#06医系技官Voice
良質な歯科保健医療提供を目指す
ジュネーブ大学客員研究員髙田 淳子TAKATA Junko
平成15年入省。医政局、健康局、大臣官房統計情報部等に従事。山口県庁、東北厚生局等での勤務を経て、令和2年度診療報酬改定(保険局)、令和3年度介護報酬改定(老健局)に携わる。令和5年7月より現職。
#06医系技官Voice
平成15年入省。医政局、健康局、大臣官房統計情報部等に従事。山口県庁、東北厚生局等での勤務を経て、令和2年度診療報酬改定(保険局)、令和3年度介護報酬改定(老健局)に携わる。令和5年7月より現職。
入省後、最初に配属された医政局歯科保健課では、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士の養成、試験・免許等に携わりました。
具体的には、①歯科衛生士や歯科技工士の養成施設の設立等にあたって申請書類の審査や実地調査の実施、②歯科専門職等の試験・免許について、国家試験問題作成を行う会議を運用したり、試験の実施、免許登録等の国家試験の事務、③歯科医師臨床研修の必修化に向けて研修プログラムの審査等を行いました。
当時は、上司である課長補佐の指導のもと資料を作成したり、会議や講演会に随行しながら、関係者への説明内容・方法等を勉強させてもらいました。決して楽しいことばかりではありませんでしたが、係員・係長として同僚と協力しながら業務を進めた経験は今も役立っています。
平成23年、乳幼児期からの障害を通じた歯科疾患の予防、口腔機能の獲得・保持等により、すべての国民が心身ともに健やかで心豊かな生活ができる社会を実現することを目的とした「歯科口腔保健の推進に関する法律」が成立しました。これにともない同法を推進する観点から、歯科保健課内に歯科口腔保健推進室が設置されました。口腔保健推進室での取組を通じて、母子保健、学校保健、老人保健等という縦割りで行われてきた歯科口腔保健について、横串しを指すように省庁を超えて関連する部局が連携を深めることとなりました。
口腔保健推進室では、関連情報・統計データ等を活用し政策目的を明確化したうえで合理的根拠に基づき実践するEBPM(Evidence baced policy making:証拠に基づく政策立案)が進められており、業務を遂行するためにデータを正しく理解し関係者と議論することの重要性を痛感し、社会人大学院生として疫学や統計学等を学ぶこととなりました。
診療報酬は保険局医療課において2年に1回、介護報酬は老健局老人保健課等で3年に1回改定が行われており、改定に係る検討・調整や改定後の問い合わせへの対応等を行っています。保険診療等では、診療行為に応じて点数が設定されており、全国統一のルールに基づき算定されます。改定では、限られた財源をどのように配分し必要な施策に進めるべきかを、様々な関係者との議論を通じて検討が行われます。
医療提供側、保険者及び患者等が異なる立場から様々な意見から改定の在り方が議論されます。また、歯科医療提供側といっても、大学や病院に勤務する歯科医師と診療所を開設している歯科医師、30代と70代の歯科医師、都市部と地方の歯科医師では意見が全く異なることもあり、全国一律のルールを皆が納得できる内容の見直しを行うことは非常に難しく、また、達成感を感じられるものでした。
これまで、平成18年に関東信越厚生局へ、平成22年に山口県庁へ、平成29年に東北厚生局へ出向しました。
①関東信越厚生局では、歯科医師臨床研修の必修化に併せて、本省から各地方厚生局へ移管された歯科医師臨床研修に係る業務に携わりました。また、国家試験の試験会場における業務、②山口県庁では、国が示した基本的な方針をもとに、山口県の現状を踏まえ、「やまぐち歯・口腔の健康づくり推進計画」の立案等に携わるとともに、歯科疾患実態調査の実施、③東北厚生局では、医師・歯科医師臨床研修、看護師の特定行為研修、再生医療の安全性確保、医療観察法等の運用等の業務を担当しました。また、東日本大震災の復興支援、地域包括ケア等の対応に参画しました。
いずれの出向先においても、厚生労働省で携わってきた施策等の最前線を経験することができ、感激するとともに各施策に対して新たな視点を持つきっかけとなりました。
これまでの厚生労働省での業務を通じて、諸外国における歯科保健医療制度・取組を深く知りたいと思い、人事院の派遣研修制度を活用して令和5年7月から、ジュネーブに来ています。新型コロナウイルスの感染症禍、派遣先や派遣期間に変更等がありましたが、現在、WHOと連携を図りながら各国の歯科医療制度等について調査・研究しているところです。
文化や価値観等も異なると、医療の捉え方ももちろんですが、働き方や休み方も全く異なっており、非常に刺激的な経験をさせてもらっています。
歯科医師には臨床・研究・教育だけでなく、行政という道もあります。
厚生労働省では、初任研修や各種勉強会等も行われており、行政についての知識や経験が全くない場合でも、同期や同僚とともに学ぶことができます。
また、この小冊子では紹介しきれない様々な活躍の場がありますので、インターンシップ制度や業務見学ツアーへの参加に関わらず、まずは気軽にお問合わせください。