「社会保障教育モデル授業等に関する検討会(第1回)」議事録

政策統括官(総合政策担当)付政策統括室

日時

令和3年3月12日(金)10:00~11:30

場所

オンライン開催

出席者

構成員(五十音順)
事務局

議題

  1. (1)検討会の開催について
  2. (2)社会保障教育の推進について
  3. (3)社会保障教育モデル授業案について
  4. (4)オンラインで授業を展開する場合の留意点について
  5. (5)意見交換
  6. (6)その他

議事録

議事内容

○赤崎補佐
定刻になりましたので只今から社会保障教育モデル授業等に関する検討会の第1回を開催致します。
構成員の皆様におかれましては、本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠に有難うございます。冒頭は赤崎が司会を務めさせていただきます。宜しくお願いします。
本日は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、オンライン会議システムを活用しての実施とさせていただきました。なお本会議は議事録の作成のため、録音させていただきますので御承知おきください。
まず、オンライン会議における発言方法について、事務局の東京リーガルマインドからご説明致します。


○株式会社東京リーガルマインド
東京リーガルマインドの板橋でございます。
オンライン会議における発言方法について確認させていただきます。
画面の下にマイクのアイコンが出ており、今はオフにしていただいていると思います。
本日検討会の進行中は、構成員の皆様のマイクを基本的にオフとさせていただきますが、ご発言をされる際には、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、座長からご指名があった場合に、マイクをオンにしてご発言いただきます様にお願い致します。
アイコンに斜線が入っている場合はオフで、斜線が取れるとオンという形になりますのでご確認ください。 
また、会議の進行中に通信トラブルにより接続が途切れてしまったり、音声が聞こえなくなった等トラブルがございましたら、御案内しております電話番号まで御連絡下さい。ご意見を述べる際はマイクを使用いただきます様お願い致します。
 
○赤崎補佐
それでは議事の進行に移ります。
まず開会の挨拶を政策統括官の伊原より申し上げます。
 
○伊原統括官
お早うございます。厚生労働省の伊原です。今日はご多用にも関わらずご参加いただきありがとうございました。本来は皆さんにお集まりいただいて議論を進めたかったのですが、コロナの状況ですのでオンラインを使っての開催となりました。宜しくお願い致します。
今日のテーマとなります社会保障教育につきましては、平成26年に社会保障の教育推進に関する検討会報告書をまとめまして、これを踏まえて全国各地で高校や中学等の場で先生方に教材などをご活用いただき進めております。そうした中で令和4年度から高等学校では「公共」という科目がスタートします。現場の先生方にお聞きすると、社会保障の問題は、「難しい」とか「とっつきにくい」といった指摘があり、どう進めていいか分からないといったお話も伺うところです。
令和4年から全国で新しい授業が始まることを考えますと、全ての高等学校で例えば少なくても2コマ位この社会保障の問題を取り上げていただくことはできないかと考えております。その場合、そこで使う題材、教材のイメージのようなものをお示しすることが必要ではないかということで、今般この「社会保障教育モデル授業等に関する検討会」を立ち上げさせていただきました。
学校によってそれぞれ状況が異なるとは思いますが、「公共」の授業を進める上で、ある程度参考となるモデル案というものを作っていきたいと考えております。
我々、日頃、抽象的な議論を整理するということは慣れているのですが、高校生に向けて、分かり易い教材というのはどういうものかについては全くの素人であり、皆様方のお知恵をいただきながら、良いものを作りたいと思っておりますので、何とぞご協力をお願い致します。
宜しくお願いします。
 
○赤崎補佐
次に、厚生労働省では、審議会等のペーパーレス化の取組を推進しており、今回の検討会もペーパーレスで実施させていただきます。各構成員におかれては、電子媒体でお送りしております資料をご覧いただければと思います。同様の資料をホームページに掲載しております。
構成員のご紹介については、お時間の都合上、資料1、開催要綱の別紙の構成員名簿で替えさせていただきますが、検討会の座長は小野構成員にお願いしておりごますので御了承ください。
続いて、事務局を紹介します。
政策統括官の伊原、大臣官房審議官の度山、政策統括室企画官の和田、室長補佐の赤崎、年金局企画官の古川、上田、保険局課長補佐の分部、本事業受託業者である株式会社東京リーガルマインド板橋、以上です。
それからこの検討会は文部科学省、日本年金機構と連携しながら進めていくという形にしたいと思っておりまして、文部科学省には事前の資料や検討会
結果について、随時共有する予定ですのでご承知おきください。
それではこの後の議事進行は小野座長にお願いいたします。
 
○小野座長
只今ご紹介いただきました政策研究大学院大学の小野と申します。政策研究大学院大学で社会保障論の授業をしておりまして、医療や介護政策なども研究の対象としております。厚労省で昨年の3月まで勤務をしておりまして、本件にも若干関わらせていただいております。
今回の会議の主旨ですが先程統括官の方からお話をいただいた様に、日本の将来を担うお子さん達に社会保障の意義や価値の様なものを、限られた時間の中でいかに効率的に伝えるかと言う様な事を話し合う重要な会議という風に思っております。
皆様のご協力で円滑に進行できればと思っておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
それでは早速議題に入って行きたいと思いますが、議題の1「検討会の開催について」事務局からご説明をお願い致します。
 
○和田企画官
政策企画官の和田でございます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。資料1をご覧ください。
「社会保障教育モデル事業に関する検討会設置要綱」でございます。
主旨の方については統括官及び座長からご説明いただきましたので、配布をもって代えさせていただきます。本検討会の検討事項につきましては、社会保障教育における若い世代に伝えるべきポイント、社会保障教育に係るモデル授業案の内容、オンラインを活用した指導、その他社会保障教育の推進策でございます。
構成員の皆様につきましても、配布をもって代えさせていただきます。運営にあたりまして、重要事項を申し上げさせていただきます。
検討会は政策統括官が別紙の構成員の参集を求めて開催する事としております。
検討会は原則として公開とすると共に、議事録を作成し公表する事としております。
本検討会は原則公開と致しますが、但し公開とする事により個人等に不利益を及ぼす恐れがある等特段の事情がある場合には、座長の判断により非公開
する事ができるとしております。会議を非公開にする場合でも開催予定と共に非公開である旨その理由、及び議事要旨を公開する事としております。
資料2、この公開の取り扱いについて、これも読み上げさせていただきます。
検討会は原則公開とする、ただし以下に該当する場合であって、座長が非公開が 妥当であると判断した場合には非公開とする。この場合においては、少なくとも議事要旨を公開する、としております。その理由①は、個人に関する情報を保護する必要がある。②特定の個人等にかかわる専門的事項を審議するため、公開すると外部からの圧力や干渉等の影響を受けること等により、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるとともに、委員の適切な選考が困難となるおそれがある。③公開することにより、市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある。④公開することにより、特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある。
これは厚生労働省の指針における公開の考え方に準拠して定めております。運営については、以上でございます。
 
○小野座長
有難うございました。こちら今ご説明のあった件につきまして何かご意見などございますでしょうか。宜しいでしょうか。
はい、それではこの様な取扱いさせていただきたいと思います。
では議題の2に移ります。「社会保障教育の推進について」事務局の方からご説明をお願い致します。
 
