第5回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会の議事録

日時

令和4年10月27日(木) 14:00~17:00

場所

AP新橋 Aルーム
(東京都港区新橋1-12-9 新橋プレイス)

議題

  • (1)シンクタンク等からのヒアリング
  • (2)その他

議事

議事内容
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を開催させていただきます。
 委員の先生方におかれましては、本日も御多忙の中、御参集いただきまして、ありがとうございます。
 初めに、本日の構成員の先生方の御出欠について御報告いたします。堀構成員より御欠席との御連絡を頂いております。本日、10名の構成員が会場での御参加、川原構成員がオンラインでの御出席との御連絡を頂いております。
 なお、本会議は、前回同様、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からYouTube配信形式による公開にて行わせていただきます。
 次に、本日の会議資料を確認させていただきます。会場におられる構成員の皆様方のお手元にあるタブレットには、本日の議事次第のほか、資料1から資料4まで、参考1として開催要綱、参考2として構成員名簿を御用意しております。また、別のフォルダーになりますが、これまでの検討会の資料を御用意させていただいておりますので、御参照いただければと思います。不足等ございましたら事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは、以降の議事進行につきましては、遠藤座長によろしくお願いいたします。
○遠藤座長 皆さん、こんにちは。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 まず、会議に先立ちまして、カメラの頭撮りはここまでとしたいと思いますので、マスコミの方は、恐縮ですけれども、退室していただければと思います。
(報道関係者退室)
○遠藤座長 それでは、議題に入りたいと思います。
 本日の議題は「シンクタンク等からのヒアリング」でございます。
 本日は、日頃、医薬品産業あるいは薬価政策等々について、調査研究、提言などをされておられますシンクタンクあるいはコンサルティングファームの4団体から御参加いただきまして、それぞれの提言、考え方を頂きたい、そういうことでございます。できるだけ幅広い御意見を反映したいという趣旨で、大変お忙しいと思いましたけれども、御足労いただいたということでございます。
 進め方ですけれども、一通り、4つのシンクタンクから御発言いただいて、その後、皆様とディスカッションしたい、そのように考えております。
 それでは、改めまして、4団体の方々に御礼申し上げたいと思います。
 最初は、薬価流通政策研究会の皆様から御発言いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○長野氏(くすり未来塾) 一般社団法人医療・医薬総合研究所、くすり未来塾共同代表の長野明と申します。よろしくお願いいたします。
 お手元のタブレットの資料1に沿いまして、本日、お話を進めさせていただきます。一方で、紙ベースでお手元に参考資料として配付されております資料が2つございます。1つが横長のものでございまして「~医療先進国としての明るい未来を目指して~医薬品制度改革提言IV」とタイトル化したものでございます。これは、未来塾として今日まで提言いたしてまいりました4回の提言の最新バージョンでございます。これはフルペーパーでございますので、御参考までにお届け申し上げます。もう一つが医療経済研究機構で直近のところで、くすり未来塾の研究会報告を掲載していただきましたので、それも参考資料としてお手元に御用意させていただきました。よろしくお願い申し上げます。
 まず、私、長野明がここに出席させていただいている自己認識でございますが、私は、2006年の7月から2011年の10月まで中医協の薬価専門部会の専門委員を務めさせていただきました。当時、産業側サイドの専門委員として参画させていただきましたが、ちょうど新薬創出等加算の議論、そして試行的導入を中医協においてお決めいただいた当時の産業サイドの当事者でございます。2008年から2010年にわたって様々議論いたしましたが、既に10数年たっておりまして、私自身、現役を外れまして、浮世離れした生活をしておりましたが、昨年の秋ぐらいから共同代表をお務めいただいている武田俊彦さんと様々な薬価関連、流通関連などの議論、検討を今日まで進めてまいりました。その中で、本日、お声がけいただいて、この資料1に基づきまして、後ほど詳細内容を武田俊彦さんからお話を進めさせていただきます。
 私自身、基本的な姿勢というのが、産業サイドの現役でおりましたときも、今日、さらにそうなのですが、やはり国民、患者様があまねく医療先進国としての国民、患者様として遅滞なく最新の医療が受けられるという環境が必要だと思ってまいりましたし、その中で、基本的な我が国の国民皆保険体制、あるいは医薬品産業サイドでございましたので、薬価基準制度など、大変すばらしい制度だと感じて今日に至っております。ただし、この有識者検討会の皆様の中で8月末以降様々御議論を進めていただいて、現時点での状況が社会一般にもかなり事態が変わってきたということを社会全般が受け止めていただいている今日だと思います。
 産業サイドだけで見ましても、危機的な状況だと本会でも各団体の代表の皆さんがお話しされていました。私は、産業サイドの危機的状況という言い方ではなくて、やはり医療先進国の国民、患者様が最新の医療をあまねく受療できるという環境を取り戻し、かつ発展させることが日本のすばらしい皆保険体制あるいは医療保険制度の下で最重要だと思います。その意味で、この有識者検討会の先生方の皆様のさらなる御検討、御議論を期待してやまないところでございます。
 それでは、この後、武田さんに全体を御説明いただきます。
○武田氏(くすり未来塾)  それでは、お配りしました資料に沿って概要を簡略に御説明したいと思います。
 今日の配付資料でございますけれども、「~医療先進国としての明るい未来を目指して~医薬品制度改革提言について」という表紙がついた紙、1ページめくっていただきますと、本日は、本有識者検討会で検討されている論点に対応して内容を整理して御説明いたします、全体版については机上配付させていただきます、ということが書かれております。
 3ページ目が表紙でございます。
 4ページ目、全体版と順序を少し変えておりますが、最初に5本の柱を提示しております。この検討会では、薬価・流通政策の検証など、総合的な対策を議論されるということですけれども、この問題は公的な制度と民間企業活動が相互に絡み合う大変複雑な問題であって、関係者の意見も複雑に絡み合っております。そうであればこそ原点に返って、大原則から各論に下りてくるという方向が必要だと思います。そのときに5つの柱を考えてみました。
 1つ目は、今、長野からも申し上げました国民に必要な医薬品が確実に届くというのが医療先進国としての本来の目的ではないか。
 2つ目は、国際的に整合性があり、イノベーションを促進する開かれた市場。
 3つ目は、企業活動に適切な環境を提供する予見可能な制度、これは世界の中の日本ということをきちんと意識するということだと思います。
 4つ目に、皆保険の話を書いておりますけれども、我が国が誇る皆保険制度は制度創設から60年が経過いたしました。言わば還暦を迎えたわけですけれども、最初の頃の「お金の心配なく医療にかかれる」というところから、現時点では「必要な医療がちゃんと受けられる」という中身の問題が皆保険の意義となっており、そこの持続可能性が問われているのではないかと思います。とかく持続可能性というところで医療保険制度の赤字問題が取り上げられますけれども、単に黒字になればいいということではないのだ、ということを確認する必要がある。
 5つ目は、もちろんのこと、経済・財政と調和の取れた制度が必要だろうと、こういうことです。
 この5つの原則をそれぞれ横目で見ながら、バランスの取れた制度改革議論が必要ではないかということです。そのときに、くすり未来塾といたしましては、議論されることが少なかった産業界からの視点ということも踏まえながら、議論を整理させていただいたということになります。
 次のページに「総合的な対策の必要性」と書きました。前回までのこの検討会の議論を拝聴しておりましても、非常に深く多面的な議論をしていただいているというのは、座長をはじめ、先生方に敬意を表するところでございます。
 前回までの議論に沿って考えれば、まず、どういう問題を分けて考えなければいけないかということを一旦分けた上で、今度はそれをどうやって結びつけるか考え、そこで初めて全体の対策を見ることができる、そういう観点から1番といたしましては、以上のような最適な政策の組み合わせを考えるべきだということを書きました。
 その上で、2番は、新薬の迅速導入のためには、薬価と言っていますけれども、薬価を、新薬の算定方式、既収載の改定方式、この2つに分けた上で、この2つがどう関連しているのかということを念頭に置く必要があるということです。次のページで後ほど御説明いたします。
 3番は、医薬品流通につきましては、これも議論がございましたが、薬価制度に起因する課題、医薬品流通独自の課題、及び相互に関連する課題というものを分析しながら改革の方向を探るべきであって、薬価と違いまして、流通というのはこれまでの流通慣行その他もありますので、少し時間をかけて取り組んでいくことが必要な課題が多くなってくると思います。
 6ページは「新薬の算定方式と既収載品の改定方式の関係性(イメージ)」と書きました。左に「国際的な製薬企業の開発戦略と薬価制度」と書きましたけれども、基本的に製薬企業は全部国際的な企業と考えたほうがよくて、御承知のとおり、特許も今や日本国の特許だけ取る人はいないわけで、世界各国の特許を押さえにいきます。そして、ビジネス展開をする、というのがここまで開発経費が大きくなってしまった医薬品としては当然の考え方なわけです。
 投資とリターンと考えたときには、リターンのほうは、新薬の価格と患者の数と発売期間という構成要素に分かれていきます。ところが、開発を始めたときの類似薬の薬価がY₁円だとすると、開発している間に、ある製品は特許期間で維持され、ある製品は新薬の創出加算に該当せずに、毎年薬価改定があれば、4年、5年たつと薬価が落ちていきます。海外は、どっちかというと価格は上昇する傾向があり、結局、日本ではどの価格で販売できるか分からないということになると、企業としては世界の中でも日本での開発計画がなかなか立たないという問題があります。そして、ほかの品目の売上げでカバーすることができない小さな企業、患者の数を増やしてプロモーションを頑張れば採算が取れるようになると考えるような従来型の薬ではない薬の開発をしている今の新薬企業にとっては、この予見可能性は非常に大事な問題になります。
 したがって、私はくすり未来塾を始めたときに、このままではドラッグ・ラグが起きて大変なことになる、特に希少疾病とかベンチャーの企業は日本に投資できなくなると申し上げたのですが、その後、本検討会にも出されている製薬協の資料などを見ますと、今後大変なことになるということではなくて、今まさにスタートアップ企業、希少疾病の薬に一番ドラッグ・ラグが起きているということで、これは一番最初の国民に最新の医薬品を提供するというところから見るとどうなのか、ということを考えなければいけない事態だと思います。
 7ページは、一方、流通との関係性を書いております。これは、前の検討会で卸連の方から御発表があったと思いますけれども、制度に随分規定されている、制度によって言わばゆがめられているという市場、そういう中で流通せざるを得ない卸の事情があります。
 医薬品市場を大きく3つのカテゴリーに分けて見ると、基本的に競争のない品目、言わば独占品目でほかに選択肢がないもの、それから、特許が切れて類似品が出てきたものまたは特許中であっても競争品が出てきたもの、それから、特許が切れている必須医薬品、その他長く使っている薬、こういうようにカテゴライズされると思います。
 さて、今の薬価制度というのは、基本的に薬の価格が高止まりすることを防ぐ機能があるということを認識する必要があります。それは、これまでの日本の医薬品市場は、それはそれでゆがみがありましたので、ゆがみを是正する観点から使われてきたものだと思いますが、今や独占品目も下がってしまう、不採算品目なのにまた薬価が下がる、こういう現在の市場のゆがみを前提として制度設計を変えていかなければいけない、そういうことをこういうカテゴリー別に議論したほうがいいのではないかと思います。
 以上、そもそもまず分析し、それを結びつけて、相互にどう関連するかという議論が必要だということで申し上げましたが、以下、前回検討会で出ました論点に沿って、ごくかいつまんで申し上げたいと思います。
 まず「革新的医薬品の迅速な導入について」ということで、資料の9ページをお開けいただきたいと思います。ここで付け加えますが、くすり未来塾は、広く一般の方にこの問題を分かっていただきたいということで、主にホームページで一般の方に情報提供する、そういう観点から、いわゆる官庁でよくあります厳密な表現、正確性を重視した表現よりは分かりやすさを追求した言い回しになっておりまして、言葉の使い方がきつ過ぎるという御批判もあるかもしれませんが、その点、御容赦いただきたいと思います。
 現行薬価制度の何が新薬導入にとって阻害要因になったのかということでいえば、特許期間中も薬価が下がること、それから、今の新薬創出加算の仕組みが研究実績のないスタートアップ企業にとって非常に不利だということです。予見可能性がないという批判は産業界からこれまで言われておりました。それに加えて、近来の経済安全保障の観点からも評価が不十分ではないかと言われております。
 一方、日本の薬価制度にはいいところもたくさんありますので、阻害要因をなるべく緩和していくことによって再びドラッグ・ラグを解消することは可能ではないかとここに書いております。
 10ページは、では、この4つの点についてどう変えていくのかということについてです。特許期間中に薬価が下がるという問題について、ルールの再度の見直しを行い、シンプルな制度にしていくべきではないか。流通面でも、競争のない品目と競争のある品目を一括して交渉するという流通慣行がまだ残っておりますので、こういうところは流通面から考えていく必要があります。
 それから、スタートアップ企業に配慮した仕組みにしないと、産業構造の変化を考えた上で今変えておかないと、致命的に日本の医療制度に影響が出てしまうのではないかということであります。
 今日御出席の方のお手元には参考資料として全体版がついておりまして、ネットの方が見られるかどうか分からないのですけれども、50ページを見ていただきたいと思います。スタートアップ企業は、開発のみならず承認取得で主役になっているという資料です。これはIQVIAという会社の資料ですが、左側のグラフの一番右側は2021年の数字でFDAの承認を取ったところの分析です。2021年の全ての新薬のうち、53%の新薬は、いわゆるベンチャー企業、スタートアップ企業が開発したものだということです。その53%の内数が右側のグラフですけれども、かつては大企業にライセンスアウトして大企業が承認を取ったということなのですけれども、2021年の段階ではベンチャーが開発したもののうち76%が自分で承認を取りにいっているという状況です。こういう状況が世界の趨勢であり、日本への開発を考える企業がこういう企業ばかりになったとすると、そういう企業が開発をためらうような仕組みだと国民の新薬へのアクセスという意味で問題が出かねないのではないか、こういう問題意識です。
 それから、予見可能性については、業界との意見調整をルール化したらどうか。例えば同じデータを業界と政策当局のほうで見ることができるようにするとか、様々な改革が必要になってくると思います。
 経済安全保障の観点からは、Value Basedの考え方を導入し、一部本当に必要なものについてはてこ入れするということも必要になってくるのではないかと思います。
 11ページですが、くすり未来塾は、第3の算定制度、企業届出価格承認制度というものを提唱しております。左半分は製薬協の提出資料ですが、どんどん新しいモダリティーが出てくるということが書かれています。遺伝子治療や細胞医療とか対象患者がすごく限定される治療法、プレシジョン・メディシンという言い方がありますけれども、こういう治療が主流になってきたときに、今の類似薬効比較方式が適当なのかどうか。例えば同じ乳がんの薬で効き目は同じくらい、ただし遺伝子の型によって片方は患者さんが1万人で片方が100人だというときに、同じ薬で効き方も同じだから同じ値段だということで本当に開発が進むのかどうか。
 それから、デジタルのように製造コストがないものを原価計算方式を適用して算定するといっていいのかどうか。こういうことはむしろ治療効果で測ったり開発コストを反映させたりということが必要なのではないかということで、企業届出価格を用いてはどうかということです。
 先ほど冒頭に見ていただきました類似薬効比較方式の下では、類似薬がどんどん下がっていく。医療保険財政の要請によって安い値段のほうを参照する。海外価格調整も100%効かないでブレーキをかけておく、ということでは開発企業が当初想定した価格をつけることができません。
 企業の側からすると、今、国際同時開発ですので、世界的な薬価がついたほうがいい、つかなければ日本では取りあえず発売しない、こういうことになりますので、なるべく企業の参入を心がけるのであれば国際的な価格水準が当初につくことが望ましい。
 ただし、「医療保険財政への配慮」と書きましたけれども、一旦高い値段がつくと、そこにぞろぞろ次の薬がついてくるということがかつて発生しましたので、特例扱いをするならば、比較類似薬にはしない、つまり2番目、3番目の薬が、その価格と同じ価格が欲しいと言ってもつけないということを考えたり、予想外に伸びたらこの薬価の固定措置を外すとか、薬のライフサイクルで見た医療費を増やさないということで医療保険財政に配慮してはどうか、ということでバランスをとったらどうかということです。
 12ページは、さっき見ていただいたものと同じですけれども、医療保険財政にとっての負担といいますのは、価格掛ける数量=患者数と発売期間、この3要素によって面積として求められますので、当初の部分、発売価格を国際的な比較水準にする必要がある、それをしないと日本に会社が来ないということであれば、一定期間それを認めつつ、今の算定方式で計算した面積を増やさないようにするというような薬のライフサイクルで見た医療保険制度とのバランスというのも一つはあるのではないかと思います。企業側からすると、これではまだ不十分という声が出るかもしれませんが、こういう形で少なくともバランスを取った議論をしてはどうかということで書きました。
 それから、企業の言い値になるのではないかという話につきましては、12ページの右側のαの上に企業が取得する付加価値、この薬は付加価値があるのだということで最初認めて、それが本当に付加価値があったのかどうかは、αからβに移行する段階で使用実態を踏まえて再評価すればいいのではないかという考え方です。企業側から見ると、国際的同時開発・同時販売ということでありますので、日本だけ高い値段をつけるということは企業行動として基本的にないだろうと思います。これは中医協がしっかり歯止めをかければいいのではないかと思っております。
 安定供給について、13ページ以降になりますが、14ページに先ほどの表があります。不採算品目については引上げの特例措置が今でもございますが、これはいろいろ不十分な面がありますので、これをぜひ考慮して改革すべきだということと、それから不採算品を引き上げても薬価がまた下がります。それについて流通と薬価面両方から安定供給を確保できるような仕組みを今こそ考える必要があるだろうと思います。
 15ページに、今までの提言になかったジェネリック企業の産業構造の話を書きました。いろいろ書いていますが、今のジェネリック企業の産業構造、行動パターンは変えてもらわないといけないので、これも言葉が適切ではないのですけれども、「短期売り逃げが生じないような産業構造」と書きました。とにかく薬価差で販売し、薬価が下がったら売り方をやめてしまう、短期的に利益が取れればいい、そういうモデルにほかの後発品企業も引っ張られてしまうという構造があるのであれば、これを何とか変えていかなければならない。そして、規制を強化するということも必要だろうということであります。
 流通制度を含めた薬価、流通制度としては、不採算品目は、原価を踏まえて値上げが必要な場合がありますが、今の制度の下では薬価を超えて医療機関に販売することが事実上できない状況にあります。したがって、不採算品目薬価について必要な経費を盛り込めるように引き上げるとともに、原価上昇を随時反映できるように、本当にコストが高いものについてはコストが高い価格で卸が販売できるように薬価差が生じない形の購入価償還、これはデジタル化の技術が必要だと思いますけれども、将来的には購入価償還を広げていって薬価差のない医薬品流通を目指したほうがいいと思いますが、取りあえず、ここから始めてはどうかということでございます。
