時に守らなければ駄目だと。これを逸脱したことを命令したり単に荷待ちをさせると、荷主さんたちにも罰則なり御指導があるというと、我々も勇気を持ってそのように言いましょうと言えるのですが、なかなかそういう立て付けにならないものですから、知恵者がいらっしゃってそういう立て付けになってくれるといいなと思って、厚労省だけではなくて国交省とか、政治家の先生たちにも何かそういう立て付けにならないのかというお話は常にしていますので、そういうのに少しでも関心があって、私たちも守らなければいけないなと思っていただけるといいですよね。
     残業時間を超えたとか、この間の電通事件のようなことがあると少しピリッとされるのですが、我々に命令して我々の時間が100時間を超えても全然ピリッとされないのです。あなたたちの配車の仕方がまずかったねと、別の人を派遣したらどうですかぐらいの話で、なかなかそこのところが難儀しているところです。
    ○藤村部会長 赤間さん、どうぞ。
    ○赤間委員 首藤先生がおっしゃるのは、ごもっともだなと思うのですが、今、馬渡委員が言ったとおりで、一番の問題は物流業界の商慣習というのが最大のネックかなと感じております。ですので、本来、労働基準法の規定から言えば、使用者がきちんと労働者を管理すると、それに反すれば罰ですと。こういう流れなのですが、ここが非常に使用者が自由にあまりならない時間帯なのだと。ここが多分、やはり一番難しいのだと、いわゆるトラック業界の経営者の方々の悩みどころだなと感じております。おっしゃるとおりインパクトがあって、そこからある程度の利益が出るようなことが本当に取組としてできればいいのですが、単に改善基準告示を守りなさいということになると、実態でも物流の流れが相当厳しくなるのではないかという感じはしています。
    ○世永委員 商慣習の話も出ましたし、先ほど2015年法案の話もいたしました。ただ、何回も繰り返しになりますが、これから若い人が入ってきてこの業界を続けていくという事業継続性を考えたら、今の商慣習の関係は見直すというかギアチェンジしていくとか、そういったことを政労使でやっていかないといけないのだろうと思っています。そこへの荷主の対応が公布から施行までの期間しかないということもありますが、そこはやり切らないとここの実態は変わらないのではないのかなと思っています。首藤先生が言うように大きな変革をするわけですから、これはマスコミを使ってもメディアを使っても荷物を運べなくなるということと、もう1つ押さなければいけないのは、馬渡委員が前に言われていたと思うのですが、絶対にここで経営を含めて悪徳事業者が出てくるのです。そこへの対応も含めて、きちんと両立てでやっていくのだということを政労使でやるべきだろうと思っています。
    ○首藤部会長代理 今、世永さんがおっしゃったとおり、商慣習は確かに問題がすごくあるわけですが、改善基準告示の改善について話し合う場において、やはり商慣行に合わせて労働法を改正していくと、どうしても本来の法律が依拠する、例えば過労死を防止するとかというようなところを無視せざるを得なくなってくるのだと思うのです。多分、本来は逆で、人の命を守るというのがまず最低限、働く者の命を守るというところからきているわけですから、そこに商慣行を逆に合わせていくための手段としてこれを使ってもらうように、事業主さんも本当に大変だと思いますし、本当に無理を言う荷主が多くてつらい思いをされているのだと思うのですが、そちらを変えていかないといけないという方向にギアチェンジしていってほしい。今回のアンケート結果を見ても、そちらのほうに変わっているような荷主、荷種もあるのかなと思うのです。本当に変われていないようなところが一部残っているわけですが、やはりそこをどうにかして変えていくというほうに、政労使で取り組んでいくという方向にしていかないといけないのかなと感じております。
    ○赤間委員 誤解があるといけないですから、商慣習に合わせて法改正しようという趣旨ではありませんので、くれぐれもよろしくお願いいたします。私が言いたかったのは、そういうことにきちんと商慣習を変えられるようなことまで考えて、やっていただく必要があるということを言っているわけであって、ちょっと誤解があるとまずいと思って一言申し上げました。
    ○藤村部会長 馬渡さん、何かありますか。
    ○馬渡委員 連続運転時間の話でもいいですか。
    ○藤村部会長 もちろんです。
    ○馬渡委員 連続運転時間も4時間がいいとか4時間以上、5時間でもいいのではないかというような意見が様々あります。これも近場の輸送をしている場合と長距離運行の場合とは全く違いますので、そういうのも少し議論にさせていただきたいなと。それから、同じような理由もあるのですが、運転離脱の話も10分以上となっていますけれども、いろいろなお話を聞くと5分にしてくれという話が多いのです。5分以上というのは、結局、高速道路でトイレに立ち寄ってすぐに5分ぐらいたちますが、そして寝たいとか、そういう自分のリズムを守りたいという運転手も結構いるものです。これも地場のときは結構荷下ろしをしたりとか、離脱する時間というのは長いのかもしれませんが、その辺の話も含めて分けて話せれば嬉しいなと思います。