○和田企画官
資料3をご覧いただければと思います。
先ず1ページ目、これまでの社会保障教育の推進について、歴史をまとめております。平成26年4月に権丈座長の「社会保障の教育推進に関する検討会」におきまして、社会保障教育のあり方について報告書を取りまとめております。この報告書におきましては、重点とすべき学習項目、また教材も作成していただいているという事で、既に一定の整理はなされているところでございます。この提言に基づきまして、学習指導要領の改訂や教科書会社への情報提供、また講習等の実施等の作業を我々の方でも進めてきたところでございます。
次のページをご覧下さい。現場の実態においては、非常に社会保障教育が進んでいる面がございます。ただまだ課題も残されているという事で、例えばその課題と致しましては、コマ数の問題、例えばせいぜい1、2コマが限界ではないかというご意見があります。また、なかなか先生がお忙しくて資料を読む時間が無い、分量が多い、内容のレベルが高い、そういった現場のご意見もいただいておるところでございまして、こういった意見をいただいたことから、今回の検討会を進めさせていただいております。
次のページをご覧ください。そのため今後の社会保障教育の推進について、まさに次世代の主役となる若い世代について様々なリスクに直面するこれからのライフステージにおいて、安心して生活していただく事が大事だと思っておりまして、そのために今回の検討会においても社会保障の大事さ、特に社会保険による支え合いの仕組み、そういった事を学んでいただくという事が大変重要な事だと思っております。
その上で令和4年度から導入される「公共」において、どの様にこれを学んでいただくかが非常に重要な課題でして、今回2コマの授業を想定し、モデル授業案の開発をこの検討会において進めさせていただくこととしております。
次のページをご覧下さい。これは検討会の仕組みでございまして、既に作業に着手させていただいているところもございますので、資料をご覧いただければと思います。
5ページですが、今回厚生労働省がぜひ若い世代に伝えたいポイントという事で、まず我々の方で基本コンセプトをまとめさせていただいております。
人生には怪我、病気、介護等、個々人では乗り切ることが困難であり、誰もが直面する可能性のあるリスクが潜んでいる。
これに対して、国民全体で支え合う仕組みが社会保障でございます。この仕組みに参加することでリスクに直面した時に社会保障制度を使って人生の困難に対処していく事ができる仕組みでございます。
また、この社会保障制度は、税や社会保険料で成り立っております。かつ所得が無かったり低い人に対しても社会保険料の減免の仕組みを整備し、世界に冠たる国民皆保険、または国民皆年金の仕組みを作っておりますし、また
社会保障は高齢になった時の給付だけではなく、若い時の病気や怪我、障害者の年金、また子育て支援など幅広い保障の仕組みを提供してございます。
こういった事を基本コンセプトとして、これをどう授業に落とし込んでいけるかというところを皆様の知見をお借りして検討会としてまとめて行きたいと思います。
またこれまで年金につきましては色々な蓄積もあり教材も作っているところでございますが、今回もちろん年金についてより深めて行くという事と、また今新型コロナウイルスの影響によりまして、皆様、高校生の方でも、非常に感染症対応に対する興味が高いところでございますので、是非これを機会に公的医療保険制度につきましても新しいモデル授業を開発していければと考えているところでございます。
最後、スケジュールでございますが、令和2年度につきましてはモデル授業案、今回は年金、次回は医療について議論させていただきます。これにまたそれぞれご意見をいただきまして令和3年度には検証に入って行きたいと考えており、これを基にモデル授業を来年度には作って行きたいと考えております。
以上でございます。
 
○小野座長
有難うございました。先生方色々とお考えとかあるかと思いますが、まず全ての資料を説明する方から進めて行きたいと思います。
では続きまして議題3、「社会保障教育モデル授業案について」、こちらは梶ヶ谷構成員の方から宜しくお願いします。
 
○梶ヶ谷構成員
前回の平成26年7月に出されました『社会保障の教育推進に関する検討会・報告書』あるいはその後にDVDも出されましたけども、当時は高等学校の現場においてはまだまだ社会保障教育についてそれほど浸透していませんでした。また同報告書の特に資料編が結構分厚くて使い勝手が悪いという様な事でさほど利用されなかったという反省があります。更に根本的にはまだまだ高等学校の特に公民科の先生の中では、どの様な授業が望ましいのか、確かに教科書あるいは副教材がありますが、社会保障に関して何を教えるべきなのかという事がしっかりと把握されていなかったのでないでしょうか。また社会保障分野の教科書の記述内容については社会保障の「助け合い」や「共助」という本質を教えていなくても結構用語が多いという事でそれなりに試験問題が出来てしまったのではないでしょうか。
またその当時は、教科書の記述内容でも、高校の授業の現場での教科指導でも賦課方式がいいのかあるいは積立方式がいいのかというような時であった
ように思われます。ただその様な状況の中で、「やはり賦課の方がいいのではないか」ということが議論されるようになったと思います。そして、現場の先生方の中でもやはり社会保障について根本的な理念や問題や課題を自分たちも把握し、それを教材化して授業に使いたいという要望が結構寄せられるようになりました。
そのような経緯から、今回は高校の公民科の5人の先生方とともにモデル授業案を作成させていただきました。
モデル授業案の作成に当たっては、社会保障の根本は「助け合い」、「共助」だという事を、メインにスタートしました。
更にまた、前回の『社会保障の教育推進に関する検討会の報告書』あるいは『資料編』等も引き継ぐことにも留意しました。
そして今回提出をしていただいたものが資料4-1、2、3です。資料4-1は、資料4-2,4-3の内容的を抽出して一覧表にまとめていただいたものです。公的医療保険あるいは公的年金保険について、各々2つのパターンを作成しました。
今回提示させていただいたものが一般的な授業を想定した標準型、もう1つはじっくり考える授業を想定した熟慮型です。
公的医療保険は3人の先生方が、そして今回の年金保険につきましてはお2人の先生が主に作成されました。今回出されたモデル授業案を見ていただくと、こんなに細かい事、難しい内容を取り上げるのかというご意見が出てくるかもしれませんが、とりあえずはじめは学習内容を盛り込むことを考えました。
さて4-1ですがこれはそれぞれのモデル授業についての内容になりますが、今回の資料4-1は公的年金保険について標準的なものです。授業スタイルは
個人ワークあるいはグループワークという方式で、基本的に高等学校の公共の授業の2時間を想定、年金保険についての授業内容についてほぼ過不足なく書かれているのではないかと思います。
実際にこの資料の4-1を見ていただくと、例えば、1時間目の方は公的年金保険についての仕組みが、そして2時間目では「共助」あるいは「自助」について学習させ、更に2時間目ですが、これは前回の検討会の報告書にもあったと思いますが、高福祉、高負担、低福祉、低負担の4つの図等を示し、低負担で高福祉は財政上厳しい事を理解する、実は結構今回の学習指導要領の解説については財政と関連させて考察させることが強調されているので事が色濃いので、この標準型を作成された先生もそれを意識して財政との関係、そして国家観との関係を視野に入れていただいたという事です。
更にもう1つの熟慮型ですが、見ていただければ分かりますが基本的にはこの2時間はグループワークという方式の授業スタイルで作成されています。
内容として1時間目に架空の国を題材に授業内容を作成、どういう様な負担が、高齢者を支える仕組みとなるかを理解・把握するという事がゲームを使って作成されています。更に2時間目では1時間目のゲームの結果を受けて、実際の日本の分析を行う、どういう年金のシステムが望ましいかという内容を考察することが書かれています。
こういう様なゲームを活用する手法での授業は、高校生や若い先生方は得意かもしれません。ただゲーム方式の授業の場合に、その趣旨を明確にする必要があると思いますし、ゲームによって例えば、賦課方式、積立方式などについても、生徒に理解・把握させるものが必要ではないかと思います。
今回のこの「熟慮型」を見た場合は、実際に「年金保険」でこんな授業が展開できるのかと、現場の先生からは興味、関心を持っていただけるのではないでしょうか。
ここでは公的年金保険については標準型も熟慮型も各々2時間構成ですが、実は社会保障全体で2時間というのが多くの学校での標準的な授業展開だろうと思います。多くても3時間か、そうすると例えば公的医療保険を2時間、公的年金保険も2時間やるというのは難しいので、標準型にしても熟慮型にしても、そして年金保険にしても医療保険にしても取捨選択する工夫、つまり例えば公的年金について2時間やらなくても1時間でできるという様な手法をこのモデル案のどこかで反映させる、また熟慮型についても2時間でゲームをするのではなくて、1時間で完結できるゲームを作成する事が実際に高校生、そして現場の先生にとっていいのではないかとも思います。
以上モデル授業案の作成の経緯と、今回の2つの年金保険のモデル授業案のアウトラインについて説明をさせていただきました。
 
