第7回 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム(議事録)

日時

平成31年4月17日 13:00~15:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター新館 ホール11D

議題

(1) AI戦略(有識者提案)及び人間中心のAI社会原則について (2) ヘルスケアIT分野への民間投資活性化に向けた取組について (3) 医療安全におけるAIの活用について (4) コンソーシアムにおける議論の整理について (5) その他

議事

 
事務局 定刻になりましたので、「第7回保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を開催させていただきます。皆様方には、ご多忙にもかかわらずご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
まず初めに、事務局より構成員のご出欠についてご報告を申し上げます。本日は、西川構成員、保科構成員よりご欠席との連絡をいただいております。また、松尾構成員より遅れてご出席との連絡をいただいております。また、宮田先生が少し遅れていらっしゃるようでございます。
本日ご欠席の構成員の方の代理出席でございますが、国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 研究センター長の辻井構成員の代理として市川副センター長、日本製薬工業協会知的財産委員会運営委員 堀川構成員の代理として日本製薬工業協会研究開発委員会の赤塚専門委員長にご出席いただいております。
また、本日は参考人として、聖路加国際大学公衆衛生大学院ウォン准教授にご出席をいただいております。
次に、本日も、内閣官房情報通信技術IT総合戦略室、内閣官房健康・医療戦略室、内閣府個人情報保護委員会、総務省、経済産業省、当省データヘルス改革推進本部からご出席をいただく、あるいはいただく予定となっております。そのほかの事務局及び関係部局等からの出席者につきましても座席表に記載のとおりでございますので、個々のご紹介は割愛させていただきます。
カメラ頭撮りはここまでとさせていただきます。
それでは、以降の議事進行につきましては座長にお願いいたします。
(北野座長)ありがとうございます。まず、事務局から資料の確認をお願いします。
(事務局)本日はペーパーレスにて実施をさせていただきますことを、ご了承のほどよろしくお願いいたします。資料につきましては、議事次第、資料1~4、別添1~3、参考資料1~7及び過去6回分の資料を、お手元にございますタブレットに格納しております。第7回の会議資料を開いていただきますと、議事次第のあとに別添1~3、そのあとに参考資料が並んでいて、資料1、2、3-1、3-2、4となっているのではないかと思いますが、別添1~3は資料4の別添でございます。順番が乱れていることをご理解いただければと思います。
タブレットの操作方法につきましては、「タブレット操作説明書」をご確認いただければと思います。ご不明な点がございましたら、職員が参りますので、挙手をお願いいたします。
(北野座長)ありがとうございます。本日はヘルスケア領域と医療安全に関して取り上げたいと思います。今まで議論を行ってきましたが、このコンソーシアムも終盤に入ってきていますので、今まで取り上げていなかった領域に関して取り上げたいと思います。
本日のアジェンダでは内閣府の発表がはじめにありますが、ご説明いただく方のスケジュールの関係で後半になりますので、資料2から始めたいと思います。経済産業省からご説明をお願いできればと思います。西川さん、お願いします。
(西川構成員)ありがとうございます。ヘルスケア産業課長の西川でございます。
【資料2 ヘルスケアIT分野への民間投資活性化に向けて】
厚労省さんはじめとして皆様のご協力を得て、ヘルスケアIT分野に民間をどうやって活性化させるかという議論を昨年から1年ぐらいやらせていただきました。今年の3月に方向性レポートをまとめました。
○米国・欧州・中国におけるヘルスケアIT投資の現状(P.3)
問題意識として、ヘルスケアIT、デジタルヘルスは非常に大事ですけれども、アメリカや欧州や中国、世界中でヘルスケアIT投資が進んでいる。日本はアメリカの100分の1とも言われ、まだまだこの領域での投資を活性化する必要がある。逆に言えば、投資を活性化させないと、いかにいいシステムを作ったとしても、結局そのシステムの上で動くものは、アメリカや中国のお医者さんや患者さんと一緒に開発されたものが日本で使われるというような状況になると、医師や患者さんの立場に立っても非常に使いづらいものになる可能性があるし、価格の問題もある。また、産業論から言っても、せっかくヘルスケアIT分野が新しいイノベーションの宝庫としてある時に、いろんな障害で投資が活性化しないのは避けたいということであります。
○ヘルスケアIT分野への投資活性化に向けて(ヘルスケアIT研究会とりまとめ)(P.4)
健康医療分野でデータ利活用の重要性が高まっているというのは申し上げるまでもないですけれども、委員の先生からいろいろご指示いただいたものをまとめてあります。
健康医療分野の課題が大きく変化をして、生活習慣病や老化に伴う疾患が中心になってきている。そうすると、病院の中と外をつないで、日常生活も含めた総合的な取り組みでQOLを高めるソリューションが重要になってくる。また、これは座長を務めていただいた永井先生がおっしゃっていることですけれども、医療の専門分化がどんどん進んでいくと、個々の医師が患者さんの全体像を把握することがますます困難になっている。
そこを乗り越えるためにデータを活用することで、Integration of BioMedical Thingsと言っておられますが、データの利活用は非常に大事だということで、基本コンセプトは民間投資の活性化で、IoT・AIの技術革新を最大限に取り入れて、医療の質を高めるイノベーションを実現しましょうということを、整理をさせていただきます。
○民間投資の活性化に向けた課題とアクション(P.5)
そのためのアクションですが、非常に回り道のようではありますけども、医療関係者と民間企業の方が信頼感を持ってコミュニケーションを活性化させ、同じ志で良いものを開発していく。また、新しいデータを活用して、医療や患者さんにどういうメリットがあるのかということをはっきり示していく必要がある。
そのための取り組みとして2つ、研修の場と認証制度。新しい産業の方が、スタートアップも含めてどんどん入ってくる。昨日までゲームを作っていたような人が、医療情報を扱うような形になる。その時には研修をしっかりやって、医療情報を扱う時にはこういったことを注意しなければいけないんだということをしっかり勉強する必要もありますし、それを認証をしていくということも大事になる。
あと、具体的なメリットをお医者さんや患者さんに分かっていただくために、パッケージ型ヘルスケアソリューションと言っていますけれども、いろんなものを組み合わせて、データの力でバイタルサインを見ながら薬を服用するといったような、既存の治療法であったとしてもデータの利活用で新しいアプリケーションができる。そういったものを、専門家の意見も踏まえながらしっかり実証していこうという2つの流れを作らせていただいております。
6ページ、7ページは、パッケージ型ヘルスケアソリューションの取り組みの具体例です。
○医療分野のイノベーションにおける新たな視点(P.8)
イメージとしては、データを利活用することによって、新しい医薬品・医療機器の開発に加えて、既存の医薬品・医療機器の組み合わせ、また、従来活用されなかったデータと既存の医薬品・医療機器との組み合わせ。こういったことで新たな付加価値を出していけるのではないか。そのためのプロジェクトを、これはAMEDさんにやっていただくということで予算要求をして進めているというのが1つあります。
○公的な研究開発プロジェクトの成果の民間を含めた活用(IoT等活用行動変容研究事業の例)(P.9)
AIの分野で他の取り組みの参考にしていだきたいと思っているのが9ページであります。
議論をしていく中で、公的な研究開発プロジェクトをやってきて、研究開発が終わったあとに民間転用をする。これが大事なんだけれども、なかなかできないので困っているという話がたくさんあります。例えば医療情報を取り扱う場合には、倫理の問題、また、個人情報の個人同意の問題。こういった観点から、データを収集する時の条件がそもそも研究開発だけ。もしくは、商用には渡してはいけないというような前提で捉えることが多い。また、データベース、ビッグデータを集めてAIをやるといっても、ビッグデータを集めたあとのメンテナンスをどうするんだと。
そういった点で、国のファンドが終わったあとに利用者が一定のお金を出し合って、データベースを維持・発展させていくというような形に事業のあり方も変えていかなければいけないわけですけれども、研究開発が終わったあとにも継続的にデータを収集して、バージョンアップをして、それを商用と研究開発と両方に継続的に使っていく。
そもそもこういったビジネスモデルを追求することが必要で、そのためには、研究開発の段階から将来の運用段階におけるトランスファーについてのルールや、これはおそらく契約の形で国からどこかに渡していくことになると思うんですけれども、その契約のひな形をしっかり決めなければいけないというような議論をたくさんさせていただきました。
抽象的に言っても分からないので、今、経済産業省の予算AMED事業として実施している、IoT等活用行動変容研究事業の3年目の中で、この契約のひな形というか、実際のモデルとしてやってみようということで取り組みを進めさせていただいています。また、こういったものを他の分野にも参考にしていただければと考えています。
○ワンストップ窓口相談の創設(P.10)
民間投資を活性化する上で、マッチングはすごく大事だという話をたくさんいただきました。国内の製薬会社さん、IT会社さん、お医者さん、地方自治体、これまであまりネットワーキングしなかった方同士もしっかりネットワークしていただく。また、海外と国内をしっかりつないでいくことが大事だと。
これは官邸のご指示もいただきまして、ヘルスケアイノベーションハブというものをしっかり作って、それぞれのイノベーションをやっている人たちの間をつなぐ役割をワンストップの窓口を作ろうということで進めております。この5月に、東京にヘルスケアイノベーションハブを作って、いろんな主体の間をつないでいきたいと考えています。
以上が、ヘルスケアIT分野への民間投資を活性化するために、委員会を回して出してきた方向性になります。
○【参考】WHO/ITU Focus Group AI for Health(P.11)
