第149回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和4年9月28日(水)10:00~12:00

場所

対面及びオンラインにより開催
(AP虎ノ門)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

【会場】
○公益代表委員
城内博(分科会長)、髙田礼子
○労働者代表委員
袈裟丸暢子、小菅元生、中村恭士
○使用者代表委員
鈴木重也、増田将史
(五十音順、敬称略)
○事務局
美濃芳郎(安全衛生部長)、松下和生(計画課長)、釜石英雄(安全課長)、石川直子(労働衛生課長)、安井省侍郎(化学物質対策課長)、中村宇一(産業保健支援室長)、樋口政純(調査官)、土井智史(建設安全対策室長)、立原新(治療と仕事の両立支援室長)、渡三佳(電離放射線労働者健康対策室長)、平川秀樹(環境改善室長)、佐藤誠(主任中央産業安全専門官)、城井裕司(主任中央労働衛生専門官)、丹藤昌治(主任中央じん肺診査医)
 
【オンライン】 
○公益代表委員
砂金伸治、熊崎美枝子、水島郁子、山口直人
○労働者代表委員
佐々木弘臣、佐藤和幸、門﨑正樹
○使用者代表委員
天沼陽介、及川勝、出口和則、中村節雄、矢内美雪
(五十音順、敬称略)

議題

(1)労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規程の一部を改正する告示について(報告)
(3)揚貨装置運転実技教習、クレーン運転実技教習及び移動式クレーン運転実技教習規程の一部を改正する件について(報告)
(4)第14次労働災害防止計画について
 

議事

議事内容

○城内分科会長 ただいまから、第149回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日は、公益代表委員の原委員、労働者代表委員の勝野委員が欠席しております。なお、勝野委員の代理として、全国建設労働組合総連合労働対策部長の田久様がオンラインで参加されております。
本日は、感染症の防止対策として、対面及びオンラインの併用により開催することとしていますので御承知おきください。カメラ撮影等についてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
まず、事務局からオンラインによるZoomの操作方法等について説明をお願いいたします。
○計画課長 事務局でございます。オンライン、Zoomの操作方法等について御説明をさせていただきます。本日はハウリングを防止するため、御発言されないときにはマイクをオフに設定していただきますようよろしくお願いいたします。また、オンライン参加の委員の先生方におかれましては、御発言される場合には御発言がある旨をチャットに書き込んでいただき、分科会長から指名がありましたら、マイクをオンに設定していただいた上、氏名をおっしゃってから御発言をお願いいたします。このほか、進行中に通信トラブル等の不具合がありましたら、チャットに書き込み又は事務局へメールにて御連絡をお願いいたします。以上です。
○城内分科会長 それでは議事に入ります。議題(1)「労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」及び議題(2)「労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規程の一部を改正する告示について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○調査官 それでは、議題(1)及び議題(2)、資料でいいますと資料1と資料2について、コンサルタント関係ということで説明させていただきます。資料1-2をお手元に御用意いただければと思います。資料1-2の2ページです。労働安全衛生コンサルタント規則においては、労働安全衛生コンサルタント試験を受験をするときの試験の御案内、それから試験の合格発表については、この規則に基づいて官報で公示することとされております。今、試験実施から合格発表まで大体40日ぐらい掛かっています。一方で、政府全体として、国家試験に関しては、受けていただいてから合格発表までをなるべく30日以内にしましょうというような全体の方針があり、この事務について我々も見直しをしたところです。
この合格発表までの手続なのですが、合否判定については1、2週間、それから官報への掲載の手続、原稿作成等の審査も含めて2、3週間というような形になっており、今回は後半の官報の掲載の手続のところを圧縮したいということでして、30日以内の合格発表としたいと考えています。
具体的には2の(1)と(2)に書いてありますように、今、官報に掲載している部分をインターネット等、厚生労働省それから試験協会のホームページに掲載するという形で省令を改正し、御受験いただいた皆様、あるいはこれから受験しようとしている皆様に、情報をなるべく早くお届けするような形での改正をしたいと考えています。こちらについては、来年の試験からということで、令和5年の4月から施行という形で進めさせていただければと思います。
資料2も併せて説明させていただきます。資料2をお手元に御用意ください。資料2の2ページ目です。こちらですが、同じコンサルタント関係なのですけれども、職業能力開発促進法の施行規則の一部改正が行われており、技能検定の検定職種について一部、来年の4月から変更されることとなっております。コンサルタント試験の受験資格について、一部検定職種を引用しているものがありますので、今回の職業能力開発促進法の施行規則の改正に合わせて告示の見直しをするというような内容になります。
具体的には2の(1)ですけれども、「放電加工」という検定職種が、今度の4月から「非接触除去加工」という名前に変わりますので、告示をそのように改正するということです。それから、「電気機器組立て」という検定職種については既に告示規定されているのですが、その一部の「シーケンス制御」というのが独立した形で検定職種になるということで、この「シーケンス制御」についても「電気機器組立て」と同様のカリキュラムとなりますので、今回のコンサルタント受験資格に加えたいと考えています。
(3)の経過措置ですが、「放電加工」という名前が今回なくなりますけれども、過去に受けられた方については、当然コンサルタント試験の受験資格保有ということになりますので、そういった取扱いができるような措置も設けることとしております。こちらは職業能力開発促進法の施行規則の改正に合わせて、来年の4月から施行したいと考えております。それでは、資料1の御審議をよろしくお願いします。
○城内分科会長 本件について、質問、意見等のある方は、御発言がある旨をチャットに書き込みをお願いします。御意見等ございませんでしょうか。それでは、「労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則の一部を改正する省令案要綱」については、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○城内分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局で答申の手続をお願いします。
また、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規程の一部を改正する告示について、質問、意見等のある方は、御発言がある旨をチャットに書き込みをお願いいたします。こちらもよろしいでしょうか。それでは、事務局から説明いただいた方針で進めていただくこととしたいと思います。
次に、議題(3)「揚貨装置運転実技教習、クレーン運転実技教習及び移動式クレーン運転実技教習規程の一部を改正する件について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○安全課長 安全課長の釜石です。私からは、議題の3番目の揚貨装置運転技能教習、クレーン実技教習及び移動式クレーン運転実技教習規程の一部を改正する件について報告いたします。
資料3を御覧ください。クレーンの運転その他の業務に従事するためには、労働安全衛生法第61条第1項の規定により免許の取得等が必要となっております。その免許を取得するためには、労働安全衛生法第75条第1項に規定される免許試験を受験する必要があります。ただ、同条第3項には、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う教習を修了した者で、その修了した日から1年を経過しない者等については、免許試験の一部又は全部を免除することができると規定されています。
揚貨装置、クレーン及び移動式クレーンの運転の実技教習の実施について必要な事項は厚生労働大臣が定めることとされており、1.の現行制度にありますように、厚生労働省告示第99号により、教習科目、教習時間が定められています。実技教習の科目は3つでして、基本運転4時間、応用運転4時間、合図の基本作業1時間の合計9時間ですが、基本運転は1日30分以上60分以下のものを1回行うこととなっておりますので、4日かかるということになっております。応用運転は1日30分以上60分以下のものを1回又は2回行うこととなっているので、最短で2日で終えることができるということです。
2.課題となっていた点です。基本運転が4日、応用運転が2日で合わせて少なくても6日程度の教習期間を要していて、教習に受けに来る方の負担になっていたということです。
3.課題の検証の結果です。近年は、揚貨装置等も操作性が向上しているということで、基本運転は1日1回に限定する必要は低く、1日2回までに上限を引き上げても問題ないと考えられます。また、技能習得の程度というのは修了試験により担保されます。その下に参考として、機械の運転操作の向上についての状況を記載しております。詳細は省略いたします。
次のページ、4.に告示の改正案を記載しております。基本運転の実施回数を、応用運転と同様に、1日1回又は2回行うこととするということ、その他所要の改正を行うこととしております。公布は令和4年9月末の予定でして、施行は来年の4月1日ということです。以上でございます。よろしくお願いいたします。
○城内分科会長 本件について、質問、意見等のある方は、御発言がある旨をチャットに書き込みをお願いいたします。会場の委員の皆様は挙手をお願いいたします。御発言等ございませんでしょうか。ありがとうございます。それでは、事務局から説明いただいた方針で進めていただくこととしたいと思います。
次に、議題(4)「第14次労働災害防止計画について」に関して、事務局から説明をお願いします。
○調査官 資料4をお手元に御用意ください。前回、8月に第13次労働災害防止計画の実施状況等を報告いたしました。第13次労働災害防止計画については今年度で終了するということで、次期、第14次労働災害防止計画については、前回御報告した内容等を踏まえて、今後、年末にかけて複数回、この分科会で御議論いただきたいと考えているところです。今回、そのキックオフとして資料4を用意いたしました。できれば今日は、この計画の中に何を盛り込むかという骨子、大枠を御議論していただければと考えております。
3ページを御覧ください。8月の分科会でも御報告した内容とかぶるところもありますが、現状ということで整理しております。1つは労働者の行動に伴い発生する災害ということで、労働災害全体を見ますと、転倒災害と動作の反動、無理な動作(腰痛等)で4割ぐらいを占めている状況で、ボリュームとしてはこちらをまず計画のターゲットとして取り扱う必要があるのではないかという状況です。その背景として我々が大きいと考えているのは、高年齢労働者の方が職場で増えているということ、それから前回の報告でも一部御紹介いたしましたが、中小企業等の安全衛生の取組が遅れている事業者で、実際に災害が多く発生しているという背景があるのではないかということです。
2つ目のマルですが、多様な働き方、外国人労働者の増加ということです。個人事業者の安全衛生の在り方については、正に今に御議論いただいていますが、その他、コロナ禍でのテレワーク等いろいろな働き方、多様化が進んでいるところです。加えて、外国人労働者の方についても、ここ1、2年はコロナの影響等もあり横ばいなのですが、5年等のスパンで見れば増加傾向にあり、災害も増加傾向にあるような状況です。
それから、業種別の災害対策についてです。死亡災害については前回御報告をしたとおり、第13次防期間中、建設業、製造業、林業それぞれ減少傾向ではありますが、それぞれの内訳を見ますと、建設業であれば「墜落・転落」、製造業であれば機械への「挟まれ・巻き込まれ」、林業であれば伐木作業等の「激突され」といったように、業種特有の災害が引き続き起こっています。同じように、陸上貨物運送業でも、先ほどの転倒、腰痛だけではなくて、荷台からの墜落等の事故も業界特有として起こっているということで、そういった業界特有の災害対策は、引き続き行う必要があるのではないかと考えているところです。
4ページ、健康関係の状況です。定期健康診断の有所見率については、後ほど資料も出てきますが、増加傾向にあります。引き続き、産業保健サービスを受ける労働者の方が必要ではないかと考えています。13次防の中では、治療と仕事の両立支援を打ち出しまして、4割の事業場で取り組んでいただいているところです。一方で、個々の労働者の方を見ますと、病気を抱えて仕事を辞めるタイミングというものが治療をするタイミングといったような統計もあり、引き続き病気を抱えて治療をしながら働く方のフォローが大事ではないかと考えております。
メンタルヘルス対策については前回も御報告しましたとおり、13次防の中で目標達成は難しい状況ですが、内訳を見ますと、中小企業でメンタルヘルス対策は重要だという御理解も含めて、対策が遅れているような状況があるのではないかというところです。長時間労働については、13次防の期間で働き方改革が一定程度進んではいるものの、労災認定ということですと、まだ170件ぐらいの認定があるという状況です。
化学物質、石綿対策等については、13次防期間中、順次規制強化等をさせていただいたところで、正に今、施行の時期が順次来ているところです。こちらについては、しっかり現場に定着するような取組が必要ではないかと捉えているところです。
5ページは参考資料として御用意いたしました。今後の議論の中で頭の隅に置きながら御参照いただければと思います。8月の分科会でも、新しい資本主義のグランドデザインということで御報告いたしましたが、人的資本という考え方を政府全体で打ち出しているところでして、いわゆる働く方を、人件費、費用としてみなすのではなく、資本としてみなして、そこに投資をすることで、結果としての生産性向上や会社全体の利益、社会全体の利益につなげていこうという考え方です。この人的資本可視化指針というのが、会社として人的資本にきちんと投資しているということを、対外的に株主などに説明するときのガイドラインというか、可視化のやり方を示したものということで、内閣官房から8月に出されているものです。こちらの資料が、人的資本の中で安全衛生に関してどういった投資を会社としてやるのかということを開示するに当たって、ISOや国際的な民間認証が求めている、あるいは推奨している項目ということで表にお示ししております。災害件数や死亡率、労災による損失の時間やお金、それから安全衛生の取組ということで、研修やマネジメント管理体制といったものを開示することが推奨されている指標になります。これはあくまで1つの会社として推奨するというものではありますが、これから議論する国として安全衛生に取り組むということで、指標を考えるときに少し参考にしていただければということで御用意いたしました。
7ページを御覧ください。今回は大きく3つのことを議論いただきたいと考えております。まず、第14次労働災害防止計画において、何を柱として、重点として取り組む必要があるのかということを整理したいと考えております。
①は、また後ほどお話しいたしますが、中小企業を中心に安全衛生についてなかなか御理解いただけない事業者の取組が遅れているということで、そういったところをしっかりやっていただくようなアプローチをしていかないと、なかなか安全衛生は進まないのではないかと我々は考えており、メッセージも含めて、そういった中小企業も含めた安全衛生への意識啓発を打ち出してはどうかと考えております。
②~⑪については、先ほど現状についてお話ししたそれぞれの課題に対して、個別具体的に対応するということで、重点として、柱として立ててはどうかということです。
②は作業行動に起因する労働災害、転倒、腰痛などの災害防止。③は高年齢労働者の方に対する安全上の配慮といった安全性対策。④は正に御議論いただいている個人事業者等に対する安全衛生対策。⑤は多様な働き方への対応や外国人労働者の災害防止対策。⑥は産業保健活動の推進ということで、両立支援も含めた保健サービスといったこと。⑦は健康障害防止対策ということで、メンタルヘルス、過重労働対策、それから先ほどお話ししなかったのですが、第13次防で目標達成ができなかった熱中症といったことへの対策。⑧、⑨は先ほどお話しした業種別の固有の災害の対策。⑩、⑪は化学物質、石綿の規制強化等を踏まえた対策の推進。事務局としてはこうしたものを提案したいと考えておりますが、過不足がないか御議論いただければと思っています。
7ページの後半からは、2つ目に御議論いただきたいこと、指標の立て方の考え方についてです。13次防までは労働災害を減らすという大目標の中で、労働災害件数を1つの指標として、それに対して行政がこんな取組をするという計画の立て方になっていたところです。一方で、分科会でも何度か御指摘いただきましたが、災害分析がなかなか進んでいないということでして、今の指標の立て方ですと、災害分析が深くできないことを我々としても考えているところもございまして、アウトカム、アウトプットという考え方で、もう1回整理したいと考えています。
8ページを御覧ください。まず、災害を減らすという大目標に対して、では事業場でどんな取組をやっていただくことが災害防止につながるのかということを整理して、すなわち、労働者に御協力いただいて、事業者で取り組んでいただく中身について整理し、それに対して、行政の支援というものを計画の中に盛り込んでいくという構成としてはどうか。その上で、アウトプット指標と書いていますが、計画の進捗状況としては労使の方に取り組んでいただきたいことを1つの指標としてウォッチさせていただき、計画期間中はこのアウトプット指標について行政の支援が有効であったのかということ、災害防止に取り組んでいただいた結果として実際に災害減少に寄与したのかということを分析し、アウトカムとして最終的な災害減少につなげていくといったような、これまでの大きな指標よりも少しブレークダウンした指標の立て方にして、計画期間中のPDCAにつなげていくような考え方を進めさせていただければという御提案をしております。
アウトカムについては、これまでは死亡災害を、サブ目標として業種別の死傷者数や千人率を立てておりましたが、そちらについても御議論いただければと考えておりまして、このアウトプット指標、アウトカム指標の考え方について、2つ目に御議論いただければと考えております。
9、10ページは、アウトカム指標として使われるようなものの現状の数字ということです。
次に、少し各論に入ってしまいますが、11ページ以降の論点①について、今回お知恵をお借りしたいと考えております。先ほどお話しいたしましたように、中小企業の安全衛生対策が遅れている部分について、いかにやっていただくかといった工夫をしていかないと、なかなか国全体として災害防止が進まないなと考えております。今、お話ししたとおり、中小企業には頑張っていただきたいと考えております。
一方で、経済状況等、いろいろな事情の中で、現実的には安全衛生へ取り組むという優先順位が低くなっている現状が実際はあるのではないかと考えております。そういった方に対して、これまでのような法令の内容を説明してやってくださいと言っただけではなかなか進まない部分もあるのではないかと考えており、安全衛生に取り組む意義、結果として、実利としてこんなメリットがあるといったこと、あるいは人材確保の面でプラスになるといった、やる意義みたいなものも説明していかないと、なかなか御理解いただけないのではないかと考えております。
併せて、そういった安全衛生に取り組む会社が社会的に評価されていくということ、先ほど人的投資という考え方がありましたが、そういった環境整備もやっていく必要があるのではないかと考えております。そういったことで、行政で4つぐらいのアイデアを御提案したいと思っておりますが、これ以外にもいろいろとアイデアがあろうかと思います。現場をよく御存じの労使の方に、いろいろお知恵をお借りしたいと考えております。
1つは想定される取組ということで12ページの下に書いてありますが、健康経営やSDGsなどと連携してということで、安全衛生に取り組んでいる企業が社会的に評価されて、資金調達や人材確保がやりやすいような環境整備ということ。それから、個々の事業者へのアプローチとして、安全衛生に取り組むことが将来的には生産性向上といったことへのプラスになる、やらないこと自体が将来的なデメリットにつながるといった説明、それから我々自身も安全衛生の取組を説明するに当たって、定性的な説明だけではなくて、こういったことをすると具体的にこれぐらい災害が減るのだという定量的なエビデンスに基づくような安全衛生の対策の説明もできれば御納得いただきやすいのではないかということ。それから、国全体としてDX、デジタルトランスフォーメーションを進めているところでして、その中でも安全衛生に資するもの、あるいは従来の安全衛生の分野でデジタル技術全般も含めて導入できるものがあろうかと思いますが、そういったものを我々のほうで紹介する中で、DX全体を進める中で安全衛生対策もやっていただくこともあるのではないかと考えております。
13ページは、今お話しした健康経営についてです。健康経営については5、6年前から進められており、御存じの方もいらっしゃると思います。先ほどの人的投資と考え方は似ており、働く方が健康で働いていただくことで、結果としての生産性向上等につなげるといったようなものです。13ページの下に表を付けております。健康経営に取り組む会社が取引先を選ぶに当たって確認しているということで、同じように健康経営であったり、労働者の健康に配慮した取組をやっているかということも気にしているというアンケートもありまして、そういった取引にも有利になるようなデータもあるところです。
14ページはSDGsについてです。今は学生など若い方を中心に関心があり、こういった持続可能な取組をやっている、要は将来に向かって持続可能であることが期待される会社に就職しようということで、関心を持たれている部分もありますが、職場の化学物質対策や労働者の安全や健康の配慮もSDGsの1つの柱となっており、逆に言うと安全衛生に取り組むこと自体がSDGsの取組をしているというPRもできるという紹介ができるのではないかと考えております。
15ページは、逆に安全衛生に取り組まないことのデメリットということで、参考資料として付けております。令和3年の死傷病報告から休業見込み日数を単純に全部足し上げると、大体1,200万日ぐらいの休業見込みということで、年間で5万人ぐらいの労働が失われたことに相当します。国民の労働生産性から単純に換算すると、5,000億円ぐらいの損失ということになります。ただこれは、あくまで働かないことによる直接の損失であって、実際に災害が起きると訴訟等、間接的にはいろいろと経費なり支出が発生するということです。
16ページは少し古いのですが、過去に研究された研究報告書からの抜粋ですが、建設業の災害1件当たりどれぐらい訴訟等の間接経費も含めた上での損失が発生するかというシミュレーションの結果です。1件当たり数千万から1億程度の損失が発生するといったものです。
17ページ、今お話ししたように、いろいろ材料等を提供いたしましたが、こういった安全衛生に取り組む意義、あるいは取り組まないことによるデメリット、こうしたことも合わせながら、中小企業に安全衛生に取り組む意義を説明していくことで、意識改革も進めていくとともに、そういった会社が有利になるような環境整備を、我々だけではなく、災害防止団体や個々の事業場にアクセスするコンサルタントも同じような考えでそうした説明を加えていくのが、1つのやり方としてはあるのではないかということで御提案しております。
18ページ、我々の取組として、安全衛生対策について、よりエビデンスを高めていくということです。我々の安全衛生の分析は死傷病報告をベースに実施しております。その中で、2つほどネックになっていると考えているのは、労働災害の発生状況等が任意の記載でして、必ずしも災害分析に有用な情報が全て書いてあるわけではありませんので、その辺りを事業者に御協力いただいて少し詳しく書いていただくような工夫であったり、それから死傷病報告そのものは電子申請ができるのですが、ほとんど紙で報告されていることが多く、電子申請を進めてビックデータとしての分析ができるような形での整備も必要ではないかと考えています。加えて、頂いたデータについてはしっかり分析しなければいけませんので、そういった分析体制も研究所に整備するといった形での災害分析の強化をして、それを事業場の皆様にエビデンスとともに還元し、少しでも災害防止の取組の一助にしていただければと考えております。
19ページはデジタル技術についてです。民間では、既にAIやウェアラブル端末を使って、安全衛生対策やコラボヘルスといった取組なども一部進んでいるところですが、DX全体を進める中で、こういった取組について、我々も、実際に効果があるのかといったような検証や取組事例なども紹介して、中小企業を含めてDX全体で進める中で、安全衛生についてもそういったDXのアプローチも入れながら進めていただければと考えているところです。
論点①ということでいろいろお話しいたしましたが、こちらについてはアイデアを頂きたいと考えておりますので、中小企業に取り組んでいただくには、どういったアプローチがいいのかということについて御議論いただければと思います。
残りの論点②以降について簡単に説明いたします。こちらについては、今日の御議論も踏まえて、計画の本文案を事務局で用意して、次回改めて御議論いただきたいと考えております。論点②については23ページを御覧ください。先ほどお話ししたとおり、労働者の作業行動に伴う災害の防止ということで、こちらについては後ほどまた参照いただければと思いますが、今進めております転倒防止のための検討会の内容について労使に取り組んでいただき、それについて行政でいろいろな支援をさせていただくということをこの計画の中で書かせていただければという提案をしております。
論点③は、26ページ、高年齢労働者の災害防止対策です。こちらも転倒、腰痛防止に加えて、高齢労働者の方が働きやすい環境整備であったり、若い方も含めて長く働けるような健康づくりについて進める必要があるのかなと考えているところです。
27ページ、論点④ということで、個人事業者等に関する安全衛生についてです。こちらについては、すみませんが会議の紹介だけになってしまいます。今、正に検討会で別途御議論いただいている内容がありまして、そちらについてまだ結論は出ておりませんが、計画の中でその内容について反映できればということで、論点④として書いております。
28、29ページに、実際の災害状況の資料を付けております。28ページですが、非正規労働者の方の雇用割合は横ばいではありますが、外国人労働者の方の雇用の数は、ここ5年のスパンで見ると増加傾向にあり、災害については、コロナの影響等もありますが、全体としては増加傾向にあるのではないかと考えております。30ページですが、そういった現状の中で、外国人労働者の安全衛生対策を進める必要があるのではないかと考えております。事業場の皆様におかれましては、安全衛生教育をその方が理解できる言葉で行っていただき、我々もそういった言語によらない方法、ピクトグラムといった安全衛生表記みたいなものでの注意喚起も少し国として支援させていただければと考えています。兼業、副業、テレワークについては、13次防期間の中でいろいろと御議論があり、今はガイドラインが大分整備されておりますので、そういったものを活用いただくようなことを進めていければと考えております。
32ページを御覧ください。先ほど両立支援のお話もいたしました。こちらについては先ほどお話ししたような事情がありますので、引き続き実施が必要ではないかということです。それから、産業保健サービスは個々の事業場で工夫して取り組んでいただいておりますが、中小企業や地方の産業保健サービスの確保も含めて難しいような所、あるいは今実施していただいている体制が法制度との比較で適当なのかといったことも含めて、産業保健の在り方についても検討を進める必要があるのではないかと考えております。そういったことも併せて14次防の中で検討、それから検討に含まれた取組も進めさせていただければということで、御提案をしております。
34ページは、先ほどもお話ししたとおり、中小企業で特にメンタルヘルス対策が遅れているということで、引き続き行政の支援はさせていただくのですが、論点①の議論であったように、取り組む意義も含めての御理解の上で進めていく工夫もしていく必要があるのではないかと考えております。
35ページ、長時間労働対策です。こちらについては、働き方改革を皆さんに進めていただいているところですので、引き続きそういった取組に合わせて、残念ながら長時間労働をしてしまった方についての健康確保のためのフォローもしっかりやっていただくような取組も進めていければと考えております。
37ページは熱中症対策です。こちらは季節等の影響もあるものですが、基本的なWBGT値を把握いただく等の取組を引き続き実施いただければと思います。また、論点①と絡みますが、行政ではデジタル技術を活用した先進的な事例なども紹介しながら、より取り組みやすいような熱中症対策を進めさせていただければと思います。それから、第13次防と違って騒音について記載させていただいています。騒音ガイドラインの見直しを今進めているところで、新しい騒音対策の定着に向けた支援等も引き続きさせていただければと考えております。
40ページ、陸上貨物運送業ということで、13次防期間中でも増加傾向にあったところです。先ほどお話しした転倒、腰痛防止だけではなくて、荷役作業における墜落・転落もこちらの産業では課題になっております。これについて、8月に陸災防で安全衛生対策を御検討いただき、いろいろと提言を頂きました。5tトラックで保護帽、台、昇降設備を用意いただきますが、2tまで下げたほうがいいのではないか等の提案を頂きました。そういった御提案も参考にしながら、災害防止対策を強化して、現場の取組を促していければと考えております。
42ページです。先ほどお話ししたように建設業、林業、製造業について、死亡災害は減少傾向にありますが、業界特有の災害は引き続き生じているような状況ですので、例えば建設業であれば、今検討している墜落・転落の災害防止の取組について14次防の中で反映させていただくということ、林業については、林野庁と協力しながら引き続き取組を進めていくということです。また、先ほどの論点①に掲げているような中小企業対策ということで、やる意義も含めた支援、あるいは安全衛生を頑張っている会社が取引が有利になるようなこと、そうした取組も進めさせていただけたらと思います。製造業に関しても、論点①で掲げたDXなどの取組も含めて、よりメーカーで安全な機械を作っていただくといった支援もさせていただければと考えております。
45ページは、化学物質規制に関してです。こちらは今年の3月に議論いただき、正に令和5年、6年に施行時期を迎えるところですので、新しい化学物質規制の定着に向けた取組を事業場でやっていただいて、我々のほうでしっかり支援させていただければと考えています。
47ページの石綿、粉じん対策についても、13次防期間中に規制強化等をさせていただいているところです。今、正に施行時期を迎えておりまして、14次防期間中にしっかり現場で定着させていただくということで、施行業者だけではなく、仕事を発注する方にもそういったことを御理解いただくような取組を進めていければと考えております。
後半は簡単に説明いたしましたが、冒頭お話しいたしました重点の立て方について過不足がないのか、指標の考え方について、それから論点①の中小企業にいかに安全衛生をやっていただくか、こうしたことについて、特に今回御議論いただければと思いますので、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○城内分科会長 御説明ありがとうございました。本件については、事務局からの説明の中にもありましたが、円滑に御議論いただくために、本日は特に、柱の立て方、それから目標、指標の立て方、それから論点①の「企業・労働者が自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発」について重点的に御議論いただければと考えていますのでよろしくお願いいたします。もちろん、論点②以降についても、御意見等がございましたら、御発言いただいても構いませんのでよろしくお願いいたします。質問、御意見等のある方は、御発言がある旨をチャットに書き込み又は挙手にてお願いいたします。鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。まず、総論的な内容からお話をさせていただきます。2021年は新型コロナウイルス感染症の罹患による労働災害を除いても約13万人の方が休業4日以上の死傷災害に遭遇され、かつ、近年は死傷者数が増加傾向にあり、私自身強い危機感を抱いております。この14次防がこうした状況を抜本的に改善するための打開策となることを大いに期待をしているところです。
各論として、アウトプット指標について、2点、御提案をさせていただきます。事務局より御提示いただいている指標案は、死傷災害の防止に焦点が当たっている印象を受けているところですが、死亡災害の防止にも引き続き注力が必要ではないかと思っております。具体的には、建設業、製造業、陸上荷物運送事業を中心に多く見られる「墜落・転落」災害の一層の防止に向けて、対策に取り組む事業所の割合をアウトプット指標に加えるということも一案ではないかと考えております。
また、「令和3年度 過労死等の労災補償状況」によりますと、精神障害の発病に関与したと考えられる出来事として、「パワーハラスメント」がトップにきています。こうしたなか、事業主に義務付けられている、いわゆるパワハラ防止措置、パワーハラスメント防止のために雇用管理上講ずべき措置の履行状況が必ずしも十分でないというデータもあります。御案内のとおり、今年4月からは中小企業におけるパワハラ防止措置の義務化も施行されたことから、事業主が必ず講じなければならない10個の具体的な措置の実施状況をアウトプット指標に位置付けることが有効と考えますので、是非御検討いただきたいと思っております。
続けての発言となり恐縮ですが、指標の中身についても申し上げます。5番目のマルに「治療と仕事の両立支援」という記載があります。私自身、疾病を抱えた労働者が仕事を続けられるようにすることは大変重要な課題であり、別途政策的な打ち手と企業の努力、取組が必要だと理解しているところですが、13次防の策定に際しても議論がありましたように、そのことと労働災害を防止することとの関係性は弱い印象を受けております。労働災害防止計画の中に本項目が出てくることには違和感があるということは申し添えたいと思います。
最後に、アウトプット指標とアウトカム(達成目標)との関係です。8ページ目の水色の吹き出しの後半にある「各指標について評価を行い、国の支援の効果、災害減少の寄与度等を検証」という点は、新しい試みであり、高く評価するところです。ただし、アウトカムのブレークダウンも必要ではないかと思っています。例えば、アウトプット指標案の一つである、「転倒災害対策に取り組む事業所の割合」が、様々な国の支援を含めて高まったことで、アウトカムとして休業4日以上の死傷者数における転倒事故数が減少するといったことの検証が重要ではないかと考えています。それぞれのアウトプット指標が、ブレークダウンしたアウトカムとどのように結び付くのか、このことについて整理した資料を次回事務局で御用意いただけると有り難いです。私からは以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて御質問、御意見等受けたいと思います。中村委員、お願いします。
○中村(節)委員 中村節雄です。ありがとうございます。論点①についての意見を申し上げます。それから、最後に1点質問がございます。
資料12ページに記載のとおり、安全衛生対策が遅れている第三次産業や中小規模の事業者に対して、「安全衛生対策に取り組むことが事業者にとって経営面や人材確保の観点からもプラスになることを説明するなど、安全衛生対策の実施を促す取組が不可欠」とする考え方に賛成いたします。
中小企業の人手不足は深刻化しており、日商・東商が行った調査では6割以上の企業が人手不足であると回答しました。コロナ禍で強い影響を受けた宿泊・飲食業についても、7割以上の企業が人手不足と回答しています。加えて、物価高などから賃上げ圧力も高まり、人材の獲得競争は激しさを増しています。
こうした状況から、安全衛生対策にしっかり取り組んでいる企業であることをアピールすることは、求職者に対する強い訴求力が働くものと思っています。
また、人材の定着という視点においても、安全衛生対策の取組が有効であることは企業にとっても理解しやすいことと思います。例えば、健康経営や一定の安全衛生対策を講じている企業を、政府として求職者に対して広く周知し人材の確保につながる実効性の高い支援策を講じるなど、人材の確保・定着という視点を安全衛生対策の経営的なメリットとして働き掛けていくことが有効と考えています。
要望を1点申し上げます。中小事業者は人手不足の中、働き方改革や家庭と仕事の両立支援などの対応に追われているのが現状ですので、更に強制力をもって安全衛生対策を講じさせることは、その重要性を受け止められず、有効に機能しないことも懸念されます。もちろん、重大な事故の防止措置を徹底させることは必要ですが、安全衛生対策に関する十分な情報提供や、経営上のメリット・デメリットを丁寧に伝えることから取り組んでいただきたいと思います。
最後に1点質問ですが、13ページ中段にある健康経営の認定実績について、大企業と中小企業の数字が2,200と1万2,000と載っているのですが、これは何パーセントぐらいの比率で、分母がどのぐらいなのか、比率が出ているのかを教えていただきたいと思います。以上が質問です。○城内分科会長 ありがとうございました。佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 ありがとうございます。労働側の佐藤です。私からも、計画の論点①の労働者の協力を得て企業が自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発に関連して申し上げたいと思います。個々の企業において、従来の労働安全衛生対策を後退させることなく、新たに健康経営やSDGsと連携することは否定いたしませんし、地域の産業保健資源も活用したコラボヘルスを通じて、労働者の健康を保つ取組を進める意義があると思っています。
しかしながら、それを14次防に書いて、達成を目指す目標とする場合には、単に健康経営に取り組んでいるか否かの比率などでよいのかというのが率直なところです。健康経営による成果を数値化することは難しいのではないかと思うところでありますが、労働災害防止計画に記載する以上、納得性の高い目標を設定していくことが必要ではないかというのが労働側の意見です。
さらに、内容としまして経営的なメリットが諸々記載されています。安全健康が維持できる職場環境は労使にとって有益であるはずですけれども、ここで経営的メリットにフォーカスしてあえて記載された理由について、事務局の見解があれば、議論のスタートのこのタイミングで伺っておきたいと思っています。そもそも労働災害を防ぐための安全衛生対策は、規模にかかわらず全ての事業場で取り組むべきものであり、軸となるのは労使が協力して安全衛生対策を行うことだと思っています。この点は14次防においてしっかり示していく必要があると考えていますし、健康経営も含めて追加的な取組が難しい中小事業場については、政府としてどのような対策を想定し、中小事業場の労災の発生率を低減するのか、今後議論していく必要があると考えています。私からは以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、門﨑委員お願いします。
○門﨑委員 ありがとうございます。労働側の門﨑でございます。私からは、同じく計画の柱、7ページの②について関連して述べさせていただきます。作業行動に起因する労働災害の防止について、取り分け第三次産業における労災については、これまでも重点事項として取り組んできたわけですが、今後も単にその延長線上の取組で十分なのか、今までの課題を踏まえてどのような追加的な取組を考えているのか、現時点で何かあればお伺いしたいと思います。
また、意見になりますが、他産業同様に、第三次産業においても労働力の高齢化、人手不足が更に深刻化しているところです。このような中、第14次防においては、参考資料1「転倒防止・腰痛予防対策のあり方に関する検討会中間整理(概要)」の中の取り組むべき方策に「転倒等災害防止に資する機器等の普及のための補助・開発促進」とありますように、災害防止に資する機器等の普及なども目標として設定し、関係省庁と連携を強化した上で更なる導入の促進を求めたらいかがかと考えます。私からは以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、山口委員お願いします。
○山口委員 公益の山口です。論点①の自主的な取組を促すという考え方は賛成であります。自主的な取組を促していくということになりますと、何をどのように取り組んだらいいかということについて、より具体的な方策をきちんと提示するということが求められると思います。
例えば転倒防止などを例に取りますと、現場では転倒が起きても、いったいそれをどうやって防止したらいいかというのが分からないというような声が非常によく聞かれるわけでして、そこについて対策をきちんと、国として厚生労働省として進めていくことが求められるのだと思います。そのときに、先ほどの御説明の中で、エビデンスに基づいてやるという大変力強いお言葉がありました。エビデンスに基づいてやるということが、今はもう世界中のスタンダードになっていますので、是非エビデンスに基づいて何をやるべきかということを、どのぐらいの効果が期待できるかということを数値的に見積もり、しかもどのぐらいの確実性をもって効果を挙げることができるのかということを、エビデンスに基づいて評価をして、その確実性をきちんと担保した対策を世の中に出していくということが、今まで以上に求められるのだと思います。
そのためには、大変だと思いますけれども、世界中で積み上がってきているエビデンスをきちんと評価するということを、国としてやっていただく必要があるのだろうと思いますので、そこについて検討会等で作業が進められていると聞いておりますが、是非エビデンスベース等の取組を今まで以上に進めていっていただきたいと思います。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続きまして、出口委員お願いします。
○出口委員 出口です。よろしくお願いします。第14次防の御説明ありがとうございました。私からは論点①関係、企業・労働者が自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発で、「中小事業者では労働災害防止のための対策やメンタルヘルスの取組に係る実施の必要性の認識は必ずしも高くない」と部分に違和感を感じました。
中小事業者においても、安全衛生対策の取組の重要性を認識している企業は少なからずあるのではないでしょうか。ただ、優先順位を高く持ってこれない、例えば経営状態であるとか要因があるのではないでしょうか。単なる意識が低い、認識が低いというのであれば、強制力、指導方法も変わると思います。もし重要性を認識しているにもかかわらず、優先順位を高く持ってこられないのであれば、例えば国の支援や、我々が第14次防に盛り込む内容・方針も変ってくるのではないでしょうか。そして、経営面や人材確保のプラスとなることの説明、若しくは企業が社会的に評価される環境の整備、これについて実質的なメリットをより明確に打ち出すような検討が必要であると考えます。
18ページの論点①の「更なる対策強化のため、災害情報の分析機能の強化及び分析結果の効果的な周知、企業・労働者の意識啓発や取組促進のための国の活動」の2.課題の分析の中に、「労働災害統計の元となる労働者死傷病報告において」という記載があります。現在、死傷病報告に基づいて死傷者数、死亡者数が統計されています。ただ、個人事業者等の安全対策の検討会でも、検討するための分析データが不足しており、今後はデジタル化で便利になり、負担が軽減されると、良いことなのですが、労働者死傷病報告は、様式24号と23号があり、特に23号の死亡又は休業4日以上場合は、単に受け付けるだけではなく、再発防止対策の取組を提出、発生状況や原因などの情報を得るということ、また個人事業者、中小事業者に対しても、労働者死傷病報告と同様な、報告の提出を義務付けることによって、本当の災害分析が深堀りできるようにしていただきたいです。
そして、論点①とは異なるのですが、1点発言させてください。論点⑩の化学物質等による健康障害防止対策の促進についてですが、課題の分析で、「個別規制対象外の危険性又は有害性を有する化学物質に対する自律的管理の定着が必要」というのが、この第14次防には何箇所かうたわれています。ただし、建設業や第三次産業には、商品として販売されているものに多く化学物質が含まれています。この物品を取り扱う業種に自律的管理というのは非常に難しいのではないかと考えています。やはり、製造者側にも一定の責任を設け、危険性・有害性を取扱説明書等に分かりやすく記載させるなど制度や施策が必要ではないでしょうか。要望です。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続いて、水島委員お願いします。
○水島委員 ありがとうございます。公益委員の水島でございます。私からは、中小企業等の事業者への取組の働きかけについて、意見を述べさせていただきます。
私も、今回の御説明や先ほどの中村委員の御発言に賛同いたします。中小事業者の経営戦略においても、作業環境における整理整頓や、職場やトイレをきれいにすることが、顧客の信頼を得て、応募者の入社につながるといったことが、指摘されています。このような事例は中小事業者の心をつかむように思います。また、御説明にもありましたけれども、最近の若い世代はSDGsに対する関心がとても高いです。高校あるいは大学でSDGs教育が行われることもありますので、近い将来、SDGsに無関心な企業は人材確保の点でかなり遅れを取ると思います。また、最近大学生に聞くと、健康に働くことができる職場というのは、職場選びの重要なポイントになっています。もっとも、先ほど佐藤委員が御質問されましたが、確かに行政が経営的なメリットを前面に、積極的に打ち出すのは、余り望ましくないかもしれません。そうではありますが、実効性を優先して考えることができないかと思いました。
