第1回小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和3年2月1日(月) 17:00~19:00

議題

  1. (1)座長の選任について
  2. (2)事業の実施にあたり検討が必要な事項について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第1回「小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課がん対策推進官の岩佐と申します。
開会に当たりまして、本来でありますと健康局長の正林から御挨拶申し上げるところでございますが、公務により欠席となりますことから、がん・疾病対策課長の古元より御挨拶をさせていただきます。
○がん・疾病対策課長 皆さん、厚生労働省がん・疾病対策課長の古元と申します。本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。御礼申し上げます。
第1回小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法に関する検討会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
皆様におかれましては、平素よりがん・生殖医療対策の推進に御尽力を賜り、心から御礼を申し上げます。また、お忙しい中、御出席を賜り、重ねて御礼を申し上げます。
小児・AYA世代のがん患者さんは、ライフステージに応じて生殖機能などの状況が異なり、心理・社会的状況も様々であるため、個々の患者さんの状態に応じた多様なニーズに対応できることが課題として挙げられております。
第3期がん対策推進基本計画におきましては、こうした小児・AYA世代の患者さんに対して、関係学会と協力して生殖機能の温存などについて、正確な情報提供や必要に応じて適切な生殖医療を受けられるような体制構築に向けて、整備を進めてきたところでございます。
こうした取組を進めてきた中、昨年、関係学会や患者の皆様などから御要望いただき、令和3年度から小児・AYA世代のがん患者などに対する妊孕性温存療法研究促進事業を開始する運びとなりました。これは経済的負担となっている妊孕性温存療法に係る費用助成を行いつつ、妊孕性温存療法の有効性などの検証を行っていく事業でございます。
また、この事業は若い患者さんに将来子どもを持つという可能性を与え、希望を持って病気と闘っていくための取組でございます。本日は、この事業の対象者や治療を提供する医療機関などに求められる要件につきまして、御議論いただきたいと思っております。構成員の皆様におかれましては、よりよい事業となるよう御意見を賜れればと思いますので、本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
簡単ではございますが、御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いします。
○がん対策推進官 それでは、引き続き座長が選任されるまでの間、進行を務めさせていただきます。
構成員の皆様方をまずは御紹介させていただきます。資料1の2枚目の名簿に従いまして順次御紹介させていただきますので、お名前を呼ばれた方は一言御挨拶をいただければと思います。ただ、後の議事が非常に内容が豊富になっておりますので、お一人様30秒程度で御挨拶いただければと思っております。
それでは、まず公益社団法人日本看護協会常任理事の荒木暁子構成員でございます。
○荒木構成員 日本看護協会の荒木と申します。よろしくお願いします。
○がん対策推進官 続きまして、千葉大学泌尿器科学教授、市川智彦構成員です。
○市川構成員 千葉大学泌尿器科の市川智彦と申します。泌尿器科学が専門ではございますけれども、その中でも生殖医療については一応私のライフワークとして行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、東京大学産婦人科学教授、大須賀穣構成員です。
○大須賀構成員 東京大学産婦人科の大須賀穣と申します。これは非常に重要な分野でございますので、精いっぱい頑張らせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、公益社団法人日本医師会常任理事、神村裕子構成員です。
○神村構成員 神村でございます。私は内科医、産業医をやっております。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、NPO法人がんノート代表理事、岸田徹構成員です。
○岸田構成員 がんノートの岸田と申します。まさに僕は25歳と27歳でがんに罹患しているのですが、そのときにこの妊孕性の温存、精子の凍結などを行ってまいりました。また様々な患者さんのインタビューもしていまして、その中のケースなど基に皆さんに患者側からお伝えできればと思っております。よろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、国立研究開発法人国際医療研究センター病院のがん総合診療センター副センター長、清水千佳子構成員です。
○清水構成員 遅れまして申し訳ございません。国立国際医療研究センターの清水でございます。私は、乳がんの薬物療法を専門にしておりまして、今ガイドラインにしようとしていますけれども、厚労科研あるいは日本がん生殖医療学会で乳がん患者の妊娠・出産と生殖医療の手引書づくりに関わってきたという立場から、あとは拠点病院でのAYA支援の在り方を検討してきた立場から参加させていただきます。よろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、聖マリアンナ医科大学産婦人科学教授、鈴木直構成員です。
○鈴木構成員 皆さん、こんにちは。聖マリアンナ医科大学産婦人科の鈴木直です。私は婦人科腫瘍医でありオンコロジストであり、また参加婦人科医であるという立場でこの領域を学んでまいりました。今日はよろしくお願い申し上げます。
○がん対策推進官 続きまして、神奈川県健康医療局医務監の中澤よう子構成員でございますが、本日、所用のため遅れると御連絡をいただいておりますので、お入りになられた後に一言御紹介させていただければと思います。
続きまして、京都大学医学部附属病院次世代医療・iPS細胞治療研究センター教授、中島貴子構成員でございます。
○中島構成員 皆さん、こんにちは。中島と申します。私は今、京都大学で治療開発中心の部門にいるのですけれども、昨年2月まで聖マリアンナ医科大学の腫瘍内科で臨床研究等を行っておりました。その際に、今日御出席の鈴木直先生に臨床、また腫瘍センターにおける妊孕性温存グループの活動におきまして大変お世話になっておりまして、勉強させていただいておりました。本日は非常に貴重な取組に参加させていただきまして、光栄に思っております。よろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、国立研究開発法人国立生育医療研究センター小児がんセンター長、松本公一構成員です。
○松本構成員 国立生育医療研究センター小児がんセンター長を務めております、日本小児血液・がん学会の理事も務めております松本と申します。小児がんは今8割治る時代になりましたので、長期フォローアップというのは非常に大事な分野になっております。このような案件が検討されることを非常にうれしく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、若年性乳がんサポートコミュニティPink Ring代表、御舩美絵構成員です。
○御舩構成員 当事者の立場から参加させていただきます、御舩と申します。ふだんは若年性乳がん患者支援団体の運営をしております。私自身、31歳のときに乳がんになりまして治療前に妊孕性温存をしました。治療後、妊孕性温存のおかげで2人の子どもを授かりました。今回は当事者の立場、そして患者を支援する立場から参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、滋賀医科大学産婦人科学教授、村上節構成員です。
○村上構成員 滋賀医科大学の村上節と申します。地方代表ということで参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、小児脳腫瘍の会代表、馬上祐子構成員です。
○馬上構成員 小児脳腫瘍の会という小児がんの患者会の代表をしております馬上と申します。よろしくお願いします。24歳の娘が1歳の折に幹細胞移植、放射線、手術をして妊孕性は望めないということだったのですけれども、先ほど松本先生がおっしゃっていた長期フォローアップで、卵巣機能低下症という合併症をずっと診てきていただいている中で、まだ卵が残っているのではということで、おととし卵子凍結と卵巣凍結をさせていただきました。小児がん親の会のメーリングリストの世話人などもしておりまして、皆様の声をこちらに届けたいと思います。よろしくお願いします。
○がん対策推進官 続きまして、HORACグランフロント大阪クリニック院長、森本義晴構成員です。
○森本構成員 皆さん、こんにちは。HORACグランフロント大阪クリニックの森本です。私は、体外受精、生殖医療の専門家なのですが、本日は日本生殖心理学会の理事長という立場もありまして、心の医療に関する立場から参加させていただきます。本日は、よろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 続きまして、慶應義塾大学名誉教授、福島県立医科大学副学長、吉村泰典構成員です。
○吉村構成員 吉村です。よろしくお願いいたします。私は産婦人科医でありまして、がん・生殖医療に関してはこれまで鈴木先生方と一緒に研究してまいりました。よろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 本日は、後ほど中澤構成員が来られましたら15名の構成員全員の皆様に御出席をいただくことになります。事務局のほうは、先ほど挨拶しました課長の古元、私、岩佐、ほか課長補佐の片岡等で務めさせていただきます。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。
資料は、厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございますが、議事次第及び資料1~3、参考資料1~5がございますので、いま一度お手元を御確認いただければと思います。
それでは、議題1「座長の選任について」に移りたいと思います。資料1を御覧いただければと思います。本検討会の開催要綱となってございますが、「3.その他」の(2)におきまして「本検討会には、構成員の互選により座長をおき、検討会を統括する」とされております。本規程に基づきまして、構成員の互選により座長を選任いただきたいと思いますが、どなたか御推薦ございますか。
では、鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 本領域を長らく牽引されてこられました慶應義塾大学名誉教授であられます吉村泰典構成員を座長として推薦させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
○がん対策推進官 ほかに御意見等ございませんでしょうか。
ただいま吉村構成員の推薦がございましたので、本検討会の座長をお願いしたいと思います。吉村構成員の座長ということでよろしければ挙手をいただければと思います。
(委員 挙手)
