加藤大臣会見概要

(令和5年3月7日(火)9:35~9:53 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について




大臣:
 本日、厚生労働省関係の3法案が閣議決定されました。1点目は生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案であります。食品衛生基準行政を厚生労働省から消費者庁に、水道整備・管理行政を同じく国土交通省及び環境省に移管する等の措置を講ずるものであります。
 2点目は国立健康危機管理研究機構法案であります。国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、感染症等に関する科学的知見の基盤・拠点となる新たな専門家組織である国立健康危機管理研究機構を設立するものであります。
 最後に国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案であります。機構法の施行に伴い、地域保健法において地方衛生研究所等を明記し機構との連携業務を法定化するなど、関係法律について所要の規定を整備するものであります。
 いずれの法案も今後、本国会において速やかにご審議をいただくようお願いしたいと考えております。私からは以上であります。

質疑

記者:
若年女性を支援する東京都の事業を委託した一般社団法人Colaboの会計をめぐり、都の再調査で全体の事業経費のうち192万円が経費だとは認められないとする結果が公表されました。大臣は1月6日の会見で、厚労省としては「都における再調査結果を踏まえ必要な対応を行いたい」と言及されていましたが、今後、省として具体的にどう対応していくのでしょうか。見解をお聞かせください。
 また、東京都はこれまで若年女性支援事業で特定の民間団体と委託契約を結ぶ方式から支援団体への補助制度に変えるとの考えを示し、こうした制度改正で厚労省と調整をしていると都議会で答弁しました。現在の東京都との調整状況と、今後どのように具体的に協議を進めていくのかお聞かせください。
大臣:
ご指摘の若年被害女性等支援事業は、地方自治体の困難を抱えた女性への支援に関する取組を財政的に支援する補助金の仕組みであります。本事業に係る東京都の再調査の結果については、不適切な計上額を対象経費から控除した額が令和3年度の同事業に係る1か所あたりの委託料上限額である2,600万円を上回るため、東京都への委託費の返還は生じず2,600万円で委託料が確定したところでありますが、法人の自主事業にも従事している税理士等の報酬や職員の社会保険料が適切に按分されていなかった等により、事業経費と認められなかったものが合計約192万円あると承知しております。このように国の補助対象事業と法人の自主事業における費用按分が適切になされておらず過大に事業経費として計上されていたものがあったとされていることから、これらの再調査結果や補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の趣旨を踏まえ、どのような対応が今後必要か検討していきたいと考えております。
 また東京都が言及した委託契約から補助制度への変更に関しては、若年被害女性等支援事業においては令和3年度以降、地方自治体から民間事業者等への委託以外に地方自治体から民間事業者等への補助事業として実施することも既に可能とされておりますので、いずれを選択するかは事業の実施主体である自治体において適宜判断されるものと承知しております。
記者:
本日公表された毎月勤労統計調査について伺います。令和5年1月分の速報で実質賃金が前年同月比で4.1%マイナスとなりました。2014年5月以来8年8か月ぶりの大幅減となりますが、要因と今後の対策についてお聞かせください。
大臣:
本日公表した毎月勤労統計調査令和5年1月分の速報値で、実質賃金の対前年同月比はマイナス4.1%となりました。これは名目賃金が0.8%増加した一方でそれを上回って消費者物価指数が上昇した、これは帰属家賃を除く数字ですのでプラス5.1%、このことによるものであります。経済の好循環を図っていくためには実質賃金の改善が必要と従前から申し上げてきたところであります。
 まずはこの春の賃金交渉に向けて物価上昇を超える賃上げに取り組んでいくこととし、中小企業における賃上げ実現に向け生産性向上支援や、事業再構築・生産性向上等と一体的に行う賃金の引上げの支援等をしっかり行っていきたいと考えております。
