医系技官Voice

#09医系技官Voice

主査時代の経験―入省1~4年目頃の業務と得られたもの

健康・生活衛生局 感染症対策部予防接種課長補佐瀧 翔哉TAKI Shoya

平成31年入省。医政局地域医療計画課で地域医療構想に携わる。その後、育児休業(3か月)、医政局医事課(医師の働き方改革、オンライン診療)を経て、令和4年より現職。

健康・生活衛生局 感染症対策部予防接種課長補佐 瀧 翔哉
健康・生活衛生局 感染症対策部予防接種課長補佐 瀧 翔哉

地域医療計画課―データベースの取扱い

医系技官として重要なスキルのひとつが、データベースの取扱いと、統計に対する知識です。多くの部署で、実施している政策の評価のため、あるいは今後の政策の方向性を決定するために、調査を行っています。これらの調査は、病院・診療所の施設数や病床数を調査する医療施設調査のような政府統計から、各課室レベルで行うアンケート調査まで、様々です。これから進めようと考えている施策の検討に使える既存の統計調査はないか、実施している施策の妥当性を確認するにはどういった調査が必要か、といったことは技官が中心となって検討することも多いです。

私は、入省1年目に配属された医政局地域医療計画課で、レセプト情報・特定健診等情報データベースや病床機能報告のデータを用いて各地域の病院がその地域でどのような機能を果たしているかを検討し、各都道府県が策定する医療計画の検討のための資料を作成する業務に関わりました。データの中にある報告誤りなどによるエラー値をどのように除くか、といった細かい課題や、データベースを扱う上でどういったことに気をつける必要があるかを実際に業務として経験しながら学ぶことのできる、大変貴重な機会でした。特に、調査にかけられる時間や費用の制約、調査対象に過度な負担をかけてはいけないことなどの条件のもとで、どこまでのことがいえるかを考える必要があり、大学での勉強とは違った、より実践的な経験ができました。

年次が高くなるほど、幅広い業務を受け持ち、ひとつの仕事にかけられる時間は相対的に少なくなるので、若い年次でデータベースに時間をかけて取り組めたのは貴重でした。

医事課―法令の理解と人前で話すこと

行政では、各省庁、各局、各課室等にそれぞれ所管する(担当の)法令があります。所属する部署が所管する法令については、事務官はもちろん、技官であっても、把握している必要があります。とはいえ、初見で法令の内容を理解することはできないので、内容を理解するためにはトレーニングが必要です。例えば、どういった場合にオンライン診療をしてよいかを知るためには、医師法(対面診療の原則)や医療法(医療機関の要件)を確認し、それぞれの施行令、施行規則といった下位法令、局長通知である「オンライン診療の適切な実施に関する指針」まで確認しなければなりません。

2部署目の医政局医事課では、「オンライン診療指針」の改訂に携わりました。ちょうど、新型コロナウイルスの流行により、オンライン診療に対する社会的ニーズが高まった時期でした。それまでは、オンライン診療はごく限られた場面でしか行えませんでしたが、どういったルールであれば安全、かつ患者にとってメリットにある形でのオンライン診療を行うことができるか、検討会で有識者の先生方の意見を伺いながら検討しました。

平成9年の局長通知から過去の経緯をひもといて行く作業は、大変ですが、とても勉強になりました。また、弁護士資格を持つ方が課内にいましたので、医師法の条文の趣旨や、判例の読み方も教わることができました。

また、医事課では医師の働き方改革も担当しました。こちらは、私が着任したときには法改正がされ、大枠は決まっていて、施行に向けた詳細の決定や、関係者への周知を行っていく段階でした。特に、それぞれの医師、医療機関で時間外労働時間を上限以下にしていただかなければならないため、関係者へのわかりやすい情報の周知が課題でした。

また、医療界の関心も非常に高かったため、様々な学会でセミナーやシンポジウムが企画され、厚生労働省からも説明に伺うことがよくありました。私も主査ながら、いくつもの学会で医師の働き方改革についての説明をさせていただきました。人前で話すとなると、施策の隅々まで把握しておく必要があり、また伺う学会の主な診療科の状況も可能な限り調べておくなどと、大変ですが、聴いていただいた方の紹介で別の学会にも呼んでいただいたときなどは、嬉しい限りでした。もちろん、呼んでいただくのは厚生労働省の看板あってのことなのは忘れないよう自戒しつつですが。

多少の差はありますが、どの部署でも何らかの形で多くの人の前で話す機会があり、若いときから多く経験を積ませていただいたのは大変ありがたかったです。

予防接種課―エビデンスに基づく施策

3部署目は健康局予防接種課です。令和5年9月、ちょうどオミクロン株対応2価ワクチンの接種が始まる月に異動となりました。予防接種課に着任して、まず大変だったのが、新型コロナワクチンの有効性・安全性についてこれまでにどのようなデータがあるのかを理解することでした。特に、新型コロナウイルスの変異によってワクチンの有効性が変化し、ワクチンも変異株に対応したものが製造され、諸外国からも日々新型コロナに関する地検が報告されるという状況で、情報のアップデートだけでも大変でした。正直なところ、英語の文献を読み込むのがとてもつらかったです。可能であれば、普段から何らかの形で英語に触れておくとよいと思いました。入省後に留学する人も多く、留学先で学ぶ内容はもちろんですが、英語が扱えるようになるのも大きなメリットです。

医政局では、統計や調査などがまとめられる時期はわかっていましたし、事前にある程度結果の予想もつくことが多かったのですが、新型コロナについては日々新たな報告があり、しかも事前に予測できない点に悩まされました。新たに得られた科学的知見を元に、優先して接種する対象を決めたり、接種勧奨の対象を変更したりということがこれまでにない早さで行われていくのは、その当時予防接種課にいたからこそ得られた経験でした。

また、新型コロナ以外でも、新たに薬事承認されたワクチンを予防接種法上の定期接種に位置づけるかどうかの検討について、科学的知見を収集し、検討していくプロセスでは、疾病の疫学情報の理解、ワクチンの有効性、費用対効果など様々な知見を理解し、まとめる必要があり、医系技官としての知識と経験が必要とされる場面です。

医系技官に興味がある方にメッセージを

以上のように、私は、主査時代に医系技官、あるいは行政官としてのとしての基本的なスキルを学ぶことができました。これからも、まだまだ学ぶことばかりです。入省をお考えで、時期について迷われている方がいらしたら、できるだけ早く入省して比較的時間に余裕のある、低い年次でしか学べないことを学ぶのがよいと思います。私は、入省3年目の初め3か月に育児休業を取得しました。また、その後も基本的には定時で帰宅するようにし、こどもが寝たあとにテレワークをするようにしています。以前よりも、多様な働き方が可能になっていますので、家庭との両立も十分に可能な職場です。

健康・生活衛生局 感染症対策部予防接種課 課長補佐 瀧 翔哉