最後に、これはたまたまイノベーションの活動をする中でWHOとITUのFocus Group AI for Healthという情報が入ったので、ご参考までに書いております。
今年の4月に上海でワークショップが開催されました。WHOとITUと中国政府や各国の研究機関がたくさん入って、AI for Healthのルール作りをしようというような議論が、民間主導ではありますけれども、進んでいるというものの参考例でございます。この会合がどうかというよりは、こういった国際的な動きも踏まえながら、日本の中の研究や実用化をしていかなければいけないのかなということでございます。以上でございます。
(北野座長)ありがとうございます。本件に関してご質問等ございますでしょうか。
(羽鳥構成員)日本医師会の羽鳥です。経産省西川課長には、いつも日本医師会医療機器開発支援事業で大変お世話になっております。
先ほどゲームを作っていた方が医療分野に入ってこられるときの対応という点で、1つ実例をお示ししたいと思うんですけれども、AIホスピタルで、横須賀共済病院において、QWDというIT開発業者という方が週3日ぐらい病院長の許可を得て病棟に入ってデータ収集をやって、電子カルテに患者への説明の言葉を、レジュメ作成も含めてやっているわけです。
この話を日本医師会の学術推進会議でQWDさんと院長先生に来ていただいてお話しを聞いたんですけれども、初めは病棟のスタッフも抵抗がありました。プログラムを作る方も病院に対しては違和感があったということですが、3か月ぐらいすると自然に馴染んできて、これはやってはいけないこと、これは許されることという、ある程度の仕切りも分かってくるので、もしそういう関係の方が入ってきたいということだったら、実学を学んでいい作品を作っていってほしいと思います。
法的な規制をしていくと諸外国のスピードから遅れてしまって、結局、アメリカ、中国に負けているということが起こると思うので、まず実学を学んで、問題点が出たらそこでしっかり絞るということが大事ではないかと感じました。
(渡部構成員)非常に大事なポイントをご議論していただいていると思いますけれども、5ページの「民間投資の活性化に向けた課題とアクション」ということで2つ申し上げたいと思います。
1つは、供給サイドの視点で投資の活性化という整理をされていますけれども、需要サイドの活用の活性化ということの裏返しだということで、そこの問題ということで言えば、インセンティブといった視点の問題もあると思うので、それもペアでアプローチしていただくと非常にいいのかなと思います。
もう1つは標準化の問題があって、非常にカスタマイズが多いということで、提供する側も使う側も非常に熱心になっていて、電子カルテは日本の歴史があるわけですけれども、ぜひこれから新しいものについては、標準化をしていける部分については積極的に進めていただくのが活性化につながるのかなと思います。
(北野座長)私から質問があります。9ページ、契約のところが重要なポイントで、ここがすごく難しいところだと思います。ここは既に契約のひな形はできて、実際にそれが運用されているのでしょうか。このコンソーシアムの前半の画像診断のところでも議論になりましたが、研究だったら使えるが、商用になると、また全部オプトインということになります。この事業の場合はどういう契約ひな形でされているのかすごく興味のあるところです。
(西川構成員)いろいろ契約ひな形を探しました。ありません。ないので、まさにこれを具体的に、この1年間でしっかり作ってしまう。これが終わらないとAMEDの実証事業は終われないということで、しっかり作っていきたいと思っています。
例えば、我々はもともとこういうのを想定してやっているんですけれども、幸いなのは、今、経産省がAMEDと進めているIoT事業は、それぞれ糖尿病学会の専門の先生方が、基本的にデータ取りのところに1人1人張りついていただいています。あとからコンセントがもう1回取り直しができるという選択肢も取りうる前提で最初からスタートしているので、今整理をしてもいいんですけれども、普通の場合は。そうでない場合は最初から整理をしてからスタートしないといけない。そういったところも含めて整理したいと思っています。
(北野座長)ここのところはすごく重要で、このコンソーシアムでも、ご存じのように画像診断のところでどのように商用まで持ち込むかの整理はしており、内視鏡であるとか画像に関しては同じ方法である程度できるが、それ以外のものはこのコンソーシアムで議論した方法ではできない部分が出てくると思います。ここのところは非常に重要なので、ぜひご一緒に議論させていただければと思います。
次、資料3について、聖路加国際大学のウォン様からご説明をお願いします。英語でのご発表となりますが、通訳をお願いしています。よろしくお願いします。
(ウォン参考人)こんにちは。私はウォンです。今日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。私の日本語はあまり上手ではないので英語で発表させていただきますが、幸い通訳の方が来てくださいました。ご理解いただきありがとうございます。
【人工知能を用いた患者安全性向上のための事故報告からの知識抽出】
(ウォン参考人通訳)聖路加国際大学公衆衛生大学院のZoieと申します。私たちの研究グループでは、AI、ディープラーニングを用いて、病院での患者安全性に関わるインシデントの理解を改善するという研究を積極的に行っています。10分、15分ほどお時間をいただきまして、現在の患者安全性の問題についてご紹介し、そして、AIを使ってそれをどのように解決しようとしているのか、現状どういった成果が出ているのか、また、将来のビジョンについてお話ししたいと思います。
○Some patient Safety Facts – WHO
まず最初に、最近の患者安全性にかかわる状況について取り上げたいと思います。WHOの報告によりますと、2019年の患者の有害事象で病院における医療を原因とするものが、世界的に疾病負担の14番目に挙がっています。一般の人々は病院で医療を受けるということを当然期待しているわけですけれども、しかし、残念ながら高所得国においては患者の10人に1人が病院で医療を受ける際に害を受けています。
様々な医療の過誤、エラーが起こっていますけれども、その中でも、投薬過誤、医薬品エラーというのは、その性質上、防ぐことが可能なものであります。しかし、統計によると毎年何兆円もの費用が、こういった避けることができる投薬インシデントによって費やされています。これは世界の保健医療支出の1%に相当します。
○The Third Global Challenge on Patient Safety
そして、患者安全性を改善することが喫緊の課題となっておりまして、特に医薬品エラーを防ぐことが重要です。WHOも第3次患者安全グローバルチャレンジにおいて、害を及ぼさない投薬、“medication without harm”ということを呼びかけています。
多くのハイリスクの状況というのは、完璧ではないオペレーションフローやデザインに由来をしています。そして、インシデントレポートシステムを使うことをWHOやIOMが推奨していますけれども、そのインシデントレポートというのは根本原因分析にも役に立ちますし、また、インシデントについて学ぶ上ですばらしい情報源とされています。
インシデントレポートの特徴としては、標準化されたセクションでカテゴリー化された構造を持った情報からなっている部分と、フリーテキストのセクションからなっています。フリーテキストのセクションにおいては、インシデントの背景事情であるとか、転機、取られたアクションなどが記述されています。
○Incident report systems from various countries
多くの先進国においては全国的なインシデントレポートシステムが確立されており、日本でも、日本医療機能評価機構のシステム、それから、イギリスにはNHSのシステムがあります。また、世界的に各病院においても院内のインシデントレポートシステムというものが用いられていまして、病院によっては10年以上のインシデントレポートの収集を行ってきており、テキスト情報という形で集められたインシデントレポートですけれども、膨大に蓄積されてビッグデータの規模に及んでいるところもあります。
こういったインシデントレポートというのは、ナレーティブ、技術的な文書が使われていまして、同じようなインシデントで同じような特徴を持っているものがあったとしても、それを調べるのが難しい状態となっています。また、すべての症例について過去を振り返って全件レビューをするというのは時間もかかり、労働集約的であまり効果的ではありません。
そこで、情報について自動的に学習をするソリューションとして最高の水準のAI、それから、ディープラーニングを使ったものを考えています。また、自然言語処理枠組みを用いる。そして、この重要な問題を解決していきたいと考えています。
○Deep learning AI Applications
AIというのは決して新しい研究分野ではなく、artificial neural networkの研究というのは多くのディープラーニングにおいて基幹となる研究となっていますけれども、1940年にデザインされたものです。最近は演算能力が非常に高まっており、ディープラーニングの研究、それから、応用が盛んに進んでいます。ご存じのアプリケーションとしてディープラーニングを使っているものには、パターン認識、AlphaGo Zeroなどがあります。
自然言語の処理の分野においては、応用例としては自動文書分類、マシントランスレーション、音声認識などがあります。そして、固有表現抽出、Named Entity Recognition (NER)という手法を用いて、事前に定義された言語カテゴリーに関連のある用語を特定する。これがインシデントレポートにおいてのラーニングで、最も良い候補であると考えています。
○Purpose of research
インシデントレポートから効果的に情報を取り出すためには、それが適切な構造を持ったものにしなければなりません。これを達成するために、私たちの研究目的は、インシデントレポート学習のための分類、タクソノミーを作るということ。そして、ハイパフォーマンスなインシデントレポートNERシステムを開発する。そして、インシデントレポートを収集し、検索をし、活用する、イノベーティブな方法を作るということです。
○Key Enabling Research
私たちの研究は3つの目的があります。まず第1の目的が、医薬品エラーの説明に最小限必要な概念の定義。2つ目が、AIの学習モデルの開発をする。固有表現認識手法を使ったもので、インシデントレポートを学習する。そして3つ目に、次世代のインシデントレポートシステムを提案するということです。