 流通に関して話が出ましたので、17ページを開けていただきますと、とにかく流通に関しましては、赤字受注が常態化しております。これについては、これまでデータがなかったので、くすり未来塾としては少数卸に協力いただいて、データの集計をいたしました。結果を見て驚いたのですけれども、一番赤字受注になっているのが大店舗の保険薬局、しかし大店舗でない保険薬局も赤字になっている問題がございます。これは、やはり共同購入、ボランタリーチェーンが広がっているせいだと思いますけれども、地域ごとのコストの違いを反映できておりません。結果として、単品ごとの価格計算をやってもらったので、残念ながら1卸ということになりますけれども、不採算比率が非常に高いものがある、基礎的医薬品、安定確保医薬品でも3割程度不採算になっているということですので、この辺を薬価、流通両面から改革を考えていかなければいけないのではないかと思います。
 18ページ、19ページは、そういう意味において流通安定化戦略を立てたらどうかということです。
 最後2枚だけ、20ページで「現行薬価制度の何がおかしかったのか」と書いています。これも分かりやすさ優先で、言葉遣いは不適切かもしれませんけれども、医療機関向けの制度としてこれが本当にいいのか、薬局向けの償還としてふさわしいのか、薬価差の問題をどう考えるかということがあると思います。
 どんどん時代が変わってきて、かつては医療機関、今は卸の主な販売先は薬局ということになり、株式会社が参入して大規模化が進んでいることを踏まえて、最後のページになりますが、医療機関については、薬価差訴求動機は弊害もあるので、薬価差を原則として否定していく。薬価差を否定するという意味では、購入価償還というのが基本的には薬価差をゼロにできる。そして、これを本当に価格維持が必要なところから広げていったらどうかということでございます。この場合、併せて医療機関に対して診療報酬上の手当てをしていかないと、薬価差依存経営の解消ができませんので、そこが必要だと思っております。
 薬局につきましては、医療機関とは違う償還方式ということで、国のガイドラインに基づいた適切な交渉を進めて流通改善を図ってもらいながら、医療保険財源によって生じる余剰成果については医療保険に還元させるということを考えていく必要があるのではないか。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、新時代戦略研究所から御報告を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
○朝井氏(INES) 本日は貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。新時代戦略研究所の朝井と申します。
 私どもは昨年の5月に薬価に関する提言書を出させていただきましたが、関係者の皆様から賛否の御意見を頂いております。当初の私どもの説明が至らない部分もあり、あたかも医薬品の予算にマクロ経済フレームを入れ、キャップ制を主張しているように受け止めがなされ、国内外で批判を頂いているのも承知しております。ただ、私どもとしては、世界中で開発された革新的なよい薬が日本の国民、患者さんにしっかりとタイムリーに届く仕組みをつくらなければいけないという問題意識の下で、日本の市場がグローバル企業から見ても販売したい環境になっているのかという点を考えたときに、日本の市場が不透明な制度変更を繰り返し、決して魅力のある市場だと言えないのではないかという問題点に当たりました。もちろん日本の承認後のアクセスは世界でもすばらしいと思っております。承認後60日で収載されるというのは本当によい制度だと思っております。
 一方で、膨れ上がる社会保障費を考えたときに、財務省にとっても、予算の見通しがつかない、価格が決まっていても患者数は変動するため、今後も革新的な医薬品が出た際、突発的に予算が膨張するのではないかという懸念がございます。それが続く以上、現行の制度で刈り込みは今後も続き、グローバル企業からすると日本の市場はますます魅力がなくなるおそれがあるのではないかという思いから、イノベーションをしっかりと評価できる仕組みと財政面での調和をどう考えていくのかという提案を発表いたしました。
 しかしながら、私たちは、このINES案に賛成してほしいとか、これを導入すべきだというより、これまで様々な関係者とお話をしていると、今の制度のままがよいと思っている人は少ないように感じました。むしろこのままでは、社会保障制度を維持していく中で、薬価制度を維持していく中でも持続可能なものだとは思えません。これまで薬価に関する抜本的な議論は、様々な関係者に影響を与えることから、表立って行われてこなかったように思えます。出てくる議論は、例えば中間年改定をやめてくれとか、薬価を下げないでくれとか、イノベーションを評価してくれとか、陳情みたいなことばかりで、社会全体の枠組みの中でアイデアというものはなかなか出てこなかったと感じております。もしくは、思っていてもそれを出せる環境ではなかったというふうに思っております。
 私たちの提言を通じて、少しでも社会保障制度の中の医療の部分の在り方について皆さんがいろいろな意見を出して議論しやすい環境ができればよいと思っておりました。そういった意味では、我々よりもこの分野の専門家の方々がこの1年で多くのアイデアを出し、私自身もこのアイデアはよいと思うこともたくさん目にしてきました。本日お招きされている皆さんも誰もこのままでいいとは思っていなくて、いろいろ考えを出されてきたのだと思います。そこのよいところを集めて、国民のためによい制度が出来上がってくれることを願っております。
 それでは、早速ですが、最初のスライドに入らせていただきます。
 ここでは3つの問題意識についてまとめておりますが、既にこの有識者会議の議論の中でも何度も出てきておりますので、要点だけお話をさせていただきます。
 まず、今の我が国の医薬品市場の見通しが明るい状況ではないということです。
 2番目としては、悲観的になっている一つの問題は薬価のつけ方にあると考えております。薬価の値づけの問題と、つけた後の取扱い、再算定に問題があるということです。
 3番目、結果として、現在の状況だけでなく将来のパイプラインの状況を見ても、我が国の医薬品市場が魅力的になっていないということがあり、それについて新たな改革案が何か考えられるのではないかと学者の先生方を中心に、製薬企業にも入っていただき、研究会を進めてまいりました。
 3ページ目は、見通しというよりも過去の話になりますが、我が国の市場の動向でございます。2010年から2020年までのタイムスパンで見ておりますが、2015年の前と後ろで状況が変わってきております。右側に数値をまとめておりますが、市場全体として2010年から2015年の間はプラス3.7%で成長しておりましたが、後半部はマイナス0.9%で全体がシュリンクしております。ジェネリックは、当然、後発品の利用促進で増えているわけですけれども、それも後半部は伸びが少し横まってきていて、長期収載品は大幅なマイナスです。我々が最も危惧しているのは特許品です。特許期間中で収益リターンを返すべき特許品ですら我が国はマイナスになってしまっています。ここは非常に大きな問題だと思っております。
 次のスライドをお願いします。先ほど言ったとおり、全てとは言いませんが、かなり大きな部分の問題として薬価の問題があると思っております。各製薬メーカーが自律的な成長を目指して様々な企業活動を行って、マーケット自体は毎期頑張って上に伸びる方向で自律成長がありますが、残念ながら、2015年以降、企業努力をほぼ帳消しにする薬価改定が数回行われていて、結果として2015年から2020年の全体の市場をシュリンクさせてしまった状況がこちらの説明になります。もちろん保険制度の持続可能性を考えると必要な措置だと思っておりますが、ただ、産業政策と考えたときに、我が国の医薬品の魅力的な市場の発展を促すという意味では、今のままでいいのかという問題意識が出てくるかと思っております。
 次のスライドをお願いします。先ほどは今までの足元のお話でしたが、これから中長期的にどうなるかということです。これは予測でIQVIAのデータを基に描かれていますが、これから先も残念ながら我が国の医薬品市場の成長は見込めないというのがこの骨子です。ゼロより上になかなか出てこないということになっております。
 次のスライドをお願いします。この図はこの会議でも何度も出てきていますが、保険政策的に考えれば、ある意味、国内問題ですけれども、やはり医薬品というのはグローバルマーケットで取引されているものですので、具体的にほかの国の医薬品市場と比べて我が国が魅力的かどうかというのは大事なポイントかと思います。これは将来予測ですが、残念ながら、一べつして分かるように、ほかの先進国に比べて、あるいは日本よりも製薬産業が発展していないような国、例えば韓国などと比べても我が国の医薬品の市場成長率は著しく低いというかマイナスになってしまっています。
 次のスライドをお願いします。医薬品市場のGDP比というところで、ある意味では知識集約型の産業として、これから我が国のリーディング産業としての役割が期待されると言われているわけですが、全体の経済の伸び、GDPの比率に対して医薬品の伸び率がどういう状況にあるかを見ると、ほかの先進国においてはおおむね緩やかに成長が見込まれているわけですが、我が国においてはGDP成長にすら達していないというところで、つまりダウントレンドに線が引かれてしまっている状況です。
 次のスライドをお願いします。もう少し細やかな視点で、特に画期的でイノベーティブな新薬の薬価のつけ方がほかの国に比べて低いのではないかという問題意識があります。画期的な新薬ですので、原価計算方式で算定されるものを集めてみて、アメリカはかなり薬価が高くつくのは、市場の仕組みが違いますから、当然そうなります。英国、ドイツ、フランスの社会保険ベースで薬が出ている欧州薬価を1と基準にして、日本の原価計算方式でやられたものを2016年から2021年の全ての製品について出してみました。そうすると、一べつして分かるように、残念ながら、原価計算方式でやられている我が国はほかの国に比べていい値段がついていないことがよく分かります。
 次のスライドをお願いします。類似薬効比較方式でつけられているものについてもやってみました。全体として見てみると、やはりほかの国よりも高い薬価はついていません。もちろん原価計算方式に比べると、赤い点が上に行っているものもありますが、相対的に数的には類似薬効比較方式でも低いものが多いことになります。
 次のスライドをお願いします。実際に高いものもありますが、どんなものが高くて、どんなものが低いのかは、今、類似薬効比較方式でお見せしたとおり、日本の薬価がほかの国に比べて高いものもあります。薬価の高い5万円以上のものを見ていただくと分かりますが、相対的に1よりも上に行っているものは非常に安い単価のものが基本的には高く評価されていて、画期的なものは低く評価されているのが全体として多いという印象です。欧米に比べて高い薬価がついているものもないわけではないのですが、相対的に画期性が高いものを見たときに日本では薬価がついていないという印象があります。
 次のスライドをお願いします。具体的例ですが、市場拡大再算定の一つの大きな問題として、キイトルーダがあります。収載時から段階的に市場拡大再算定を数回行って非常にきちんと押さえられているのですけれども、結果としてみると、アメリカの薬価より日本は3分の1近くまで落ちており、欧米に比べても日本は低くなってしまっています。これがまずいと思うのは、キイトルーダはバイアルが伸びているわけです。つまり、マーケットの中ではきちんと評価されていて、自律的な企業努力をやってきているわけです。バイアルが伸びているのに売上げが落ちているという乖離は通常のビジネスの社会ではあり得ないと思っております。保険財政的には分かりますが、産業政策的に言うと、こういうことをやっていると、欧米企業が日本にいい薬を早く入れようということにはならないのだろうと思っております。
 次のスライドをお願いします。もう一つ、薬剤費の適正化は必要なことではありますが、適正化の在り方、どこにターゲットを当てていくかというアロケーションの問題意識があります。2021年と2022年の薬価ベースで、薬の市場でおおよそ6000億円ぐらいへこませたが、このへこませた中身を考えると、全体の6000億の削減のうちのおおよそ20%が特定の23製品の市場拡大再算定でやられている状態です。いい薬、画期的な薬のところにしわ寄せさせて、イノベーションのところで落としている状況があまりにも強く働き過ぎていないかというのが我々の問題意識です。算定の根拠が崩れて、それをやり直して、もう一度やるならいいですが、単に市場の伸びの部分だけで見て、たたくのはいかがなものかという問題意識がございます。
 次のスライドをお願いします。結果として、今の新薬のパイプラインを見ていただきますと、日本はあまりにも伸びてきていませんし、お隣の中国、ここには書かれていませんが、韓国にもパイプラインの数ではキャッチアップされており、逆転されているような状況です。中長期的に見て、日本の市場の魅力度は、価格がつくかというところと、将来的な市場規模と制度の予見性で、やはり欧米から見ると、日本は皆保険で安定的な事情があるので、それはそれで国としてもしっかりしていますから、安定性や信頼性はあると思いますが、価格の問題と、マーケットサイズもこれから人口減に入っていきますし、制度の予見性という意味においても、市場拡大再算定等々の予見性が若干低まっているものではないかというところが新薬開発の停滞につながっている大きな要因ではないかと考えております。
 次のスライドをお願いします。米国、欧州、日本で世界売上げ上位300品目ですので、かなりメジャーな製品なのですが、メジャーな製品の中で入ってくる順位が日本は著しく遅いということで、我が国は3番目に上市されている割合が高いというところになっております。これはドラッグ・ラグの問題ですが、さらに言うと、この17.7%の未上市品というのは、入ってくればドラッグ・ラグになりますが、下手をするとドラッグ・ロスになります。ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロス、未承認薬の国内の問題が非常に大きくなってきているところです。国民に対して、迅速、かつ世界で画期的なものが出ればきちんと届けられるという意味においても、何とかしなければいけないという強い意識を持っております。
 次のスライドをお願いします。今までのところが我々の研究会として積み上げてきた問題意識のコアな部分です。では、それをどういうふうにしていくのかというところで、一つは、薬価政策は保険財政政策で重要な役割があるわけです。薬価の決め方は産業政策的な側面があり、かなり大きな産業の在り方が変わってきていますので、薬価政策の中にミクロ的アプローチとマクロ的アプローチを組み合わせて紐帯意識を持っておきたいというのが我々の問題意識となっております。
 次のスライドをお願いします。左側の課題の部分はお話ししたとおりでございます。薬価がなかなかいい値段がついていないということ、特に原価計算方式というのは考え方としてどうなのかと思っております。イノベーションを評価するのに原価でやっているところはほかの国ではないわけで、今、創薬の環境が随分変わってきており、1社が垂直統合でやっているわけではございません。水平分業が主体で、例えばバイオベンチャーから買ってきて開発したり、販売は他社と提携するなど、いろいろなところでやっております。そうすると、原価の把握は相当難しい現状がありますし、原価そのものの中には膨大なリスクの負担の計算が十分入ってきていません。さらに、産業政策的に問題だと思うのは、それを最終的に産業平均の利益率の調整という形で評価してしまうという部分で、この形は考えたほうがいいのではないかと思っております。
 あとは、価格がついた後の市場拡大再算定ということになります。原価計算に代わる方式として何らか価値ベースのものを考えていただければいいのではないかと思いますが、ある程度価値ベースでやっていくと、一般論として、今までよりもより自由な薬価がつけられる、薬剤費高騰の懸念が生まれてくるということになります。その意味で、外国価格の参照制度をきちんと入れております。
 それと同時に、最終的な保険財政の持続可能性も考えて、そこに対して、ある一定の市場成長を担保できるようなGDP連動型の成長調整メカニズムを考えてはどうかということを我々は申し上げております。これはキャップをはめたいという話ではなく、足元の市場の状況がマイナストレンドに入ってしまっておりますので、少なくともGDPに沿った形での成長は担保したいという話です。キャップというよりも、成長を下支えする形でバジェットコンストレイトがある程度決まってきますので、薬剤費の中でのアロケーションの話がきちんとできます。つまり、現状のイノベーティブなものへのアロケーションがしっかりできていないので、昔のものが全部市場に残ってしまっている状況の中で、そこをうまくR&Dのインセンティブになるようにアロケーションを変更しつつ、相対的に保険制度内での優先順位が低いものは、より相対的に重要なものを守るために外に出すという議論が進んでいくと思います。その意味でアプローチをかけていると御理解いただければと思います。
 「市場拡大再算定を廃止する」と書いておりますが、単純に売上げが伸びたものを切るというのはやめて、その代わり、効能効果や用法用量変化という最初の算定ベースから違うところの合理性のある再算定は残すということになっております。
 次のスライドをお願いします。ミクロ的アプローチというところで、新たな計算方式と原価に代わるもの、簡単に言うと価値ベースで考えていくのはどうかというところです。このやり方は欧米のものが該当するライトモチーフになると思いますが、ここは基本的に企業側に立証責任を負ってもらい、当局と交渉していただくことになります。
 次のスライドをお願いします。単純に経済評価として定量的にだけやるという話ではなく、定性的な価値や薬によっても違いますので、方法論としてはいろいろあると思いますが、メーカー側が立証責任を負い、今の薬価交渉の仕組みの中でガチンコでやっていただくということになります。また、その交渉の経験を積み上げる中で、こういうものの評価はこうしていくほうがいいという形ができればよいと思っております。評価の方法を決めてこうやるべきだというお話は、我々はあえてしておりません。逆に、厚労省の裁量で薬価の価値として何を評価するのか企業側と調整する中で決めていくのがよいのかと考えております。
 財政調整できる仕組みの一つとして、外国価格の上限値は残しておきます。一方で、再算定については効能効果と用法用量変化以外のところを外してはどうかと考えております。
 次のスライドをお願いします。実際にそれをやったときにどのようなものが対象になったのかというものをリストアップしておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 次のスライドをお願いします。今回、我々は特にイノベーション評価を大事にしたいというところに力点を置いていますので、フォーカスを2点挙げたわけですが、マクロ的なアプローチとしては何を考えていくのかという話になります。
 次のスライドをお願いします。今の市場の現状を簡単に言うと、数量成長がありますが、それを上回る薬価改定の影響が出てしまっていて、全体としてシュリンクしている状況だと思います。シュリンクした影響がイノベーションの部分に大きく影響が跳ねてしまっていて、それが中長期的に我が国の医薬品産業の成長や国民によい薬が届くのかという懸念につながっているというのが問題意識のベースになっています。それゆえ、事前に成長を促すような成長率を決めておく。当然、薬価改定はこれまでどおりやります。基本的に我々の提案は、現行の制度の枠内でやる前提で、大きな変更はしなくても可能な提案となっております。ただ一点、事前合意した成長率の範囲内で薬価改定をするという考え方になっております。
 では、事前合意した成長率というのはどのように決めるのかというと、これはいろいろ議論があると思いますが、我々が当面考えているのは、中長期的な名目GDPを成長率の参照に置いてはどうかということです。これは単年度でやるのではなく、ある程度中長期的な平均成長率を算出して、実態として5年くらいで更新するというイメージを考えております。
 次のスライドをお願いします。実際、成長率調整メカニズムで何を使うかというところで、内閣府試算のベースラインの1.8%という値を置いています。我々は1.8以外でももう少しリーズナブルな低い成長率も試算に入れております。後で御説明申し上げますが、成長率がかなり低く見積もられたケースでも、これまでのような改定を続けていくよりは市場の成長を担保できるということを後ほどのシミュレーションで見せたいと思います。
 次のスライドをお願いします。このアプローチの要諦というところで、平均的なGDPの成長率と医薬品市場の成長率を書きました。一番分かりやすいのは右側の図ですが、GDP成長率を横軸、医薬品市場成長率を縦軸に置いております。ほかの国が45度線の上にプロットされている中、我が国はその下というか、違う象限に落ちてしまっています。ですので、誤解していただきたくないのは、我々は、状況に鑑みて、少なくとも正常なGDPの成長軌道には薬剤費市場の成長を乗せていきたいということを提案しています。
 次のスライドをお願いします。もう一つ、足元の状況で深刻な問題になり得ると思っているのは物価高騰のインフレーションの問題です。見ていただくと分かりますが、CPI(消費者物価指数)とGDPデフレーターは、2010年代から10年以上急激に上がってきてはいないが、平行線、やや緩やかに上がりつつある状況です。薬価は、残念ながら、今までの薬価制度の中で物価が長らくデフレ傾向にあったので、あまり問題にはならなかったのですが、基本的にインフレーションに対する措置は全くなされておりません。消費税増税時には診療報酬本体に対して細やかな措置をやっていますが、薬価に関しては調整がほぼ入っていない状況で、恐らくこれから物価が上がってくる可能性が高いと思いますので、これを考えると、毎回の薬価の中で今後この影響を吸収できるということを考えても、ある程度GDPに沿わせるのがリーズナブルな考えだと思っております。