○がん対策推進官 ありがとうございます。それでは、皆様方の御賛同をいただけましたので、吉村構成員に座長をお願いいたします。改めて吉村座長より、一言いただければと思います。
○吉村座長 ありがとうございました。ただいま御推薦いただきました吉村でございます。
本検討会は、小児・AYA世代のがん患者に対する妊孕性温存、がん患者が希望を持って病気と闘い、将来子どもを持つことの希望をつなぐ取組の全国展開を目指しましています。妊孕性温存に関わる費用負担の軽減を図りつつ、妊孕性温存療法の有効性に関する研究を促進することを目的として行う検討会であることを皆様方にも御理解いただいていると思いますが、会の進行をよろしくお願いしたいと思います。
○がん対策推進官 ありがとうございます。
それでは、以降の進行を吉村座長にお願いいたします。
○吉村座長 それでは、議題2「事業の実施にあたり検討が必要な事項について」に移りたいと思います。
それでは、鈴木構成員から資料2を皆さん準備していただいて、説明をお願いいたします。スライドを共有いたします。
○鈴木構成員 それでは、改めまして鈴木から、資料2を御覧いただいて「妊孕性温存療法に関する厚生労働科学研究の取り組み」と題した内容で発表させていただきます。
今から約15~20分の間で4つの内容に関しましてお話をさせていただきます。
がん医療の進歩に伴い、卵子凍結、受精卵凍結、卵巣凍結また精子凍結などの生殖医療の進歩とともに、がんを乗り越えたがんサバイバーの方々が生児獲得、赤ちゃんを授かってだっこすることができるような時代がやってまいりました。
がん治療により根絶してしまう可能性のある患者の生殖機能または妊孕性を何らかの手段で温存する医療、将来の選択肢・可能性を残す医療でもあり、また、将来子どもを授かる、授からないという選択肢を自身で選択できるような情報提供も行う、意思決定支援が重要ながん・生殖医療は、がん医療の一環になるかと思います。
これまで日本においては、主治医と患者さんと産婦人科または泌尿科の先生方との3つの連携が細々と行われてきたかと思うのですが、がん治療医から患者あるいは家族に対する情報提供、そして生殖医療に関する医療連携がなかなか進んでいない現状があったかもしれません。現実には、患者さんを介した医療連携であり、また、医療従事者による意思決定支援等の支援体制はなかったかと思います。
欧米では、2006年にがんと生殖に関するガイドラインが作成され、例えばアメリカであれば全米に医療ネットワークなどが構築されたのが2006年です。2012年に日本がん・生殖医療研究会(現学会)が設立され、また、それ以降は日本癌治療学会、日本産婦人科学会、日本生殖医学会、日本臨床腫瘍学会、日本乳癌学会等でこの領域が取り上げられるようになり、2014年には本邦で初めての手引きが厚生労働省の清水班の清水千佳子先生によって出されました。そして、2017年には日本癌治療学会が小児、思春期・若年がん患者に対する妊孕性温存の診療ガイドラインを作成いたしました。
現在はこの3つの指針、ガイドラインがありますが、5ページの左が、厚生労働科学研究清水班でつくりました「乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き」であり、現在2回目の改訂中となっております。名前は「手引き」から「ガイドライン」に変わる予定です。真ん中の癌治療学会のガイドラインは、2回目の改訂が今年4月以降着手開始となっております。右は、AMEDの大須賀先生のグループで、生殖医療向けの診療マニュアルがつくられました。この3つのガイドラインあるいは指針、マニュアルが本領域の今、根本となっております。
6ページは、厚労科研・清水班でまとめたデータです。がん患者さんに対するがんと生殖に係る助成金が各自治体で、まずは2016年の滋賀県を初めとして開始しましたが、現在、今年1月段階で21府県がサポート体制を整えています。
2017年の癌治療学会のガイドライン発刊以降、このガイドラインにのっとって、がん治療医と生殖医療の先生方が、癌治療学会のガイドラインの適用にのっとって医療を進めていくといった体制が進みつつあるわけです。
7ページは少し細かく説明させていただきます。このガイドラインは、ASCO、アメリカの臨床腫瘍学会が2006年に出したガイドライン。これは2018年まで2回改訂されていますが、このガイドラインを基につくられています。世界中にある妊孕性温存のガイドラインは、全てASCOのガイドラインをベースにしてつくられているわけですが、女性において、あるいは男性において、化学療法や放射線治療による性腺毒性、卵巣や精巣へのダメージが高いリスク、中間リスク、低いリスク、そして超低リスクまたはリスクなし、不明という5段階に分けられていますが、AYA世代のがん患者という観点から、原則として40歳未満で治療を開始した患者が対象となっていますが、臨床の現場では40歳を超えた方に関しても、このガイドラインにのっとってがん治療医と生殖医療医の密な連携の下で妊孕性温存療法が提供されているかと思います。
ちなみに、このガイドラインでは性腺毒性のリスクに関する変更は全くなされておらず、年齢に関する言及はございません。
さて、聖マリアンナ医科大学では、がん・生殖医療外来が2010年1月に開設され、そこで妊孕性温存療法が有効であった患者さんの情報を提供したいと思います。
40歳の乳がんの患者さん。手術後、内分泌療法、ホルモン療法前に妊孕性温存療法を施行しました。43歳でホルモン療法が一次中断されたとき、ホルモン療法というのは長く継続されますので、その前に温存した妊孕性の卵によって、結果的には子どもを授かることができました。ホルモン療法施行年数による卵巣予備能低下が予想される患者さんです。
2つ目は、31歳の乳がんの患者さんです。抗がん剤を使う化学療法開始前に、同様に化学療法の前で卵巣予備能が低下していたことから、この方も受精卵凍結を行いました。年齢的には抗がん剤治療によって、31歳であっても予想以上に卵巣の予備能が低下したことから、結果的に治療開始前の胚があったことから、何とか妊娠が成立したのだろうと考えられている一例です。
3人目も乳がんの患者さんですが、この方は29歳の方です。化学療法施行前に、がん治療医からは29歳で若年のため妊孕性温存は必要ないと言われていましたが、化学療法施行後、自然妊娠が困難な卵巣機能であったため、33歳から不妊治療が開始されました。早発卵巣不全の状態で不妊治療が困難であり、なかなか卵が発育せず、3年かけて採卵10回、胚移植を3回行い、やっと妊娠に至ったわけです。30歳未満であったとしてもこの患者さんは、このガイドラインにおいても、そして低リスクに分類されるこの資料においても、治療後早発閉経となりました。そこで10回の体外受精等々にかかった経済的な負担もさることながら、もしかして温存しておけば治療後長期にわたる頻回な採卵が避けられた可能性がある一例でした。女性の場合は、もともと卵巣予備能に個人差があります。
最後に、10歳の骨軟部腫瘍の患者さんです。アルキル化剤が総量で23g/㎡使用された高リスクの患者さんです。しかしながら、こういったケースでも早く医療連携ができれば、30代から不妊治療を開始し、何とか卵を採ることができ、そして生殖医療の介入によって、つい先日、生育医療センターで無事子どもを授かることができました。
特に女性の場合は、患者さんの卵巣予備能、すなわち原始卵胞の数は個人差が大きいことから、ガイドラインの性腺毒性のリスクが低リスクであろうと、妊孕性温存療法の適応を決めることはなかなかできないです。また、特に女性の場合は、がん等の治療後の生殖医療による身体的・精神的な負荷並びに経済的負担を考慮して、年齢や卵巣の予備能に応じて妊孕性温存療法の実施を検討する必要性があるかと考えております。
次に、がん・生殖医療ネットワークに関する話をさせていただきます。
9ページの左側は、2013年に岐阜県で初めて、このネットワークが岐阜県の自治体とともに出来上がったわけですが、それ以降、2020年までの間には42か所準備中を含めたネットワークが整備されています。厚労科研の研究班で研究分担者の岐阜大の古井先生のまとめたデータですが、昨年1月段階で準備中も含めて25か所の未整備地域を設定し、昨年1月、2月に東京で、各自治体でがん・生殖医療ネットワークの準備室の立ち上げと、今後のロードマップの話し合いを行うということで、参加者はがん側と生殖側、そして行政の担当の方々にお集まりいただき、厚労科研の研究としてのワークショップを行いました。その際、右の課題3つを話し合いました。現状について、そして今後の課題についてなどを話し合ったわけです。
その結果、運営の主体として期待される組織としては、都道府県の行政、都道府県のがん診療連携拠点病院の協議会等、また、都道府県のがん診療連携拠点病院の産婦人科などが運営、すなわち地域のがん・生殖医療ネットワークの主体として期待され、また、新規構築運営の阻害因子としては、マンパワー不足、予算不足、ノウハウがない、主導する組織や関係者がないといったことが、行政の方々にも参加していただいたワークショップで分かったわけです。
未整備地域の80%が現在、連携ネットワークが構築されました。そして、現在未整備地域の青で書かれました地域においても、今年度中にはがん・生殖医療連携ネットワークが構成される予定です。すなわち47都道府県にがん・生殖医療連携ネットワークの構築が何とかできた状況かと考えております。
次に、日本がん・生殖医療登録(JOFR)に関して御紹介申し上げます。
日本がん・生殖医療学会では、登録委員会委員長として埼玉医科大学の高井泰教授を中心として、オンラインのレジストリシステムを3年前より開始しております。
日本がん・生殖医療登録システム(Japan Oncofertility Registry:JOFR)は、現在、東北大学の倫理委員会による一括承認などを得る仕組みで、2021年1月時点で153施設、そのうち41都道府県の107施設が倫理委員会に承認され、現在102施設で登録を開始しております。これで妊孕性温存実施施設の約3分の2が登録を開始したことになるわけですが、新規症例の解析から、各地域でのがん治療施設と妊孕性温存実施施設との連携状況が解析でき、また、これらの解析からがん側と生殖側の2つのアウトカムを導き出すことができるシステムです。
14ページは、実際にJOFRへ登録する項目であり、入力は生殖側の施設が行うことになっておりますが、がん側のアウトカムと生殖側のアウトカムをこれから長期にわたり登録を確認し、エビデンス構築と、この領域のさらなる発展を目指していく予定です。
2018年11月から登録が開始されましたが、15ページは年度別のJOFR登録症例数ですが、1月の段階で4,310症例、男性1,693、女性2,617例の登録が進んでおります。
16ページに示すように、それぞれの年度別の胚凍結、卵子凍結等々が現在把握されつつありますが、この報告においても既に妊娠例133例の報告がなされております。
最後に、人材育成係るお話をさせていただきます。
がん・生殖医療における医療従事者の役割は非常に大きく、なぜならば対象患者は一般不妊の患者さんではなく、がん患者さんであることが大事です。何よりも、まずはがんを乗り越えるということで、がん治療が優先されるため、その意思決定支援が非常に重要となっています。繰り返しになりますが、子どもを授かるという選択と、授からないということ、つまり妊孕性温存を選ばないことが選べるような意思決定の支援体制が必要であり、まずは、がん側の看護師さん、生殖側の看護師さんもそうですが、心理支援を行う心理士、また薬剤師、若年の患者さんが少なくないことから遺伝カウンセラーやソーシャルワーカー、相談員の方々、そしてこの技術を守る胚培養士の方々など、多くの医療従事者の参画が必要な領域です。