 あわせて構造的賃上げに向けて、厚労省としてリスキリングによる能力の向上、職務に応じた適正なスキルの評価、自らの選択によって労働移動できる、こうした三位一体の労働市場改革を働く人の立場に立って加速していきたいと考えております。
記者:
閣議決定されました国立健康危機管理研究機構法案と整備法案についてお伺いします。米国のCDCと異なり政策立案機能は持たないですが、理事長などの幹部が政府対策本部で意見を述べるなど平時から内閣、厚労省との意思疎通・連携を強める内容となっています。機構のような専門家組織と政府との連携強化の意義について、大臣のお考えをお聞かせください。また機構に対して期待されていることなどあればお願いします。
大臣:
今回の法案の下で、国立健康危機管理研究機構は内閣感染症危機管理統括庁や厚生労働省の求めに応じ政策決定に必要な科学的知見についての調査研究を行うこと、2点目として平時から質の高い科学的知見を統括庁や厚生労働省に迅速に提供すること、3点目としてパンデミック時に政府対策本部長の招集を受けて政府対策本部で意見を述べることにより、統括庁等の政策決定につなげることとされております。こうした密接な連携を図ることによって科学的知見と根拠に基づいた政府の政策決定に資することが期待されるところであります。
 また新機構の創設により、感染初期における調査分析等の初動対応の強化、患者受入機能や重症患者等の診療機能の強化、国内外の治験ネットワークの中核的役割を果たすことによる研究開発力の強化などの効果が見込まれるところであります。またそうした方向で施策を進めていきたいと考えております。
記者:
社会保険の第3号被保険者制度について伺います。年明け以降の予算委員会で、いわゆる年収130万円の壁の解消についてたびたび議論が行われています。この壁が発生する大きな理由の1つとして、この第3号制度の存在があると思います。もともとは妻の年金権の確保を背景にできた制度ですが、同じ世帯年収の場合、片働きの夫婦世帯の年金支給額が単身世帯と比べて基礎年金分多くなる点等について不公平だという指摘もあります。前回までの年金改革では廃止や縮小との意見や議論もありました。
 一方、岸田総理は「壁の問題について制度を見直す」とも答弁しています。この対応として第3号制度についても見直す考えはありますでしょうか。
 また、第3号制度が存続してきた意義やメリットをどう捉えているのかを教えてください。長らく議論が行われてきたにもかかわらず具体的な改革まで至らなかった背景についても教えてください。
大臣:
国民年金第3号被保険者制度は、昭和60年の年金制度改正において基礎年金制度を設けた際にそれまで被扶養配偶者は任意加入となっていましたが、その被扶養配偶者についても自分名義の基礎年金を確保することで女性の年金権を確立するために設けられたものであります。過去の制度改正においてその在り方について様々な議論が行われてまいりました。平成27年の社会保障審議会年金部会における議論においては、第3号被保険者を将来的に縮小していく方向性を共有するものの、単に専業主婦を優遇しているとの捉え方ではなくて多様な属性を持つ方、例えば短時間労働に従事している人、出産や育児のために離職している人等が混在していることから、まずは被用者保険の適用拡大を進めつつ縮小・見直しに向けたステップを踏んでいくべきことが指摘されたところでございます。
 130万円の扶養基準を意識せずに働けるようになるよう、第3号被保険者の縮小に向けたステップとしてこれまで被用者保険の適用拡大に取り組んでまいりました。その結果として、3号の方は1995年が1番多かったわけでありますが当時17%であったものが2021年では全体の被保険者の11%、一方で2号の方が55%から67%ということになってきているところであります。
 総理の施政方針演説では「女性の就労の壁となっているいわゆる103万の壁や、130万の壁といった制度を見直す」とされておりますが、引き続き適用拡大を進めるとともに政府としてどのような対応ができるのか幅広く検討を行っていきたいと考えております。
記者:
