高等植物:ユウガオ

ユウガオ

一般名 ユウガオ(別名:カンピョウ)
分類

スミレ目 Violales、ウリ科 Cucurbitaceae、ユウガオ属 Lagenaria
(APG分類体系ではウリ目、ウリ科、ユウガオ属)

学名 Lagenaria siceraria(Molina) Standl. var. hispida (Thunb.) H.Hara
英名 bottle gourd
生育地

北アフリカ原産とされ、古くから各地で栽培されているが、現在は栃木県南部が主産地。

形態

一年生のつる植物で、茎は分岐して20mに達する。観賞用に栽培されるヒョウタン Lagenaria siceraria(Molina) Standl.とは同一種で、ヒョウタンの苦味(ククルビタシン類)の少ない品種が食用のものとして選別されたものがユウガオである。大きな果実を実らせることが特徴。現在では栽培は栃木県などで栽培が行われている。
実は食用のほか容器としても用いられる。実を長く剥いて加工したものがかんぴょう(干瓢)であり、広く食用に利用される。

ユウガオの果実の写真
ユウガオの果実(写真提供:磯田 進) 
ヒョウタンの果実の写真
ヒョウタンの果実 (写真提供: 矢原正治 )
毒性成分 ククルビタシンE(cucurbiacin E )などのククルビタシン類

化学式

食中毒の型 消化器系の中毒
中毒症状 唇のしびれ、吐き気、おう吐、腹痛、下痢
発病時期 摂食食後から数時間に現れる。
発生事例

(症例1)平成14年10月20日札幌市にて摂食者3名、中毒3名。摂食直後に口の痺れ、後吐気、嘔吐、腹痛、下痢を起こした。スイカ接木苗の台木のユウガオが伸びて実をつけたので食べたためによる。

(症例2) (ヒョウタンとの誤食による中毒) 平成11年9月、東京都で3人が夕食の味噌汁にユウガオと思われるものを入れたものを喫食し、6~7時間後に全員が嘔吐、下痢の症状を呈した。家庭菜園で収穫された残っていた果実を観察したところ、ユウガオではなくヒョウタンであると思われ、定性分析でククルビタシンDのRf値に一致するスポットが得られた。また平成21年8月にも都内飲食店でヒョウタンを含んだ料理を提供し8名が嘔吐、吐き気、腹痛、下痢を引き起こした。

(症例3) (ユウガオ中のククルビタシン高含量による中毒) 平成20年7月、山形市内の家族3人(30代の母親と小学生2人)がユウガオを食べて食中毒になった。3人が食べたユウガオの残品などから、苦味成分のククルビタシンが検出された。朝食に店から購入したユウガオとベーコンのスープを食べたところ、約20~30分後に腹痛や下痢、嘔吐などの症状を訴え、全員が山形市内の医療機関を受診した。保健所は、患者3人の発症状況が同様であることや、ユウガオの残品などを検査したところ、ユウガオに含まれる植物性自然毒「ククルビタシン」が検出されたことから、ユウガオによる食中毒と断定した。(山形新聞)

患者数
(過去6年間)

発生件数 患者総数 摂食者総数
2013年 1件 16人 29人
2012年~2010年 発生なし    
2009年 1件 8人 10人
2008年 1件 3人 3人
(2013年12月31日現在)
厚生労働省発表

直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちらのページ
中毒対策 ヒョウタンとの誤食がある他、まれに高ククルビタシン含量のユウガオによる中毒もある。苦みの強いものは摂食しない方がよい。また同じウリ科のスイカ栽培のための接ぎ木台木としてユウガオを利用した場合、台木から実ったユウガオの果実にはククルビタシンが多く含まれ中毒を起こす場合があるため摂食しないようにする。

毒性成分の
分析法

(牛山 博文ら、東京衛研年報Ann. Rep.Tokyo Metr. Res. Lab.P.H.,51,166-169,2000 による薄層クロマトグラフィーによる方法)細切した試料200gにエタノールを加え、ソックスレー抽出器を用い抽出を行う。抽出液は減圧下で濃縮乾固し、残留物をクロロホルムに溶解する。クロロホルム層を水洗後減圧下で濃縮乾固し、残留物をメタノールに溶解し試験溶液とし、薄層プレート4枚にスポットする。展開溶媒:クロロホルム-酢酸エチル(1:1)、酢酸エチル-ベンゼン(3:1)、イソプロピルエーテル-アセトン(5:2)、ベンゼン-ジオキサン-酢酸エチル(2:1:1)でそれぞれ展開後、254nm紫外線照射下で吸収スポットの有無を確認する。この方法でククルビタシンD標品と同一のRf値の吸収スポットを認めるか否かで判定している。

諸外国での
状況

bottle gourd(ヒョウタンも含む意味)の果肉を食べた子供の致命的な例を紹介しているが、この種子の高毒性のためとしている。(Dietrich Frohne, Hans Jurgen Pfander,Poisonous Plants, 2nd ed. A Handbook for Doctors, Pharmacists, Toxicologists, Biologists and Veterinarian. MANSON Pblishing, p148)

その他の
参考になる情報

牛山博文ら、東京衛研年報 Ann.Rep.Tokyo Metr.Res. Lab.P.H.,51,166-169,2000
間違えやすい
植物
ヒョウタン
  作成:渕野裕之(医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター)