令和3年度 第1回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会 議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室/環境改善室

日時

令和3年12月20日(水) 13:30~15:30

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 13B

議題

(1)職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書について
(2)がん原性指針対象物質等の検討について
  アクロレイン【既存/測定方法の追加】
  メタクリル酸2,3-エポキシプロピル【既存/測定方法の見直し】
(3)PCB塗膜除去作業等でのばく露実態調査について
(4)その他

議事

議事内容
○福田有害性調査機関査察官 本日は大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、定刻になりましたので、令和3年度第1回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会を開催いたします。
 私は、本日、座長に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます、有害性調査機関査察官の福田と申します。どうぞよろしくお願いします。
 まだ1名、櫻井先生が入られていないようですが、時間になっていますので順次進めさせていただきたいと思います。
 まず本日の委員の出席状況についてでございます。本日は、上野委員、小西委員、清水委員を除きました13名の委員の先生方に御出席いただいております。
 なお、本日は会場参加とオンライン参加の併用という形で開催させていただいております。3名の先生、大前委員と櫻井委員と名古屋委員にはWebで参加いただく予定となっております。
 また、本日は、三井住友建設株式会社の安全環境生産管理本部の安全環統轄部次長の陣内先生にも御参加いただいております。
 また、中央労働災害防止協会の担当の方にも参加いただいております。
 さらに、本日の会議の一般の傍聴者につきましては、Webでの参加としまして、音声配信のみとさせていただいております。
 それから、留意事項となります。オンライン参加の委員の先生方におかれましては、周囲の音を拾ってしまうことがありますので、御発言される場合を除きましてマイクをミュートに設定していただきますようよろしくお願いいたします。
 それでは、本検討会の開催に当たりまして、まず最初に化学物質対策課長の木口から一言御挨拶申し上げます。
 よろしくお願いします。
○木口化学物質対策課長 化学物質対策課長の木口でございます。
 先生方には日頃より労働安全衛生行政の推進に御支援を頂きまして、ありがとうございます。
 本日は、年末のお忙しい中、またお寒い中、お集まりいただきましてありがとうございます。Web参加の先生方も大変ありがとうございます。前回からかなり日にちがたってしまいまして、事務局のメンバーも大きく入れ替わっておりますが、前年度に引き続きましてよろしくお願いいたします。
 後ほど御紹介いたしますが、今年度は化学物質のあり方に関する検討会の報告書が7月にまとまって、化学物質管理をめぐる環境が大きく変わる年になります。そういう中でこの化学物質のリスク評価とか措置のあり方につきましても新たな見直しが必要となってきますので、本日は前回より御報告いたしました件についての結果の御報告とともに、今後のことについてはまた御説明させていただきたいと思っております。
 今後、関係省庁とも連携を取りながら総合的な化学物質管理を進めてまいりたいと思いますので、引き続き先生方の御支援をよろしくお願いいたしたいと思います。
 どうぞ本日はよろしくお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 ありがとうございました。
 なお、先ほども御案内のとおり、本年4月以降、人事異動によりまして事務局側のメンバーが大きく代わっておりますが、時間の都合もございますので、出席者の氏名の紹介にとどめさせていただきたいと思います。
 本日は、事務局としまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の化学物質評価室から室長の佐藤、補佐の吉見、今福、そして私福田の4名と、同環境改善室から室長の成毛、補佐の鈴木、係長の西川の3名が出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今年度も小野先生に座長をお願いすることといたしまして、小野座長に以降の議事進行をお願いしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
○小野座長 労働安全衛生総合研究所の小野でございます。今年度も座長を務めさせていただくことになりました。皆様、よろしくお願いいたします。
 まず、事務局から資料の確認につきましてお願いしたいと思います。
○福田有害性調査機関査察官 本日の会議もペーパーレスということで、会場にお越しの委員の先生方のお席の上にはタブレット端末を配置させていただいております。扱い方で不明な点がございましたら、また御連絡いただければと思います。また、オンラインで参加いただいている委員の先生方には事前に資料をメールで送付させていただいております。資料としましては、資料1~5の5種類の資料と、参考資料としまして参考1~8-2の14種類の資料を御用意させていただいております。資料で何かございましたら、また後ほど事務局までお知らせいただきたいと思います。
 簡単ですけれども、資料の確認は以上でございます。
○小野座長 ありがとうございました。
 では、本日の議題に入ります。
 まず議題(1)「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書について」ですが、まず事務局から説明をお願いいたします。
○佐藤化学物質評価室長 では、資料1の共有をお願いいたします。
 この資料は、報告書を図示的に説明した資料になります。報告書本体は参考2になります。
 まず資料の5ページ目をお願いいたします。
 現在を示している図ですけれども、現在の化学物質の規制の仕組みを示したものになります。
 左側に三角形がございまして、上のほうから厳しい規制がかかっております。
 一番上に石綿と書いてありますが、製造・使用が禁止されている厳しい規制がかかっているものです。
 その下に点々と赤い枠囲いしてある部分がございますが、そこは自主管理が困難で有害性が高い物質ということで、具体的に物質を特定いたしまして、右側にあります赤字で書いてある特化則などに基づきまして、個別具体的な措置、ばく露を低減させるような措置、具体的にああしてください、こうしてくださいといった内容が法令で決まっている物質になります。
 一番下のほうに行きますと、薄く色分けされているのですけれども、真ん中あたりに数万物質と書いてある部分がございます。その上の三角形のグルーピングされている上から3つ目の部分と合わせまして、一番左側になりますが、「労働災害の8割はここで発生!」と書いてあります。規制がそんなに厳しくないものが原因で労働災害が起きているという現状がございます。
 現在、国では、一つ一つの化学物質につきまして、有害性とばく露、実際にどのぐらいばく露されているのかというデータを基に、一つ一つ具体的にリスク評価を行って規制をかけているところですが、なかなかそれが追いついていないという現状がございます。
 1ページ目に戻ってください。
 そこで厚生労働省といたしまして、化学物質の規制にあり方をどうしたらいいかということで、2年間にわたり検討を行ってまいりました。真ん中に2番「参集者」とございます。本検討会と、その下に、右側にありますリスク評価ワーキンググループ、技術的な検討を行うワーキンググループ、この2つの会議で検討していただきまして、7月に報告書が取りまとめられております。
 めくっていただきまして、2ページ目をお願いいたします。
 (1)の労働災害の発生状況ですけれども、右側の表を御覧ください。先ほど御説明したように、件数のところで薄い橙色で枠囲いしてあるところ、上から2、3、4のグルーピングのところですけれども、ここが労働災害の発生原因の化学物質の約8割を占めているという状況です。
 これはなぜかと考えますと、左側の(1)の2つ目の白丸です。特定化学物質障害予防規則などに追加されるとかなり厳しい規制がかかるのですけれども、そういった場合、その物質の使用をやめて、危険性・有害性が十分に確認・評価されていない物質をどうしても使ってしまい、労働災害が発生しているのではないかといった現状がございます。
 続きまして、4ページ目をお願いいたします。
 4ページ目の一番上の黒い四角のところですけれども、今は個別具体的に化学物質の一個一個についてリスク評価を行って、具体的な措置を決めて規制しているのですけれども、青い矢印にありますように、危険性・有害性が確認された全ての物質に対して規制をしていくべきではないかといった報告書の内容になっております。
 具体的にどういったことかといいますと、黄色い部分がございますけれども、その一番上の黒い四角のところです。国がGHS分類といったものを作業しているのですけれども、これは化学物質の分類の仕方でして、国際的なルールに基づいて厚労省が環境省、経産省と連携して行っている作業です。その分類の作業で危険性・有害性が確認された全ての物質を対象に規制をかける、義務化をしてはどうかといった内容となっております。
 1つ目の黒ポツですけれども、まず危険性・有害性の情報をきちんと使う方に伝達しようということで、具体的には、製品にラベルをつける、あとは、危険性・有害性の情報をSDSといったシートにまとめているのですけれども、そういったものを必ず添える、交付するという義務付けをしてはどうかと。