○小野座長
有難うございました。それでは全ての資料を説明していただくという事で、最後に残っております「オンラインで授業を展開する場合の留意点について」、こちらは東京リーガルマインドさんの方から説明をお願いいたします。
 
○東京リーガルマインド
東京リーガルマインド運営事務局の板橋でございます。
「オンラインで授業を展開する場合の留意点について」のご説明を致します。
資料1枚目の事前準備(確認事項)ですが、オンライン授業を実施するための準備としてネットワーク環境の確認があります。
学校・各家庭両方でのLANやWiFi環境の確認ですが、沢山の動画やWeb会議通信に対する容量、負荷に対し学校や地域のネットワーク状況も含め、実際に校内で多数の先生が同時に別な場所で話しながらシミュレーションをしたり、また先生と生徒の間でも事前に教室で相対してテストをするなどの確認が必要になります。
使用するアプリケーションですが、今使用しているZOOMを始め何種類かあるWeb会議システムの契約や各端末へのインストールが必要になってきます。
有償・無償の問題やパスワード設定等セキュリティーの確認を含めて、汎用性の高いソフトが必要と思われます。
また生徒サイドの端末ですが、学校側が一括配布出来ればベストですが、出来ない場合は家庭や生徒個人のPC・タブレット・スマートフォンなどの通信機器を使用せざるを得ません。その有無、また通信状況や容量などの確認も重要になります。
実施する方法ですが大きく分けて2通りあります。
今使用しておりますZOOMの様な先生と生徒が双方向同時にライブで画像と音声のやり取りをするやり方と、事前に収録した授業等を生徒に配信するオンデマンドと言われるやり方です。
その2つを上手く組み合わるやり方もあるかと思います。
それぞれの特徴ですが、資料2枚目のまずライブ双方向方式ですが、先生の端末の画面に映っている画像や音声をリアルタイムで、教室で黒板を使う様に生徒が全員で共有ができ、生徒もマイクを入れると発言が出来ます。生徒は声だけでなくチャット機能を使いテキスト入力する事により、文字で同時に意見や感想を交わす事も可能で、それにより生徒の理解度を直ぐに確認する事が出来ます。
また生徒全員への一斉授業だけでなく、グループワークやペアワークもでき、そこに先生が参加できるコラボレーション型の授業も可能です。
次に資料3枚目の事前収録方式ですが、文字通り事前に録画した動画授業を端末で放映する片方向・一方通行のやり方で、教室をスタジオ代わりにして黒板等を使い実写収録をしたり、パワーポイントなどのプレゼンテーションソフトのスライドに合わせて音声を収録するタイプ等があります。
生徒への配信方法はDVD等で配布する方法や、学校のHPや専用チャンネルの開設、YouTubeなど外部の媒体を使用して配信する方法等が考えられます。
メリットとして生徒が時間にとらわれずに好きな時間に受けたい授業や範囲を選択して受講が可能という点です。また授業内容・レベルの平準化が図れる、外部講師等が活用可能といった事も挙げられます。
ただ生徒が飽きてしまうデメリットがあり、また生徒の裁量に任せるので受講したかどうかのアクセス履歴やレポート提出などの確認作業が必要となり、また別途質問対応の方法を設定する必要が生じます。
どちらを選択するかは各学校の特色や環境によりますが、一般的に従来のリアルの教室授業に準じ生徒とのコラボ型をする際はライブ、知識を集積させる事を重視する場合は事前収録といいというご意見があります。
資料の3枚目で両方式を上手く併用し、使い分けをして実施している学校がネット検索での調査では多かった様です。1コマの授業の中で前半はオンデマンド、後半はライブ、また1日の時間割りの中での教科や授業内容の特色や、生徒の通信環境や端末状況で2つを使い分ける、あるいは正規授業はライブ、家庭での予習、復習はオンデマンドを活用などの使い分けの工夫も見られた様です。
それぞれの留意点・課題ですが資料の4枚目で先ずライブ双方向ですが、例えば教室授業は先生が1人、生徒が数十人という状況ですが、オンラインはどうしても1対1の心理的環境になり生徒に負荷が掛かり集中力が続かないので、時間配分では教室より例えば授業1コマを50分から40分にするなど短時間にする必要があるというご意見もありました。
また教える側の心構えとして、いかに生徒がリアルタイムで画面に映っているとはいえ、実際に相対する教室とは全く違うことを認識する、デリケートな反応の把握や指導が出来ない中で画面上の生徒の表情、態度、言動で、いかに生徒の学習意欲を引き出すかにオンライン授業を経験した先生方が苦労をされた様です。
プリントやアンケートなど紙媒体での授業の補助や、チャットを最大限有効活用する事、また細かな事ですが、音声が聞こえなくなるトラブルが頻発した様で、イヤホンやミュート機能の活用が必須とのことでした。
資料の5枚目で、事前収録方式の留意点・課題ですが、先ず収録の際に十分な時間を掛け準備が出来るとはいえ、繰り返し使用するという前提で録画・録音の際の見え方、聞こえ方の工夫など技術的な問題をクリアする事から始まり、先程ご説明した一方的になり生徒が飽きない様に、例えば今生徒に人気YouTuberのパフォーマンスなどを研究して取り入れる事や、喋るだけでなく様々な文字テキストの使用やアニメーションやサウンド効果などの工夫を加える、また長時間授業にしない、1コマの授業で流しっ放しにせず、上手くライブと絡ませる、メールやSNSで質問対応をする、自宅の環境によっては自習室や図書館を利用する等の工夫も必要とのことでした。
以上、オンライン授業を実施する際の留意点について一般的、基本的なご説明を致しましたが、現在平成25年度の厚労省「地域社会保障教育推進事業」で、モデル授業実施を弊社でお手伝い致しました4校に、その後の経過を照会中で、その過程で各校のオンライン授業の具体的な実施状況についても聞き取り、今後またご報告をさせていただきたいと思います。
以上で説明を終わります。どうも有り難うございました。
 
