キャリアパス・サポート

激動する社会情勢のなかで、国民の期待に応える政策を展開するため、医系技官には、鋭い先見性と広い視野、そして豊かな人間性が求められています。
若い頃は、専門性を活かし行政官として基礎力を高めつつ、制度の企画立案業務など責任ある業務を担うことで、本格的に政策企画立案能力を高めていきます。
総合職である医系技官は、医学的知見を持ったジェネラリストとして、1~2年程度のスパンで、幅広く異動します。様々な領域の行政経験を経ることで多角的な視点から制度を俯瞰できる眼を養い、行政官としての専門性を高めます。厚生労働省本省のみならず、他府省庁、地方自治体、国際機関等へ出向の機会もその一環です。
幹部職員になる頃には、大局的な判断力のほか、リーダーシップやマネジメント能力も身につけます。
日々の仕事を通じて、知識、技術、感覚などを身につけるとともに、研修や勉強会で、一層の資質の向上を図っています。

医系技官のキャリアパスの一例 主査→補佐・専門官→室長・企画官→課長級→審議官級→局長・部長級→医務技監

キャリアサポート・制度

厚生労働省では、熱意ある方々が臨床の知見を活かしつつ、医療政策づくりのプロとして活躍できるよう環境づくりに力を入れています。

臨床現場での診療・産業医の兼業について

医系技官として厚生労働省で働きながら、勤務時間外に臨床現場での診療業務や産業医としての兼業(以下「臨床兼業」とまとめます。)を行うことができます。
限られた時間とはなりますが、臨床兼業を通じた現場経験が政策の企画・立案に活かされることが期待されています。
一方で、国家公務員は原則兼業禁止となっており、医系技官としての本務が優先されます。そのため、①原則として土日祝日に行う保険診療であること、②所属部署と利害関係のない医療機関で行うものであること、③自己の臨床技術の維持や、専門医資格や認定医等の維持・取得を目的としたものであること等の一定の条件を満たしたものについて、許可を得た場合に実施することできます。

兼業制度を利用し、臨床現場での感覚も重要と考えています。

兼業制度を利用して、毎週末に外来診療をしています。新型コロナウイルス感染症流行時には、発熱外来やコロナワクチン接種等の診療に携わることで、患者さんやその家族の思いや医療機関の課題などを実際に感じることができました。施策立案にあたり、現場の状況を踏まえること重要と思っています。医系技官は、実際の臨床現場から離れてしまうイメージがあるかもしれませんが、兼業制度を利用して臨床現場での経験を忘れずに行政の仕事に打ち込めています。

医政局医事課試験免許室 試験専門官 長江翔平
医政局医事課
試験免許室 試験専門官
長江 翔平NAGAE Shohei

社会医学系専門医の取得について

医系技官としての職務経験が社会医学系専門医の研修として認められています。社会医学は、「科学的なエビデンスを創出して社会に適応し、地域・職域や国レベルの集団とシステムに働きかけ、健康な生活・行動様式の推進、安全な環境の保持、医療提供システム等の構築に貢献し、人々の健康の増進」(社会医学系専門医協会)に大きな役割を果たしています。医系技官として、人々の健康増進を目標とし、エビデンスに基づく医療政策を行うことは、まさに社会医学の実践経験を積むことにほかなりません。
厚生労働省は、独自の社会医学系専門医研修プログラムを用意し、多くの社会医学系指導医や専門医が在籍しており、社会医学系専門医の資格を取得したい方を支援する体制を整備しています。

社会医学系専門医制度

社会医学系専門医制度 [基本プログラム]専門医に必要な共通の基礎知識の習得国立保健医療科学院、大学院、学会の研修等を活用→[認定研修プログラム]行政・地域、産業・環境、医療の3つの分野のうち、1つの分野(主分野)を中心に現場研修。(他の2つの副分野と連携)→[専門医試験]筆記試験と面接試験 (3~6年程度) 社会医学系専門医協会ホームページをもとに作成

留学制度について

行政経験を通じて抱いた疑問を解決するため、また、日々の業務の学術的な位置づけを俯瞰的に捉え直すために等、動機・理由は様々ですが、人事院の派遣研修制度を活用した留学が可能です。制度は3つあり、①海外の大学院への留学(長期在外研究員制度)、②諸外国の政府機関への派遣(短期在外研究員制度)、③国内大学院への留学(国内研究員制度)が可能です。
語学審査(海外留学の場合)や研究計画の審査を経て、人事院から派遣決定がなされると、留学先(国・大学・政府機関等)は、自分の問題意識に合わせて自分で選ぶことができます。
これまで医系技官は、①②の制度を活用して、毎年3~4名の医系技官が、米英を中心に諸外国(※)に留学しています。①では、外国大学院で公衆衛生学修士や行政学修士等自身で選んだ学問を学び、また②では、米国保健福祉省や経済協力開発機構(OECD)へ派遣されることで、調査・研究に従事しながら、将来の日本に必要な政策を検討するためのスキルアップを図ることができます。

詳しくは人事院の派遣研修制度については、人事院のホームページをご覧ください。

メンター制度について

メンター制度とは、配属部署における上司とは別に相談役となる先輩医系技官(メンター)が新入医系技官(メンティー)をサポートする制度のことをいいます。メンターはメンティーに定期的に声をかけ、入省後の様子を聞いたり、職場内での悩みや問題解決をサポートし、新入医系技官を支える体制を整えています。