 次のスライドをお願いします。2020年から2025年の間に現行の制度を続けた場合どうなるのか、それから、我々が今考えている提言を入れたときにどうなるのかというのをIQVIAのデータを使ってシミュレーションしています。数量成長は両方同じになります。薬価の改定率を見ていただくと、全体としての市場成長率がその差分として出てくる仕組みになっております。現行ベースだと、IQVIAも基本的には日本の市場はマイナスになると予想しています。我々は1.8%と内閣府のベースを置いていますが、それでいくと一つのポイントは薬価の改定率が今までよりかなり低く抑えられることと、かつ変動幅です。変動幅というのが予見可能性にもつながりますが、ここではかなりモデレートになり、結果的に2020年から2025年の市場を一定の範囲の中で伸ばすことができるという仕組みになっています。産業政策的に考えたときには、予見性も高まって全体的な薬剤の市場成長が見込めることになっています。財政的予見性が両立されることも大きなポイントとなります。
 次のスライドをお願いします。では、具体的にどのようにするかというと、マル1に「+Z%」と書いていますが、基本的に薬剤マーケットを基礎的医薬品、イノベーティブ新薬群、成熟品群の3つに分けております。イノベーティブ新薬群というのは、ここでは試算する上で新薬創出加算がかかってくるものを置いております。成熟品群の中には長期収載品と後発品が入りますが、特にゾロ新のようなものも成熟品群の中に含んでいます。業界から、ゾロ新とはいっても、特許が入っているものはどうするのだというお話があるかもしれませんが、やはり日本のマーケットで通用しても世界で通用しないものについては、そこを少し刈り込むことが必要かと思っております。
 そして、事前合意の総薬剤費が決まると、実際のマーケットが自律的な成長を行う形で基本的には伸びてきます。伸びたときにZ%の中で保険財政の見地から刈り込みを入れることになります。刈り込みを入れる際、基本的には基礎的医薬品やイノベーティブ新薬群では行わず、成熟品群で広く薄く行うというのがポイントになってきます。
 次のスライドをお願いします。調整後、薬価はどうなるのかというと、市場実勢価と改定前薬価にスライド調整率を、今、2%乗っかっていますが、市場実勢価に調整幅を上乗せする現行の改定方法の中に我々はトータルとして改定率を発展的に埋め込みたいと考えております。そうすると、2%よりもさらに下がるのは大丈夫か、安定供給は大丈夫かというお話が生まれてくるかと思いますが、一定の市場成長を促しておりますので、基本的に我々の試算では2%より上乗せできる形での財源が生まれてくると考えております。皆さんは懸念されますが、実際には、我々は仕上がり調整と言っていますが、最終的には2%よりも上乗せできるスライド調整率が試算上達成できると考えております。新薬の本体のところ、イノベーションは守りますが、それ以外を刈り込むというように現状見えますけれども、実際のところ、シミュレーションしましたので、次のスライドをお願いします。
 2017年から2018年の改定をもし我々の提案でやっていたらどうなっていたかということを試算してみました。左側が実績ベースです。実際にプラス5.8%で改定前伸びたもの、10.6兆円までいったものが全体としてマイナス1.9%の成長になってしまいました。9.8兆円落としたということになります。その中で、新薬創出加算品も落ちていますし、市場拡大再算定品も大幅に落ちています。成熟品群全体もマイナス9%というような実際の動きでした。
 これを仮に我々のメカニズムでやった場合どうなったかというと、結論だけ申しますと、当然、新薬創出加算と市場拡大再算定品はいじらないのですが、成熟品群のところがマイナス5.8%くらいで終わってしまいました。我々の研究会には長期収載品を扱っているメーカーも入っています。よく理解されますと、今までの制度で随時改定をしていくよりはこちらのほうが相対的に事業遂行上の予見可能性が高く、結果として改定率が緩和されるという意見もございました。制度を十分に分かっていただけないと不安を感じると思いますが、この制度をやると、成熟品群のところで全部調整されるのは大変だと言う方もいらっしゃいますが、我々の試算では適切なルールとメカニズムを置けば、都度、場当たり的裁量で行われる現行方式より、基本的には産業全体にとってメリットが生まれる制度だと考えております。
 次のスライドをお願いします。結局、何が言いたいかというと、現状、国際的な医薬品市場の成長率予測の中で沈んでいる我が国の医薬品市場を少し上に持ち上げたいということです。少なくとも安定的な市場というところも当面、日本はあると思います。承認制度もしっかりしておりますので、物すごく高い成長率ではないかもしれませんが、少なくともこれくらいのプラス成長が安定的に見込めるのであれば、我が国がこれから先も医薬品市場の中で国際的に孤立したり除外されることは一定程度回避できるのではないかという見通しを我々は考えております。
 提言のまとめなのですが、当然、ミクロ的なアプローチでは、イノベーションの評価という産業政策的な製薬企業に対する市場環境の整備がありますし、マクロ的な側面でいうと、やはり現役世代の負担、アフォーダビリティーを確保しつつ、ある程度予見可能性を確保するということ、薬価制度改革に当たって岸田総理が強調したイノベーション評価と皆保険制度の持続性の両立を考えると、このような案が生まれてくると思っております。
 次のスライドをお願いします。最後は、財政審でこの提案が取り上げられました。我々にとって非常に重要だと考えているのは、財務省が公式の資料を用いて、事前の財政規律の導入が入れば一定程度の薬剤費の伸びを許容しているというメッセージを出しているということです。つまり、薬剤費においてある程度の伸び率が経済成長と乖離しないといった総額に関する取決めがあると、枠の範囲内なら薬剤費が伸びることが許容されるということを財務省自身が公式に認めているということです。公共事業など普通の予算では、予算が決まれば執行予算は必ずその予算の枠内に収まります。しかし、医療費や薬剤費は、価格を政府が統制していても、数量が伸びれば薬剤費などの総額をコントロールできない可能性があるという問題、すなわち財政的に不確実性を抱いてしまいます。財務省が一番欲しいのは、この不確実性を排除する何らかのメカニズム、つまり予算でつけた金額以内に全部が収まるという仕組みです。この問題は我々INESが提案する成長率調整メカニズムを導入すれば解決するから、財務省の資料では、薬剤費が今後横ばいかマイナス成長になる可能性がある中で、仮に薬剤費が若干伸びるようになっても財政的な不確実性が排除できるのであれば構わないというメッセージを財務省が出してきたと受け止めています。これまで既存の薬価制度で切り続けてきた財務省がこのようなボールを業界、厚労省に投げたことは我々としても非常に大きいと考えていますし、このメッセージに応える必要があると感じております。
 多少駆け足になってしまいましたが、我々の発表は以上です、本日はお時間を頂きまして、ありがとうございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、デロイトトーマツコンサルティング合同会社から発表をお願いしたいと思います。
○木戸氏(DTC) デロイトトーマツコンサルティングの木戸と申します。本日、このような場で意見を発表させていただく機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
 弊社のことを御存じない先生の方々もいらっしゃるかと思いますので、最初に簡単に弊社の紹介をさせていただければと思います。弊社は、監査法人トーマツを母体としますコンサルティング会社です。トーマツというのは人の名前でして、日本海軍の会計監査を務めていた者が戦後に設立した監査法人でございます。
 我々はその中で経営コンサルティングの部門にいるのですけれども、現在、コンサルティング部門で約5000名の社員が働いております。その中でライフサイエンス・アンド・ヘルスケアという部門で主に医療の分野に関わるコンサルタントは150名おりまして、今日、参っているメンバーはそちらの部門の所属になっております。その中には、医療従事者、医師免許を持っているメンバーや、厚生労働省をはじめとする元行政に勤めていたメンバー、多様なメンバーが所属しております。そういった中で、製薬企業の方々はもちろん、多様な企業の方々にコンサルティングを提供させていただいておりまして、そういった経験を基に、本日、御提言という形で発表させていただければと思っております。
 加えまして、私自身、7歳になる娘がおりまして、この娘が将来、年を重ねて医療を必要としたときに、今、提供されているような世界で最先端の医療が今後も提供することができるのかというところに対して非常に強い問題意識を持っております。ですので、単純にコンサルタントとしてというだけではなくて、国民として次世代にいかに日本のすばらしい医療をつなげていけるのかという観点からも今回の提言をまとめさせていただきました。御専門の先生からしますと、見当違いなところとか、まだまだ論拠が甘いところなど、多数あるかと思いますけれども、いろいろとたたき台として使っていただいて、次世代に日本の医療をつないでいく一つの礎になれば本望であるということで、この後、御提言させていただければと思います。
 資料の2ページ、今回の目次です。まず、弊社提言の全体像をお話しさせていただき、その後、提言1、2、3という形で、革新的医薬品に関する提言、安定供給に関する提言、薬価差に関する提言を御説明させていただければと思います。
 4ページから御説明させていただきます。まず、我々が本日一番お伝えしたいところですけれども、今回、薬価制度を検討するに当たって、日本の医療を今後どう運営していくのか、そのときに何を優先すべきなのかという観点から、それぞれの制度を検討していくことが必要なのではないかということを我々の一番大事にするところとしてお伝えさせていただければと考えています。
 そういった認識の下、まず、日本の今の薬価制度に関わる前提の問題意識を御説明させていただきます。これまでの検討会の中で先生たちが議論しておられますとおり、大きく革新的医薬品の迅速な導入あるいは安定供給の確保といった直近の重要な問題、こういったものはどちらかというと薬剤費が増大するベクトルで働いてくる傾向が強い。一方で、国民皆保険の維持や患者負担の低減は薬剤費をいかに下げていくのかが求められるベクトルになってくる。こちらもこれまでの議論のとおり、いかにバランスを取りながら制度を見直していくのかというところが今回の非常に難しいポイントだと理解しております。
 もちろん薬剤費の問題は、薬剤費の枠組みの中だけで議論するべきではないということも含めて、これまで先生方の御意見を頂いているところで、そこはおっしゃるとおりだと思っております。そういった提言をしていくこともこの検討会の一つの目的であると理解しております。一方で、我々の今回の御提言としては、薬剤費、薬価制度という枠組みの中でどういったことを考え得るのかという形で御提言させていただければと考えております。
 5ページをお願いします。先ほど優先順位と申し上げましたけれども、具体的にどういった優先順位、どういった考え方で薬価制度を考えていくべきなのかという枠組みを示したのがこちらのスライドでございます。大原則として大前提になってくるところは国民皆保険制度の維持、今の日本の優れた医療制度を維持していくことが大原則になると理解しております。
 その中で優先すべき目的として2つ、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスを起こさせないという革新的新薬の迅速な供給、ひいては安定供給の確保という医療としてのインフラをしっかり守っていくところ、この2点をいかに目的として重視しながら制度を設計していくのかというところが今回我々として検討した大きな枠組みです。
 そうなったときに、新薬、長期収載品、後発医薬品、それぞれに対してどういう方向性で制度を検討していくのがいいのかというところを下に書いています。
 新薬に関しては、イノベーションを最大限にいかに評価していくのかが最も重要なポイントであり、これまでも議論されているところと理解しております。一方で、そのイノベーションをしっかり評価しながらも、より大原則である国民皆保険制度の維持というところは重視する必要があるので、何でもかんでも青天井にイノベーションを評価すればいいというわけではないというのも一つ重要なポイントになってくると理解しています。
 長期収載品に関しては、特許が切れた後、後発品をはじめとする品目に役割を譲るという形で、薬価の観点からも早期に後発品の薬価に収れんさせることも含めて提言していくというところが方向性になると理解しています。
 後発医薬品ですけれども、今、80%の目標を到達するところまで来ている中で、医療のインフラとしての側面がかなり大きくなってきていると考えています。そういった前提で、産業構造上、これまで議論にありますとおり、問題があるところに関しては、そこをいかに是正していくのかという視点も制度設計の中で必要なのではないかと我々としても考えているところです。
 こういった大原則からそれぞれのカテゴリーに対する制度設計の方針を踏まえたときに我々から御提言したいところが次の6ページです。大きく3つ、革新的医薬品に対するもの、安定供給に関するもの、薬価差に対するものです。
 後ほど個別に御説明させていただきますけれども、まず、革新的医薬品、新薬に関しては、イノベーションの評価をいかに拡大していくのかというところを御提言させていただければと思っています。続いて、2つ目、新薬創出加算についても要件を拡大していくというところ、3つ目、市場拡大再算定の見直し、特に予見性の低下につながっている共連れルールの廃止というところを考えております。4つ目、長期収載品の薬価引下げは、G1、G2、Z2ルールで引下げ等々は容認されておりますけれども、そちらに対するさらなる厳格化も我々として御提案させていただければというところです。
 医薬品の安定供給に関しては、詳細は後ほど御説明しますけれども、業界構造の変化を促進するような何らかの制度導入ができないかという観点での御提言です。
 薬価差に関しては、薬価差をいかに解消していくのかということで、薬価差が持つ意味を踏まえたときに目安幅は公定マージンに近い考え方になると思いますけれども、そういったものを通じて薬価差を解消していくという御提言です。
 では、提言1の革新的医薬品のところから順に御説明させていただきます。
 8ページです。提言1-1のイノベーションに関する我々の問題意識として大きく2つございます。1点目は、イノベーションは何なのか、どういったベネフィットをもたらすのかというところが明確に定義され切っていない。2点目としては、それを誰がどのように評価するのか、まだ明確に定められていない。こちらに対して何らかの対応ができないかというのが提言1-1の内容となっております。
 あくまで初期案ではありますけれども、イノベーションを評価していく観点で既に有用性加算、画期性加算の中で評価されている有効性、安全性に関するもの、それに加えて社会に対する価値、医療システムに対する価値というところ、イノベーションの評価の観点を具体的に明確した上で、これを何らか加算という形で薬剤の価格に反映していくというところが1つ目の御提言になります。
 加えて、それをいかに評価していくのかというところで、客観的に評価する第三者組織を設定することも併せて御提案させていただければと思っております。現在、薬事承認に関しては、Pmdaのほうで有効性、安全性を中心に評価を行い、それに基づいて薬事承認が行われています。あるいは費用対効果に関しては、国立保健医療科学院のほうで公的分析等々を行いながら判断しています。それに準ずるような形で、イノベーションに関しても第三者的な機関が評価を行って、その結果に基づいて薬価専門組織、中医協等々で加算に反映していくというような考え方がイノベーションの評価を客観的に、かつ妥当な形で行う上で求められるのではないかと考えております。
 10ページですが、イノベーションの範囲を拡大するというところになってきますと、今後、上市前のデータ、エビデンスだけではなくて、上市後にイノベーションを評価するようなエビデンスが出てくることも想定されると考えております。したがって、そういったイノベーションの評価の予見可能性を上げていくという観点からも、医療機器のチャレンジ申請制度でも行われているように、承認のタイミングで今後上市後に予想されるイノベーション、エビデンスを御説明した上で、それを上市後に提出し、その結果に基づいて加算がさらに付与されるというような形がイノベーションを上市後に評価していく上で求められるのではないかと考えております。
 続いて11ページ、提言1-2、新薬創出加算要件の拡大です。我々の問題意識としましては、今の新薬創出加算の要件が日本への早期の上市のインセンティブに十分なっているのかということです。御存じのとおり、新規の作用機序を持つ薬剤に関しては上市後3年以内、3番手以内という要件で新薬創出加算が付与されております。極論を言ってしまうと、3か月遅れで3番手から4番手になった品目は新薬創出加算がつかないということになってしまいますが、そういったルールがメーカーから見たときに日本で上市することの阻害要因にならないのか、ひいてはドラッグ・ラグを引き起こす要因にならないのかというところでございます。
 そういったことに対応するために新薬創出加算の要件として何番手というような順番の部分は排除して、1番手が収載されてからの期間で新薬創出加算の適用要件を定めるということを考えております。一方で、そうすると、1番手と3番手は同じ評価でいいのかということもございますので、そちらについては薬価の維持期間を分けるという形で考えております。つまり、薬価が維持される期間を現行のそれぞれの特許期間ではなくて、1番手の品目が維持される期間という形で設定する。これによって1日でも早く新薬が日本に届くようなインセンティブが働く仕組みを構築できないかと考えております。
 続きまして、提言1-3、市場拡大再算定に関する御提言です。先ほども申し上げましたとおり、再算定のルールは薬剤費の過度な増大を抑えるという観点では一定、必要な制度だと理解しております。一方で、今の共連れルールの部分は、自社の売上げではなくて他社の品目の売上げによって、かつ相対的にシェアが大きい品目の売上げ拡大によって小さい品目の薬価まで影響を受けるというようなルールになっている中で、こちらは予見性の観点から望ましいのかということがございます。こちらのルールの背景にありますのは公平な競争環境の維持ということで、同じ薬理作用を持っている品目の薬価を一方だけ変えることに関する公平性の観点だと思います。一方で、一緒にするのがよいのかどうかというところはありますが、市場実勢価格に基づく薬価改定においては、多少同じ薬理作用を持つ品目であっても薬価差が出ることが許容されている中で、市場拡大再算定のみは公平性を期すというところにどこまで合理性があるのかというところも、極論の部分もあるかもしれませんが、議論の余地としてはあるのかなと考えております。
 続いて、提言1-4、長期収載品の薬価引下げに関してです。こちらも、既にZ2あるいはG1、G2というルールがある中で、Z2が適用になるには特許が切れてから5年間の猶予がございます。5年間という期間が適切なのか、もっと短い期間で薬価を引き下げることはできないのかどうか、まだ議論の余地があるかと思います。全体最適から制度を運用していく、設計していくという観点で見たときに、やはりここについては新薬のイノベーションの評価あるいは安定供給の確保のために、より厳格に引下げを行っていくことが望まれるのではないかと考えております。
 ただ、その中で、長期収載品であれば何でもかんでも一律に厳格な引下げを適用するという形だと必ずしも望ましいとは考えておらず、長期収載品の中でも一定、医療上の役割を持っているもの、後発品への置き換えが進みにくいものに関しては引下げの緩和を図る措置も必要になってくるのではないか。14ページになりますが、そういった長期収載品への置き換えが進みにくい製品カテゴリーを例示として挙げております。
 ここまでが新薬に関する提言でございます。
 ここから提言2の医薬品の安定供給に向けた提言の説明を進めさせていただければと思います。
 16ページの後発医薬品業界が抱える問題は、これまでの先生方の御議論の中でも多くの御意見があったかと考えております。その中で顕在化している問題としては3つに集約、収れんするのではないかと考えております。それがどういった原因から起こっているのか、今回の検討会の枠組みの薬価制度に関するものと産業構造に関するものに分けたときに、それぞれに関わるところ、あるいは両方に関わるところが原因として挙げられるのではないかと考えています。やはり産業構造的なものに起因するところが大部分あるというところから、かつ安定供給を確保するという本来の目的を踏まえたときに、薬価制度を検討する際にも産業構造自体に何らか影響するような視点が必要になってくるのではないかと考えております。