○小野座長
有難うございました。続いて、「(5)意見交換」に移らせていただきます。
本日は初回ですので、構成員の皆様にこれまで説明のありました点についての疑問点や、ご意見等を一通りお伺いしたいと思います。議事進行を円滑に行うため、猪熊構成員から50音順にお願いできればと思います。梶ヶ谷構成員におかれましては、順番を最後にさせていただき、他の構成員からのモデル授業案に対するご意見等が出るかと思いますので、それに対するお考えとご自分のお考えを併せてお願い致します。では早速ですが猪熊構成員からお願い致します。
 
○猪熊構成員
読売新聞で編集委員をしております猪熊と申します。
本日はどうも有難うございます。宜しくお願い致します。
社会保障報道を比較的長くやって来ておりまして、社会保障教育はすごく大事だなと思っています。社会保障について学生さんに集まってもらい話し合ってもらう座談会とか、社会保障を学ぶ紙面作りをしてきました。
高校生や大学生に集まってもらって話を聞いたのですが、社会保障は難しいとか、国に騙されているのじゃないかとか、色々そういう風なことを考えていた学生が、社会保障の基礎を高校や大学でしっかり学ぶと、その重要性がわかったという声が結構多くて、若い時に公的な制度をきちんと学ぶことは非常に重要だと思っております。今回の検討会も意義があると思いますので、良いものにしたいと思っています。
教材を見ての感想を3点ほどお話しさせていただければと思います。
その前に、梶ヶ谷先生、本当に短い時間でご苦労様でした。また、教育現場に身を置いていない人間の素人的な考えが多いかもしれませんが、今回は初回ということで、今回で方向性が決まると思いますので、正直な感想を言わせていただければと思います。
モデル授業案を拝見して思ったことの1つが、率直に、何故年金と医療なのかということです。これをぱっと見た時に、社会保障というのは人生丸ごとの話で、制度というよりも人生丸ごとの安心をどう設計していくかという話だと思うのですが、年金と医療の2つだけを出すと個別制度というか縦割りのイメージが強いなと。社会保障の中で年金と医療の2つが大事みたいに、ちょっと誤ったメッセージを先生や生徒に届けないかなと思ったということがあります。
高校生にしますと、むしろ関心が強いのは雇用の問題や子育ての問題だと思います。これらや介護を含めて5分野作るという手もあるかもしれませんが、もうちょっと横ぐしで制度横断的に社会保障、特に公的制度の大事さを教えるような教材が良いのではないかなということを思いました。では、具体的にどうしたらいいのか。例えば2時間ということでしたら、1時間目は、日本は超長寿化と超少子化が社会保障にすごく大きな影響を与えていますので、長生き時代の所得保障・医療保障・介護保障をどうするかといった話で一本作る。その長生き時代の所得・医療・介護を支えるには、お金と人手が当然要ります。それらを支える財源を作るには、当然働いて保険料や税金を納めていかなければならず、働く場がなければいけないので、財源と少子化と雇用を学ぶ授業をもう1時間でやるとか。もちろん、今のモデル授業案の年金や医療の中にも、福祉や雇用、少子化、子育て支援は入ってくると思うのですが、もう少し個別・縦割りのイメージではなく、横ぐし・丸ごと的なイメージのものができないかなと思ったのが1点目であります。
2点目ですが、標準型と熟慮型に分かれてあったのですが、これも熟慮型1本でいいのではないかと思ったということです。授業案を作るのに大事なことは、先生にとっても生徒にとっても、面白くて楽しくて役に立つ、自分事である
ことを実感できる授業をすることが一番大事ではないかと思います。自分で
感じ、考えさせ、考えてもらうことが基本です。なので、熟慮型のパターンをいくつか出す方がいいのではないかと思いました。
では具体的にどうするかと言いますと、これはベタな考えですが、例えば高校生がいて、遠くに住んでいる祖父母が要介護になって、父母のどちらかが介護に行かなければいけないとか、父母のもう片方がリストラにあってしまったとか。そうすると、高校生は、自分は高校を続けていけるのだろうかとか、大学はどうするのだろうかとか色々考える訳です。そういう想定・想像をもとに、年金、医療、介護、雇用、子育て、生活保護を一通り学んでもらう。もしくは「映画で学ぶ社会保障」という教材を作ってみてはどうか。是枝監督が尊敬しているイギリスのケン・ローチ監督が作った「家族を想うとき」という映画があるのですが、これなどは、フランチャイズの宅配ドライバーとして働く父親と、介護士の母親が出てくる。この映画を題材にすることによって、年金、医療、介護、雇用、子育ての問題全部をどう考えればよいかということが教えられるし、学べます。もしくは、日本年金機構がやっている年金エッセイがありますが、あれを見ていると、若い世代が遺族年金や障害年金について語っているものが多い。エッセイは、家族の物語にもなっています。あれを読んだだけでも、障害福祉とか年金とか子育て支援について教えられると思います。特に、若い、同世代が書いているものは、親近感を持って高校生に読んでもらえると感じるので、例えば年金エッセイを題材にそこから社会保障全体を学んでみる。あと、日本にある各国の大使館にその国の制度のインタビューに行ってみてもいいですし、無年金者の人にインタビューをして、年金についてどう考えているかを聞いてみましょうという授業があってもいい。社会保障をゼミで学んだ大学生に講義をしてもらいましょうとか、いろいろなやり方はあると思うのです。熟慮型の授業を作るのは、現場の先生にとってなかなか負担という話もあるようですが、そうであれば、むしろそういうものをこちらで作ってお示しするというのは意義があるのかなと思います。
3点目です。これはモデル授業案を見ての感想というより、前回の社会保障教育推進の結果を現場の学校教員にヒアリングしたという資料3の2ページ目を見ての感想です。このヒアリング内容はすごく面白いなと思っていまして、学校の先生方は忙しいし、必ずしも社会保障の知識が十分でないところがあると。また、山のような資料や難しい教材を送られてきても、とても対応できないと。先生方の本音が垣間見えて面白いと思ったんですが、そうすると、先生方に喜んでもらえるというか、ある意味、先生方が楽をできるような教材がいいのではないかと思ったんです。どうするか。1つは、外部の先生をもっと活用したらどうか。先程、大学で社会保障を学んだ学生さんの話をしましたが、大学生や学生 OBに協力してもらう。ビッグブラザーズ、ビッグシスターズじゃないですが、高校生にとっては、同世代の若い人に教えてもらうのは親近感があるので興味関心を持ってもらいやすいのではないか。その際、オンラインを活用するのもすごくいいのではないかと思います。そうして先生の負担を減らしながら、先生も自分事として社会保障をとらえられる教材を作ってみる。
まとめて言いますと、縦割りではなくて横ぐしで学ぶ人や教える人が楽しく、役に立つなと思える教材。しかも考えさせる、考えることが楽しいと思える教材。そうしたものができないかと思いました。
外からの誠に勝手な意見ですけども、初回ですので感想を述べさせていただきました。
以上です。ありがとうございました。
 