そのような観点から整理いたしますと、スライド12にあるように、安全衛生対策に取り組む企業が社会的に評価される環境の整備、これは行政から積極的に働きかけを行っていただくところかなと思います。経営的メリットや、経営に及ぼす影響という点は、確かに行政が周知なさるには限界があるかもしれません。先ほどの御説明で「コンサルタント」の言葉が出ていたと思いますけれども、他にも、社会保険労務士の先生方や団体に御協力いただくとか、信用金庫等を通じた情報提供もあり得るのではないかと考えました。私からは以上です。
○城内分科会長 ありがとうございます。続きまして、及川委員お願いします。
○及川委員 及川です。ありがとうございます。中小企業は事業者の99.7%を占めていまして、労働者は7割を担っております。すなわち中小企業と言っても多種多様ですので、中小企業に対する政策については、事務局からの説明でもこれだけ業種特有の現象というのが出ていますので、業種特性、業種による固有の問題について、スコープを当てて進めるということも有効だと思います。また、業態、特に中小企業ですと規模別、例えば200人の規模の所でこのぐらいの目標を設定し、次は100人、50人と下ろしていく、それぞれそれだけの従業員の規模がありますと、アプローチの仕方がかなり違うのだと思います。したがいまして、中小企業は多種多様ですので、是非ターゲットを絞って、きめ細かな対策が必要ではないかと考えております。
あと、資料の15ページに関してですが、労働災害による損失ということで、お金に換算するということは、事業者にとって刺さる1つの効果的な方法だと思います。これに加えて、損失だけではなく、例えばデジタル化とか、今、中小企業で喫緊の課題である労働生産性、どうやって付加価値、生産性を高めていくかということの中で、高ければ高くなるほど労働災害が減るという相関関係が見られるということになりますと、今の中小企業政策にのっとってシナジー効果が発揮できるのではないかというように感じております。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。続きまして、熊崎委員お願いします。
○熊崎委員 熊崎です。ありがとうございます。幾つか意見を述べさせていただきます。
既に様々な意見が出ております、経済的に得をするような環境整備をしていく点について、例えば資金調達の観点からは投資家の方々が参考とできるような投資基準が必要であろうと思います。ご説明いただいたアウトプット指標やアウトカム指標を指標とできるような研究、環境整備などが必要と考えます。
そちらとは別に、先ほど出口委員もおっしゃっていましたが、労災を起こすこと自体がよくないことだ、災害防止対策が重要であるという価値観を広く強化していくことは重要だと思いますのでソフト面の取組もご検討ください。
そういう意味では、厚生労働省さんがこういう取組をしているのだというようなことを積極的に発信していくことも、1つの手段ではないかと思っています。先般、厚労省の取り組みについて安全工学シンポジウムでご発表がありましたが、非常にすばらしい活動だと思いましたので、是非そういったことも進めていただければと思っております。
あと、アウトプット指標アウトカム指標という、指標について御説明がございました。こういった形で指標を作っていくというのは、安全水準の見える化に寄与すると思います。化学プロセスの分野では、Leading IndicatorとLagging Indicatorという考え方がございますが、アウトカム指標が過去の実績を表すlagging indicatorに、アウトプット指標が先行指標であるleading indicatorかと理解しました。先行指標の場合、安全活動の取組件数のように数値化できる事象がある一方、例えば整理整頓のような数値化が難しい指標もあります。定性的な指標の設定は容易ではありませんが、定性的な指標が安全上重要である場合も多いです。指標の設定についての研究やその成果をまとめて属人的な評価にならないようなガイドライン・指針の整備も考えていただきたいと思います。
最後に、論点⑩の化学物質管理をはじめとする自律的な管理について述べさせていただきます。自律的に管理を行っていく過程で、各事業所で工夫し多様な事業所、多様な作業ごとに、適した方法で管理を進めていくということが求められていますが、事業所が行っている管理が適切であるかどうか判断する側の力量の継続的な向上についても、是非御検討いただければと考えております。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございます。矢内委員、お願いします。
○矢内委員 矢内です。私からも1点意見を述べさせていただきます。指標でアウトプットとアウトカムを見ていくという考え方は非常にいいなと思っております。ただ、鈴木委員からもありましたが、アウトカムまで結び付けていくときには、様々なエビデンスを基にかなり綿密に指標を組み立てていく必要があると思います。
特に、メンタルヘルスや過重労働といったテーマになってきますと、労務問題、その他複合的な要素が影響してくることもありますので、現状アウトプット項目が、本当にアウトカムに結び付くようなものなのかの検証と、先ほどもありました、少し抽象的な質的な要素も指標に入ってくる可能性があると考えております。そういった意味で、特にメンタルヘルス対策関しては、今後検討を重ねていけたらと考えております。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございます。佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 ありがとうございます。労働者側の佐々木です。私は、論点⑧の陸運業の関係で2つほど要望させていただきます。
陸運業の災害発生率というのは、全産業と比べて約4倍というデータも出ていまして、災害防止対策は非常に大きな課題であるいうのは認識しているところです。御説明にもありましたように、陸災防が検討会を開催されて、その提言が9月の中頃に出されたところです。その中にも書かれていますが、陸運業における労働災害の中身を見ますと、その7割近くがいわゆる荷役作業中に発生しています。荷役作業というのは、そのほとんどと言ってもいいかもしれませんが、多くは荷主であったり配達先で行われているということで、運送事業者の直接的な作業指示がなかなか及ばないような場所で作業が行われています。そういった荷役関連の災害を確実に減少させていこうとすると、荷主の協力は極めて重要であるし、不可欠だということになります。40ページの論点⑧の3にも書いていただいていますとおり、荷主も含めた安全対策の推進が非常に重要だと思っています。例えば、現場では滑りによる転倒事故が非常に多いという実態があるのですが、その荷役作業自体は荷主の事業場等で行われることが多いことから、床面の滑り防止の対策などが必要なわけですが、運送事業者が荷主の事業場の対策までなかなか及ばないということもあって、結果としてリスクが高い環境で作業をせざるを得ないという実態もあると聞いております。
こういった実態は、厚労省においても踏まえていただいた上で、少し前になりますが、平成25年には厚労省で荷役についてのガイドラインを作成していただき、発出いただいています。この中には、運送事業者が行う対策はもちろんですが、荷主が実施すべき安全な作業環境の確保ということが書かれております。示していただいてはいるのですが、残念ながら、このガイドラインの周知が必ずしも十分ではないということが実態です。せっかく作っていただいたガイドラインの一層の周知に努めていただくとともに、あらゆる機会を通じた適切な指導等を是非お願いしたいと思います。
もう一点は、今の陸運業、特にトラック運送の現場においては、ドライバーの要員不足と長時間労働の是正の取組というのが喫緊の課題となっています。正に昨日、労働条件分科会の専門委員会の中で、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の在り方についての取りまとめがなされたところです。2024年4月の時間外労働の上限規制の導入に向けて、労働時間の改善のための一定の基準の見直しが図られることになりました。連合としても、ある程度の評価はするということでの談話も出させていただいています。
この労働時間是正の取組において、長時間労働につながる1つの要因となっているのは、いわゆる荷待ちの問題があります。積み下ろしを待つ時間が非常に長くて、それが結果として長時間労働につながっている実態があります。それによって、作業時間が大きくずれ込んで、あるいは時間が短くなって、作業に焦りが出て、それが災害につながるという要因もあるのではないかと考えているところです。そういった意味では、この長時間労働の是正の取組、それに向けた様々な今の動きというのは、非常に大きな意味があるというように思っております。2024年の時間外労働の上限規制の導入と併せて様々な取組がこれから行われるのですが、是非実効性のあるものとしていただきますように、周知なり指導の徹底をお願いしたいと思っております。以上でございます。ありがとうございました。