 それらを踏まえて、例示としてどのような案があるのかを17ページで御説明させていただいております。A、B、Cと3つの案をお持ちしております。Aが強制力がより強く働くもの、Bが業界主導での再編を促進するようなもの、Cがどちらかというと保護的な観点でのものになります。実現可能性の観点でまだまだ検討が必要なところが多々ありますけれども、一つの初期的な案として御説明させていただければと思います。
 まず、Aは「品目別供給先指定」と書いておりますが、こちらは、いわゆるジェネリックメーカーからの手挙げ制で各品目、各成分について、どの企業が将来的にも供給していくのかを決めていくという考え方です。
 Bは、アライアンス促進ということで、どちらかというと業界各社で役割分担、製品ごとの分担を業界主導で決めていき、それに基づいて製造を業界全体で最適化していくという発想の案です。
 Cは安定供給支援で、設備投資も含めた安定供給への何らかの貢献をしている会社に対して支援するという考え方です。
 AとBに関しては、より具体的に御説明させていただければと思います。
 18ページがAです。現状としましては、製造販売承認を取った企業がそれぞれ個別に同じ成分の品目を販売しております。それに対して今回の制度を導入するというところでは、厚生労働省よりまず絞り込みの対象になる品目を指定いたします。後発品の収載から5年以上たっているような品目を想定しております。それに対して年間どれぐらいの処方量が出ているのかをNDB等々を使って厚生労働省より各後発品各社にお伝えする。その数量に対して各社はどれぐらいの割合、数量を供給することができるのかをお伝えして、その数量を基に厚生労働省のほうで供給可能な企業を選択していく。それ以外の企業に関して、あるいは希望しなかった企業に関しては、移行期間を経て薬価削除をしていくという形を想定した案になっております。
 19ページがB、アライアンス促進の案です。現行、先ほどと同様ですが、同じ成分の製品を異なる後発品企業、ここではA、B、Cが製造している。それに対してどの品目をどの会社が製造するのか、それぞれ役割分担していくという考え方です。例えばこの図でいきますと、薬効成分マル1に関してはB社が引き続き製造販売をする。A社とC社は、B社が製造している製品を販売していくというような考え方です。そこで統合された品目の数量に応じて加算を付与する形でこういったアライアンスが促進するようなインセンティブを働かせるという考え方になっております。
 続いて20ページは、現行の不採算品再算定制度の適用要件の緩和ということで、これまでも検討会で御意見があったかと思いますが、適用が厳しいという条件に対して緩和していくというお話になりますので、本日の説明は割愛させていただければと思います。
 21ページは、先ほど御説明させていただいたA、B、C、それぞれの案に関してメリット、デメリットがあると考えています。
 安定供給への貢献では、いかに産業全体としての製造最適化ができるのかという観点もございますし、むやみにインセンティブ加算を付与することは、ひいては薬剤費の増大につながりますので、そういった部分がどうなのか。あるいは、そもそも制度運用が実現可能なのかどうか、特に独占禁止法の問題、あるいは憲法上の営業の自由の部分、そういった観点で実現可能性があるのかどうかといったところもそれぞれの案によって異なってきますので、この辺りは今後詳細な検討が必要だと理解しておりますけれども、こういった形で産業構造をより促進していくような制度の在り方を一つのたたき台、仮の案として御提案しております。
 続いて、提言3の薬価差に関する部分について説明させていただきます。
 「問題点の整理」と書いていますが、現状としてそもそも薬価差は何なのか、何によって薬価差がもたらされているのかという理解がまだ必ずしもコンセンサスという形で取られていないところがあるかと考えています。我々としては、そこに関しては、流通の構造の観点から薬剤管理のコストあるいは医療機関が抱えるリスクをカバーするためのものであるという立場を考えております。
 この背景にある考え方ですけれども、薬局が行っている事業は2つの側面があると考えています。一つが、小売的な側面、薬を管理して患者さんという消費者にお渡しするという側面、もう一つがプロフェッショナルサービスとして服薬指導、調剤といった専門技術を提供する側面です。既存の技術料の中でもちろんこのリスクもカバーされるべきだという意見があるのは理解しておりますが、そういった技術料の部分はどちらかというとプロフェッショナルサービスに対する対価として設定されている側面が強いのではないかと理解しております。したがって、薬価差の部分は小売業の側面にひもづくものとして一定程度薬価差が発生することは必要なのではないかという立場を取っております。その中で、総価取引の長期収載品において薬局の購買力の増大によって薬価差が過度に生じてしまう、ここが問題点であると認識しております。ですので、そこに対して一定の目安幅を設定して、それを超えた部分は国に還元するというような仕組みが必要なのではないかと考えています。
 24ページは、今、御説明したことを図示したものですので、説明は割愛いたします。
 26ページは、今、申し上げたような考え方を図示したものです。総価取引が行われている長期収載品の薬価差に対して目安幅を設定する。目安幅を超えている部分に関しては還元するというような考え方になっております。
 27ページは、目安幅をどのように決めるのかという一つの要素を書いております。これまでの議論にありますとおり、薬価差は様々な取引条件の違いによって発生している中で、例えばここに書いているような特性が影響していると考えています。
 一方で、最初に御説明しました、そもそも薬価差というものは医療機関が抱えるコストあるいはリスクに対するカバーのためだという立場に立つと、この要件の中でどこを目安幅の変動部分として考慮すべきなのかというところが決まってくると考えています。例えば地域・ロケーションは、地域によって過疎地や離島では流通の難しさ等もありますので、その目安幅を変える要素として必要になってきます。一方で、疾患領域は、同じ注射剤であれば、どの病気、どの治療に用いる注射剤であっても、管理、リスクの観点からは同一であり、目安幅には考慮しないという考え方ができるのではないかと考えています。
 弊社からの御提案は以上ですが、日本の医療制度の持続的な発展のために制度はどうあるべきかという観点からそれぞれの個別制度の具体論を進めるのがいいのではないかということを最後に改めてお伝えさせていただければと思います。どうもありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、最後になりますが、日本医療政策機構から御発言をお願いしたいと思います。
○乗竹氏(HGPI) 遠藤先生、ありがとうございます。
 日本医療政策機構で理事・事務局長をしています乗竹と申します。今日はこのような機会を頂き、ありがとうございます。
 スライド資料と同時に、皆様のお手元に2つ、冊子を用意しております。1つは、膨大なのですけれども、150ページほどある日本医療政策機構における当該分野のこれまでの提言や報告書のまとめというもの、そして、全世代型社会保障に求められる医療システムに関する有識者報告書ということで、今日お集まりの委員の先生方にもこれまで当機構の会合等にお越しいただいて、御発言等くださって、こういった取りまとめをしております。
 スライド資料のほうで御説明していきたいと思います。
 スライド資料の3ページを御覧いただければと思います。まず、我々日本医療政策機構は、2004年に設立された非営利独立の医療政策のシンクタンクです。市民主体の医療政策を実現して、独立したシンクタンクとして幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供することをミッションにしておりまして、我々、多様な財団や企業からも寄附を頂戴しておりますけれども、我々の最大のクライアントは、非営利法人として、civil society(市民社会)だと強く信じております。
 2004年の設立ということですので、ちょうど2003年頃が日本におけるドラッグ・ラグの議論が非常に盛り上がっていた時期でして、大腸がんのオキサリプラチン等をはじめ、かなり問題になっていました。当時はPMDA等の承認プロセスの問題でありますけれども、現状、また改めてこのドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの懸念というのが各ステークホルダーから非常に多く聞かれている状況と思っております。2006年にがん対策推進基本法が成立しましたし、それ以降いろいろな形で市民・患者参画というところを訴求してまいりました。
 4ページで我々が扱っているプロジェクトの一部を御紹介しております。右上にあるイノベーションとサステナビリティーですが、イノベーションを評価しつつ、医療システムの持続可能性を目指していこうというプロジェクトは2016年から経年的にずっと実施しているものでして、それ以外にも、薬剤耐性菌の課題等においても基礎的抗菌薬の欠品等がございましたけれども、こういった点でも安定供給の重要性について提言を出しております。
 5ページは、当検討会に関するステークホルダーからの期待ということで、右下が「2020年」になっていますが、「2022年」の誤りで差し替えますけれども、2022年10月に私のほうで何名かヒアリングさせていただきました。大きく聞かれたのは、この検討会に対する期待は非常に大きいものがあると感じておりまして、薬価制度や医薬品の安定供給体制整備に関しては抜本的な視点から議論できる場所が現状限られている。その中で幅広い視点で議論いただくことは、3年後、4年後先を見据えても意味があるのではないかという御意見を頂いております。
 これは改めまして申し上げると、当検討会の所掌範囲ではないかもしれませんけれども、薬剤費に関する議論だけではもはや限界であって、医療費全体や保健医療システム全体の生産性の向上、無駄の削減にも視点を提供いただくべく期待したいという声も寄せられておりました。
 また、患者・当事者をはじめとした医療消費者が理解して賛同できる制度が求められているのではないか、そういう声も患者リーダーの方からお聞きしまして、ぜひ患者・当事者の意見もぜひ聞いてほしい。HTAの議論は2018年等からありましたけれども、アプレイザルプロセス等、薬剤の価値を決める上で、患者・当事者の視点の重要性がそこでも指摘されてまいりました。薬価はそもそも定量的な要素だけでは決められないところがありまして、価値に基づいた何らかの患者の声というものをヒアリングしてほしいという声もありました。
 また、これもやや過激な意見かもしれませんけれども、現状として2016年頃から急速に進められた薬価制度改革が政治主導の側面が強かったように感じている。外資がもうかっているから、たたけのような、そういう議論が多くて、主要な立法府のリーダーにイノベーションの価値や国際潮流を理解してもらわなければ、幾らテクニカルな議論が進んでもなかなか制度全体の変革につながらないのではないか、そういう御意見もありました。
 6ページに我々がこれから御説明する範囲を提示しております。当検討会で議論されてきた論点は4つだというふうに承知しておりまして、今後の薬価制度の在り方に関する全体的な課題、革新的な医薬品の迅速な導入に関する課題、医薬品の安定供給に関する課題、薬価差に関する課題、これは特に医薬品取引の流通等における課題です。我々のほうで最後の流通のところはあまりこれまで手をつけておりませんので、提言の中身としては上の3つを中心に御提示してまいりたいと思っております。
 我々が今回準備した資料は、テクニカルに具体的な提言を出すというよりも、2016年からステークホルダーがどういう議論をしてきたか、少し振り返って御説明するところに我々の意義があるのではないかと感じておりまして、そういう資料構成になっております。我々ももちろんシンクタンクとしていろいろな提言を出しているわけですけれども、我々はマルチステークホルダー、産官学民のグローバルな方々にチャタムハウスルールで胸襟を開いて議論していただいて、そこでいい施策をつくっていこうというところを活動の本意としております。そういった意味では、我々が何か独自の提言を出すというよりも、皆さんがいろいろと考えていらっしゃったこれまでの蓄積というものが非常に重要なのではないかと考えておりまして、そういったこれまでの議論を提供できればと思っております。
 議事録で、これは香取先生の御発言だと思いますけれども、シンクタンク等の提言も参考にしながらというふうに、もともとこの検討会でも議論があったかと思いますけれども、そういった視点も踏まえて少し分厚い資料になってしまいましたけれども、参考になるようなこれまでの議論を提示しております。
 7ページ以降、主に具体的な提言内容は、お配りしています参考資料を後ほど参考にしていただければと思いますが、2016年12月から我々は薬価制度改革に関しては取りまとめをさせていただいております。その当時から、高額薬剤を中心に薬剤費を抑制しようとする現在の動きに対しては多くの懸念が寄せられておりました。また、薬価に関しても費用比較による評価のみならず、医薬品を評価するアプローチやプロセスに関しても慎重に検討すべきだという御意見等ございました。また、重ねてになりますけれども、国民的な議論を伴うためにデータの活用も必要ではないか、2016年当時からこういう話があったということは一つ留意しておく必要があるのかと思っております。
 8ページでございます。参考資料のほうでは9ページになっておりますが、イノベーションと持続可能性の両立に向けて、これは、CSISという米国のシンクタンクと当機構のほうで共催して各国の関係者も集まっていただいて議論した内容になっております。この検討会の議事録にもありますけれども、各国の経験や教訓を共有していくことはやはり意義があると考えております。また、価値に基づく価格設定(Value-based pricing)について2017年の段階で言及しておりまして、こういったところを精緻化していく必要があるのではないかという議論をしております。これは、医療の質の標準化と維持というところに焦点を当てない限りは、薬価制度改革だけでは少々上滑りしてしまうのではないかという声もこの当時から上がっておりました。
 9ページです。資料集で言う26ページになるわけですけれども、これは、2017年に開催しましたHTAの在り方、課題について、これもチャタムハウスルールで、このときは40名程度の有識者の方々に集まっていただいて議論したものです。2017年といいますと、当時13品目の試験的導入がされていた時代でして、再分析班と企業との間のコミュニケーションがどうあるべきかといったかなりテクニカルな話にも踏み込んでこのときは議論して取りまとめております。
 その際に出た御意見としましては、2点目ですけれども、患者にとっての価値に基づく医療(Value-based healthcare)を実現していくために、患者利益につながるような総合的な臨床現場の視点を含めた評価も検討するべきであるということや、単にHTAを用いて高額薬剤、イノベーティブなものを評価するということのみならず、産業界自体も残薬問題の解消、多剤併用の解消に当たるべきであり、またジェネリックやバイオ後続品の普及推進等によって保健医療システム全体の効果的で効率的な運用も検討されるべきという意見も出ておりました。ジェネリックの部分は産業構造的に非常に課題もあるところとは思いますけれども、めり張りのある薬価制度を求める声が当時から大きく出ていたと記憶しております。
 10ページです。参考資料で言う51ページ目からになりますが、2018年は、我々、医療システムの持続可能性とイノベーションの両立ということで、今日いらっしゃっている坂巻先生にも度々お越しいただいて、具体的なHTAの本格導入に関してアプレイザルプロセス等について議論を重ね、また、増分費用効果比等についても具体的な日本における在り方等について議論を重ねてまいりました。
 ちょっと駆け足になりますけれども、次は11ページ、資料集で言う84ページになりますが、これは安定供給に関する議論を御紹介しております。2020年9月に安定確保会議のほうで公表されたいろいろな提言がございますけれども、それを受けまして、特に抗菌薬の安定供給に向けた視点はどういうものがあるべきなのか、我々のほうで提言を出しております。当時、セファゾリンの欠品の課題がありまして、これは非常に国民の命に直結する課題だということで、我々のほうでも今後、安定確保会議のワーキンググループで出されたような基礎的医薬品や安定確保医薬品等に関する提言というものを踏まえて、抗菌薬分野ではどうあるべきかという提言を出しております。
 12ページ、資料集で言う89ページになりますが、患者・国民・当事者の意識調査も実施しております。これは2021年のデータですけれども、国民は基本的に応能負担を支持しておりまして、多くの人が、支払いができる人はもっと支払うべきだという考え方を示しておりました。
 また、イノベーションについてですけれども、国民の世論調査としては、患者が少なくて重症な疾患の治療に寄与する医薬品・医療機器の開発よりも、患者数が多い疾患の治療の全体的な質の向上に関する開発に期待が表明されておりました。また、オンライン診療等治療以外のイノベーションへの期待も比較的高かったのが特徴かと考えております。
 我々は設立以来、世論調査を経年的にやっているわけなのですけれども、どうしても医療政策、医療制度の複雑性から、当事者・患者・国民がオーナーシップを持って理解できていないというところが最大の課題ではないかと考えております。
 13ページの「価値に基づく医療システムの構築に向けて」というところですが、これは、当機構のフェローでいらっしゃる五十嵐中さんに提言をまとめていただいて、我々の提言というよりも、フェローの方が独自に提言を出すという仕組みを整えておりまして、資料集では126ページ目からこの提言を出しております。
 ここの中身について、詳細はこの資料を御覧いただきたく思いますけれども、市場拡大再算定に代表されるような、医薬品が広く使用されるようになった際に価格が大幅に引き下げられる設計は、日本における国際的な薬剤のイノベーションの阻害につながっているという点、それを踏まえて、多面的な価値の反映を行うために量的・質的な評価手法としてValue-based pricingというものを提言しております。
 定量化が可能な範囲に絞った積み上げ価格を比較しますと、対象薬剤によって価格の大小の関係が非常に大きくなってしまう、大きく異なるという状況があります。例えば抗がん剤のような薬剤は、アンメット・メディカル・ニーズが高いものの、薬剤の価値が価格に反映し切れない。このような積み上げ方式では薬剤の価値が価格に反映され切れずに、定量的な価値、積み上げだけではアクセス制限につながるリスクがある、そういう御指摘をさせていただいておりまして、患者の声、アプレイザルプロセスみたいなものを踏まえたValue-based pricingというものを提言しております。
 この御紹介としては最後になりますけれども、14ページのバイオベンチャー育成に関する点についても御指摘したいと思います。これはまだ改定中の提言報告書でして、今後公開予定ですけれども、当検討会でもバイオベンチャー育成、創薬ベンチャー育成についても言及されていたかと思います。我々、約半年ぐらいかけて、これまでの日本のバイオベンチャー育成に関する国家戦略等々について調査いたしました。その結果、我々の視点から申し上げますと、省庁ごとの議論から国家戦略としての何らかの施策推進大綱のようなものが必要なのではないかと考えておりまして、かなり具体的にヒアリングを重ねてきたわけなのですけれども、各省庁はいろいろな窓口がありまして、どこに相談すればいいか分からない、同じ議論がかなり繰り返されているのではないかという御指摘は非常に多くありました。
 また、これまでの皆様の御発言にもありましたけれども、オールジャパンというかけ声だけではグローバルな潮流に太刀打ちできない。つまり、創薬活動が既にグローバルに水平展開している中で日本だけで何かをやろうとしても、人材の育成、呼び込み等につながらない。ですので、グローバルなマーケットを踏まえて、連携を前提に施策や戦略を検討する必要があると考えております。
 また、創薬ベンチャーの育成に関しては、大手製薬企業がより踏み込んだ連携関係を築いていこうとする意思が非常に必要であるという御意見を多く頂きました。
 政府の資金投入だけではなくて、資金を有しているプライベートセクター、特に大手製薬企業が積極的にこういったインベストメントをしていかない限り、なかなか新しいシーズを発掘していく形にならないという御提言もしたところであります。
 ヘルスケアベンチャー・バイオベンチャー育成に関しては、特に創薬の視点のみならず、ベンチャー政策全般というところから議論していく必要があると考えております。例えば知財に関する議論、大学などにおける研究成果をいかに民間事業者へ転換していくかといった、いわゆるTLO法というのがありますけれども、そういったものは日本でも1998年にできておりますが、なかなか実体を伴っていなかったり、SBIR、中小企業の技術革新制度ですけれども、こういったある意味で創薬や厚生労働行政という視点ではないところからの連携というのもバイオベンチャー・創薬ベンチャー育成は必要ですので、ぜひ省庁横断的な取組に期待したいと思っております。
 最後「私見を含むまとめ」というところで幾つか御提案させていただきたいと思っています。15ページ目以降になります。
 まず1点目は、今後の薬価制度の在り方に関する全体的な課題です。これは重ねてになりますけれども、当検討会の所掌範囲とならない可能性を重々承知しながら申し上げるところでありますが、薬剤費が医療費に占める割合は20%ですので、この方法のみでの医療費削減や医療全体の効率化は到底困難であると考えています。