 2つ目のポツにありますように、伝達された情報に基づき実際に使う方がリスクアセスメントを実施し、どうすればばく露量が低減できるのかを検討していただくといったことを仕組みとして設けてはどうかという内容となっております。
 4つ目の黒ポツですけれども、薬傷や皮膚吸収による健康影響を防ぐための保護眼鏡、保護手袋を使うことを義務付けてはどうかという内容も盛り込まれております。
 一番下の四角い黒ポツですけれども、現在、特化則、有機則で規制されている物質が123物質あるのですけれども、5年後をめどに、自律的な管理、事業者の方が自律的に自分自身で管理できるような体制が整った上で個別具体的な規制を廃止してはどうかというような内容も盛り込まれております。
 6ページ目を御覧ください。
 真ん中のところに、少し見づらい図になっているのですけれども、約2,900物質と書いてある部分があります。これは、国がもうGHS分類を済ませて、例示となるようなラベル、製品につける表示ですね、それとSDSを作って公表している物質が約2,900あります。これを対象に、順次表示とSDSの交付を義務付けていくといった内容となっております。
 7ページ目を御覧ください。
 真ん中の左側に「国によるGHS分類に基づき」と書いてありまして、先ほど2,900物質という数字が示されたのですが、このうち、既にラベルを付けることとSDSを交付することが義務付けられている物質と、環境に対する有害性だけがある物質があります。そういったものを引きますと、残りは1,800ぐらいになります。それが左側の真ん中のところに書いてあります1,800物質というところです。これを一度に義務付けるとなかなか現場が追いついていきませんし、対策も講じることができませんので、令和3年度から5年度にかけて順次物質を指定して義務化していってはどうかとなっております。1,800物質の義務化を終わった後は、2つ目のポツにありますように、令和6年度以降、現在もGHS分類を行っておりますので、そういった物質を対象にどんどん義務付けを増やしていくといった内容となっております。
 8ページ目を御覧ください。
 8ページ目は、リスクアセスメントが現場で実際に行われているかどうかを労使双方によるモニタリングで双方から監視する仕組みを設けてはどうかといった内容となっております。
 左側の□囲い、薄い橙色のところですけれども、リスクアセスメントを実際にどのようにしましょうかと。記録をつけることになるのですけれども、右側にありますように、労使双方によるモニタリングを行っていただく、そして記録を保存していただくということを設けてはどうかという内容となっております。
 こういった事業所で労働災害が発生し、左側にあるように、監督署が指示した場合、いろいろな資格を持った外部の専門家の力を借りて確認・指導を行ってはどうかと。そしてその結果については監督署に報告する。こういったことで労働災害の原因究明、再発防止が図られるのではないかという内容となっております。
 9ページ目を御覧ください。
 実際に事業所でどのようにリスクアセスメントを実施し、それを実現していくのかということで、上のほうに赤字で「化学物質管理者」と書いてありますけれども、こういった方を決めていただいてはどうかと。この方がリスクアセスメントを実際に行う責任者となります。
 化学物質のばく露量を低減するために、その措置として保護具を使いましょうと決めた事業所の場合は、真ん中より下の赤字で書いてあります「保護具着用管理責任者」といった方を置いてくださいと。この方が保護具を使う際の使い方といったものの全ての責任を一括して行う担当となります。
 化学物質管理者と、保護具着用管理責任者は場合に応じてですけれども、こういった方々を置いて、事業所の中でリスクアセスメント、実際に措置を実現してもらう仕組みを作ってはどうかという内容となっております。
 下のほうに職長があります。職長は安全教育を受けていただく義務があるのですが、今は全ての業種にはこの教育が義務付けられておりませんので、一部除外となっている業界も付け加えてはどうかということになっております。具体的には、食料製造業、印刷業といった方々になります。
 右側にあるのですけれども、国のほうでは、こういった化学物質管理者、保護具着用管理責任者といった方々を育てていくことが必要ですので、専門家による相談・助言・指導といったものを通じてこういった方々を育てていくということを求められております。
 10ページ目を御覧ください。
 10ページ目がSDSの内容になります。現在でもSDSは約600物質について義務化されております。
 SDS(安全データシート)と書いてあるのですけれども、裏返しに言えば、危険性・有害性の情報が漏れなく載っているシートになります。
 真ん中にSDS記載義務項目がありまして、太字になっているのが記載方法が変わるものです。赤字の部分が全く新しく追加になる項目です。
 一番上の「名称」、これは今と同じです。
 2つ目の「成分及びその含有量」は、今は10%刻みで含有量を記載してもよいとなっているのですけれども、これをパーセンテージで記載してはどうかという内容となっております。
 3つ目の「物理的及び化学的性質」は現状と同じです。
 4つ目の「人体に及ぼす作用」ですけれども、これは危険性・有害性の情報がどんどん更新されていく場合がございますので、5年以内ごとに情報更新されているかどうかを確認してくださいといったことを義務付けてはどうかという内容になっております。
 次の「貯蔵又は取扱い上の注意」ですけれども、これは保護具の種類の記載をここに追加してはどうかといった内容となっております。
 次の「推奨用途と使用上の制限」、これは全く新しく追加される項目ですけれども、譲渡または提供する時点で想定されている推奨用途と使用上の制限を記載してくださいといった内容となっております。
 その下は今のまま記載してくださいという内容となっております。
 下のほうですけれども、SDSの交付方法とか渡し方は、今は文書の紙、あとは磁気ディスク、ファクスなどですけれども、右側にありますように、事前に相手の了承を得なくても、例えば製品の容器に2次元バーコードをつけて、それをスキャンすればSDSが入手できるようにしてはどうか、もしくは商品をホームページで紹介しているところでSDSを閲覧できるようにしてはどうか。そういったことも設けてはどうかといった内容となっております。
 11ページ目を御覧ください。
 11ページ目は、一番左側にラベル表示とされている化学物質が入った瓶みたいなものがありまして、これにはきちんとラベルが表示されているのですけれども、それを買った後に小分けする場合があります。小分けしたものを間違って飲んでしまって健康を害してしまったという事件がございましたので、小分けした場合でも中身がちゃんと分かるように危険性・有害性の情報を伝達してはどうか、小分けされたものにもそういった情報を添付することをしてくださいといった内容となっております。
 このページの下ですけれども、例えば大きい化学工場を改修したり掃除するときには外部の会社に委託する場合があります。そういったときに、委託されたところの従業員は自分が何を扱っているか分からないので、現在では、一番左側の下にありますように、危険物製造・取扱い設備で決まっている化学設備を持っているところと、特定の化学設備を備えているところについては、必ず外部の労働者の方に分かるように情報を伝達してくださいとなっているのですけれども、この業種を拡大してはどうかといった内容になっております。具体的には、全てのGHS分類済みの物質の製造・取扱いを行っている設備を有するところに拡大してはどうかといった内容となっております。
 次のページを御覧ください。12ページになります。
 これは少し話が変わりまして、特化則などに基づく措置の一部緩和になります。
 現在、特化則などに基づきまして、労働者の方には健康診断が義務付けられております。大体6か月以内ごとに1回なのですけれども、これを、一定の条件を満たした場合、1年以内に1回に緩和してはどうかという内容となっております。
 次の13ページ目をお願いいたします。
 これは逆に特化則などに基づく措置の強化になるのですけれども、特化則などに基づきまして事業所の環境を測定する義務があります。その結果に応じて第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分と、上のいいほうから下に行くにつれて悪くなるのですけれども、そのように管理区分が分類されております。行政側といたしましては、第3管理区分から第2、第1に順次環境を改善していくべきだということになっているのですけれども、なかなか第3管理区分から抜け出せないままのところがどうしても多くあります。そこで、第3管理区分からさらにいい条件のところに改善していただくために設ける仕組みになります。
 赤い点線で囲われてオレンジ色で背景が塗られているところがあるのですけれども、その真ん中あたり、マル1、改善の可否について外部専門家の意見を聞くという内容を盛り込んではどうかという内容です。外部の専門家の方に検討していただいて改善できればいいのですが、改善できない場合、改善が困難と書いてありますけれども、直ちに赤字で書いてあることを講じてくださいと。例えばaに書いてあるように、個人サンプラーなどによる測定及びその結果に応じた有効な呼吸用保護具の使用、フィットテストの実施など、こういったことをすぐ行ってくださいと。そして、その結果については、右側にずっと矢印が伸びているのですが、マル5、労働基準監督署に届出をしてくださいと。こういったことを通じて第3管理区分から第2、第1に移っていただく。こういう仕組みを設けてはどうかという内容となっております。
 最後の14ページになります。
 これも話が変わるのですけれども、がんなどの遅発性の疾病の把握とデータの長期保存のあり方という仕組みを作ってはどうかという内容です。