私ども厚生労働学研究班においては、2014年から2019年においては、若年乳がん患者の心理支援方法の開発、心理支援に関する臨床試験などを行ってまいりました。そして、心理社会的ケアを提供するための組織体制を構築し、がん・生殖専門心理士の養成講座なども開設しております。
その次の3年間では、未婚の男性への精子凍結の心理教育プログラムの開発、未婚女性の乳がんに対する妊孕性温存の心理教育プログラムの開発、小児・思春期のがん患者さんに対するインフォームド・コンセントアセントの在り方に関する調査研究を行っております。
20ページは、日本生殖心理学会の森本理事長と、日本がん・生殖医療学会、そして厚労科研の三者で2016年より開始してまいりました、がん・生殖医療専門心理士養成講座です。対象は、ベテランの臨床心理士の方々で、かつ生殖あるいはがん領域で既に研修や資格を修了した方です。講義と演習と陪席実習を行い、試験を行い、最終的には資格を日本生殖心理学会が行うわけですが、現在、全国に43名のがん・生殖医療専門心理士の方々がいらっしゃいます。
私たち厚労科研の研究班においては、結婚している乳がん患者さんに対して、プライマリーエンドポイントとして、夫婦それぞれの精神的健康、鬱、PTSDを定め、A群、B群、これは介入群と非介入統制群に分け、RCT(ランダム化比較試験)を行い、そこにがん・生殖医療専門心理士の方々に介入していただく試験を行いました。その結果、2回のO!PEACE心理療法で乳がん患者さんが精神的に健康になり、PTSDの状態が低下し、夫の妻に対する回避的対処が減少し、夫婦関係が良好になったという結果が得られ、がん・生殖医療専門心理士の介入の妥当性が示されたと思っております。
様々な理由で妊孕性温存ができなかった患者、私の担当である婦人科の患者さんや、こういった情報を意思決定してもらえなかった患者さん、また妊孕性温存を選択しなかったがん患者さんの心理状況を把握し、希望を失わずにがんと闘う患者の心理を支援する在り方も、研究をこの3年間で行っております。
また、43名の専門心理士の質向上を目指した研究なども、国立がん研究センターの東先生とともに、こういった研究を行っております。
一方、看護師さんにおいては、厚労科研の健やか次世代育成総合研究事業、大須賀穣教授の大須賀班において、がん・生殖医療に精通した看護師、がん側と生殖側ですが、オンコファティリティー・ナビゲーター・ナースの養成を今、始めております。
さらに、薬剤師の方々においては、日本がん・生殖医療学会の薬剤部門の責任者であります、国立がん研究センター東病院、米村雅人を中心に、抗がん薬の副反応でもある性腺毒性や、それに伴う妊孕性温存療法並びにがん・生殖医療領域を薬剤師にも啓発し、学ぶ環境を現在構築しております。
そして、現在、厚労科研鈴木班においては、適切な長期検体温存方法及び運用体制の構築を志向し、生殖臓器の長期的保存技術・情報化の統括ヘッドクォーター体制の構築、すなわち長期保存の拠点化を目指した研究を進めており、その中でこの技術を担う胚培養士の支援開発なども行っております。
全体をまとめて日本がん・生殖医療学会においては、この目的として、学際的かつ多領域並びに多職種にまたがるがん・生殖医療の社会への啓発、並びにがん・生殖医療における意思決定支援に関わる人材育成を目指して、金沢大学の小野政徳先生を中心として認定がん・生殖医療ナビゲーター制度をつくっております。
この中には、2階建てにがん・生殖専門心理士やがん・生殖医療の看護師などが位置付くわけですが、今年度から始まります研究班では、31の講座のeラーニングと教育システムを構築し、まず最初に、ナビゲーターに入っていただいた方々を中心に研究を行い、教育システムの効果検証を行った後、本格的に認定ナビゲーター制度を導入していく予定です。
現在、認定ナビゲーターは全国に46名、そして、認定ナビゲーターの所属する施設が18施設、これは日本がん・生殖医療学会が小野政徳先生を中心として行っておりますが、最終的にはがん・生殖医療は、がん患者の身体的・精神的苦痛の軽減と、がんサバイバーシップ向上を目指したがん医療であることから、こういった人材育成を含めた啓発活動を行っていく予定です。
最後の29ページですが、本邦におけるがん・生殖医療に関する課題としては、医療連携の構築、47都道府県で少しずつ進んできましたが、全ての施設に生殖医療があるわけではないので、施設内格差などの解消が必要です。
医療連携ネットワークの構築は、地域の格差解消が必要です。
妊孕性温存療法施行施設の拡充は、拠点化が必要です。
人材の育成、その方々によるサイコソーシャルケアの充実が必要です。患者と家族の意思決定支援もそうですし、がんと闘いながら長い間不安を持っている患者さんに対する長期にわたる心理支援も重要です。
啓発としては、先ほどのナビゲーター制度、また、経済的負担は、今回のこの研究・事業、最後に技術開発、里親・特別養子縁組に係る新しい家族の形、ピアサポート、がんサバイバーが出産するようになってきましたので、そのプレコンセプションケアに関する対応、最後に、妊娠・出産だけでなく、健康に過ごしていくためのがんサバイバーのオンコウィメンズ・ヘルスケア等々の課題がまだまだ山積しておりますが、本日この会議において、まずは経済的負担に対する支援が国から、地方自治体からもいただけることを深く御礼申し上げて、私の発言とさせていただきます。
御静聴、誠にありがとうございました。
○吉村座長 どうもありがとうございました。鈴木構成員には、日本がん・生殖医療学会を中心とした、我が国のがん・生殖医療の実施体制やネットワークの構築、現在時点における登録制度について、最後は人材育成につきましても大変分かりやすくお話をいただきました。後で討論はいたしますけれども、鈴木構成員の御発表に何か御質問があればお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、今、中澤よう子構成員がお入りになりましたので、一言だけ御挨拶をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか。
○中澤構成員 前の会議が重なりまして、遅参いたしまして申し訳ございません。全国衛生部長会の会長を務めております、神奈川県庁の中澤でございます。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
○吉村座長 中澤構成員、どうもありがとうございました。それでは、引き続き討論に参加していただきたいと思います。
続いて、事務局から資料3を御説明いただいた上で、各論点について御議論をしたいと思います。
それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
○課長補佐 よろしくお願いします。資料3を御覧ください。
まず、1ページ目からです。画面を共有いたします。
こちらは、第3期がん対策推進基本計画から、AYA世代のがんと生殖機能温存に係る事項を抜粋いたしました。下線部のところで、治療前に正確な情報提供を行い、必要に応じて適切な生殖医療を専門とする施設に紹介できるための体制を構築する。また、的確な時期に治療の選択ができるように、関係学会等と連携した相談支援及び情報提供の在り方を検討するといったことを取り組むべき施策として掲げておりました。
続いて2ページを御覧ください。これまでの背景と事業概要については記載のとおりでございますが、参考資料1で学会からの要望書、参考資料2で患者様からの御要望書、そういった声を受けまして今回の事業を開始する運びとなっております。
表1を御覧ください。治療ごとの助成上限額を示しております。こちらの助成上限額の設定については、初めに妊孕性温存療法に係る費用と、毎年かかってくる保存に関する費用を考慮して決定いたしました。この助成によって、患者さんが負担される当面の費用の半分程度以上をカバーできていると考えております。
3ページはスケジュール案でございます。本日が第1回の検討会で、3月上旬に第2回を行います。こちらで要件を決めて、3月中に開催します第75回がん対策推進協議会に御報告し、4月以降事業を開始してまいります。
4ページを御覧ください。本日この検討会において議論していただく事項について列記させていただきました。順次説明してまいります。
5ページを御覧ください。まず、事業の対象とする妊孕性温存療法についてでございます。検討の視点としては、これまでに一定程度の実績がある治療を対象とすることが適当と考えております。点線枠内に示す5種類でございます。※の2つ目で、精巣組織の凍結もございますが、こちらは研究段階で臨床にはまだ用いられていない状況でございます。これらを踏まえまして、対応方針案としては胚凍結、未受精卵子凍結、卵巣組織凍結、精子凍結、精巣内精子採取術の5種類としてはどうかということでございます。
6ページは、今申し上げた5種類の治療を絵で示すものでございます。
7ページは、対象者の年齢についてでございます。検討の視点、年齢上限と年齢下限について、記載のような点に留意する必要があると考えました。
これを踏まえまして、対応方針案でございます。赤字下線で示しました。年齢上限については、凍結保存時の年齢として、男女ともに43歳未満としてはどうかということを御提案させていただきます。年齢下限については制限を設けないこととしてはどうか。ただし、特に低年齢の患者さんについては、医学的な判断を慎重に行っていただくとともに、丁寧に説明を行っていただいた上で実施の決定を行うなどの配慮をしてはどうかという御提案でございます。
8ページは、対象疾患並びに対象とする治療内容でございます。どういった疾患を対象にするか、治療法の範囲を定める必要がございます。
対応方針案でございます。まず1つ目の赤字でございますが、悪性腫瘍に限定しないという提案でございます。例えば、良性疾患の再生不良性貧血やSLEのような膠原病に対して、抗がん剤を使うものがございますので、そういった方も対象にしてもよいのではないかという御提案です。
ここで日本癌治療学会の診療ガイドラインを御覧いただきたいので、参考資料3を提示します。こちらにあります妊孕性低下リスク分類でございます。2ページに女性、3ページに男性の表をつけております。
まず、2ページ目。女性については高リスク、中間リスク、低リスクの3つのカテゴリーの治療を受けるものを対象にしてはどうかという御提案でございます。
3ページ目の男性につきましては、低リスクにおいては一次的な造精機能低下とございますので、回復が見込まれることから一次的な造精機能低下のため対象外としてはどうかという御提案でございます。
下の2つのカテゴリー、超低リスクまたはリスクなし及びリスク不明とされている治療については対象外としてはどうかというのが御提案でございます。
資料3の8ページにお戻りください。こういった日本癌治療学会のガイドラインやリスク分類については、新たに得られた知見に基づき定期的に更新することとしてはどうかという御提案です。
原疾患の治療及び妊孕性温存療法のタイミングについてですが、原疾患の治療前だけでなく、治療中あるいは治療後に施行した妊孕性温存療法も対象とすることとしてはどうかという御提案でございます。
子宮摘出が必要な場合など、本人が妊娠できないことが想定される場合は対象外としてはどうかという御提案でございます。
最後、妊孕性温存療法、例えば卵子を採取する場合には、最低でも2週間かかると聞いております。こうした原疾患の治療を延期することが生命予後に与える影響が許容される状況でのみ実施することとしてはどうかという御提案でございます。
9ページは、対象者の選定方法と説明と同意でございます。