     これも一律に決めようとすると、では5時間にしましょう、5分にしましょうというお話が実態に合わないのではないかというような場面も出てくると思うのですが、やはり業種・業態によってそういうものも余裕部分として考えるのか、それともこの部分はこのように決めましょう、この部分はこのように決めましょうというお話なのか、その辺はもうちょっと議論させていただきたいなと。本当はやはり5時間ぐらいまで延ばせるとか、10分でなくても5分で、例えば6回取れば30分とか、そのようにフレキシブルにしていただいて、いや、私は30分ぴったり休むのだと言われる方は30分きっちり休む方もいらっしゃるし、そのときの状況にもよるものですから、フレキシブルにさせていただくのが我々としてもうれしいなと考えているところです。
    ○藤村部会長 貫さん、どうぞ。
    ○貫委員 今、馬渡委員が言われたフレキシブルな部分ということの前に言われた業態、荷種とかそういうのもいろいろ変えるという部分については、あまり賛同はできないなという意見があります。要は、何を運ぶか分からないという状況の中で、今日は飲料を運ぶからこれだとか、何かそうなっても困るかなというのがありますので、その辺はある程度、自動車運転者として何時間までの連続運転が適正なのだというようなデータ的なもので、きちんとしたほうがいいのではないかなと、私はそのように思うところです。
     運転離脱の時間に関しては、本当にトイレに行くだけを運転離脱として認めていいのか、運転離脱は何のために運転離脱なのかというようなところも考えた上で、時間を設定するべきなのではないかなと。要は、連続運転防止の休憩を主としているものなのであれば5分でいいものなのかどうなのか、それぞれ人のバイオリズムがありますので、馬渡委員が言われるように私は5分でいいのだ、私は10分ないと困るのだ、いや30分ないと困るという人間もいるでしょうけれども、それはいろいろなバイオリズム、そういう科学的見地がもしあるとするならば、そういうものを参考にしながら議論させていただいたほうがいいのではないかなと感じたところです。以上です。
    ○馬渡委員 決め方の問題だと思っていますので、このときはこうだとか、はっきり決めなければいけないというのではなくて、30分というのが変わらなくあったとしたら、その中で全体を取るのが30分一発で取らなければいけないという話ではなくしていただきたいなというだけの話です。本当は5分と言わないで、ちょっとずつ取りたいという方にとっては1分でも2分でもいいのですが、でもそれを一々言うのも積算して足し算しなければいけないというような話ではなくて、30分はちゃんと守ってくださいと。だけれども、この中でこのようにしましょう、これぐらい、例えば4時間から5時間たったら5時間以上は駄目とか、そういうような決め方をすれば運転手のそのときの荷種とか、自分のバイオリズムの状況で決められるようにしてあげたほうがいいのではないかなと、我々としては思っているということです。
     そこは議論をさせてくださいという話ですので、動機がなければいけないというのが今我々ではっきりあるわけではないのですが、先ほど貫さんが言われたように、こういう人にとってはいいのだけれどもこういう人はストレスがあるとか、そういうのは聞くものですから、あまりストレスのないように決めてあげたいなというのはあります。
    ○藤村部会長 どうもありがとうございます。先ほど商慣行についての発言がありましたが、ここ5年ぐらい取り組んできている働き方改革は、商慣行を変えていくことに繋がらないとダメだと思っています。日本では、これまで、発注側が無理なことを言っても受注側はそれを受けるのが当たり前というような商慣行が一般的でした。この慣行を変えていかないと、受注側の労働時間がある一定基準を超えてしまうことになります。私は自動車会社の調査を何度も行ってきましたが、最終組立てをやっている会社と部品会社との取引も、いろいろなことが起こっています。部品会社に行きますと、取引先から頻繁に仕様変更が入る。この部品についてはこのように変えてくれと。それに対応はするのだけれど、二転三転して結局元に戻るということがあるそうです。元に戻すのだったら仕様変更なんてしなければいいのにと思うというのです。仕様変更の度に新たな工数が発生しているわけですが、それに対して対価を要求できるかというと、なかなかできないそうです。当然のことながら、部品会社の従業員の労働時間は長くなっていきます。
     これは、発注側と受注側の関係は今までどおりでいいのかという課題を提起しています。発注側は受注側のことも考えて行動しないと、仕事を受けてくれる会社がなくなるという状況も起こり得ることを意味します。こういったことが、いろいろな業界で顕在化してきているのではないかと思います。ですから、トラック業界も、この機会に発荷主、着荷主との関係を変えていくことに繋がっていかないと、結局はトラック運転者の労働条件が改善されないことになってしまいます。その結果として若者が入ってこない産業になってしまうのではないかという懸念があるわけです。こういった問題点をこれから最終的にどのようにまとめていくかというところが重要だと思います。