○小野座長
猪熊構成員、ご意見有難うございました。
続きまして玉木構成員お願い致します。
 
○玉木構成員
玉木ございます。
私は決して社会保障の専門家ではないです。元々は日本銀行の職員で、昭和のまだまだインフレが問題で経済成長率も高い頃から10年ほど前まで、日銀職員でございました。その後、大妻女子大で短期大学の学生を見ております。従って私の申し上げることには、日本銀行時代の経験から金融とかマクロ経済に偏っている、バイアスが掛かっていることを、お許しください。短期大学部では高校出たての子たちを見るわけです。私の所に来る学生たちは、中学の時にあまり勉強が得意でなかった子の方が多いです。高校生の学力を10段階に分けたときに、一番下の1つ2つは大妻まで入って来られないのですが、大体真ん中くらいの子たちが多いです。
そういった子たちに、時々、社会保障的なことの授業も致します。ファイナンシャルプランニング技能検定という資格がありますけれども、この資格取得を目指した授業もありまして、こちらでは社会保障もある程度扱うわけでございます。
私の感想を申し上げます。
まず第1点目は、先程の猪熊先生の第1点目とほとんど被る話です。「横ぐし」あるいは「丸ごと」という言葉を、先生はお使いになったと思います。私は今回教材が出来上がったものを見まして、いい言葉が少なくとも2つは入っていると思いました。1つは、「リスク」という言葉、「支えあい」という言葉が、いくつも入っていますね、このリスクと支えあいという言葉から出てくる、1つにまとめた概念は「保険」ですね。保険を政府がやってるから社会保険と言うのであって、人生丸ごとの色んなリスク、人生丸ごとリスクの塊だというところから考えた時に、国中挙げて、政府が出てきてオーガナイズしなければならない保険というのが、社会保険です。そうすると、医療保険もあれば雇用保険も介護保険も、あるいは労災まで含めてもちろん年金もある、こういう様なガバッと捉えるという観点からいくと、「横ぐし」とか「丸ごと」とか「保険」という言葉は、授業を効果的に行うのに、いいのだろうと思います。
大学の社会保障論の授業になると、「私的」とか「社会的」とかの言い方をする訳ですが、そんなこと高校生に言ったって通じません。私が時々使う表現は、特に年金については、集団としての若者が集団としての高齢者を養う仕組みだ、若者集団に入ることが年金保険に入ることなんだ、若者集団として貢献した人、つまり保険料払った人が高齢者集団に入った時に昔払った分に応じてもらえる、これが年金保険の仕組みだ、という言い方をするのですね。
それから集団という点については、どうしてどんなに長生きしても死ぬまで給付を払えるのかと言えば、早く亡くなった人の分が長生きした人の分に行くからできるのだ、長生きリスク保険って、別に政府はそんなに優秀である必要なんかないんだよ、集団にすれば自然にできちゃうんだ、と言います。こういうことを言うと、政府を信じない若者にも、年金がうまくいくのは集団という仕組みのおかげなんだな、制度を運営している人間の問題じゃないんだ、仕組みの問題なんだってなってくれれば、信頼感を持てるものとして伝わり得るのではないかと思います。
第2点目としまして、これも猪熊先生が最後に仰った「先生が楽できる」ってことに関係するのですが、先生にとって辛そうだなっていう要素がいくつかあります。その一つとして、「マクロスライド」なんて言葉が入っている訳ですよ。マクロっていう言葉を使える社会科の先生がどれだけいるのか、マクロとミクロの違いをクリアに説明するって物凄く実は難しいです。スライドっていう言葉もなかなか難しいですよね、これは異時点間のイメージがなくちゃいけないし、少子高齢化がだんだん進んでいくっていうイメージ、それから国民所得というイメージがない限り、マクロ経済スライドという言葉の意味は伝わらないはずなんですね。だから「マクロ経済スライドがあるから破綻しない」と生徒に説明するのは、先生にとってすごく辛いものであって、こういう資料を見せると先生方が皆引いちゃうのではないかと思うんですね。
そういう意味でもなるべく先生方がとっつきやすいものを大きな字で書くという様な姿勢があってもいいと思いますし、梶ヶ谷先生からも試験問題を考える先生方のお立場への言及がありましたが、結局はモデル試験問題を作るっていうところまで繋げた教材をご提示するということが、先生にとって良いのかなと思います。
あと、多分これは社会科の先生にとって一番辛いことだと思うことを、1点だけ申し上げます。自助という言葉が出てくるのですね。自助とは貯めること、貯めることは金融であり、運用だ、ということです。多分社会科の先生方でも、年末調整の届け、支払った生命保険料などを出せって時になると、なんだこれと普通お思いになるんですね、苦手だと思います。さらにNISAとかiDeCoとか出てくると、これは税制メリットが要の制度ですから、所得控除という言葉の意味が分かるか、あるいは累進税率という言葉の意味が分かるか、という問題になります。税率というとパーセントが出てきます。私の学生たちを見ると、パーセントを自由自在には使えない子たちってたくさんいますから、そうすると税率のパーセントが累進で上がって行くからこういう人に有利だとか、そういうことを授業の場に持ち込むことができるのは、たぶん偏差値で言ったら68とか70とかになっちゃう訳ですね。そうすると熟慮も標準もなくて、非常にバーが高いことになります。
今回、まずいろんなものを入れてみようという発想からだったことはよく伝わって参りますので、やっぱり段階分けと言いますか、つかみの部分とかそれから次の部分、また次の部分と、お金マターに凄く関心がある先生とかそういう生徒たちであれば、iDeCoとかいうところで持ってくという形で、濃淡をもっと付けた方が宜しいかと思いました。
以上でございます。
 
○小野座長
玉木構成員、ご意見有難うございました。
それでは、藤村構成員をお願い致します。
 
○藤村構成員
藤村です。よろしくお願いします。
私は茨城県の県立高校に大学卒業後から勤めています。
まず、家庭科で社会保障に関してどのような事を教えているか、という現状についてですが、「共に生き共に支える」という分野で、社会保障、社会保険、社会福祉について教えています。「経済生活を営む」という分野があり、そこでは家計について扱い、非消費支出の項目の中で社会保険料が出てきます。それからまさに「横ぐし」で扱う「生活設計」という分野があり、自立に関して、家計のマネジメントの中で、社会保険料を支払うことについて出てきます。
先程、猪熊先生や玉木先生から「丸ごと」とか「横ぐし」といった言葉が出てきましたが、家庭科では丸ごとや横ぐしを意識して教えています。
公民科と家庭科という事では、例えば成年年齢の引き下げにともない、今年度の高校一年生からより時間をかけて丁寧に消費生活について教えており、県の高校教育課からの指示もあり、公民科の現代社会担当の先生と同じテキストを使って授業をやりました。今後、社会保障についても公民科の先生と一緒に教えていければいいなと思っています。
続いて私からの感想を述べさせていただきます。他の先生方からご指摘があった様に、やはりちょっと難しいという印象です。初任の先生や教育困難校の生徒を想定した時に、難しいかな、と。先程どなたかが仰ってた様に、生徒だけでなく先生にとっても面白くて役に立ってためになって負担感も少なくて、という内容に変更していく必要があると思っています。
気が付いた事として、先程「試験問題も」という話が玉木先生から出ましたが、評価規準をどの様に決めていくのかな、ということです。授業目標に対してどのような評価規準を設定しているのか。単元のまとまり毎に評価をするという事になるのだと思いますが、何の資料を使ってどのような項目で、生徒が習得できたのかを見取るのかな、と考えた時に、この授業案からはそれが窺えませんでした。
家庭科は以前必履修4単位だったところが2単位も可になり、今ほとんどの学校が2単位で実施し、ミニマムエッセンシャルズの追求をしています。長くすることはたやすいので、全体に向けての資料としては短くした方が良いと思います。先生方の工夫で、最新のニュースを動画で流すなどにより簡単に長くする事はできると思うので、2時間の指導案は重いかな、と感じました。
私は教育困難校と地域の進学校で勤務したことがあります。感覚的にものの値段をとらえたり、税金でお金をたくさん取られるとか、年金がもらえず国に騙さるとか、漠然とした情報しか持っていなかったりする生徒たちもいる中で、何が基本で何を教えたいのかをもう少し限定して、どうしても教えなければいけないことについては、例えばクロスワードパズルのような形で楽しみながらキーワードを整理していくとか、もっと簡単な設定にし簡単な計算程度で保険料を把握してみるとか、そういう感じが良いのかな、と思っています。熟慮型について「ゲームというのは本当に先生の指導力が必要なので、面倒なのではないか」という様な発言がありましたが、私もその様に感じます。そもそもこの設定では状況がイメージし辛く、これ以上読み進められないな、という感想を持ちました。
以上です。宜しくお願いします。
 