対象者の選定方法について、今申し上げたことと同じでございますが、原疾患の担当する医師と生殖医療を専門とする医師、これら両者によって検討が行われていることを要件としてはどうかとしております。
説明と同意に関しては、書面同意を基本として、未成年患者についても十分な説明をし、成人(18歳)に達した時点で本人の意思を確認して、改めて本人からの文書による再同意を取得することとしてはどうかという御提案です。
10ページは、医療の連携体制についてでございます。先ほど鈴木構成員からの御発表もありましたが、密な連携が必要で、患者さんが希望された場合、速やかに適切な妊孕性温存療法を実施するため、事前の連携体制が求められているところでございます。
対応方針案としては、都道府県でがん・生殖医療の連携ネットワーク体制が構築されていることを要件としてはどうかというものでございます。
11ページ、12ページで神奈川県と岐阜県のネットワークを御紹介いたします。
神奈川県におきましては、左ががん治療施設と、右が生殖医療施設として、横浜市立大学と聖マリアンナ医大、こうした体制が敷かれておりまして、神奈川県がサポートしていらっしゃいます。
12ページ、中央上側にあります岐阜大学病院が中心となって、下にあります患者さんやその家族に情報提供サポートをして、また、左側のがん治療施設と右側の生殖医療施設を連携するような役割も担っていただいております。
13ページは、こうした医療機関の要件についてでございます。参考資料4と参考資料5を見ながら御説明いたします。
参考資料4は、日本産科婦人科学会の「医学的適応による未受精卵子、胚および卵巣組織の凍結・保存に関する見解」でございます。冒頭の文章にございます、通常の生殖補助医療とは異なる医学的、倫理的、社会的な留意点を有する治療でございますので、ここに記載のあるような項目を遵守していただく必要があるという見解が出されております。
参考資料5は、こうした内容を守っていただける登録施設が12月現在で135施設、本日時点で140施設と先ほど伺いました。そういった学会の認定施設を基本としたいと考えております。
資料3に戻ってください。対応方針案ですが、こうした学会が指定した施設であり、かつ都道府県が指定した医療機関で実施された治療を、この事業の対象としてはどうかという御提案でございます。
また、妊孕性温存療法をやる側も、原疾患側も同じでございますが、患者さんへの情報提供、相談支援、精神・心理的支援を行うこととしてはどうかという御提案でございます。
14ページは、先ほどの見解の抜粋でございます。例えば、保存に関して10番でございます。現在、死後の生殖、亡くなった後の生殖は認められておりません。10番の(3)で残念ながら被実施者が亡くなられた場合には破棄するといった条件もございますので、この見解を守っていただく施設で実施された治療を対象としてはどうかと考えております。
15ページは、研究の内容になってございます。先ほど鈴木構成員からの御説明にあったJOFRを活用することを考えております。収集する臨床情報等の項目について、事業に参加する時点におきましては原疾患の診断あるいは治療に関する項目、妊孕性温存療法に関する項目を入れていただく。また、フォローアップ期間については、原疾患の転帰、また妊娠・出産に関する項目、保存検体の保管状況に関する項目を含んでいただく。また、事業実施に伴い研究の進捗に応じて収集項目を拡張することも考えていただきたいといった御提案でございます。
こうした収集管理につきましては、妊孕性温存療法を実施する医療機関が年に1回以上は定期的に患者さんをフォローアップし、妊娠・出産、検体保管状況等の情報を収集し、入力していただいてはどうかといった御提案でございます。
16ページは、集まった情報を活用して出していただくアウトカムでございます。
対応方針案の赤字でございますが、有効性については、妊孕性温存療法ごと、保存期間ごとの妊娠・出産に至る割合でございます。また、安全性につきましては、妊孕性温存療法を受けることで原疾患側の治療成績が悪化していないか、あるいは生殖補助医療によって合併症が増えていないか、こうした安全性の点をアウトカムとして出していただいてはどうかということでございます。
こうした評価結果を踏まえて、各種のガイドラインについては定期的に更新することとしてはどうかという御提案でございます。
17ページは、所得制限等でございますが、赤字の部分でございます。今回、制度の趣旨を踏まえて、所得制限は設けないこととしてはどうかといったことを提案いたします。
また、助成対象となる費用については、点線枠内※2で示しておりますが、自治体の助成によっては妊孕性温存療法に要した総額を上限としている1と、総額の半分を上限としている2がございます。今回我々の事業では1と同じように助成対象となる費用については、妊孕性温存療法に要した医療保険適用外費用の総額を上限としてはどうかという御提案でございます。
18ページは、助成回数についてです。1人の患者に複数回行われる場合がございますのでルールが必要と考えております。
対応方針案の1つ目、胚凍結、未受精卵子凍結、精子凍結、精巣内精子採取については、1人の患者当たり2回まで助成可能としてはどうかという御提案です。卵巣組織凍結については特殊でございまして、組織の採取自体は通常1回のみしか行われませんが、妊娠を計画する際には、もう一度手術で体内に戻す再移植の手術が必要でございます。この再移植も高額な自費診療となっておりますので、再移植時を2回目とカウントして、合計2回まで助成可能としてはどうかという御提案でございます。
19ページは、国と都道府県の役割についてでございます。指定等の手続については、国は関係学会、先ほども出ました日本産科婦人科学会、日本泌尿器科学会、日本生殖医学会、日本がん・生殖医療学会、この4学会で協議していただいております。実施医療機関の要検討等については、継続的に学会と検討することとしてはどうかとさせていただきました。
こうした学会認定が得られた医療機関から都道府県に申請していただいて、さらに都道府県が実施医療機関として適切であるか否かを確認した上で指定を行うこととしてはどうかといった提案でございます。
普及啓発について、国は厚労科研費等を活用して普及啓発資材の開発等を行う。また、都道府県は、医療機関を初め、様々な機会において住民に対して普及啓発を進めることとしてはどうかといった御提案です。
人材育成は、国、都道府県、関係学会が協力して、妊孕性温存療法に係る人材のさらなる育成を進めてはどうかといった御提案でございます。
最後20ページは、事業の概要についてでございます。真ん中の患者さん起点で申し上げますと、右下のがん治療をやる医療機関に受診していただいて紹介を受けたりして、右上の妊孕性温存療法を実施する医療機関にも受診していただきます。この両医療機関からの治療証明書を患者さんが受け取りまして、都道府県に申請していただき医療費の助成を受けるといったスキームを考えております。
上段にあります患者レジストリに妊孕性温存療法を実施する医療機関が情報を登録し、それを厚労科研の指定研究班において有効性等のエビデンスを検証し、アウトカムを出していただくといったスキームを想定しております。
私からは以上でございます。
○吉村座長 ありがとうございました。
これから各論点について議論したいと思いますが、その前に正林健康局長がお見えになりましたので、一言だけ御挨拶をいただきます。
○健康局長 健康局長の正林でございます。遅れて参りまして大変申し訳ありません。今日は、新型インフル特措法、感染症法の改正案について国会で審議しておりまして、ずっと答弁を朝からやって、先ほど終わってこちらに参りました。ただ、この挨拶の後すぐまた国会に戻らないといけないので申し訳ないのですが、一言だけ御挨拶申し上げたいと思います。
まず、先生方におかれましては、今日御参加いただいていること、また日ごろ厚生労働行政、特にがんの分野で大変御尽力いただいていることに感謝申し上げたいと思います。吉村先生、大変御無沙汰しております。よろしくお願いいたします。
この小児・AYA世代のがん患者に対する妊孕性温存療法で思い出すのは、平成26年だったと思いますけれども、私は当時がん対策健康増進課長をしておりまして、がん対策推進協議会、当時は門田先生が座長であられましたが、委員のお一人が非常に情熱的に、その方は子宮を取られてしまったのですけれども、もしこの温存療法をあらかじめ知っていれば、きちんと卵子なり何なりを残して自分の子どもを産めたかもしれないと、ぜひこういう治療法があることを世間に知ってほしいということをとうとうと御説明され、その場にいた委員の方々もみんな感銘を受けて、これはぜひ第3期のがん対策推進基本計画に盛り込もうという動きになり、盛り込んだ結果として今回の検討会、まだ国会の承認は得られていませんが、今予算を要求して、温存療法の研究促進事業という形でもう少しでスタートできるかなと思っています。確実に前に進んでいることを大変うれしく思っています。
今日は、御参加の皆様方にこの事業の在り方についてしっかりと議論をしていただいて、何とか円滑にこの事業がスタートできればと考えております。活発なる御意見をいただけたらと思います。よろしくお願いします。
○吉村座長 正林局長、ありがとうございました。
それでは、各論点について議論していきたいと思います。皆さん、資料3を見ながら進行していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず初めに、5ページですけれども、事業の対象とする妊孕性温存療法についてでございます。下に案がありますが、胚凍結、未受精卵子凍結、卵巣凍結、精子凍結、そして特に精巣内精子に関しましては、精巣内精子採取術(TESE)の後の精子の凍結という項目になっておりますけれども、これでよろしいでしょうか。何か御意見があれば。
市川先生、よろしいですね。
○市川構成員 特にございません、よろしいと思います。
○吉村座長 それでは、対象とする方針として、妊孕性温存療法としては1から5までといたしたいと思います。
次は、少し御議論をいただきたいと思うのですけれども、対象者の要件です。まず初めに、年齢は非常に難しいのですけれども、どの程度の年齢の上限とするかになるわけですが、この点について御意見がありましたら、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。
清水構成員どうぞ。
○清水構成員 一般の特定不妊治療助成制度との整合性というところで、43歳という年齢にされたと伺っているのですけれども、がんの患者さんの場合と一般不妊の方の場合で若干違いますのは、一般不妊の方は、恐らく凍結したらすぐに使い出すことを予定している方々かなと思いますが、がんの方々は妊孕性温存した後に、がんの治療が一定の期間あることが見込まれていて、そうすると、その分実際に移植を行う年齢はもっと高くなるのではないかと思っています。
私は門外漢なのですけれども、高齢になりますと、特に女性の場合ですが、妊娠・出産に伴ういろいろなリスクが増えていくことを考えますと、実際に特定不妊治療の助成制度と併せてというのが本当に適切なのかどうか、専門とされている先生方の御意見を伺えればと思っております。
○吉村座長 清水構成員のお考えは、年齢をもう少々若くしたほうがいいとか、そういうことでしょうか。
○清水構成員 若くしてもいいのではないかと思っています。具体的には40歳くらいでもいいのではないかと思っています。
○吉村座長 分かりました。この点についていかがでしょうか。いつも年齢は一番大きな問題となるわけですけれども、大須賀先生いかがですか。