     もう一点、特例その他というのがあるのですが、ここの部分については労使双方、特段発言がこれまではなかったようです。この場で改めて、まず労働側から分割休息特例とか、2人常務の特例とか、フェリーの特例などについてはどのようにお考えか。現行のままでいいということであれば、それはそれでいいと思うのですが、その御意見をお聞かせいただきたいと思います。
    ○世永委員 分割休息特例の関係は、実は労働者側としては実態は把握してないですね、正直。事業者側のほうが、やはり運行管理その他で実態を把握していると思いますので、我々としては現行のままでいいのかどうかは、ちょっと聞き取り等も、これは事業者側のほうと話合いをしながら整理していきたいと思います。2人乗務の特例についても同様です。フェリーの関係につきましては、4、5年前に1回精査している部分もございますので、これも現行のままでいいのかなと思っています。
    ○藤村部会長 よろしいですか。
    ○世永委員 はい。
    ○藤村部会長 使用者側は、どのようにお考えですか。
    ○馬渡委員 分割休息の特例の中で、いろんな意見を事業者のほうに求めましたところ、1日において継続4時間以上というところを、もう少し短めてもらえないかという意見が出ています。具体的にいうと、2時間にしてほしい、3時間にしてほしいなど、そういう話が出てきていまして、小まめに取らせたいという、いいほうの意味に取っているんですけれども、そういう意見は出ておりました。それ以外の2人乗務やフェリーの特例、それから休日労働等については、今のままでいいのではないかなと、今のところは思っております。
    ○藤村部会長 この件については、よろしいですかね。では、全体を通してこの点をもう一度言っておきたい、あるいは少し補足的に意見を言いたいなどあれば、どうぞ。はい、赤間さん。
    ○赤間委員 今の議論の前の話で恐縮なのですが、実態調査の観点でちょっと申し上げようと思います。労働者側のアンケートについては、長距離かどうかという感じで出ているのですが、使用者の調査でも、長距離のドライバーがどういう実態かというのを別途取っていただいてもいいなと思いまして、それをちょっとお願いしたいなと思います。
    ○藤村部会長 どうぞ、黒部さん
    ○過重労働特別対策室長 それは、例えば、この中で言うと実際に何時間ですかという問がありますが、その辺りに長距離の方はどのぐらいですかというのを入れるという、そのようなイメージですか。
    ○赤間委員 はい、それで結構だと思います。多分、採用、運行の実態が違うと思ので、ちょっと長距離だけ分けるようにしたほうが、今後の検討に当たってはよろしいかなと感じました。
    ○過重労働特別対策室長 通常期というよりもむしろ、繁忙期のほうですか。
    ○赤間委員 そうですね。ただ通常も多分違う部分というのはあるかと思います。要するに、労働時間の関係で、そこの部分だけで結構と思いますけど、運行実態の関係も。できればで結構です。
    ○過重労働特別対策室長 それは、御議論いただいて、その方向でよろしければ、作り変えることはできますがいかがでしょうか。
    ○藤村部会長 調査票を一部修正するということですね。今、赤間さんから出していただいた案は、そんなに大きな修正には恐らくならないと思いますので、私と事務局とで最終的に調整をして、これでいくというふうにしたいと思います。それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
    ○馬渡委員 多分、設問ごとに分けてくださいという話ではないと思うんですよ。長距離をされているところが全体からいうと、そんなに5割を超えるような割合ではないと思いますので、自車で長距離をされている事業者であれば、ここのところで長距離の部分を答えてくれというふうになったほうが、答えやすいのかなという感じはします。
    ○藤村部会長 分かりました。その他ございますか。補足的な意見、追加意見、よろしいでしょうか。では、今日の議論はここまでとしたいと思います。次回の作業部会での実態調査結果の報告を踏まえまして、今日お出しいただいた点を改めて議論をしていきたいと思います。最後に次回の日程等について事務局から説明をお願いいたします。
    ○中央労働基準監察監督官 次回、業態別の作業部会の日程につきましては、日時、場所について調整をして、追って御連絡をさせていただきます。議事録につきましても、後日御確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。以上でございます。
    ○藤村部会長 それでは、以上をもちまして第2回自動車運転者働時間等専門委員会トラック作業部会を終了したいと思います。本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございました。お疲れさまでした。