第1回 医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会の議事録

日時

令和4年8月31日(水) 16:00~19:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 「ホール14D」
東京都千代田区内幸町1丁目3-1 幸ビルディング14階

議題

  1. (1)医薬品業界の現状と課題等
  2. (2)その他

議事

議事内容
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」を開催させていただきます。
 本日は、暑い中、またお忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 私、厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課長の安藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、構成員の先生方の御出欠について御報告いたします。本日、7名の構成員が会場での御参加、香取構成員がオンラインでの御参加で、8名全員の御出席を頂いております。
 本日の会議は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からYouTube配信形式による公開にて行わせていただきます。
 また本日は、伊佐厚生労働副大臣及び本田厚生労働大臣政務官に御出席いただいております。
 開催に先立ちまして、伊佐厚生労働副大臣より御挨拶を頂きます。伊佐副大臣、よろしくお願いいたします。
〇伊佐厚生労働副大臣 本日、第1回の検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げたいと思います。
 本日、お忙しい中、構成員の皆さん、こうして暑い中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。また、日頃から厚労行政に対しまして、温かい御支援を頂いておりますこと、心より御礼申し上げたいと思います。
 この8月、内閣改造がございまして、今日、本田政務官とともに参加させていただいております。副大臣2名、政務官2名でございますが、私と本田政務官の担当が医療と健康、子育て支援ということになっておりまして、まさしく薬価・流通、この話は我々2人で大臣の下でやらせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 薬価と流通については個人的なことを申し上げますと、私、本当に危機感を抱いております。今、毎年改定ということになりました。毎年改定すれば当然どんどん下がっていくわけで、そうすると、ある意味、診療報酬本体の分を薬価から出しているのではないかというような指摘もございます。また、海外から見ても、日本が果たして魅力ある市場かどうか、特許期間が切れていない中でどんどん価格が下がっていくのはG7の中で日本だけだと思っております。また、流通の観点でいえば、サプライチェーン、今こうした状況の中で我が国にとっても様々な課題があるという状況になっております。こうした中で日本の市場の魅力をもう一回取り戻していくということも大事な観点だと思っておりまして、それがひいては国民の皆さんお一人お一人に質の高い薬を届けていくことにつながると思っております。こうしたタイミングでこの検討会を開かせていただいて、それぞれの皆さんの御知見を頂きながら、大所高所からぜひ御議論いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長 伊佐副大臣、ありがとうございました。
 続きまして、当検討会の構成員の皆様方を御紹介させていただきます。
 まず、学習院大学経済学部教授、遠藤久夫構成員でございます。
 続きまして、法政大学経済学部教授、小黒一正構成員でございます。
 次に、本日、オンラインでの御参加となります上智大学総合人間学部社会福祉学科教授、香取照幸構成員でございます。
 続きまして、神川県立保健福祉大学大学院教授、坂巻弘之構成員でございます。
 続きまして、法政大学経済学部教授、菅原琢磨構成員でございます。
 続きまして、北里大学薬学部教授、成川衛構成員でございます。
 続きまして、中央大学商学部教授、三浦俊彦構成員でございます。
 最後になりますが、青山学院大学名誉教授、三村優美子構成員でございます。
 以上8名の構成員の皆様となります。どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、伊佐副大臣及び本田政務官は、公務の都合上、途中で御退席となりますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 続きまして、本日の会議資料を確認させていただきます。会場におられる構成員の皆様方のお手元にあるタブレットには、議事次第、開催要綱、構成員名簿のほか、資料1から資料2-8まで御用意しております。不足等ございましたらお知らせいただければと存じます。
 続きまして、事務局より当検討会の開催趣旨等について簡単に御説明させていただきます。右上に「参考1」と記載されております開催要綱を御覧いただければと思います。
 今般開催することとなりました「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」でございますけれども、我が国の医療水準の維持向上のために必要な革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市、医薬品の安定供給といった観点から、現状の課題を踏まえて、流通あるいは薬価制度の在り方について検討を行うことを目的として開催するものでございます。
 検討事項といたしましては、主に医療用医薬品の流通・薬価に関する現状の課題、現状の課題を踏まえた医療用医薬品の目指すべき流通や薬価制度の在り方などでございまして、有識者であられます当検討会の構成員の皆様方と忌憚のない御議論をさせていただきまして、当検討会としての考えをまとめさせていただければと考えております。
 また、この検討会における検討のスケジュールでございますが、本年度末、来年3月末でございますけれども、その頃をめどに検討結果を取りまとめることを目標としまして、前半は、流通・薬価制度の課題、あるいは問題点の洗い出し、その整理を行いまして、後半にはそれらに対する改善策について御議論いただく方針で進めたいと考えているところでございます。
 簡単でございますが、開催趣旨につきましては以上です。
 それでは、続きまして、当検討会の座長及び座長代理の指名に入らせていただきたいと思います。開催要綱第3項(2)において「検討会は、構成員のうち1人を座長として選出する」、また第4項(4)において「座長に事故があるときは、構成員のうちから検討会があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」とされております。事務局といたしましては、座長に遠藤構成員、座長代理に坂巻構成員を指名させていただきたいと考えておりますが、御異議等ございませんでしょうか。
(首肯する委員あり)
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長 ありがとうございます。
 御異議等がないようでございますので、座長を遠藤構成員、座長代理を坂巻構成員として進めさせていただきたいと考えております。
 それでは、ここからは司会進行を遠藤座長にお願いさせていただきたいと思いますので、遠藤座長、御挨拶を含めまして、よろしくお願いいたします。
〇遠藤座長 ただいま座長を仰せつかりました遠藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。座ってお話しさせていただきます。
 ただいま企画課長から御説明がありましたように、この検討会は、革新的な医薬品の速やかな上市あるいは必要な医薬品の安定供給、これを担保するための制度上の課題をまず明らかにして、その後に望ましい政策の在り方を議論することがミッションだと理解したわけでありますが、もっともドラッグ・ラグの解消であるとか、イノベーションの促進であるとか、あるいは医薬品の安定供給だとかいうことは、中医協や流改懇のメインテーマであるわけでございまして、改めて当検討会が設置されて、このことを議論するということは、既存の会議体での議論より、より自由で多面的であるいはより包括的な視点からの議論が求められているのだろう、このように理解しておるわけです。
 私自身、平成16年から22年までの6年間、中医協の薬価専門部会の部会長をさせていただきました。後半の3年間は中医協会長と併任いたしました。中医協に限らず多くの審議会や検討会では、当然にしまして、毎回、非常に真剣な議論がされます。そのためにはエビデンスも非常に豊富に出されて議論されるわけです。しかし一方で、どのような審議会もそうですけれども、事務局から出される、示されるアジェンダに対して一つ一つ対応するのが精いっぱいというような状態で、一旦立ち止まって制度全体を鳥瞰して、問題があれば大きな見直しを行うというような機会は実はあまりないというふうに私は理解しております。その意味で、本検討会の意義というのは大変大きいのではないか、このように考えております。
 ただ、それだけに、実現可能性のある有意義な提言を行うというのは大変難しいミッションでもあるということをしみじみと感じているわけであります。幸い、本検討会はそれぞれの分野で極めて優れた先生方が委員として御参加されておりますので、坂巻座長代理の助けを頂きながら、先生方と御協力しながら、ミッションを果たすべく微力を尽くしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
 それでは、早速、議事に移りたいと思います。
 その前に、マスコミの皆様には頭撮りはここまでとさせていただきたいと思いますので、以降は会場外のYouTubeにて傍聴をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
(カメラ退室)
〇遠藤座長 それでは、議題の1に入らせていただきます。議題1「医薬品業界の現状と課題等」でございます。これは関連の資料が事務局から出されておりますので、事務局から説明をお願いしたいと思います。
〇山本ベンチャー等支援戦略室長 それでは、検討会での議論に先立ちまして、事務局より医薬品業界の概況につきまして、公表情報等を用いて簡単に御紹介させていただきます。
 資料1を御覧ください。
 まず、医薬品市場の状況でございますが、2ページ目は、2003年以降の国内医療用医薬品市場の推移でございます。棒グラフのとおり、国内の医療用医薬品市場は2000年代から徐々に拡大しまして、2015年には10兆円を突破しております。
 続いて、3ページ目は、薬価基準収載品目のうち、先発品、後発品といった分類別の数量シェアのグラフでございます。2005年以降、おおよそ2年ごとの調査結果を記載しておりますが、後発医薬品の割合が大きく増加し、2020年にはほぼ半数を占めるようになった一方で、その分、競合する先発医薬品のシェアが減っているという状況でございます。また、後発品が販売されていない先発品の数量シェアも、少しずつですが、減少が続いております。
 4ページ目は、国内製薬企業数ですが、2010年代から一般用医薬品のメーカーを中心に製造販売業の数は徐々に減少している状況でございます。
 5ページ目は、海外市場に進出している企業数の推移ですが、薬事法の改正により業許可の区分が変更されました2005年を除きますと、ほぼ右肩上がりで増加してきております。一方、2015年頃からは若干減少傾向となっております。
 6ページ目は、新薬の開発状況に関する資料でございます。こちらは、主要な新薬が日米欧のそれぞれの市場に上市される順序を示したもので、新薬が最初に上市される市場は米国が65%、欧州が31%、日本は6%となっており、逆に日本に上市される新薬のうち65%は3番手となっております。
 7ページ目は、欧米で承認されている医薬品のうち日本で承認されていない未承認品目の割合でございまして、2016年には56%だったものが2020年には72%に上昇しており、国内で承認されない未承認品の割合が2016年以降高くなっている傾向がございます。
 その要因の一つとして想定される背景としまして、次の8ページ目、9ページ目に日本市場の魅力低下を示唆する製薬企業のアンケート結果をお示ししております。
 8ページ目には、薬価制度の見直しによって日本への投資優先度に変化があったかを尋ねておりまして、「優先度が下がった」または「将来的に下がる可能性がある」と答えた企業が半数を超える結果となっております。また、その原因として考えられる薬価算定ルールの変更事項としまして「新薬創出等加算の見直し」「中間年の薬価改定」を挙げる回答が多く見られております。
 9ページ目では、開発中または販売中の品目の市場規模予測の変化に係る回答結果をお示ししております。ほとんどの企業が「市場規模予測の確実性が下がった」と回答しており、こちらも「中間年の薬価改定」や「新薬創出等加算の見直し」が理由として挙げられております。
 10ページ目からは、今御説明した内容に関係する参考資料としまして、近年の薬価制度改革の内容を記載しております。
 さらに11ページ目、12ページ目には、それぞれ新薬創出等加算や市場拡大再算定の解説を入れておりますけれども、詳細な御説明は割愛させていただければと思います。
 13ページ目からは、新薬創出等加算の適用状況を記載しておりまして、13ページ目は、会計年度の期間ごとの加算額を記載しております。14ページ目には、各年度の新薬創出等加算の平均的な加算率を記載しておりますが、徐々に加算率が低くなっている傾向が見られるかと思います。
 15ページ目以降は、薬価改定時に用いられる薬価調査の結果をお示ししております。2018年からは中間年改定が開始されておりまして、毎年の調査が行われておりますが、それでも乖離率の傾向は大きく変わらず、それまでと同様におおよそ7%から8%程度で推移しております。
 16ページ目には、乖離率を医薬品の剤形ごとに分けて集計したもの、次の17ページ目には、薬効分類別に分けた結果をお示ししております。こちらのとおり、医薬品の種類ごとに乖離率の偏りがございまして、内用薬の一部において乖離率が高い傾向が見受けられます。
 18ページ目には、基本的な情報として医薬品の薬価改定のイメージを参考としておつけしております。
 さらに19ページ目からは、後発医薬品関連の資料を掲載しております。19ページ目は、これまでの後発医薬品の使用促進に向けた主な施策を記載しておりまして、平成19年に経済財政改革の基本方針において数量シェア目標を設定したことを皮切りとしまして、徐々に数量シェア目標を更新しつつ、使用促進を進めてまいりました。
 その結果が20ページ目でございまして、2011年頃から後発医薬品の使用割合が大きく伸び始めまして、2021年9月にはほぼ8割になっております。上に記載しております令和3年の骨太の方針における最新の目標としましては、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とすることが記載されております。
 続いて21ページ目でございます。後発医薬品への置き換えによる医療費適正効果額の推計を記載しております。先ほどの使用割合と同様に右肩上がりに増えておりまして、令和3年度には約1兆9000億円にも上っております。
 22ページ目には、後発医薬品収載品目数の年次推移を記載しております。「代替新規以外」の列の数字が実質的な新規収載品目となっておりますが、先ほどの御説明で使用割合が伸びていると申し上げました平成23年頃と同じ時期に収載品目が多くなっております。
 23ページ目からは、後発医薬品のメーカーの状況をお示ししております。後発薬を製造するメーカーは約190社ありまして、内訳は、500品目以上製造する大手が3社となっておりまして、製造品目数が少なくなるほど企業数も増えていく傾向となっております。
 24ページ目では、先発メーカーと企業規模の比較をしておりまして、先ほど申し上げました500品目以上製造する大手の後発品メーカーであっても、先発企業と比べますと企業規模が大きく違うことが分かるかと思います。