 がんなどはどうしても長い時間が経過しないと症例が出てこなくて、左側のやじろべえみたいなのは労働者の方を表しているのですけれども、同じような種類のがんを発症した方々を赤く色づけしております。同種のがんを発症した方が複数いた場合、産業医の方もしくは外部機関の医師の判断で都道府県の労働局に報告をしていただく。そうすると、国のほうでは、同じ化学物質を扱う事業所に対して調査をすることができます。そうすると原因となる化学物質が何かという把握が時間がかからずに早くできるということになります。こういった仕組みを設けてはどうかと報告書に盛り込まれております。
 下のほうは、30年以上の保存が必要なデータが今法律でいろいろ決まっているのですけれども、会社が倒産してしまったり労働者の方が転職してしまった場合になかなかデータが継続されない、保存されないという場合が想定されますので、それをまとめて第三者機関の公的な機関がまとめて保存してはどうかと。そういったところでビッグデータとしてそのデータを活用して、いろいろな予防対策に活用してはどうかといった内容となっております。
 非常に簡単ですけれども、報告書の内容は以上となっておりまして、この内容を行政側として実現化していくために、法律・政令・省令のうち政令と省令を改正する予定となっております。
 その一番最初の取っかかりといたしまして、政令の一部を改正するパブリックコメントを先週の16日から始めております。来年の1月14日までの約1か月間、パブリックコメントを実施しております。この報告書のうち、今回パブリックコメントにかけられている内容が3点ございます。
 まず、今御説明した内容で、化学プラントの掃除とか改修を第三者の方にお願いする場合に化学物質の危険性・有害性の情報を伝達してくださいという御説明をいたしましたが、その伝達する者を、今決められている方の範囲を広げて、GHS分類が済んで危険性・有害性があると判断された化学物質を扱う事業者全てに広げるといった内容が1点目です。
 2つ目ですけれども、職長の安全衛生教育が義務付けられているのですが、この義務付けられている業種に食品製造業と印刷業も追加するといった内容が2つ目です。
 3番目が、製品のラベル表示とSDSの交付を義務付ける物質234物質を新たに追加するといった内容です。
 この3点で現在パブリックコメントを行っております。
 行政側の対応といたしましては、この3点だけ規制強化するだけではなくて、今後順次ほかの部分も検討し対応していくこととなっております。
 私からは以上でございます。
○小野座長 ありがとうございました。
 たくさんの内容について御説明いただきましたが、今の事務局からの報告について御質問、御意見があれば、お願いいたします。
○唐沢委員 冒頭の化学物質対策課長の御挨拶からすると、この検討会報告書を実施するのは既定路線になっているように思うのです。ただ、私はかなり懸念、それから事実関係についてもちょっと違うのではないかと思っております。
 報告書の本文に従って御説明したいと思いますので、参考2を見ていただくといいのですが、この報告書の本文の5ページのところで、(4)に「諸外国における化学物質管理」というのがありますが、そこで、「欧州は、特定化学物質障害予防規則のような個別の物質ごとに具体的に措置を定める規制はしていない」というのは事実の誤りではありませんか。英国では、いわゆるCOSHHと言われている健康に有害な物質管理規則というのがありますし、職場における鉛管理規則というのがあります。それから、アメリカ合衆国は、これは御案内のとおりですけれども、むしろ物質ごとにスタンダードが書かれています。例えばアスベスト、コールタールピッチ、13種類のがん原性物質(カーシノゲン)、α-ナフチルアミン等々、個別のスタンダードはたくさんあります。ですから、これは誤解を招く記述ではないでしょうか。それが第1点。
 それから、第2点、これは報告書本文の6ページですけれども、簡単に申し上げますと、「国はばく露濃度等の管理基準を定め、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みを整備・拡充し、事業者はその情報に基づいてリスクアセスメントを行い、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら選択して実行する」、それが自律的な管理だとなっています。この12月13日も石綿の最高裁判例について労働政策審議会の安全衛生分科会でいろいろな御検討がなされていると承知していますが、この石綿関係では去年と今年で2つ最高裁判決が出ていまして、その最高裁判決の中でポイントとなるのは、規制をする行政官庁の責任についてかなり具体的なことが最高裁判決で言われていて、担当する官庁は適宜適切に必要な規制を行わないと不作為の違法になるという判示が出ています。それとの関連で、この6ページにあるような自主的な管理ということだけでこの最高裁判例をクリアできるのですか。この点はいろいろ御検討されていると思いますけれども、私の懸念としてはそういうことがございます。
 ちなみに、具体的な有害物質について労働者のばく露限界以下にする措置について、事業者の選択に任せている例が外国法令であるかどうか調べてみました。例えばイギリスのHSEですね。それから、ドイツの危険有害物からの保護規則があります。それから、US OSHAは先ほど言いましたようにいろいろな規則がありますが、これらの国々の規則ではばく露防止措置の内容についてそれぞれ具体的に規定があります。事業者の自主的な判断に任せているという規定は見当たりません。だから、もしこのとおりやられるとすれば、欧州なりアメリカとは違う路線をやるのだということになるかと思いますが、果たしてそれで大丈夫なのですか。例えば、本来ならば局所排気装置でなければばく露濃度限界以下にはできないことについて、事業者の御判断で全体換気装置で対応された場合、本当にばく露限界値以下になっているかどうかをその事業者さんが、故意か過失かは分かりませんが、全然確認を怠っていたというような場合に、本来なら局所排気装置ではなければならないけれども全体換気装置を選択されたということについては、立法化はこれからなのでしょうけれども、責任が問えないのではないですか。それで大丈夫なのですか。公平な労働安全衛生基準ということで、公平・公正な競争を担保するためには、具体的な措置について、少なくともアメリカとかイギリスとかドイツがやっているような具体的な内容について規定するのが本来あるべき姿ではないか。これは私の懸念ですけれども、ほかの方はほかの見解を持っておられるかもしれません。
 あまり時間がないようですから、最後に健康診断の関連を申し上げます。
 健康診断についても検診機関の医師あるいは産業医の考えに任せるということになっていますが、これも私が調べた範囲では、イギリスのHSEなりUS OSHAなりドイツについてはそんなことはしていないです。
 例えばイギリスのHSEは、規則そのものとACOP、Approved Codes of Practice、実施準則と訳していますけれども、それからガイダンス。HSEの法制の下では、ACOPというのは、もし何か事件があった場合には刑事処分ができる構成要件になる。これも御承知だと思いますが、大体そういうものです。ガイダンスについても、何か事件が起こった場合、事業者はそのガイダンスを守っていないとすればガイダンスと同等以上の措置を取っていたということを裁判所に証明する必要があるという性格のものですけれども、HSEにおいては健康診断の内容について具体的に規定があります。
 それから、アメリカ合衆国は、それぞれ単品の個別の規則ごとに具体的なヘルスサーベイランスの中身が決められております。
 それから、ドイツの場合には連邦の労働社会問題省の省令がありまして、労働者の健康管理に関する規則というのがありますが、その中ではヘルスサーベイランスを担う人材の資格要件が定められていまして、それはどういうことかといいますと、労働専門医の称号を持っている人がそれに当たるという規定になっています。
 ですから、検診機関のお医者さんなり産業医の自主的な判断に委ねるというようには法制的にはなっておりません。
 いま一つは、それぞれの検診項目を確定するというのはなかなか大変な、技術的にも医学的にもかなり重要な問題だと思いますので、そういう問題を全部検診機関のお医者さんなり産業医なりが個別に調査するとなると、毒性学の論文をいろいろ読んで、その中からどういう検診項目にするかということを作っていかなければいけない。これはなかなか大変な問題だと思います。
 今回の検討会の委員の皆様にはお医者さんの方が何人もいらっしゃいますので、それぞれの方は御意見をお持ちかもしれません。あまり私が長くしゃべるのも問題となるといけませんので、今日はこの辺でやめておきます。もしお答えできるものがあればお答えください。
○小野座長 ありがとうございました。
 時間のことをお考えいただきまして、おっしゃりたいことの6~7割で抑えてくださっているということです。時間の問題はあるかと思いますけれども、この場で御説明いただける部分がありましたらお願いしますし、それ以降の何らかの、パブコメとかもこれから進みますし、そこで改めてということでしたら、それでもよろしいかと思うのですが、現状でお答えいただける点について厚生労働省からお願いしたいと思います。
○木口化学物質対策課長 コメントを頂戴いたしまして大変ありがとうございます。
 4点、コメント、御指摘を頂いております。
 諸外国の規則の話に関しましては、日本の規則はかなり硬直的というか、局排はこれをやらなければいけない、健診はこれをやらなければいけないということでかちっと決まっていることに比べて欧米はもう少し専門家のハイジニストさんが関与したりといった面もあるということを説明したつもりでしたが、言葉が足りず申し訳ありません。