○城内分科会長 では、砂金委員お願いいたします。
○砂金委員 砂金です。御説明等ありがとうございました。論点1に関して気付いた点ということになるのですが、今回の取組というのは、どちらかというと組織に対してというものが多いような印象を受けました。ただ、こういった労働、安全を支えるのは、個人の取組に負うところが極めて大きいのではないかと感じています。個人に対してどうするかというところの、国としてのメッセージをどのように伝えるかといった視点を盛り込んでいただくようになると、更にこういった取組の実効性が増しますし、安全に対する意識の向上がもっと進むのではないかと感じました。以上です。よろしくお願いします。
○城内分科会長 チャットでの御発言の希望はここまでだと思います。フロアはいかがでしょうか。中村委員、お願いいたします。
○中村(恭)委員 労働側委員の中村です。私から3点ほど、意見と要望を発言いたします。
まず、資料の7ページに「労働安全衛生対策を巡る企業を取り巻く環境への対応」の④として、「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」とあります。労働災害防止のためには国の支援も当然必要ですが、例えば契約等を行ったときの安全衛生情報の共有等は不可欠だと思っています。建設業界でいうと、労災防止についての法令遵守ガイドラインが定められており、例えば厚労省と国交省で、安全な建設工事のために適切な安全衛生経費の確保が必要といったリーフレットなども出され、周知されています。このような取組を各業界等に広げていくことも必要だと思いますし、14次防の策定についても、まずは下請企業が業務を請け負う際に必要な安全衛生経費をしっかりと確保しているかといったことも、指標の中に設定することも有効ではないかと思っています。
2点目が、先ほども死亡災害が多いということで、建設業、林業、製造業が資料の中にも出ていました。林業でいうと、死亡災害は毎年40件前後で推移しています。今年は昨年よりは減少していますが、いずれにしても、その多くが伐倒作業です。特に伐倒作業で、かかり木の処理に起因して激突され、災害が起きており、しかも一人作業で発見が遅れて、残念ながら亡くなってしまうというようなことも発生しています。そもそも、こういったことが減少していかないと、死亡災害というのは絶対になくならないと私は思っております。どうしても現場レベルでは、楽な方向に目が向いてしまいがちですので、まずはそれはやっては駄目なのだということを、契約上等で縛りを掛ける取り組みまでやらないと、なかなか災害はなくならないのではないかと思っております。そういったことで、14次防の論点の中で議論をしていただきたいのが1つです。
3点目が、指標の取り方というか、それぞれの災害の分析に関してです。災害発生件数でいうと、各業種とも中小がほとんどと言われています。林業でも中小の災害発生件数がほとんどですが、ただ、そもそも林業とか木材製造業は中小企業がほとんどです。先ほども出口委員からもありましたけれども、決して中小が安全衛生対策に関心がないわけではないと思っています。例えば大手の企業が請負契約をし、その下請として個人事業主や、5、6人程度の中小企業がありますが、その個人事業主や中小事業者に対して、元請が安全衛生対策をちゃんとやっているのかどうかきちんと確認していないという実態もあるのだろうと思っています。そういうことで、指標の中でも、単純に中小の件数が多いということだけでは判断できない部分もかなり多いと思っておりますので、是非とも、精緻な指標の取り方を御検討いただければと思っておりますので、よろしくお願いします。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。増田委員、お願いします。
○増田委員 増田です。御説明ありがとうございました。全体的な方向性については賛成です。13次防のときから常々申し上げていた評価、効果検証という観点が入った点はうれしく思っております。ただ、中身については、やはり少し吟味が必要だろうと思っています。
例えば、私は小売業におりまして、転倒災害が多い業種ですが、先ほど中村委員からもありましたように、労災を起こしたくて起こしているわけではなくて、何とかしないといけないと思って現場では取組を続けておりますが、特に転倒災害はなかなか減らないのです。リスクアセスメントとか、労働安全衛生マネジメントシステムで対処しなさいということが、12次防、13次防以降ずっと言われ続けてきているのですが、行動災害に対する効果としては限定的だと感じています。それが、なかなか小売業の現場でそういった施策が浸透しない一因でもあろうかと思っています。効果が出るのでしたら、必ず熱心に取り組むようになるはずだと思っていますので、業種業態にちゃんと適した施策が推進されるかどうかという点の検証を引き続きお願いできればと思っております。
あと、鈴木委員、矢内委員の御意見に追加するような形になりますが、例えば資料の4枚目に「定期健康診断の有所見率は50%を超え、疾病リスクを抱える労働者は増加傾向」とあります。有所見率は確かに年々上がっているのですが、これはイコール疾病リスクとは考えにくい、1つでも要経過観察以上の項目がある人が50%を超えているということだと思います。疾病リスクの評価については、現状の一般的健康診断ではなされていないと思いますので、その辺りの考え方は入れていく必要があるだろうと思っております。
そして、メンタルヘルス対策につきましても、30人未満の事業場における取組が進んでいないということで挙げられていますが、30人未満の事業場の場合は社長、上司、部下の距離が近くて、ストレスチェックをやらなくても心身の不調が見えるもので、どちらかというと4つのケアのほうが私は重要だと思っているのですが、その辺の数字が出てこなくて、ストレスチェックの実施件数のみでメンタルヘルス対策が進んでいないと評価されるということであれば、それは本末転倒だろうと思いますので、こちらも小さい事業場ならではの実情にマッチした項目になっているかどうかという観点で御議論いただく必要があるのではないかと思っております。
そして、先ほど山口委員からエビデンスの重要性についてありました。そのとおりだと思うのですが、そのような様々な業種業態、特徴がある現場においては、グッドプラクティスもかなり重要だと思っています。現場のことは現場の人が一番詳しいですので、是非、良好事例の収集という点も併せてやっていただくことを期待しております。以上です。
○城内分科会長 そのほかにいかがでしょうか。及川委員、お願いします。
○及川委員 及川です。先ほど私は、中小企業は多種多様なので、従業員200人とか100人とか50人ぐらいに分けて対策をすることが重要ではないかと申し上げていますが、この延長線上で、やはりターゲットを絞ってカウントを整理しなければいけないというものとして、個人事業者が挙げられると思います。個人事業者の対策は正に多種多様ですので、政策的にロットを作るような考え方が必要ではないかと思います。すなわち、同じ業のフリーランスとか個人事業者を束ねて、そこに対策を打っていくということ、あるいは個人事業者が共同で何かができるような環境を整備していくことが必要だと思います。
27ページに、事務局のほうで「フリーランスの安全対策について、発注者による措置やフリーランス自身による措置を含め」と書いていただいています。このとおりだと思います。これからフリーランス新法というのができるとも聞いております。昨日、私どもも内閣官房のほうにその旨のパブコメを出したところですが、個人事業者、フリーランスにとっては、発注者とフリーランスをつなぐような仲介組織体、あるいはバックヤードになるような事業者が必要だと思っています。こういった新しい新法と並行してこの安全対策が進められれば、大きな効果が出るのではないかと期待しているところです。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。小菅委員、お願いします。
○小菅委員 8ページの目標・指標における、労働者の作業行動に起因する労働災害の防止に関連して、23ページの2つ目に「職場における運動プログラムやスポーツ推進の取組の導入率」がアウトプット指標とされています。スポーツを推進すること自体は望ましい取り組みですが、これを災害防止計画の指標として目標を設定していく取扱いに馴染むかは、検討が必要だと思います。例えば、労災防止を目的に企業がスポーツイベントなどを開催する場合に、それが労働時間なのかや、事故発生時にどのような対応が必要かなど、あらかじめ検討すべきことも多いと思います。
また8ページの、指標の3つ目に、「外国人労働者の災害防止対策の推進」が入っております。労働者の死傷病報告では、外国人労働者の国籍・地域、在留資格を記入する欄が追加されました。この間、その状況把握に関するデータが出てきていると思いますので、ここにある言語の課題ということ以外にも、外国人労働者に特有の課題があるのであれば、その対策についてアウトプット指標として検討してもいいのではないかと思います。
最後に質問ですが、先ほど指標の御説明の中で、アウトプットと指標を用いてPDCAを回すとの説明がありました。今回検討しているのは5年計画ですが、PDCAをどういう期間で回すイメージがあるのかお聞きしたいと思います。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。袈裟丸委員、お願いします。