○Ongoing - Medication Errors Concepts Development
これまで進めてきました研究の内容について、皆様に共有したいと思います。私たちはAIに適したアノテーションスキームの開発、それから、妥当性の評価を行おうとしています。それに際しては、患者安全性、投薬過誤についての主流な文献を用います。そして、ラベリングガイドライン、注釈ガイドラインを開発しまして、それに基づいて医療スタッフの訓練をして、ゴールドスタンダードに基づいたデータを作成します。そして、そのデータを使ってAIモデルの学習、それから、テストを行っていきます。
○NER Deep Learning structure
NERのモデルで、最先端のディープラーニングを活用しているものを構築しました。そして、ラベル付けされたデータをCONLL 2003 BIO formatに登録をします。日本語のテキストの場合には、日本人研究者がSpecial Japanese word embedding、日本語単語埋め込みの処理を行って、文字レベルと単語レベルのベクトル化されたアウトプットを組み合わせます。そして、候補モデルの事前学習の医療データを用いて行います。その全体の構造がこちらにお示ししている形です。
○Ongoing - Performance evaluation
そして、基本的なNERの構造を用いて、ゴールドスタンダードデータサンプルを使いました。エンコーディングモデルとしては、双方向LSTMとBERTを使っています。そのエンコードモデルの検証を行いました。全体の正確度としては97%以上でした。そして、最適なモデルとしてインシデントレポートの学習に使えるものをさらに探索をしていきたいと考えております。
○Expected outcome
研究の目的として、次世代のインシデントレポートの設計をするという目標もあります。それに際しては、構造化されたインシデントレポートのセクションと非構造化された部分と、両方を使っていきます。フリーテキストの部分については、検証されたAIモデルを用いて医薬品エラーの概念の抽出を自動的に行っていきます。
非構造化情報を構造化されたフォーマットに自動的に変えて登録をします。そして、それをさらなるデータ解析に用いていきます。医薬品の投与過誤、例えば、見た目も名前も似ている医薬品の組み合わせの取り違いなど、これらについても医薬品エラーの概念、名称の比較を単純に行うことによって発見することができます。
そして、こういった医薬品エラーの概念を同時に使うことによって、一定の選択基準を満たした患者コホートの追跡を行っていくこともできます。AIを用いたインシデントレポートシステムをこのような形で作ることによって、根本原因分析も可能となりますし、類似のケースのレポート生成もできます。
○Truly inter-disciplinary research collaboration
インシデントレポートの理解の強化をするということは、世界的に患者安全性に関わる重要な問題となっています。私たちの研究概念は複数の言語で応用可能でありまして、英語での応用も可能です。外部でバリデーションを行って、私たちの情報管理アプローチのバリデーションをしていきたいと思っています。ほかの国の患者安全性においても適用してバリデーションしていきたいと考えています。ほかの国も同じような問題を抱えているからです。そして、インシデントレポートから学習をする能力を高めて、グローバルなインパクトを与えたいと考えています。
○Core research members
この患者安全性の問題を克服するために、学際的な多職種の研究者による連携研究を行っています。献身的に、それから、数多くのサポートを得て行っています。
こちらが研究メンバーです。本日は笹野先生、AIの専門家、それから、患者安全性の専門の種田先生にもご参加いただいていまして、Q&Aのところでお二方にもお助けいただきたいと思っています。
また、この研究を可能としてくださっている、日本学術振興会の支援に感謝を申し上げます。ご清聴ありがとうございました。
(北野座長)この件に関して質疑応答に入りたいと思いますが、その前に私のほうから。このシステムは、今、聖路加病院で実際に使って日常的に稼働しているシステムだと考えてよろしいでしょうか。
(ウォン参考人通訳)まだこのシステムは実装していません。開発中です。現在、聖路加病院で使っておりますシステムは、世界各国で使われているものと同じようなシステムです。
(北野座長)もう1つこの件に関して追加の質問をしたいのですが、今の状況から、実際に日常、病院で使えるようになる間に、どういう問題点が想定できますか。それとも、ある程度開発が進めばスムーズに展開できると考えられているのでしょうか。
(ウォン参考人通訳)様々なバリアが、障壁が実はありまして、技術面、それから、患者安全性、両方の面でいろいろなバリアがあります。
患者安全性については、インシデント報告をしていただくためのアノテーションガイドラインが必要になります。インシデント報告で、例えば医薬品エラーの登録を記録の中に行っていきますけれども、医薬品エラーが起こることには様々なプロセスが関連しています。したがって、それを登録するための枠組みが必要であるという問題が1点です。
それから、技術的な課題としましては、適切なモデルで正確に検索ができるようにしなければいけないという課題などがあります。種田先生、笹野先生のほうからも、何か補足していただけるかもしれません。
(笹野参考人)私の専門は情報学ですが、医療と比べると、精度が90%もあれば十分使えると考えることが多いです。しかし、医療のほうですと、情報学で許容される解析誤りが大きな問題となることがあると思うので、そこらへんのバランス調整が大事かなと思っています。データをどんどん増やしていけば精度は上がっていくと思いますが、解析エラーが出たところをどのように許容するモデルを作るかというあたりを、実用化に向けては考えなければいけないと考えています。
(北野座長)ほかに質問等ございますでしょうか。
(種田参考人)国立保健医療科学院の種田です。医療安全の方面からの課題ですと、まず、皆さんが適切に報告をしていただいているか、適切な記載があるかどうか。要するに、分析するための対象のデータそのものがどれぐらい詳細に、適切に書かれているかということが今でも課題ですけれども、そういったことが、まず分析をする上で1つの課題としてあると思います。
(間野構成員)大変貴重な研究だと思います。日本語はNLPで解釈するのが少し難しい言語だと認識していて、要素解析を行って、これが名詞だとか、これが定量的な数値だというのはかなりの精度で判断できるのですけれども、日本語は、文を肯定するのか否定するのかという動詞が一番最後にくるので、その文の意図していることがAIだけでは理解しにくいことが多いと伺っています。人のキュレーションを経て、どれぐらいの精度でその部分が解釈できているのかという、何割ぐらいだとかいう数値はありますでしょうか。
(笹野参考人)はっきりとした数字というのは非常に難しくて、問題設定をどのように定義しているかによって変わってきます。おっしゃるように、単純な用語抽出ぐらいですと90%を超える精度が出てきていますが、複雑な文の意味が正しく解析できるかという場合は、まず評価をどのようにするか自体難しいのですが、難しいタスクですと、まだ全然実用化できないような70%か60%ぐらいの精度の解析も残っているというのが現状です。
(北野座長)ほかに質問等ございますか。
(末松構成員)病院におけるインシデントは、ちゃんと報告が上がってくる件数が多いところがいい病院なはずです。それで、ディープラーニングの大元になるインシデントの情報を、複数の異なる病院で集めるとディープラーニングは早くなるはずです。
だけども、病院のインシデントの情報を院外に出して、まとめてエンフォースドラーニングするのは相当に厳しいと思うんですけども、こういうノウハウを複数の病院で、できるだけ早くいいものを作ろうという協力体制というのは、なかなか初めからはうまくいかないように思いますが、実際のところはどうなんでしょうか。複数の病院で協力してやれることがあるかどうかという質問です。
(種田参考人)ありがとうございます。ウォン先生のご発表にもありましたが、現在、日本では医療機能評価機構というところが、全国的に医療事故の情報収集等事業を実施しています。これは公立・公的な病院が中心ですが、相当の数の病院が協力をして報告していただいています。したがってある程度の数は得られるのではないかと思いますし、実際10年余り運用されているシステムで、報告の数は年々増えています。
先生がおっしゃっていただいたように、事故が増えているというよりは、皆さんがより正直に報告して、これをみんなで一緒に解決していこうということで、どんどん報告が増えていると私たちは理解しています。そういう意味では、分析できるデータは、より集まりやすくなるような文化がしだいに病院に醸成されつつあるのではないかと思っています。
(北野座長)ほかに何かございますでしょうか。
(ウォン参考人通訳)種田先生がおっしゃったことに加えて申し上げたいのですけれども、日本医療機能評価機構が集めているインシデントレポートは、全国的に1000以上の病院から集まっています。それを活用することと、かつ、聖路加国際病院のインシデントレポートも使えますので、データ自体はかなりの量のデータがあります。
問題は、そのデータについて臨床スタッフにアノテーション、注釈をつけていただく、そのお手伝いをしていただかなければならないということで、お手伝いをしていただける方を募集しています。そういった形でアノテーションして、ゴールドスタンダードのデータにして、モデルに適した形にしなければいけないので、そのためのスタッフが必要となります。
(豊田参考人)私は患者の立場として、構成員に入らせていただいています。医療事故で家族を亡くした経験を持つ者です。私自身、医療安全の取り組みにこの15年ほど携わってきましたけども、日本医療機能評価機構や医療安全調査機構などが、この十数年の間に設立され、頑張って取り組んでこられて、正直文化になりつつあると感じています。その一方で、まだまだ見えていない事故がたくさんあることを私たちは認識しております。
では、遺族や患者団体が医療者の人たちと対立関係になりたいかというとそうではなくて、医療者がかなり過酷な状況で医療を行わなければならないという現状を、私たちもこの間に見聞きし、理解していることもありまして、これは医療者のためにも、国民のためにも、こういったサポートシステムが必要だということを全ての人が認識しないといけないと思っています。