○大須賀構成員 まず、第1点大事なのは、今ディスカッションしているのは補助金を出す対象ということであって、この医療を行っていいかどうかということでは決してないということかと思います。いろいろな考え方はございますが、補助金という意味では整合性を持たせるのがよいのではないかと。人によってはがんの治療が比較的短く終わる可能性もないわけではございませんので、いろいろなパターンがあることを考えますと、あまり若くしてしまいますとせっかくのチャンスを逃してしまう方がたくさんいらっしゃると。補助金があればできたのにという方でそういったチャンスを逃す方がいらっしゃるのは、どうかなということでございます。実際、いつやるかどうかは別問題で、産婦人科、特に周産期の先生とも相談して決めることになるかと思います。
○吉村座長 ありがとうございました。
では、患者さんの立場から御舩構成員、どのようにお考えでしょうか。
○御舩構成員 私も、この年齢はすごく難しいところだなと思っておりまして、清水構成員のおっしゃることもすごくよく分かります。ただ、40、41、42というのは子どもを持つかどうかの本当にぎりぎりの境界線のところかなと思っておりますので、ここの助成金に関しては、私も43歳未満ということに賛成です。
○吉村座長 ありがとうございました。
そのほかの違う御意見の方お見えになりますか。43歳というのは特定不妊治療助成とも整合性が合うということで、よろしいでしょうか。
市川構成員どうぞ。
○市川構成員 男性の話でもよろしいでしょうか。恐らく助成金の対象は女性に対しては年齢制限があると思うのですが、男性は私が見た感じ年齢制限は特になかったように思っております。助成金を整合性をつけるという意味では、女性のほうは問題ないと思うのですが、それを理由にすると男性のほうは説得力が下がると。ただ、この研究の目的が小児・AYA世代患者へ希望を与えるという政策目的にもとっているというと、44歳以上の男性はどうかということ。
ただ、私の臨床経験からいっても44歳以上で、もちろん結婚していれば特定不妊治療助成金の対象になるので、そちらで高額なものはカバーできますし、卵と比べると男性の精子の場合はそれほど高額ではない。ですから、助成金と整合性をつけるというか、男性の場合は女性と年齢を合わせると。
あとは、一定の研究成果が出たところで、もし、この年齢で、特に男性の場合問題があれば、そのときにまた見直していただくといったことであれば、ほとんどこの年齢でカバーできるとは思います。
以上、私の意見です。
○吉村座長 ありがとうございました。
それでは、下限については制限を設けないということでよろしいでしょうか。この点について何か御意見ありますか。松本構成員どうぞ。
○松本構成員 年齢の下限につきましては、私も制限を設けないということでよろしいのではないかと思います。ただ、実際に1か月、2か月で行われているかというと、そういうことはなくてガイドラインにもありますが、10か月というのが今のところ一番低い年齢だそうです。ですので、実際には1歳未満で行うことは少ないかと思いますが、チャンスは残してもいいのではないかと私は思います。
○吉村座長 ありがとうございました。
馬上構成員どうぞ。
○馬上構成員 実際、この間小児がんの親の方にヒアリングしたところ、0歳の親御さんで紹介を受けて生殖医療の施設にいらしたと。実際にやったかどうかは伺っていないのですけれども、そういう方いらしたので、私も技術的なところで10か月というのはあれですけれども、親の希望としては可能性があって、安全であるならば、ぜひお願いしたいというところだと思います。
○吉村座長 分かりました。では、下限を設けないということでよろしいかと思います。
次の対象疾患並びに対象とする治療内容ですけれども、悪性腫瘍、がん対策ということなのですが、悪性腫瘍に限定しないで、例えば再生不良性貧血とかSLEなどでも使用する場合があると思うのですが、これは限定しないということでよろしいでしょうか。
清水構成員どうぞ。
○清水構成員 鈴木直構成員に質問なのですけれども、がん・生殖の場合には、がん治療医と生殖医療医のコミュニケーションがかなり充実してきて進んできているということが前提にあっての事業かなと思うのですが、再生不良性貧血は血液内科の先生方が診られるので、そのあたりでは心配はそんなにないのかもしれないですが、膠原病とのコミュニケーションという意味ではどうでしょうか。
○鈴木構成員 これは厚労科研の大須賀先生からお答えするのがよろしいかと思うのですが、大須賀班の中でこの間、膠原病の全国実態調査を行っていたばかりです。その中で、これからそういった連携もしっかりとるということ、もう一点は、癌治療学会のガイドラインにも「がん等」ということで、がん以外の疾患もがんと同様の治療を行うことに夜性腺毒性ということから、そこに加えていく予定ではあります。
大須賀先生、もしコメントが何かあれば、よろしくお願いします。
○大須賀構成員 アレルギー、リウマチ領域におきましても、今、全国調査を行ったり、今後啓発をもっと強めていこうという取組を行っておりますので、先生の御懸念は少し緩和されるのではないかと思っております。
○吉村座長 ありがとうございました。
松本構成員どうぞ。
○松本構成員 悪性腫瘍に限定しないということですが、免疫不全の病気でも同じように抗がん剤を使った移植をやっていることがございますので、膠原病以外にも免疫不全もあるということを御理解いただければと思います。
○吉村座長 ありがとうございました。という御意見でございますので、限定しないということにしたいと思います。
それから、癌治療学会が診療ガイドラインでリスク評価をしまして、高・中間・低リスクと分けているのですけれども、低リスクをどうするかということも非常に問題になってくるのですが、男性に関して低リスクは一時的な造精機能低下のため、対象外にするという考え方もあるのですが、市川先生どうでしょうか。私は入れたほうがいいのではないかと思っているのですが。
○市川構成員 私が主に診るのは精巣腫瘍で、参考資料3を拝見すると、精巣に対する放射線照射0.2~0.7ぐらいとなってございます。実臨床では0.2~0.7だけ照射するということはほぼないので、精巣腫瘍に限ったところで見れば、低リスクに該当するものがないので、そもそもこういう症例がないとなります。それ以外の白血病やリンパ腫は、実際私はそれらの患者さんに対する精子凍結に立ち会う機会がないので、これらの薬剤で実際、精子形成機能がどこまで改善するかは、私自身はコメントできないです。
ただ、1つの考えとしては、さっき年齢を男女で合せたので、それで合せてもいいのではないか。ただ、実際には低リスクで、男性で対象になる方はほとんどいないので、これによって対象者がかなり増えて凍結の手間もかかるといったところは少ないのではないかと個人的には思っています。いろいろな考え方もあると思います。
○吉村座長 ありがとうございました。
岸田構成員どうぞ。
○岸田構成員 入れたほうがいいのではないかという流れであるということで、私もそう思っています。というのも、大きく2~3点あるのですけれども、まず、リンパ腫のショック療法などを行ったときに、例えばショック療法だけだといいのですけれども、よく知り合いの患者さんでもショック療法が効かずに、その次に強い治療、移植だったりするケースも往々にしてあります。ショック療法を終えてから移植の前に精子保存するのかというと、もう既に低リスクはあるけれども一時的にはダメージを負っているわけで、正常な精子はとれないと思っております。そういうリスクがあるといったことを鑑みて、低リスクを含めるのがいいのではないか。また、一時的というのが、どこまでが一時的なのかというのが明確でないのであれば、どうかなとは思っています。
私の場合、手術で医師から妊孕性について大丈夫だよという形だったのですけれども、結果開けてみたら射精神経に障害を負ってしまって、自然に子どもを持つことができなくなってしまいました。そういったことを考えて、事前に私の場合は精子保存をしていたので、よかったなということだと思うのですけれども、次の治療、次の治療と考えたときに、低リスクというのはしっかり入れておくということと、抗がん剤治療ばかりですけれども、手術のやつはどこかありましたか。私が見ていないだけであれば申し訳ないのですけれども、そういったこともお伺いしたいなと思っています。
以上です。
○吉村座長 手術に関しては入っていなかったですか。
○鈴木構成員 癌治療学会の消化器の中には、手術によるいわゆる勃起障害等の精巣機能低下に対してもという文言は書かれています。ここはあくまでもASCOのガイドラインの表ですので、ガイドライン上はそういった方々に対しても進めるということになっております。
以上です。
○吉村座長 この点についても言及する必要があるかもしれません。
馬上構成員どうぞ。
○馬上構成員 素人なので、先生方に教えていただきたいのですけれども、こういった抗がん剤の治療というのは感受性が個人によって違うと伺ったことがあるのですが、この超低リスクは入れないとなると、もしかすると超低リスクの方ですごく感受性が高い方が不妊になられる可能性はあるのでしょうか。
○市川構成員 男性からコメントしていいでしょうか。初回の治療だけで終わればいいということであれば、一時的に下がってもまず間違いなく戻ってくると考えていただいて結構です。中間リスクに入っているBEP療法であっても、そこだけで終われば、一時的に下がっても大体2年以内に、もともと精子が出ている方は出てくるようになります。
ただ、初回の治療が効けばいいのですが、効かなかった場合さらに強い治療をすると。一度治療すると、抗がん剤が入れば精子が必ずかなり少なくなります。戻ってくるには早くても3か月になりますので、3か月以内に次の治療を開始することになると、1回始めてしまうと凍結するタイミングがなくなるのですね。ですから、最初に軽いと思っても、それが効かなくて強い治療をする可能性もあるので、そういった観点からすると低リスクも含めていくというのは、比較的意味があると思います。
以上です。
○吉村座長 婦人科のほうはどうですか。超低リスクに関しては。
御舩構成員どうぞ。
○御舩構成員 超低リスクといいますか、婦人科のほうの話をさせていただければと思うのですけれども、例えば、乳がんの場合は、抗がん剤治療はせずホルモン療法のみを5~10年行うという患者もいます。この方々は抗がん剤のように直接的ではないものの、治療が長期に及び適切な妊孕期間を損失することで不妊のリスクが高まるのですけれども、現在示されているガイドラインのリスク分類には入っていません。ホルモン療法のみではあるけれども、再発予防のために長期の治療が必要となる患者も対象に入れていただきたいなと考えております。
○吉村座長 その点につきましては、例えば、乳がんの場合はホルモン療法が5年、10年かかることがありますね。そうなりますと生殖年齢を超えてしまうことがありますので、その辺は考慮したいと思っています。一応この点は今のところは、日進月歩ですので新たに変わる可能性もありますが、一応低リスクも含むということにしたいと思います。
それから、子宮摘出が必要な場合ということですけれども、現時点においては例えば代理懐胎とかでいろいろなことが起こってきます。こういう点については本人が妊娠できないことが想定される場合は対象外とするということでもよろしいでしょうか、現時点では。これは今後、国の会議体において第三者を介する不妊治療において、そういったことも起こってきますけれども、現時点では対象外ということでよろしいでしょうか。
御舩構成員どうぞ。
○御舩構成員 ここの部分ですけれども、現在、代理母出産が認められていない日本なので、その方向のほうが正しいのかもしれないのですが、あえて対象外とするのかどうかというところが私の中では。