 25ページ目は、別の観点の資料でございます。医薬品の安定供給を図る上では複数の原薬製造所から原薬を調達できる体制を整えること、いわゆる原薬の複数ソース化が重要とされておりますが、複数ソース化ができている後発品の品目数と割合を記載しております。左側が新しいデータとなっておりますけれども、平成25年度には28.6%であった割合が令和元年度にはおよそ5割の品目において原薬の複数ソース化が図られているという結果になっております。また、下の表では後発薬の原薬の調達状況をお示ししておりますが、約半数の品目において海外で製造された原薬を輸入して医薬品を製造しているということが明らかとなっております。
 26ページ目は、昨年2月以降、後発医薬品メーカーにおける製造管理、品質管理上の不備による薬機法違反、行政処分事例が相次いでおりまして、その主な事例を記載しております。小林化工の事例では、多数の品目において承認書と異なる製造、二重帳簿による隠蔽などの重大な違反行為が確認されまして、これまでで最長となる116日間の業務停止が行われております。日医工や長生堂製薬についても同様の事例が行われていたことを踏まえまして、およそ30日間の業務停止処分がそれぞれ行われております。
 続いて27ページ目でございます。それらの違反行為の発覚による出荷停止がきっかけとなりまして、後発医薬品全体における供給量不足が発生しまして、違反のなかったほかのメーカーも含め、多くの品目において出荷停止や出荷調整が発生しております。表は昨年8月時点での調査結果となりますが、先発品を含めた全体では2割強の品目、後発品に限りますと約3割の品目において出荷停止や出荷調整が行われております。
 28ページ目には、後発品における供給不足の発生状況について詳細に記載しております。上の図は令和2年度の供給不足の発生状況で、日薬連加盟企業に比べて、日本ジェネリック製薬協会に加盟している、いわゆる後発品企業で見ますと、供給不足の発生割合が多くなっております。下の図の供給停止した品目数で見ますと、先ほどの小林化工や日医工の行政処分が行われました令和2年度に供給停止品目が急増している状況が分かるかと思います。
〇信沢首席流通指導官・流通指導室長 では、ここからは流通の関係に移ります。
 29ページは、医療用医薬品の流通の基本的な流れを図式化したものとなっております。下の表につきましては、日本医薬品卸売業連合会に加盟している卸売業者の推移を示しております。
 30ページは、医療用医薬品の卸売業者からの納入先を金額ベースの推移で表したものです。赤が薬局、緑が病院、青が診療所となっています。黄色の線が医薬分業率です。分業率が上がるにつれ、薬局の部分が増加してきておりますが、ここ数年は微減という形になっております。
 31ページは、医療用医薬品流通の課題等についてです。主な課題としまして、一時売差マイナス、未妥結・仮納入、総価取引、過大な値引き交渉などがあります。これらを改善、是正していくため、平成16年にメーカー、卸、医療機関・薬局等の代表者による「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」、いわゆる流改懇と申しておりますが、流改懇を設置し、流通改善のための検討を行っているところです。また、流改懇においては平成30年4月、医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドラインを策定しまして、昨年、令和3年11月に見直しも行っております。
 32ページ以降は、諸課題に関する資料をおつけしております。
 まずは、一時売差マイナスの構造についてです。図のマル1がメーカーから卸の販売価格である仕切価を示しています。マル2が卸から医療機関・薬局への販売価格である納入価となっております。マル1とマル2の額が逆転しておりまして、これをマル3にありますメーカーからの割戻しやアローアンスによって補填するということが医療用医薬品における特異な取引となっております。
 33ページは、仕切価率、納入価率、割戻し率の推移を示しております。モデル的に卸5社の平均値を薬価100とした場合の割合で記載しております。仕切価は上昇ぎみで、仕切価と納入価の差についてはあまり縮まっていません。
 34ページは、早期妥結・単品単価契約の推進等についてです。卸と医療機関等との間の契約、これを妥結率と言っていますが、これについては平成26年に未妥結減算制度が導入されて以降、各年9月末時点で9割を超える妥結がされています。
 しかし、35ページをご覧いただきますと、9月には一度、妥結率は高くなるのですが、12月には一気に妥結率が下がっております。これは、取引価格等の状況を踏まえて再契約の交渉を行っていると推測されます。年度末である翌年3月までには妥結率がほぼ100%になっております。
 36ページは、頻繁な価格交渉の改善についてです。これは、200床以上の病院と20店舗以上のチェーン薬局について調査を行った結果です。半年契約と1年契約がほぼ半々の状況となっております。
 37ページは、単品単価契約の状況について調査した結果です。まず、左下の表ですが、調査に当たり、定義をしています。横に交渉段階、縦に妥結段階の状況を記載しています。単品単価とは交渉も妥結も単品ごとで行ったものであり、この表でいくとマル5を指します。
 この調査結果が次の38ページとなっております。横に病院・薬局等の取引先の類型があり、縦が取引の類型としております。また、この調査では、価格交渉を代行するもの、例えば複数の薬局が会員となっていて、それらの薬局の代わりに卸と価格交渉を行っているものについても調査しております。単品単価取引は病院や薬局として大きなところよりも小さなところで進んでいるということが結果として出ております。
 39ページは、こうした状況を踏まえまして、先ほども申し上げました流改懇において検討し作成した流通ガイドラインです。メーカーと卸と医療機関・薬局といった流通当事者間の取引のルールについて定めたものです。
 40ページも同じガイドラインを示したものです。左側に、川上と呼んでおりますが、メーカーと卸の取引についてのルールの一部、右側に、川下と呼んでおりますが、卸と医療機関・薬局との取引に対するルールを記載しております。
 41ページは、医薬品卸業の経営状況についての卸連の協力による調べでございますが、売上総利益率、営業利益率が減少傾向にあります。販売管理費率につきましても減少している状況にございます。
 42ページも経営状況についてですが、こちらは、株式上場している大手卸6社の経営状況について記載したものとなっております。
 以上です。
〇遠藤座長 ありがとうございました。
 以上で事務局からの説明は終了いたします。
 それでは、これからは各構成員の皆様により、現在の医薬品産業における課題、あるいは当検討会にて議論すべき内容について御意見を頂戴したいと思います。事前に御発言の内容の資料が出されておりますので、順番に御説明、御意見を頂戴できればと思います。
 最初に、恐縮ですけれども、小黒構成員、どうぞよろしくお願いいたします。
〇小黒構成員 ありがとうございます。法政大学の小黒と申します。よろしくお願いします。
 資料2-1を御覧いただければと思います。
 2枚目のスライドになりますけれども、私、専門はマクロ的な視点で薬価制度、社会保障全体を見ておりますので、その観点から問題意識を共有させていただければと思います。
 まず、前提ですが、今回の「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度」の「迅速」には、やはりドラッグ・ラグ回避等も含まれているのではないかと考えております。恐らく詳細については同僚の菅原先生のほうからまた御説明があると思いますが、世界における日本の医薬品市場の魅力を高めることがドラッグ・ラグの回避につながるのではないかと思っております。
 昨日、製薬協の岡田会長が、日本の医薬品市場が伸びていない、先ほど伊佐副大臣からもお話がありましたが、そういった問題意識や、あるいは市場拡大再算定の在り方についていろいろ問題提起をされておりました。まず、革新的な医薬品の開発に対する投資を促すためにも、この辺は厚生労働省だけということにならないかもしれませんが、薬剤費の総額について、これは財政当局との調整が必要になりますけれども、少なくとも、これから御説明しますとおり、経済成長率、言ってみれば潜在的かつ中長期的な、しかも実質ではなくて名目GDPに沿う形で、それ以上の伸びは確保するようにすべきではないかと思っております。
 もう一つ大きな点としましては、まだ我が国の製薬メーカーでは問題として顕在化していないかもしれませんが、ウクライナの問題であったり、その中で中国、ロシアを含めて、経済安全保障の関係もありますけれども、製造にかかる財・サービスの価格(調達コスト)が上昇しているというような状況だと思います。しかも、その上で、FRBが、アメリカの中間選挙もあることも含めて、かなりインフレ対策に躍起になっており、これから金利を上げていく、その中で円安が加速しているという問題もございます。輸入物価も上昇しており、そういったインフレの圧力が高まる中で、その影響を薬価制度の中でどういうふうに対処していくのか、この辺についても御議論いただけないかと思っております。
 資料をおめくりいただきまして、1点目、これは、市場全体、それから先ほど御説明がありましたジェネリックや長期収載品、一番重要な守るべき特許品、こういったセグメントごとの2010年度から2020年度までの市場成長率、それを2010年度から2015年度、2015年度から2020年度という形で簡単に平均の成長率を出したものでございます。
 まず、先ほどもございましたけれども、市場全体の成長率は、2015年度まではプラスの成長で3.7%でございましたけれども、ここ数年はマイナス0.9%という形になっております。しかも、ジェネリックは伸びが13.6%で6%プラスを推移しておりますが、特許品がマイナス0.1%とシュリンクするような形になっているということです。これはやはり何か対処が必要ではないかというものでございます。
 なぜこういうことが起こっているのかということで要因分解をしてみますと、青い棒グラフが各年度にもともとあった市場の規模です。薄い青色が数量成長で自然に成長した伸びです。これに対して価格改定がかかるわけですけれども、見ていただければ一目瞭然ですが、幾つかの年で若干改定率が弱いところもございますが、傾向としては自然の自律的な成長以上に価格改定の影響が強くて、全体としては伸びが抑制されるという形になっているということではないかと思います。
 次のスライドを見ていただきますと、先程の資料は過去のものですが、今後どういうふうに見ているかということで、IQVIAさんが出している予測を見ますと、2020年度から2026年度で伸びても0.2%、どちらかというとマイナスの成長率になるという形で、かなり厳しい状態が続くということを予測されています。
 次のスライドですが、そういった状況の中で、日本だけではなくて、世界全体で、製薬企業、グローバルな方々はどこに投資していくのかを見ているわけです。アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、各国とも基本的にはプラス成長になっている中で、日本だけがマイナスもしくは横ばいの成長になっているという状況です。これは日本の医薬品市場が相対的に地盤沈下しているということではないかと思います。
 そういった中で、先ほど申し上げました私の問題意識の1点目ですけれども、次のスライドを見ていただければ分かりますとおり、横軸にGDPの成長率を取りまして、縦軸に2021年から2026年の医薬品市場の成長率、これは予測になりますけれども、それをプロットした場合、赤い点がマイナスの領域にあるのですが、日本だけが沈んでいますので、少なくとも点線のエリアに行くまでは薬剤費の総額を何とかして伸ばしていくということが必要ではないかと思っております。
 次のスライドを見ていただければと思います。こちらは2点目で、先ほどのインフレとの関係でございますが、左側に消費者物価指数、GDPデフレーターを描いております。これは2011年から2021年までになっており、薬価だけが下がっているという状況になっています。私、いろいろ疑問に思うのは、例えば消費税を引き上げるときに、引き上がれば先ほど厚労省から説明があった薬価改定のところでも消費税分を勘案して調整するわけです。他方で、普通にインフレになっているときには何も改定されない。むしろ市場取引の実勢価格との乖離を調整する形で改定されるという状況になっているわけですが、右側を見ていただければ、足元ではかなり物価が上昇しています。現在のところ、CPIにはまだ反映されていないものの、国内企業物価指数はかなり高い状態になっており、その伸びは8%、9%という状況です。CPI全体としては伸びがプラスになっているものの、その伸びが弱いということは、製薬メーカー以外の普通の製造業では、利益の減少や経費削減など、相当どこかでコストを負担するという形になっているはずです。このため、いずれ製薬メーカーのほうでも似たような問題がもっと深刻な形で現れる可能性もあるのではないかと思っております。そういう意味では、やはり経済安全保障の観点も含めまして、この問題についてきちっと考えていくことが必要ではないかと思います。
 次のスライドを見ていただきますと、これは日本とアメリカの物価上昇率の比較です。ちょっと古いデータですが、2016年8月時点で、左側が物(財全体)の価格、右側がサービス全体の価格です。全体としては、サービスの下のほうに、総合のCPI、それから食料・エネルギーを除いた総合のCPI、日本とアメリカの比較が載っております。総合のCPIは、このとき日本はデフレーションでございまして、アベノミクスでかなり吹かしていたのですが、アメリカは1.1%、プラスになっています。ただ、物(財全体)のほうを見ていただきますと、興味深いことに、アメリカのほうが全体で見るとデフレーションなのです。他方でサービス全体を見ていただくと、日本のほうが伸びが低い。幾つか要因の中にありますけれども、例えば介護、病院サービス、こういったところで価格の伸びが相当日本は低い。背後には様々な規制(公定価格)、今回、話になっている薬価制度も含めていろんなことが影響している可能性があると思われます。
 もし仮にそれなりの物価上昇に見合う形で薬価を改定することも勘案した場合、どういうことが起こるかということですけれども、ポンチ絵がございますが、サービス分野の物価が上昇すれば、当然、全体の物価上昇を押し上げる圧力になります。そうしますと、名目GDPを押し上げて、財源としての税・社会保障収入の増加につながっていきます。基本的には、税収弾性値を1と考えれば、物価の部分を含めて1%伸びれば、長期的に見れば税・社会保険料も1%増えていく形になりますので、財政ニュートラルという意味でも、少なくとも経済成長率並みに増やしていくということ、しかも名目GDPの中には当然GDPデフレーターという物価の指数が入っていますので、そういったところとの連動も考えていく必要があるのではないかと思います。
 あと、お手元の資料には参考資料という形で、説明はしませんけれども、今年の5月25日に財政審が出している内容、次のスライドは財政審が4月に出している内容です。かなりいろんなことが書いてありますが、少なくとも財政当局も経済成長率並みに薬剤費を伸ばすことについてはある程度許容していることが明確に読み取れるのではないかと思っております。
 後は質疑の中でいろいろ意見交換させていただければと思います。御清聴ありがとうございました。
〇遠藤座長 どうもありがとうございました。
 また、いろいろと御意見もあるかと思いますけれども、一通り御発言者の発言が終わった後、まとめてやりたいと思います。
 それでは、2番目の御説明者ということで、香取構成員、よろしくお願いいたします。
〇香取構成員 どうもありがとうございました。
 また、いろいろと御意見もあるかと思いますけれども、一通り御発言者の発言が終わった後、まとめてやりたいと思います。
 それでは、2番目の御説明者ということで、香取構成員、よろしくお願いいたします。
〇香取構成員 今、外国にいるものですから、オンラインで参加しております。
 今日は初回ですので、私の問題意識を整理してお話ししたいと思います。今、小黒先生からもいろいろ細かいデータを出してファクトベースの議論がなされましたけれども、私は、薬価問題、特にこの問題に専門的にかかわっているわけでもないので、大きな全体の社会保障政策、あるいは財政政策との関係でこの問題がどう見えるのか、あるいはどこに解決策の道筋を見ていけばいいのかということについて考えたいと思います。
 冒頭、事務局からお話がありましたが、この会議のミッション、革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の上市の問題と安定供給の問題、これを流通や薬価の在り方について検討するとなっていて、基本的には薬価制度あるいは流通の観点からこの問題を考えるというような問題設定がされているように思います。