○袈裟丸委員 ありがとうございます。2点ありまして、論点①に関わってくるかと思うのですが、製造業の現場は派遣、請負という様々な雇用形態や労働者も外国人の方が入ってきたりと、本当に多様化しています。ただ、その危険な機械を使ってやるような現場では、どう安全を確保していくかという意味で、今は元方事業者に作業間の連絡調整の実施が義務付けられていますが、同一事業場で働く全ての人の安全をより確保するためには、更に指針に基づいてしっかりと対策をしていくことを強化していく必要があると思っております。今、論点①の自主的な意識啓発というのは、それはそれでしっかりやっていっていただきつつ、でも、足下で起こっている労働災害をどう減らしていくかという実態と併せてやっていかないと、働いている人たちの安全確保というのが進まないのかなと思っておりますので、そういった法的な側面というか、順守をどう実施させるかというところで、安全の確保をしていただきたいなと思います。
あと、製造業も死亡災害は減ってきてはいますが、まだ多い状況にあります。その要因が「挟まれ・巻き込まれ」、「墜落・転落」が多いと、2大要因ということになっておりますが、これは論点⑨と少し関わってくるのですが、設備更新に向けた支援措置というのが第13次防では書いていたかと思っておりますので、こういった構造規格の改正にのっとって何か対策をしていこうと思うときに、やはり中小企業等においては資金面での課題があるのだろうと認識しますので、引き続きの検討をお願いしたいと思います。以上、2点をお願いします。
○城内分科会長 ありがとうございました。そのほかございませんか。髙田委員、お願いします。
○髙田委員 公益の髙田です。今までそれぞれの委員の先生方がおっしゃっている内容というのは非常に納得できる部分があります。触れられていないところということで、8ページの実態を踏まえた産業保健の推進の所に、「必要な産業保健サービスを受けることができる事業所の割合」と書かれております。そのほかのアウトプット指標を見ますと、事業者が取り組んでいるという内容が多いと思うのですが、ここだけ「受けることができる」という受身の指標になっておりますので、実際に事業者が取り組んでいることも分かるような指標がアウトプット指標で必要なのではないかと思いましたので、1点御意見です。
○城内分科会長 ありがとうございます。そのほかございませんでしょうか。ありがとうございます。申し訳ないのですが、私からも1点コメントさせていただきたいと思いました。
14次防の案が発表されて、私は自律的な方向ということで非常に期待をしています。その中で、先ほどから議論になっていますが、企業労働者の意識啓発等ということにポイントがあるわけですけど、それが、実は今まで日本の労働安全衛生の推進で少し欠けていた部分があると思っています。それはつまり、砂金委員、中村委員からも既に御指摘がありましたが、例えば危険有害性を労働者と共有し、それでどうやって対策をしていくかということが重要なはずですが、その点については、どちらかというと、事業者側の責任でやりなさいというようなスタンスだったと思うのです。しかし、それは技術的な管理にはなり得ないと私自身は考えていますので、※印の1、2、3の項目プラスで、労働者と情報を共有して進んでいくということが入ればもっといいのかなと思います。
既にたくさん御意見があったように、労働災害の原因は大体分かってきているわけです。さらに1点、ここ20年ぐらいの間に、人の要因のほうの研究も非常に進んできています。ただ、それらを統合して、どうやって改善していくかに結び付いていないので、そこの教育をしっかりすれば、労働災害は減るのではないかと思っています。
化学物質の管理でいうと、欧米では、知る権利とか知らせる義務としてやってきましたが、ここ数年、実は理解する権利という考え方が出てきています。それは、行政も事業者もちゃんと労働者に教育をして労働災害を減らそうという方向なわけです。化学物質に限らず、人間工学もそうですし、メンタルストレスもそうですし、全てに応用できる方法だと思いますので、是非その辺も勘案して対策に入れていただければと思いました。以上、私からのコメントです。
あと、皆様方からたくさん御意見、御質問を頂きましたが、時間がそれほどありませんので、事務局からは、今日お答えできる範囲で回答いただいて、あと、次回以降の議論に、また頂いた意見を反映して更に議論をしていきたいと思います。では、事務局からお願いします。
○調査官 様々な御意見ありがとうございました。次回、今回の御意見を踏まえて計画案を御提示させていただいて、改めて御議論いただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。幾つか御質問いただいた点で、今日回答できるところはお話しさせていただきたいと思います。
中村先生から、健康経営の優良法人の母数が分からないかという点、すみません、こちらは、これだけの認証をされているということでのホームページ等の情報で書かせていただきましたが、どれぐらい申請されたうちのこれだけだったのか、あるいは、そもそもどういった方にお声掛けしてこういった認定を取られたかみたいなことまでは把握していませんので、もし分かれば、また次回等で御報告させていただきたいと思いますが、現時点では分からないところです。
それから、佐藤委員から、今回経営的なメリットみたいなことを打ち出したところで、従来の、いわゆる安全が大事だというメッセージとの兼ね合いでの御質問を頂いたところです。水島先生からも少し整理いただいたのですが、もちろん、これまでも災害防止計画の中で、安全衛生が第一に重要だというメッセージは、引き続き計画の中でもしっかり打ち出させていただくことにはなると思いますし、それは大事なことかと思っております。一方で、そういった状況ではあるのですが、この計画を策定するに当たって、私もいろいろな中小企業の相談をしている団体にお伺いさせていただいて、そこはよろずの支援ということで、安全衛生も含めた支援をやっている所なのですが、御相談のほとんどはやはり経営に関する相談といったところで、安全衛生の優先順位が一番というのは実態としてはなかなかないのかなと、そういった経営者の方にアプローチするには、従来の方法に加えて、経営者の方が御理解できるような方法も考えていく必要があるのではないかなということで、今回御提案させていただいたところです。ただ、御指摘のとおり、一番大事なメッセージがないがしろになるのも本末転倒ですので、そこは打ち出しの中で、次回本文を出させていただいたときに整理させていただきたいと考えております。
それから、門﨑委員からの件で、行動災害の、これまでにないブレイクスルーについては、今、検討会のほうで御議論を頂いているところかと思っております。そちらも、成果について、14次防の中で反映できればと考えております。
それから最後、小菅委員からのPDCAのサイクルをどうするかということです。13次防については、計画の2年目ぐらいから、前年の状況ということで分科会に御報告し、実施状況と分析を進めさせていただいておりました。14次防も1年を区切りとして、同じような形で14次防の実施状況を分科会に御報告いたしまして、今日御議論いただいたような分析を強化させていただいた上で、更にこの計画がどのように進むのか、プラスアルファは何が要るのかというような、分科会で御議論いただくような仕組みも14次防の中で作れたらと考えているところです。以上です。
○城内分科会長 そのほか、事務局からはありませんでしょうか。よろしいですか。委員の皆様から、そのほか御意見等はございませんでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 かなり時間が迫っておりますが、資料の8ページのアウトプット指標(案)について、細かい点ですが数点コメントさせていただきたいと思います。上から5つ目のマルの2つ目のポツに、「50人未満の小規模事業場における外部機関を含めたメンタルヘルス対策に関する相談体制の整備の割合」とあります。このことは重要ですが、実効性を高める観点から、実際に労働者が活用していることがより重要ですので、労働者の認知度といった指標に変えることを御検討いただくのも良いのではないかと思いました。
2点目は、4つ目のポツの「熱中症災害防止のためにWBGT値を把握している事業場の割合」についてです。専門家の先生にお伺いをしたいところですが、暑さ指数を把握するよりも、休憩を入れる、塩飴を配るといった、実践的な熱中症対策を講じることのほうが重要ではないかと思っております。暑さ指数を把握することが、より熱中症災害防止につながるエビデンスがあるのか、確認をさせていただきたいと思っております。
最後に、マルの7番目の「化学物質等による健康障害防止対策の推進」です。ほかの指標案では、50人未満の小規模事業場というように、対象を限定した形の指標も打ち出されており、この課題についても、特に対策が求められる中小企業に対象を絞ってはどうかと考えておりますので、御検討いただけると有り難いです。私からは以上です。
○城内分科会長 そのほか御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。これで全ての議題を終了いたしました。本日も熱心に御議論いただきありがとうございました。本日の分科会はこれで終了いたします。本日はお忙しい中、ありがとうございました。