○吉村座長 そうではなくて、まだ国の結論が出ていない状況の中で認めるということをするのは、まだ、時期尚早ではないかと言っているのであって、国が今第三者を介する生殖補助医療の法案ができ、そういった代理懐胎については継続審議となっていますので、2年をめどに結論を出すことになっておりますので、それを見てからでもよいのではないかということです。一様に全部だめと言っているわけではありません。
○御舩構成員 可能性が残されていることですね。ありがとうございます。
○吉村座長 松本構成員どうぞ。
○松本構成員 少し議論が戻るのですけれども、低リスクを入れることに関しては私は非常に賛成なのですが、ただ1つ気になることが「不明」と書いてあるカテゴリーです。例えば、CML(慢性骨髄性白血病)で使うようなイマチニブというお薬があります。これに関しては、今現在、妊孕性を障害するのではないか、しかも長期にわたって投与されるので、そうではないかと言われているようなお薬なのですが、今のところエビデンスがないためどうしても不明となってしまいます。
ところが、これで不明がいつか低リスクになったり、あるいは中間リスクになったりすることはあるかもしれないのですが、今はそういう話が出ている薬に関しては、対象内としてもいいのではないかと思いまして発言させていただきました。
○吉村座長 この点につきまして、リスク評価もエビデンスができてまいりますと随分異なってくると思いますので、リスク評価については適宜変えると。これは癌治療学会でもそうだと思いますので、これに従って今は一応低リスクまでとするということで、それ以降は新しいエビデンスが出た場合に、また考え直すということでよろしいのではないかと思います。
清水構成員。
○清水構成員 補足と申しますか、私もモノクローナル抗体が少し気になっているのですけれども、ASCOの表が古いために、最近乳がんでも比較的低リスクのHER2陽性乳がんの場合には、アンスラサイクリン系のお薬を使わずに、パクリタキセルとトラスツズマブのみで治療を受けられる患者さんがいらっしゃいます。その場合に、レジメンの中に書かれておりませんと、どこにも該当しないことになってしまうのか、低リスクのアルキル化薬以外の薬剤を含むレジメンというところで解釈してよいのか、そこをどうしていったらいいのか御検討いただければと思います。
○吉村座長 鈴木構成員どうぞ。
○鈴木構成員 清水先生、確かに日進月歩で変わっていく中でアルキル化剤を含むことが一つだと思っております。ただ、一番最近のヨーロッパの腫瘍学会のガイドラインは、どちらかというと疾患ベースではなくて、治療で用いる薬剤や放射線ベースのリスク分類になっておりますので、癌治療学会のガイドラインをベースとする中で新しい情報もみんなで検討していく必要性がある。そういった事実があるのが現状だと思っております。
○清水構成員 実際にタキサン系の薬剤だけで治療を受けられる患者さんもいらっしゃる中で、妊孕性温存を希望される方もいらしたという経験もあって、そこで差がつくのはどうかと思った次第です。
○吉村座長 松本構成員。
○松本構成員 先ほどの追加なのですけれども、例えば、イマチニブというお薬を出している薬屋さんがあるのですけれども、そこのホームページに飛びますと、妊孕性温存をしましょうということが書いてあるわけです。書いてあるにもかかわらず、ASCOのガイドラインには載っていないので、これは対象外ですというのは、なかなか厳しいのかなと思うので、何か一つの基準をつくらなければいけないのかなと思ったりもします。
○吉村座長 どうぞ。
○鈴木構成員 女性のほうもSTIM試験は御存じだと思うのですけれども、CMLでTKIの長期投与を途中でやめていく。やめることができる方に関しては、妊孕性温存などが考えられる方というのが、血液学会のガイドラインにも書かれております。
動物実験において言えば、TKIが一時的に原始卵胞ではなく、発育卵胞を減らすという、人への外挿が難しい中でもそういったデータが出ておりますので、今のがん医療に即して一気にこういった領域も進んでいるということを我々は十分理解した上で、この議論を続けていく必要性があるかなと感じました。コメントです。
○吉村座長 ここでは決められないところもありますので、その都度エビデンスが得られた状況の中で変更していくということも考慮していく必要があるように感じました。これは今話しても多分結論が出ませんので、次にいきたいと思います。
どうぞ。
○がん対策推進官 事務局から1つ提案でございますが、先ほどなかなか結論が出ないというところがありましたが、一方で、助成する自治体側などから考えますと、どこの範囲が対象になるのかというのがクリアーになっていないと、なかなか対応が難しいところがございます。もし可能なのであれば、例えば癌治療学会さんで一応ガイドラインを出していただいているのですが、さらに別表として、こういうものは対象にすべきというものを、先ほど手術なども併せてリストアップいただいて、時間的になかなか厳しいかもしれませんが、次回までにお示しいただいたもので、ここで議論して、これはいいのではないかというものは対象にしていく、そんなスケジュールができないか、これは御提案です。
○吉村座長 ありがとうございます。今、非常によい御提案をいただきましたが、今ここで決められないこともあります。情報の共有がなかなかできていない段階ですので、そういったことを次回までに一応準備するという形にしたいと思います。
では、次に進みたいと思いますが、対象者の選定方法や説明と同意に関しましては問題ないと思うのですけれども、いかがでしょうか。よろしいですね。
続きまして、実施医療機関ですが、これも大切なところなので行いたいと思いますけれども、都道府県でがん・生殖医療の連携ネットワーク体制が構築されていることを要件にしてはどうかということですが、この点についてはいかがでしょうか。この点についてもあまり大きな問題はないような気がしていますが。
その次に、妊孕性温存療法実施医療機関あるいは原疾患の治療医療機関の要件について、一応対応方針案といたしましては、例えば、日本産科婦人科学会は医学的適応に関する卵子あるいは卵巣組織の凍結保存に関しては、登録施設が現時点で140くらい施設認定を行っています。一方、泌尿器科学会はそういった指定した施設はないということでしょうか。市川先生、いかがですか。
○市川構成員 現時点ではそのようなものはございません。ただ、こういった研究が、助成が行われるようになっていくのであれば、何らかの形で泌尿器科だけしかいないところで凍結保存をやっているところであれば、それは産婦人科学会では指定のしようがございませんので、そこをちゃんとすくい上げられるようなものが必要だと思っております。
以上です。
○吉村座長 そういったことを泌尿器科学会で施設認定をしていただけるといったことは可能なのでしょうか。
○市川構成員 まず、対象となるところがあるかどうかはアンケート調査などを行う必要があると思うのですが、実際にあれば早急に担当部署から意見を挙げて案をつくってやるような形。実際にどういうものでやっていくかというのは、まだ青写真はございませんが、産婦人科学会でされているものを参考にしながら、矛盾がない、整合性がとれるようにやっていきたいと思います。
○吉村座長 現時点では、生殖医療を行っているところにも日本産科婦人科学会の会告におきまして、精子の凍結保存に関する会告というのがあります。要するに、施設認定が行われたところは、その会告に従って行うようにとなっております。
ということから、ぜひとも市川先生には泌尿器科学会において、こういった議論があるということをお示しいただいて、施設の認定ができれば、そういった制度をできる限り早目につくっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○市川構成員 そうしましたら、本日の議事録を泌尿器科学会の理事会に挙げて、そこで早急に議論する場をつくってもらうようにしたいと思います。
○吉村座長 ありがとうございます。非常にタイトで申しわけないですが、それまでは日本産科婦人科学会の施設認定をした140というのは、精子の凍結に関しても会告を守って行っているということですので、それに従って行っていきたいと思います。
あとは、患者の情報提供あるいは相談支援、精神心理的支援を行う、要するに原疾患の治療機関と連携してということについても問題ないように思うのですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
岸田構成員どうぞ。
○岸田構成員 ぜひ、情報提供、相談支援、そして心理的支援も手厚く行っていただければと思います。補足でした。
○吉村座長 森本構成員、この点についていかがですか。
○森本構成員 これは、我々の学会で鈴木直先生の学会と一緒に、がん・生殖医療専門心理士を養成しておりまして、現在43名できているのですが、まだ有効に活用できていないのです。
なぜかといいますと、1つは現場で、この医療というのはがん医療と生殖医療の全く違うメンバーが一緒にやる医療なので、その間をつなぐ人が要るのです。今それは看護師でもあるのですが、心のことを専門にやっている高度な知識とテクニックを持った人が非常に重要なのですが、この43人はまだ活用できておりません。一つは、現場の理解、重要性の理解が進んでいないことがあります。最初、我々が初年度初めてつくったときは18人できたのですが、だんだんと目減りしてきておりまして、1人養成するのに60万円ぐらいかかるのです。そうすると、民間のクリニックが負担して出していることが多くて、ただ、民間のクリニックで必ずしもこの医療が行われていないということもあって、非常に先が心細い状況なので、できればこの助成を行うに当たって、こういう専門の心理士の設置が望ましいという文言を入れていただくとか、あるいは何らかの助成をしていただくとか、そういうことも少し考えていただきたいと思います。
以上です。
○吉村座長 これは普通の生殖医療以上に心理的支援が必要になってくるだろうと思います。非常に短い期間で決断をしなくてはいけないことでもあるし、いろいろな心理的支援が必要だと思いますので、今、森本構成員が言われたようなことを考慮したほうがいいと思いますけれども、馬上構成員、何か御意見ありますか。
○馬上構成員 先ほど申し上げたように、0歳のときに卵子凍結しますと、実際生児を得るときは25年後ほどになるので、非常に長期にわたって相談支援が必要なのですね。私ども今、長期フォローで大変なのは、主治医がどんどんいなくなってしまって、引き継いでくださる方がなかなかいないという問題がございますので、こういった認定施設でしっかり長期にわたって心理的・社会的サポートも含めて相談支援していただけるのが私どもの願いでございます。
○吉村座長 ありがとうございます。こういったことを考慮したいと思っております。
村上構成員どうぞ。
○村上構成員 原疾患の治療実施医療機関についての要件は、今御議論のとおりでいいと思うのですけれども、結局この事業を動かす入り口のところは、原疾患を治療しているがん治療の先生方になるのですね。その方の証明があって初めて我々、妊孕性温存医療というのができると思いますので、そこをどういう規定にするのがいいかは私も分からないのですけれども、後に出てくると思いますが、患者さん当たり2回までというときに、どのくらい原疾患の治療を待てるのかということも、全てがん治療の担当医の判断となりますので、ここの判断と伝達の方法はしっかりと決めておいていただいたほうがいいと思っております。よろしくお願いします。
○吉村座長 貴重な意見ありがとうございました。
中島構成員どうぞ。