 それはそれで一つの切り口だと思いますが、この問題を考えるときに、大きく2つ、入り口の頭の整理が要るのではないか。恐らくこの問題に関わっている方々は、皆さん、そう思っておられるのだろうと思いますが、なかなか正面切って議論がされていないということなのかもしれないと思って、あえて申し上げるのですが、先ほど事務局からも、医療用医薬品の流通が非常に特殊な形態を取っている、価格交渉において特異な交渉が行われている、総価山買いとか、あるいは未妥結・納入みたいなことが起こっているといろいろ指摘もされ、この間、様々な改革・改善の提案がされてきたわけです。
 流通改善ガイドラインのお話がありましたけれども、厳しいことを申し上げるようですが、あのガイドラインが現実に取引の中でどれだけ守られているのか、あるいは考慮されているのか、それこそPDCAでいえば効果が出ているのか、もしあれば後で御説明いただきたいと思いますが、現実にはなかなか改善されない。私自身の経験からいっても、今から40年ぐらい前、私が当時の経済課の担当係長をしている頃にもやはり流通の問題を考える検討会がありましたし、薬価問題を考える検討会もありましたけれども、基本的な問題状況は今もってあまり変わっていないというのが正直な印象です。
 考えると、医療用医薬品の市場の構造、流通や価格形成の基本的な枠組みを決めているのは実は薬価制度そのものなわけです。具体的に言えば、既収載医薬品の改定の方式がどうなっているかによって流通や価格形成の問題は規定されている。そう考えるべきで、もし市場にゆがみがある、あるいは価格形成に様々な問題があるとすれば、改定方式そのものに問題があるのだということなので、逆に言えば、いくら幾ら流通過程で取引関係者の関係をいろいろ考えてルール化しても本質的な解決にはならない。薬価改定方式本体そのものを問題にするという視点がないとこの問題は解決されないのではないかというのが1点目です。
 2点目は、小黒先生のお話もありましたが、新薬の算定、既収載医薬品の改定、いずれも中医協マターということになるわけで、基本的には医療保険の政策あるいは医療費全体の政策という観点から考えられている。もちろん様々な新薬の加算の問題やいろんな配慮はされていますけれども、最終的には医療保険あるいは医療費、もっと言えば最終的な予算編成の過程で物事が決まっている。この基本的な枠組みそのものを変えるということがないと、多分、新薬創出の問題でも研究開発の問題でも、あるいは医薬品産業の国際競争力の問題でも答えは出てこない。あえて言えば、医薬品や医薬品産業というものについて、それが社会的にどういう役割を果たしているか、どういう付加価値を生んでいるかということについての議論を常に頭に置きながら考えるということをしないといけないのではないか。
 こういう議論は中医協でもされているのだろうとは思いますが、メインのテーマとしてこの問題を据えて薬価の算定方式を考えるというふうにはなかなかなってこなかったのではないか。そういう意味でいうと、医療保険や医療費の政策の枠組みの中から放たれた場所で議論する、まさに今回の検討会がそうですが、そういう議論の仕方が要るのではないかと思っています。
 あと、資料の中に星印で書きましたが、細かい各論がたくさんあるので、議論していくとどんどん各論に入っていってしまうと思いますが、マル1とマル2のことを頭に置いて考えると、既収載の医薬品の価格改定の問題、上市されている医薬品、新薬もそうだし、後発品もそうだし、長期収載品もそうですが、その価格改定の問題と、これから上市してくる、あるいは保険に収載してくる新薬をどういうふうに値決めをするか、つまり新薬の薬価算定の問題は分けて議論すべきだと思います。もちろん上市のときの算定のルールは後の改定にも影響するので、この両者は連関しているわけですけれども、基本的にはこの2つは問題状況が違うので、これから議論するときはこの2つは整理して分けて議論するということが要るのではないかと思います。
 次に、薬価の問題を話すのに医療費の問題を話すというのもどうかと思いますが、申し上げたように医療費あるいは保険財政をどのように考えるかという基本認識が薬価問題にも影響していると思うので、ここを入り口の議論として指摘しておきたいと思います。
 その下に主要先進国の医療費とGDPとの関係、対GDP比の推移をグラフに描いておきました。そもそも日本を含めて先進国の医療費の対GDP比は趨勢的に上昇しています。このトレンドは今後も変わらない。OECDの3年前のレポートに書いてありますけれども、全てのOECD諸国で今後15年間、医療費の伸びはGDPの成長を上回る。平均で今、8.8%、2030年には10.2%になるだろうと。結局、医療需要の増大というのは実体的な理由があるということだろうと思っています。人口高齢化ということもありますし、医療の高度化、科学技術の進歩、いろんな要因があって、日本を含めて先進国全てで基本的には対GDP比は伸びていく。医療費はそういうものだということです。
 逆に言うと、医療費の伸びを完全に予算統制下に置くという政策目標を立てる、持続的、安定的にGDPの伸びの範囲内に収める、つまり医療という財の特質とは関係なく予算統制下に置いてGDPの範囲内に持続的、安定的に収めようという政策目標は、医療が持っている価値、様々な実態的な医療費が伸びていく理由というのをいわば否定するのに等しい。人口構造の変化あるいは医療の高度化、技術革新みたいなものを否定することに等しいわけなので、それは恐らく現実的に成功しないし、それをやろうと思うと、相当無理なことをすることになります。薬価の世界で起こっていることはそういうことなのではないか。
 私は、医療費の「適正化」という言葉は使わないというか、正しくないと思っていて、「最適化」することはできますし、する努力をすべきですけれども、政策的にこれを統制するということは基本的にはできない。最適化の努力は必要ですが、統制するというのは無理なので、そのことを達成するために様々な施策、それに連なる政策を組み立てるというのは非常に無理があると思います。
 もう一つ、これも私が言うまでもなく当たり前のことだと思いますけれども、よく「物と技術の分離」というふうに言って、薬は物ですねと、こうなるのですが、実際問題、薬は物ではないわけです。薬というのはまさに薬効が問題になるわけですから、新薬の開発というのは医療の技術革新であり、医療の高度化です。新薬が生まれ、新しい医薬品が生まれていくというのは、先ほど言った医療費の増嵩要因なのです。もちろんそうでない、かつてのH2ブロッカーのようなものがありますけれども、単に薬は薬として薬効が生まれるだけではなくて、様々なモダリティーの多様化をもたらして、診療技術や治療技術そのものに様々な影響を与えているということから考えれば、物の価格の問題としてだけこれを考えるというのは視点として狭過ぎるということではないかと思います。
 様々これまでも医薬品の流通問題についても取組がされ、様々な改善がされてきたということは、厚労省当局の御努力もあったのだろうと思いますが、事務局の資料にもありましたように、現実に何が起こっているかというと、安定供給に支障が生じている。出荷調整が行われ、欠品が出ている。本来、生命関連物資である医薬品について欠品とか安定供給に支障が生じているということ自体が結果として今の医薬品産業政策が十分機能していないことを意味するのではないか。カウントの仕方によりますけれども、約3000品目、後発品や基礎的な医薬品に欠品ないしは調達困難が生じているということですし、先ほどの厚労省の資料にもありましたが、今や抗生物質を国内で製造できているメーカーはほとんどない。ほとんど中国、インド等からの原薬、バルクの買い付けで薬を作っているということになりますと、今回のような事態が起これば当然のように安定供給に支障を来すことが起こるということです。
 2つ目、これは恐らく次回以降、ヒアリングの中でメーカーの方がお話をされると思いますが、これだけ長期にわたって薬価抑制政策を続けてきたことで明らかに日本の医薬品産業の研究開発能力は低下している。したがって、日本の産業の中でもそれなりの位置を占めるはずの高付加価値産業である医薬品産業の成長が現に損なわれ、国際競争力が奪われ続けてきている。現実に新薬は出ていないし、ワクチンも作れていない。御案内のように、薬は20年とか、そういうタームで開発するものですし、今や低分子の化学薬からバイオへと基礎的な技術がどんどん変わっているわけですから、立ち止まれば確実に遅れていくという中で競争が行われている。それをどのくらい意識して薬価政策が取られてきたかということではないかと思います。
 3つ目は、先ほど小黒先生もお話ししたことですけれども、これだけ日本国内の市場環境が悪いということになると、日本のメーカーもそうだし、外資もそうですけれども、国内で研究開発投資を行う意欲は当然低下するので、日本国内の研究所が次々と閉まっている。日本国内での薬価の値決めがこういうことになると、最初にこの国で上市して価格をつけられるということはメーカー側からしてみると何のメリットもないので、最初に日本で上市することはしない。さらに言えば、十分な市場環境が整っていないのであれば、日本では上市しないということになります。
 先ほどデータにあったように、かつてのMOSS協議で年4回の新薬収載を行うこととし、迅速な上市、収載がルール化されてドラッグ・ラグは解消されたわけですが、今度はメーカー側が日本で上市してこない、承認を求めない、薬価収載を求めないということが起こっていて、言ってみれば1世紀の新しいドラッグ・ラグが無視できない形で実際に起こっている。このままいけば、画期的な新薬あるいは画期的な医療というものが、皆保険体制を取っているにもかかわらず日本国内では受けられないという事態が生じることになるということだと思います。
 いろいろ議論がありますが、薬価制度の中身そのものの問題に加えて、不透明な形でルールが事後的に改変される、つまり透明性がない。そのことによって各メーカーあるいは流通は予見可能性を阻害されているということで、経営計画あるいは投資計画を立てることができないということが起こっているのではないかということです。
 あまり出羽守はやりたくなかったのですけれども、アメリカのUSTRが公表した「National Trade Estimate Report」の日本の部分の医薬品・医療機器産業のところに書かれていた文章をJETROのニューヨークセンターが仮訳をしてくれました。これは正式な訳ではありませんが、それをお借りして転載したものです。USTRはどういう指摘をしているかということで、これはよくまとまっているので、引用します。
 10年以上前に日本政府は、日本の医薬品・医療機器市場の魅力を高めることに着手しました。承認期間の短縮、償還価格制度の予見可能性の向上をやりました。しかし、それ以降、近年は頻繁に償還についてのルールの変更を提案しています。このことで制度の不確実性が高まっています。
 2010年に新薬創出加算(PMP)を入れました。ところが、わずか8年後にいろんな変更を実施したことで恩恵をフルに受けられる革新的製品や企業の数は劇的に減少しました。
 2018年以降、その制度に対して様々な懸念が示されているにもかかわらず、日本政府は対処していません。かつ2020年には事前通知や業界との意見調整もないままに価格設定のルールの変更拡大を行いました。
 アメリカの業界はこの唐突かつ不透明なルール変更には懸念を持っています。従来、日本は2年に一度、薬価改定をしてきました。2016年にoff-year price revisions(中間年改定)を出して、2021年4月から実施され、これが大きな懸念となっています。
 米国業界は、この改定の予見可能性・透明性の欠如、将来の中間年改定の実施には懸念を持っていると言っています。
 結論として、日本に対しては、予見可能かつ安定的なイノベーションに報いる償還政策を実施しろ、政策検討プロセスでちゃんとステークホルダーの意見を聞いてくれ、かつ、政策を決めるプロセスにおいて透明性を確保してくれと、いずれももっともな要求だと思いますが、やはり日本の薬価制度や薬価をめぐる様々な議論というのは、非常に透明性がない形で頻繁に変更が行われている。そのこと自体も問題ですし、改定の中身もちろん問題ということではないか。
 何でそういうことが起こっているかとずっとたどっていくと、医療費に対する考え方、医療費政策、医療費抑制政策といってもいいですが、そこに根っこがあるのではないかという気がします。先ほど小黒先生の資料の中で、サービスの価格について、日米の価格差、インフレ感応度が全然違う。今でもそうですが、物価上昇はしているわけですけれども、サービス業あるいはサービス価格が上昇していかないということがあります。日本の場合、医療費もそうだし、介護費もそうですが、この辺の価格は公定価格になっているわけです。公定価格が縛られているということが全体の物価上昇を押し下げている。なぜ診療報酬や介護報酬について厳しい価格統制を行っているかといえば、それは財政制約が大きいからだということになるわけです。この財政制約の大きさがそれぞれのマーケットが持っている本来の形と整合的でない政策を生み、言葉は悪いですが、市場をゆがめているということになっていて、そのことのしわ寄せが来ている象徴例が薬価の世界ということではないかと思います。
 先ほどの小黒先生のお話に引きつけていえば、GDPの伸びは日本経済全体の伸びということになるわけで、医薬品あるいは医療という分野の特性を考えれば、先ほど申し上げたように、基本的にGDPを上回って構造的に伸びていく、そういう市場の中で医薬品産業の伸びあるいは成長をマクロで考えたとき、どう考えるかというと、やはり見るべきは、医療費そのものの構造、あるいは医療費の伸びの要因を見た上で決めていくということが要るのではないかと思います。
 最後に、これからの進め方について私からの御提案ですけれども、恐らくこの後、メーカーやステークホルダーの意見なども聞いていくのだろうと思います。この問題は医療政策そのものにも関わっているので、様々なシンクタンクが日本の医療政策、あるいはそれとの関連で医薬品産業についてもコメントしていると思います。日本総研や日本医療政策機構、幾つか提言を出しているところがあるので、そういうところの提案についても、幅広く呼んでお話を聞くなり、あるいは資料として議論の用に供するなり何なりという御配慮をしていただければと思います。
 長くなりましたけれども、私からは以上です。ありがとうございました。
〇遠藤座長 どうもありがとうございました。最後の議事運営についての御要望につきましては、承りました。事務局と相談してしかるべく対応したいと思います。
 続きまして、坂巻構成員、よろしくお願いいたします。
○坂巻構成員 神奈川県立保健福祉大学の坂巻でございます。
 今までのお話を伺っていて、私は、いわゆる新薬と特許切れ医薬品、長期収載品とジェネリック医薬品、この2つを併せて特許切れ市場というふうに言いたいと思いますけれども、この2つは分けて考えたほうがいいのかなと感じております。
 例えば産業育成ということを考えた場合でも、新薬メーカーはかなりグローバル化していますけれども、ジェネリック医薬品はグローバル化が非常に遅れている、こういった問題があります。あるいは安定供給という話もこれまで出てきていますけれども、実際、供給不足が起きているというものは、どちらかというと特許切れ市場、特に今、ジェネリック医薬品が品質・製造問題で供給不足を起こしているわけですが、逆に新薬で供給不足が起きているというのは日本ではあまりないということもありますので、こういったことも含めて、分けて考えたほうがいい。
 ただ、流通の問題に関しましては、新薬、ジェネリック、比較的共通の問題でありながら、特にジェネリックのほうが問題が大きいというようなこともあるので、領域によってどこら辺まで分けるかというところは整理しながら議論していったほうがいいかと考えております。
 今、資料を見たら、事前にお送りしたものと違う古いバージョンのものが配付されているようなのですけれども、事前にお送りした資料ではジェネリックだけではなくてバイオシミラーに関しても言及するつもりで資料をお送りしたのですが、古いバージョンが今日お手元に準備されているようで、ジェネリック医薬品だけになっていますけれども、口頭でバイオシミラーについてもお話をしていきたいと思います。私、このところ、ジェネリックに関する仕事が中心ですので、ジェネリック、バイオシミラーに関してお話をしていきたいと思います。
 2ページ目を御覧いただきたいと思います。「ジェネリック医薬品に係る諸課題」というタイトルをつけております。2019年、今から3年前になってしまいますが、「ジェネリック医薬品産業をめぐる環境とシェア80%に向けての課題」ということで、御案内のとおり、今のジェネリックの目標は全部の都道府県で80%ですけれども、当時はシェア80%ということを目標にしておりました。シェア80%目標という中でも、それほど簡単ではないというか、幾つか課題があるということで、2019年に「社会保険旬報」に整理させていただきました。それを一部抜粋した部分でございます。
 まず、よく問題になりますけれども、企業数の多さ、品目数の多さということがあります。こちらは単に企業数を問題にするだけではなくて、先ほど申し上げましたけれども、日本のジェネリックメーカーはグローバル化が遅れているということだけではなくて、自社で製造しない。あるいは極端な例ですとマーケティングも行わない。あるいは先発系の企業がジェネリック企業に参入している。どういったジェネリック産業を育成していくのか、こういったことを考えて整理していく必要があるのだろうということを一つ論点として挙げました。
 2つ目は、品目数の多さですけれども、これも単に品目が幾つあるかという数を論じるだけではなくて、なぜ数が多いのか。例えば、2020年に入っても問題になりましたけれども、共同開発の問題です。共同開発の中で、単に規格揃えだけでの品目数、あるいは共同開発することによって価格がばらついて、市場でどう選択していいのか分からない。あるいはどこで作っているか分からない。共同開発先の、これは最近明らかな問題ですけれども、品質に関してきちんと監督がなされていなかった。こういった数だけの問題ではなくて中身の問題も指摘してきました。
 それから、これは少し細かい話になるかもしれませんけれども、オーソライズド・ジェネリックというものが問題としてあります。これは後ほどデータをお見せしてお話をしていきたいと思います。
 それから、先ほど小黒構成員からもお話がありましたが、2019年度に既に問題になっていましたけれども、原薬・原料の価格の問題、それ以外にも品質管理、安定確保のためのコストが増加する、こういったことで原価が上昇しているという問題がありました。
 流通と薬価の問題に関しては、後ほどまたお話をしていきたいと思います。
 点線の下は、この論文を書いた2019年以降に起きた、先ほど事務局からお話がありましたけれども、現在、品質・製造問題というものが大きな問題になっており、最近の問題という意味で、点線でわけております。この品質・製造問題の中で明らかになったのは、今日のこの検討会は流通・薬価制度の検討会ですけれども、もう一つ大きな課題は製造の問題です。安定確保医薬品に関して製造のキャパシティーがどうであるのか、この製造の問題ももう一つ併せて考える必要があるのではないかと思います。点線以降は、今、足元で起きている品質・製造問題に端を発している部分ということになります。
 3ページ目が、いわゆるロードマップに関する調査報告書で、ジェネリック医薬品の製造企業数をグラフにしておりますけれども、9品目以下しか作っていない企業が非常に多くて、この8年間を見ても再編がほとんど進んでいないということを示しております。
 オーソライズド・ジェネリックに関しては、やや細かい話かもしれませんけれども、つまり先発の医薬品と全く同じものをジェネリックとして発売している、こういったものが増えてきております。増えてきている理由は、要するに先発品と同じですという一言で製薬会社も売り込むし、医療現場においてもジェネリックとして容易に使われている。
 ところが、これはデータが古いですけれども、オーソライズド・ジェネリックは非常にシェアを占めている一方で、値段が下がらない。単純にジェネリックとオーソライズド・ジェネリック(AG)を比べてみると、AGのほうが薬価が高くて、結局、医療費削減の効果が弱まっているのではないか。それ以上に問題なのは、先発企業にとってみると、形を変えた長期収載品依存体質です。さらに一物二価という問題もあるのではないかということが考えられます。このAGに関して、後ほどバイオ医薬品の話も口頭でお話ししますけれども、今、同じような問題が生じていると考えております。
 製造の問題についても2枚ほどスライドを用意しています。5ページ目を御覧いただきたいのですが、まず、医薬品の製造に関しましては、上流については原薬、その原薬を合成するための化学物質、Starting Materialsという言い方もしますけれども、出発物質から中間体・粗原薬を通して原薬が作られる。最初の化学物質は基礎的化学品、汎用品であって、いわゆる規模の経済が効くということで、中国に強く依存するという流れになってきています。ですから、この部分に関しては、サプライチェーンの脆弱性の大きな影響があるということが問題になります。
 一方、原薬から製薬会社に、場合によっては製造委託企業を使うこともありますけれども、製剤化を行います。製剤化のプロセスに移行しても、ここでも製造における脆弱性というものがあります。実際に問題として起きたのが2020年のソフトバッグ製剤、こういったものが特定の会社に依存していて、比較的規模の大きい供給不足が起きました。こちらも先ほど小黒構成員のお話にありましたけれども、特に薬価の安いジェネリック医薬品に関しては、製剤化するためのバッグあるいはアンプル、そういったものも自社で製造せずに製造が集約されているという中で、特にジェネリック医薬品におけるサプライチェーンの脆弱性の要因の一つにもなっております。
 次に、6ページを御覧いただきたいのですが、マクロに日本全体で製造キャパシティーがどうなっているのかということを様々な資料あるいはヒアリングを通して図にまとめてみました。2020年段階で日本の医療用医薬品全体の製造量というのが1700億錠個、注射剤であればアンプル1つを1個と数えていますので「錠個」という言葉を使っていますけれども、大体1700億が作られています。そのうちのおおむね半分がジェネリック医薬品でした。あとは剤形とかチャネル、市場を図にしています。
 2020年からのジェネリック医薬品の不祥事によって起きたことは、1つのところが製造できなくなるとほかのところも玉突き事故的に製造できなくなってしまう。つまり、日本全体で特に大きな影響を受けるのが長期収載品、ジェネリック医薬品ですけれども、ここでの製造キャパシティーに余力が十分ないのではないか、こういったことを踏まえて、今後、日本の産業育成ということを検討する必要があるのだろうと思います。
 7ページ目からのスライドは、先週と今週の月曜日、おとといですけれども、自民党の議連「ジェネリック医薬品の将来を考える会」で使った資料でございます。三村先生も御一緒でしたけれども、ここで発表したものを御紹介したいと思います。
 先ほど香取構成員からもお話がありましたけれども、そもそも薬価と流通の問題というのは切り離すことができないという問題意識から考えて話をしております。ただし、今日、私は特許切れ市場を中心にお話をするとしていますけれども、特に特許切れ市場においては、あまり表にこれまで出てこなかったのだけれども、非常に複雑な商取引の仕組みがある。簡単に言いますと、医薬品を買う側は、購買力を増すために共同購入組織あるいは機能というものをつくっているし、製薬会社の側も、特にジェネリック医薬品の側も、全てとは言いませんが、言い方は悪いですけれども、お行儀の悪い企業はこういった大量に購入してくれるところに価格を下げて買ってもらう、こういった行動を取っている。こういったことが起きる背景にもやはり流通・薬価制度の問題があるとは考えられますけれども、結果的にジェネリック市場においては薬価の下落が非常に激しいというような問題があるのではないかということを実際に幾つかの会社のヒアリングを通して図にしたものが8ページ以降です。
 簡単に説明しますけれども、医薬品の流通等に関しては大きく、特約店ルート、販社ルート、直販ルートというものがあります。今まで流改懇の中では特約店ルートのところは議論されてきたと思いますが、ジェネリックメーカーの多くは直販ルートを持っております。この直販ルートを使って、この後お話をする共同購入組織・機能というところと価格交渉をしています。ルール的にはこういう直販ルートにおいて価格交渉することは違反ではないわけです。
 9ページ目を御覧いただきたいと思いますが、特に薬局においては、共同購入組織という言葉は必ずしも妥当ではないかもしれませんけれども、いわゆるチェーン薬局における本部、ボランタリーチェーンやフランチャイズチェーン、あるいは薬局チェーンが自社の中に関連卸をつくったり、逆に卸が薬局をつくるというようなこともあります。こういったところがバイイングパワーを増すということで価格交渉するわけですけれども、一方で製薬企業の側、特にジェネリック医薬品の営業組織の中では、最近、新しい機能としてKey Account Manager(KAM)という機能を設置するところが増えてきています。このKAMが直接、共同購入組織と価格交渉をしている。結果的に、多くの量を買ってもらうために値段を下げている。これが全体的な価格低下の一つの原因ではないかということを考察しております。
 こういったジェネリック流通の複雑化に関しましてまとめたものが10ページ目でございます。そもそも薬価の仕組みは、公定価格の下で市場実勢価が決まる中で薬価差益がどうしても生まれてしまう。特に株式会社である薬局においては薬価差益を強く求める行動に出るのではないか、あるいは企業側も製造力を増しながら、数量シェアが80%という目標の中で価格を下げてシェア拡大を図ろうという行動を取っているのではないか、こういったところに問題があるのではないかということを考察しております。
 最後のページは、ジェネリック流通と薬価問題ですけれども、今、申し上げたようなことを踏まえて、今後、薬価制度、流通制度の改善に関して議論していったらいいのではないかということを一昨日の議連でお話をいたしました。
 口頭になって大変恐縮なのですけれども、自分で作った資料を思い出しながらお話をしますと、バイオシミラーに関しては日本で10数品目だったか、まだ少なくて、今後、バイオシミラーの普及に関して目標値をどのように設定するかというところがまず一番大きな論点になるかと思います。バイオシミラーに関しては、いわゆる化学合成のジェネリックに比べるとさらに国内産業は弱い状況で、国内で製造しているという会社は、原薬に関してはたしかゼロ社でした。20社のアンケート調査で1社もないという状況でした。
 それから、バイオシミラーに関しては、化学合成のジェネリックと違う価格設定の仕組みがありますけれども、既にバイオシミラーの中でも撤退が起きているということもあって、バイオシミラーの薬価をどうするかということも一つの問題になると思います。
 先ほど化学合成品のAGについて問題を指摘しましたけれども、バイオシミラーに関してもバイオAGと呼ばれるもの、バイオ医薬品の特許が切れて、先発・先行バイオ医薬品と同じ製法で、場合によってはというか、先行品の工場で作ったものを後発品として作っているという「バイオAG」というものが2つほど承認されております。中医協でもバイオAGに関する薬価をどうするかという議論がありましたけれども、これも化学合成のAGと同じように、今後、バイオシミラーの市場形成にゆがみをもたらす可能性がございますので、バイオAGに関する価格設定に関してもこの検討会の中でぜひ御議論いただきたいと考えております。
 ほかにもあったかと思いますが、私からは取りあえず以上とさせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。資料の不手際がありまして、申し訳ありませんでした。ジェネリックの流通は私自身あまりよく知らなかったので、大変勉強になりました。
 続きまして、菅原構成員、お願いいたします。
○菅原構成員 ありがとうございます。法政大学の菅原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 最初、事務局のほうから問題意識の共有、確認ということだったのですけれども、5分程度という話だったのですが、ちょっと論点を絞り過ぎましたので、ほかの委員の御発表も伺いながら、ほかのことも少し話をさせていただければと思います。
 まず、私の中で非常に大事だと思っているのは、今年の4月15日でしたか、衆議院の厚生労働委員会の中で、岸田首相が薬価制度の今後の在り方について質疑に答えておられます。今後の薬価制度の在り方を議論するに当たっては、基本的には皆保険制度の持続性とイノベーションの推進、この2つの両立、バランスを考えるべきだ、ここについて腐心していただきたいというような御発言がございました。ここは非常に大事だと考えております。
 冒頭、小黒先生と香取先生が、GDP、今後の経済成長の話と医療費負担あるいは薬剤費負担の関わりについて御発言がございましたけれども、これをどのように考えるべきか、私もずっと考えております。医療経済学的にいっても、医療サービス需要と所得の関係性という点では、医療サービス需要の所得弾力性が1以上というのは、先ほど香取先生がおっしゃったように、そのとおりなのです。ただ、公的保険の範囲とそれ以外の医療費というのがあるわけですから、医療費全体の総額を公的な範囲とそれ以外のところでどのように考えていくべきか、非常に大事なポイントだと思っております。
 すなわち、ほかの国に比べて我が国は少子高齢化、特に現役世代の急減ということが当然予測されているわけです。これをほかの国よりも早く我々が経験しなければいけない状況で、現役世代の負担能力の中での公的保険制度の持続性を考えた場合、その範囲でやれる医療と、それ以外のところで伸ばしていくべき医療というのがあって、総額として国民負担1以上で伸びることは全く構わないけれども、我々が将来世代に対して持続性ということを考えていくときに、アフォータブルな形で持続できる公的保険制度を考えていくということが非常に重要なポイントだと思います。
 医療費全体の中の薬剤費があるわけですから、その薬剤費をどのように使っていくか。技術革新というのが非常に大事なわけですけれども、我が国の医薬品市場の中でも本当の意味でイノベーティブなものと、正直申し上げて、ほかの国では必ずしも認可されないだろうというような特許品、俗に言う、言い方は悪いですが、ゾロ品のようなものだとか、本当に効き目、効果があるのだろうかと言われているようなものがまだ市場に存在しているのも現状かと思います。そういったものを考えながら、では我々が将来世代、つまり将来的な世代の中でも負担能力がアフォータブルな形での制度の中で考えたときに、どこに医薬品としての資源配分をしていくべきかということをきちっと議論しないといけないのだろうと根本的な問題意識を持っています。
 今日は、その中でも特に大事だと思っているイノベーションの部分、最も大事なのは新しく生まれてくるものをきちっと社会に還元して取り込んでいくということだと思いますので、現行のイノベーションの評価の現状と課題について説明させていただきたいと思います。何より大事なのは、イノベーションの果実を国民に届けるという視点です。産業政策の一環として、もちろん産業振興はあるわけですけれども、その先に国民に適切な有効性の高いものがきちんと届くことが何より大事だということは申し上げるまでもないと思います。
 では、進めさせていただきますが、2枚目のスライドです。現行の薬価制度の問題意識として、イノベーションの新薬の価値が薬価政策上、十分反映されているのかどうかということがあるかと思います。既に事務局からの資料の中にもありましたけれども、他の先進国と比較して我が国の薬価の評価のされ方が低いのではないかという問題です。
 もう一つ、私が学生の頃、今日の座長の遠藤先生から御指導いただいている頃から、正直申しまして、流通の問題もイノベーションの問題に関しても、私自身が博士課程のときに取り扱っていた問題と根本で全く何ら変わっていない。ここの議論は30年間停滞したとしか言いようがなくて、かつ、厳しい言い方ですが、おのおのの問題に対して当局が非常に誠実に対応されてきたことは間違いないのですけれども、その結果として根本的にその対応が行き着くところまで行き着いて、絞るところも全くなくなって、さらに行き着くところがないのでマイナスになってしまった。制度全体の疲労を起こしているというのが全体としての見立てとしては正しいのではないか。この検討会が立ち上がった最も重要な点というのは、先ほど来、話になっている医薬品の安定供給や中間年改定だとか、非常に大事な問題ではあるのですけれども、その先にある根本的な問題にここは議論を進めていくべきだろうと思っております。
 まず、薬価の算定がほかの国よりも十分できていないということと、現行の市場拡大再算定というところ、この制度がイノベーションの評価としては不適切ではないかという点、その結果として、残念ながら我が国の新薬開発が停滞しているということについて簡単に御説明させていただければと思います。