 それから、自ら選択して措置を講ずるという話につきましては、私どもも「自律的な管理」というのは全くフリーハンドにしようという趣旨ではなくて、濃度を下げる基準を決めて、それを達成することを求めるということで、むしろ今の規制よりも対象となる物質が増える分、全体的には規制が厳しくなるものと考えております。その上で、国によるGHS分類で有害性があることが分かったものに関しましてはラベル・SDSの対象にすることで、まず有害性があることを扱う方に周知する。その上で、適切な取扱いについてもSDSには書いていただきますが、特に有害性の高いものにつきましては、例えばガイドラインなどで推奨される対策を示すとか、場合によっては許可とか禁止といった今の55条、56条のほうに持っていくような形での対象も含めて考えております。行わなかった場合にもリスクアセスメントの記録の保存とか労使によるモニタリングとかをちゃんとやっているかどうかを行政の方で見させていただいて、それができなければ必要な措置を講ずるよう指導するといったこともやってまいりたいと思っております。
 それから、健康診断につきましては、産業医の判断というか、条件として3つあるのですけれども、過去の作業環境測定結果が良好であるとか、過去の健康診断で所見が見られないなど、リスクが低いことが分かったところに関して実施頻度を減らそうということでございますので、これも具体的にどういったときに実施頻度を減らせるかということに関しては、別途ガイドラインなどで、現場で混乱が生じないようにやってまいりたいと思っております。
 全体的に自律的では全くフリーハンドになるのではないかという御心配に関しましては、必要なガイドラインなどはできるだけお示しすることによって、あとは専門家の育成も図りながら、そういった事業場のサポートをしていけるような環境を順次作ってまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○小野座長 ありがとうございました。
 唐沢委員、いかがでしょうか。
○唐沢委員 私の懸念はまだ解消しておりませんが、今日はこのテーマで時間を全部費やすわけにはいかないでしょうから、以上で私は終わりたいと思います。
○小野座長 ありがとうございます。
 ほかの委員の皆様からは。
○陣内委員 将来的にはSDSを伝達して自分たちでリスクアセスメントをしなさいとなっていると思うのですが、現場は製造業と違って単一ではなく、個々に条件があって、いろいろな条件の中で、SDSの内容についてリスクを洗い出して、全て個人の保護具等で自分たちのばく露を防止しなければならない。それを事業主が指示しなさいということになります。現場で行うとそれを監視するのは元請ということで、全て元請の責任において、SDSの内容に従い、リスクアセスメントを実行する。材料も、発注内容で使う材料についてSDSを見て自分たちで判断しなければいけないというところがあります。したがって、特化則とか有機則が将来的にはなくなるということで、元請責任が非常に重くなるのではないかと危惧しています。
○小野座長 ありがとうございます。
 特定の業種からの御意見ということですけれども、お答えはどうなさいますか。
○吉見化学物質評価室長補佐 建設業その他、今まで化学物質の管理とかリスクアセスメントになじみの少なかった業種も含めて、実際にどうやってやっていこうかというような御質問とか御懸念も頂いておりますので、主な業種については業種別にガイドラインのようなものを作って、実際に現場で使っていただけるようにお示ししていきたいと思っております。
○小野座長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
○保利委員 報告書の9ページのマル2のところに「ばく露限界値以下に管理する方法」として3つほど挙げられているわけです。「できる限り実測による方法が望ましい」と書かれてはいるのですけれども、1番、2番が実測で、3番はモデルを使った定性的な方法です。できるだけ実測によるのが望ましいのは当然なのですけれども、この3つを並べてあるとどうしても簡単なほうに行ってしまうということがあると思うのです。例えば新たに作業場を立ち上げるという場合にはCREATE-SIMPLEでしかないと思うのですけれども、測れるときは測るというのを原則にしたほうがいいかと思うのです。その辺はいかがでしょうか。
○小野座長 ありがとうございます。
 この点につきましてはいかがでしょうか。
○吉見化学物質評価室長補佐 おっしゃるとおり、実測ができれば実測が一番いいと考えております。どういった場合に実測して、どういった場合にCREATE-SIMPLE、簡易な方法を使うかとか、どういった形でばく露限界値に対する評価をしていくかといったことについてもガイドラインのようなものを検討しておりまして、今後お示ししていく予定でございます。
○小野座長 ありがとうございます。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 あり方検の報告書はこのように出ておりまして、方向性も決まっているようですけれども、各業種あるいは各個別案件についてはガイドライン作成の御予定があるということですので、それを待ちながら、積極的に関与しながらということにもなるかと思います。自律的管理がうまく運用できるようにしていければより広い範囲の化学物質から労働者を守ることができる可能性がありますので、皆様の御協力も頂きたいと思います。ありがとうございました。
 では、いつものようにがん原性物質の議論に進みたいと思います。
 では、アクロレイン、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルの順に審議を進めてまいりたいと思います。
 まず事務局から本日の趣旨について御説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 本日のがん原性の検討の趣旨について御説明いたします。個別の部分は後ほど順次御説明させていただきたいと思います。
 本日は、先ほど座長からお話もありましたとおり、アクロレインとメタクリル酸2,3-エポキシプロピルの2物質の審議を予定しております。
 これらの2物質につきましては、アクロレインが令和2年2月に、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルが平成28年3月に、既に物質としてはがん原性指針に追加されております。他方、がん原性指針の対象とした化学物質につきましては、労働基準局長名の通知によりまして、測定・分析手法や使用すべき保護具等をお示ししておりますが、現在、アクロレインにつきましては測定・分析手法が通知上未検討という状況になっておりまして、まだお示しできていないこと、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルにつきましては、測定・分析手法はお示しできているものの、サンプリング時間が実際140分は必要だということで、それが長過ぎるという御指摘を頂いておりまして、そういった状況の中で今回の審議をさせていただくということになります。
 今般、これら2物質の測定・分析手法につきましては、その後一定の結果が得られるなどしておりますので、労働基準局長名の通知の別紙3「作業環境測定の方法及び測定結果の評価の指標」の部分を改正したいと考えております。通知のほうは内容を御確認いただきたいと存じます。
 なお、がん原性指針は参考4-1、労働基準局長名の通知は参考4-3になりますので、後ほどでもいいですし、今でもお手元で御確認いただきたいと思います。
 以上となります。
○小野座長 ありがとうございました。
 では、アクロレイン、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルの順で審議を進めたいと思います。
 まずアクロレインにつきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 それでは、資料2を御覧いただきたいと思います。
 資料2は2ページほどありまして、最下段となりますが、参考として2019年度第1回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会、この措置検討会の議事録の抜粋を掲載させていただいております。後ほど参考5-2も御覧いただきたいと思いますが、検討会当時におきましては、アクロレインの捕集に使用したサンプラーは柴田科学株式会社製の特注品であったという状況でした。広く一般にお願いするがん原性指針の中身としては、そういった特注品では労働基準局長名の通知に書き込めない、また、その特注品の商品化などの様子を見ながら後日相談させていただくというような内容となっております。それで事務局からはその当時検討途中段階での報告ということで終わっております。
 そうしたところ、柴田科学株式会社製の特注品とされていましたサンプラーにつきましては、本日は特に資料などはつけておりませんが、その後そのまま同社から市販化されていることが同社のホームページなどから確認できておりますので、今般、労働基準局長名の通知の別紙3のアクロレインの部分を資料2の上段側の改正案のように改正したいと思っております。
 なお、当時の措置検討会では、特注品は0.03%のTEMPO DNPH-Sillicaカートリッジという名称で報告されていましたが、同社の市販品の組成はその当時の特注品と変わっていないそうです。また、同社のホームページの市販品のページにつきましては、「本サンプラーは、厚生労働省アクロレインの測定手法検討会で検討されたサンプラーです」というような補足をつけられております。
 以上となります。
○小野座長 ありがとうございました。
 では、このアクロレインの測定法につきまして御質問、御意見をお願いいたします。
 恐らくこれは、当時というか、がん原性指針に対応する物質の測定範囲、下限の濃度を低く設定して、許容濃度などの1/1,000の濃度まで測れるようにということにしておりましたので、普通のDNPHカートリッジではなくて、TEMPOという別種の化学反応を利用して捕集するものを使うことになっていて、それが特注品だったという経緯があったかと思います。今もかなり定量下限が低いところまで測れる方法になっているのですけれども、こちらで測定できるということでしたら、測定法をやっている者としてはこのままでもいいのかなと思いますが、DNPHだけで分析できないのかなと気になる点はございます。NIOSH、OSHAはDNPHだけでやっていますので、現場でぜひチャレンジしたいという会社の方がいらっしゃったら、両方やっていただいて、データを出していただけると、より皆さんのためになるかなとは思います。