○中島構成員 原疾患の治療実施医療機関につきまして、私も村上構成員と同意見です。私が担当しておりますのは主に成人の固形腫瘍ですが、乳腺外科や小児科のように小児・AYA世代の患者さんを多く診ておられる先生方というのはもともと妊孕性温存医療に対して認識が高いと思いますが、都道府県が指定した妊孕性温存療法実施機関においても、原疾患の治療担当科の中での認識の高さは大分違ってくるのではないかと思っております。消化器がんや肺がんでも30代、40代の患者さんはいらっしゃいますので、原疾患の治療実施医療機関における医療者側の普及啓蒙活動というのは、しっかり行っていかなければ患者さんに情報提供や治療機会の不公平が生じてしまうと感じています。
例えば、都道府県のがん診療連携拠点病院や地域がん診療連携拠点病院などでの継続的教育や取組を定期的にチェックしていくことも必要になっていくのではないかと考えています。
○吉村座長 ありがとうございます。これまで日本がん・生殖医療学会はそういったことを中心に非常によく頑張ってこられています。しかし、いまだ十分ではない状況ですので、今、中島構成員がおっしゃったようなことも考慮していきたいと思っております。
そのほかございますか。清水構成員どうぞ。
○清水構成員 今年度までがん診療連携拠点病院内でAYA世代の患者さんをどう支援していけばいいのかという研究班をさせていただいており、国内の幾つかの施設に御協力をいただいて、モデルAYA支援チームをつくっていただいているのですが、研究班の中で分かってきたことは、一番難しいのはAYA世代の患者さんそのものを拾い上げることだと感じております。
患者さんを拾い上げることができて、どこにつなげばよいか知っている人がいれば、ネットワークにつなぐということができてくるのかなと思っております。拠点病院の機能の中にぜひがん・生殖にかかわる患者さんの拾上げ、ニーズのスクリーニング、そして必要な方にネットワークにつなぐという機能を入れ込んでいくことを、この研究促進の事業とは別の話にはなりますけれども、両輪で進めていただけるといいなと思っております。
○吉村座長 ありがとうございました。今おっしゃったことは本当に貴重なことだと思いますので、そうならないと、恩恵を受けるAYA世代の子どもたちが多くならないのではないかと思いますので、この点は十分考慮したいと思います。
一応現時点においては、死後生殖は認めないということはよろしいでしょうか。将来的に卵子あるいは卵巣あるいは精子をどのような形で使うかというのは、今後の検討課題であると思います。例えば、それを第三者の生殖補助医療に使うという考え方も出てくる可能性はあるわけですけれども、現時点においては、死後は使わないということで、これも確認しておきたいのですが、これはよろしいでしょうか。
荒木構成員どうぞ。
○荒木構成員 今、日本看護協会で認定している不妊症看護認定看護師という方々も妊孕性のところに関わっていらっしゃる方が大分います。認定看護師の制度を19年に改定したときに、不妊症治療だけではなくて、生殖医療全般、特に妊孕性への関わりもますます必要になってくるので、生殖看護認定看護師と名称を変更し、カリキュラムを少し変えて、その部分を強化して教育を始めるところです。
不妊症看護認定看護師は既に全国に178名いまして、不妊症の治療にかかわっていらっしゃる方も多くいらっしゃると思いますので、人材といったところで、そういった専門性の高い看護師の活用も考えていただけるとよいと思いました。
以上です。
○吉村座長 ありがとうございました。
鈴木構成員どうぞ。
○鈴木構成員 ぜひ、がん化学療法看護認定看護師とかがん側のほうも情報提供する側になりますので、そちらも御検討いただければと思います。
以上です。
○吉村座長 それでは、次の妊孕性温存療法の有効性の検証に移りたいと思います。臨床情報をどのように収集していくか、管理していくかということですが、この点について御意見はございますか。現時点では年1回以上患者をフォローアップするということと、現在、個票といたしましては、日本がん・生殖医療学会が管理するがん・生殖理医療登録システムがあります。これにがん情報に妊孕性温存療法について臨床情報を入力していただくということでよろしいでしょうか。この点も比較的よいものができていると思いますので、これも時代とともに変えなくてはいけない点も出てくると思うのですが、この点について御意見があれば。
馬上構成員どうぞ。
○馬上構成員 この生殖登録システムを入れている施設であれば、一度入れたデータというのはどこにいても出てくるというか、フォローしていただけるという理解でよろしいでしょうか。
○吉村座長 鈴木構成員、いかがですか。
○鈴木構成員 患者さんがどこにいてもということでしょうか。
○馬上構成員 AYA世代の方、小児もそうなのですけれども、就職などでいろいろなところに移動されると思うのですね。そういう場合フォローするときに、元の病院が遠くなってしまった場合に、こういったシステムを持っているところで、きちんとフォローしていただけるのかどうかということです。
○鈴木構成員 大変大事な御指摘だと思います。凍結保存する側は変わらないと思うのですが、治療する側、がん側は変わる可能性がありますので、年に1回患者さんが元気かどうかといった情報なども、この登録を継続して進めていく観点では、病院が変わった場合はその病院の先生に今後のフォローアップをJOFRに参加いただくようなシステムを必ずつくるべきではないかと感じております。
○馬上構成員 よろしくお願いします。
○吉村座長 岸田構成員どうぞ。
○岸田徹構成員 今の補足の情報にはなるのですけれども、私の場合も原疾患の病院と精子保存している病院が異なっていて、保存している病院に関しては2年に1回連絡が来る状況になっています。多分、第2回以降になるのかもしれないですけれども、定期的に1年に1回ということなので、そこは各病院でその体制がちゃんととれるのかどうかと、私も精子保存している病院に連絡したのにみたいなことを言われたのですけれども、私も引っ越していて、その手紙が届かず返送されていたということも往々にしてあったので、ちゃんとフォローアップは議論したいなと思っております。
○吉村座長 鈴木構成員、どうですか。
○鈴木構成員 その点も長期にわたるエビデンス構築もこの施策の大事な観点ですので、抜けのないように対応していくことが必要だと考えています。
○吉村座長 清水構成員どうぞ。
○清水構成員 患者さんの声を伺っていると、実際に岸田さんのように更新を忘れてしまったためにせっかく凍結していたのに使えなかったという声も聞いたことがあります。一つの提案としては、患者さん御自身ががんの後に子どもを持つということに、非常に関心を持たれての事業だと思いますので、患者さん御自身が参加できるようなデータを取るような仕組み、データポータビリティを患者さんのほうに持っていくことを考えてもいいのかなと思いました。
○吉村座長 貴重な御意見ありがとうございました。エビデンスを構築するためには、臨床情報の一元化も大事です。情報を得ることが非常にエビデンスを構築するためにも大事になってまいります。ですから、この点はしっかりとしたシステムをつくらないといけないと思います。本来ならばこういったことは国がやっていくべきことなのではないかと私は思っているのですけれども、この点については現時点では、がん・生殖医療学会の登録システムを使って登録していく、個票を持って登録していくということにしたいと思います。
それから、主要なアウトカムということが16ページに記載されています。これに関しましては、例えば妊孕性温存療法の方法ごとに保存期間ごとの妊娠成績あるいは出産成績といったもの、それから、最も大事なことである原疾患の治療成績はどうなったのか、将来的にどうなったのか。生殖補助医療の合併症、安全性のこともありますけれども、このようなことをアウトカムとしてはいかがでしょうかということですが、このほかどうしても入れておいたほうがいいという項目があれば。
松本構成員どうぞ。
○松本構成員 小児科の立場ですと、情報の同意ということが二十歳で成人になると変わると思うのです。なので、同意もきちんと押さえておく必要があると思いまして、発言させていただきました。
○吉村座長 これは本当に大事なことで、この点も考慮していかなくてはいけないと思います。貴重な御意見ありがとうございました。
もう一つは、こういったガイドラインが一旦できますと、全然変更がなしでは10年前のガイドラインがそのまま生きているというようなことになってもいけません。新たな治験が得られたら、それに基づき定期的に更新するということでいきたいと思います。皆さんは御存じないかもしれませんが、特定不妊治療費助成というのは非常によく変更されてきています。2~3年ごとに1回改定されているということもありますので、ガイドラインもその都度見直すということでよろしいでしょうか。
森本構成員どうぞ。
○森本構成員 フォローアップのことですが、その方の妊孕性温存治療で預けている、あるいは妊娠したという方のQOLがどうなっているかは非常に大事だと思うのです。それから、精神的な面、あるいは鬱になっていないか、あるいはほかの障害を発症していないか、そういうことも入れていただきたいなと思うのですが。
○吉村座長 貴重な御意見をありがとうございます。今の登録システムには入っていないですか。そのようなことは入っていないみたいですので、やはり臨床情報とともにそういった心理的な面、QOLの面についても登録システムに入れていくようにしたいと思っております。森本構成員、どうもありがとうございました。
続きまして、妊孕性温存に関する助成についてということですけれども、所得制限が初めは特定不妊治療費助成には730万円というのがあったのですが、この点については制度の趣旨も踏まえて所得制限を設けないということでよろしいでしょうか。
それから、助成対象となる費用はあるのですけれども、地方自治体によっても随分違うということもあるのですが、妊孕性温存療法に要した医療保険の適用外の費用の額を上限とするということで努力していただくということでよろしいでしょうか。
次は、助成の回数なのですけれども、当初は一患者当たり1回ということになったのですけれども、今回の研究助成で一患者当たり2回まで可能としてはいかがかと。1回だけではなかなかうまくいかないことがあるかもれしませんし、一患者当たり2回までの助成ではどうかということですが、いかがでしょうか。それは卵巣の組織の凍結においても同じでということですが。
中澤構成員どうぞ。
○中澤構成員 助成の回数に関しましては、これでいいのではないかと思いますけれども、今までもいろいろお話に出てきた中で、卵巣組織凍結が組織採取時に1回と再移植時に1回と、この間にすごく長い年月があるわけです。助成する側の行政としましては、この間の患者さんの情報管理がすごくシステム的に非常に難しくて、患者さんも移動されますし、行政で情報を保存する期間を過ぎてしまいますので、その辺の管理をしっかりとしてさしあげないと、せっかく再移植されようというときにいろいろとごたごたしてしまったりということがないようにしたいと思うのですけれども、そのところのしっかりとした体制の構築をお願いしたいと考えています。
○吉村座長 鈴木構成員、いかがですか。
○鈴木構成員 小児・思春期の方が最も多いですので、二十歳を超えたらまず本人の意思確認をする、先ほど松本構成員からも御意見がありましたし、凍結する側としては本人のフォローアップだけでなく、がん治療施設が変わる可能性もありますので、そこでの長期にわたるフォローアップということで、何度か確認することはできるのではないかと考えております。そういった意味で、長期にわたる体制をしっかり整えることが、まず第一優先かなと感じていますが、いかがでしょうか。
