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自然毒のリスクプロファイル:高等植物:トリカブト

高等植物:トリカブト

トリカブト

 

一般名

トリカブト(別名:カブトギク,カブトバナ,アコニツム) 

分類

キンポウゲ目 Ranunculales 、キンポウゲ科 Ranunculaceae 、トリカブト属 Aconitum

学名 オクトリカブト Aconitum japonicum Thunb. subsp. subcuneatum (Nakai) Kadota ほか、多くの野生種がある。薬用とし て日本薬局方に収載されているのはオクトリカブトとカラトリカブト Aconitum carmichaeli Debx. である。
生育地

山地の樹陰や高地の草原などに生える。しばしば群落を作る。 

形態 茎は一般に直立あるいは斜めになり、つる性のものもある。茎の高さは1m前後。秋に枝分かれした茎の先に独特な兜状の花を咲かせる。形態に変化が多く,種類が多く,種分類が困難な一群である。花色は一般に紫色で,稀に白色,淡黄色などがある。全草に有毒アルカロイドのアコニチン系アルカロイドを含有する。

       オクトリカブト             芽生え期のトリカブト(矢印)とニリンソウ(その周囲)

      トリカブトの芽生え           ニリンソウ(食用)

  間違え易い時期の姿         トリカブトの若芽(写真提供:数馬恒平)
  左1本:トリカブト
  右4本:ニリンソウ
( 写真提供:御影雅幸)
毒性成分

アコニチン aconitine 系アルカロイド (アコニチン,メサコニチン,ヒパコニチンなど)

中毒症状 口唇や舌のしびれに始まり,次第に手足のしびれ,嘔吐,腹痛,下痢,不整脈,血圧低下などをおこし,けいれん,呼吸不全(呼吸中枢麻痺)に至って死亡することもある。 致死量はアコニチン2~6mg
発病時期 食後 10 20 分以内に発症することが多い
発生事例

(症例1) 2009 年4月下旬に,札幌在住の高齢者夫婦がニリンソウと間違っておひたしにして食べ,全身あるいは下半身がしびれる中毒症状をおこした。

(症例2) 2009 年4月上旬に,新潟県上越市でモミジガサと間違って採集されたトリカブトを親戚から貰い受け,おひたしで食して家族2名が中毒した。

(症例3) 2005 年4月下旬に,青森県で 20 70 代男女6人が ニリンソウと間違ってトリカブトを食して中毒し, 70 歳代の男性が死亡した。

患者数

(過去5 間)

  年     発生件数      患者総数      摂食者総数     死亡者数
2013年      3件         5人          7人          0人
2012年      2件         4人          5人          2人
2011年      0件         0人          0人          0人
2010年      1件         1人          1人          0人
2009年      3件         5人          7人          0人

(2013年12月31日現在)
厚生労働省発表

直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちら
 
中毒対策 トリカブトによる中毒は重篤になりやすい。山菜採りは経験者からしっかりと実地教育を受けるとともに,毒草を見分けるためには日頃から自然に親しむ必要がある。

毒性成分の分析法

 

中毒患者の血液や尿中の微量分析では,ガスクロマトグラフ質量分析計( GC/MS J.Anal.Toxicol . 22 336 (1998) や液体クロマトグラフ質量分析計( LC/MS J. Chromatogr. B Biomed. Sci. Appl . 691 351 1997 )による分析方法が報告されている

諸外国での状況

 

世界の北半球の温帯以北に広く分布し,古来致死的な有毒植物として知られてきた。矢毒としての利用はチベット族やアイヌ族に知られる。一方,中国医学やチベット医学またホメオパシーでも塊根を薬用にしてきた。

その他の参考になる情報

 

 塊根は加工して漢方生薬「附子」「烏頭」などとして利用される。葉柄はトリカブトでは中実,ニリンソウは中空である。また,アイヌ民族はトリカブトの根で矢毒を作り狩猟に利用した。有毒アルカロイドは長時間加熱すると aconine に変化して毒性が 200 分の1となるため,射止めた動物肉を食することができる。

間違えやすい植物

 

早春から初夏にかけての山菜採集時期に、 トリカブトの 芽生え時期の 葉と酷似している食用野草のニリンソウやモミジガサなどと間違って誤食される中毒事故が多い。 山菜狩りは有識者とともに行うべきである。
  作成:御影雅幸( 東京農業大学農学部

 

 

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