 既に説明されたものと重複しているものがありますので、そこは飛ばしてまいります。3枚目のスライドです。世界売上げ上位300品目というのは、俗に言う世界でもメジャーな、最も使われている薬になるかと思います。この市場の上市順位を見ていただくと、アメリカが最初に入っていて、次いで欧州、日本で最初に出してもらえているものは6%しかないということでございます。私自身も、ここのところ、多くの日本の製薬メーカーの方々とお会いしてヒアリングを行いましたけれども、残念ながら日本のメーカーのトップのCEOが、我が国で出してもいい薬価がつかないので、日本では最初に出さないということを断言されるぐらい、深刻な状況だと認識しております。
 その中でも、特に17.7%の未上市、時期不明というところがございますが、ここが大きくなってきているということです。ここは深刻で、まだ入ってくればドラッグ・ラグとして認識されるわけですけれども、そもそも入ってこなければ、ここの数字にも出てこない。つまり、ドラッグ・ロスという状況にもなりかねないので、この未承認薬の問題は非常に深刻だと思います。国民の皆さんはこの状況をほとんど知らないので、我が国の医療制度は非常にすばらしいもので、有効性と安全性が確保されているものについては全て使えるのだ、公平だと考えておりますが、一方でグローバルな視点から見れば、ほかの国では当然使われている上位300品目のうち17.7%、2割弱のものは我が国の国民は使えていないという現状をどう考えるのか、深刻に受け止めなければいけないと思います。
 4枚目のスライドでございます。先ほど申し上げた現在の薬価のつけ方、特にイノベーティブな新薬のつけ方である原価計算方式で算定された新薬について、ヨーロッパ、アメリカとの間で相対的な薬価の比較をしております。米国は自由に薬価をつけられるということもございますので、高くつくわけです。欧州、英、独、仏の価格を1という形で標準として置いて、相対的な比較をしております。もちろん外国価格の参照制度があるのですけれども、その例外規定もありますので、2.5みたいな高いところに出ているのは、除外規定に入っているものもあるということになります。見ていただくと分かるのですけれども、2016年から2021年の間で見ていただくと、我が国の原価計算方式で算定された新薬の薬価水準は欧米よりもほぼ全てが低いという状況が見てとれるかと思います。
 次に、類似薬効比較方式の1という形での加算等で評価された新薬についても行っております。これは1万円以上の薬価を比較しております。先ほどの原価計算方式に比べますと、ヨーロッパ、時にはアメリカよりも高いものが幾つか散見されますけれども、全体的な傾向としては、やはり欧米の薬価に比べて低いということが分かります。
 6枚目のスライドを御覧いただきたいのですが、確かに類似薬効比較方式の中には、私も過去の厚労省と薬価の部会でのいろんなやり取りを議事録等で確認させていただいておりますが、欧米よりもいい薬価がついていないという指摘に対して、一部、日本でも欧米を上回るものもあるというような御説明もございました。それは確かに確認されるわけですけれども、ではどういう薬が欧米よりもより高く評価されているのか、1日当たりの薬価で比較してみました。左から右へ薬価の安いものから高いものにしております。当然、比較的画期性の高いものが薬価としては高くなりますけれども、1.0よりも上に行くものはどちらかといえば薬価が低いものが多くて、高いもの、5万円以上するようなものに関しては相対的に安価に評価されているものが多そうだということが、あくまでも傾向的なものでございますけれども、見てとれるかと思います。
 以上、イノベーションの評価としての今の原価計算方式のようなやり方がいいのかどうかということについてはきちっと議論すべきこと、イノベーティブな薬の値づけについてはきちっと議論していくべきだろうという一つの確認材料でございます。
 問題意識2として、7枚目のスライドでございますが、市場拡大再算定という現行の薬価の制度についての問題意識でございます。棒グラフが2本ありますけれども、2021年と2022年の薬価改定によって、新薬価ベースで考えたときに薬剤市場として薬価の改定の効果でどのぐらい市場がシュリンクしたかというと、若干粗い試算ではあるのですが、IQVIA等のデータを使って試算すると6000億円ぐらいへこんだということが分かるわけです。この6000億円のへこみ方のうち、どこでへこんだかというのを試算してみると、市場拡大再算定の品目で20%ぐらいの割合になっているということが分かります。
 1150億円、23品目なのですけれども、何が言いたいかというと、薬価基準の中には1万4000とか1万5000の品目数があるわけですが、品目数等がそのまま該当しないまでも、特定の23製品で6000億円のうち2割の削減を導き出しているという状況が分かります。これは、保険財政の帳尻を何とか合わせるということに関しては、もちろん合目的ではあるわけですが、非常に画期的な製品、特定の23品目だけで売上げ規模に基づく調整をかけて20%程度を削減しているやり方が果たしてイノベーションを評価するという趣旨に照らして正しいのかどうかということに関しては、やはり疑念を持たざるを得ないので、ここについても議論を進めるべきだというのが私の考え方であります。
 もちろん日本の薬価制度は海外から非常に評価されている部分もあって、画期性加算や有用性加算だけではなくて、新薬創出加算などは、先ほどの香取先生のJETROの資料の中にもありましたけれども、非常に驚きを持って歓迎されたものもあったわけです。でも、結局、その後徐々に革新評価部分はどんどん減らされて、さほど魅力的でないものになってしまっているというのが現状かと思います。
 その結果として新薬開発の停滞ということをお出ししましたけれども、パイプラインの状況ですが、「前臨床含む」と書いてありますけれども、これから先どうなのかと見たときに、日本での開発はほとんど横ばいから伸びていない状況になっています。アメリカはもともと多いわけですけれども、中国あるいは韓国の数字は書いていませんが、ここ5年あるいは10年の間に、中国でいいますと数倍パイプラインはリッチになっていて、韓国も同様のデータがございます。そういった意味では、あくまでパイプラインだけの数ですけれども、日本は中国には後塵を拝していますし、韓国にもキャッチアップされる状況にあるということが分かります。
 イノベーションの部分だけを見ても非常に危機的な状況だと思います。これは今日の問題意識というよりは、これから先に議論していただきたいというイノベーションの評価の部分での核心なのですが、既に申し上げたとおり、原価計算方式を中心とするようなイノベーションの評価の在り方というのは必ず議論すべきだと思いますし、保険財政とか国家の財政というのは国内の問題ですから、それはそれでいいのですけれども、薬の話はグローバルマーケットの話ですので、いい薬を日本に持ってくるためには日本の市場を魅力的にしなければいけないということですので、他の先進国に比肩し得るような薬価算定の方法を考えるべきだと思います。
 その一方で、そういった薬価制度をつくったとするならば、冒頭に戻りますけれども、将来世代に対する持続性のある医療保険制度に対しては一種の懸念材料が生まれますので、そこについては、ある一定程度の財政措置、成長に対する調整措置があるべきではないかということを示唆させていただいております。
 それ以外に、市場拡大再算定についても全て廃止ということではなくて、リーズナブルな再算定はあっていいと思います。効能変化や用法用量変化というのは、当然、新しいマーケットを生み出して大きくするわけですから、これについては見直しがあってもいいと考えております。
 いずれにしましても、短期的に我々が議論しなければいけない喫緊の課題もありますし、中長期で考えて時間をかけて、あまりじっくりとやっている時間はないと思うのですが、根本的な議論をしなければいけない課題もありますので、そこはきちっと切り分けて議論が進むといいのではないかと考えております。
 以上でございます。
○遠藤座長 菅原構成員、どうもありがとうございました。
 引き続きまして、成川構成員からお願いしたいと思います。
○成川構成員 ありがとうございます。北里大学薬学部の成川と申します。
 資料2-5に所属を書き忘れました。私は薬学部の教員なのですが、研究領域としては、新薬の薬効評価、臨床試験のデザインや開発戦略、それにまつわるような薬事政策が中心です。今回のテーマの医療保険、薬価制度についても、結局、これが企業の行動、つまり薬を日本で上市するか否か、そのタイミングなどに大きく影響しますので、その辺りにもウイングを広げて研究をしているところです。過去には、有用性加算の加算率の定量化、ポイント制の提案をしました。また、2018年の薬価制度抜本改革が新薬の開発環境にどのような影響を与えてきているかを継続的に調査しています。今日は、それも交えながら、課題として5つほどメモ書きをしましたので、これに沿って御説明させていただきたいと思います。
 まず、1つ目です。薬価制度といいますと、特に薬剤費のコントロールというところに目が行きがちです。薬剤費といいながら、結局、単価しかコントロールしていないわけですけれど。しかし重要なのは、(1)に書いた「医薬品へのアクセス確保を通じた国民の健康の向上」ということです。そこに非常に大きな役割を果たしているという理解をしています。承認された新薬が公的医療保険で使えるようになるかどうかというアクセス環境は、OECD加盟国の中でも日本は抜群の位置づけにあります。また、(3)に書いたイノベーションの評価とか、あるいは安定した収益、そういったものによって製薬産業を育成するという役割もあると思っております。
しかし、さきほどアクセスがいいと言いましたが、実際には、新薬は薬事承認されないことには保険収載云々という議論もできません。そういう意味では、企業の方が、ある薬を日本で上市しようと思い立ってもらって、データを集めたり、いろんな作業をして承認申請してくれない以上は承認は出せませんので、その辺のところに薬価制度改革がネガティブな影響をもし与えるとすると、そこはきちんと把握していかないといけないと思っています。ただ、難しいのが、薬の臨床開発の期間というのは5年とかそれ以上かかりますので、薬価制度改革以降、実際に、日本での新薬の承認時期の遅れとか、そういった形で明確にデータとして把握できるには時間がかかるのではないかということも思っております。
 そういう意味で、いかにその前の兆しをつかむかということでいろいろ苦労しており、2ページ目の「参考1」で紹介しますような企業の方へのアンケートもしております。これは、新薬創出加算の適用を受けた品目を有する企業86社を対象にした調査です。
 Q1の近年の薬価制度見直しが研究開発や経営に影響したか、大手20社として内資・外資上位10社を別に集計しておりますけれども、全ての会社が影響しているとお答えいただいたり、ちょっと細かいですけれども、Q2でどんな算定ルールの変更が影響したかというと、やはり新薬創出等加算の見直し、中間年の薬価改定という答えが多くございました。
 3ページ目のQ3「薬価制度見直しの新薬開発への影響の詳細」では、開発中または開発を計画中の品目について日本での開発を断念あるいは保留したものがありますかと質問したところ、大手20社ですと多くの会社が「ある」または「近い将来にある可能性が高い」と答えています。Q4の投資優先度の変化では「優先度が上がった」という回答は1つもなくて、「優先度が下がった」「将来的に優先度が下がる可能性がある」というお答えが大部分でございました。
 次のページに「参考2」がございますが、これは、国際共同臨床試験に日本が参加しているかどうか、特に日本の大手10社の外資系企業が日本を組み入れているかどうかということを公表資料から分析したものです。結果を一言で言いますと、日本が参加する国際共同臨床試験というのは近年着実に伸びてきているのですが、2021年だけ見ると頭打ちというのか、停滞というのか、難しくて、あと1年、2年、データを取ってみないと何とも言えないのですけれども、少し頭打ちの状況に来ているという見方もできるので、これは今後フォローしていきたいということでございます。
 また1ページ目に戻っていただきまして、2つ目が薬価算定基準についてです。御存じのように、薬価算定ルールは2年ごとに、その間のいろんな不具合の改善などを含めて見直しをしてきているわけです。すごく真面目にというか、真摯にというか、その意味ではプロセスは踏まれていると理解するのですけれども、結果的に特例的なルールが増えて相当複雑な内容になっています。今朝、この基準のページ数を数えてみたら60ページほどありまして、特例という項目が20か所以上ありました。恐らく製薬企業の臨床開発の御担当者がこの基準を見ても、正直言って、さっぱり分からないと思いますが、幸いなことに、企業の中には薬価のことを専門に担当している方がいらっしゃいますから、そういう方からレクチャーを受けることができます。そういう方が恐らくは社内の経営陣にルールの概要説明をしているのだと思います。
 ただ、困ったことに、海外の新興バイオ企業の方々というのは、身近にレクチャーしてくれる方もいないし、質問できる人もいない。そうすると、今後、日本への投資を検討するときの材料がなかなかない。先ほどいろんなデータを見せていただきましたけれども、日本の市場がシュリンクしているというふうなネガティブな印象ばかり持たれてしまっている可能性があると思っています。実際、市場のデータというのはドルベースで出していることが多いので、最近の円安の影響をかなり受けているのではないかと思っていて、実際にはステーブルぐらいなのでしょうけれども、海外から見たらシュリンクと思われてしまっていると思いますので、そこは特に新規参入者に対する分かりやすさ、あるいは日本の魅力を伝えるようなすべをきちんと考えていく必要があるというのが2つ目のところでございます。
 3つ目ですが、私自身は、市場での価格をベースとする現在の薬価制度というのは一定程度合理性があると理解しています。資料の「参考3」を見ていただきたいのですけれども、これはちょっと古いデータなのですが、新薬として薬価収載された薬が2年に一回の薬価改定の中に入っていくわけですけれども、薬価収載された後の初回の改定のときにどれくらい薬価差があるか、薬価からの乖離状況と、薬の特徴との関係を分析したものです。
 結果のところを御覧いただくと、大方の予想どおり、類似薬効比較方式による算定品目は原価計算方式のものより乖離している。内服薬は注射剤より乖離している。市場規模が大きいもの、競合品目数が多いものもやはり乖離している。ただ、これはそれぞれ交絡しているので、重回帰分析をすると、競合品目数が多い領域のものはいろんな要因を調整しても乖離率が高いということです。解釈としては、新薬については相応の市場原理が働いているのではないかと思っていまして、言い方を変えると、新薬であっても価格でしか競争できないもの、つまり値引きしないとシェアが取れないものというのは、実勢価に基づいて薬価が下がっても仕方がないのではないかというのが私の考えであります。
 また1ページに戻っていただきます。そういった意味で、市場の価格をベースに見直された既存の類似薬に合わせて新薬の薬価をつけていくという類似薬効比較方式は多くの方が合理的だと理解いただいていると思うので、昨今、原価計算方式のいろんな問題が指摘されておりますので、類似薬効比較方式の適用範囲を拡大するということは、今後、現実的には検討の余地があるのではないかと思っています。
 ちょっと細かな話で申し訳ないですが、過去の例をひもとくと、モダリティーが違う、例えば化学合成品の薬価をつけるときにバイオ品を比較薬にして薬価をつけているものがあったり、その逆もあるし、あるいは効能・効果が違うものをまたいで薬価をつけているものもあります。将来的には、薬以外の治療法なども参照しながら、類似薬効比較方式を適用する、これと併せて有用性加算のめり張りをきちんとしていくということは検討の余地があるのではないかと思っています。
 これは理想論かもしれないですけれども、市場で評価される薬を堅く売れば、つまり、そんなに値引き要求をするなら売らないというぐらいの売り方ができるのであれば、価格は下がらない、実勢価が多少下がっても調整幅で戻ってくるというのが、いろんな流通の環境が熟せば、それが理想ではないかと思っています。そうすれば新薬創出加算などなくても、よいものは市場で評価されて価格が維持されるというふうなことを思い描いています。しかし、現実はそう簡単ではないというのも分かっているので、新薬の価値に見合った取引というのをどうやって実現するのかというのは、この場で専門の先生方の御意見も拝聴しながら、私自身も考えていきたいと思っているところでございます。