先ほどから、協力できないのではないか、正直に出せるかどうかというような議論があったと思いますが、むしろ、どの立場の人にもよいことを行っているんだということが文化として根付くように、私たち患者の立場の者も声を上げたいと思っておりますので、こういう人たちがいるということも、ぜひ構成員の皆さまも含め知っていただきたいと思い、発言させていただきました。ありがとうございました。
(ウォン参考人通訳)ありがとうございます。コメントに感謝いたします。おっしゃったことは世界的にも重要だと思います。ほかの国にとっても重要だと思います。私は香港出身なんですけれども、香港の医療スタッフもタイトなスケジュールの中で、負担が大きい中で医療ケアを行っています。
そういった中で、さらにこのインシデントレポートでより詳細にレポートをしていただかなければいけないということになると負担なんですけれども、このAIシステムを活用することによって、過去のインシデントレポートから学ぶことができるようになれば、医療スタッフにとっても負荷の軽減につながると思っています。
(山内参考人)ありがとうございます。私も豊田構成員が言ったことの繰り返しになるかもしれないですけれども、医療安全の分野、今までこの会で、画像とか手術の新しい技術とか、いろんな意味でAIの活用が言われてきたと思うんですけれども、そういったことに人々は飛びつきやすいし、会社も飛びつきやすいのかもしれないですけれども、医療安全の分野こそ、今、医師の働き方改革で医者の時間が非常に限られてきて、医療の質と安全を保たなきゃいけない時代になっていると思うんですね。
そういった中で現場にいて、例えばドラッグエラーに関しては、致死的なアレルギー反応があれば、その人に今、患者さんのバーコードで薬を処方するところを、機械的に出せないようにしていくことも簡単にできると思いますし、どういうエラーが起こる可能性がこの人にはあるということを注意喚起するとか、この分野こそAIを取り入れて、患者さんに安全な医療を送れるということを、もっともっと検討していけたらいいなと思っております。
(ウォン参考人通訳)すばらしいコメントありがとうございます。全く同意です。
(北野座長)ありがとうございます。まだいろいろ議論はあると思いますが、次にいきたいと思います。どうもありがとうございました。それでは、資料4に関して事務局から説明をお願いします。
(事務局)それでは、資料の4と、別添の1、2、3となっております4つの資料でご説明申し上げたいと思います。
【資料4 「保険医療分野AI開発加速コンソーシアム」における議論の整理の進め方】
1.これまでの議論の経緯
本コンソーシアムにおきましては、第1回から第3回は、画像診断支援領域におけますAIの分野を例に、開発段階に応じたロードブロックについて議論を行っていただきまして、1月には迅速に対応すべき事項を中間整理として整理をしていただきました。
また、第4回から第6回までは重点6領域を中心に、AI開発に関する取り組み状況について専門の先生方からのヒアリングを行い、併せて健康・医療・介護・福祉領域におきまして、AIの活用が期待される分野についてご意見をいただきまして、俯瞰図を作成いただいたということでございます。
2.議論の整理の進め方
(1)「健康・医療・介護・福祉領域においてAIの開発・利活用が期待できる分野/領域(案)」(別添1)について
議論の整理の進め方でございますけれども、別添の1としてお示しをしております「健康・医療・介護・福祉領域においてAIの開発・利活用が期待できる分野/領域」に関しましては、今後も適宜アップデートしていくことが必要だろうと考えております。
これにつきましては既にいろいろご意見をいただいているので、本日これについて特に時間をとってご議論いただきたいというよりは、分野として大きく欠けているものがあればご指摘をいただきたいと思っております。このコンソーシアム全体の議論をまとめていく中で、こういった分野もほかにあるのではないかというご意見があれば、いただきたいと思っております。
(2)各々の「AIの開発・利活用が期待できる分野/領域」における取組について
(2)は本日、特に中心的にご議論いただきたい点でございます。第4回から第6回までに重点6領域を中心にAI開発に関するヒアリングを行っていただいた際の主なご意見に関しまして、以前に検討いたしました開発段階に応じたロードブロックにおける議論の際にいただいたご意見との関係を少し整理した資料を用意しています。それが別添2です。
別添2は重点分野ごとの議論の概要ということでございますけれども、左側の列に分野を書いておりまして、例えば1ページ目はがんゲノムでございます。右側の欄にコンソーシアムにおいていただいたご意見をグループ分けしております。
1ページ目は、例えばがんゲノムに関するAIに関する議論でしたので、ゲノム解析の視点についてご議論がありました。その次のブロック、データの基盤整備が重要であるというご意見がありました。それに関しましては、ロードブロックの議論の中でも情報基盤というところでご意見をいただいております。
2ページ目を見ていただきますと、がんゲノムに関しましては、データ入力の負担に関するご意見がございました。画像診断の分野に関しましては、画像を集めて、それにアノテーションをつける労力ということで議論がございましたけれども、がんゲノムの関係におきましては、電子カルテシステムなどから必要な情報を抜き出すという特有の部分がございますので、そこについてご意見があったと思っております。
以前のロードブロックの関係で言いますと、負担という観点からは、アノテーション、ラベリング、データ転送、標準化、匿名化、その他の情報基盤というところでご議論いただきましたけれども、これは画像診断の分野というよりも、こういった分野が特に大きな課題なのかなと思っております。
3ページは人材に関するものでございます。AI人材をどういうふうに育てていくかという観点のご意見がありますけれども、こちらの議論の中では、キュレーター、アトリビューター、データを作る部分における人材育成も大事だということでご意見をいただきました。そのほか、情報基盤、インフォームドコンセントなど、分野特有の課題的なものと、前回ご議論いただきました画像診断の領域を例にとったロードブロックの議論の中でも、整理できる内容等もあると思っております。
ここで資料4に戻っていただきたいと思います。今申し上げましたとおり、過去のロードブロックにおける議論の際にいただいたご意見と関係を整理しますと、開発段階に応じたロードブロックの中で、ある意味分野横断的に議論を進められる課題と、分野固有の課題があるのかなと感じてございます。
重点6領域を中心に、俯瞰図に示されましたAIの開発・利活用が期待できる分野領域ごとに、AI開発を促進するために必要な施策とか、企業、アカデミア、行政等に期待される役割につきまして、本日いろんな分野について個別にご意見をいただきたいと考えております。それが本日一番ご相談したい内容でございます。
(3)開発段階に応じたロードブロックについて
開発段階に応じたロードブロックに関しまして、画像診断補助AIを例に議論を行っていただきまして、今年の1月に中間整理として取りまとめました迅速に対応すべき事項につきまして、1月から何か月間か経っておりますけれども、順次検討を進めております。その検討状況を整理したものが別添3でございます。
1枚目が全体の総括になっておりますけれども、2ページ目を見ていただきますと、IRBの関係で、これは以前整理いただきました紙そのものですけれども、会議の開催にあたっていただいたご意見、コンソーシアムでいただいたご意見をもとに迅速に対応すべき事項を整理しておりますけれども、それにつきましてどういう対応が現在のところできているかということを、下に矢印で整理をしております。これをロードブロック1から、9その他まで、全体を整理したものがこの資料でございます。一部医薬品の関係、承認の関係に関しましては、アップデートを次回のコンソーシアムでご報告を申し上げたいと思っております。
もう1回資料4に戻っていただきますと、(3)の開発段階に応じたロードブロックの解消に向けましては、2019年度、今年度でございますけれども、画像診断補助AIを引き続きモデルといたしまして、検討を具体的に進めたいと考えております。その過程の中で、中長期的に検討が必要という課題に関しましても、どういった方向性が考えられるのかということを整理をしていきたいと考えております。
これは我々のほうで、AMEDの研究者の先生方のご協力をいただきながら進めていきたいと考えておりますけれども、そういった検討を進めるにあたって特に重要と考えられる論点、ここについては必ず議論してほしいということがあれば、ご意見をいただきたいと思っております。
本日、時間が限られておりますが、ぜひこの時間の中でご議論いただきたいと思っていますのは、(2)各々の「AIの開発・利活用が期待できる分野/領域」における取組について、後半の議論で一通り振り返っていただければと考えております。
事務局からの説明は以上でございます。
(北野座長)ありがとうございます。別添2が我々の見るべきドキュメントになりますが、がんゲノム、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援があります。7つ目が、重点6分野以外の横断的な課題になります。例えば、今日ウォン先生からお話があったようなことも含めて議論していきたいと思います。時間が限られていますので、議論はやりきれないので、ご発言ができなかった、まだ積み残しがあるものについては事務局にメールをいただきたいと思います。
この議論の目的は俯瞰図を見ていただいて、追加で言っておくべき点についてコメントをいただきたいことと、それをもとに、どういう施策に落とし込むかということを出していくことになります。
画像診断のところでは一通り、ロードブロックは議論を詰めましたが、それ以外のところはまだ手が付いていませんので、何が問題であって、どういう施策、または制度的な変更がとられるべきかというところのアウトプットが具体的になることが次のアクションにつながりますので、ぜひそういう視点からお願いいたします。重要アイテムとして入れておくべき点や、既に書いてある部分でこんなことが非常に重要だ、実はこれが抜けているのではないかというところをご意見いただければと思います。
まず、がんゲノムからいきたいと思います。では、間野先生、お願いいたします。
(間野構成員)がんゲノムでは、がんの遺伝子パネル検査が昨年末に製造販売承認されまして、今年のどこかで保険収載されて、いよいよゲノム医療が国民皆保険のシステムで始まっていくと思われます。その中にあって、せっかく皆保険でやるシステムなので、その検査を受ける人の臨床情報とゲノム情報を集約してデータを利活用しようという国家プロジェクトがスタートしようとしています。
