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自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒

魚類:フグ毒

1 有毒種

主としてフグ科魚類がフグ毒をもち、フグ毒中毒の原因食品となる。毒力の強さはフグの種類と部位によって大きく異なるので、わが国では食用可能なフグの種類と部位が定められている(『処理等により人の健康を損うおそれがないと認められるフグの種類および部位』⇒クリック)。フグの内臓、とくに肝臓や卵巣には高濃度の毒素が蓄積されているので、これらを食べた場合にフグ毒中毒になることが多い。日本沿岸でみられるフグ科魚類の毒力と食用の適否は以下のリストをクリックして確認されたい。

日本沿岸でみられるフグ科魚類

アカメフグ カナフグ カラス クサフグ
クロサバフグ ゴマフグ コモンフグ サンサイフグ
シマフグ ショウサイフグ シロサバフグ ドクサバフグ
トラフグ ナシフグ ヒガンフグ マフグ
メフグ ヨリトフグ    
2 中毒発生状況 わが国では年間に約30件のフグ毒中毒が発生し、患者数は約50名で数名が死亡している。フグ毒中毒は釣り人や素人による家庭料理が原因になることが多い。
→ 食中毒発生状況はこちら。 [13KB]
3 中毒症状 フグ毒による中毒症状は食後20分から3時間程度の短時間で現れる。重症の場合には呼吸困難で死亡することがある。中毒症状は臨床的に4段階に分けられる。

第1段階: 口唇部および舌端に軽い痺れが現れ、指先に痺れが起こり、歩行はおぼつかなくなる。頭痛や腹痛を伴うことがある。

第2段階: 不完全運動麻痺が起こり、嘔吐後まもなく運動不能になり、知覚麻痺、言語障害も顕著になる。呼吸困難を感じるようになり、血圧降下が起こる。

第3段階: 全身の完全麻痺が現れ、骨格筋は弛緩し、発声はできるが言葉にならない。血圧が著しく低下し、呼吸困難となる。

第4段階: 意識消失がみられ呼吸が停止する。呼吸停止後心臓はしばらく拍動を続けるが、やがて停止し死亡する。

4 毒成分
(1)名称および化学構造 テトロドトキシン。
テトロドトキシンおよび同族体の構造を図1に示す。
  R1 R2 R3 R4
テトロドトキシン H OH OH CH2OH
4-エピテトロドトキシン OH H OH CH2OH
6-エピテトロドトキシン H OH CH2OH OH
11-デオキシテトロドトキシン H OH OH CH3
11-ノルテトロドトキシン-6(R)-オール H OH H OH
11-ノルテトロドトキシン-6(S)-オール H OH OH H
11-ノルテトロドトキシン-6,6-ジオール H OH OH OH
11-オキソテトロドトキシン H OH OH CH(OH)2