 新薬についてもう一点だけ、4つ目のところです。今後のことを考えますと、条件付早期承認制度、そういったもので画期的な新薬の承認が前倒しされます。言い換えると、承認までにその医療上の価値を十分には明らかにできないケースというのが増えてくると思います。恐らく今でもそういった品目の薬価をつけている御担当の方が苦労されているのではないかと思いますが、そういったことを考えますと、エビデンスに基づいた市販後の薬価の見直し、市販後というのは売り出して2年、3年後ぐらいのイメージですけれども、市場での価値をもう一度確認して、引上げ、引下げ、両方をより柔軟、積極的にやるという必要が出てくるのではないかと思っています。実際、今でも真の臨床的有用性加算というルールがあるのですけれども、適用基準がいま一つ曖昧ですし、恐らく5つか6つぐらいの品目しか事例がまだないのです。そういった状況もあるし、もしかしたら今後、当初の期待ほど効果が高くない、世に出てみたら期待を裏切るような薬が出てくる可能性もありますから、上げるほう、下げるほう、両方もう少し機動的にどこかのタイミングでやるということを考えてもいいのではないかということです。
 5つ目は、後発品に関係することです。いろんな先生方がおっしゃっているように、供給不安問題というのは喫緊の課題でございます。特に後発品については、安定確保医薬品などという形での重要性の指標はありますけれども、個々の製品の価値は価値としても、それ以上に医薬品の製造販売企業としての市場への責任ある供給をきちんとしてくださるのかどうかということに目を向けて、品質確保や安定供給のための体制、活動を下支えするような何か薬価上の工夫ができないのかと最近考えているところです。
 ただ、仮に一律に価格を上乗せするということをやったとしても、その利益を品質や安定供給のために回してもらえる保証はないわけです。なので、日々の品質確保、安定供給の活動を誠実にやっていただいているような会社をどうやって評価するかということを考えていく必要があると思っています。そういう意味では、新薬とは異なるアプローチで、後発品については、特に薬価改定のところは考えていく必要があるのではないかということでございます。
 以上、駆け足でしたけれども、考えていることを5点、御紹介申し上げました。ありがとうございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 続きまして、三浦構成員、よろしくお願いいたします。
○三浦構成員 三浦でございます。
 専門はマーケティングや消費者行動でして、ブランド、グローバル、デジタル、消費者情報処理とかやっております。マーケティングというのは流通とすごく関わりまして、基本的には物をつくって、そういった意味ではイノベーションにすごく関わる話なのですが、価格をつけて、広告をして、実際どこで売るか。どこで売るかというところが卸と取引するとか、小売と取引するとか、サプライチェーンとか情報システムみたいなところがありまして、そんな感じで流通とも関わっております。
 ちょうど7年前だと思いますが、三村先生が座長の流改懇に誘っていただきまして、一緒にいろいろ課題を検討させていただき、また成川先生と厚労省の科研をこの4年間一緒にやらせていただいて、先生が製品開発の主研究者で、私が分担で医薬品流通をやっております。ちょうど昨年、単品単価をやりましたので、それについてお話をさせていただければと思います。
 流通改善ガイドラインは、先ほどもお話があったものなのですけれども、医薬品流通をどういうふうに改善していくかという話です。先ほど、川上、川下というお話がありましたように、川上のメーカー、卸に関しましては、一次売差マイナスがあるので、それを解消するために適切な仕切価、割戻し(リベート)とかアローアンスをしっかりするということです。
 川下に関しましては、卸と医療機関・保険薬局に関しまして、基本的には最初なのですが、早期妥結と単品単価でしっかりやる。先ほどずっとお話がありましたが、総価でまとめて何%引きみたいな取引の横行が結構多かったものですから、単品単価にする。また、過大な値引き交渉はやめる。頻繁な価格交渉の改善は、先ほども厚労省から資料を出していただきましたけれども、半期契約、四半期契約とか何度も変えるという話がありまして、ちゃんと理由があれば、先ほどから一つのテーマになっております再算定がありますが、薬価改定がありましたら全然問題ないと思いますが、そうではないのに変更しているというのは問題があるのではないかという話もあります。そういうふうに考えますと、薬価変更がなければ、年に一回なわけですから、年間契約でもおかしくないのではないかという感じがあります。そういった意味では、川下に関しましては、単品単価契約をやることと年間契約で行うということが重要ではないかと思っております。
 次に、取引の現状です。これも先ほど御案内がありましたように、交渉段階と妥結段階に分けて厚労省が資料をしっかり作っていただきまして、交渉段階で、総価でやるか、総価で一部は単品単価みたいな除外があるのか、単品単価なのか。前の2つは総価でまとめて何%引きみたいな感じですので、除外が一部あるのですけれども、総価交渉なのか、単品単価交渉なのか。妥結段階に関しましては、総価なのか、除外ありなのか、単品単価なのか。この辺は未妥結減算制度のおかげもあるかと思いますが、妥結段階では、卸が計算してくれるようですけれども、単品単価になるということが多かったようです。下の3番、4番、5番が取引としては多いということです。
 次のスライドに行っていただきますと、今の3つなのですが、先ほどの厚労省からの資料にありましたように、カテゴリーによって違うのですけれども、99%から92%、ほとんどこの3つになります。妥結段階は多くが単品単価になっていて、交渉段階が総価ということが問題になります。したがって、3)は問題ないのですけれども、1)と2)が問題ということになります。
 1)の単品総価取引は、総価で交渉して、単品で妥結するものなのですが、全品目一律値引き、例えば全部5%引いてよみたいな感じで一律値引きです。あと、カテゴリー別、例えば新薬と長期収載品と後発品に分けて、新薬5%、長期収載品7%、後発品10%とか、そういったカテゴリー別でやるということも結構多いようです。メーカー別というのが一部ありまして、メーカーによってこのメーカーは何%引きみたいな話もあるようでした。
 2)は、基本的には単品総価取引で同じような形なのですけれども、「除外あり」というのが大きな特徴になっております。すなわち、1)の場合には全品目、カテゴリー別であろうと何であろうと総価交渉するわけですが、2)の場合には基本は総価交渉ですけれども、一部は単品交渉をするということです。
 どういったものを除外品目にするかということなのですが、オーファンドラッグ、そういったものはまだいいのですけれども、問題となっておりますのが1社流通品、価格管理品目というものです。4大卸、5大卸というと、どの製品でも全ての卸と取引ができるのが一般的なのですけれども、1社流通品というのは、特定の卸からしか買えない。それは結構大変だということです。
 価格管理品目というのがインタビューしていると結構出てまいります。会社によって、管理品目、リクエスト品、ロック品、いろんな名称を使っているそうなのですが、基本的な考え方としましては、卸が値下げに応じない、応じないというときつ過ぎますが、応じたくない品目です。流通では買い手のほうが強いのが一般的ですから、保険薬局から「安くして」というのが卸に来るわけですが、それに対して卸がこれは値下げしたくないというものに関しましては、単品で交渉するようなのです。そのほかはまとめて何%引きみたいな感じなのですが、特別にまとめて十把一からげで5%とかできなくて、これはあまり引かないという製品のようでした。実際、仕切価で提示される場合もあるようで、メーカーから仕切価で買って、それをそのまま保険薬局に仕切価で売る。一次売差ゼロということもあるようでして、そういったものを分けてやるという話でした。
 私、インタビューも全然足りていない状況なのですが、感覚としましては、価格管理品目を除いた総価交渉というのが結構ありそうでして、卸だけではなくて恐らくメーカーから指定が来ている可能性もあると思われますが、メーカーとしても薬価を下げたくない、納入価を下げたくないという決定的なところがありますので、そういった意味では、卸だけではなくてメーカーから指示もあるのではないかと類推できます。メーカーにとって大事な品目、価格管理品目を除いた総価交渉をしているところが結構あるのではないかと思われました。
 次のスライドに参りますと、単品単価取引の割合ということです。厚労省の調査で、先ほどもありましたけれども、単品単価取引の割合は、医療機関では200床以上で45%ということで、半数以上が総価交渉になっている感じです。調剤薬局チェーンは、さらに数字が悪くなって、20店舗以上の大手なのですが、20%しか単品単価をしていない。8割はしていないわけです。医療機関も薬局チェーンも小さいところは割とちゃんとされている状況がありまして、交渉力が強い大手の場合、医療機関でも調剤薬局チェーンでも単品単価をしないで総価で交渉していることが多いと思われます。
 次のスライドに行っていただきまして、何でそんなことになるかということです。去年、成川先生と一緒に厚労科研の調査をさせていただいたのですけれども、私のほうの調査に関しましては、卸と保険薬局、川下取引の双方に対して、卸連と保険薬局のNPhAの何社かに回答していただきました。
 卸と保険薬局ではかなり違いがございまして、卸の側には、取引先が総価でしか応じない、自分はやってもいいのだけれども、保険薬局が総価でやってくれというので応じているというのが9割とかなり多くて、その一方で保険薬局はちょっと違いまして、一品目ずつの単価設定に労力がかかる、これが決定的な一つのポイントと、全体の何%引きという総価交渉のほうが利益率が出しやすい。
 実際、薬局の方のお話を伺うと、品目が1000とか2000とかあると単品単価はとてもやり切れないと言うことですし、ある病院の先生も、単品単価を一病院でやるのは大変だというお話をされていました。そういうふうに考えますと、単品単価は、品目数が多い中でやるのは大変だというのがまず一つあります。
 2つ目の〇%引きという話ですが、特に保険薬局などはビジネスとしてやられていますので、単品単価でやっていくと最終的に利益率が幾らになるか分からない。その一方で、最初から〇%引きを目指してやると経営計画を立てやすいような感じもありまして、保険薬局側としては単品単価はやらないという話になっておりました。
 それに対してどうすればいいかということですけれども、なかなか簡単にはいかないと思うのですが、ちょっと考えてみましたので、御批判いただければと思います。
 次のスライド、解決策の単品単価という話ですが、まず、小規模の医療機関・保険薬局に関しましては、小規模組織では基本的に単品単価は無理だという感じがしております。実際、数がすごく多くて、それ以外の業務をたくさんやらないと駄目な中で無理だということで、1000とか2000品目あるのをなかなかやり切れないという話があります。セブンイレブンは1店舗3000品目と言われていますけれども、大手だからできるわけで、情報システムとかをつくれるある程度の規模がないと無理でして、単店とか少ない店舗の薬局や診療所は不可能に近いのではないかという感じがしております。
 したがって、価格交渉代行業者というのがいい面でも悪い面でもクローズアップされておりますけれども、単品単価を行う会社もあるわけです。ある価格代行業者は、昨年の厚労科研のときにもインタビューさせていただきました。価格交渉代行業者は大手が5社ぐらいあるわけですが、その会社だけが唯一、単品単価をしておりまして、あとの4社は、資料を見せていただきましたが、カテゴリー別の総価交渉をしているというお話をされていました。この会社は単品単価をやっていますので、そういった意味では、いいのではないかとすごく単純に思いました。
 この会社は、自社のオリジナルの薬局が400店舗ぐらいありまして、あと、個店の薬局を全部で7000店持っていまして、薬局6万店と言われる中でかなり多くの部分を単品単価で進めていただいている感じがあります。そうしないと、多分、個店の薬局とか、小さな病院、診療所では能力的に不可能ではないかという感じがいたしました。価格交渉代行業者もいろいろありまして、価格を安くするだけとか、総価交渉をどんどんするとか、あまりよくないようなところ、ちょっと言い方は悪いですが、流通改善ガイドラインに合っていないところも結構ありますので、そういうところではなくて、ちゃんと流通改善ガイドラインに合わせてやっていただいているところは、いろいろ協力できるところがあるのかなという感じがしております。
 ある程度以上の規模の医療機関・保険薬局のところ、保険薬局チェーンで単品単価を行っているのは少なくて、ある保険薬局チェーンはやられていますが、流改懇でも大手だったらできないことはないが、結構大変だというお話はされていました。ただ、やらない方も8割と多いわけで、そういうふうに考えると単品単価のためには何らかの制度化が必要ではないかと思いました。医療機関は、私も分からないことが多くて恐縮なのですけれども、何らかの制度化とか、単品単価を行う価格代行業者とか、そういった機関との協力も必要ではないかと思いました。
 次のスライドに進みまして、年間契約のところです。単品単価に関しましては、薬価調査の信頼性確保のためにも年間契約が必要ではないかという感じがしております。未妥結減算制度のおかげで9月に妥結するわけですけれども、それに基づいて薬価調査が行われるわけですが、その後、保険薬局からの値引き要求などもありまして、納入価は下がっている可能性があるわけです。そういうふうに考えますと、せっかく薬価調査を、あれだけ大変なことをやっていただいているわけですけれども、信頼性確保という大きな名目もありますので、薬剤の価値というお話をメーカーの方もされているわけですし、卸もされているわけですから、そういった意味では、薬剤の価値は薬価で決まっているということを考えると、それに基づいて年間契約をするというのは筋が通っているという感じがいたしました。年間契約のためには未妥結減算制度のように制度化というのができればいいと思っております。例えば、薬価改定がない限り認めないとか、単純な話で恐縮なのですが、そのぐらいの方向性があってもいいかなと思いました。
 参考で、期中で妥結価格を変更した場合というのが厚労科研でさせていただいた調査なのですが、期中の薬価改定というのが、再算定、先ほどからいろんなことが問題点も含めて言われているわけですが、保険薬局や卸が多くて、これは基本的には薬価が変わっているわけですから全く問題ないと思うのですけれども、取引先からの値引き要求というのが卸では94%、したがって、一応、未妥結減算で決めるけれども、その後に保険薬局から値引きしてくれという話が結構来る。その結果、下期は価格交渉をもう一回しないと駄目だということもあるような感じがいたしました。
 次に、メーカーの一次売差マイナス、仕切価の問題とも関わってきているのではないかという感じがいたしました。一次売差マイナスということの意識なのですけれども、これも2019年だったと思うのですが、成川先生と4年ぐらいさせていただいていて、メーカー、卸、薬局のインタビューをさせていただきました。どの辺が重要かといった場合に、一次売差マイナスはそれほど重視されていない印象が、肌感覚なのですが、ありました。実際、卸としては最終的に割戻しやアローアンスがありますので、逆ざやが解消しているわけです。そういった意味では、一見、一次売差マイナスで逆ざやみたいに見えるけれども、最終的には割戻しやアローアンスがあるので、結果オーライだという感覚を持たれているのかなという感じがいたしました。
 これは厚労省から頂いた資料のどこかから持ってきて、先ほど似たような資料もございましたけれども、基本的にはこんな感じです。メーカーは、原価に研究開発費、販管費、利益を乗せて卸に売って、卸はそこに販管費や営業費用、利益を乗せて、それを納入価として医療機関・薬局に売る。薬価差と言われますが、これは普通の流通を考えると正当な小売マージンという感じがいたしますけれども、卸から預かって在庫して販売しているわけですから、小売マージンの量は少なくてもいいかもしれないのですが、普通だと思います。これが一般的な流通の流れです。
 その中で仕切価が分かりにくい感じがいたしました。仕切価というのは、納入価より高くて、それだけだったら売差マイナスの逆ざやが出てしまうわけですが、最終的にアローアンスや割戻しとかで戻るということです。仕切価が何か変だなと、これは三村先生が昔から御研究されているので、いろいろ御批判も頂けると思うのですが、仕切価をどう考えるか、考えさせていただければと思いました。