そこで問題になりますのは、臨床の場でデータを入力するところの負担をいかに軽くするかということになると思います。2ページの<データ入力に関するもの>がそれに相当すると思います。そこで、今議長がおっしゃったように、施策として負担軽減を実装に落とし込まないといけないと考えています。
実際日本のゲノム医療の際には、例えば専用電子カルテページを使って、入力する項目を少なくして、時間を、負担を減らして行うということが行われようとしています。例えば検査を発注する段階での入力は数分で終わるとか、それから、検査結果が返ってきて、病院でエキスパートパネルをやるまでのデータ入力は、主治医であれば4、5分で終わるような、そういう専用のシステムを使うことで、実際の現場の負担ができるだけ少なくなることを目指して開発をしています。
一方、専用のシステムを使うだけでなくて、日本は院内がん登録とか、電子カルテのデータベースのSS-MIX2とか、様々な共通のインフラがありますので、それらを使って情報を集約することができるようなシステムを作るということも大事だと思いますので、それも並行して進めていきたいと考えています。以上です。
(北野座長)ありがとうございます。今の間野先生のご発言で、院内がん登録と全国がん登録の情報を突合するということが非常に重要になってくると思います。別添2に、「2年半後ぐらいにがん登録推進法の見直しの時期が来るので」とありますが、これは2年半待たないといけない話なのですか。すぐ見直したほうが良いことは自明だと思いますが、事務局、ここはどうなのですか。
(事務局)課題がある場合に、それをわざわざ何年間も放置しておくという考え方は、妥当ではないのではないかというご指摘だと思います。それはご指摘のとおりでございますので、どういう課題があるか、それについてどういうふうに対応できるかということについては、担当部局とご相談をしっかりやっていきたいと思います。
(北野座長)この分野は非常に動きが早いですから、2年半というのは、私には永遠のように聞こえるのですね。もちろん拙速でやるのはいけないとは思いますが、課題がすでに見えていて、やるべき方向というのはほぼコンセンサスが取れているとすると、早くやったほうが良いのではないかと私は思います。ほかにありますでしょうか。
(山内構成員)AIのほうからそれてしまうかもしれませんけれども、ゲノムの医療において、データとして必要なことが、これから、例えば遺伝性腫瘍が見つかってきたりした時に、血縁者との連結というものもデータとしてのフィードバック、IBM Watsonはたぶん、文献とかそういうのはやっていると思うんですけれども、血縁者の、例えばがんの発症とか病歴まで掘り起こして診断をするというのを、世界中で既にやっているのかどうか分からないですけれども、そこまでの連結がこれから必要になってくると思うんですね。
今、すべてのことがAIで分かってしまう世の中だと思うので、日本人には抵抗があるかもしれないですけれども、血縁者との連結もできるようなデータパッケージというのも、これから重要にはなってくるんじゃないかと思います。
(北野座長)ありがとうございます。ここに関しては、例えば、アイスランドのdeCODEはがんに特定はしていないけれども、大規模なデータを取りました。ただ、結果は個人にどのくらい返っていましたでしょうか。科学的な問題ではなくて、プライバシーの問題で使いにくかったということがあるのですが、その辺りはどう考えていますか。
(間野構成員)日本では、1億数千万人の国で、がんを皆保険でやるシステムを作るとなりますから、非常に大規模なデータセットになるので、入力者全員に、例えば3親等までのがんの罹患情報を入力させるというのも、現実的には難しいのではないかと思います。ただ、それが入力可能なフォーマットのシステムは用意します。
それだけでなくて、例えば、がんの家族歴が濃厚な人の新しい原因因子を探すというのは、いわゆる皆保険で広く情報を集めるだけでなくて、全ゲノム解析を併せた研究プロジェクトを立ち上げるのが良いのではないかと思います。そうして得られた研究成果をオールジャパンのシステムにフィードバックすることが現実的ではないかなと考えていますし、ぜひそういう形をやっていきたいと思っています。
(山内構成員)実際に私も、例えば自分が全部のがん患者さんの3親等までの家族歴を入れなきゃいけないとなるのは、それはやめてくださいということなんですが、このAIの世の中で、前々から申し上げているのは、そうでなくて、例えば個人特有番号があって、この人とこの人は血縁者だといったら、がんを発症したその人の病歴が自然とひも付くようなシステムの構築を考えられる時代なので、先ほどおっしゃったように個人のプライバシーの問題はありますけれども、そういった形でのひも付けもできるような構想をしておかないといけないんじゃないかなと思います。
(間野構成員)それはすごく大事で、医療等IDを全員の患者に統一して用いることが最初の第一歩であるような形で、患者さんが病院を変わっても、その患者さんのゲノム情報がチェイスできるようになると、今、山内委員がおっしゃったようなことは現実になると思います。
(山本構成員)私は、マイナンバーカードを保険証代わりに使うという話も出てきていますので、当然自然にひも付いてくるとは思うんですけれども、それと、積極的に全部のデータをくっつけるということとはちょっと違うんではないかなという気はしています。
要はデータが増えてくると、データの1つ1つのレベルというか、品質はそんなには保証できないので、いくらAIが発達しても、例えば、この人の大腸がんと、この人の胃がんと、この人の別のがんを、家族でいろいろ発症していたからといって、それが全部遺伝性という話にはならないと思いますし、研究としてある程度の精度で、あるグループを集めて積極的に見ていく研究と、大規模のマスデータを集めてやるというのは、当然データ品質に違いが出てきますので、何でもできるようになるという出し方はちょっと危険ではないかなと思っております。
(宮田構成員)今ご指摘いただいたように、個人を軸にして適宜ひも付ける。情報粒度、質というのを個別に管理できるようにしていくことが1つだと思いますが、ここに挙げられているデータ基盤。先ほども少し入力の部分でも出ていたんですが、G20で、日本全体として“Data Free Flow with Trust”ということで、データの活用のガバナンスをこれから打ち出していくということも既に予定されているので、これと連動させながら、例えばトラストで活用できるという意味で注目されているのは、医療というのは公共財としての部分、あるいは共有財としての部分なので、このあたりを開いていく。個人情報保護法の改正も目下検討中ということですので、こういった情報運用を開く部分とも連動してディスカッションができると、活用基盤というのはより議論が深まるのかなと思います。
もう1つは、ここで少し出ていますが、例えばアップルは、北野先生はよくご存じだと思いますが、今年の1月、ティム・クックが、アップルの世界に対する貢献を未来の人は何と考えるか、健康だと言っているぐらいそこに重点を置き、今年の3月のAmerican College of Cardiologyでアップルハートというのを発表しています。それは、そこまで期待したほどすごくはなかった部分もあるんですが、ただ、デジタルヘルス、IoT×AI、必ずしもそれはすべてAIではないんですが、このあたりの分野はもう少しあってもいいのかなと。
なぜかというと、画像、AIを軸にしてロードブロックのディスカッションをする。これは非常に重要だと思うんですけれども、IoTパーソナルデータとはインフラの作り方としても違う側面があるので、ライフログデータはデータの質としては当然厳しい部分もありますが、このあたりも視野に入れた活用環境も重要かなと、これを拝見して感じました。
(北野座長)このがんゲノムについては、個人的に23andMeを検査していて、ある種のがんの確率が平均よりも少し高いと出たのですね。しかし半年後ぐらいに新しい研究で、アジア人種群で見ると平均よりも低いと出ました。アジア人種群になると、逆の結果が出るわけです。それがどのぐらい信頼性があるかは分からないけれども、きちんとしたエスニックグループで検査しないとそういうことが起こりえるわけです。そのため、ホームグラウンドでデータが蓄積するということは非常に重要なことなのだろうと思います。
次にいきたいと思います。画像診断のところはかなり議論しましたけれども、追加事項が何かあればコメントをいただければと思います。
(葛西技術参与)話が多少前後するというか、私はインフラ屋でございますので、実は全ゲノムの話をやろうが、画像のAIのお話をしようが、当然クラウドの話がよく出てまいります。日本はクラウド拒絶も強いと思いますが、テクノロジストとしてみると、これはクラウドではないんじゃないかみたいなものをクラウドと呼ぶ日本のガラパゴスはやめたほうがいいかなと。
それに関して言うと、専門的になりますが、特殊な定義ですけれども、1つは、まずオートスケーリングであること。これはどういうことかというと、AIのプログラミングとか、実際私は開発するので、いろんな画像を取り込んで、100枚でやってみたり、1,000枚でやってみたり、1万枚でやってみたりという、いろんなトライ&エラーがしょっちゅう起きるのに、厚生労働省にいてちょっと微妙ですけれども、利用率が低いような、極端な投資をして、最近新聞に載っていましたけれども、そういうことは絶対にあってはいけないと思います。そういう意味ではオートスケーリングでなければいけない。これは必須だと思います。
もう1個が、仮想的ネットワークを使わないと無理で、もちろんオンプレミスの状態で画像が入っていたものも、仮想的な、プライベートなネットワークにデータを残せなければいけないんですけれども、これも必須だなと思っています。もう1個はREST。ウェブに出さなければいけないという、RESTのAPIを持つこと。宮田先生がよく言われているオープンAPIであること、これも必須だと思います。
この3つの定義、これがないとクラウドではないというふうに呼んでいかないとまずいなと思っておりまして、全ゲノム解析をやる時、ターンアラウンドタイムを確保しないと、実はパネルでも今厳しい。間野先生もかなりご尽力されていて、実際の治療の現場で、ちゃんとした情報をお返しするまでのターンアラウンドタイムはかなりなシステムの能力が必要になりますから、こういった意味でも、逆に我々からすると研究現場から、インフラの研究をやられている方々も、本当のクラウドを使ってスケーラブルなシステムの研究をやっていただきたいというのが1つです。