 その上で、医療保険制度全体における生産性の向上を議論することは、医療提供側の働き方改革等の検討も今進んでおりますので、言わば診療報酬で薄利多売型でやらざるを得ないような状況から脱して医療サービスの単価を向上させていくというためにも、医療提供側にもメリットがある、メリットが出る形で議論していくことも可能なのではないかと考えています。少し論点や大きさは変わるかもしれませんけれども、例えばくすり未来塾さんが御提案されている薬価差益の部分の補填を医療提供側にしていこう、そういう議論を医療費全体でも諮っていく必要があるのではないかと考えております。
 また、患者にとっての価値に基づく医療(Value-based healthcare)を実現していくためには、医療技術や医療サービス全般の質の向上についても議論を重ねるべきだろうと考えております。
 2点目、革新的な医薬品の迅速な導入に関連する課題です。過去6年にわたって頻繁に改定が実施されてきていて、非常に複雑なものがさらに複雑化していると考えております。やはり国民の理解を得るためにも改めて分かりやすい設計を引き直す必要があると考えています。
 これも繰り返し皆様からもありましたけれども、2010年から開始された、いわゆる新薬創出加算が適用される製品や企業も大きく減っているわけで、高額な薬剤は国民負担につながるものの、革新的な医薬品の導入の遅れはまさに国民の命に直結することを改めて各ステークホルダーが再認識する必要があると考えております。
 中医協の議論等を見ていましても、支払い側と診療側の議論の中で、例えば支払い側から、マーケットの魅力が日本で下がっているということに関して、エビデンスがないのではないかという懸念等も示されることがありますけれども、本当にこれがそういう議論で止まってしまっていいのか、支払い側が果たして本当に患者・国民の声を代表しているかということも含めて、改めて患者・国民の命というものを捉え直す必要性があるのではないかと、僭越ながら考える次第です。
 また、革新的な医薬品を加算的に評価する施策と、いわゆる内資企業の競争力強化に向けた施策、内資企業のレジリエンスといいますか、強靭化みたいなところの議論は、全く異なる施策領域だということを、改めて内外に論点を提示していく必要があると考えています。革新的な医薬品への加算は外資企業に利するのみといった言説がどうしても立法府を中心にある場合がありまして、それに対して我々は合理的な説明を重ねていく必要があるのではないかと考えております。
 COVID-19ワクチンの研究開発や調達でも明らかになりましたが、医薬品の価格設定はますますグローバル、かつ世界全体が市場として機能しております。一国のみで価格や調達が決定できる状況ではないということを我々は改めて認識する必要があると思っております。ですので、市場に魅力がないとステークホルダーが言っているということ自体が最大のエビデンスなのではないかと私は考えております。
 薬価制度改革をはじめとしたこういった現状の諸課題は、そもそも2016年当時を振り返ってみても、財政諮問会議等からのかなり急ピッチな改革の議論で進んだところがありますので、現状の諸課題の解決には、行政府の漸進的な、インクリメンタルな改革ではやはり限界がありますし、正直申し上げて、かわいそうだと私は思っておりまして、立法府のリーダーシップが不可欠であり、そのこと自体を立法府の先生方も再認識すべきだと強く感じております。
 16ページの「医薬品の安定供給に関する課題(産業構造及び薬価制度など)」ですが、安定供給に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、2020年9月の安定確保会議の取りまとめが公表されておりまして、これの具体的な実施がこれからさらに求められていると考えております。
 これも基礎的抗菌薬をはじめとして安定確保医薬品も含めて、国民の生命に直結する非常に重要なテーマですので、薬価制度上、一定の薬価を増やすというような手当てが求められるのではないかと考えております。
 一方で、この検討会でも議論がありましたが、ジェネリック市場を中心として、基礎的な抗菌薬をはじめとした基礎的な医薬品の製造販売等における産業構造的な課題、2~3品作っている会社がたくさんあるといった課題は散見されていますので、これもほかのシンクタンクの提言にもありましたけれども、是正が求められている点だと思っております。
 追加的な論点として2つ挙げております。
 繰り返しになりますけれども、創薬イノベーションや創薬ベンチャー支援に関する課題は極めて重要な政策課題であるからこそ、省庁横断的な取組が求められているという点です。
 患者・当事者参画の視点ですが、くすり未来塾さんの提言の資料の中に分かりやすく説明していくというのがありましたけれども、まさにそういう視点が我々ステークホルダーも含めて必要だと考えております。患者・当事者の声が反映される仕組みが構築されて、透明性があり、なるべく複雑性をなくす形で国民の保健医療システム全般に対するオーナーシップを高めていければと思っております。
 最後、17ページに一点だけ世論調査のデータを出しております。我々は2006年ぐらいから毎年のように日本の医療及び医療制度の満足度調査というのを実施しておりまして、経年比較すると非常に面白くて、例えば医療の安全性や技術の質の満足度というのは上がってきております。2005年、2006年を振り返りますと、たらい回しの問題、医療過誤の問題、いろいろありましたけれども、そういったものが徐々になくなって、医療の安全性に対する満足度は上がってきています。一方で、医療制度をつくる過程での国民の声の反映とか、つくる過程での透明性というところは毎年ずっと低くなっておりまして、ここを少しでも上げていくことが今後求められているのではないかと考えております。
 以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 以上で4つのシンクタンクからの御発言は終了いたしました。
 現状の分析あるいは具体的な提言や今後のアイデアといったものまで御提示されまして、我々議論する上で大変参考になったと思います。まずは御礼申し上げたいと思います。
 それでは、委員の皆様、ただいまの御発言に対して何か御意見、御質問等あれば、ぜひよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。三村構成員、どうぞ。
○三村構成員 特にくすり未来塾、デロイトトーマツの皆様からカテゴリーベースで非常に詳しい御提案を頂きまして、大変参考になりました。またいろいろな形で検討を深めさせていただきたいと思います。
 少し大きな論点ということで、新時代戦略研究所の方にお伺いしたいということでございます。私自身は、マクロ的なこの分野は、正直言いまして、専門外でございますから、余計に気になるのですが、まず問題意識は、基本的にはイノベーティブな新薬が足りない、技術革新投資が不足している、そして何より日本が技術開発をベースとしたイノベーション立国を目指すべきだという話があって、それをマクロに置き換えるとGDPベースで調整するべきだという論理がつくられていらっしゃいます。
 財政上の規律という面からしますと、当然な論理だと思うのですけれども、この前提条件をどう考えていらっしゃるのかということでございます。23ページに非常に興味深い表がございます。これを拝見しますと、日本のGDPが1.1で、医薬品市場が0.5ということです。そのほかのところ、G7諸国あるいはOECD先進諸国を見ましても、日本のGDPが低めであるということは確実に分かるのですが、医薬品市場そのものも非常に低い。そして、医薬品市場の成長率イコール薬剤費とか社会福祉予算という形で置き換えていいのかどうか、つまり、今回の議論の中で薬価制度そのものの在り方を基本的に見直していこうとか、カテゴリーベースで薬価の算定の仕方を変えていこうではないかと、いろいろな御提案があるわけなのですが、この前提条件が、ある意味でこれから日本のGDPはこのまま低成長が続くという悲観的見通しがあるかもしれないのですが、そのことを前提とした上で、このまま将来の予測線を引いていっていいのかどうか。この図表を拝見しますと、残念ながら、日本は落ちたままということであります。しかし、やはり技術革新立国に転換するべきだという最初のお言葉がありますが、マクロとミクロは違うよとおっしゃるのか、その辺りはどう考えていらっしゃるのかということについて御質問させていただきます。
 先ほど、私も大変賛成なのですけれども、日本医療政策機構のほうからも医薬品のイノベーション投資は基本的には国家戦略として進めるべきだという非常に力強い御提案がございました。そういう提案がある中で、今回の御提案をどういうふうに検討されたのか、その前提条件について御説明をお願いいたします。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、新時代戦略研究所から御発言をお願いいたします。
○梅田氏(INES) 新時代戦略研究所の梅田です。
 御質問の趣旨が十分に理解できておりません。この表では、朝井が申し上げましたとおりのことで、GDPの成長率と医薬品市場の成長率を比べているわけで、どの国においても経済成長以上に医薬品市場は伸びているけれどもということでしたが、先生がおっしゃられたのはカテゴリー別等の。
○三村構成員 いえ、現行の薬価制度を前提としてという話が最後のところに出ていたということ、そして基本的には今いろいろな御提案がある中で、制度自体を見直していこうという議論があるということ、そのことを前提としたとき、少し前提条件の置き方が違うということはありませんかということです。
 ある意味で日本のGDP成長率が低いということと医薬品市場の成長率が低いということはいろいろなところで話が出てくるのですけれども、GDP成長率がこのまま低いままで行っていいのかというような、もっと国民的議論はあり得るかもしれない。GDP成長率を基本的に今後高めていく可能性を考えたときに、過去のことを前提とした上でこれからを考えていいのかどうか、そんな話でございます。
○遠藤座長 私のほうからもちょっと関連いたしますけれども、例えば23ページで日本の将来の医薬品市場を0.5%と推計されているわけですが、これの根拠というのは何から計算しているのか。といいますのは、例えば3ページに示されました2015年度から2020年度の医療費の推移、特許品でも0.1%減少しているということになっているわけですが、その前の5年はむしろ増えているというようなことでありまして、どこからどこまでを推計のための指標に取るかということでかなり違ってくるわけであります。
 また、一般的にいうと、奇数年というのは薬剤費は伸びるわけであります。改定のあった偶数年は薬剤費は下がるという凸凹になるわけですので、一般的に奇数年から始まって偶数年で落とすと大体マイナスになってくるという傾向が見られるところもあるわけです。
 要するに、どういう推計をされているのか。これはそちらが推計したわけではないので分かりませんけれども、それがベースになった議論になっているものですから、日本の薬剤費の将来推計、日本はこんなに大変なのだということが前提の議論になっていますが、その推計はどういうふうにしてやったのかを知りたいということで、一つの前提と先ほど三村先生がおっしゃった内容もそれに絡む話ですけれども、三村先生は、今の体制の下で今後薬剤費がどうなるというのはどういうふうに推計したのかということですね。
○梅田氏(INES) それはおっしゃるとおり、私どもの推計ではありません。その推計の前提について詳細な説明はオープンにされておりませんので、ざっくりと聞いているところでいいますと、医療用医薬品というのは長い研究開発の年数を経て世の中に出てまいります。この研究開発のプロセスに乗っかっている製品というのは、大体データ等で、文献等でもって出てきているわけです。ですから、その製品が世の中に出てくるのがいつ頃になりそうか、それが市場規模的にどれぐらい大きくなりそうかという予測的なことは、IQVIAのような会社ではお持ちになられるわけなので、そういう様々なデータを織り込んでいったものが将来予測だということです。
 ここにありますのは過去ですので、先生が今おっしゃいましたとおり、2015年ぐらいまでは、2年、偶数年、奇数年というところで推移しておりますし、そこから先は様々な薬価改定のルールが強化されていく、引下げが抑えられていくということ、あるいは成人病疾患等が特許切れを迎えてくるとか、様々な理由によって2015年以降は抑えられてしまっている。間の年であってもなかなか伸びられていないというようなことかと思います。
○遠藤座長 様々なことを考慮して推計されているというふうに受け止めました。そういうことだということです。三村構成員、いかがでしょう。
○三村構成員 あくまで過去を前提としてということですね。了解しました。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。小黒構成員、どうぞ。
○小黒構成員 ありがとうございます。
 4つの機関からいろいろ示唆に富む提言を頂きまして、ありがとうございます。
 幾つか質問させていただきたいのですけれども、順番によろしいでしょうか。
 まず、くすり未来塾さんのほうなのですけれども、今回は説明されていませんでしたけれども、「医薬品制度改革提言IV」という、2022年9月27日に出されている資料の29ページ目のところと、先ほど説明された54ページのところで少し質問させていただきたいというのが一つございます。個人的には、54ページの提言というのは、財源が「いってこい」なので、要するにαのところで取り過ぎた分をβで返すという仕組みになっているので、財源的にはよく配慮された仕組みであると思いますし、あるべき姿なのかなと思います。
 他方で、29ページ目で気になるのが、調整幅のところが2%になっているというのは、これは前の検討会でも堀委員がなぜ2%なのかと、要は政治決着した結果だと私は思いますが、ここの部分についていろいろ濃淡含めてコントロールしていくということについて、私は賛成なのですけれども、これは財源をどういうふうに調達することを考えていらっしゃるのか伺いたいというのがまず1つです。
 同じ議論なのですけれども、デロイトトーマツさんが提案されていたいろんな新薬創出加算の見直し、これも当然財源が必要になってくると思うので、責任ある立場で議論するということになると、その議論は免れないと思うのですが、その辺どういうふうに考えていらっしゃるのか伺いたいと思います。
 それから、日本医療政策機構の乗竹さんのほうには、私もちょっと関係していましたけれども、AMRは非常に喫緊の課題で何とかしなければいけないと思うのですが、私が知る限り、いろんな関係機関に持っていっても財源の部分とかでうまくできないということになっていると思います。その辺をどう考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
○遠藤座長 最初は薬価流通政策研究会さんへの御質問ですね。よろしくお願いいたします。
○武田氏(くすり未来塾)  御質問ありがとうございます。
 財源の話に入る前に、財政規律という話がございまして、INESさんの資料の中で財務省の資料が引用されて、財政規律がこれで保たれるという話を書いていましたけれども、医療に関して、あらかじめ決めた予算の制度内に全ての経費を収めることが財政規律だというふうに書いてあるように見えますが、これは財政規律の言葉の使い方が間違っているのではないかと思います。
 財政規律というのは「予算でつけた金額以内に全部が収まるという仕組み」という意味ではありません。歳入と歳出のバランスということが念頭に置かれているのだと思いますが、通常、当初予算と実際の歳出との間には一定の乖離が生じます。だからこそ「当初想定されていなかったことについては補正予算が編成されるということになっており、それは制度上認められた話です。医療についての国の歳出は義務的経費ですから、必ず補正で手当てをするということが制度上認められている。それを当初予算で決めた枠の中に収めることが規律だというのは明らかに誤った理解ですし、財務省もそのような意味では言っていないと思います。むしろ我々医療保険財政をやってきた側からすると、私は昔、政管健保の民営化をやりましたけれども、5年間の中期的な財政運営で歳入歳出がバランスするように、短期的には医療費というのは変動するということを前提として制度設計をしてきました。その制度設計後、少なくとも政管健保については一度も保険料率を引き上げせずに今日までやってこれているわけです。
 そういう意味において、その辺はすごい違和感があったということをまず申し上げた上で、財政規律という意味でいうと、αイコールβというのは長期的に見ると財政がバランスするということにおいて、単年度ではありませんけれども、複数年度で見たときに財政にとっては悪影響を与えない制度だと。最初の年についてはメーカーの希望価格を可能な限り認めるということは、業界団体の提言にもありますけれども、第三者評価を認めたらどうかという話がありますが、第三者評価をきっちりやると時間がかかるのです。それから、臨床データがない中で評価をするということについての限界もあります。だけど、それに時間をかけているといつまでたっても日本に新薬が入ってこない。救える患者も救えないということになるので、そういう点も含めて、企業の国際価格ということを前提に、ある程度のプレミアムを認めた上で、リアルワールドデータで再評価をかけるということで、そういう意味でいうと、α、βだけではなくて、プレミアム部分の評価についてもバランスを取ったらどうかというのが私が今日お示ししたものということになります。
 それから、調整幅について2%を引き上げていく場合に財源が必要だけれども、どこで財源を捻出するのかという話がありますが、そこは薬剤費全体で見ると、毎年5000億円くらい薬価を引き下げているので、それを考えると財源がないということはないのではないかということです。それは医療費の中の財源の再配分ということで考えていけばいいのではないか。
 もう一つ、聞かれていないことを付け加えますけれども、薬価差の議論です。後でやるかもしれませんが、薬価差はあって当然とか、調整幅の中で在庫管理コストを見ればいいのだとかいうのは、すごい異論がありますので、後で議論できる機会があればと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、デロイトトーマツさん、お願いいたします。
○木戸氏(DTC) 小黒先生、御質問ありがとうございます。
 まず、弊社からの回答といたしましては、今回、我々御提言している中で、財源を確保する側に働く提言と、財源を使用する側に働く提言がございまして、考え方としてはそこの中でバランスを取るというのが基本的な考え方になります。
 具体的に申し上げましと、提言の1-4、長期収載品の引下げの部分あるいは薬価差の解消、何らかの還元をするというところに関しては財源の確保に働く、それ以外の新薬創出加算の部分やイノベーションの評価のところに関しては財源がかかるほうになります。もちろん個別の金額としてどうなるのかというところは今後の検討が必要という前提ではございますが、トータルとしてはプラスの部分とマイナスの部分で確保していく。つまり、ありていに言ってしまうと、長期収載品の部分からほかの必要なところに財源を回していくというような考え方を取っております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 日本医療政策機構、お願いします。
○乗竹氏(HGPI) 薬剤耐性菌(AMR)に関する新規の抗菌薬のプル型インセンティブに関しては、これは小黒先生にもアドバイザリーボードに入ってくださって意見交換等をさせていただきましたけれども、2021年に政策提言を出しておりまして、プル型インセンティブを、単に薬価引上げのみならず、いろんな多様なオプションが今、世界的に議論されていて、そちらを提案しております。
 1つは、当然、薬価に関する補正加算がありますけれども、それ以外にも収益保証、例えばマーケットエントリーリワードと呼ばれる製造販売承認取得報奨付与指定制度、要するにマーケットにエントリーしたときに関して、そこに対して報奨額をつける、追加でお金を出すというようなやり方とか、特許的に独占期間を延長させること、また、その会社が新規の抗菌薬を作ったときに、ほかの製品に関して承認審査の優先順位を上げるといった、いろんなオプションを提示しております。
 いずれのオプションでも何らかの財源的なインパクトはあるものですけれども、我々の多くの提言を出すに当たっての産業界とのディスカッション、また各当局とのディスカッションをしても、プル型インセンティブに関してはそんなに大きな価格にならないのではないか、つまり国としての予算はそんな大きくならないのではないか、具体的な額は私、頭にありませんけれども、例えば自動車のEVに関する補助だとか、いろんなことに比べると小さな額で収まるのではないかという議論が出ております。
○小黒構成員 ありがとうございます。
 質問した趣旨は、薬剤費が大体10兆円ぐらいですので、財務省は、先ほど武田さんもおっしゃっていましたけれども、財政規律が何かという哲学的な議論はあるのですが、例えば1%の成長率で薬剤費が伸びるということを認めていれば、要は毎年1000億円は新しい財源を捻出できるということになります。私が知っている限り、プル型インセンティブとかでも数百億円なので、十分のみ込める余地があるということではないかと思います。10年間では約1兆円の財源が確保できます。ただ、普通に提言案を持っていったときに私も苦い思いをしましたけれども、財政当局から全く聞く耳を持ってもらえないというような状況であったと認識しています。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 香取構成員、どうぞ。