 次のページに参りまして、仕切価の問題点を書きました。流通構造の中で、私たちは一部しか払っておりませんけれども、最終小売価格が薬価で、卸売価格が納入価、メーカーの出荷価格というのが最終的には仕切価から割戻しとアローアンスを引いたものになるかと思います。そういった意味では、最終的なメーカーからの出荷価格は仕切価とは違うわけですので、仕切価はあまり意味がないのではないかという感じがしました。基本的にメーカーの戦略としましては、仕切価を高止まりさせて、後づけで割戻しなどで卸をコントロールしているような印象がありました。卸は割戻しなどを値引き原資にしているわけでして、その結果、メーカーから買った仕切価をそのまま小薬局に納入価としているというのが、結構あるというお話を聞きました。交渉力の弱いところには仕切価でそのまま買わせるような話がありました。
 そういうふうに考えますと、仕切価というのは卸にとっては目安の価格みたいでして、損しない価格というか、間接費とかもちろんあるわけですが、買った値段で売っていれば一応損はしないということになります。そういった事例もあると聞きました。
 国公立病院はその中間ということで、大手調剤チェーンというのがその反対なのですけれども、割戻し等で低納入価にしている。これは、先ほどもありましたけれども、交渉力が全然違いますので、大手調剤チェーンとか私立病院に対しては、ベンチマークなども入れているような話もお聞きしますけれども、そういったところには割戻しやアローアンスを使って低納入価にする。国公立病院は、多分、その中間ではないかという感じがあります。
 最後にまとめますと、単品単価というのが流通改善ガイドラインでも言われていまして、重要なところです。保険薬局に関しまして、まず小規模に関しては単品単価を行う価格代行業者を利用することも一つの案として検討することが必要と思いました。大規模なところは自助努力で、ある保険薬局チェーンはやられているわけですけれども、ただ、制度化のためには報酬か制裁みたいなことが、いわゆるアメとムチという話なのですが、未妥結減算みたいに点数が下がるとか、プラスのほうで、例えば単品単価でやられているならば技術料を上げるとか、やはり報酬と制裁(サンクション)というか、両方を考えることが必要かと思いました。
 制度化というのは簡単にいかない難しいところなのですが、その一方で、もし可能だったら、年間契約というのは割と早めに手をつけられるような感じがいたしまして、年間契約を必須とするというのは一つの方向性として考えていいかなという感じがします。薬価改定、再算定はもちろん認めるわけですが、それ以外に関しましては、薬価は今、1年間決まっているわけですから、そういうふうに考えると価値は変わらないということで、価格変更は認めないということはありかなと思いました。
 医療機関は、私もインタビューできていないですが、上記に準じまして、卸に関しましては、単品単価移行への問題点は少ないような感じがしました。アンケートやインタビューしましても、やろうと思えばできる、ただ、あまり自発的にはやられない感じがありまして、現状でいいかなと。仕切価というのはメーカーがつくった価格ですから、自分でプライシングされていない、言葉が失礼になりますけれども、仕切価を基にして、それで小規模のところにはそのまま、大規模のところにはリベート、アローアンスを考えて低納入価にしているというのは、価格づけが割とメーカーに依存している感じもございます。そういった意味では、今のシステムをつくられて仕切価も長いようですので、現状でもいいと思われているような感じかもしれません。
 これは変な私見で恐縮なのですが、メーカーは、仕切価の提示をやめるのは簡単にはいかないかもしれませんが、OTCとか普通の一般商品のように出荷価格に変更するというのも将来的な可能性としてはあるかなと思いました。それを買い入れた卸が、流改懇でもどういったアローアンスが必要かみたいなところで検討を進めていらっしゃるわけですけれども、物流コストをどのぐらいにすべきか、研究もされていると思いますので、そこに透明な定量的な物流コストと利益マージンをオンして、それを納入価としていく。簡単にはいかないと思っていますが、普通の業界と同じような形もあり得るのかなと思います。
 感覚なのですが、仕切価をやめない限り一次売差マイナスは永遠に変わらないという感じがしております。それは先ほどのお話なのですが、仕切価で買った卸は、それを基準にしているのではないかと思っておりまして、そこは天井ですね。交渉力の弱いところには仕切価からあまり減らさずに、その一方で交渉力の高いところに対しては仕切価よりかなり売差マイナス、リベート、アローアンスを使ってやられているわけですので、必ず仕切価より下げることは間違いないわけです。そういうふうに考えると、仕切価がある限り一次売差マイナスがあるということで、例えば仕切価をやめるというのも一つの考え方としてはあり得ると思いました。
 まとめ的な感じで恐縮ですけれども、川下の納入価は単品単価にするということが、今、言われているわけですけれども、そのためには、川上の出荷価格、川上のメーカーから卸への出荷価格を透明な単品単価にすることが必要ではないかという感じがいたします。
 去年12月の流改懇で、最近、仕切価が下がらないということを批判される方がおり、それに「薬価の改定率に合わせて9割の商品は仕切価を下げています」という話をされていました。そういった意味では、仕切価が仮に7%下がったら薬価が7%下がって、9割は仕切価も7%下げていますということなのですが、そういうふうに考えると、薬価があれば仕切価の9割は不必要ではないか。仕切価というのは、ある程度の卸の価格づけの、納入価の交渉の参考価格に挙がっているみたいなのですが、それぞれに合わせた、単に薬価連動で9割決まっているのでしたら、意味がどれだけあるのかという感じがいたしました。そういうふうに考えると、仕切価の問題を考えていくことも必要ではないかという感じがいたしました。
 以上、いろいろ御批判を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、三村先生、よろしくお願いいたします。
○三村構成員 ありがとうございます。
 既に流通の取引問題につきましては、厚労省のほうから詳しい資料もございますし、単品単価取引につきましては、三浦先生から丁寧に御説明を頂きましたので、私のほうからは、ある意味で今回の検討会の出発点である、まさに今の医薬品の供給システムと薬価制度の関連で起こっている危機について、そしてその危機をどう考えるかということについて御説明したいと思います。
 先ほど既に新薬の問題につきまして、日本の新薬開発力の低下、まさに国際的な日本の医薬品産業のポジションの低下という非常に厳しい御指摘があり、これが恐らく第一の危機だと思います。もう一つの危機は、先ほど坂巻先生からも御説明がありましたけれども、後発薬の供給不足という問題、そしてこれがこの3年間、医薬品流通を大変苦しめてきたということであります。なぜそういうことが起こったのか、それに対して一体どういったことが必要なのかということにつきまして、意見をさせていただきたいと思います。
 まず、第一に、先ほどいろいろな取引問題とか流改懇の議論を御説明いただきました結果、医薬品流通は非常に特殊である、何かとんでもない流通であるというようなイメージを持たれたかもしれませんが、そうではないということを先に御説明しておきたいと思います。
 なぜ流通が存在するのかということですが、基本的に需要と供給を調整し、商流と物流と情報流、この3つフローを通して需要と供給の懸隔を架橋していく、そういう仕組みです。ただ、なぜ日本において卸流通があるのかということなのですが、中間業者を介在させた需給調整がこれまで非常に有効に機能したということです。多品種多品目、小ロットの品ぞろえが必要であること、さらにこの点については後発薬問題と関係いたしますけれども、品目数が非常に多くなってきたこと、もう一つはまさに医薬分業の結果でもありますが、配送先、供給先の数が非常に増えてきているということです。
 そして、卸が保有する中間在庫によって需給の調整が行われます。日本の卸は自己リスクで中間在庫を保有しております。そうすることによって、基本的には欠品を防止する、あるいは補充発注に対して対応するということをやってきたわけです。そのことを前提とした重要な卸機能がリスク負担ということなのですが、代金回収のリスクも、在庫リスクも負担しながら毛細血管型供給システムを担う。この供給システムは非常にきめ細かいものです。離島から、あるいは僻地山間部まで含めて、全て必要な所に必要な医薬品が確実に届く仕組みがつくられてきたということです。
 この医薬品流通が特殊であるかどうかということですが、一つは制度的要件から特殊な要素が出てまいります。もう一つ、通常の日用雑貨あるいは一般的な食品流通との大きな違いは、明らかに日本の皆保険制度を担う、つまり社会的な供給を担う全機能卸であるということです。
 安定供給を担うということなのですが、例えば注文が来たときには必ず届けなければいけない、薬価収載された医薬品は基本的にはそれを扱うということを前提にしているということです。ただ、安定的な状況であればこれはそれほど問題ではなく、いろいろ取引問題はあるとしても十分に卸の機能は発揮されてまいりました。しかしながら、グローバルサプライチェーン分断リスクあるいは後発薬供給不足という、この2~3年、生じた危機的状況の下において、卸売業の役割は何か、何ができるかということを問われることになってきたと感じます。
 もう一つ、特に2011年の東日本大震災以降、非常に大規模な災害とか洪水が多発しています。その中で、ある意味では日本の医薬品供給のすばらしさだと思うのですけれども、被災地に必ず医薬品が届いているということです。よく日本の医薬品供給は非効率であり、卸流通ではなくて専門の物流企業に任せてもいいではないか、サードパーティー・ロジスティクスでもいいではないかという議論もあります。しかし、日本の医薬品流通は、緊急事態を含め、山間僻地への供給も含めて、あらゆる状況に対応するということでありますから、もともと非効率を抱え込んだ流通です。この点については強調しておきたいと思います。
 そこで、流通問題ということで、取引流通の改善ということなのですが、先ほど菅原先生から大学院で研究されたときと変わっていないではないかというような厳しい御指摘がございました。ただ、私は約20年間この分野に関係でしてきましたが、その内容は実は大きく変わってきております。そのことを理解していただく必要があると思います。
 医薬品流通は、基本的には薬価制度の下で、公的な薬価を上限とした中で、医薬品流通取引、競争、価格交渉が行われている、そこには必然的に歪みが生じるということです。日本の薬価制度は、市場原理を組み込んだハイブリッド方式という、ある意味では非常に奇妙な方式であるかもしれませんし、日本独特であるかもしれません。そういう形の中で、歪の調整の努力をして何とか機能させてきました。
 ただ、近年、中間年の薬価改定あるいは連続的な薬価引下げの下で価格交渉の歪がだんだんと堆積して、調整の限界を超えてきたという感じがいたします。また、総価取引、未妥結・仮納入、一次売差マイナスという問題ですけれども、相当なところについては改善の努力が行われてきました。90年代の議論を前提として考えたときには、その問題について、先ほど厚労省からいろいろ資料を出していただきましたが、あれほど明確に情報が整理され分析されたことはなかったと思います。
 さらに改善の努力がどういう形で行われたかということですが、先ほどの除外という言葉に意味があります。つまり除外というのは、基本的に商品特性が異なるものを別の取引体系にしたいとの意図で設けられたのですが、残念ながら、除外という概念が明確に定義されルール化されていないところに問題があると思います。総価取引除外ありというのは、最終的に単品単価取引を一つの目標としながら、それに向けて少しずつステップを踏んでいくための方法として出てきたということです。
 ただ、医薬品供給においてシステムの在り方を大きく規定しているのは医薬分業であります。そこにおいて配送問題が出てまいりました。医薬分業に伴い、卸の取引先はタイプが分化し、卸サービスの在り方が多様化しました。さらに、多頻度小口配送、緊急配送とか、卸に対して要請される物流サービスが増えています。流改懇の場で、これについては当然コストを伴うものであることから、取引交渉においてぜひ考慮した交渉を行って欲しいとお願いしてきたのですが、残念ながら、流通コストを精査し、明示し、価格交渉を行っていくことができにくい状態です。そのような中で、近年、むしろ安定供給に必要な流通コストを考慮しない値引き交渉が広がってきている可能性があることについては、やはり問題と考えております。
 これに加えて、さらに大きな問題が、2010年以降表面化してまいりました。これは、基本的にはカテゴリーチェンジと言われる問題であり、非常に先進的な医薬品、例えば新薬創出加算品よりも、さらにもう一段先端的な医薬品と、いわゆる長期収載品と後発薬、あるいは基礎的医薬品を含めてということなのですが、非常に特性の異なる医薬品が流通取引の現場で混在してきたということです。もちろんそれぞれについて合理的な取引の形態があるのですが、それらが薬価制度の下の流通で共存しているあるいは混在しているという状況がいろいろ形でひずみを生んできたという感じがいたします。
 特に、後発薬がこの10年間、80%目標という方針の下で急速に推進されてきたことも、ある意味でひずみを拡大させたと思います。非常に低薬価である、例えば最低薬価が1錠5.9円とか、そして品目数が急増する。これは坂巻先生が御指摘のとおりです。なぜこれほど品目数が多いのかということについても問題にすべきという感じがいたしますが、多くのメーカー品が混在する過程で流通負荷が非常に増大しているということを指摘しておきたいと思います。
 一方で、特殊な医薬品、スペシャルティドラッグとメーカーの方は呼んでいらっしゃいますが、特殊な医薬品が増加しています。それは患者数が非常に限定され、流通段階を含めた特殊な品質管理が必要であり、患者個別対応が必要であり、厳格な在庫管理や超低温管理が必要であり、有効期限の短さ、納品時間の制限、高価格を特徴とする医薬品です。流通論の観点から言いますと、このような商品には流通設計が異なります。流通の仕組みが変わるということ。それらを全部まとめて流通取引問題として検討しなければならないところに矛盾を感じてきました。それだけ大きく、商品の分野ごとの特徴、商品特性、市場特性が違うものが混在し、さらに差が広がってきたという感じです。
 そこに坂巻先生がご指摘のように、後発薬市場における激しいシェア競争があります。中間年改定を含めた薬価引下げ圧力の中でメーカーも卸も体力が限界まで来ている。まさにそれが流通取引問題の悪化に結びついていると思います。
 もう一つ、今日の議論の焦点の一つですが、経済安全保障上の観点からの供給不安問題があります。後発薬は、薬価あるいは全体的な薬剤費の引下げの手段として位置づけられているところがあり、かつ、価格競争の手段であるという感じがありました。後発薬の供給に関しては丁寧にその現状を見ることはなかった。あるいは後発薬における産業構造的な特徴とか供給構造についてしっかり目配りすることがないままで来たのではないかと思います。多くの関係者が後発薬の供給不安問題に改めてびっくりしたとおっしゃるのは、そういう形で問題が隠されていたということではないでしょうか。
 2019年のセファゾリンの不足問題を一つのきっかけとして、さらに日医工や小林化工等の問題もあり、欠品が多発し、3000品目から4000品目、アイテム数からするとその倍はあるいう欠品、そして混乱が非常に長期化し、卸も、医療現場にも大きな負荷が生じています。さらに問題なのは、この混乱がなかなか収束しない。混乱の長期化ということがもっと深刻な問題ではなかろうかと思います。
 総括しますと、こういった重大な理由による供給不足、出荷調整を要する品目に関しては、医薬品サプライチェーン全体の問題として考えるべきです。これは流通とか物流とかの議論ではなく、サプライチェーンとして川上から川中、川下まで、さらに原薬や原料の段階まで含めて全体をサプライチェーンとして分析していくということがこの分野では非常に弱かったと思っています。それは、価格交渉ということが前面に出ているためですが、サプライチェーン全体の問題として捉えたときに、初めて供給不安、欠品、そして在庫偏在という言葉が出てくるのです。
 在庫偏在がなぜ起こったのか、それをどのようにして収束させるかとなりますと、社会的な需給調整の必要性があります。それには供給リスク情報を企業間が共有する。サプライチェーン全体として共有する。それに迅速に対応できるためのルール化が必要である。そのための仕組みの制度化が必要であると思います。
