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こどもの健やかな成長と、
安全・安心な妊娠・出産を

こども家庭庁成育局母子保健課係長加藤 斐菜子KATO Hinako

令和2年入省。健康局健康課で健康診査や睡眠・飲酒等の生活習慣に関する業務を担当。その間、新型コロナウイルス感染症対策推進本部における業務も経験。令和4年4月から母子保健課(令和5年4月にこども家庭庁に移管)。

こども家庭庁成育局母子保健課係長 加藤  斐菜子
こども家庭庁成育局母子保健課係長 加藤  斐菜子

こどもや妊産婦の健康に関わる母子保健とは

母子保健課は、全てのこどもが健やかに育つ社会の実現を目指し、成育基本法や、母子保健等にかかる様々な取組を推進する国民運動である「健やか親子21」等を基盤として、安全・安心で健やかな妊娠・出産や産後間もない時期の母子の健康管理が行えるよう、妊産婦健診や乳幼児健診の実施、退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行う産後ケア事業等を通じて、地域における妊娠期から子育て期にわたる母子等への切れ目のない支援を推進しています。

また、男女を問わず、性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促すプレコンセプションケアや、不妊症や不育症について悩んでいる人への健康状況に応じた相談支援、治療に関する情報提供も推進している課です。

こどもや妊産婦の健康などを担当する課なので、課内には、医師(人事交流で着任している小児科医、産婦人科医も含む)、看護師・助産師・保健師、管理栄養士といった資格を持つ技官も多く、法令業務や予算業務を担当する職員も合わせ、それぞれ強みをもって役割分担、連携をしながら、協力し合う関係で業務をしています。現場の実態、現行のルールや費用の仕組みなど、適切に検討するために必要な情報は、課内の担当者にも聞き取りながら、業務を進めます。

政策の必要性・重要性をとらえ、対応への道筋を立てること

現在、科学研究、新生児聴覚検査、乳幼児健康診査、こどもの入院付添い、生殖補助医療など、幅広く担当させていただいています。

乳幼児健康診査においては、3歳児健康診査の視覚検査の重要性が指摘される中、ここ数年で市区町村における屈折検査の導入率がぐんと伸びました。令和4年度には、調査研究事業を通して、眼科医の先生や都道府県・市区町村の担当者など関係者のご意見を伺いながら、どうしたらより多くの市区町村で視覚検査の体制整備が進みやすくなるか、どうしたら弱視のこどもが必要な時期に必要な治療を受けられるようになるか、といったことを検討し、自治体における体制整備のための手引きや保護者への啓発資料を作成しました。

また、先天性サイトメガロウイルス感染症の診断薬や治療薬に関して保険収載につながる知見が得られていることを踏まえ、新生児聴覚検査においては、検査でリファー(再検査)とされた児が、先天性サイトメガロウイルス感染症の検査や治療を適切に受けられるよう、体制整備をお願いする改正の対応を行いました。

日々の業務の中で新たな課題が指摘され、また科学的知見が蓄積される中で、それらがどういう意味を持つのか正しく理解し、対応の必要性や重要性を見極めること、どのように対応するべきか道筋を考えることは、業務の最も重要なことの一つであると感じます。

関係者の声をよく理解し、何がどれほど重要で、またどのように対応することができるか、難しいことではありますが、このことを大切にしながら、今後も努力し続けたいと思います。

こども家庭庁の設立について

令和5年4月にこども家庭庁が設立されました。政府の方針を間近で感じながら、新しい組織の立ち上げを内側から経験させていただいたことは貴重な機会でした。また、各方面から期待の声を頂く中、身が引き締まる思いで業務する日々を過ごしています。

私自身が、こども家庭庁への移管、立ち上げという観点で主に関わらせていただいた業務は、こども家庭庁における科学研究の整備でした。厚生労働科学研究など他省庁の研究事業を参考に情報収集をしながら、必要となるルールひとつひとつについて、こども家庭庁としてはどのような対応がありえるか、複数の対応案とそれぞれのメリットデメリットを整理しながら、整備を進めていきました。科学研究という比較的規模や範囲が限定された制度ではありますが、制度全体の整合性をどのようにとるか、研究者・研究機関・担当職員にとってどうすれば扱いやすい運用にできるか、といったことについて、ひとつの制度を体系的にとらえ検討することは、やりがいがありました。また、膨大な作業をミスなく効率的に進めるといった仕事の進め方の観点でも、鍛えられる業務でした。

この作業も課内の複数のメンバーと協力して取り組みました。こども家庭庁のホームページに、科学研究の書類一式を掲載できたときは、大きな達成感がありました。

医系技官に興味がある方にメッセージを

どの道に進んでも、その先にそれぞれのプロフェッショナルがいらっしゃって、私自身そのプロフェッショナルを目指しながら、様々な分野を経験すること、新しく学ぶこと、それによる自身の成長を楽しみながら働かせていただいているように思います。

また、医系技官の仕事について、医師である必要性、求められる役割は何か、ということを時折意識することで、アイデンティティ、やりがい、責任も感じます。

一本道だけでなく、寄り道する場合など、色々なルートがあると思いますが、どんなルートであっても、ここでは必ず糧になる経験ができるのではないかと感じています。

こども家庭庁成育局母子保健課 加藤  斐菜子