○小野座長
藤村構成員、御意見有難うございました。
それでは、梶ヶ谷構成員をお願い致します。
 
○梶ヶ谷構成員
今回の授業案自体の内容の他の点についてですが、各先生方から、必ずしも医療保険や公的年金保険というテーマでの授業案の作成ではなく、例えば無職の人の医療、年金とはというようなモデル授業案の作成も考えられると思います。
それから実は外部の講師をお願いするということについて、私はこの4年ほど日本年金機構の神奈川県の地域年金推進員をさせていただいております。そういう事もあり年金事務所の出前講座も参観させていただいていますが、学校現場において年金の出前授業はとても有意義な授業だと思います。
さらに学校における社会保障教育に関連して、教員の社会保障、年金保険に関する情報のことですが、極めて情報量が少ないことです。以前、ある金融機関の社会保険、年金保険の説明会に行ったのですが、そのほとんどの参加者が公務員、特に教員でした。多くの教員があまり社会保険、年金保険についての知識や情報を持っていないので、結局は実際にどこまで教員が満足できる授業が出来るかというと結構これは難しい。年金機構さんが出前授業で生徒に出前授業をやる事も重要かもしれませんが、その前に教員の研修会を積極的にやっていただけると有り難いと年金機構さんにお願いしたことがあります。
金融広報中央委員会と各都道府県の金融広報委員会も金融広報アドバイザーという制度があり、これも活発な活動をされていますが、その金融広報アドバイザーの中にもFPさんとか社労士さんがおられます。年金機構さんは年金事務所の職員の方が出前講座をやっていますが、積極的に社労士さんやFPさんも活動していただけば、年金機構さんにとっても結果的にはプラスになっていくと思います。
モデル授業案の内容に戻りますが、PTの各先生方にはなるべく難しくないようにお願いするとともに、基本的な理念、助け合いという様な理念、そういうことをベースに授業案を作成して下さいということもお願いしました。特に、年金保険も医療保険も基本的には社会保険、保険というものが「助け合い」、「共助」であることについて考えさせたいと思いました。
マクロ的には社会全体でのリスク分散であり、またミクロ的には貯蓄と異なるリスク分散になることなどを把握させたいと思います。後者については、貯蓄は三角形、保険はと長方形、そんな図を使って保険の理念、有効性を教えていただいています。本来であれば教科書でしっかりと教えるべきだと思いますが、「保険」とは何という事について、公民の教科書ではほとんど記述されていません。ですから教員も生徒もあまり「保険」という事を把握せずいきなり社会保険の類型を学習する。保険の理念や機能を理解・把握すること、「貯蓄」との違いも含めて学習させる。生徒の中には、税金と保険料の納付は二重払いでおかしい、そしてもし生活が苦しくなったら税金で生活保護をもらえばいい、何も自分が保険という形で拠出する必要がないという生徒がいます。
しかし、保険の理念や機能を話し説明するとその保険というシステムを使って助けあう社会保険の制度の重要性が分かってもらえるのではないでしょうか。そして社会保険のシステムを支えるために未納者が増えるとシステム自体に大きなリスクが発生すること、そして未納者をなくしていけば社会保険のシステムが安定するという授業に結びついていけると思います。なお私は かつての授業でGPIF のポートフォリオについて取り上げたことがあります。新聞に時々掲載されるその収支の状況について、短期的な収支状況に左右されずに考察する、その資金運用の割合はどういうのが望ましいのかと、初歩的な問題ですが生徒に考えてもらう、パーソナルファイナンス的な授業もできるのではないかと考えます。さらにそもそも年金制度が無かったらどうなのか、また年金に加入した時、しなかった時のメリット、デメリット、世代間の不公平、積立方式、賦課方式などを考えさせる。
更に介護保険制度も重要ではないでしょうか。やはり医療については高額療養費制度も。大学の授業で学生にこのような話をします。医療費と年金についてです。病院の会計窓口の前の待合室で待っていたら、年配のご婦人2人が話をしていたんですね。医療費は安くて助かりますね。けれども何で年金ってこんなに少ないんですかね、なんかおかしいですね!よくよく2人の話を聞いて分かることはどちらも基本的に保険ということを把握していないのではないでしょうか。やはり社会保障、また特に社会保険はその根底が保険であり結局は政府を信任、信頼して税金や保険料を払うが重要かなと思います。
ある年金保険の専門家が、日本の年金制度で重要なことは、年金は決められた日に、決められた額が必ず支給されることの重要性、また年金額は少なくても医療費は安い、そんなことについても関連付けて話をした方がいいのかと思います。若い人たち、特に高校生にどこまで「社会保険」を理解、把握させるのかは難しいかもしれませんが、高校性の段階で「保険」の理念や基礎的な知識を把握させる、そういう授業案が作成されればと思います。ただ今回、新年早々、入試の時期とも重なり、また短期間でモデル授業案を作成していただいたPTの先生方は大変だったと思います。感謝いたします。
 
○小野座長
有難うございました。それでは時間の許す限りオープンにお話をしていただければと思いますので、ご発言いただいた先生でもあるいは事務局の方でも構いませんのでご発言、コメントがあればお願い致します、では伊原統括官お願い致します。
 
○伊原統括官
今回この検討会を立ち上げたのは、まさに全国どこの高校でも社会保障の問題を取り上げていただきたいということが背景にあります。26年に一定の到達点がありますが、現段階では全ての学校というところまでには至っていないので、そこに向けてどう進めていったらよいかということを考えたいと思っています。今日、玉木先生や藤村先生からも、学力の高低にかかわらず、どこの学校でも取り上げていただくためには、興味関心が高くないと思われる学校において、どう取り上げたらよいかをまず押さえておく必要があると思います。
もう一つ押さえておくべきことは、近年、この社会保障教育の議論が進められている背景には、年金とか医療保険といった社会保険制度に関して、保険料を払う意味があるのかということについて不信感があるという点です。社会保障とは助け合いであり、とても大事なことですねっていうのは昭和20年代から言われてきたことであり、学校でも理念的なことは教えられてきたように思います。しかし、高齢化が進み、負担の問題がクローズアップされる中で、今、高校生が20歳になったときに国民年金の保険料をちゃんと払ってもらえるかどうかってところが課題となってきているわけです。取っ掛かりとして高校生自身に何故自分たち若い世代が年金の保険料を払う必要があるのか、それが自分のためにもなるんだということを分かってもらいたいということが背景にあって、この社会保障教育の議論が出てきているわけです。一口で、社会保障と言っても、生活保護、障害福祉など色々あると思いますが、どちらかと
言えば、この社会保障教育の局面で言われているのは、社会保険制度って本当にこの先大丈夫なのか、若い人にとっても意味があるのかってことを考えていただくことなんじゃないか思います。
そういう基本的なところをまず押さえて、その上でどういう素材を取り上げるのか、どんな教材がわかりやすいのか、抽象的な言葉じゃなくて、具体的にこうした言葉や数字で説明した方がわかりやすいのではないかという点について、現場の先生方の実感を基にお考えいただくことがいいのではないかと思いました。要は現場が全てだと思いますので、現場志向でお考えいただければと思います。
 
○小野座長
有難うございました。それでは今もご発言等も踏まえまして、何かご意見がある方お願い致します。年金局の方が手を上げていらっしゃいますが、お願い致します
 
○古川企画官
年金局で年金課の企画官をやっております古川と申します。令和2年の4月から年金局の総務課に年金広報企画室というものを設置させていただきまして、そこの室長として年金広報も担当させていただいております。
本日は貴重なお時間をいただきまして有難うございます。私たちは年金広報という取り組みの中で広報、さらには教育というところも関わらせていただいておりまして、実は玉木先生の所にも一昨年お時間いただきまして訪問させていただいたのですが、「学生との年金対話集会」という様なイベントを開催させていただいております。
だいたい年に10校ぐらいの大学の社会保障法のゼミ等のお時間をいただきまして、私たち年金局の職員と学生さんとの対話事業を行っています。まず冒頭私の方から説明させていただいたうえで学生さんと座談会をする、という2部構成のイベントとして開催させていただいているところでございます。
そこで、私達も色々な知見をいただいております。今回こういう場に役立ちそうな気づきがありますので、その点につきましてご紹介させていただきたいと思います。
1点目ですが、やはり学生さん達がすごく関心を持つのはどういう点かということですが、年金制度の未来は変わるんだよ、変えられるんだよという様なメッセージをお伝えすると、凄く刺さりやすいなという様に印象としては思っております。
例えばよく人口ピラミッド、分数でいいますと65歳未満の人が65歳以上の人を支えているという構造から、働いている人が働いていない人を支えているという様な構造に発送を変えると、実は将来もあまり割合が変わらないという説明は刺さりやすいなと感じています。分子・分母の関係が働く人の数が増えて行けば年金制度にとってもプラスの意味があること、つまり働く人の減少に対応するために高齢者、女性を含めてみなさんが働きやすい環境を作って保険料を支払う人を増やす事によって保険料収入を増やすことができる、リバランスすることができるというメッセージが非常に刺さりやすかったです。
それに加えまして、当然経済との関係もございますので、支払われる年金額というのは実質的な価値を保障するために、経済状況によって変動させています、当然その現役世代の賃金が上がることによって保険料の収入も増えて、好況であれば積立金の運用益も期待できます、そういった中で日本経済全体の規模が拡大することによって年金給付に使えるものも変わってくる、要はそういう人口動態とか経済っていう物は自分たちの行動次第で変えられる、というメッセージをお伝えすることにより、そういう様なものになっているんだという気づきを与えることができているのではないかと感じています。
2点目ですが、私たちの「学生との年金対話集会」のサブタイトルとしまして「私の年金とみんなの年金」と名付けております。
なぜそういうタイトルにしているかと言いますと、年金制度、いや、社会保障制度全体がそうなんですが、そういう2つの視点で考える必要があるものだという事を理解していただきたい、そのためにこういうサブタイトルを付けさせていただいています。
社会保障とりわけ年金制度というのは、ご案内の通り、ミクロとマクロの見え方が違うものだと思っています。とりわけ自分に直接関わりのあるミクロの世界の視点というのにどうしても偏りがちだと思っております。
そういった中で、マクロの視点、「みんなの年金」という様な視点、考え方について、少しでも気づきとして与えることよって、学生さんからは「ちょっと見方が変わった」とか「世界観が変わった」といったような感想をいただいております。まさに「私の年金」の視点により、世代間対立を過剰に煽るのではなく、むしろ私とみんなという両方の視点を持っていただくことで、年金が持つ最低保障機能とか所得再分配機能といったもの、年金制度を多角的に理解していただくことができるのではないかなと思っています。
最後に、「私の年金」という考え方についても、支払う額と受け取る額の多寡、多いか少ないかに皆さん関心があります。それに対して、こちらからは、実は「私の年金」は、例えば働き方によってセルフプロデュースすることができるという説明します。
どういうことかと言いますと、まず学生の皆さんに、「将来自分のありたい姿を展望してください」、「どんな仕事したいですか」、「何歳まで働きたいですか」、「仕事を辞めた後、退職後はどんな生活をしたいですか」、ということを語り
かけて想像してもらいます。それを前提として「どのくらいそのためお金が
必要なのか」という事を考えてもらい、さらに、そのお金というものは実は
公的年金だけでなく、それ例外に3種類あるという説明します。具体的には、私的年金もあれば資産運用、貯金みたいなところもある、そういったいろんな武器があるということを説明した上で、最後に年金というのは実は長く働くと年金額を増やすこともできる、そういう仕組みも入っていることを説明します。自分のありたい姿を実現するためには、自分自身がどういう働き方をしながらどういう年金の受け取り方をするのか、そういうセルフプロデュースをする事ができるものだという説明をさせていただくと、学生からは「将来のことをもっと深く考えてみたくなった」という感想をいただくことが多いです。
私たちは「学生との金対話集会」を開催する中で、こうした3つの視点についての気づきがありましたので、この場をお借りしましてご紹介させていただきました。
最後にもう1点、私たちの最近の取り組みについてご紹介させていただきます。3月下旬に2つの広報マテリアル、学習マテリアルを公開する予定ございます。1つ目が学研さんとコラボレーションしました漫画の制作です。「学研のひみつシリーズ」という学研さんの人気シリーズがあるのですが、そのシリーズの特別編としまして「年金のひみつ」というものを作っています。
3月の下旬に学研のキッズネットというサイトで公開されますので、小学校高学年以上ぐらいの方が、読んで分かるような教育教材になっていると思いますので、そういったものもモデル授業にご活用頂けるのではないかなと考えています。もう1点が皆さんご存知かどうかわからないですが、先程Lecさんの説明の中でも人気 YouTuberとのコラボレーションというのがありましたが、東大クイズ王さん、正確にはQuizKnockとコラボレーションして年金のクイズ動画を作っております。
こちらも3月の下旬に公開したいと思っております。もちろん年金を素材にしていますが、伊沢さんはじめ福良さん、鶴崎さん等々の豪華キャストが出演し、テンポ良く楽しく学べる構成にしていただいていますので、若い世代にとっても非常に見やすい動画になっているのではないかと思います。
そういう意味ではこういう教育、授業の場の導入として使って頂けるのではないかなと思いますので、完成した暁には皆さんにご提供させていただきたいと思います。宣伝させていただきました。
どうも有難うございました。
 