○中澤構成員 そこは行政と臨床側としっかりと連携をとって、私たちも1回目と2回目しかお会いしないという感じになってしまいますので、しっかりと支援できるように構築していきたいと思います。ありがとうございます。
○吉村座長 どうもありがとうございました。
御舩構成員どうぞ。
○御舩構成員 2回というのは賛成なのですけれども、例えば、卵巣組織凍結をしたときに一緒に未受精卵子も凍結とか、胚凍結と卵子凍結を両方併用することもあると思うのですけれども、そういったときにどのように助成を判断していくかという記載もしっかりしていったほうがいいのかなと思いまして発言させていただきました。
○吉村座長 あまり考えていなかったですね。確かにそういうことは起こり得ますね。この点について、20万と30万が本当に合わせて出るのかとか、そういうことですね。
○御舩構成員 そうですね。両方しましたという患者さんに出会うこともありますので。
○吉村座長 この点については、鈴木構成員どうですか。
○鈴木構成員 神奈川県では、受精卵と未受精卵子を同時にやっている施設もあるのですが、県の中では高いほうというか、未受精卵子と受精卵の場合は技術としては一緒ですので、そこは多分クリアーできると思いますが、卵巣と未受精卵子というケースは確かに想定外でした。ただ、そういったことを行う施設がどれだけあるかも対象が小児ですので、ちょっと議論する必要性があるかなと感じました。
○吉村座長 これは検討課題とさせてください。
それでは、最後ですけれども、国と都道府県の役割ということで、実施の要件につきましては学会が認定するということで進められると思いますが、卵子・卵巣に関しては日本産科婦人科学会の施設認定、また、精子に関しては日本泌尿器科学会ということでよろしいかと思います。そういった指定を受けた上で、国と都道府県が行うという制度設計を考えているのですが、国としては、様々な住民に対して普及啓発を行うとか、人材育成に関してもなかなか学会だけがやっていてもうまくいかないというところもありますので、育成に関しては国や都道府県に協力を願わなくてはいけないということがうたってあるのですが、この点についてはいかがでしょうか。
清水構成員どうぞ。
○清水構成員 都道府県の役割としてですが、先ほど神奈川県などの事例のように、都道府県ががん医療と生殖医療の先生方のコミュニケーションの場をつくってくださっているのが非常にいいなと思いました。私は東京都のAYAワーキンググループに入っているのですけれども、やはり温度差があります。熱心な先生がいる拠点病院では、がん・生殖についてもみんな熱心に学んで実際にやっていくのですけれども、そうでない施設はAYA世代患者さんも少なく、実際にそういった患者さんに出会う数も少ないため、学ぶ機会が非常に少ないです。
ですので、がん拠点病院の各都道府県での推進協議会みたいな場がございますので、そういった場を活用しながら拠点病院でのがん・生殖の経験を共有する場を都道府県に用意していただけるとありがたいなと思っています。
○吉村座長 ありがとうございました。
馬上構成員どうぞ。
○馬上構成員 この助成は申請主義ということで、患者自身が都道府県に申請しないと出てこないという理解でよろしいですね。その上で、指定された医療機関の病院名が書いてあることを条件に助成が出てくるのかどうかをお伺いしたいのですが。
○吉村座長 事務局はどのようにお考えですか。
○がん対策推進官 通常は、基本的には各医療機関からの証明書というか、この方はこういう疾患でこういう治療をする、そのために妊孕性温存の治療が必要で、こういうものをやりましたというものが必要になりますので、それぞれがんの治療をする医療機関、妊孕性温存の治療をする医療機関の両方から何らかの書類は必要になろうかと思っております。
○馬上構成員 認定施設は、学会で指定された施設名が患者側にもしっかり分かるようにしていただけるということでよろしいですね。全然違う施設に行って申請しようと思ったら、違いましたと言われたりすると大変なので。
○吉村座長 中島構成員どうぞ。
○中島構成員 先ほどのがん診療連携拠点病院のつながりも含めて啓蒙という話が出てまいりましたが、妊孕性温存は就労支援と同じで、がんに対する治療が始まるまでの間の早期に、非常に短期間でしっかり適切な施設を御紹介申し上げることが必要かと思いますので、相談支援センターなども含めた施設の取組がとても重要になってくるかなと思います。私は前任地が神奈川県で、非常に恵まれた環境で情報を得ることができていましたので、違和感なく実施できておりましたが、都道府県でのネットワークを用いた教育というのはとても大事になってくるかなと思っています。
○吉村座長 確かに、都道府県におけるがん・生殖医療のネットワークがすごく大切になってくるだろうと。情報提供がされないという状況に陥りますから、その点は分かりました。
岸田構成員どうぞ。
○岸田構成員 先ほどの馬上構成員のお話を受けて思ったことなのですけれども、証明書の交付は、医療機関にもらうために結構お金が掛かるというのはないですね。というのも、例えば、CTの画像申請や紙をもらうために医療機関によっては普通に5,000円とか取られたりするので、医療の負担を減らしているのに元も子もなくなるなと思ったので、そこはどうなるのかと思いました。
○吉村座長 ちょっと私もその点については分からないのですけれども。
○がん対策推進官 現状でいいますと、実は様々な医療費助成等がある中で、それらの証明をするためには一定の書類を出していただいているのが現状です。そういった中で、文書料という形で医療機関側としてちょうだいしているという形はよく存じております。そういったことも踏まえてのものではございますけれども、ただ、何もない状態で都道府県としても見ていくわけにはいかないということもありますので、そのあたりは御理解をいただきながら進めていく。できれば、なるべく簡素な形で、それほど皆さんの負担が少ないような形は考えていきたいと思っております。
○岸田徹構成員 ありがとうございます。ぜひ御検討をよろしくお願いいたします。
○吉村座長 御舩構成員どうぞ。
○御舩構成員 今おっしゃっていただいたように、がん治療と向き合う方々にとって事務手続が複雑化するというのは、すごく大きな負担になりますので、できるだけ簡略化されることを願っております。コメントでした。
○吉村座長 ありがとうございました。
村上構成員どうぞ。
○村上節構成員 この事業が実際に運営されるに当たっては、現時点でも地域格差、すなわちネットワーク整備が不十分なところもありますし、場所によっては隣県の施設に行ったほうが近い場合や、がんの治療をするために滋賀の人間が大阪に行くとか、東京に行くということだってありますので、その場合、がん治療をする施設の近辺で妊孕性温存治療を行うことも十分考えられます。したがって、現在の特定不妊治療助成の各都道府県が施設を登録するというスタイルをそのまま持ってくるのでは、実務上ちょっと不十分ではないかと思っております。
○吉村座長 その点、がん・生殖医療学会はどのようにしているのでしょうか。例えば、県を越えてというときには。
○鈴木構成員 村上節構成員おっしゃるように県を越えるケースもありますし、県を越えざるを得ないケースもあるのですが、ただ、その場合も今はがん・生殖医療学会で指定する書類に書いていただいて、お互いの情報を提供していただく、それをJOFRに入れるという仕組みは一応動いてはいるのですが、ただ今、患者さんの負担という視点は今日新たな点だと感じましたので、さらに深く議論していく必要性があると感じました。
以上です。
○吉村座長 この点については、厚生労働省とよく相談してみます。
そのほか御意見ございますか。神村構成員どうぞ。
○神村構成員 私も村上構成員と同じように、都道府県をまたぐということは地方に住んでおりますので非常に可能性が高いと思っておりますので、その辺の不備がないように制度設計をお願いしたいと思いました。
○吉村座長 分かりました。
そのほかございますか。清水構成員どうぞ。
○清水構成員 少し気になっております、この申請ができる期間がどれくらいなのかということ。患者さんによっては、すぐに治療に入らなくてはならないので、事務作業に係る手続が難しいのではないかと思いまして、タイムリミットがあるかどうかを検討されておりますようでしたら教えてください。
○吉村座長 この点については、いかがですか。
○がん対策推進官 特定不妊治療のほうは、年度でまとめての申請が可能な形になっております。当該事業も基本的には年度でまとめて申請が可能な形にしたいと考えております。また、年度をまたがるとなると、いろいろと行政上の予算の都合がございまして対応が難しくなりますので、各年度でと考えております。
また、この前に幾つかありました都道府県をまたいでというところでございますが、各都道府県の状況によりましては、県内にある施設だけではなく、県外にある施設も含めてネットワーク化するという工夫をされているところもございます。
また、例えば、他県で指定されている医療機関については、指定されたとみなすようなことができるであったり、様々な工夫がそのあたり対応ができるかなとも思っておりますので、こちら側の出し方としても考えていきたいと思っております。
○吉村座長 ありがとうございました。
全体を通じてどうしても言っておきたいことはありますか。今日話し合いをさせていただいて、皆さんから本当に貴重なたくさんの御意見をいただきました。ありがとうございました。もし、どうしてもお伝えしたいことがありましたら、メールでも結構ですから事務局に、こういった点についても検討課題であるといった点をお知らせいただければありがたいと思います。今どうしても言っておきたいことはございますか。
○がん対策推進官 1点だけよろしいでしょうか。事務局から1点だけお伺いしたいことがございます。実は、治療をやってみたのだけれども、うまくいかなかった場合ということがございます。仮に精子や卵子等取れなかった場合において、それを対象とするかどうか。基本的には対象にする方向でいいのかなとは思っているのですが、一応先生方の御意見もちょうだいできればと思います。
○吉村座長 鈴木構成員いかがでしょうか。
○鈴木構成員 神奈川県では、そういったケースでもお認めいただいていますし、あるいはTESEなどを行うケースは、やってみたが精子がないという可能性も中にはありますので、ぜひそこはお認めいただきたいと願います。
以上です。
○吉村座長 この点については、本来なら私が聞かなくてはいけないことだったのですけれども、大事なことを失念しておりましたが、この点についてはよろしいですね。取れなかったからお金は出せないというようなことでは困ると思うのですけれども、やりたいと希望されて治療に当たっておられた方に、そういった助成はしていくべきだと思うので、その点についてはよろしいですね。
ありがとうございました。それでは、2~3分過ぎてしまいましたけれども、本当に貴重な御意見をありがとうございました。もう一回ありますので、そのときにまた皆さんとともに議論したいと思います。
最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○がん対策推進官 本日は御議論いただきまして、誠にありがとうございます。いただいた御意見、また追加で意見がございましたら、メール等でいただければ、そういったものも含めまして引き続き検討を進めさせていただきたいと思います。
また、次回の検討会は3月上旬を予定しておりますので、追って御連絡させていただきます。
事務局からは以上でございます。
○吉村座長 どうもありがとうございました。
それでは、これで終了したいと思います。本当に貴重な御意見ありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線2924)