 アクロレインの測定法について、この事務局案のままでよろしいかどうか。―よろしいでしょうか。特に疑義のある方がいらっしゃらないようでしたら。
○中明委員 判断する材料がないから、いいですよと言うしかない。
○大前委員 1点よろしゅうございますか。単純に表現の問題なのですが、改正案で「0.1 ppm」で「日本産業衛生学会」とありますけれども、日本産業衛生学会が管理濃度を出しているわけではないので、この部分は消していただきたいと思います。
○小野座長 ありがとうございます。
 管理濃度ではなくて、実際に測定法を検討するときには、この数値を評価値として、この濃度の何分の1まで測れる方法を作りましょうということでやっておりますので、管理濃度がないときには産業衛生学会の数値とかACGIHの数値とか、その辺を採用して検討しておりましたので、そのことがはっきり分かるようにここの文言を直していただいて、その上で、測定法としてはこの改正案でよろしいということでよろしいでしょうか。
 では、今申し上げたような修正の部分を入れていただきまして改正案を出していただくということでお願いしたいと思います。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。
 このアクロレインにつきましてはACGIH等の数値がございませんので、「管理濃度等」という言葉をあえて使わせていただいて、実は通知を見ていただくとお分かりだと思いますが、ACGIHで数字がないものでも産業衛生学会で数字があるものについては、例えばアクリル酸メチルなんかは、一応ACGIHまで入れてありますけれども、「日本産業衛生学会」と下のほうに名称等を入れるなりして対応させていただいていまして、そこの並びをどうするかはまた検討させていただきたいと思います。
○小野座長 やはり改正案というか、形として出すときに「管理濃度等」というのはいかがという感じもいたしますので、「管理濃度」で、あとは星か何かをつけておいて、下のほうに説明書きとして、「今回は管理濃度がなかったため、産業衛生学会の数値を目標値とした」と付け加えていただくほうがより皆様から理解していただきやすいかと思います。今後もこういうことがあるかと思いますので、御検討いただけるとありがたいと思います。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。注意書き等を付すような形で対応させていただきたいと思います。
○小野座長 よろしくお願いいたします。
○中明委員 結局、ここで「管理濃度」と書かれると、「等」がつこうがつくまいが、やはり許容濃度とは違うのです。考えているベースが。だから、ここはどちらかというと「許容濃度」にしておいたほうがいいような気がします。産衛の許容濃度にはこの数値が出ているのですか。出ているのでしょう。
○福田有害性調査機関査察官 そこは出ております。
○中明委員 それだったら、日本産業衛生学会の許容濃度として、「日本産業衛生学会」でアスタリスクでもつけて説明しておいたほうが。少なくともこの数値は管理濃度ではないのだから。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。今のお話ですと、表題のところは「管理濃度等」で、注意書きをつけるということですか。
○中明委員 「等」ではなくて、「許容濃度」として注意書きをつけたら。
○福田有害性調査機関査察官 こちらについては、参考資料を見ていただきますと、ほかの物質も一覧で並んでいまして、許容濃度だけでもございませんので、そういう意味で「管理濃度等」とさせていただいております。そこの並びを整理しないとお答えしづらいと思います。
○保利委員 作業環境測定の方法として出しているので、管理濃度という言葉は必要だろうと思います。ただ、ここでは管理濃度ではなく、日本産業衛生学会の許容濃度を使ったということが分かるようにしておけばいいかと思います。
○小野座長 続けざまで申し訳ないのですけれども、要するにこの検討をするに当たっての大もとの文章を参考でつけていただいております。そのときに、管理濃度がないときにはどの数値を参考にしてこの検討を行うということが書かれていますので、それにのっとった形で最後の文章もまとめていただくのが筋だと思います。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。
○小野座長 よろしくお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 ありがとうございます。
○小野座長 では、アクロレインについては以上でよろしいとして、次にメタクリル酸2,3-エポキシプロピルについて、事務局から御説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 続きまして、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルにつきまして、こちらから御説明します。資料3を御覧いただきたいと思います。
 資料3の最下段になりますが、こちらにも参考として2019年度第2回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会の議事録の抜粋を載せさせていただいております。
 後ほど参考6-3も御覧いただきたいと思います。6-2と6-3という形で、6-2が今回新しく出た報告書と、6-3が前回お出しした資料となりますが、そちらも後ほど御覧いただきたいと思いますが、検討会当時におきましては、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルの140分とされていたサンプリング時間が長過ぎるということと、現状可能な測定・分析手法をお示ししつつ、おいおいサンプリング時間の短縮を技術的に検討させていただくなどとしまして、一旦当時可能な測定・分析手法をお示ししたというような形になっておりました。
 サンプリング時間の短縮に関しましては、その後、委託事業により検討してまいりましたが、参考6-2のとおり、サンプリング時間を4時間から10分に短縮できるというような結果が得られておりますので、今般、労働基準局長名の通知の別紙3、物質が一覧で並んでおりますが、その39番目にメタクリル酸2,3-エポキシプロピルの欄がございますので、その部分を資料3の上段の改正案のように改正したいと考えております。
 以上となります。
○小野座長 ありがとうございます。
 では、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルについて御質問、御意見をお願いいたします。こちらも「管理濃度等」のところについては先ほどと同じことになるかと思いますので、そこはスキップさせていただきたいと思います。それ以外の部分で御意見、御質問がございましたら、お願いいたします。―いかがでしょうか。急にこの表を見ても分からないので教えていただきたのですが、上の現行の表のA)とB)について、御説明いただいたのかもしれないのですけれども、もう一度ご説明いただけますでしょうか。
○福田有害性調査機関査察官 こちらは当時の報告書を基に出された数字になりますが、A)とB)につきましてはA測定とB測定のAとBの略となっております。
○小野座長 B測定が140分というのはあり得ないですよね。
○中央労働災害防止協会/山室氏 現行と改正案の違いですが、現行の方はスプリット分析ですが、改正案の方はスプリットレスでうまくできて、感度を上げることができたといった違いでございます。
○小野座長 分かりました。
 今、スプリット、スプリットレスというお話がありましたけれども、ガスクロマトグラフ-質量分析計、GC/MSで分析して、試料をガスクロのカラムに導入するときにたくさん試料を入れ過ぎると分析機器が不調になりますので、そこで一部の試料だけをカラムに入れるようなシステムになっております。そうすると10倍、100倍とかの希釈がそこでかかってしまいますので、スプリットレスという希釈をしない形で全てをカラムに入れれば感度高く分析できる手法を用いたということです。それで特に問題なく分析できるということですので、それで感度を上げる方法をつくっていただいたということになります。ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 通常の0.2 L/minのサンプリング10分間でB測定ができる方法が開発されたということで、これでよろしいのかと思いますけれども、特に御質問、御意見がなければ、このままの形で、一部修正はありますけれども、これを改正案としてよろしいでしょうか。―ありがとうございます。
 では、先ほど申し上げた「管理濃度等」の部分だけ御修正いただきまして、今ある改正案で修正をお願いしたいと思います。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。この内容で、注意等をつけさせていただいて改正する形にしたいと思います。ありがとうございます。
○小野座長 ありがとうございました。
 続きまして、議題(3)「PCB塗膜除去作業等でのばく露実態調査について」ですが、事務局から御説明をお願いいたします。
○鈴木環境改善室長補佐 本件につきましては、昨年度開催しました本検討会におきまして実施するということになっておりましたPCB調査の結果とそれに基づく対応について御説明いたします。まずは中災防の山室様から資料4の報告書に基づき実施結果について御説明いただいて、その後、資料5に基づき結果のまとめについて御説明させていただきます。
○中央労働災害防止協会/山室氏 委託事業の中で調査を実施させていただきました中央労働災害防止協会の山室でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、報告書を御説明させていただきます。