 ただ、2019年のセファゾリンの問題以降、厚労省で安定確保医薬品というものについて非常にいい議論を積み重ねていただいたと思います。特に重要なのは、各医学会に声をかけて、医療現場の視点から重要な医薬品を抽出していただき、さらにその中でA、B、Cとランクづけまでしていただいた、こういうことは初めてではないかと思います。そして、安定確保医薬品を制度化していく上におきましては、社会的調整の仕組みを具体化していく。ただ、残念ながら、それをうまく動かしていくためのルールとか、そのための法制度とかについての議論がまだないことが問題ではないかと思います。
 特に後発薬の問題につきましては、その中で特に重要な医薬品、あるいは基礎的医薬品、あるいは長期収載品を含めてということですが、これは絶対に欠品してはいけないという医薬品に関しては、サプライチェーン全体としての情報共有と問題解決の仕組みづくりをするべきです。厚労省のほうで、昨年、医薬品の供給不足スキームをつくっていただいていますが、それの実効性を高める措置を急いでいただきたいと思います。
 薬価制度を検討していく上で、3点だけ申し上げたいと思います。
 まず、これは坂巻先生も恐らく同意してくださると思いますが、市場特性、流通特性の違いを前提にして、薬価制度上において、例えば後発薬、あるいは非特許薬と特許薬とを区分けしていくということ、いろいろなやり方があるかと思いますけれども、取扱いを分離し工夫していくことが必要ではないかと思います。先ほどの単品単価交渉がなぜあれほどまで混沌としているかという話ですが、そういう区分けしていく過程で薬価交渉が透明化していく可能性がありますし、何よりも現場での価格交渉の負荷を下げていく必要があると思います。私は先ほどの三浦先生の意見と少し違うところがございまして、価格代行業者の介在については価格交渉の透明化の視点から必ずしも適切ではないと思っております。その前提として価格交渉の透明性を高めることと負荷を下げること、そのために何らかの措置が必要だろうと思います。
 2点目ですが、後発薬というか、そこには長期収載品も含んでいいと思いますが、その供給安定化、健全化のための総合的施策が必要であるということです。特に後発薬については、非常に重要な医薬品において供給全体の採算割れの状態が放置されているということはあってはならないことですし、合理的根拠で最低薬価の見直し、引上げということが必要であると。何よりも今の後発薬が、放っておいても膨張していく品目数、これは品質安全とか供給負荷の軽減のために適正化を考えるべきだと思います。
 3点目は、経済安全保障法制度との関連であります。緊急時に迅速に対応できる医薬品供給スキームの制度化、これはやはり厚労省がイニシアチブを持ってつくっていただくことが必要だと思います。安定確保医薬品と重篤な疾患に対応する重要医薬品のきちんとした品目指定を行うこと、緊急時に企業間情報の共有を可能にすること、薬価の特別措置があってもいいということ、原薬・原料段階までを含むサプライチェーンのリスク情報収集と分析を国と企業が行い、それを一つの仕組みとしていくこと、国と企業がリスク情報を共有していくことではないかと思います。
 さらに、ここまで来たらということなのですが、重要医薬品という枠組みを設定したときには、メーカーと卸が必要なサプライチェーン情報をある程度共有する、つまり、情報の一元化の仕組みをつくっていくことが必要ではないかと感じます。ただ、これにつきましては、既にメーカーと卸が有している情報流通基盤を使えるということです。そして、国がそれに対してきちんと関与し、中立的な第三者が運営するということにするならば、在庫が偏在する、在庫がどこにあるかが分からないという状況は解消されると思います。
 私が今、申し上げていることは、薬価制度そのものの根幹をどうするかということではなくて、薬価制度の中で解決できない問題についてはきちんとした対応をしていくことが必要ではないかということです。ありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 残りの時間も少なくなっておりますけれども、私も一構成員として一言お話をさせていただいて、その後、皆さんとディスカッションを時間がある限りさせていただきたいと思います。時間がありませんので、簡潔に申し上げます。
 私がここで申し上げたいことは、既に皆様がお話しされている内容、すなわち日本の薬価基準制度の制度改革が非常に頻回であり、かつ複雑化している。そのことが日本のマーケットの将来性を非常に不確実にしている。その辺のところ話ししたいということが1つ目であります。
 もう一つは、医薬品の経済安全保障をどう考えるのか。すなわち世界でイノベーティブな医薬品をできるだけ迅速に日本で上市してもらう、いわゆるドラッグ・ラグ解消という文脈で捉える話なのか、あるいは日本のメーカーの今後の国際競争力を増強する、そういう意味合いなのか、どちらもイノベーションという言葉で統一されてしまうので、違う意味合いなのですけれども、そこのところを分けて議論しないと、薬価制度で対応できるものとそうでないものがあるということを後半でお話ししたいと思います。
 前半につきまして、資料の2ページ目、これは中医協に出された資料を私がいろいろと改変したものですけれども、基本的に2010年以降、様々な制度改革が行われました。もちろんそれ以前にも行われていたのですが、大きな構造の変化はなくて、加算率を変えるとか、そういう対応だったわけであります。2010年に、特にポイントになりますのは「新薬創出・適応外薬等解消加算」が導入されたことです。一定の条件の下で、薬価が上市後も下がらないというような仕組み、これは業界団体が非常に強く求めていたものであります。これを入れたことを皮切りにその後もろもろのものが出てまいります。
 これにはいろいろな理由があります。例えば、新薬創出加算のような制度を導入してみたけれども、いろんな問題もあるので、さらに厳しくしていったとか、それぞれいろいろなものがあります。新しい高額薬剤が出てきたために、その対応が必要になったということもあります。この資料の赤字のところは構造的に新しいもの、これまでの概念とは違う仕組みを入れたというものであります。これと同時に、黒字のところでは、加算率等については2年に一回変えていく、これまでどおりの改変も行われてきたということであります。これらの構造的な変更と部分的変更が非常に短期間の間に行われたということが市場の不確実性を高めたということになると思います。これらのことは、様々な課題が発生したので、それに対して適切な対応を取ってきたということなのですけれども、部分均衡は図れたのですが、全体として見ると方向性がどうなっているのか、ブレーキとアクセルのどっちを踏んでいるのか、その辺のところがよく見えなくなってきているというところがある。それが一つのポイントになると思うわけです。
 次のページは、薬価基準制度においてイノベーションとして評価する場合に、この項目ではこれが入り、こっちの項目ではこれが入らないということが、分類表を作らなければ分からないというぐらいに制度が複雑になっている、そういう意味合いで示しました。
 もう一つの話は日本企業の競争力促進についてです。この表は類似薬効比較方式と原価計算方式で外資企業と日本企業を分けて新薬の加算状況について数字を入れております。これまで日本のマーケットは魅力的でないというような議論がされたのですが、ここでは視点を変えて日本企業と外資企業との比較を見てみたわけです。といいますのは、もし経済安全保障の議論の中で、今後、日本企業の開発力の強化のための施策が視野に入るということになると、では外資企業と日本企業との彼我の差はどうなのかを議論しなければいけないということです。この表は新薬の保険収載の際、中医協に示された資料から数字を拾ったものです。
 数字が間違っているかもしれませんけれども、新薬創出加算の対象、費用対効果の対象などにされるもののほうがイノベーティブな医薬品というふうに言えます。ざっと見てみますと、外資企業のほうが大きいということで、現状は、日本の薬価基準制度の中では外資企業のほうがイノベーションを評価する加算の恩恵を受けている、こういう見方もできるわけです。それでは薬価制度によって日本企業の開発力強化を図ることが可能かというと、それは難しいのではなかろうかと思います。これは別な施策でやる話であろうと考えます。日本の薬価基準制度、すなわち公的医療保険制度というのは基本的に内資、外資の差はつけないということであります。もともと制度的には世界で最も有効性の高いものを国民にアクセスするような環境をつくるというのが仕組みの本質でありますし、また、貿易という視点から考えたときに、内資、外資で何らかの差をつけるというのはフェアトレード上問題になりますから、非関税障壁だという話になってしまいますので、これもできない話であります。現行の薬価基準制度では開発力のある外資企業にイノベーション評価の果実の多くが行ってしまっているわけですので、薬価基準制度によってどういうふうにすれば日本企業の開発力の強化につなげられるかというと、なかなか難しいパズルを解くことになります。
 直接的ではないけれども、間接的にできないことはないのであって、イノベーティブな医薬品の点数を高くして、そうでないものは低くするという現状の仕組みでもイノベーションは誘発されます。かつて加算率に大きな差をつけた結果、日本企業が革新性の低い新薬では生き残れない環境を作って、いわゆるゾロ新からピカ新への移行ができたという実績はあります。けれども、バイオ薬など新技術において彼我の差が結構ある現状において今後それをやったときに、果たして日本企業の競争力向上のプラスになるのかどうか、あまり革新性のない医薬品の価格を大きく引き下げてイノベーションの原資を減らしてしまうということにもなりかねないので、そこら辺は非常に難しい話ではなかろうかということです。日本企業の競争力向上の話は薬価基準制度ではなく、むしろベンチャーの育成、産学協同、税制、そういう別な施策で対応する話ではなかろうかと私は思っております。
 以上でございます。
 あと5分ぐらいになりました。皆様方からいろいろと御意見を承りましたけれども、何か追加で御意見ございますでしょうか。ほかの方の御意見を聞いて、賛同、批判も含めてよろしいかと思いますけれども、御遠慮なく。菅原構成員、お願いいたします。
○菅原構成員 医薬品流通の話、特に後発医薬品の流通や卸の話もたくさん聞かせていただいて大変勉強になったのですけれども、流通の問題を考えると、よく言われますが、それこそ城審議官もどこかで書かれているようですけれども、水を富士山の上で買うのと一般のところで買うのでは、要するに流通コストが違うので、値段が違うのは当然だと、一般国民も当然そういうふうに思っているわけです。薬についても、ユニバーサルサービスでそれを届けなければいけないので、僻地だとか輸送が難しいところ、あるいは先ほど三村先生もおっしゃっていましたけれども、非常に運搬が難しいもの、そういった条件の差が当然あると思うのです。
 今、こういった議論をするときに、そもそもどうやったって流通コストが難しい、なかなか採算が取れない地域、そういったところがどの辺りにどの程度あって、そうではないところがどの程度あるのかというところの情報がよく分からないのです。恐らくは全体をマージして、足りないところをお互い融通し合ってどうにかしているという状況だと思うのですが、これから先、議論するときに、現状というか、どういうエリアでどれぐらいのものが完全に不採算になっているのか、そうではないところはどれぐらいあるのか、そこがきちっと見えてくると、特に赤字になっている部分に関しては何らかの手当てをするだとか、やり方が全体論ではなくて見えてくるような気もするのですけれども、その辺りはもし情報があれば教えていただきたい。そういうものは当然あるという話なのか、そういうものは全く出ていないという話なのか、その辺り、いかがでしょうか。事務局でも委員の先生でもいいのですけれども。
○遠藤座長 では、事務局、どうぞ。
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長 企画課長でございます。ありがとうございました。
 正直、我々もその点についてはデータでしっかり把握しなければいけないという問題意識を持っております。検討会の中でどこまで具体的な数字で定量的にお示しできるかというところはあるのですけれども、御指摘のように、実際、場所によって流通コスト、配送効率が大きく異なってくるという実態があって、それによって当然かかってくるコストは変わってきますので、その点についてできるだけ定量的な形でお示しできるようなものを今後御用意させていただいて、お示しさせていただきたいと思います。
○遠藤座長 ほかにございますか。坂巻委員、どうぞ。
○坂巻構成員 せっかくですので、最後に一言です。今回の検討会は「医薬品の迅速かつ安定的な供給のために」というタイトルがついているわけですけれども、これは言い方を変えると、成川構成員の資料にもありましたけれども、医薬品のアクセスという言葉だと思うのです。このアクセスをもう少し分類してみますと、一つはイノベーションへのアクセス、もう一つは、ジェネリック医薬品が含められるわけですが、市場に出て時間がたって安価になることによって国民・患者が経済的負担をあまり感じることなく使えるような、そういうアクセス、この2つがあるのかと思います。
 さらにイノベーションのアクセスに関しては、そもそも公的制度の中でどのくらいカバーするのか、これは菅原構成員から民間保険の役割という話があったと思います。もう一つは、薬価制度等によって企業が日本において上市しなくなってしまうということの問題の観点、これも2つあるのだろうと思います。
 さらに安定確保の面に関しては、ジェネリック医薬品の国内での流通という問題と、三村構成員からお話がありました経済安全保障、こういう4つぐらいの分類があって、これを整理して議論したほうがいいのかなという感じがしております。その点、三村構成員から、同意してもらえると思いますけれどもというお話がありましたけれども、私は100%同意いたします。流通の問題も伺っていて、恐らく新薬はかなり単品単価も進んでいるのだろうと思うし、一方でジェネリックは単品単価ではいけないのかという問題意識の設定もあり得ると思うのです。アクセスというものに関してもう少し分けた上で議論するところを整理したらいいのかなということを感じました。
 以上でございます。
○遠藤座長 進め方についての御提言です。ありがとうございました。
 お待たせしました。小黒構成員、お願いいたします。
○小黒構成員 私は質問ではなくて、単にコメントとお願いなのですけれども、1つずつあります。
 香取委員が言われていた、シンクタンクや研究所など最近、いろんなところが薬価制度に関する提言を出しており、その話を聞いてみるということは、私も賛成で、ぜひやっていただきたいというのが1つです。
 もう一つは、これはお願いなのですけれども、薬価制度は「皆保険制度」を達成するために政府がマーケットの市場メカニズムに介入し、公定価格を定めてコントロールしようとしているので、ミクロ的に必ず一定の「歪み」が発生するのは避けられず、その改善は行うことはできても、問題は永遠に解決しない、いわゆる「サグラダファミリア」みたいなものだと思うのです。ある程度よくなっていくというのは毎回あると思うのですけれども、その意味で、ミクロ的なアプローチも重要なのですが、課題整理するときにマクロ的な観点、その辺の課題や解決策もきっちり盛り込んだ形で整理していただければと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。御要望として承りました。
 ほかに何かありますか。進め方でも結構です。よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。本日、第1回目ということであったにもかかわらず、非常に重要な、本質的な議論ができたかと思います。今後、議論を重ねるうちに多分テーマを絞った形のいろいろな議論がされていくことになるかと思いますけれども、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 では、本日はそういうことで、このぐらいでよろしゅうございますか。
 事務局、何かあればお願いいたします。
〇山本ベンチャー等支援戦略室長 事務局でございます。
 次回の第2回検討会の開催日時につきましては、厚生労働省事務局よりメール等にて御連絡させていただく予定でございます。また、次回の検討会におきましては、業界の皆様にお越しいただき、現在の業界の状況や流通・薬価制度上の課題についてヒアリングを行うことを予定しております。また、本日の検討会の議事録は後日、厚生労働省のウエブサイトに掲載予定としております。
 事務局からの連絡事項は以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、本日はこれをもちまして終了したいと思います。長時間どうもありがとうございました。