高等植物:テンナンショウ類

テンナンショウ類

一般名

テンナンショウ類(別名:ヘビノダイハチ、ヤマゴンニャク(山蒟蒻))

分類

サトイモ目 Arales、サトイモ科 Araceae、テンナンショウ属 Arisaema
(APG分類体系ではオモダカ目、サトイモ科、テンナンショウ属)

学名

Arisaema spp.
マムシグサ Arisaema japonicum Blume など

生育地

テンナンショウ属植物は北海道から沖縄まで全国的に分布し、約30種以上と種類が多く、分類が難しい群として知られている。代表的な種としてはマムシグサ、マイヅルテンナンショウ、アシウテンナンショウなどがある。湿った林床に多いが、河川敷等にも見られる種もある。
ウラシマソウ、ユキモチソウは花序の付属体に特徴があり、ムサシアブミなどは仏炎苞の形状などが変わっているため、観賞用として栽培されることもある。

発生時期 果実をつける初夏から秋にかけての誤食による事故が多い。
形態

多年草で、地上部は普通葉を1-2枚つけ、地下部には扁球形の地下茎がある。春から夏に、サトイモ科の特徴である肉穂花序と仏炎苞を持った「花」をつける。花後、粒状の果実をトウモロコシ状につけ、熟すと朱赤色になって目立つ。
球茎を輪切りにして乾燥したものは生薬の「天南星」として利用される。

マムシグサの写真
マムシグサ
マムシグサの果実の写真
マムシグサの果実
中毒を起こした若い果実の写真
中毒を起こした若い果実
地下の球茎の写真
地下の球茎
アシウテンナンショウの写真
アシウテンナンショウ
ムサシアブミの写真
ムサシアブミ
ユキモチソウの写真
ユキモチソウ
マイヅルテンナンショウの写真
マイヅルテンナンショウ
ウラシマソウの写真
ウラシマソウ

          (写真提供: 藤野廣春、御影雅幸、 富山県中央植物園 )

毒性成分
シュウ酸カルシウム(calcium oxalate )
中毒症状 口唇、口内のしびれ、腫れなどのほか、腎臓にシュウ酸カルシウムが沈着して腎機能を障害する。
発病時期 30分以内の短い潜伏期間の後に発症。
発生事例

(症例1)2009年 男児
園外保育で生えていたマムシグサの若い果実を口にして、舌が痛いと訴えた。
医師の所見:1時間後、口唇が軽度の腫脹が見られた。
処置:ペリアクチン散、トランサミン散投与。

(症例2)2008年 若い男性
川に流れてきたマムシグサ類の果実をトウモロコシと勘違いして食べたところ、口の中がしびれて、腫れた。
処置:不明

(症例3)2007年 男性
山間地の庭に生えていた野草を採取、その実を食べたところ、口の中のしびれや、喉の痛みを訴え、病院にかかる。後ほどテンナンショウ属であると判明した。
 

(症例4)2004年 男性3名 
ホソバテンナンショウの実をタラの芽と間違え摂食。2名は1粒食べたところ、舌にシビレが出たためすぐに吐き出し、1名は2粒を飲み込んだため症状が重くなり入院した。
摂食後、約6時間後に診察を受ける。

 

子どもの頃、間違って食べてひどい目にあったという話をよく聞くので、実際の中毒事故は相当数あるものと思われる。

患者数(過去
10年間)

発生件数 患者総数 摂食者総数
2009年* 1件 1人  1人
2008年* 1件 1人 1人
2007年 1件 1人 1人
2004年* 1件 3人 3人
                                                 厚生労働省発表 ただし、*はそれに載っていなかった症例や、症例数が少ないのでそれ以前の確認数を加えた総数。
2005-6、2010-2013は発生なし。
(2013年12月31日現在)

直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちらのページ

中毒対策 未熟な果実はトウモロコシに似ており、また、完熟した果実は赤く美味しそうな色になるので、幼児や認知障がいのある人の近くには植栽しない。また手の届く所には置かない。

諸外国での
状況

世界には約200種あり、アジア、北アメリカ、アフリカの一部の、主に温帯域に分布するが、それらの国での誤食中毒は定かではない。

間違えやすい
植物

今までの発生事例の多くは未熟の果実をトウモロコシと間違えて食べており、特に子供への注意が必要である。そのほかにタラノキの芽と間違えた事例もあるので注意する。
  作成:藤野廣春(富山大学薬学部附属薬用植物園)、中田政司(富山県中央植物園)