 まず1ページ目です。こちらに趣旨がございますけれども、こちらは後ほど担当官から御説明いただけるかと思いますので、調査事業場から御説明させていただきたいと思います。
 一つはPCB廃棄物処理作業、もう一つはPCB含有塗膜除去作業、この2つについて調査を実施しております。
 PCB廃棄物処理作業では4事業場の調査を実施させていただきました。PCB廃棄物が入れられたドラム缶やフレコンバッグは、焼却炉に直接投入することができないので、それを小分けする作業です。30~40 L程度のプラスチック容器にドラム缶やフレコンバッグに入った廃棄物を移し変えるということを作業として行っていました。
 PCBの含有塗膜除去作業ですが、こちらは全部で6事業場調査を実施させていただきました。高架橋であったり河川橋でPCB含有塗膜の除去を行っているというところで、ベンジルアルコールを含有する塗膜除去剤を使った湿式の処理のところが3事業場、乾式の処理でブラスト工法が2事業場、パルスレーザー工法が1事業場です。塩素系の剥離剤が最初に工法で挙がっていたのですけれども、これを使っているところは1つもありませんでした。2ページ目の表1がその塗膜除去の工法の6事業場の内訳になります。
 調査の方法としまして、まずPCB廃棄物処理作業です。
 3の(1)ですが、本調査のところで、まず1つはPCBの作業環境測定ということで、A測定、B測定を実施いたしました。
 それから、PCBなので、その中にはダイオキシン類が当然含まれますので、ダイオキシン類についても把握することにしました。各測定点で測ると非常に大変なことになりますので、ごみ焼却施設の測定を参考に、併行測定という形で1測定点でダイオキシン類の測定とPCBの測定を同時に行うというやり方をして、PCBの濃度からダイオキシン類の濃度を算出すように濃度変換係数を求めて、各測定点のダイオキシン類濃度を推定するという方法で測定を行いました。
 それから、作業者全員というわけにはいかなかったのですが、個人ばく露測定ということで、小型のサンプラーを取り付けての測定も行いました。
 4ページです。血液中のPCB濃度、血液中のダイオキシン濃度の測定も同時に、個人ばく露測定を実施させていただいた労働者を対象に実施しております。
 それから、その調査のときに取り扱われていた廃棄物、全てを分析というわけにはなかなかいかなかったのですけれども、ピックアップして、その中に含まれるPCBの含有率を分析させていただいております。事業場様からもデータをご提供いただきました。
 次に塗膜除去作業です。
 こちらは屋内の作業場ではあるのですけれども、人の動きが非常に多くて、また真っ暗で狭い中で作業をされているので、A測定、B測定というのはなかなか難しかったということで、個人ばく露測定を中心に行いました。
 それから、ダイオキシン類の濃度の確認のために併行測定を行いました。ただ、防爆仕様の機械でないと測定器を持ち込めないというところがありました。また、ポンプが動かなかったというのが1つありまして、そちらは工事現場で商用電力をそのまま使えずに発電機が使われていたということだったので、恐らくその辺の影響があったのではないかと思われますが、100%全部ダイオキシン類の測定ができたわけではないということです。
 それから、血液中のPCB濃度、血液中のダイオキシン濃度の測定をこちらでも実施しております。
 塗膜中のPCB含有量につきましては、工事前に発注者側からとか、事前調査ということで施工される業者さんが分析をしておりますけれども、そのほかに、我々が調査を実施したときに取り扱っていた塗膜ということで、廃塗膜中のPCB濃度の測定をこの調査の中で実施いたしました。
 測定結果ですけれども、6ページに表4~6に示したということで書いてあるのですが、これは事業場ごとの個別のデータになりますので、今日配付の資料からは除いています。
 考察のところに測定結果のまとめという形で書かれていますので、こちらを読み上げてまいりたいと思います。
 まずPCB廃棄物処理作業です。
 PCB廃棄物処理作業では、4事業場で調査を行い、PCBの含有量が5,000~36,000 mg/kgの廃棄物をドラム缶やフレコンバッグから30~40 L程度のプラスチック容器に移し替える作業が行われていたということです。
 PCBの作業環境測定の結果は、全ての事業場で第1管理区分でした。
 PCBを対象とした個人ばく露測定結果は、0.0005~0.0065 mg/m3、幾何平均値では0.0016 mg/m3で、測定を行った全ての労働者で日本産業衛生学会の許容濃度0.01 mg/m3を下回りました。
 7ページです。
 PCB廃棄物を直接取り扱う労働者は、全面形面体を有するプレッシャデマンド型エアラインマスク、化学防護服及び化学防護手袋を着用して作業を行っていました。
 血液中のPCB濃度の測定結果は0.2 µg/L未満~2.4 µg/Lで、幾何平均値としては0.57 µg/Lでした。測定を行った全ての労働者で日本産業衛生学会の生物学的許容値25 µg/Lを下回りました。
 ダイオキシン類の作業環境測定は、PCBのA測定値及びB測定値に併行測定で求めた濃度変換係数を乗ずることによって各測定点のダイオキシン類濃度を算出して評価を行いました。
 ダイオキシン類の作業環境測定の評価は、C事業場が第1管理区域に相当、D事業場が第3管理区域に相当ということです。A事業場とB事業場につきましては、その下に理由が書いてあるのですけれども、評価は行うことができなかったということです。A事業場は算出したダイオキシン類濃度の定量下限値がダイオキシン類の管理すべき濃度2.5 pg-TEQ/m3を超えてしまっていたということで、これでは評価できないということです。B事業場では、併行測定点でのPCBの測定値が定量下限値未満なので濃度変換係数を計算することができなかったというものです。
 次に、ダイオキシン類の個人ばく露測定もPCBの個人ばく露測定結果に濃度変換係数を乗じることによって求めております。第1管理区域相当のC事業場のダイオキシン類の個人ばく露測定結果は1.8~4.5 pg-TEQ/m3、幾何平均値で3.0 pg-TEQ/m3で、測定を行った4名中2名がダイオキシン類の管理すべき濃度を超えていました。また、第3管理区域相当のD事業場では、移し替え補助作業者1名は19 pg-TEQ/m3未満でありましたけれども、移し替え作業を行っていた1名の方は105 pg-TEQ/m3であったということです。
 血液中ダイオキシン類濃度の測定結果は1.9~20 pg-TEQ/g-fatということで、幾何平均値は6.9 pg-TEQ/g-fatで、日本人の血液中ダイオキシン類濃度0.39~56 pg-TEQ/g-fat、平均値では11 pg-TEQ/g-fatの範囲内であったということです。
 ダイオキシン類の作業環境測定結果や個人ばく露測定結果が管理すべき濃度よりも高い測定結果であるにもかかわらず血液中のダイオキシン類濃度が日本人の血液中ダイオキシン類濃度と比較して高くなっていないのは、労働衛生保護具によってばく露が抑制できているためであると考えられたということとさせていただきました。
 次にPCB含有塗膜除去作業です。
 PCB含有塗膜除去作業では、湿式で3事業場、乾式で3事業場の調査を行いました。
 剥離した塗膜くず中のPCB含有量は、湿式で740 mg/kgが1事業場、50 mg/kg未満が2事業場でありました。乾式では94 mg/kgが1事業場、50 mg/kg未満が2事業場でありました。これら分析を行った塗膜くずには、湿式では剥離剤がその中に含まれております。それから、乾式では研削材のくずや塗膜と一緒に削り取られた鉄さび等も含まれておりますので、塗装されていた塗膜中のPCB含有量そのものを示しているものではありません。
 PCB含有塗膜除去作業を行う労働者は、湿式のところと乾式のパルスレーザー工法では、全面形面体を有する電動ファン付き呼吸用保護具で、吸収缶は防じん機能付きの有機ガス用吸収缶を使用されていました。化学防護服、化学防護手袋及び化学防護長靴または化学防護服と同じ素材の靴カバーを着用して作業を行っていました。乾式のブラスト工法では、スーツ型またはフード型のエアラインマスク、化学防護服、化学防護手袋及び化学防護長靴または化学防護服と同じ素材の靴カバーを着用して作業を行っていました。
 PCBを対象とした個人ばく露測定では、湿式では測定を行った9名中6名で0.001 mg/m3未満、1名が0.001 mg/m3、残りの2名が0.002 mg/m3未満で、乾式では0.001 mg/m3未満~0.03 mg/m3、幾何平均値としては0.002 mg/m3と、測定を行った全ての労働者で日本産業衛生学会の許容濃度を下回っていました。
 血液中PCB濃度の測定結果は、湿式では0.2 µg/L未満~0.4 µg/L、幾何平均値としては0.28 µg/Lで、乾式では0.2 µg/L未満~5.8 µg/L、幾何平均値としては0.34 µg/Lで、測定を行った全ての労働者で日本産業衛生学会の生物学的許容濃度を下回っていました。
 ダイオキシン類の個人ばく露測定結果は、PCB廃棄物処理作業同様に、PCBの個人ばく露測定結果に濃度変換係数を乗じることによって求めています。湿式でダイオキシン類の測定を実施することができたG作業場では、併行測定点のPCB測定結果が定量下限値未満であったため濃度変換係数を算出することができず、個人ばく露測定のダイオキシン類濃度を求めることができませんでした。乾式では、濃度変換係数を算出することができたH事業場で測定を行った2名の個人ばく露測定結果が17 pg-TEQ/m3及び21 pg-TEQ/m3と、ダイオキシン類の管理すべき濃度を超えていたという状況です。
 血液中ダイオキシン類濃度の測定結果は、湿式では2.0~7.8 pg-TEQ/g-fatで、幾何平均値としては3.8 pg-TEQ/g-fatで、乾式では2.3~35 pg-TEQ/g-fat、幾何平均値としては4.3 pg-TEQ/g-fatと、日本人の血液中ダイオキシン類濃度の範囲内でありました。