もう1個重要なのが、ちょっと違う視点ですが、人工知能の評価指標のことを言っておきたいと思っています。先ほど発表いただいた内容で、なるほどというところがあったのが、安全性のところの聖路加での発表ですが、あの資料をよく見ると分かるんですが、日本の場合、AUCに異常にこだわっている。バランシングを取る評価指標に対して、今日の資料を見ると分かりますが、アキュラシーも見るし、リコールも見るし、プレシジョンも見る。それぞれ治療によって評価指標は変わりますから、それを一概にAUCだけで画像診断の評価をするというのは、かなり危ないことをやっているなと思います。
これはなぜかというと、厚生労働省に一応いますから、最終的に加算制度にもっていくような、加算をいきなりやれということではないですが、ちゃんと治療の現場で使われていかなければいけない。PMDAがそういった審査もしなければいけないし、GxPにも適用していかなければいけないと考えた時に、今の研究開発の段階ではAUCでいいですけれども、そのままいきなりPMDAがAUCで審査するとか、そんなことをやったら絶対いけないと思いますから、評価指標の議論をどこかでやって実用性があるようなものにしないと、研究費用が無駄金になってしまう。それこそエコシステムではないと思いますので、この2点は強く言っておきたいと思います。
(田辺構成員)今のご発言に関して、もう1つ私のほうから。今気になっているのが、AIを、私は毎年いろんな製品を集めては評価をしていますが、去年やった評価が今年になると、何ですか、それというぐらい古いものになってしまう。半年ぐらいのペースでどんどん新しい製品も出てきますし、新たな開発の手法も出てまいります。
ですので、評価指標を改めて、AUCだけではないものも当然セットしなければいけないですが、果たして半年に1回なのか、1年に1回か、スピード感というのは今後の検討だと思いますが、評価をどのタイミングでするかというところも検討していかなければいけないと思っております。
(北野座長)ありがとうございます。ほかにはございますか。ないようでしたら次は診断・治療支援になります。ここでは主に教育の説明になっていますが、このあたりでコメントはございますでしょうか。
(山本構成員)先ほどの話ともかぶりますが、AI、今のところアメリカで医療機器として承認されたとか、いろいろそういうのが出ていますけれども、個人的には、AIはそんなに医療機器としてなじむものではないと思っています。1つは先ほどおっしゃったような、いわゆる医薬品・医療機器に求められているような評価になじまないところと、ものすごくターンオーバーが早い。いつかは安定するかもしれませんが、現時点では全然安定してないので。
もう1つは、そういう意味では保険で、日本特有の承認制度の中に入れ込むにはあまりに外れている。一般的な性格としてちょっとずれている。一部は使えると思いますけれども。むしろ、診断補助に使うにしても何にしても、私は医療機器の開発に特化していろいろやっていますが、医療機器にしないほうがいいものが結構ある。例えばカルテは医療機器ではありませんし、いろんな診断補助も、医療機器になってないものがたくさんあります。
医療の中には、医療機器ではない雑品と呼ばれているものがたくさんありますので、保険の中に絶対入れ込まないといけないというビジネスモデルはあまり考えないほうがいいというか、アプリの大半は医療機器にならないと思いますし、しないほうがいいのではないか。医療機器にしていくんだという形の研究開発で、例えば研究費がつかないということになると、むしろよろしくないのではないかなとは思います。
(北野座長)今回のコンソーシアムでは議論が出ていませんでしたが、PatientsLikeMeというサービスがアメリカでありますよね。最近、Beijing institute of Genomicsのファウンダーが、iCarbonXを立ち上げて話題になっていますが、この件は個人が自分の病気のデータをどんどんシェアするというものです。はじめのころ、ファウンダーと会ったことがあるのですが、兄弟がALSになって、リチウムか何かの治療法があるのだけれども、そのデータを取ったら実はリチウムはあまり効かないということが、「Nature Biotechnology」に出ているのですね
これは保険収載といったことではなくて、単にメディカルな、患者志向のSNSサービスで、今後どう展開するか分かりませんが、そういったものがいろいろなところで出てきています。そのように、従来の医療、特に保険収載の中でのサービスとはずいぶん違う領域が非常に広範に出てきているという感じは確かにします。そこをどうするかというのは、ここでの議論なのか、そうでないのか、注視しながら必要な時にどう取り込むか、考える必要があるかもしれないですね。宮田さん、お願いします。
 
                                         
[1] Wicks, P., et al., Accelerated clinical discovery using self-reported patient data collected online and a patient-matching algorithm, Nature Biotechnology, 29, 411-414 (2011)
 
 
(宮田構成員)今おっしゃっていただいたとおり、アプリは、特にアメリカは非常に多く開発されていますが、保険償還が付いているのはまだわずかです。1桁であると。なので、山本委員がおっしゃっていただいたように、保険償還はゴールの1つでしかないし、これだけをゴールにするという考え方ではなく、社会の中でどう役立てていくか。
以前、北野先生がご紹介いただいたバビロンヘルスも、例えば受診を抑制できた。これはこれで1つ重要な成果で、バビロンに関してはまだ評価中とNHSに出ているので、どれぐらいの効果があるかというのはサイエンティフィックにはこれからですが、ただ、プレリミナリーにはおもしろい結果が出るかもしれない。なので、こういったいわゆるデジタルヘルス、診断支援というのを少し広い視野の中で見ていくのが1つ。
もう1つ、FDAもどんどん変わっていっていて、この4月の頭に、今までスナップショットで審査をしていたんですけれども、アップデートしていく、継続的にデータを学習していくものも視野に入れた審査の検討、そういったディスカッションペーパーも出しているので、そういう議論もキャッチアップしながら、ここでも柔軟に対応できるといいかなと思いました。
(北野座長)AIのところは、アップデートやアルゴリズムの変化が非常に早いので、改善したものの承認の障壁が高くなると、古いものを使い続けるという、何をしているのか分からない事態になるわけです。ここが今までと根本的に違う点になります。だけれども承認の障壁を下げすぎるのも良くないですし、上げすぎると古いものが市場に残ってしまいます。新しい状況に対応しなければいけないですね。
(宮田構成員)そうなんです。そこをスナップショットだけでやっていたので、つまり、2年前のアルゴリズムなので、現場から見ても、何だこれというものが多かったんですが、アップデートが入ってくるとなると、もしかしたら変わるかもしれないので。
(北野座長)この辺りはPMDAなどと議論しながら、対応する方法を考えていくようになると思います。
(宮田構成員)必ずしも後手に回る必要はない部分だと思います。
(北野座長)ほかの国やFDAもそれは直面している問題だと思いますから、国際的にある程度ハーモナイゼーションが必要になってくると思います。
(森審議官)ただ今お話があった、進化することが必然である医療機器的なもの、これについて、今、国会に提出している薬機法の改正案の中にも、医療機器カテゴリーのものに対する新しい承認形態を読み込めるように、実は入れてあります。
ただ、実際にどういうものがどういうプロセスで進化することを、どんなふうに担保するのか。そこがテクニカルにはなかなか難しいところではありますが、スナップショットで承認をするというやり方一辺倒だと、この手の製品、これは医療機器になるかならないか、どちらもあると思いますが、少なくとも医療機器のカテゴリーに入ってくるものについても進化することが必然で、進化するプロセスをむしろちゃんとレビューして、そのような形のものに承認を与えていくような考え方ができるようにということで、既に出してあります。
ただ、これをどんなものに当てはめるかというのはこれからの話だと思いますし、それこそPMDAと研究アカデミアと産業界との間でよく話し合いをしていくことが必要だと考えています。現状としては、そういう取り組みは既にやっているということだけご紹介させていただきました。
(北野座長)ここはとても重要なポイントになってくると思いますので、必要に応じて場を設定して、集中的に議論する必要があるかもしれません。次は、医薬品に関してです。この件に関してコメント等ございますでしょうか。
(米田構成員)前回、AIを使った医薬品開発の現状をお話させていただきました。今日はその中で課題があればということで、ご理解いただいたほうがいいかなと思っていますのは、この前申し上げたように、最後にマウスの薬を作っていましたというのでは困るということだと思います。
そこで、最初は、臨床サンプル、臨床のデータからスタートするということで、今、開発しようとしているところですが、そうすると、臨床現場の先生方のご努力といいますか、労力を割いていただかないといけない。そのへんの連携をどううまくとっていくかというのが大きな課題になってくると思います。臨床の先生方にどんなインセンティブがあるかとか、臨床現場の先生方とうまく進めるためにはそういうところがかなり重要になってくると思います。
それから、AIが何らかの形で答えを出してくると思います。それが本当に正しいかどうかというのをどうやって証明していくのかということが、次のステップとしては非常に大事になってきますので、それを1つの大きな課題と捉え、最終的には患者さんにより早く薬を出せるかというところを考えていかないといけない。例えば、間野先生と一緒にやっていますPDXマウスをうまく活用するとか、そういったことをこれからより積極的に進めないといけないかなと思っているところです。
(赤塚構成員代理)今、米田先生がコメントいただいたのと同じですが、我々は、臨床の情報、データが重要だということを再度コメントさせていただきたいと思います。しかし、現場の先生ご苦労はひしひしと感じておりますので、政府も含めて、先生方の時間ができるような施策をお願いしたいと思います。自動的に転送される、あるいは音声入力のお話もあったかと思いますが、まずそこの部分があって、我々に臨床情報を提供していただけるようになることが重要かなと思いました。
もう1つ、重要施策が画像等に分かれていますが、画像解析のAI開発は当然我々に必要な部分です。病気一つのかたまりではなく細かく分けて層別化されるようになると、それぞれの患者さんに対する薬もできていくと考えております。画像診断のAIが進んでいくことは、それを可能にし、それを含めた臨床のデータで我々創薬はスタートさせていただければと思っています。これはコメントですけれども、よろしくお願いします。