○小野座長
有難うございました。今の事も踏まえてご発言のある方いらっしゃいますか。
玉木構成員お願い致します。
 
○玉木構成員
学習困難校の生徒こそこういう教育のターゲットだと思います。進学校の生徒はどうせ、年金で言えば2号になるんですよ。事業主が全部やるので、65歳まで何も考えなくていい、あるいは70歳まで働くという繰り下げのことさえ考えればいいのであって。20、30代の2号について、プラグマティックな社会保障教育はほぼ不要だと思います。
むしろ問題は、1号になっちゃう方、意図せず1号になってしまう方であって、要するに適用拡大の問題になります。そうなると、政府や制度に対する信頼感というもの、素朴な信頼感といったものをどこかで作る必要があります。素朴な信頼感っていうのはどうやったら得られるかといえば、彼ら彼女らが理解できることでなければならないです。彼ら彼女らに理解させる時に、実は1号とか2号とか国民年金とか厚生年金とか、言葉を出すことはむしろマイナスだと思います。私が短大生に年金のことを話して感想を書かせると、1つは長く払うと多く貰えるとは知らなかった、というのがあり、もう1つは年金に種類があるとは知らなかった。言われてみれば、そうだな、普通に生きていたら知る機会ないよな、と思います。
こういった方々こそ、社会保障教育のターゲットですから、そういった方に種類がいっぱいあるとかいうことを言うのは果たしてプラスなのか、というとそうではないと思います。働く人が働いてない人を支える仕組みだ、という説明は、非常にシンプルですよね。
実は一昨年の年金広報コンテストをうちの学生にやらせました。年金の原理について30分位教えたら、元々素材的に優秀な子でしたが、あっという間に自分で動画作っちゃって年金局長賞をいただきました。9分位ですが相当中身の濃い、エッセンスのいいものが出来ました。これはやはり動画とかいったもので、信頼感につながる様な、高校生が「私、分かった」と納得できるように伝えることは可能ということの1つの例として挙げるといいのかなと思います。
それと保険というものをどう教えるか、これは社会科の先生が悩むところでしょう。私がどうやっているかというと、火災保険の例を使います。何故、合理的な方が知的な判断として火災保険に入るのか。火災保険に、例えば月5000円払う、でもそのうちの多分1500円ぐらいはどう見たって保険会社の経費になっています。純保険料と付加保険料があって、損害保険で言うと、多分、数割は付加保険料、経費で無くなっています。平均的には、絶対に、「払った分だけ戻ってこない」のですね。それでも入るのは、「安心」を求めているからです。火災保険は単純で、何軒に1軒火事になるかさえ分かればすぐ出来る、シンプルな話です。こんな単純なものだと言うと、結構、皆分かるみたいです。
そこから更に年金に引き継いで行くと、高齢になったら困るといっても、半世紀以上先にイマジネーションが届く人は、人間ですから、いないです。
ですからもっと手前に持って来なければいけない。例えば、もし君が結婚する相手のお父さん、お母さんが無年金だったらどうする?君の両親が無年金だったらプロポーズしてもらえるかな?と問います。つまり自分たちが扶養する相手、1つ上の世代が相互扶助、共助の枠の中に入っているかどうか、それが肝だ、という話をする訳です。極端な事を言うと1人娘と1人息子が結婚して親が100歳まで生きた場合、それから5人兄弟と5人姉妹がそれぞれ結婚して5組の夫婦ができた、そして親が100じゃなくて75歳で亡くなる場合、年金がなかった時の扶養負担は数百万対1億、2憶になります。子の数で1対5の違いが出ますし、老後の期間の比率があるので、これら2つの比率の掛け算の問題ですから、2~3桁違う話になり得ます。
その上で、1人娘、1人息子も、要するに国に決められたものを払えばそれでいいんだよ、国が親の面倒見てくれるんだよ、と言います。あるいは、皆さんに将来子供がいなかったとすると、子供がいない高齢者だって若い時に国に払っていれば子供じゃなく国から給付が来るんだ、子供と仲が悪くなることはあるけど国と仲悪くなる人はいないよ、という話をすると、国だったら安心なんだなってことになります。別に、国や公務員たちが特に優秀とか善良である必要はないんですね。コンピューターの仕組みさえできていればOKです。こういう説明が、私の経験からいっても、「刺さり」ます。
私も実は日銀で一般広報をやった経験がございますが、そういったところで失敗するパターンは、日銀が銀行券を発行する銀行の銀行、政府の銀行なんてことを言うもので、これは絶対に駄目です。自分の仕事を説明しようという発想は、広報上極めてマイナスだということですね。年金機構の方が出前講座に行って年金機構に入りたいと思わせようなどという下心はダメなんです。
どんなに感想文に年金のことがよくわかりました、有難うございます、とあっても、それは皆書きますよ、でも全部嘘で、「つまらなかった」という意味です。何が「刺さる」かというと、「私にとって何」、です。自分事にするには何が必要なのか、だけを考えなければいけないです。その意味では、困難校の授業のご経験こそ、今日の様な場にフィードバックしていただきたいです。
 
○小野座長
有難うございました。藤村構成員お願い致します。
 
○藤村構成員
有難うございます、2年前まで2年間アメリカのニューヨークに住んでいたのですが、学校ではYouTubeを積極的に使っていました。自分で主体的に情報を選び、自分事として捉えて考えたり、自分が理解したことをアウトプットしたりする機会が充実していました。YouTubeなども授業で活用できれば面白いと思いました。
 
○小野座長
有難うございました。猪熊構成員お願い致します。
 
○猪熊構成員
有難うございました。皆さんの意見、とても参考になりました。
私は今、刑務所の取材もしていまして、結構、高校中退とか、中学卒業という受刑者にも会います。そういう人にこそ社会保障の知識は必要と思っていて、ちょっと今回の枠から外れますが、高校生だけでなく、若い人みんなに向けて届けられる社会保障教育ができないかなというのは、個人的には考えています。
これまでの議論を聞いて思ったことは、生きた教材という言い方はちょっと変ですが、例えば、介護保険料なんか払いたくない、国は何の権利があって強制的に保険に加入させ、保険料を取るんだと言っていた方が、いざ要介護状態になったら、介護保険の有り難さがわかったという話が実際にあるわけですよね。国の制度は素晴らしいでしょうということを言いたいわけではなくて、実際の生きた人間の体験談というのは、みんな興味を持つと思うんです。実際にあった話はみんなの心に刺さります。社会保障に関する体験談を持つ、生きた人の話から学ぶような教材を考えるのはいいんじゃないか。それが同世代であればなおさらです。
最後に、評価基準という言葉がありましたが、教材を学校の授業で使っていただく以上、学校として、これだけは教えておいてもらわなければいけないということがもしあるのであれば、そこをまず押さえておくことが必要なんだろうと思います。反対に我々から見て、例えば保険と言っても民間保険じゃなくて社会保険、政府がやる保険の意味は知っておいて欲しいとか、医療で言えば高額療養費は押さえておいて欲しいとか、年金で言えば終身とか物価に応じた給付の仕組みだということは知っておいてほしいとか、ここだけは必ずポイントとして押さえておいて欲しいということもあるわけです。それらを効果的に入れ込んだ教材を作るにはどういう手法が大事なのか。そうしたこと考えるのは一つ大事なポイントかな、と思いました。
 
○小野座長
有難うございます。他によろしいですか。
それでは、本日いただいた御意見を事務局において整理した上で、これからの議論を進めていただければと思います。
第2回検討会では公的医療保険制度を題材としたモデル授業案についてご確認いただく予定です。
 
○赤崎補佐
第2回検討会は事務局より追ってご連絡をさせていただきます。
 
○小野座長
それでは本日は貴重なご意見を有難うございました。
本日の検討会はこれにて閉会をいたします。
どうも有難うございました。
 
以上