 その下に参考のデータが書いてありますが、そこは飛ばさせていただきまして、下から4行目、乾式のブラスト工法でダイオキシン類の気中濃度測定結果や個人ばく露測定結果が管理すべき濃度よりも高い測定結果があるにもかかわらず血液中のダイオキシン類濃度が日本人の血液中ダイオキシン類濃度と比較して高くなっていないのは、労働衛生保護具によってばく露が抑制できているためと考えられたということでまとめさせていただきました。
 今申し上げたようなことを9ページ目にまとめとして記載しております。
 以上で説明を終わります。
○小野座長 ありがとうございました。
 続きまして、厚生労働省から資料5について、まとめになると思いますが、説明をお願いします。
○西川測定技術係長 続きまして、厚生労働省から資料5に基づきまして御説明させていただければと思います。
 一部内容について資料4の内容と重複がございますが、御容赦いただければと存じます。
 資料5をお開きいただきまして、まず今回の調査の目的について御説明いたします。
 PCB含有物につきましては、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」に基づきまして、令和9年3月末までに処分委託を完了し、PCBを含む既設の塗装塗膜を除去することが求められているところでございます。
 また、従来、5,000 mg/kg以下のものに限って焼却処理等の対象としてきたところ、令和元年12月より100,000 mg/kg以下のものまで焼却処理等の対象となったという改正がございました。
 しかしながら、これらの塗膜除去作業におけるPCBのばく露の実態の知見はなく、また、100,000 mg/kg以下の高濃度の焼却処理等におけるばく露の実態の知見も限られているということがございましたため、今回、当該ばく露実態調査について実施し、その結果を報告するものでございます。
 2番の「調査対象事業場と調査内容」につきましては、先ほど資料4について御説明させていただいたものと同様でございますので、こちらは割愛させていただきます。
 次の2ページ目、3「PCBに係る結果と考察」を御覧ください。
 PCB廃棄物処理作業を行っている4事業場の調査結果として、PCBの作業環境測定結果の評価は全て第1管理区分であり、個人ばく露測定結果は日本産業衛生学会の許容濃度0.01 mg/m3を下回っております。
 また、作業者の方々の血中総PCB濃度測定結果についても、日本産業衛生学会の定める生物学的許容値25 µg/Lを下回っておりました。使用している保護具については、いずれも「PCB廃棄物の処理作業等における安全衛生対策要綱」で定める保護具相当のものを使用したものでございます。
 PCB含有塗膜除去作業が行われた湿式3事業場、乾式3事業場の合わせて6事業場の調査結果でございますが、PCB個人ばく露測定結果については、湿式、乾式のいずれの事業場においても日本産業衛生学会の許容濃度0.01 mg/m3を下回っておりました。
 また、血中総PCB濃度測定結果についても同様に生物学的許容値25 µg/Lを下回っているものでございます。使用している保護具について、「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」で定めております送気マスクまたは防じん機能を有する防毒マスクを使用しておりました。
 以上のことから、廃棄物処理作業及び塗膜除去作業のいずれにおいても、PCBは個人ばく露測定結果、血中濃度測定結果ともに日本産業衛生学会の許容濃度、生物学的許容値以下であり、また、各々の作業において行うべき既存の対策に基づく保護具の使用によってばく露量が抑制されたものと考えられました。
 4「ダイオキシン類に係る結果と考察」でございます。
 PCB廃棄物処理作業を行っている4事業場の調査結果でございますが、1事業場で第3管理区分、1事業場で第1管理区分という結果が得られております。また、個人ばく露測定結果については、3事業場で8人の測定が結果が得られまして、定量できた5名のうち、ダイオキシン類の管理すべき濃度2.5 pg-TEQ/m3を超えている結果が3名の作業者の方に見られております。しかしながら、こちらの作業者の方を含め、血中ダイオキシン類濃度の測定結果については全て日本人の血中ダイオキシン類濃度の範囲内でございました。これらの作業者の方々におかれましては、「PCB廃棄物の処理作業等における安全衛生対策要綱」に基づくダイオキシン類等のばく露防止対策に定める相当以上の保護具を使用したものでございます。
 また、PCB含有塗膜除去作業が行われた6事業場でございますが、こちらにおいては乾式のブラスト工法の1事業場で個人ばく露測定で2名の結果が得られておりますが、いずれもダイオキシン類の管理すべき濃度を超える結果が得られております。しかしながら、これらのブラスト工法の1事業場を含む全ての事業場の作業者の血中ダイオキシン類濃度の測定結果は、日本人の血中ダイオキシン類濃度の測定の範囲内でございました。このブラスト工法を行っております事業場で使用している保護具については、「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」で定める送気マスク使用しておりました。これらの結果から、乾式のブラスト工法で個人ばく露測定結果が管理すべき濃度よりも高いという結果があるにもかかわらず血中のダイオキシン類濃度が日本人の血中ダイオキシン類濃度と比較して高くなっていないのは、既存の対策に基づく労働衛生保護具によってばく露が抑制できているためと考えられました。
 以上の結果から、5の「まとめ」でございますが、PCBのばく露防止対策においては、PCBは作業環境測定結果から粉じん及び気体中において飛散する量はわずかであり、血中濃度も低いことから、現行で定められております「PCB 廃棄物の処理作業等における安全衛生対策要綱」または「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」で定める労働衛生保護具の使用でばく露が抑制できるものと考えられました。
 (2)のダイオキシン類ばく露防止対策についてでございます。ダイオキシン類については、廃棄物処理作業、塗膜除去作業のいずれにおいても作業環境評価が第3管理区分や個人ばく露測定結果が管理すべき濃度を超える結果が得られておりますが、血液中のダイオキシン類濃度は、いずれもの作業者の方も日本人の血液中ダイオキシン類濃度と比較して高くなっていなかったことから、「PCB 廃棄物の処理作業等における安全衛生対策要綱」または「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」の現行の規定で定める労働衛生保護具の使用でばく露が抑制できたものと考えられました。
 5ページから7ページには測定結果を並べておりますので、こちらについても御説明させていただきます。
 資料5の5ページでございますが、こちらはPCBの個人ばく露測定及びダイオキシン類の個人ばく露量について記載させていただいております。
左側がPCBの個人ばく露測定でございますが、AからJのいずれの作業場においても基準の0.01 mg/m3を下回っているものでございます。一方、右側のダイオキシン類の個人ばく露量については、C事業場で4.5と4.0、D事業場で105、H事業場で17と21と、管理すべき濃度2.5 pg-TEQ/m3を超えている事業場がございます。
 その次の作業環境測定結果でございますが、こちらではPCBは同様に基準を下回る結果でございますが、H事業場で18 pg-TEQ/m3と管理濃度を超えるものがございました。
 しかしながら、最後の7ページ目、こちらは血中濃度の一覧でございますけれども、PCBの血中濃度については25 µg /Lの生物学的許容値があるところ、最も高い事業場がH事業場の5.8 µg/Lでございまして、ほかの事業場も含めていずれも十分に下回っているものでございました。また、ダイオキシン類の血中濃度については、こちらに記載しておりますけれども、最も高いのがH作業場の35 pg-TEQ/g-fatでございまして、これも含めていずれもダイオキシン類の日本人の通常の血中濃度の範囲内となっておりました。
 以上、御説明させていただきました。
○小野座長 ありがとうございました。
 今のPCBのばく露実態調査の結果報告につきまして御質問、御意見がございましたら、お願いいたします。
○保利委員 資料4のダイオキシンについては図2のハイボリで測定されたのですね。
○中央労働災害防止協会/山室氏 はい、そうです。
○保利委員 個人ばく露はPCBとの併行測定からということでよろしいのですね。
○中央労働災害防止協会/山室氏 実際は、これは結構大き目のフィルターのフォルダがついていますが、もっと小さなものが市販されていたので、そちらを使いました。
○保利委員 これではないということですね。
○中央労働災害防止協会/山室氏 これとは違います。ただ、ろ過捕集をして、その後段にフロリジル管を連結して測定しております。
○保利委員 そうすると、図3にはダイオキシン類測定で使用したサンプリング機器と書いてありまして、個人サンプリングの写真が載っているのですけれども、これはPCBの測定ではなくてダイオキシンでいいのですか。
○中央労働災害防止協会/山室氏 これはダイオキシンではないです。失礼いたしました。PCBです。これではダイオキシンは測れません。
○松村委員 こういう非常に厳しい作業場で、呼吸用保護具については最高度の保護が得られるようなものを使っているということが分かりました。確かにその効果があったということで、非常に安心するわけですけれども、防護服については特に詳細な分類は何も書いていないのです。例えばブラスト作業などですと、非常に厳しいほこりが舞う作業場だと思うのですけれども、防護服については何か取り決めがあるのでしょうか。自由でいいのでしょうか。種類としては全身防護服もありますし、セパレート型のものもありますし、いろいろあると思うのですけれども、その辺は何か共通の基準のようなものがあるのでしょうか。