(山本構成員)製薬会社の中でシーズ探索に使うところはそんなに問題ないと思いますが、臨床データを、治験レベルですかね、臨床レベルでデータを集めてAIでというところになると、AIの問題ではなくてカルテの問題になってきてしまう。
実際治験でデータをカルテから集めているかといったら、実際にはあまり集めていない。なぜかというと、昔は原資料、データソースはカルテですよということになっていて、カルテにすべてのデータがあって、それを抜き出して収集するという建前だったんですけれども、現実的には、今はカルテのデータだけでは足りないので、ワークシートというものをCRCさんが作っていて、それに必要なデータを全部取っているので、カルテよりもワークシートのほうが細かい。
治験のために別途データを集めているという状況が出ているので、カルテのデータだけでは、とてもではないですけれども治験は成立しないというのが現状です。それを全部カルテに書けというと、すべて患者さんのデータをそれだけ細かく書くのかということになってしまいますので、そこはAIではなくて、AIにデータを供給するデータソースの電カルのほうを何とかしないといけないというほうに立ち戻ってしまうかなとは思います。
(北野座長)AIではないかもしれないけれども、データがなくてはAIはできないので、そこは非常に重要なポイントです。少し前に私があるところで聞いたことは、カルテを治験のために製薬会社がデータ化する際も電気的データを直接サーバー間で移すことができなくて、人が画面を見ながらその都度写さないといけないという話を聞いたのですね。そうすると間違いも入り、ものすごく遅くなるし、ほぼ意味がないように思えます。理由があってそのようなやり方を取られていることは分かりますが、そういうところから変えていかないといけないと思います。
(山本構成員)本当は変えたいんですけれども、現実的にはすべての治験、各製薬企業とかCROさんが使っているシステムがそれぞれ違うものを使っているのに、自動的にそこにデータを流し込むことができないというのが1つ。
もう1つは、通常の診療で取っているデータよりもはるかに細かいデータを取らなければならないので、それを診療カルテからは取れない。つまり、診療カルテに存在しないデータを別途集めないと治験が成立しない。PMDAはそこまで求めているというところがもう1つ。
(北野座長)それは、情報量とデータフォーマットの違いであって、制度的な制約があって直接やり取りできないわけではないのですか。
(山本構成員)制度的な制約は今のところないですが、個人的に懸念しているのは、今PMDAは、データの信頼性を担保するということで、システムを使った場合には、システムのバリデーションまで要求しています。自動的に取り込むことで、電カル自体のシステムバリデーションが要求されると各医療機関は対応できなくなるので、そこは逆に、制度的に線を引いていただかないともたなくなってしまうと。
(北野座長)そういうことですか。分かりました。宮田さん、お願いします。
(宮田構成員)まさに関連したところですが、例えば、イギリスはある都市を全部、電カルも含めてつないで治験をやってみたんですけれども、役に立たなかったと。eCRFというのを出して、結局手入力みたいな形で入れたんです。なので、臨床でデイリーに使っている情報と、治験レベルで必要な情報の粒度はどうしても違うので、そこは工夫が必要になります。
最近アメリカで出てきたものは、電子カルテのインターフェースに新しく挿して、適宜必要な情報を取ってくるというインターオペラビリティの部分で、新しくインターフェース制御をかける。そこに、そういったユニコーン企業、製薬企業が2,000億で買うというのが出てきているので、カルテという部分の外側も含めた検討が必ず必要になると思います。
(北野座長)ありがとうございます。まだたくさんあると思いますが、時間が限られているので残りはメールでお願いします。次、介護・認知症に関してお願いします。コメント等ございますでしょうか。
これは民間の事業者がかなり努力をされて導入がどんどん始まっているので、どういう立場で国がそれをサポートするかということになるのではないかというのが1つあります。宮田さん、お願いします。
(宮田構成員)例えば介護のほうでいくつかの企業から、センサー情報を使って、要介護認定だったり、ADLを評価できるというのは出始めています。ただ、医療、特にがんゲノムと比較すると介護が圧倒的に違うのは、現場に高コストを負担するようなものがないので、いかにコストダウンして普及させるか。
もちろんがんゲノムも重要ですけれども、介護はよりそこが重要で、よりエッジコンピューティングにしていったり、こういったエコシステムとしての工夫が、介護AIにはすごく現場から要望を受けています。期待されている部分なので、企業のイノベーションと普及のバランスを考えていただくといいかなと思いました。
(北野座長)介護で費用を回収できるような研究開発だったら良いけれども、介護だけでは回収できない時に、どのように事業的に成り立たせるかというのは、1つポイントになると思います。いろいろなプログラムを見ていると、技術的にはおもしろいのだけれども、これは介護だけでは費用を回収するのは難しいといったものはたくさんありますよね。
(松尾構成員)もう話に出たかもしれないですが、エクサウィザーズの石山さんがおっしゃっているのは、ロボットとAI等の新しい技術を導入して、削減した費用の何割かが事業者に入るような仕組みを作ってもらえたら、非常に市場規模は大きいのでやるんだけれども、結局安くなったら、その分しか安く払われないと事業者としては魅力を感じられないので、大きな投資ができないと常々おっしゃっていますので、そのへんの仕組み作りもすごく重要かなと思います。
(北野座長)まさにそのとおりです。
(豊田構成員)私が所属しているような中小の病院では、先ほどのレポートスシステムのようなものも含めて、医療安全に関して予算の確保が難しいので、導入できたらいいなと思って、うらやましい気持ちで聞いていました。これを小規模の病院にどうやって予算を組み込んでもらえるのだろうという思いが正直なところで、今の時点では全く想像がつかないです。
私の場合、急性期病院から回復期のリハビリテーション病院に勤務したことで介護のことものぞかせていただくようになりましたが、そうすると驚くほど人手が必要なことがわかり、受けている治療以外のことで亡くなる可能性や危険性がいかにあるかということも思い知りましたし、患者を見守るものがないと、誤嚥や窒息、転倒・転落が起きやすい環境は全国的にも少なくないと聞いているなかで、これらに必要なコストの面も心配していますので、ぜひそのへんのところもご検討いただきたいと思っています。
(北野座長)ありがとうございます。では、手術支援に関してコメントをいただきたいと思います。前回、議論した総合的なAI手術室の話ですよね。
(宮田構成員)手術は私も関連している部分なので。今回手術支援というところで、まずは村垣先生から、環境そのものをいかにサポーティブに作っていくかということだったと思いますが、もうすぐロボット手術というものがさらに、グーグル×ジョンソン・エンド・ジョンソンというのがセットインしているので、この1、2年以内に出てくる。
そうなってくると、手術の市場×、最初はアシスティッドみたいなものですが、このあたりの組み合わせの到来を予期して、データをその時に取れるような環境、いわゆるAI Surgeryと連動しながら作っていくことも必要になるのかなと。手術本体ですね、支援だけでなくて。こういったのも論点だと思われます。
(北野座長)この前ご紹介いただいたものは、ダビンチのようなシステムではなくて、手術自体のAI化だったと思います。その中にコンペティターがどんどん出てくるので、そこのところも入れるという話だったと思います。
(宮田構成員)ダビンチで、ジョンソン・エンド・ジョンソン×グーグル。日本も今、川崎重工がこういったものを作っているので、日本初のものも出てくるので、ここの先を見通して、それが来た時にしっかりスタートできるというのは必要だと思います。
(北野座長)ここはとても重要なポイントになりますよね。ありがとうございます。ほかに、コメントありますか。それでは、次、病院関係のAI化ならびその他、横断的な課題に入りたいと思います。今日のウォン先生の話も含めてコメントはございますか。
(山内構成員)この分野ので、理想のAIホスピタルの中では医療安全のシステムも組み込めるような形になってくると思いますし、AIホスピタルの中には手術支援のそれも入ってくると思うので、分野の組み分け方が混乱してしまっていますが、この間のAIホスピタルの中では医療安全の分野はなかったですけれども、理想的には、そういったものもきちんとできるのがAIホスピタルだと思いますので、いろいろと検討していただければと思います。
(北野座長)その辺りは別添1の全体像のところで、病院、クリニックのAI化にどういうアイテムがあるかになると思います。安全、医療従事者の支援、手術、そういうところの細かい絵を描いていくことになるのではないかと思います。そこでポジショニングするのかと思います。別添1はこれで決まったわけではなくて、こういう議論をしながらさらに精密化していくという話になると思いますので、そういうところも含めて変えていけば良いと思います。
ほかは何かございますか。
(末松構成員)前回のこの会議で予告しましたが、AMEDが支援しているAIの成果報告、画像診断の画像兄弟ですけれども、おかげさまで4月7日(日)にたくさんお集まりいただいて、シンポジウムを無事に進めることができて、佐原大臣審議官にもご出席いただきました。
その中で、これは複数の学会の連携を見据えた仕組みですけれども、1つ強調しておきたいことは、病院のAIは、シェアできる情報とシェアできない情報があると思います。例えば病理学会が取り組んでいる仕組みに関しては、病理学会が元から持っている画像のデータベースと、国立情報研の連携で、AIを通して出てきた結果を地域の病院に返すということが、実際に複数の病院でこの2月からスタートできました。まだ広域に連携をすると言えるほどの広域さはないですけれども、たくさんの病院と成果を共有できるような仕組みを作るべきだと考えています。
その面から言うと、介護のところでAIをどこかで開発をして、広域にそのサービスを使ってもらうような仕組みが、なかなかいいものが思い浮かびません。そこはこれからの大きな問題と言っている間に、20年たつと超高齢少子化社会が飽和していきます。2040年で飽和するということなので、そこを急がなければいけないということでコメントさせていただきました。
(北野座長)ありがとうございます。最後にお願いします。