図1 テトロドトキシンおよび同族体の構造

テトロドトキシンおよび同族体の構造や化学的性状については下記の「文献」[1]に詳しい。
(2)化学的性状 テトロドトキシンの結晶は有機溶媒や水に不溶だが、含水アルコールや酸性溶液には可溶である。弱酸性溶液中では加熱に対して安定だが、中性溶液での加熱やアルカリや強酸性溶液中では不安定である。一般的な調理加熱では分解しない。
(3)毒性 テトロドトキシンのマウスに対するLD50値は、静脈投与で8.7 μg/kg、腹腔内投与で10 μg/kgである。[2]
(4)中毒量 ヒトの致死量はテトロドトキシンに換算して1〜2 mgと推定される。[3]
(5)作用機構 テトロドトキシンは骨格筋や神経の膜電位依存性ナトリウムイオンチャネルに結合し、チャネル内へのナトリウムイオンの流入を阻害して神経伝達を遮断する神経毒である。テトロドトキシンの薬理作用については下記の「文献」[4-7]に詳しい。
(6)分析方法 フグ毒の検査、定量は「食品衛生検査指針、理化学編」[8]に示されている。フグ組織試料から酢酸で加熱抽出した試験液をマウスに腹腔内投与し、マウスの致死時間からマウス単ユニットに換算して毒量を測定する方法が、日本では公定法に準じたもの(参考法)となっている。フグ毒の場合、体重20gのマウスを30分間で死亡させる毒量を1マウスユニット(MU)と定義する方法が、日本では公定法に準じたもの(参考法)となっている。組織1g当たり10マウスユニットを超えるものは食用不適と判断する。毒成分の分析にはHPLC-蛍光検出法[9]やLC-MS[10-12]またはLC-MS/MS[10, 13]が汎用される。
5 中毒対策 食用が可能なフグは、別表の『処理等により人の健康を損うおそれがないと認められるフグの種類および部位』(⇒クリック)で許可された種類のフグの、決められた部位のみであり、有毒部位は除去されていなければならない。 フグの有毒部位の除去は、都道府県知事等が認めた者及び施設に限って取り扱うこととされている。
フグは魚種によって食用可能な部位が異なり、地方によっては名称も異なることから、釣り人等の素人判断による調理は絶対に行わないこと。フグ毒中毒に対する有効な治療法や解毒剤は今のところないが、人工呼吸により呼吸を確保し適切な処置が施されれば確実に延命できる。
6 文献
  1. Yotsu-Yamashita M: Chemistry of puffer fish toxin. J Toxicol.-Toxin Reviews, 20, 51-66(2001).
  2. Cao CY, Furman FA: Differentiation of the actions of tetrodotoxin and saxitoxin. Toxicon, 5, 25-34 (1967).
  3. Noguchi T, Ebesu JSM: Puffer poisoning: epidemiology and treatment. J Toxicol-Toxin Reviews, 20, 1-10 (2001).
  4. Geffeney S, Ruben P: The structure basis and functional consequences of interactions between tetrodotoxin and voltage-gated sodium channels. Mar Drugs, 4, 143-156(2006).
  5. Fozzard H, Lipkind GM: The tetrodotoxin binding site is within the outer vestibule of the sodium channel. Mar Drugs, 8, 219-234 (2010).
  6. Kamimura J, Zheng T, Uryu N, Ogata N: Regulation of the spontaneous augmentation of Nav1.9 in mouse dorsal root ganglion neurons: effect of PKA and PKC pathways. Mar Drugs, 8, 728-740(2010).
  7. Zimmer T: Effect of tetrodotoxin on the mammalian cardiovascular system. Mar Drugs, 8, 741-762(2010).
  8. 厚生労働省監修:食品衛生検査指針 理化学編, 日本食品衛生協(2005).
  9. Nagashima Y, Maruyama J, Noguchi T, Hashimoto K: Analysis of paralytic shellfish poison and tetrodotoxin by ion-pairing high performance liquid chromatography. Nippon Suisan Gakkaishi, 53, 819-823(1987).
  10. Shoji Y, Yotsu-Yamashita M, Miyazawa T, Yasumoto T: Electrospray ionization mass spectrometry of tetrodotoxin and its analogs: liquid chromatography/mass spectrometry, tandem mass spectrometry, and liquid chromatography/tandem mass spectrometry. Anal Biochem 290, 10-17(2001).
  11. 堀江正一, 石井里枝, 小林 進, 中澤裕之:LC/MSによるフグ毒テトロドトキシンの分析. 食衛誌, 43, 234-238(2002).
  12. Jang J-H, Lee J-S, Yotsu-Yamashita M: LC/MS analysis of tetrodotoxin and its deoxy analogs in the marine puffer fish Fugu niphobles from the southern coast of Korea, and in the brackishwater puffer fish Tetraodon nigroviridis and Tetraodon biocellatus from Southeast Asia. Mar Drugs, 8, 1049-1508(2010).
  13. 赤木浩一, 畑野和広:LC/MS/MSによるフグ組織およびヒト血清・尿中のテトロドトキシンの分析. 食衛誌, 47, 46-50(2006).
7 参考図書、総説 図書
  • 厚生省生活衛生局乳肉衛生課編:改訂日本近海産フグ種の鑑別と毒性, 中央法規出版 (1994).
  • 野口玉雄, 阿部宗明, 橋本周久:有毒魚介類携帯図鑑, 緑書房(1997)
  • 塩見一雄, 長島裕二:新訂版 海洋動物の毒. 成山堂書店(2006).
  • 日本食品衛生協会:第2版 食中毒予防必携. 日本食品衛生協会(2007).
総説
  • Noguchi T. (Ed.): Special issue on tetrodotoxin. J Toxicol- Toxin Reviews, 20, 1-84 (2001).
  • Noguchi T, Arakawa O, Takatani T: TTX accumulation in pufferfish. Comp Biochem Physiol D, 1, 145-152 (2006).
  • Noguchi T, Arakawa O: Tetrodotoxin - distribution and accumulation in aquatic organisms, and cases of human intoxication. Mar. Drugs, 8, 220-242 (2008).
  • Williams B: Behavioral and chemical ecology of marine organism with respect of tetrodotoxin. Mar Drugs, 8, 381-398 (2010).

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