○中央労働災害防止協会/山室氏 特に基準はないのではないかと思うのですが、湿式ではJISでいうタイプ3~6のものとかタイプ4~6のものを使われているということで、タイプ3が液体防護用密閉服、タイプ4がスプレー防護用密閉服、タイプ5が浮遊固体粉じん防護用密閉服、タイプ6がミスト防護用密閉服ということです。
 廃棄物処理については、液体に直接触れることは少ないということだと思いますけれども、タイプ5~6のもの、浮遊固体粉じん用とミスト防護用の密閉服を使われていたところがほとんどだったということです。
 それから、乾式の塗膜除去ではタイプ4~6を使っているところが1社ありました。スプレーと浮遊固体粉じん、ミスト防護用。それから、もう一社は自社でつくられているものなので、素材自体はよく分かりませんが、表面にビニールコーティングしているような化学防護服、タイプ3~6に相当するようなものではないかと思われるスーツを、これはセパレート型でしたけれども、使われていました。ほかは皆さんつなぎ服を使われていたということです。
○松村委員 気密服というのはタイベックスのようなものですね。不織布製のものですか。
○中央労働災害防止協会/山室氏 全部タイベックスみたいなものですね。あと、特に気をつけられている事業所さんは化学物質にも十分対応できるようなものを使われていたのだろうと思います。タイプ3ですね。液体防護用ということで、結構ごわごわしていて、私もそれを着て中に入っていましたけれども、腕のゴムのあたりが大分痛くてすれて赤くなってしまうような服でした。
○松村委員 密閉服というのは、名前が密閉を保証するような名前なのですけれども、実はあれは、例えば首の周りとか腕の周りで体が屈伸する度にポンプ作用で外気が結構服の中に入るのです。あれは決して密閉していないので、できれば全身送気式の全身防護服みたいなものが本当はいいかなという気がいたします。
○小野座長 ありがとうございました。
 ほかにはございませんでしょうか。
○藤間委員 資料4の35ページのところで、勤務の状況とか実際の作業者の経験年数とか、いろいろお聞きしていると思うのですけれども、こういう剥離作業とかを行う作業者の実際の就労状況というのですか、例えばこの作業をずっと毎日やっているとか、あるいはいろいろな作業を経る中である日はこれをやっているとか、そういう勤務状況はどういう状況なのでしょうか。
○中央労働災害防止協会/山室氏 廃棄物処理については事業場それぞれで違う事情があるようで、そればかりやっている事業場さんが1事業場、それから高濃度のPCBの廃棄物を取り扱うのをたまに行うというところが3事業場。そのような感じでした。
 塗膜除去については、建設業の関係で、人の流動が非常に激しいようです。ある事業場さんは経験数か月という人だけで作業をしている。それは1事業場だけでした。ほかのところは数年という経験年数です。
○藤間委員 血中濃度で問題なしということですけれども、そのあたりの勤務状況によって大きく変わってくるところがある気がいたしましたので、お尋ねした次第です。ありがとうございます。
○小野座長 ほかにはいかがでしょうか。
○大前委員 今の委員のお話と関連するのですが、この事業場、それから血中濃度を測った作業者の方々は母集団を代表していると見てよろしいのですか。あるいは取り立てていい事業場みたいな偏りはないのでしょうか。
○中央労働災害防止協会/山室氏 作業者の方は、何人かお願いしたいということでお願いして、事業者から選んでいただいたという状況です。
○小野座長 全体で何人ぐらいいて、そのうちのどれぐらいをカバーしているというか、代表的な仕事量とこのバイオロジカルモニタリングをさせていただいた集団との関連性がもしお分かりでしたら、お願いいたします。
○中央労働災害防止協会/山室氏 廃棄物処理で実際にPCBの廃棄物を手で触られる方は4事業場のうち2~4人程度という感じで、2人だけ測定したところもあれば、4人全員測定したところもあるという状況です。
 塗膜除去の関係は、工事をすごく急いでやる場合とそれほど急がない場合といろいろケースがあるみたいで、4人ぐらい1グループで1つの区画を剥がしているというときに測定をやったところが大部分です。それから、非常に多くの人数で、もう年末ですぐにでも剥がさなければいけないといった感じのところもありまして、そこでは20人ぐらいが剥離に入っていたと思うのですけれども、そこでも4人の測定に御協力いただけたというような状況です。
○小野座長 ありがとうございます。
 実際に剥離作業をしている方の全体ではないにしても、数名は測っていたという理解でよろしいでしょうか。
○中央労働災害防止協会/山室氏 はい。1名ということはありません。ただ、1名だけしか作業がなかったというところも1か所だけありましたけれども。
○小野座長 分かりました。
 よろしいでしょうか。
○小嶋委員 細かいことで気になったのですが、資料4の4ページの(エ)のプッシュプル型換気装置の有効性の確認のところで、装置を稼働させた状態で有効性を確認されているとのことですが、この際、換気区域内に作業者はいない状態で確認されたのでしょうか。
○中央労働災害防止協会/山室氏 はい。換気区域に人がいない状態で確認させていただいております。
○小嶋委員 気になったというのは、プッシュプルは局排と違って換気区域の中に作業者が入ってくることが多いと思いますが、その作業者自身が気流の大きな障害物になりますので、作業者がいない状態で有効であっても、実際の作業で作業者が入ってくると有効でないという場合があります。ですから、欲を言えば作業者が入った状態で確認したほうがよろしいのではないかと思い、お聞きした次第です。
○中央労働災害防止協会/山室氏 ありがとうございます。
○小野座長 ありがとうございました。
 ほかはよろしいでしょうか。
 名古屋委員、よろしいですか。―分かりました。
 ほかにございませんでしょうか。
○中明委員 山室さんのところで一生懸命たくさんやってくれて、非常に密な調査で大変だったと思うのだけれども、改善室にお聞きしたいのは、こういった作業がかなりほかにもあるのか。今、大きいところで40~50人いると言っていたでしょう。そういうのがまだほかにあるのでしょうか。あるのだったら、今回山室さんのところでやったような調査は絶対にできないから、そうすると、もっと全体的なものでやるのだったら、それなりの対応をどうするかということが大事になってくる。だから、情報としてこの剥離というようなことの情報はかなりあるのですか。なければ今回のはそれはそれでいいということになると思うのだけれども、どうですか。
○成毛環境改善室長 塗膜の剥離の仕事というのは多分今後も続くだろうと思いまして、その中でもPCBが入っているのがあるかどうかは環境省でも調査していまして、昭和41年から47年の頃の塗膜がまだ残っているという橋梁があるみたいでして、今その掘り起し調査をやっているということなので、今後もそういうのはあるだろうということでございます。
○中明委員 そうすると、まだまだ同じような条件の作業をしなければいけないということは十分考えられると判断できますね。
○成毛環境改善室長 おっしゃるとおりでございます。
○中明委員 では、それに対して、例えばどのような、彼らのところでちゃんと調べてくれたからそれと大きく異なることはないと思うのだけれども、そこら辺をどうするかは少しインプットしておいたほうがいいような気がする。
○成毛環境改善室長 おっしゃるとおりでございます。今回の調査でPCBを測定したけれども出なかったというのが1つありまして、これはPCBという視点だけでは確かになかったという話なのですが、塗膜の剥離という作業現場は、粉じんもあれば、鉛もあれば、さらには剥離剤という化学物質もあるわけで、いろいろなハザードがあって、リスク的にはPCBより高いものがあるだろう、そちらの対策を特に重視していかなければいけないだろうという理解でおりまして、逆に言うと、剥離剤対策とか粉じん対策をやることによってPCBに対しても防御できるだろうというような整理でいけると考えております。
○中明委員 ありがとうございます。
○小野座長 ほかにはよろしいでしょうか。
 では、特に御意見がないようでしたら、PCBばく露実態調査に基づく措置については、「PCB 廃棄物の処理作業等における安全衛生対策要綱」あるいは「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」という通達が出ておりまして、それに基づく措置で少なくともPCB及びダイオキシンについては十分な措置が満たされていたという理解になりました。ということで、今後もこのような作業のときにはこの要綱類にきちんと従っていただくということが重要であろうということになると思います。
 では、PCBばく露実態調査については、皆様の御意見を踏まえて、さらに必要に応じて追加の情報収集を行うことといたします。ありがとうございました。
 次に、最後に「その他」という議題がございます。
 事務局からお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 検討をお願いしたい案件としましては以上となっております。
 先ほどの議題1の説明の中でも御案内しましたとおり、次年度は現行のリスク評価制度は運用しない方向で進めております。しかしながら、現在発がん性試験を実施中であるものとか、発がん性試験の評価の結果がん原性指針への追加の対象とされて現在作業環境測定方法とか保護具を検討していただいているものが一部残っております。次年度以降もがん原性指針への追加に関する対応が必要となる見込みがございますので、来年度もこの措置検討会についてはまたお付き合いいただければと思います。次年度に開催する際につきましては改めて日程調整をさせていただきますので、その際にはよろしくお願いいたします。
 以上となります。
○小野座長 ありがとうございました。
 以上で本日の化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会の議題は全て終了いたしましたので、閉会させていただきます。
今日も長時間ありがとうございました。