○香取構成員 ありがとうございます。各団体、大変詳細に示唆に富むご提言をいただいて、とても勉強になりました。ありがとうございました。その上でちょっといくつか、我々がこの検討会で議論してきたこととの関係でご質問したいと思います。
まず新薬に関しては、イノベーションをきちんと評価する、そのために新薬創出加算含め様々な制度改革が必要だというご提案はほぼ共通していたので、新薬に対する考え方は大体我々が中で今まで議論してきたこととほぼ同じ方向性なのではないかというふうに思って少し安心をしました。その上で、各団体にいくつかご質問をしたいんですが、まず薬価流通政策研究会の配布されている方の資料、これはオンラインで参加されている先生方(のお手元の資料とは異なるので)はちょっと恐縮ですけど、この報告の中の28ページで、「提案4 薬価差と財源確保」ということが書かれていて、拝見すると、この間、累次の薬価引き下げを行ったことと医薬分業が進んだことで、今どこで薬価差が発生しているかというと大手の病院、大きい病院ですね、それから大手薬局とチェーン店、あと薬局の共同購入ということで、どなたかの発言もありましたけれども、薬価差の構造がだいぶ変わってきている、として、その上で、処方権と薬価差益の関係というのを整理するという考えに立って、処方権がある人の薬価差益に関しては、薬剤の適正使用の観点からのこれは認めない、基本的には是正をする、となっていて、他方で薬局グループについては、大手チェーンとか薬局、ボランタリーチェーンは8割以上が総価だということからして、そもそも契約形態自体が薬価差追求型になっていることから、この二つは分けて考える、というお考えに立っています。その上で片方は基本的には診療報酬に返す、片方は基本的にはいわゆるクローバックをするとされています。
これはこれで、診療所と薬局の間で議論があるかと思いますが、一つの考え方だと思うんですけども、病院の薬価差については技術料に振り替えると書いてあるんですけども、これ、今までずっとやってきたわけですよね。やってきて、なおかつまだ残っているもの、ということになるんですけども、この技術料の返し方っていうのは、諸外国の例を見ると、病院の入院薬剤費は基本的にはもういわゆる包括報酬の中に入っているわけですよね。他方診療所はほぼ100%医薬分業になっているので、言ってみれば日本で言っている薬価を決めているような薬の取引というのは、ほぼ医薬分業した薬局の薬価ということになっているので、この病院の技術料の引き上げ、病院への返し方は、基本的に包括報酬で返すということになると思うのですけども、ここはこの検討会としては所管外かもしれませんけども、そこはそういうことになるのではないかと思うので、そこの考えをお聞きしたいことが一つです。
それから、INESさんなのですが、いくつか質問があります。15ページやその前にも出ていますが、ミクロとマクロのバランスという話があって、ミクロではイノベーションをきちんと評価する、他方でマクロでは経済成長との調和をとるというふうに書いてあるのですけれども、ずっと伺っていると、どうもこの二つは両立しないような気がするのですよね。それなぜそう思うかというと、医療費は日本が例外なのではなくて、世界中でGDP比を一定以上上回って成長してきているし、これからも成長していく。これは誰に聞いてもそういうふうに言うわけですよね。その中で、財務省さんは明確にGDPの範囲内に医療費を納めるという方針を出しておられています。先ほどの財政規律ということでいえば、そういう前提で予算統制を考えておられるということになるので、INESご提案のミクロのアプローチの政策を積み上げたときに、果たして医薬品の総額がGDPの中に収まるのかどうか疑問ですし、仮にGDPの枠内に収まったとしても、医療費全体をGDPの範囲内に収めるという財務省の大方針政策がある限り、先ほどこの一定Z%を契約で事前合意で成長率を決めるといいますが、この事前合意の成長率がGDPの伸び率で合意できるとは到底思えない、ほぼ現実に考えられない。今でもそうですが、医薬品から削った分のお金は医薬品には返ってきていないし、今や医療費にすら返ってきてないわけですよね。そういう現実を考えると、INESさんは、これはGDPの範囲内までであれば薬剤費の成長を認めているのだ、一定範囲での成長は認めている、そういう趣旨だというふうに財務省のご提案を解釈されていますが、私にはとてもそのようには思えないのですね。現に前の主計官は何と言っているかというと、新薬の年4回収載はけしからんと言っていて、自分たちの手の届かないところで勝手に新薬の値段を決めて収載している。予算統制外でそういうことをしていることが問題なので、新薬の値段を決めるときは、その分だけトータルの医療費を下げて、その財源の範囲内で新薬の値段をつけろ、とまで明言しているわけです。おっしゃるような形でこのZの率がそれなりにリーズナブルな幅が取れるのであれば、そういう議論は成立すると思うのですけれども、とてもそうなるとは思えない。その意味で、この前段と後段、ミクロとマクロというのがご提案の中で、果たして現実に整合的に作られるということになるのだろうか、おっしゃるような成長メカニズム、調整メカニズムというものが果たして機能するのか、私は疑問に思います。さらに言えば、先ほどの三村先生のご質問にもありましたが、23ページに日本のGDPと医薬品市場の関係が出ています。残念ながら日本のGDP成長率は低いわけですから、仮にGDPの範囲内まで認めてもらったとしても、今よりはマシでしょう、というご提案なのでしょうけれども、世界市場から比べれば明らかに見劣りがするわけですよね。もちろん6%とか5%とか伸ばせとまでは言いませんが、グローバルで考えたときに、仮にご提案のような形があったとしても、日本の医薬品市場の魅力というものが多少なりとも良くなるかというと、やっぱりそこはなかなか良くならない。そう考えると、これは乗竹さんもお話しておられましたけれども、そもそも薬価の問題を薬価だけで考えるというのではやっぱり駄目で、医療費全体のパイをどう考えるかとか、さらに言えば負担の問題をどう考えるかとか、そういう議論をすべきなのではないでしょうか。先ほどもうすぐ日本の医療費が何十兆円になるとお話が出ていましたけれども、あれは2.7%成長を前提に置いて計算した名目値ですよね。つまりGDPも2.7%伸びるという計算のもとの数字です。医療費は名目額ではなくGDP比で考えなければいけないのですが、何れにしても医療費はGDPプラスαで伸びていく。それをGDPの範囲内に収めるのだという政策自体、かなり無理筋のことをやっていて、その無理筋の最後のつけが薬価に来ている。そういう今の医療費抑制政策全体の構造の中にINESさんのご提案をはめたときに、どういうメッセージになるかということが私は気になります。ですから、最後の財政審の資料についてのINESさんの解釈と理解がありましたけども、私はこの資料をそういう風に読むことはちょっとできないのですけれども、その点についてご意見を聞かせていただきたい。
それから、ごめんなさい長くなって、デロイトトーマツさんの資料、26ページのところの表なのですけれども、ご提案の意味はよくわかるのですが、今現実に購買側の大きなバイイングパワーによって過大な薬価差がでていますということで、その部分を解消しないといけないということでその部分は国に還元する、というご提案なのですが、現行薬価算定方式を前提に、医療機関側、薬局側の強大なバイイングパワーがあるという前提でこれをやると何が起こるかというと、解消された還元分は必ずこの目安の幅を超えて購入価を下げていくことで取り戻す、という構造が続くわけですよね。現にそうなっているわけですよ。そうすると、そこのところを変えない限り、この形で仮に超過利潤分は国庫に返すということで目安が決まると言っても、それこそこの目安以上は「薬価差を取るな」みたいな規制をかけるとかいうことでもやらない限りは、この仕切価というか、実際の納入価はこれだけまた下がっていく。それがずっと何十年も続いて今に立ち至っているということを考えると、やはり、もしこういう仕組みをするのであれば、基本的に算定の考え方そのものをどうにかすることを考えないと、おっしゃるような形は作れていかないという気がするのですがいかがでしょうか?
 以上です。
○遠藤座長 それでは、順番でお答えいただけますか。薬価流通政策研究会からお願いいたします。
○武田氏(くすり未来塾) 御質問ありがとうございます。
 香取構成員の御質問は、かなり本質に関わる部分であって、どこまでお答えできるか分からない部分もありますけれども、少し順序立てて申しますと、病院に対する支払いは国際的には包括払いが基本です。包括払いが基本であるということは、薬代もその他の治療材料も全て含まれた上での包括払いです。この包括払いをすることによって病院側の医療の効率化インセンティブは高くなりますし、平均在院日数の短縮を評価することによって医療の質も上げることができる。これが日本においてDPCを入れた契機にもなりましたし、それ以後、急性期の質の向上は随分進んだのではないかと思います。
 包括払いにすると、薬価差という問題はないのです。何で薬価差があるかというと、薬価があるからです。薬価があるから薬価差がある。では、何で日本は薬価があって、薬価差がある仕組みにわざわざしているのかということになりますが、一つは日本で医薬分業が進んでいなかったということ、病院が事実上薬を出していたということと、それから薬価を設定して薬価差が生じることによって、病院が価格交渉を一生懸命やれば、交渉後の価格を調べることによって価格引下げができる、というようなことでやってきたわけです。医療機器に関しても基本的には包括払いの中に入っていて、特定のものだけ薬価のような仕組みを入れないと価格が高止まりするというので、わざわざ途中から高止まり防止のために価格差が生じるような体系に移行して現在に至る、こういうことです。
 おっしゃることで薬価差の解消と技術料の引上げというのを提案しておりますが、一つは、そういう構造から考えると、薬価差をなくすというのは、基本的に薬価をなくして包括払いにしてしまえばイコールですけれども、この包括払いとは基本的に薬価差部分が経営の原資になっていることを認識しながら、同じ点数、つまり同じ治療行為に対して全体として同じ報酬を払うということで、これは医療保険にとっては「いってこい」の話なのです。それをやらないのであれば、薬価差を縮小していくのと同時に、ある程度診療報酬の引上げをしていかなければ、医療機関からすると、収入減を賄うため何度薬価を下げてもスライドの引下げを要求するだけなので、これは医薬品の不採算を増大させるだけだと思います。
 したがいまして、方式としては包括払いを推進する、または包括払いにしないのであれば、薬価差を減らしつつ、技術料をどこかの点数で引き上げていくということを同時にやらない限り、流通改革は進まないのだろう、そういうことで考えております。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、INESさん、お願いいたします。
○梅田氏(INES) 一番最初にミクロとマクロのお話をしているわけですけれども、マクロのところでGDPというお話をしておりますので、そこについての御質問を頂いておりますが、最初に代表の朝井が申し上げましたように、決してこれでなければならない、これだけが正しいのだということを申し上げているわけではありません。GDPだけではなく、ほかの要素も考えられるかもしれません。おっしゃるように、いずれの先進国を見ても経済成長以上に医療費は伸びているということであり、そこには高齢化もあれば技術進歩もあるということが言われております。
 しかし、実際のところ、日本はどうかと見てみれば、低い経済成長をさらに下回って、医薬品市場は現在ゼロからマイナスになろうとしているし、ここから先の見通しも非常に厳しいという状況にあります。現在、日本において医薬品に対して別にマクロ的な統制を行っているわけでも何でもなくて、それぞれの新しい薬剤の単価をつけるときにどのレベルにつけるか、あるいは大きくなった製品の薬価をどうするかということとか、あるいは2年に1回の切下げをさらにもっと進めていくというような個別のプログラムがたくさん積み重なった結果がゼロからマイナスの成長になろうとしているわけです、本来であれば、この個別のプログラムに一つ一つ、これではなかなか厳しいのではないかということが議論されて押し返されるというようなことがもし中医協ででもできれば、それはそれで、その結果として医薬品市場全体がどういうふうになっていくかということもあると思いますが、今、なかなかそのような状況にありません。
 また、薬剤だけで議論することは難しくて、医療費全体の効率化とかいうようなこともお話しされていましたけれども、GDP以上に医療費そのものも本来伸びていくところ、診療報酬のほうでも大変厳しい議論がされているわけで、医療全体が議論されれば、薬のここが伸びなければいけないところはほかのところで抑えられるだろうか、この議論もなかなか実際には厳しいものがあるのではないかと思います。
 そこで、私どもとしましては、こうしたイノベーティブな製品がちゃんと評価される価格で世の中に出て、この製品が伸びていける、そうしたことに成功した企業が大きくなっていける、こういうことを担保するためにどうしたらいいかというときに、財政当局としては、どこまで大きくなるかについて一定の予見性が得られるのであれば、その中身については専門のところで議論したらいいのではないかというような意見も出ていると我々は理解しておりまして、今日のような提言をさせていただいております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 考えるヒント、アイデアとして提出されているということで、それを材料にいろいろ考えるということだと思います。
 では、デロイトさん、お願いいたします。
○上西氏(DTC) デロイトの上西と申します。御質問いただきまして、どうもありがとうございます。
 香取先生に御指摘いただいたポイントに関しては、まさにおっしゃるとおりかなと思っております。まず、前提として、今回このような目安幅あるいは薬価差の解釈を取らせていただいた背景を少しだけ補足させていただきます。この議論全体を通じてございますように、薬価と流通というところは切り離しが非常に難しいと考えておりますので、そうしたときに、流通改善ガイドラインでうたわれていることとしては、薬価差あるいは納入価格だけではなくて、仕切りの部分、最終原価のところも含めて、流通に関する価格については全てのプレーヤーの皆さんを含めて透明性を高めていくことが非常に大事だということを我々も痛感しているところでございます。そうしたときに、流通の構造全体を見たときに薬価差益はどうあるべきかという観点で、流通上のコストあるいはリスクというような一貫した考え方でまず御説明させていただいたというところでございます。
 香取先生から頂いた御質問に戻りますと、おっしゃるとおり、目安幅というものを設けたときに、結果として改定に反映していく際に薬価がかなり下がってしまうという御懸念はあると我々も思っております。先ほどの御説明の中であえて割愛していたのですけれども、資料の49ページに参考の資料を1枚入れておりまして、実勢価格と薬価改定をそもそも切り離すという考え方も一つのアイデアではないかということを御説明しています。これはもちろん全てのカテゴリーではなくて、収載品あるいはジェネリックに関しては、これまで御議論にありましたように、まず単品単価は非常に難しいと思います。結果として総価で取引がなされているということでありますと、今の状態そのものが個別の価格を決める上で適切な状況にはないのではないかと捉えました。この目安幅を設けたときに、それをそのまま何らかの形で改定につなげるということではなくて、例えば収載品やジェネリックに関しては、スライドの後半に書いておりますように、製品の原価に影響を与えるようなあるいは与えるべき要素が何なのかというところを改めて検討の俎上にあげて、例えば競争環境や製造の総量が原価に跳ね返ってくるところでございますので、こういったポイントであえて改定と切り離しをしてみることも一つのアイデアではないかと考えております。当然、この件に関してはフィージビリティーを含めてまだまだ検討の余地があると思うのですけれども、一つのアイデアとして御説明させていただければと考えております。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 御質問はこれで全てでよろしかったですか。香取構成員、何かコメントありますか。お願いいたします。
○香取構成員 はい。ありがとうございました。
 実はこの目安幅というのは、調整幅とどういう関係になるのだろうかというのがちょっと気になったのですけれど、そこまで詰めたお話ではないということだと思います。やはりちょっと私の印象は繰り返しになりますけれども、これはもうINESさんも含めて新薬に関する議論というのはかなりもうコンセンサスが取れているのではないかと。やはりその既存の医薬品の収載をどうするかという話と流通との関係、そして値決め、そこのところがやっぱりどうしてもなかなか議論が詰まっていかないところかなというか、これからちょっとやらなきゃいけない難しいところかなと思いました。
○遠藤座長 新薬のほうで方針がといいますが、細部になればまだまだ。
○香取構成員 各論はいろいろありますが、大きい方針としてはということだと思います。
○遠藤座長 ドラッグ・ラグの縮小とか、そういうような議論は当然あると思いますけれども、ありがとうございます。
 それでは、坂巻構成員、お願いいたします。
○坂巻構成員 改めまして、4団体には非常に勉強になるプレゼンテーション、ありがとうございました。
 スライド一つ一つに質問したいところがありますけれども、時間の関係がありますので、3つほど質問していきたいと思います。
 INESさんに質問させていただきたいと思います。マクロキャップ制はやめてしまったのかなと、賛否両論あるということで、この中ではかなり批判的な意見が多いとは思っていますが、そうはいっても、諸外国、特にヨーロッパを見ますと、何らかの形で予算制約をしている国はあると思います。例えばフランスは国会で毎年の予算を決めていますし、薬剤のところがどのくらい規制されているか分かりませんが。あるいはイタリアなども州ごと、少し違うところでは、ドイツですと、これも地域ごとですけれども、保険医一人一人が薬剤の予算制という形の仕組みもあります。お聞きしたいのは、こういった海外の予算統制の国々を見て、それらが医薬品市場にどういう影響を与えたのか、そこをどう分析した上で、取り下げられたかもしれませんけれども、キャップ制の御提案をされたのかというのが1つ目の質問です。
 2つ目は、デロイトトーマツさんにお聞きしたいのですけれども、資料の17ページ、後発品の安定供給に向けて、A、B、Cの御提案があるわけです。非常に統制的な、簡単に言えば、ここまでやるのだったらジェネリック企業を全部国営化したらいいのではないかみたいな御提案ですけれども、先週のこの会のときにも、私、ジェネリック薬品の今の問題に関しては全て薬価の問題なのかということを申し上げて、座長からたしなめられたこともありましたが、今の状態はかなり異常な状態であると思うのです。ただ、いずれは正常な状態になってもらいたい部分がありますけれども、海外のジェネリック医薬品の価格政策の議論の中でも、そもそもジェネリック医薬品はどうあるべきなのか。
 例えば16ページで解決の方向性の問題点として、例えば製造コスト低減の誘引だとか、多品種少量生産とかありますけれども、実はこれは海外を見ると当たり前の話です。ジェネリック医薬品のコストを低減するために、連続生産の技術を導入したり、あるいは医薬品だけではなくて市場全体の嗜好が非常に多様化している中で、どうしても多品種少量になるわけです。こういう諸外国の状況の中で日本だけがこういった仕組みを導入することで、そもそもこの提案の中で日本のジェネリック産業をどのような方向に持っていきたいと考えた上で提案しているのかということを聞きたいと思います。
 3つ目は、皆様方からも既に発言がありますように、大体カテゴリー別の議論というのがあります。特に新薬、イノベーティブな新薬に関してはきちんとイノベーション評価をしましょうというところは皆さん同じ認識なのだろうと思います。その中で若干違うと思うのは、イノベーション評価のプロセスにおいて、くすり未来塾さんは企業の届出制度という提案をされている。デロイトトーマツさんは、企業の提案ではありますけれども、評価依頼という形で、どういったものを根拠として出しているかということが示されています。
 くすり未来塾さんにお聞きしたいのは、企業はどういう根拠で値段をつけたのかということを示さずに、全く白紙で値段を決めてしまうのだろうか、あるいはその後にもう一度再評価するにしても、そこでまたデータを出すわけですね。結果的に値段が下がるとすれば、現在の再算定の仕組みとどう違うのだろうか、やはり不透明性が生まれてしまうのではないかということを懸念します。3つ目は技術的な質問になりますけれども、くすり未来塾さんのほうからお答えいただきたいと思います。
 以上、3つです。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、INESさんからお願いいたします。