学童保育についてお伺いします。小学校入学を来月に控え、SNS上では「学童に落ちた」「仕事を辞めなくてはならない」といった働く親からの投稿が相次いでいます。実際に厚労省が行った調査では利用する児童数は過去最多で増える一方、施設は減少しています。この待機学童の現状をどう受け止めて、今後どのように対応していくか大臣の考えをお願いします。また、こうした対策が少子化対策に与える影響についてどのように考えるかもあわせてお願いします。
大臣:
昨年の放課後児童クラブの登録児童数は約139.2万人で対前年で約4.4万人の増加でありますが、待機児童数は前年から1,764人増えて15,180人となっております。他方でクラブ数が減ったとありました。これは数え方で基本的にはクラブ単位で数えるべきところを、1つのクラブの中に学校で言えば3クラスあったとします、それを3(クラブ)で登録していたところと1(クラブ)で登録していたところがあり、それを1(クラブ)で登録し直してもらったというのが減少の背景にあると承知しております。
 その上で待機児童数の増加要因については、新型コロナウイルス感染症流行下において市町村における利用ニーズの把握が困難であるなど、必要な受け皿の確保が十分できなかったことがあると思います。学童保育は子育てと就労の両立に向けた重要な施策であります。また総理からも、こども対策の強化に関して学童保育について質・量両面からの強化を進める指示もございました。新・放課後子ども総合プランに基づく受け皿整備等を着実に実施し、早期に学童保育における待機児童解消を図っていきたいと考えています。
記者:
旧統一教会の養子縁組についてお伺いします。信者向けのハンドブックに養子縁組をあっせんしていると受け取られかねない記載があるとの厚労省からの指摘を受け、教団側がハンドブックを修正し厚労省に送っていました。その後の厚労省の対応の進捗状況をお伺いします。また、刑事告発の検討状況についての進捗状況もお願いします。
大臣:
お尋ねのハンドブックの改訂案については1月31日に厚労省が受領し、その内容を見させていただきました。一法人の出版物でありますから個々の文章表現等について厚労省から意見する立場ではございませんが、改訂案の内容において実父母による養育が困難又は不適当でないにもかかわらず養子に送り出すことを推奨していると捉えられることから、児童の権利条約や児童福祉法に照らし適切ではないと考える旨の厚生労働省としての見解を伝える通知を昨日発出したところであります。また告発等の状況については、捜査等に関わりうる情報であるためお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、厚労省として引き続き情報収集等を進め関係機関との連携を図っていきたいと考えています。
記者:
先ほどの年金の質問でまたお聞きするのですが、第3号制度が導入された当時と違って女性の社会進出も進んできて年金権を確保する必要というのが薄れてきているように思うのですが、当面は存続するのか、その辺り社会情勢と照らし合わせてどのように捉えられているのか教えていただければ幸いです。
大臣:
先ほど少し申し上げましたが、平成27年の議論の中でもそこには多様な属性を持つ方がおられるということも含めて、被用者保険の適用拡大を進めつつ縮小・見直しに向けたステップを踏んでいくべきとされているところでありますので、そこについて認識は変わっていないと考えていますが、例えばそうした中で昨今における就労調整等の課題が指摘されているところでありますから、それも踏まえて先ほど申し上げたようにどのような対応ができるか幅広い検討を行っていきたいと考えています。
記者:
先ほどの旧統一教会の件で再度質問なのですが、通知を出されたということですが、ハンドブックの改訂に対して実父母の養育が困難でないにもかかわらず養子を推奨していると捉えられるから児童権利条約などの点から適切ではないということを通知で伝えられたと、それに対して何か回答を求めたりとか、求めるのであればいつまでにとか、そういった次の対応はどのようにされるのでしょうか。
大臣:
「祝福家庭のための侍儀生活ハンドブック」に関する話であります。これについては先ほど申し上げたように、こちらからこれがいいとか悪いとか言うものではありません。このことを前提に、ただ向こうから改訂案が来たので先ほど申し上げた点の見解を申し上げたというだけであります。答えは求めておりません。
記者:
では指示を求める通知ではなくて、感想というか受け止めみたいなものでしょうか。
大臣:
見解を伝える通知と先ほど申し上げましたが、まさにそういった内容であります。

(了)