(山内構成員)末松構成員にご質問ですけれども、今、病理の結果に関して、病院の病理医が読むのではなくて、AIを通して、それの診断を返すということをやられている。
(末松構成員)正確に申し上げると、福島県立医大の専門病理医の先生が最終結果を直接判断して地域の病院に帰す。つまり、AIがオートメーティッドで自律的に診断を出しているのではなくて、一番最後は専門の病理医が判断する。それがようやく少しずつ動き始めているところです。
(山内構成員)分かりました。私が現場で気になるのは、課長通知を昨年の12月に出しましたけれども、医師がAIを活用した場合の責任の所在が、今の段階だったら、最終的には福島県立医大の病理の先生がAIの情報をもとにもう一度やるということで、そこが最終的な責任だということではいいと思いますが、そこの部分はケースバイケースでだいぶ変わってくると思いますので、そこに関しても引き続きどうするかを議論していただければと思います。
(北野座長)それでは、一連の議論はこれで終わりにしたいと思います。最後に内閣府から、AI戦略及び人間中心のAI社会原則に関してご報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
(新田参事官)内閣府の新田でございます。5分ほどお時間を頂戴いたしまして、内閣府のAI戦略、AI原則についてご紹介したいと思います。
【「人間中心のAI社会原則」及び「AI戦略2019(有識者提案)」について】
AI戦略とAI原則ということで、我々日本の特徴といいますか、ヨーロッパも近い議論の進め方をしていますが、AIの原則とAI戦略を同時並行で、あるいは連携しながら議論を進めていることが1つ大きな特徴かなと考えております。望ましい社会をどのように構築するかということで、AI原則を作っています。
○人間中心のAI社会原則(概要)(P.2)
基本理念として、人間中心を掲げています。これは、いわゆる巨大プラットフォーマー中心の戦略もあれば、国家が主導する戦略もあると思いますけれども、日本らしいAI戦略、あるいは実現すべき社会というのは人間中心の社会ではないかということで、AI社会原則を設定してございます。
こういった社会を実現するための基本的な原則として、人間中心のAI社会原則を取りまとめて、さらに、人間中心の社会を実現するために、どのような具体的な戦略を政府として打っていけばいいのかということを、AI戦略として取りまとめた構造になっています。この構造は、EUも似たような戦略と原則という両輪で検討しているという意味では、同じかなと考えています。
○人間中心のAI社会原則(人間中心、教育・リテラシー、プライバシー)(P.3)
AIを活用する社会の基本的な考え方でございますので、先ほども論点をいろいろ並べていただいていましたけれども、このコンソーシアムの中で議論されます、健康・医療・介護の分野でもかなり関係するような基本的な原則であると思います。
ここでいきますと、人間中心というところ。下線を引いていますが、判断と決定を人間がしっかり行うことが求められる。先ほど、ケースバイケースというお話がありました。大きな原則としてはこういうことなんだけれども、具体的にはこれをどういうふうに健康・医療・介護の分野で落とし込んでいくのか。例えばガイドラインに落とし込むとか、そういった実装、この原則を落とし込むためのさらに具体的な議論が必要と考えております。
○人間中心のAI社会原則(セキュリティ、公正競争確保、FAT)(P.4)
先ほどの論点の中にも、説明責任に関わるところがあったと思います。技術的には、なぜAIはこういうアウトプットを出したのか、といった説明そのものをするのは難しいと思いますが、ここではそういうことを言っているのではなくて、企業とか組織のガバナンスを含めて、何か問題があった時にどう対応するのか。そもそもこれはAIで駆動されているとか、どういうデータを使っているのかということを含めて、説明責任を果たすことを求めているところでございます。
○人間中心のAI社会原則会議(構成員一覧)(P.6)
AI社会原則の会議の構成員一覧をお示ししています。北野先生、羽鳥先生、松尾先生、Preferredの方々、このコンソーシアムに関わっている皆様にもご協力いただいているところでございます。
○AI戦略【基本的考え方】(P.7)
AI戦略ということで整理して、有識者のほうで取りまとめていただいているところでございます。先ほど申しましたような3つの理念、人間の尊厳、ダイバーシティ、サステナビリティを実現するための具体的な戦略ということで、ここにございますとおり、教育、研究開発、社会実装、データの戦略、デジタル・ガバメントの構築に取り組んでいくべきとまとめています。
○AI戦略【主な具体目標と取組】(P.8)
具体的な目標と取り組みを掲げてございます。健康・医療・介護につきましてもとても重要なテーマであるということで、世界の医療AIハブ、データ基盤の整備を戦略として掲げています。
○教育改革に向けた主な取り組み(P.9)
先ほども医療分野における人材が重要だというご議論がございましたが、AI戦略では、いわゆるリテラシーレベルからトップのレベルまで教育改革を進めながら、日本全体のAIデータサイエンス、数理のリテラシーを上げていくことを提言しています。
○研究開発に関する主な取組(P.10)
今、日本には、理研、産総研、NICTというAI3センターがございますが、こういった基盤技術を研究するセンターと、医療関係、材料関係、農業関係といった、実装に近い研究開発機関、それから、企業もあるかと思いますけれども、基盤研究と応用研究をしっかり融合して、アメリカや中国のAIの研究開発ともしっかり伍していけるような体制を構築していくべきですし、それから、日本の強みは、先ほど来もありましたけれども、健康・医療・介護の現場のデータを活用したAI×○○分野、健康・医療・介護の分野、農業分野が強みであるので、そういう研究開発にもしっかり取り組んでいくというのが研究開発の大きな戦略になります。
○データ(P.11)
健康・医療・介護のデータは秘匿されなければならないというところはもちろんあります。先ほども議論がありましたけれども、安倍総理が“Data Free Flow with Trust”と仰っていたように、トラスト基盤を政府としてもしっかり構築して、安全保障上の機密情報はもちろん、個人情報、知財に関する保護を確保した上で、自由な流通をしていく環境を構築していくことを戦略として挙げてございます。
○社会実装に関する主な取組(P.12)
健康・医療・介護を中心にしっかり社会実装を進めていく。こういった戦略を提示しているところでございます。
○AI戦略及びAI社会原則の検討体制(P.14)
最後に、AI戦略、AI原則の検討体制をお示ししてございますけれども、このコンソーシアムの議長でございます北野先生には、そのメインプレーヤーとして活躍いただいているところでございます。以上です。
(北野座長)ありがとうございます。特にAI戦略はこのコンソーシアムとも関わるところがあって、基本的な骨子はまず人材の育成です。人がいないと話になりません。例えばメディカル系も、「医療×AI」の人材、「介護×AI」の人材をどれだけ多く養成していくかになります。それはいろんなレベルがあると思います。使うということと、現場で開発できるということと、トップレベルでやるといったいくつかのレイヤーがあるので、これは混ぜずに、レイヤーごとにやっていくことになると思います。
テクノロジーとしては、リアルワールドとダイバーシティ&インクルージョンということを大きなポイントにしていて、この分野における“Trusted Quality AI”をつくっていくということが骨子になります。ですので、健康・医療分野、介護の分野だと、“信頼”が重要になりますし、“品質”が重要になります。また国の研究所としては、理研、産総研、NICTなどが基盤的な研究から応用までの展開をします。もちろん、それ以外でもいろいろなことがあります。
理研、産総研、NICT等でも、医療系の研究や、バイオメディカル系の研究はやっている部分が当然あるわけで、そこと、例えば厚労系の研究、AMEDの研究とどのように連動するのか、橋渡しするのかということは、これから議論をしていくことになるのではないかと思っています。
この3センターの研究開発ネットワークをどうするかということは、今、議論が始まっていますが、この中だけに閉じている話ではなくて、例えば農業だったら農研機構にAIのラボがありますから、そこと密に連動しますし、分野によってAMEDやJST、JSPSと連動していくものもあります。
もちろん、戦略的にやるものは戦略的にやります。それ以外は創発的に新しいものが出る余地を相当残しておかないといけません。戦略的なものは明らかにやらなければいけないですけれども、そうでないのを決めるとだいたい外れるので、その辺りはしっかりと見ていく必要があると思っています。ここにご質問等はございますか。
(末松構成員)この資料の中で1か所ぐらい、サステナビリティという言葉が入っているか、入っていないかなんですが、絶対に外していただいては困るのは、データベースのというのはみんな、データは減ることはなく時間と共に増えるので、データサステナビリティをどういうふうに担保するかというのは世界中の課題になっているということを一言申し上げたい。データセンターの維持の問題です。それがあまり議論されていないのではないかと思いました。
(北野座長)ご指摘の点は大きな問題で、バイオインフォマティクスもいろいろなデータベースをつくるけれども、10年もてば良いほうで、資金が切れるとサポートができなくなるといったことや、3年つくって、終わって、中身は何もないなど、古いデータベースが山のように世界中に転がっています。これは大問題です。つくる時は予算が出るけれども、メンテナンスに予算が出にくいです。これを解決する仕組みを考えるなり、腹をくくった資金調達を続ける構造をつくらないかぎり解決できません。これは大問題だと思います。
北米で作られたとても有名なバイオロジーのデータベースも、一時はシンガポールに持っていくとか、香港に持っていくとか、大きな騒ぎになったこともあります。最終的にはアメリカのファンディング・エージェンシーが資金を出すとなり、結局戻ったということがありました。そのようにデータベースが支えられないと、どこかが全部買いにきて我々がアクセスできなくなるということは当然ありうるので、非常に重要なポイントをご指摘いただきました。
今日は終了したいと思います。次の日程ですが、6月6日の16時から開催になりますので、お願いします。
今日の議論で、言い残したこと、追加のポイントが出てきた場合は、事務局にメールをいただければと思います。よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。