○梅田氏(INES) ありがとうございました。
 先生のおかげで私どもがお話ししたことが誤解されていたかもしれないというのに気づきました。マクロキャップ制は諦められたかとおっしゃいましたけれども、私どもの提案の中のミクロ、マクロとあって、マクロの分は上から押さえつけるようなものとして、全体のアイデアをそこのところだけ取り上げられていろいろと議論されたということについて申し上げたことであります。私どもは、ミクロのところの改定を進めていかなければいけないけれども、では全体市場がいくら増えてもいいのかという議論はあるわけで、そのことに対してマクロの提言もしているということです。そこのところだけ取り上げられたことに対して反省というか、誤解を受けたというふうに申し上げたということです。
 その上で、諸外国においても予算制約を盛り込んでいるところもあるというお話でしたけれども、そうした状況を踏まえても、現在の日本の医薬品の市場のトータルの状況、過去数年、それから、ここから先の予測を見ると、非常に厳しい状況にあります。今まだ日本にそのようなマクロ的なものは何も入っていなくても非常に厳しい状況にあることは事実で、データは様々あると思います。私の最近見たところでは、特に製薬協、政策研さんの出されているレポートの中で、日本の医薬品市場が、世界のトータルの中のシェアが過去どれぐらい縮まってきたかというもの、あるいは日本の製薬企業はもちろん日本だけでなく海外でも活動して販売されているわけですが、日本の製薬企業の売上げを合計したとき、それが世界の製薬企業の売上げの中でどういうふうにシェアが縮まってきているかというような報告をされています。顕著に落ち込んできています。これを見ると、昔を知る人、10年前、20年前を知る人にとってみると、今の厳しい状況というのは間違いなくあると思います。ですので、何とかミクロのところを改革していかなければいけないというところです。
 もう一点追加で申し上げたいのはGDPのことなのですけれども、GDPに沿わせることがどうかという議論があるわけです。医薬品の市場は完全に公的な市場ですので、税がどれだけあるかということ、保険料をどれだけ入れられるかということ等になるわけですが、国として様々お金を使っていかなければいけない中で、医療とか医薬品にたくさん使いたい、いや、あまり使いたくない、これはある意味、それぞれの国民の選択だと思うのです。お金を使う様々な分野があっても、日本国民、日本政府は医療や医薬品にもっとお金を使いたいというのだったら、それはそれで一つのアイデアであり、考え方であり、それがGDPを上回ってもいいと、むしろそういう国であってほしいと思うのですけれども、現在の日本の高齢化や国の財政赤字を考えたときに、一つのアイデアとしてGDP、そこから得られる税収ということを考えざるを得ないだろうというのがあって、このような提言になっているということです。諸外国と全く同じ状況にあるとは言えない、そういう厳しい選択肢の中でいかに新薬を育てていけるかという難しい議論をしなければいけなくなっていることを御理解いただけたらと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 では、デロイトさん、お願いします。
○木戸氏(DTC) 坂巻先生、御質問ありがとうございます。
 まず、最初に御質問いただきました今後ジェネリック業界がどういう形になることを想定しているのかということに関して、量的な観点と質的な観点から御説明させていただきますと、企業数を含めた量的な観点からいきますと、数としては、海外でも同様の状況だと思いますけれども、少なくなっていくというところが一つの方向性だと理解しております。
 質的な観点に関しては、これまでも議論がありましたが、ジェネリックの業界ビジョンというところでも語られているような、ある種、大手の多品目を製造しているようなメーカーを中心として、加えて専業メーカーと呼ばれる特殊な製剤技術が必要になってくる製品を作るような企業、そういった役割分担の中で全体としての後発品の提供が行われていくというようなところが将来的に目指していく方向だと考えています。
 そこに至る背景として、先生たちには釈迦に説法になってしまいますけれども、ジェネリックの促進をしていく過程の中で、できる限り多くのプレーヤーの後押しをしつつ、かつ先発品の新薬のメーカーも含めてジェネリックに参入していただいて、後発品の業界自体、後発品の使用促進自体を進めてきたという背景が質的もしくは量的にこういった状況の背景になっていると理解しております。
 ですので、ある種、ジェネリックとしてのステージが変わってきている中で、今後は先ほど申し上げたように数としては集約していく方向、役割分担としては明確にしていく方向というのが我々が御提言している前提の業界に対する見通しになっております。
○遠藤座長 坂巻構成員、よろしいですか。
○坂巻構成員 個人的な見解の相違もあるかと思いますけれども、半国営的なこういった政策で果たしてジェネリック産業が競争力を高めることができるのか、競争力は別に値段だけの競争力ではなくて製造能力とかも含めてなので、私は異論を感じるところであります。
○遠藤座長 ほかにいかがですか。武田さん、どうぞ。
○武田氏(くすり未来塾) 坂巻さんからくすり未来塾に対しても御質問がありました。届出価格というけれども、企業はどうやってやるのか、勝手につけるのかというようなお話と、かえって不透明性が高まるのではないかという御指摘がありましたけれども、基本的にはこれは企業に説明責任を求める仕組みだと私は理解しております。企業に説明責任を求める場としては、厚生労働省の中医協がずっと薬価をやっていますので、少なくとも中医協に対してこの価格の根拠は会社が説明すべきだと思います。
 その上で、最初の話に戻りますが、日本の市場を国際的にオープンにするものと考え、各社の企業戦略を考えると、日本だけ高い値段をつけるという企業説明は恐らくできないと思うので、アメリカを除く国際的な平均価格を選択する企業が多いのではないかと想定されます。今は移転価格が不透明だとかいって、たたかれているのですけれども、国際価格という観点からは、そんなに企業的におかしな価格にならないだろうし、それをちゃんと説明してもらえばいいのではないかと思います。
 それから、リアルワールドデータで再評価をかけるというのは、治験の段階でやったものプラスアルファで臨床の評価を説明してもらえば、制度的には何年間かたったら自動的に下がるということを見込んだ上で、下がるときに下げ幅を圧縮するためにデータを使ってもらうということが考えられるし、これまでの薬価制度でもそういうことが議論されてきたことではないかと思います。
 それから、追加で申し訳ないのですが、ジェネリックの話です。民間シンクタンクのほうから国管理的な提案が出てくるのは面白いと思っているのですが、民間の側から見ますと、やはり再編が進んで企業が大規模化していくというのが望ましいのですけれども、そのときに、ファンドとか資本が入って再編して企業の価値を上げるというのが必須になってきます。今のジェネリック産業は幾ら規模を大きくしても何をやっても薬価はひたすら下がるばかりだし、新製品をつくっても上がらないので、ある意味、企業が再編して大規模化して質を上げたときに、その企業が後発品であっても自由に価格をつけることができるようにするとか、そういうことを考えないと民間の発想としては再編が進まない、そういうことがあるのではないかと思いましたので、付け加えさせていただきました。
○遠藤座長 追加でありがとうございました。
 では、菅原構成員、どうぞ。
○菅原構成員 ありがとうございます。4社の方に御説明いただきまして、新たに参考になるような資料がたくさん出てまいりました。ありがとうございました。
 1つ目、これは私の個人的な意見なのですけれども、これから先の医薬品市場の見通しについて幾つか懸念が出ていたと思います。やはり医療費の中での薬剤費というのがあって、薬剤費の割合は割と一定になっています。これから先、高齢化が進んでいく中で医療費は当然増えるだろうという話があって、その中でいえば、GDPを上回るような割合で医療費も薬剤費を増えるのではないかという当然の前提のような話があるかと思います。
 一方で、ほかの国に比べて我が国は世界の中でも高齢化のフロントランナーで、我々の高齢化要因と人口減少要因を複合して考えますと、これは経済財政諮問会議で厚労省の資料を基として出されているものですけれども、既に2030年から2035年には医療費の増加要因として、つまり人口構造の変化が医療費に及ぼす影響要因としてはゼロになる。要するに、医療費の増加が止まるような要因がかなり大きくなってくる。また、日本医師会自身が将来的な医療需要、介護需要のデータベースをつくって出しているわけですけれども、これは実際に見ていただけるのですが、日本医師会の地域医療情報システムを見ていただくと、既に医師会自身、サプライヤー自身の推計として、2025年推計、2030年推計と、推計上ほとんど横ばいからダウンに入っているのです。すなわち、単純なコストの話とは違いますけれども、医療需要そのものが地域によって既にダウントレンドに入り始めているという現状を考えると、これまでのように一律に医療費がこれから伸びていって、さらにその中での薬剤費も伸び続けるという前提も少し怪しい。
 私、医療保険部会にも出ているのですけれども、医療保険部会は今、医療費適正化計画の次期計画の検討をやっていますが、過去の5年間の医療費の伸びを見て、そもそも想定しているものの医療費に全然達していないのです。毎回、医療費の予想というのは大体高めについていて、昔よりは大分適正化されていますけれども、ほとんど適正化計画が進まない中でも十分達成されるような医療費の水準にしかなっていないのです。これから先の日本の医療の姿あるいは薬剤市場の姿をきちんと共通見解として我々が持たなければいけませんので、これから先どういった割合で薬剤費が伸びていくのかについては、きちんと事務局を含めて、皆さんの見通しのコンセンサスを得たほうがいいのではないかというのが第1点目でございます。
 幾つか個別によろしいでしょうか。まず、くすり未来塾さんの話で、実は今日いろいろと資料の中でお聞きしたいことがあったのですけれども、説明の中に入っていなかったので、大変申し訳ないのですけれども、大変貴重な資料として流通における不採算の状況というのが資料の中に含まれていたと思います。これを見て簡単に言いますと、医薬品の中にも基礎的医薬品や安定確保医薬品の中に非常に多くの不採算品目があったり、あるいは地域によってかなり不採算の状況にばらつきがあるということが明確になっていたかと思います。非常に貴重なというか、実態を示すすばらしい資料だと思いました。
 それを踏まえまして、このような状況を改善する方策として、制度全体として、今、2%の調整幅が総枠としてはまっているわけですけれども、これをどうするかという議論があるわけです。一方で、このように不採算の状況がばらつく中で、これに対する手当て、例えば公定マージンのやり方だとか、要するに特定品目、こういうところに対して手当てをするとか、そういうやり方があり得るものなのか、そういうお考えがなされているのか、そういうことは全く想定なしに全体としてマージンの中で調整すべきだというお考えなのか、安定確保に関する考え方についてのお考えを伺えればと思います。
 それから、トーマツさんに関してですけれども、先ほどの坂巻先生の御質問とも関わるところですが、イノベーション評価で、収載後、例えば医療機器で入っているチャレンジ申請に近いような形で薬価の再評価をしてはというような御提案だったと思います。また、くすり未来塾さんは、入れたものを事後的に再評価するという形で、これはどちらかというと、書きぶりからすると、入ったものについては全て再評価する、デフォルトで再評価するやり方なのかとも読めたのですが、トーマツさんのは基本的には希望すれば再評価ができるという仕組みを入れたいということなのでしょうか。そこら辺の両者がどういうお考えなのかという確認と、さらに再評価した場合には当然下げ得るというか、悪かった場合には価格が下がるような可能性も当然考慮した上での制度設計なのか、これは両者に確認させてください。
 それから、日本医療政策機構の御発表に関しましては、資料の12枚目だったと思いますが、これからの制度を考えるに当たっては、国民や患者・当事者の意識はどのようにお考えかというのは非常に大事な話だと私自身も思っています。意識調査の中で非常に面白いと思ったのは、4番目、イノベーションについて、患者数は少ないが、重症な疾患の治療に寄与する医薬品・医療機器の開発より、患者数が多い疾患の治療の全体的な質を向上させる医薬品・医療機器の開発に期待が表明されたというような記述がございます。我が国の今の医薬品の開発に関するインセンティブのつけ方に関しましては、当然、治療の選択肢がない、あるいは希少疾患、オーファンなどに要望として開発を促すというようなインセンティブをつけております。この御意見でいうと、多くの国民は、そういうものももちろん大事ではあるけれども、もう少し患者数が多くて、治療の全体的な質の向上を目指すようなものを評価すべきだときちっと表明されているという意見がある中で、これからの、例えば今回の場合では医薬品の開発のインセンティブのつけ方ですけれども、もう少し別のやり方があるのかどうか、その辺り、もしお考えがあればお聞かせいただければと思います。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、薬価流通政策研究会からお願いいたします。
○武田氏(くすり未来塾) 御質問ありがとうございます。
 まず最初に、流通不採算になっているものについての扱いということで、今までの考え方は、特定のものについてはメーカーからヒアリングをやって、引上げの措置を講じるということですが、これが不徹底かつ不十分ということを申し上げました。本当に安定供給が必要だということであれば、まず企業の不採算項目だけではなくて、それに上乗せして流通の不採算分をまず引き上げなければいけない。その上で流通改革をセットでやって、国が定めた不採算割れしない価格水準を下回るような受注は基本的にはしないということを国のガイドライン上決める必要があると思います。何でそういうことができるのかと言われるかもしれませんけれども、入札の場合も最低落札価格が設定されますので、似たような構造ではないか。そこを変えないと、幾ら上げても、また来年から下がり始める。これまで何度もそういうことをやってきたので、そういうことが必要ではないか、これこそ薬価と流通をセットで考えるということではないかと思っております。
 それから、もう一つ、チャレンジ申請みたいなものは、私どももチャレンジ申請を念頭に置きながら考えたのですけれども、基本的には企業が申請するプレミアム加算を最初の段階で認めておいて、それが本当に臨床上評価され得るものであったかどうかを事後的に評価するという形が一つは考えられると思います。これは制度設計の段階で御議論していただければいいのではないかと思います。
 それから、聞かれていないことで一点だけ、申し訳ございません。長期収載品を財源にできるのではないかみたいな話が前にあったと思いますけれども、価格で全てを調整する、これはとても副作用が大きいので、価格を大事にしながら、本当に医療保険上出せないということであれば、保険から外す、患者負担をどうするか、そういう議論に踏み込まざるを得ないと思っておりますので、付け加えさせていただきます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、デロイトさん、お願いいたします。
○木戸氏(DTC) 菅原先生、御質問ありがとうございます。
 まず、御質問いただいた、全ての品目なのか、希望する品目なのかというところは、既にあったかと思いますが、希望する一部の品目ということを想定しております。現状でも真の有用性加算ということで上市後のエビデンスに基づいた評価というようなところは仕組みとして入っておりますけれども、それの予見性をより高めていくというような部分もこの提言の中には含まれております。上市の時点で、今後こういうエビデンスの収集を予定している、仮にエビデンスが想定どおり取られた場合にどれぐらいの加算が見込めるのかというところをある程度事前に認識を共有しておく、それによって予見性を一定高めるということが我々が御提案している趣旨の一つでございます。
 もう一点、減算もあるのかどうかというところ、こちらも減算はあると考えております。資料の10ページに書いていますが、エビデンスが予定どおりの安全性・有効性が得られるかどうかは結果を見てみないと分からない部分がございます。ですので、その結果を踏まえて、例えば当初何らかの形でついていた加算の部分やエビデンスの提出によって付与されていた部分が減算されるということも結果によってはあり得るという考えです。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 では、政策機構、お願いいたします。
○乗竹氏(HGPI) ありがとうございます。定量的な調査と質的な調査の組合せの結果なのですけれども、我々、このデータを出すかどうか、非常に苦慮しました。つまり、当然のことながら、ボリュームが大きい人たちの返答という意味では、自分がもしかしたら病気になるかもしれないような、そういうところにこれからイノベーションを手厚く起こしてほしいという答えが出てくるのは当たり前と言えば当たり前でして、一方で、重症もしくは重篤な疾患を経験された患者さんへのフォーカスグループインタビューを追加的に実施したところ、彼らにしてみれば、そういった本当に命を救うようなイノベーションに寄与するようなものを提供してほしいという答えがあって、我々がずっと言っている国民・患者目線での医療政策の実現というところの根本的な課題なのですけれども、患者・国民の代表性の問題だと思っていまして、我々はいろんなディスカッションの中で、かなりイノベーティブな薬剤によって命を救われた当事者リーダーの方のお話をついつい聞きがちだと思います。これ自体、別に間違ったことではなくて重要だと思いますけれども、一方で、国民全体としてどういう声があるかというところも出したほうがいいという視点に基づいてこれを出しております。解釈は意見が分かれるところではないかと思っております。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。
 それでは、産業構造関係をお聞きしたいと思いますので、井上構成員、芦田構成員の順番で、またこちらに戻ってきたいと思います。
○井上構成員 どうもありがとうございました。4社の方の御報告は大変参考になりまして、勉強になりました。
 産業構造ということなので、2点、産業構造について御質問したいと思います。
 1点目、デロイトさんへの質問になるのですけれども、産業構造を変えるA、B、C、3つあって、Aが品目別供給指定、Bがアライアンス加算、Cが安定供給支援みたいな形だと思います。多分、一般的に企業が統合するのは自動車産業など見ていてもAが多い。ただ、この産業は全体に小さく細かく分別化しているので、どこかの会社がリーダーシップをとって、生産者や卸に一定の供給要件を求めてそこで集合していくということはないのではないかという気がしています。Aを政府がやるということであれば確かに出来るでしょうが、なかなか実現性が難しいのではないか。Bのアライアンス加算というのは、特に企業のトランザクションコストを長期に変えるものでないので、一般的にはあまりそうしたものが企業にとっての産業再編のインセンティブにならないのではないかと考えます。Cの安定供給支援をすれば、もはや産業構造を変えようという企業のインセンティブはなくなるというお話で、どれを聞いてもあまり動かないのではないかという印象があります。考えられる選択肢は、Aのところを行政的に指定するのではなくて、もう少し企業自身に産業再編のインセンティブを与えるような施策があるのではないかと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。安定供給が課題であるのですから、安定供給に向けた各社に求める要件を行政的に高めていくみたいな形にすると、そうした必要条件にコスト面やリソース不足で対応できない業者は自らそれを獲得するために統合相手を探すということがあるのではないかと思います。そのほうが企業に対するより強いインセンティブづけにもなるし、企業の取引コストを長期的に変えることで統合運動が起きるような方向になるのではないかと思いますが、その辺はいかがかというのが1点目の質問でございます。
 2点目が日本医療政策機構さんへの質問です。14ページは、バイオベンチャー育成に向けた国家戦略ということです。バイオベンチャーをいかに生かしていくかというのはこの検討会でも何度か出てきています。1番目と3番目はどちらかというと国横断的な話ということで、3番目も国内の製薬メーカー等の参加ということですけれども、2番目は海外とのアライアンス、海外を呼び込んでということも主張されています。私も理工系大学でイノベーション創出を考えていますが、当該業界においてベンチャーのクラスター(集積)が国内にあるのかどうかというのは非常に重要で、我々も何かイノベーションを起こそうとするときは、そのイノベーションのクラスターのインサイドサークルに入らないとそもそも厳しい。特にベンチャーのところは、自分たちが失敗したときに再度挑戦できるということが重要です。クラスターが形成されていれば、隣にいっぱい魅力的なベンチャーがあって、そこに再就職できるような仕組みがあるから失敗もできる。一方で、失敗したら大企業にもう一回受け入れてもらいましょうということだけが選択肢ではなかなか夢がない。ベンチャーのネットワーク、そうしたクラスターをつくっていくというのが非常に重要で、その意味ではこうした海外のベンチャーやイノベーターを呼び込んでいくというのは非常に重要だと思います。一方で、海外企業にとって日本に入ってくるときのベネフィットは何なのか。来てくださいというだけで入ってきてくれるほど甘くなくて、そこのベネフィットはどうお考えになっているのかというのが、海外のベンチャーも呼び込んで国内でもバイオベンチャーを育成していくアイデアへの質問です。やはり医療、また製薬、そうしたところへのアクセスを本格的に認めていって、海外企業の期待感を上げていかないと、日本は少子高齢化が進んでいて一番魅力的な国といっても、マーケットが実質的に閉じていれば、彼らにとって入ってくるインセンティブはないと思います。その辺がどうかというのが2つ目の質問です。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 それでは、デロイトさんからお願いいたします。
○木戸氏(DTC) 井上先生、御質問どうもありがとうございます。
 A、B、Cの施策が統合をより促進させるようなことになっているのかどうかという御質問だと理解しております。おっしゃるとおり、これだけで必ずしも統合が進むのかというところに関しては、これに加えて追加的な政策も必要だと考えております。今おっしゃっていただいたところでいきますと、よりそれを促進するための施策ということで先生から例として挙げていただいた安定供給上の何らかの制限をかけるというのも一つおっしゃるとおりかなと思いますが、それ以外に検討しているところとしましては、品質面の部分です。もちろん薬事承認上品質が満たされていることは大前提ですけれども、GMPの適合検査等々をより厳しく行っていくことで、そこから逸脱している企業はもはや営業を継続することができないという部分等々によって統合するインセンティブをより高めていくということも併せて必要になるかと考えております。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 では、政策機構さん、お願いいたします。
○乗竹氏(HGPI) ありがとうございます。
 この点、我々はヒアリング調査を中心にフェーズを0から5に分けて検討しております。フェーズ0のところは国等による公的な育成支援施策の状況というところで、ここも後れを取っている。フェーズ1は、いわゆる生態系といいますか、エコシステムの構築や体制整備に関する課題で、例えば大学間同士の連携、不動産業者同士の連携、そういう同業種の中の連携がなかなか進んでいないのではないかという点、フェーズ2として、事業化前における課題として、グローバル製薬企業が求めるニーズの把握が不足している、もしくは新規モダリティーへの必要性を理解し切れていないといった点も指摘しております。フェーズ3が事業化初期VCに関する課題として、経営人材の不足や、先ほど御指摘のとおり、失敗してももう一回そこにチャレンジできる環境整備というところがそろっていないのではないか。フェーズ4がVCから機関投資家に関連する課題で、治験フェーズでの、例えばCROごとのパフォーマンスがどういうふうにデータで集約されていくか、それを基にCROが品質管理の取組ができるような環境を整備していく、こういうところも欠けているのではないか。フェーズ5、これも御指摘のとおりなのですけれども、M&Aや上場に関する課題として、マーケットの小ささ及びバリエーションの小ささが非常に課題になっているのではないかという課題も挙げられていまして、後ほどお送りさせていただければと思っております。
○遠藤座長 井上構成員、よろしいでしょうか。いかがでしょう。
○井上構成員 今のベンチャーの育成の点は、全部不足していますということかと思いますが、そうすると提言のどこから本格的に手を付けていくのかということがもう一つ定まっていないのかなというところで受け止めさせていただきました。ありがとうございます。
○遠藤座長 お待たせしました。芦田構成員、お願いいたします。
○芦田構成員 4団体の皆様、大変示唆に富む御提言をお話しいただきまして、ありがとうございました。
 新薬の導入について質問がありまして、くすり未来塾さんに御質問させていただきます。今日の発表資料の10ページに、新薬創出加算に関連してだと思いますけれども、スタートアップ企業を評価する仕組みに転換というお話がありました。これは御説明の中にもありましたけれども、海外のスタートアップ、例えばアメリカのスタートアップがアメリカで開発し、承認を取得するけれども、日本では開発、承認を取得するということはしない。その原因の大きな要因の一つとして日本の新薬創出加算の企業要件があるのではないかという御説明だったと理解しております。私も新薬創出加算の導入の経緯については少なからず存じ上げていますので、企業要件が入っているということは理解しておりますが、そもそも新薬の加算をするときになぜ企業要件が必要なのかというところは違和感がありまして、むしろそういったものがないほうがいいのではないかと思っているぐらいではあります。海外のスタートアップが日本での開発を促進するにはそういった薬価で何か仕組みをつくるよりも、むしろ治験環境の整備や薬事申請上の環境整備、そういったことも必要なのではないかと思っていたところであります。
 質問なのですけれども、ここに書かれておりますようなスタートアップ企業を評価する仕組みに転換であるとか、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロス解消への努力を評価すべきというのは、具体的にどのような仕組みへの転換ということをお考えでしょうか。
○遠藤座長 お願いします。
○武田氏(くすり未来塾) 御質問、ありがとうございます。
 スタートアップ企業の中でも、ドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグ解消に資するような製品については企業要件を課さないというのが一つあると思いますが、そもそもおっしゃるように一つ一つの製品について行政が判断するというのを要件でかませていいのかどうかというのがありますので、くすり未来塾の基本的スタンスとしては、企業要件はないほうがいいというようなスタンスでございます。
○遠藤座長 芦田構成員、どうぞ。よろしいですか。
○芦田構成員 結構です。
○遠藤座長 それでは、三浦構成員、お願いいたします。
○三浦構成員 4団体の皆さん、大部の資料をお作りいただき、御説明ありがとうございました。
 一点だけ、薬価差についてお聞きしたいのですけれども、薬価差につきましては、デロイトさんがうまくまとめていただいたように、私も基本的に小売りマージンと思っておりまして、在庫費用は、プロモーション費用はないわけですから、課題かもしれないのでどうするかという話で、目安幅というのをおつくりいただき、それ以外は還元というお話がありました。香取先生がおっしゃるように、目安幅みたいなものが残ると現在の薬価算定方式だと毎年下がるわけですから、その辺をどうするかという話に関しては一つの御意見、アイデアとして、ありがとうございました。
 くすり未来塾さんにお聞きしたいのですけれども、先ほど病院の話はお聞きしたのですが、薬局に関しては、余剰成果に関しては大部分を国に還元という話がありまして、大部分と書いてあるので、ちょっとは残るのかなみたいなところもあります。薬価差については御議論がございますとお話もされていましたので、薬局が目安幅みたいなものがあるのか、ただ、ほとんどそれはなくしてやるのか、その辺りの御意見をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 では、くすり未来塾さん、お願いいたします。
○武田氏(くすり未来塾) ありがとうございます。
 薬局の評価と医療機関の評価をなぜ変えるのかと考える方もいらっしゃると思うのですが、そもそも医療機関への報酬は、治療というものを価値と考えて、相対的に包括で払うというふうにさっき申し上げました。その中から薬を外出しして単価をつくっていくかというのは、保険として制度設計的な問題としてある。ところが、薬局に関して、薬剤費を包括して薬局に払うというのがあり得るかというと、やはりそれは考えにくいし、そんな国はないわけです。そうするとどうなっているかといいますと、物の価格と薬剤師の技術料を合わせて考える。そして、患者に対する請求額をフリーにして、安く買ったら安く患者に売るというようなことで、一物一価ではないということを認めるというふうなパターンと、それから、公定マージンを認めるけれども、そこに交渉力で差が出るので、余剰分は医療保険に返してもらうというようなクローバック方式が世界ではあるということだと理解しております。
 くすり未来塾はどれくらい返してもらうかということについては、実は一貫した表現を使っておりません。最初は「過半」と書いたのですが、次に「大部分」と書いていて、皆さんの意見がどの辺にあるのだろうというのをこれから議論していただければよろしいかと思っております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 三浦構成員、よろしいですか。
○三浦構成員 ありがとうございました。
○遠藤座長 では、成川構成員は初めてなので、成川構成員、小黒構成員の順番でお願いします。
○成川構成員 ありがとうございます。時間が押しているので、簡単に1つだけ質問させてください。
 4団体の皆さん、種々の分析、御提言ありがとうございました。大変参考になりました。
 あまり議論になっていなかった新薬の値づけのところの質問を1つだけしたいのですけれども、特に薬価流通政策研究会、INESの方々ですが、要するに、第3のルールを御提言いただいたと理解しています。ふわっと理解できたのですけれども、そこの理解を深めたいと思っていて、一つは、内部的にこういう検討をされたときにどのような品目を念頭に議論されたのか、言い方を変えると、数年に1回ぐらい出てくるような品目なのか、あるいは1年に数品目とか、もっと出てくるようなものなのか、その辺の感覚を教えていただきたいというのが一つです。
 もう一つは、薬の持つ様々な価値を価格に反映すべきというのは私も同感でありまして、いろんな方法を考えていきたいと思っているのですが、価値をどう測るかというところですね。たとえ、測れたとしても、測った価値を金銭にどう換算するかというのはそう容易ではないという感覚を持っています。しかも、企業に立証責任を負わせるとなると一体どうしたらいいのだろうという質問です。
 ある薬が出て、医療費とか介護費が下がるとか、あるいは労働生産性が上がるとかというのはとてもよいことで、それを価格に反映したいという気持ちはあるのですが、実際にそのようなことが分かるのは世に出てから大分たった後の話でありまして、それを最初の値づけでやろうと思うと、恐らくそんなにロバストでないモデルに基づいたシミュレーションをするとか、それぐらいしか想定できないというのが一つです。
 もう一つは、アメリカは知りませんけれども、特にヨーロッパの国々で一体どうやって価格をつけているかというと、私の理解ではほとんどのものが類似の薬とか、それをもっと広げて類似の治療法とか、あるいはそれを組み合わせたりして、それを積み上げて、さらには外国価格を参考にしてベースの価格をつくって、そこに多面的な評価の指標を入れて少し上げ下げをするとか、そんな理解をしています。例えばQOLの向上とか、介護費が減るとか、そういったものを積み上げて本当に価格のベースが積み上がるのかどうかというのがまだ分かっていないので、その辺り、具体的なお考えを教えていただけないかというのが質問です。
 以上です。
○遠藤座長 2つの組織両方に、まず、くすり未来塾からお願いいたします。
○武田氏(くすり未来塾) ありがとうございます。
 第3のルールをつくって企業から提案してもらう、企業の説明責任は今まで一切なかったので、企業がちゃんと価格を説明するという仕組みに転換したらいいだろう、ということで、そこから先の細かい制度設計をしているわけではありませんが、基本的考え方としては、今おっしゃったような欧米、特にヨーロッパにおける価格の値づけがそうやってなされているということが実態であろうと思いますし、日本においてもそういう説明がされるのだろうということが一番想定されます。
 その上で、どうやって計算するのかが分からないという話がありましたけれども、どっちが先かという話でもあるのですが、医療経済評価を中医協で議論したときに、企業が要求した価値のうち幾つかは採用されていないわけです。今おっしゃったような介護とか労働生産性とか計算が難しいという話だったわけですけれども、入り口で否定すると、それにチャレンジする人も出てこないし、学者も育たないということで、日本はずっと経済性、バリューを採用してこなかったので、日本では決定的に研究者が少ないということがあると思います。私は、そこに突破口を開けるべきだと思っています。
 さっき加算の話もありましたが、国が決めて、あんたがこの品目を作ってくれたら幾ら加算するという不健全なルールではなくて、チャレンジする人に対して公平なルールを提供して、成功した人にはリワードをあげるというのが本来の産業政策だと思いますので、後発品企業についても、チャレンジして新しい品目を作ったらば、今のルールのように全ての後発品を並べて一番安い値段しか認めないというのではなくて、ある程度そっちも自由薬価を認めていく余地を認めないと、チャレンジする人間が出てこない。チャレンジする人間が出てこないと、投資する人が出てこない、産業の再編も進まないということだと思います。そうやって広い意味で民間がうまく回るような産業政策を念頭に置きながら薬価政策も議論してほしいと思っています。
〇遠藤座長 それでは、続いてお願いいたします。
〇梅田氏(INES) ありがとうございます。
 どのような細かなルールあるいは要素を並べても、このやり方でやればどれでもうまくつくということはなかなか難しいと思います。当然、ヨーロッパ等でもいろいろと苦労された結果、先生のおっしゃるようなことになっているのではないかというところもあると思います。日本では類似の製品があるにはあるけれども、それは随分古い製品で随分安くなっている。抗生物質などではそういうことがあってなかなか開発もしないということにもなりますし、画期的なものとなると一体何と比べますかと、それに代わる薬剤がなければそれに代わる治療法はどういうものがあってというようなこととか、そういったことになるわけです。これならばという考え方が数式的なものができて、それでもっていろんな過去のものを幾つか評価してみたということにはなっておりません。
 まずは要素として上げられるようなところはリストして、企業が自主的にこれぐらいの価格であるということを主張する際にどういった要素を入れていったらいいだろうというようなことをやっています。また、これまでの大きな製品について、もし実際にいろんな要素、ほかの要素、今の薬価ルールでない要素でやった場合にどうなるかということは、アカデミアの専門の先生方が研究なさっていると思いますが、そこでも必ずしも一方的にこのやり方であればいい値段がつくとか、このやり方であれば厳しい値段がつく、どれをやっても一方的な向きが定まってくるものでもないと思いますので、一番大事なことは、やはり企業が責任を持ってそのバリューを説明し、価格が当局との議論の中でもちろん決まる。そのときに海外の価格等はもちろん参考にする。ただし、治験期間中の限られた症例から、今度は実際に使われてみて、一定の期間を経て臨床の場で使われた中での評価が定まってくれば、そこで一回見直しをするというのは当然あるのだろうということは内輪で議論しておりました。
〇遠藤座長 よろしいですか。
 それでは、大分時間も押しております。小黒構成員、お願いいたします。
〇小黒構成員 時間が大分迫っていますので、簡潔に、1つコメントと1つ質問を新時代戦略研究所の梅田理事長にお聞きしたいと思います。
 最初にコメントですが、GDPが今後、伸びていかないだろうというふうなことがありましたが、アメリカの金利と日本の金利、アメリカが11月の中間選挙が終わった後に、今かなり利上げしていますが、その関係で少し景気が落ち込んだとしても、金利差は残るわけです。そう考えると、円安がそんなに簡単に是正されるとは限らないのではないでしょうか。もっとも、足元では財務省による為替介入の動きもありますから相当安定化していますが、あまり楽観視しないほうがいいだろうと思います。その場合、今までは名目GDPに対してあまり影響がなかったですけれども、CPIとGDPデフレーターは、あまり変わらない動きをしますので、INESの提言案(総薬剤費成長率調整メカニズム)を取り込んだときにどういうふうになるのか、よく考えたほうがいいと思います。薬価は下がっていくだけなので、その関係で新時代戦略研究所の31ページの資料はすごく重要と思っています。
 私がもともと財務省にいたからというのもあるのですが、財務省は非常に厳しい役所なので、そう簡単には何でも認めるものでもない。その中で、例えば新時代戦略研究所の提案を財政審の公式資料に記載しているということは、それなりの覚悟の中で意思決定しているということになると思います。ただ、若干気になるのが、先ほどは議論に出ていなかったのですが、下側に下線部で「事前の財政規律の導入とその実効性を担保する具体的な仕組みづくりが実現しない場合には、市場拡大再算定を始めとする現行の薬価改定ルールに基づく適正化の徹底を図っていくより他はない」とはっきり書いてあるわけです。先ほどの物価の上昇も関係しますが、もし日銀のYCCが突破されれば、明らかに国債のコストにも跳ね返ってくる。その状況下では恐らく社会保障はもはや聖域ではないという形になる可能性は、これは脅しではないですが、可能性はあると思います。そういうことを考えて、現状の延長線では、財務省が相当厳しい形で今後臨んでくるというスタンスを出しているのだと思います。
 他方で、そうではなくて、31ページの資料の上段のほうでは、ここの表現で薬剤費マクロ経済スライドになっていますが、経済成長率に沿って伸ばすということについてはある程度理解を示しているということで、この資料の下のほうにも「安定的に保証された医薬品市場の伸びの中でこそ」とはっきり書いてあるわけです。私、これは非常に重要だと思っていまして、財務省としても、何でもかんでもカットすればいいと思っているわけではないことは明らかです。むしろ、一定程度投資とみなして予算を投下していくことも重要だと思っている証拠ではないでしょうか。ただ、現下の厳しい財政状況の中で、資料の下みたいな話が出ているわけですが、現在のこの状況下で、いろんな議論をしているわけですけれども、我々はいま分岐点にいると思います。マクロ的な改革をせず、薬価改定を毎年継続するという、この現状が進んだ果て、この検討会でも一度いろいろな製薬協の方にも来ていただいて話を伺いましたけれども、医薬品市場は非常に厳しい状態になるのではないかと思います。ファイザーの社長もされていらっしゃったので、その辺、最後に簡潔に少し御意見を頂けないかと思います。
〇遠藤座長 どなたにですか。
〇小黒構成員 梅田理事長です。
〇梅田氏(INES) ありがとうございます。
 この検討会を通じて私の耳に伝わってくるのは、やはり医薬品市場は大事であって、一定程度の成長はあるべきであるということについてあまり否定的な意見はないように思いますが、ではそれをどういうふうに実現していくのか、どの程度のレベルであったらいいのかということだと思います。ここに書かれていることは、そのことについて、一定程度成長するのはいいけれども、どのくらいなのだということの予見性がなかったら、今までの厳しいミクロ的な絞り込みのルールをさらに実行していくしかないというのは非常に厳しい決意だなと感じます。
 一方で、この議論をきちっとして、先ほど坂巻先生のおっしゃったようなフランスでもヨーロッパのどの国でも予算統制的な全体的な議論はあるのだと、日本においてミクロのところのこれをやめてください、いや、これをもっとやるぞという議論でも、全体感はどのぐらいの規模感なのかという議論なしに来ていることが予見性がないと言われているということに対して、企業側もあるいは業界団体もやはり受け止めて、自分たちの提言を出していく必要があると思っています。その規模がどれぐらいかということは、INESの提言的には何度もGDPと言っておるのですが、あくまで鍋に蓋するということではなくて、鍋を何とか支えたい、鍋の若干の成長を担保したいというのが提言の趣旨であるということを最後に申し述べさせていただきたいと思います。
〇遠藤座長 ありがとうございます。
 大体よろしゅうございますか。大分時間もオーバーしておりますので、では本日はこのぐらいにさせていただきたいと思います。
 4団体の皆さん、本当にありがとうございました。これからの議論に大変参考になるお話を承りました。皆様にしてみれば、頼まれて発表したら、やたらと厳しい集中砲火を受けて、何しろこちらは論客が多いものですから、でも大変勉強になりました。少なくとも私は攻撃するのをやめようというスタンスでありましたので、今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、これをもちまして、終了したいと思いますが、事務局、何かありますか。
〇山本ベンチャー等支援戦略室長 次回第6回の検討会につきましては、開催日時を後日、厚生労働省事務局よりメール等にて御連絡させていただく予定でございます。また、本日の検討会の議事録は、後日、厚生労働省のウェブサイトに掲載予定としております。
 事務局からの連絡事項は以上でございます。
〇遠藤座長 それでは、皆さん、長時間ありがとうございました。